実施の形態1.
<概要>
本実施の形態の電動機の回転子は、任意にシャフト(軸)の長さ(もしくは径)並びにシャフトにおける回転子の位置を選択可能とする点を特徴とする。例えば、シャフトの一方の端部のみに負荷(ファン等)が取り付けられる電動機の回転子では、シャフトが短く、且つシャフトにおける回転子の位置が決まっているため、回転子マグネット、位置検出用マグネット、シャフト等を樹脂で一体成形することができる。
しかし、シャフトが長尺な場合には、回転子マグネット、位置検出用マグネット、シャフト等を樹脂で一体成形するのは、シャフトの長さが樹脂成形する際の金型開き量で制限され、任意の長さにすることができない。
シャフトにおける回転子の位置が変わる場合は、夫々の金型が必要となる。
そこで、本実施の形態では、回転子マグネット、位置検出用マグネット以外にシャフトへの取付け用の短尺の回転子コアを用意し、回転子マグネット、位置検出用マグネット、回転子コア(回転子マグネットの内周に配置される)を熱可塑性樹脂で一体に成形し、その後、回転子コアをコーキングしてシャフトに組付けるようにした。
それにより、シャフトの長さが樹脂成形する際の金型開き量で制限されること、シャフトにおける回転子の位置が変わる場合は夫々の金型が必要となること等の制限から解放される。
先ず、本実施の形態の回転子樹脂組立(回転子マグネット、位置検出用マグネット、回転子コアを熱可塑性樹脂で一体に成形したもので、シャフトに取り付ける前のもの)について説明する。
図1乃至図5は実施の形態1を示す図で、図1は回転子樹脂組立100の断面図(図2のA−A断面)、図2は回転子樹脂組立100の左側面図、図3は回転子樹脂組立100の右側面図、図4は回転子樹脂組立100を位置検出用マグネット11側から見た斜視図、図5は回転子樹脂組立100を位置検出用マグネット11の反対側から見た斜視図である。
図1乃至図5に示す回転子樹脂組立100は、回転子マグネット3(ヨーク4に樹脂マグネット5を射出成形して得られる)と、位置検出用マグネット11と、回転子コア10とを熱可塑性樹脂(樹脂部17)で一体成形することで得られる。
図示しない縦型成形機に設置された下側金型の芯金部に、回転子コア10と、ヨーク4のゲート(後述する)を備える側の端面から回転子マグネット3とを挿入して組み込まれる。回転子マグネット3のヨーク4のゲート側端面に備える切欠き7(図5参照)に嵌め合わされる凸部(下側金型の芯金部に備える)と、下側金型の芯金部に備える回転子コア10の内径を嵌め合わせる円筒部との同軸度を確保することで、金型が締められた際に芯金部の凸部がテーパ形状の切欠き7に押し付けられ、樹脂マグネット5の外周とシャフト(後述する)との同軸が確保される。
また、回転子コア10が、金型芯金部により回転子マグネット3の概略中央に設置されることで、回転子マグネット3の重心位置となり、電動機の低騒音、低振動が図れる。
さらに、回転子マグネット3の台座34(図1参照、詳細は後述する)に位置検出用マグネット11を金型内で設置後に、上側金型が閉じられてPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂が射出成形される。上側金型が閉じられた際には、上側金型に備えている同軸が確保された突起(図示せず)が、位置検出用マグネット11の内周と嵌め合わされることで、位置検出用マグネット11の同軸も確保され、製造上の品質の向上が図れる。
図6乃至図14は実施の形態1を示す図で、図6はヨーク4を示す図((a)は凹部6側から見た側面図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)は位置検出用マグネット11側から見た側面図)、図7はヨーク4が外側の配向磁場により極方向に対し異方性に配向される状態を示す図、図8は図6(a)の拡大図、図9は図6(c)の拡大図、図10はヨーク4を台座34から見た斜視図、図11はヨーク4を凹部6から見た斜視図、図12は図11の部分拡大図、図13は図6(b)の部分拡大図、図13は図6(b)の拡大図である。
次に、回転子マグネット3を構成するヨーク4について、図6乃至図14を参照しながら詳細に説明する。
回転子マグネット3の内側に設けられるヨーク4は、軟磁性体又はフェライトを含有する熱可塑性樹脂を射出成形して得られる。
ヨーク4を成形する際に、金型のヨーク4の外周を形成する部分の外側に、強力な磁石を配置して配向磁場を設けることで、ヨーク4に含有される軟磁性体、又はフェライトは極方向に対し異方性に配向される。
図7に示すように、ヨーク4が金型のヨーク4の外周を形成する部分の外側の配向磁場により、極方向に対し異方性に配向される。
尚、図7では、見やすくするために台座34(又は、凹部6及び切欠き7)は省いている。
図6に示すように、ヨーク4は概略円筒状に形成される。ヨーク4の外周は、図8に示すように、凹部47と凸部48とが交互に配置される。凹部47、凸部48の数は、ここではそれぞれ10個である。
ヨーク4の外周の凹部47は、樹脂マグネット5の磁極に対応(対向)している。
また、ヨーク4の外周の凸部48は、樹脂マグネット5の極間に対応(対向)している。
ヨーク4の一方の軸方向端面には、軸方向深さd2(図13参照)の凹部6(例えば、円形)が、周方向に略等間隔に複数個(磁極数)形成されている。凹部6は、ヨーク4の外周の凸部48(樹脂マグネット5の極間)に対応(対向)している。
ここでは、電動機の回転子が10極であるから、凹部6も10個形成されている。
軟磁性体、又はフェライトを含有する熱可塑性樹脂は、それぞれの凹部6からヨーク4に注入される。そのため、成形後のヨーク4には、熱可塑性樹脂を注入するゲート口のゲート処理跡6a(図13参照)が残る。
凹部6を設けるのは、ゲート処理跡6a(図13参照)の出っ張りがヨーク4の軸方向端面から突出しないようにすることが一つの理由である。従って、凹部6の軸方向深さd2(図13参照)は、ゲート処理跡6aの出っ張りがヨーク4の軸方向端面から突出しないような寸法とする。
磁極の数(ここでは、10極)だけ熱可塑性樹脂を注入するゲート口(ゲート処理跡6aとして残る)を設けることで、磁極に対し軟磁性体、又はフェライトを含有する熱可塑性樹脂の射出時の注入状態が均一化されるとともに、配向の状態も均一化が可能となり、ヨーク4の品質の向上が図れる。
さらに、図8に示すように、極間の肉厚となる部分にゲート口(ゲート処理跡6aとして残る)を設けることで、軟磁性体、又はフェライトを含有する熱可塑性樹脂の流れに最適の位置となり、品質の向上が図れる。
また、ゲート口(ゲート処理跡6aとして残る)を、ヨーク4の一方の軸方向端面より丸形状(円形状)で、かつ、軸方向に内側に所定の長さ(軸方向深さd2(図13参照))を切り欠いた凹部6の中心とすることで、ゲート処理跡6aに残るバリが端面より表出することを防止することができる。そのため、製造工程中の位置決めの支障となることを抑制する、もしくは、ゴミの発生を抑制するため、製造上の品質の向上が図れる。
ヨーク4の中空部(図14参照)は、凹部6を備える側の軸方向端面より軸方向の略中心位置(ヨーク4の成形時の型合わせ面跡46(図14参照))まではテーパ部45(図14参照)になっている。テーパ部45は、凹部6を備える側の軸方向端面より内側に徐々に狭くなるテーパ形状である。
さらに、テーパ部45の型合わせ面跡46から、台座34側の軸方向端面までは、径が一定のストレート部44(図14参照)になっている。
ヨーク4の中空部のテーパ部45(図14参照)は、固定側の金型で形成する。また、ヨーク4の中空部のストレート部44(図14参照)は、可動側の金型で形成する。
ヨーク4の中空部のテーパ部45(図14参照)を固定側の金型で形成することにより、型開き時に固定側金型に製品(ヨーク4)が張り付く抵抗を低減する。
また、ヨーク4の中空部のストレート部44(図14参照)は可動側の金型で形成することにより、型開き時の固定側金型に製品(ヨーク4)が張り付く抵抗となることで、固定側金型が製品(ヨーク4)からスムーズに離れ、製造上の品質向上が図れる。
図6(a)、図8に示すように、ヨーク4の凹部6を備える側の軸方向端面には、凹部6の間の磁極位置に所定の巾で中空部のテーパ部45に達するテーパ状の切欠き7が形成されている。テーパ状の切欠き7の数は、10個である。
それぞれのテーパ状の切欠き7は、中空部(図14参照)のストレート部44と、ヨーク4の外周に対して同軸が確保されるように形成される。
このテーパ状の切欠き7は、樹脂マグネットで樹脂マグネット5をヨーク4と一体に成形する際、また、回転子マグネット3を樹脂部17で軸1と一体に成形する際に、金型が切欠き7を同軸が保たれる形で保持することで、同軸度と位相を確保することが可能となり、製造上の品質の向上が図れる。
ヨーク4の凹部6を備える軸方向端面の反対側の軸方向端面に、位置検出用マグネット11(後述する)をヨーク4の端面から所定の距離だけ離間させる台座34を備えている(図6(b)、図6(c)、図9参照)。
図9、図10に示すように、台座34の周方向の位置は、磁極に対応(対向)している。即ち、台座34は、10個周方向に略等間隔で形成されている。
それぞれの台座34は、二つの軸方向外側に突出する突出部34aと、二つの突出部34aの間に形成される開口部34bとで構成される。
台座34が備える二つの突出部34aの間に形成される開口部34bは、樹脂マグネット5をヨーク4と一体に成形する際の、樹脂マグネットを供給する経路となる。開口部34bの巾は、樹脂マグネットを供給するランナー巾(後述するリブ状ランナー35)と概略同一となっている。
図15乃至図23は実施の形態1を示す図で、図15はランナーを切除する前の回転子マグネット3を示す図((a)は凹部6側から見た側面図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は位置検出用マグネット11側から見た側面図)、図16は回転子マグネット3が外側の配向磁場により極方向に対し異方性に配向される状態を示す図、図17は図15(b)の拡大図、図18は図15(c)の拡大図、図19はランナーを切除する前の回転子マグネット3をランナー側から見た斜視図、図20は図19のリブ状ランナー35付近の拡大斜視図、図21は回転子マグネット3の成形時の樹脂マグネットの流れを示す部分平面図、図22はランナーを切除した回転子マグネット3を台座部50側から見た斜視図、図23は回転子マグネット3を凹部6側から見た斜視図である。
次に、回転子マグネット3について、図15乃至図23を参照しながら説明する。
本実施の形態の回転子マグネット3は、ヨーク4を縦型成形機に設置された金型の下型(図示せず)に収め、ヨーク4の外周に、例えば希土類であるサマ鉄(サマリウム鉄)を含有する熱可塑性樹脂の樹脂マグネットを射出成形して樹脂マグネット5を一体化することで得られる。
樹脂マグネット5を成形する際に、金型の樹脂マグネット5の外周を形成する部分の外側に、強力な磁石を配置して配向磁場を設けることで、樹脂マグネット5に含有される磁粉は極方向に対し異方性に配向される(図16参照)。
樹脂マグネット5を成形する金型のヨーク4の中空部が挿入される芯部を下側金型(図示せず)に形成する。ヨーク4が凹部6を備える軸方向端面から、該芯部に挿入し、金型に組み込まれる。
ヨーク4が金型に組み込まれた状態で、樹脂マグネット5を成形する下型の芯部の端面は、ヨーク4の台座34を備える端面位置となっている(図17参照)。
また、ヨーク4の凹部6側軸方向端面に備える切欠き7に嵌め合わされる凸部(図示せず)を、樹脂マグネット5を成形する金型の芯部(下型)に設けることで、配向磁場を作る磁石の位置に対する円周方向の位置決めがなされる。
また、芯部の切欠き7に嵌め合わされる凸部を、樹脂マグネット部の外周との同軸を確保し、金型が締められた際にテーパ状の切欠き7に押し付けることで、樹脂マグネット5の外周とヨーク4との同軸が確保される。
樹脂マグネット5を成形する際の樹脂注入部は、樹脂マグネット5を成形する金型の芯部(下型)の端面に形成されるドーナツ状ランナー36(図17〜図19参照)に磁極の半分の数量(ここでは、10極の半分の5個)が周方向に略等ピッチに設けられる。
樹脂マグネット5を成形する際の樹脂注入部は、ドーナツ状ランナー36に樹脂注入部跡36aとして残る(図18参照)。
樹脂注入部跡36aは、10個形成されるリブ状ランナー35のいずれかの二つの略中間に形成される。
図17に示すように、ドーナツ状ランナー36は、概略ヨーク4の台座34の高さ(軸方向)で樹脂マグネット5又はヨーク4の端面から台座側に突出している。
また、ドーナツ状ランナー36の外周から、リブ状ランナー35が放射状に磁極の数と同数(ここでは、10個)で伸びている。リブ状ランナー35は、ドーナツ状ランナー36と略同じ高さ(軸方向)で形成されている。
既に述べたように、樹脂マグネット5を成形する際の樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)は、2つのリブ状ランナー35の略中間位置に設けられる。
ドーナツ状ランナー36及びリブ状ランナー35は、上型で形成するため、芯部(下型)の端面から軸方向外側に小さくなるテーパ形状とすることで、型開き時の上型へのドーナツ状ランナー36及びリブ状ランナー35の張り付きを低減する。
ドーナツ状ランナー36の芯部(上型)の端面から軸方向外側に小さくなるテーパ形状については、図17を参照する。
また、リブ状ランナー35の芯部(下型)の端面から軸方向外側に小さくなるテーパ形状については、図20を参照する。
さらに、図17に示すように、ドーナツ状ランナー36について、芯部(下型)の端面より所定の深さ(軸方向)をストレートに凹状に掘り込むことで、離形の際のドーナツ状ランナー36の上型への張り付きの抵抗となることで、ドーナツ状ランナー36から上型がスムーズに離れる。
ドーナツ状ランナー36から放射状に伸びるリブ状ランナー35は、樹脂マグネット5を成形する金型の芯部(下型)の軸方向端面、次に、ヨーク4の台座34側の軸方向端面を渡り、台座34の内周側の開口部34b(図9参照)まで達する。さらに、台座34の外周側の開口部34bより外側に、樹脂マグネット5の軸方向端面上で、ヨーク4の外周から所定の位置まで伸びる。
図21に示すように、樹脂マグネットはドーナツ状ランナー36の樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)に注入される。この樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)までは、樹脂マグネットは、図示しないランナー(軸方向ランナー)を軸方向に流れてくる。そして、樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)で流れの方向を90°変える。即ち、軸直交方向に二手に分かれる。その後、二手に分かれたそれぞれの樹脂マグネットは、樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)に最も近いリブ状ランナー35に入り、さらに流れの方向を90°変えて樹脂マグネット5に流れ込む。
このとき、樹脂マグネットの流れ方向を変える部分(樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)、軸方向ランナーを軸方向に流れてきて軸直交方向に二手に分かれる部分)を、金型内とすることができる。樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)を有するドーナツ状ランナー36が、ヨーク4の内周よりも内側にあるからである。
例えば、ヨーク4の軸方向端面で流れ方向を変えた場合は、軸方向ランナーを軸方向に流れてきた樹脂マグネットの射出圧力でヨーク4の端面に穴が開く等のダメージを与える恐れがある。
金型内に、樹脂マグネットの流れ方向を変える部分(樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)、軸方向ランナーを軸方向に流れてきて軸直交方向に二手に分かれる部分)があるため、軸方向ランナーを軸方向に流れてきた樹脂マグネットが、ヨーク4等にダメージを与える恐れが少ない。それにより製造上の品質の向上が図れる。
また、ヨーク4の中空部を台座34側端面より型合わせ面跡46までを横断面の円の径が略一定のストレート部44(図14参照)にすること、及び、ヨーク4の中空部を台座34側端面よりストレート部44と嵌め合わされる樹脂マグネット5を成形する金型の芯部(下型)の隙間を極力小さくすることで、ヨーク4の中空部の台座34側端面より型合わせ面跡46までのストレート部44と、樹脂マグネット5を成形する金型の芯部(下型)との隙間への樹脂マグネット漏れを抑えることが可能となり、製造上の品質の向上が図れる。
希土類の樹脂マグネット5をヨーク4の外周に形成する場合は、材料(希土類の樹脂マグネット)が高価なため、樹脂マグネット5の肉厚を極力薄くする。その場合、樹脂マグネット5に直接樹脂マグネットを注入する樹脂注入部は、樹脂マグネット5の肉厚に合せて小さくする必要がある。樹脂注入部が小さくなると、成形圧が増大する。
それに対して、本実施の形態のように、ドーナツ状ランナー36と、ドーナツ状ランナー36の外周から、放射状に磁極の数と同数で伸びているリブ状ランナー35とでランナーを形成し、ドーナツ状ランナー36に樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)を設けるようにすれば、樹脂注入部のゲート径を任意に設定することができ、製造上の品質の向上が図れる。
また、樹脂マグネットの樹脂注入部(樹脂注入部跡36a)の数を、磁極の数(10極)の半分(5個)に減らすことで、製品(樹脂マグネット5)に対するランナー量の比率を、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数だけ設ける場合に比べて低減することができる。
ランナー量は、ドーナツ状ランナー36と、リブ状ランナー35と、図示しないその他ランナーとの合計の量である。
「ランナー」は、樹脂マグネット5と金型の樹脂マグネット注入部との間の製品(樹脂マグネット5)にならない部分と定義したが、具体的にはドーナツ状ランナー36、リブ状ランナー35、及び、図示しないその他のランナーを指す。
但し、図15に示す回転子マグネット3の場合は、図22に示すように、リブ状ランナー35の一部(ヨーク4の台座34の内周面から先端(径方向)までの部分)が、製品となる。
即ち、図示しないその他のランナー、ドーナツ状ランナー36、及びリブ状ランナー35(一部を除く、ヨーク4の台座34の内周面から先端(径方向)までの部分を除く)は、回転子マグネット3の成形完了後、切除される(図22参照)。
本実施の形態のランナー(その他のランナー、ドーナツ状ランナー36、及びリブ状ランナー35(一部を除く))は、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数(ここでは、10個)だけ設ける場合に比べて、概略30%程度ランナー量を低減することができる。
詳細は省くが、全ランナー量に対する軸方向ランナー量の比率が、他のドーナツ状ランナー36、及びリブ状ランナー35に比べると大きい。従って、樹脂注入部を減らすと、全ランナー量も減る。
本実施の形態は、樹脂マグネットの樹脂注入部が5個であり、樹脂注入部を磁極の数(ここでは、10個)だけ設ける場合に比べて全ランナー量が減ることになる。
また、製品にならないランナーを再利用する場合、本実施の形態は、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数(ここでは、10個)だけ設ける場合に比べて、ランナー量が減ることにより再利用比率が減少し、樹脂マグネットの物性(主に、機械的強度)の低下を抑制できることで、製品の品質の向上が図れる。
さらに、樹脂注入部は磁極の数の半分であるが、リブ状ランナー35は磁極の数と同一であることで、それぞれの磁極に対して樹脂マグネットの注入具合が同様となり、配向の状態も均一化が可能となり、製造上の品質の向上が図れる。
図22に示すように、図示しないその他のランナー、ドーナツ状ランナー36、及びリブ状ランナー35(一部を除く)は、回転子マグネット3の成形完了後、切除される。リブ状ランナー35は、ドーナツ状ランナー36から放射状に伸びるヨーク4の台座34の内周面までの部分が切除される。
従って、図22に示すように、台座部50は、ヨーク4の台座34の突出部34aと、突出部34aの間から径方向外側に伸びるリブ状ランナー35の非切除部分とで構成される。尚、リブ状ランナー35の非切除部分は、径方向先端に軸方向外側に突出する位置検出用マグネット保持突起35bを備える。
既に述べたように、位置検出用マグネット11は、回転子マグネット3の台座部50の位置検出用マグネット保持突起35b(図22参照)の内側で台座34及びリブ状ランナー35(製品として残る部分)の上面に配置される(略水平の状態)。そして、位置検出用マグネット11が、樹脂成形の前で回転子マグネット3の台座部50(図22参照)に載置された状態で、例えば、180°所定の回転速度で回転すると位置検出用マグネット11に遠心力が作用する。しかし、位置検出用マグネット11は、周囲に位置検出用マグネット保持突起35bが存在するため、位置検出用マグネット保持突起35bが径方向の位置ずれを防止し、回転子マグネット3から脱落する恐れが少ない。それにより、生産性が向上する。
また、樹脂マグネット5に形成されたリブ状ランナー35のヨーク4より外側の部分を、回転子マグネット3を樹脂部17で軸1と一体に成形される際の周方向の位置決めとなる位置決め突起として利用される。
例えば、樹脂マグネットのみで、回転子コア(後述する)と一体に成形される際の周方向の位置決めとなる位置決め突起(リブ状ランナー35のヨーク4より外側の部分)と、位置検出用マグネット保持突起35bと、台座34とを形成した場合、ドーナツ状ランナー36と、リブ状ランナー35とを切除した際には、ヨーク4の外周に形成した樹脂マグネット5とは、樹脂マグネット5への樹脂注入部のみで連結されることとなるため、強度が弱いという弱点がある。
しかし、ヨーク4に台座34を形成し、さらに、台座34の中央部を開口して開口部34bを設け、リブ状ランナー35を台座34と一体化させて強度が向上することで、製造上の品質の向上が図れる。
以上のように、ドーナツ状ランナー36からリブ状ランナー35を通り、樹脂マグネットがヨーク4の外周に充填されて、ヨーク4と樹脂マグネット5が一体化された後、台座34の内周側側面より内側の、リブ状ランナー35と、ドーナツ状ランナー36を切除することにより、本実施の形態の回転子マグネット3が得られる。
樹脂マグネットのみで、回転子コア(後述する)と一体に成形される際の周方向の位置決めとなる位置決め突起(リブ状ランナー35のヨーク4より外側の部分)と、位置検出用マグネット保持突起35bと、台座34とを形成した場合、ドーナツ状ランナー36と、リブ状ランナー35とを切除した際には、ヨーク4の外周に形成した樹脂マグネット5とは、樹脂マグネット5への樹脂注入部のみで連結されることとなるため、強度が弱いという弱点があるが、位置検出用マグネット11(後述する)を使用しない場合は、位置検出用マグネット11用の台座部50が不要となるので、ドーナツ状ランナー36及びリブ状ランナー35を完全に切除してよい。
図24乃至図32は実施の形態1を示す図で、図24は変形例のヨーク104を示す図((a)は凹部106側から見た側面図、(b)は(a)のD−D断面図、(c)は凹部106の反対側から見た側面図)、図25は図24(c)の拡大図、図26はヨーク104を凹部106の反対側から見た斜視図、図27はランナーを切除する前の変形例の回転子マグネット103を示す図((a)は凹部106側から見た側面図、(b)は(a)のE−E断面図、(c)は凹部106の反対側から見た側面図)、図28は図27(b)の拡大図、図29は図27(c)の拡大図、図30は変形例の回転子マグネット103の成形時の樹脂マグネットの流れを示す部分平面図、図31はランナーを切除する前の変形例の回転子マグネット103をランナー側から見た部分斜視図、図32はランナーを切除した変形例の回転子マグネット103を凹部106の反対側から見た斜視図である。
次に、この位置検出用マグネット11を使用しない場合の、回転子マグネット103について、図24乃至図32を参照しながら説明する。
回転子マグネット103は、ヨーク104と、ヨーク104の外周に形成される樹脂マグネット105とを備える。
回転子マグネット103も、回転子マグネット3と同様、10極である。
先ず、ヨーク104について説明する。図24(a)、図24(b)に示すように、ヨーク104の凹部106側の構成は、図6のヨーク4と同じである。
位置検出用マグネット11(後述する)を使用しないので、ヨーク104の凹部106の反対側の軸方向端面に、図6のヨーク4ではあった台座34がないことを特徴とする(図24〜図26)。
回転子マグネット103の内側に設けられるヨーク104は、軟磁性体、又はフェライトを含有する熱可塑性樹脂を射出成形して得られる。
ヨーク4と同様に、ヨーク104を成形する際に、金型のヨーク104の外周を形成する部分の外側に、強力な磁石を配置して配向磁場を設けることで、ヨーク104に含有される軟磁性体、又はフェライトは極方向に対し異方性に配向される。
図24(a)、図24(c)に示すように、ヨーク104は横断面が概略円筒状に形成される。ヨーク104の外周は、図25に示すように、凹部147と凸部148とが交互に配置される。凹部147、凸部148の数は、ここではそれぞれ10個である。
ヨーク104の外周の凹部147は、樹脂マグネット105の磁極に対応(対向)している。
また、ヨーク104の外周の凸部148は、樹脂マグネット105の極間に対応(対向)している。
次に、回転子マグネット103について説明する。図27(a)、図27(b)に示すように、回転子マグネット103の凹部106側の構成は、図15に示す回転子マグネット3と同じである。
位置検出用マグネット11(後述する)を使用しないので、回転子マグネット103の凹部106の反対側の軸方向端面に台座を形成する必要がない。そのため、ランナーを切除する前の回転子マグネット103は、図27(c)、図29に示すように、凹部106の反対側の軸方向端面には、ドーナツ状ランナー136及びリブ状ランナー135が形成されているだけである。
回転子マグネット103も、回転子マグネット3と同様に、樹脂マグネット105を成形する金型のヨーク104の中空部が挿入される芯部を下型(図示せず)に形成する。ヨーク104が凹部106を備える軸方向端面から、該芯部に挿入し、金型に組み込まれる。
ヨーク104が金型に組み込まれた状態で、樹脂マグネット105を成形する下型の芯部の端面は、ヨーク104の凹部106と反対側の軸方向端面位置となっている(図28参照)。
また、ヨーク104の凹部6側軸方向端面に備える切欠き7に嵌め合わされる凸部(図示せず)を、樹脂マグネット105を成形する金型の芯部(下型)に設けることで、配向磁場を作る磁石の位置に対する円周方向の位置決めがなされる。
また、芯部の切欠き107に嵌め合わされる凸部を、樹脂マグネット部の外周との同軸を確保し、金型が締められた際にテーパ状の切欠き107に押し付けることで、樹脂マグネット105の外周とヨーク104との同軸が確保される。
樹脂マグネット105を成形する際の樹脂注入部は、樹脂マグネット105を成形する金型の芯部(下型)の端面に形成されるドーナツ状ランナー136(図29参照)に磁極の半分の数量(ここでは、10極の半分の5個)が周方向に略等ピッチに設けられる。
樹脂マグネット105を成形する際の樹脂注入部は、ドーナツ状ランナー136に樹脂注入部跡136aとして残る(図29参照)。
樹脂注入部跡136aは、10個形成されるリブ状ランナー135のいずれかの二つの略中間に形成される。
図28に示すように、ドーナツ状ランナー136は、概略リブ状ランナー135の高さ(軸方向)で樹脂マグネット105又はヨーク104の端面から外側(軸方向)に突出している。
また、ドーナツ状ランナー136の外周から、リブ状ランナー135が放射状に磁極の数と同数(ここでは、10個)で伸びている。リブ状ランナー135は、ドーナツ状ランナー136と略同じ高さ(軸方向)で形成されている。
既に述べたように、樹脂マグネット105を成形する際の樹脂注入部(樹脂注入部跡136a)は、リブ状ランナー135の略中間位置に設けられる。
ドーナツ状ランナー136及びリブ状ランナー135は、上型で形成するため、芯部(下型)の端面から軸方向外側に小さくなるテーパ形状とすることで、型開きの際の上型へのドーナツ状ランナー136及びリブ状ランナー135の張り付きを低減する。
ドーナツ状ランナー136の芯部(下型)の端面から軸方向外側に小さくなるテーパ形状については、図28を参照する。
また、リブ状ランナー135の芯部(下型)の端面から軸方向外側に小さくなるテーパ形状については、図31を参照する。
さらに、図28に示すように、ドーナツ状ランナー136について、芯部(下型)の端面より所定の深さ(軸方向)をストレートに凹状に掘り込むことで、型開きの際のドーナツ状ランナー136の上型への張り付きの抵抗となることで、ドーナツ状ランナー136から上型がスムーズに離れる。
ドーナツ状ランナー136から放射状に伸びるリブ状ランナー135は、樹脂マグネット105を成形する金型の芯部(下型)の軸方向端面、次に、ヨーク104の端面を渡り、ヨーク104の外周から所定の位置まで伸びている。
図30に示すように、樹脂マグネットはドーナツ状ランナー136の樹脂注入部(樹脂注入部跡136a)に注入される。この樹脂注入部(樹脂注入部跡136a)までは、樹脂マグネットは、図示しないランナーを軸方向に流れてくる。そして、樹脂注入部(樹脂注入部跡136a)で流れの方向を90°変える。即ち、軸直交方向に二手に分かれる。その後、二手に分かれたそれぞれの樹脂マグネットは、樹脂注入部(樹脂注入部跡136a)に最も近いリブ状ランナー135に入り、さらに樹脂マグネット105に流れ込む。
このとき、樹脂マグネットの流れ方向を変える部分(樹脂注入部(樹脂注入部跡136a)、軸方向ランナーを軸方向に流れてきて軸直交方向に二手に分かれる部分)を、金型内とすることができる。樹脂注入部(樹脂注入部跡136a)を有するドーナツ状ランナー136が、ヨーク104の内周よりも内側にあるからである。
例えば、ヨーク104の軸方向端面で流れ方向を変えた場合は、軸方向ランナーを軸方向に流れてきた樹脂マグネットの射出圧力でヨーク104の端面に穴が開く等のダメージを与える恐れがある。
金型内に、樹脂マグネットの流れ方向を変える部分(樹脂注入部(樹脂注入部跡136a)、軸方向ランナーを軸方向に流れてきて軸直交方向に二手に分かれる部分)があるため、軸方向ランナーを軸方向に流れてきた樹脂マグネットが、ヨーク104等にダメージを与える恐れが少ない。それにより製造上の品質の向上が図れる。
また、ヨーク104の中空部を凹部106(切欠き107)の反対側軸方向端面より型合わせ面跡146までを横断面の円の径が略一定のストレート部144(図32参照)にすること、及び、ヨーク104の中空部を凹部106(切欠き107)の反対側軸方向よりストレート部144と嵌め合わされる樹脂マグネット105を成形する金型の芯部(下型)の隙間を極力小さくすることで、ヨーク104の中空部の凹部106(切欠き107)の反対側軸方向端面より型合わせ面跡146までのストレート部144と、樹脂マグネット105を成形する金型の芯部(下型)との隙間への樹脂マグネット漏れを抑えることが可能となり、製造上の品質の向上が図れる。
希土類の樹脂マグネット105をヨーク104の外周に形成する場合は、材料(希土類の樹脂マグネット)が高価なため、樹脂マグネット105の肉厚を極力薄くする。その場合、樹脂マグネット105に直接樹脂マグネットを注入する樹脂注入部は、樹脂マグネット105の肉厚に合せて小さくする必要がある。樹脂注入部が小さくなると、成形圧が増大する。
それに対して、本実施の形態のように、ドーナツ状ランナー136と、ドーナツ状ランナー136の外周から、放射状に磁極の数と同数で伸びているリブ状ランナー135とでランナーを形成し、ドーナツ状ランナー136に樹脂注入部(樹脂注入部跡136a)を設けるようにすれば、樹脂注入部のゲート径を任意に設定することができ、製造上の品質の向上が図れる。
また、樹脂マグネットの樹脂注入部(樹脂注入部跡136a)の数を、磁極の数(10極)の半分(5個)に減らすことで、製品(樹脂マグネット105)に対するランナー量の比率を、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数だけ設ける場合に比べて低減することができる。
ランナー量は、ドーナツ状ランナー136と、リブ状ランナー135と、図示しないその他のランナーとの合計の量である。
「ランナー」は、樹脂マグネット105と金型の樹脂マグネット注入部との間の製品(樹脂マグネット105)にならない部分と定義したが、具体的にはドーナツ状ランナー136、リブ状ランナー135、及び、図示しないその他のランナーを指す。
即ち、図示しないその他のランナー、ドーナツ状ランナー136、及び、リブ状ランナー135は、回転子マグネット103の成形完了後、切除される(図32参照)。
本実施の形態のランナー(その他のランナー、ドーナツ状ランナー136、及びリブ状ランナー135)は、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数(ここでは、10個)だけ設ける場合に比べて、概略30%程度ランナー量を低減することができる。
既に述べたように、全ランナー量に対するその他のランナー量の比率が、他のドーナツ状ランナー136、及びリブ状ランナー135に比べると大きい。従って、樹脂注入部を減らすと、全ランナー量も減る。
回転子マグネット103は、樹脂マグネットの樹脂注入部の数が5個であり、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数(ここでは、10個)だけ設ける場合に比べて全ランナー量が減ることになる。
また、製品にならないランナーを再利用する場合、回転子マグネット103は、樹脂マグネットの樹脂注入部を磁極の数(ここでは、10個)だけ設ける場合に比べて、ランナー量が減ることにより再利用比率が減少し、樹脂マグネットの物性(主に、機械的強度)の低下を抑制できることで、製品の品質の向上が図れる。
さらに、樹脂注入部は磁極の数の半分であるが、リブ状ランナー135は磁極の数と同一であることで、それぞれの磁極に対して樹脂マグネットの注入具合が同様となり、配向の状態も均一化が可能となり、製品の品質の向上が図れる。
図32に示すように、図示しないその他のランナー、ドーナツ状ランナー136、及びリブ状ランナー135は、回転子マグネット103の成形完了後、全て切除される。
樹脂マグネット105の凹部106(切欠き107)の反対側軸方向端面には、リブ状ランナー135を切除した切除跡151が、リブ状ランナー135の数(ここでは、10個)だけ残る。
以上の変形例の回転子マグネット103は、凹部106(切欠き107)の反対側軸方向端面に、回転子マグネット3のような台座34や一部のリブ状ランナー35が存在しない。従って、熱可塑性樹脂で一体成形後に、樹脂マグネット105で発生するトルクを回転子コア(後述する)に伝達する部位は、ヨーク104の切欠き107の一部とゲートの凹部106だけとなるので、回転子マグネット3のような台座34に相当する突起(図示せず)を、回転子マグネット103の凹部106(切欠き107)の反対側軸方向端面に形成しておくとトルク伝達の点で、好ましい。
以上、一例として、ヨーク4,104の外周を凹凸形状とし、外周に樹脂マグネット5,105を一体に成形した回転子マグネット3,103を用いたが、外周を円状とし一部に凹形状または凸形状を設けたヨーク4,104の外周に樹脂マグネット5,105を成形して回転子マグネット3,103としてもよい。
また、樹脂マグネットのみで回転子マグネット3,103を構成してもよい。
また、焼結マグネットや成形した樹脂マグネットをヨーク4,104に接着し回転子マグネット3,103としてもよい。
ヨーク4,104の外周形状や外周に配置されるマグネットの材質、固定方法によらず、軟磁性体を含有した熱可塑性樹脂で成形したヨーク4,104の一方の端面に設けたゲート処理跡6a,106a(図示せず)を端面から出っ張らせないための凹部6,106を埋設するように汎用の熱可塑性樹脂で成形し、回転子コア(後述する)と、回転子マグネット3,103と、位置検出用マグネット11(後述する)とを一体にすることで同様の効果が得られることは言うまでもない。
図33乃至図35は実施の形態1を示す図で、図33は位置検出用マグネット11の斜視図、図34は位置検出用マグネット11を示す図((a)は平面図、(b)は(a)のF−F断面図)、図35は位置検出用マグネット11の部分拡大図である。
次に、図33乃至図35により、位置検出用マグネット11について説明する。図33乃至図35に示すように、リング状の位置検出用マグネット11は、内径側の軸方向両端部に段差12を備え、厚み方向に対称となっている(図35参照)。
位置検出用マグネット11は、図1乃至図5に示す回転子樹脂組立100の軸方向一端部に設けられるが、位置検出用マグネット11の内径側の軸方向両端部の段差12にPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂部17が充填されて、位置検出用マグネット11の軸方向の抜け止めとなる。
位置検出用マグネット11は、厚み方向には対称形状となっているため、方向を考えずに金型にセットでき、作業時間が短縮され、生産性向上、低コスト化が図れる。
尚、図33乃至図35では、両端部に段差12を備えるものを示したが、いずれか一方の端部に段差12があり、それが回転子樹脂組立100の軸方向端部側に位置すればよい。
また、位置検出用マグネット11は、樹脂部17で埋設されると回り止めとなるリブ13を備える。
図36は実施の形態1を示す図で、回転子コア10の斜視図である。回転子コア10は、概略ドーナツ状に所定の厚さ(1mm以下)の電磁鋼板を所定の枚数、かしめ、または溶接することにより、厚さが5〜10mmになるように積層して形成される。回転子コア10の外周には、回転子マグネット3と位置検出用マグネット11とが熱可塑性樹脂にて一体に成形される際に、熱可塑性樹脂が充填され周り止めとなる切り欠き10aを備える。
切り欠き10aに代えて、回転子コア10の外周近傍に、熱可塑性樹脂に埋設された際に、周り止めとなる穴を設けてもよい。
また、回転子コア10の外周と回転子マグネット3の内周との間に、所定の隙間(最低でも1.5mm)が確保されるようにする。これにより、回転子マグネット3が熱可塑性樹脂にて一体化される際に、回転子コア10の外周と回転子マグネット3の内周との間に熱可塑性樹脂の流路の確保が可能となり、製造上の品質の向上が図れる。
さらに、回転子マグネット3のヨーク4に軟磁性体を含有する樹脂を使用する場合には、シャフト(軸)に回転子樹脂組立100が組付けられる際に、ヨーク4が電気的に絶縁層として機能し、ベアリング(軸受け)の電食耐力が向上することにより品質の向上が図れる。
本実施の形態の回転子樹脂組立100は、回転子マグネット3と、位置検出用マグネット11と、回転子コア10とを、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂を射出成形して、各部品を一体化することで得られる。
縦型成形機に設置された下側金型の芯金部に、回転子コア10と、ヨーク4の凹部6を備える側の端面から回転子マグネット3とを挿入して組み込まれる。
回転子マグネット3のヨーク4の凹部6側端面に備える切欠き7に嵌め合わされる凸部(図示せず)と、下側金型の芯金部に設けられ、回転子コア10の内径が嵌め合わされる円筒部(図示せず)との同軸度を確保することで、金型が締められた際に芯金部の凸部がテーパ形状の切欠き7に押し付けられて、樹脂マグネット5の外周とシャフト(軸)との同軸が確保される。
また、回転子コア10が、金型芯金部により回転子マグネット3の概略中央に設置されることで(図1参照)、回転子マグネット3の重心位置となり、電動機の低騒音、低振動が図れる。
さらに、回転子マグネット3の台座34に位置検出用マグネット11が金型内で設置された後に、上側金型が閉じられてPBT等の熱可塑性樹脂が射出される。上側金型が閉じられた際には、上側金型が備えている同軸が確保された突起が、位置検出用マグネット11の内周と嵌め合わされることで、位置検出用マグネット11の同軸も確保され、製造上の品質の向上が図れる。
図37は実施の形態1を示す図で、回転子樹脂組立100をコーキングにより軸1に組付けた回転子軸組立150の正面図である。
図1に示す回転子樹脂組立100は、回転子コア10の内径部に軸1が挿入され、回転子コア10の両端面の内径付近が凹となるように治具で押しつぶして(コーキングして)、軸1に組付けられる。
回転子コア10の両端面には、回転子コア外周から所定の距離内側に樹脂部17(図1参照)が形成されていることで、コーキングの際に、回転子コア10外周が軸方向に広がることが抑制され、製造上の品質の向上が図れる。
尚、軸1には、回転子樹脂組立100の両側の所定の位置に、Eリング(後述する)が組み付けられるEリング溝1aが形成されている。
図38は実施の形態1を示す図で、回転子軸組立150にEリング420と軸受410とを組付けた回転子200の正面図である。
回転子軸組立150の樹脂マグネット5と、位置検出用マグネット11とを着磁する。その後、軸1のEリング溝1aに二つのEリング420を組付け、Eリング420に当接するように軸受410が組付けられて、回転子200が完成する。
このように、回転子200に対し任意に軸1の長さ、位置を選択が可能なことから、製造上のコスト低減が可能となる。具体的には、軸1、回転子マグネット3、位置検出用マグネット11が熱可塑性樹脂で一体化される回転子では、軸長は、樹脂成形する際の金型開き量に制限され、また、位置の差に対しては、それぞれ金型が必要となるが、本実施の形態の回転子200ではそれらの制限から開放される。
実施の形態の一例として、ヨーク4の外周を波形状とし、外周に樹脂マグネット5を一体に成形した回転子マグネット3を用いたが、外周を円状とし、一部に凹形状または凸形状を設けたヨーク4の外周に樹脂マグネット5を成形し回転子マグネット3としてもよい。
また、焼結マグネットや成形した樹脂マグネットをヨーク4に接着し回転子マグネット3としてもよい。ヨーク4の外周形状や外周に配置されるマグネットの材質がいかなるものでも、本実施の形態と構成が同様であれば、本実施の形態に含まれることは言うまでもない。
図39乃至図41は実施の形態1を示す図で、図39はモールド電動機400の組立前の分解正面図、図40はブラケット440を軸受410に嵌合した状態のモールド電動機400の組立前の分解正面図、図41はモールド電動機400の正面図である。
図39乃至図41に示すように、モールド電動機400は、モールド固定子350(後述する)と、回転子200と、ブラケット440(後述する)とを備える。
モールド電動機400は、例えば、図40に示すように、先ずブラケット440を一方の軸受410(位置検出用マグネット11の反対側に設けられる)に嵌め合わせる。ブラケット440と一方の軸受410との嵌合は、すきま嵌めである。尚、図示はしないが、ブラケット440と一方の軸受410との間の軸方向の隙間に、波ワッシャーが設けられる。但し、モールド固定子350と他方の軸受410との間の軸方向の隙間に、波ワッシャーを設けてもよい。
その後、一方の軸受410にブラケット440が嵌め合わされた回転子200を、モールド固定子350に組付けることで、モールド電動機400が完成する。
図42乃至図44は実施の形態1を示す図で、図42はモールド固定子350の斜視図、図43はモールド固定子350の断面図、図44は固定子300の斜視図である。
本実施の形態の固定子300は、固定子鉄心301に絶縁部303が施され、ティース部に形成された絶縁部303にマグネットワイヤーが巻き回された後に、外部と接続されるリード線306を備える。さらに、駆動回路(後述する)が実装された基板310が、固定子300の結線側端部に設けられている。
固定子300が、BMC樹脂(Bulk Molding Compound、不飽和ポリエステル樹脂に各種の添加剤が加えられた塊粘土状の熱硬化性樹脂)等の熱硬化性樹脂(モールド樹脂351)でモールドされてモールド固定子350となる。
モールド固定子350には、モールド固定子350を成形する金型の芯金部で形成される開口部352の近傍にブラケット圧入部353が固定子内径よりも大きい径で形成されている。さらに、固定子300の内径の嵌合部と、片側の軸受ハウジング部354の嵌合部とを、ブラケット圧入部353と同軸が確保された金型の芯金部で形成することで、固定子300に対する回転子200の同軸が確保される。それにより、低騒音、かつ、低振動の品質の良いモールド電動機400が得られる。また、片側の軸受ハウジング部354を電気的に絶縁された樹脂のみで形成することにより、軸受410の電食耐力の向上が図れる。
図45乃至図48は実施の形態1を示す図で、図45はブラケット440の断面図、図46はブラケット440の分解斜視図、図47はブラケット440の斜視図、図48は軸受410に嵌合したブラケット440をモールド固定子350に圧入した状態を示す部分拡大図である。尚、図48はモールド電動機400の部分拡大図であり、以下の説明において同図の説明は割愛する。
図45乃至図48を参照しながら、ブラケット440の一例を説明する。ブラケット440は、ブラケット板金部442と、ブラケット樹脂部441とから構成される。ブラケット板金部442と、ブラケット樹脂部441とは、それぞれ別の工程で製作され、それらを組み合わせることにより構成される。
ブラケット440のブラケット板金部442はモールド固定子350への圧入部を、ブラケット440のブラケット樹脂部441は軸受ハウジング部を構成する。
このように、モールド固定子350の軸受ハウジング部と共に、ブラケット440の軸受ハウジング部となるブラケット樹脂部441を電気的に絶縁された樹脂のみで形成することにより、軸受410の電食耐力の向上が図れる。それにより、モールド電動機400の品質が向上する。
また、モールド固定子350と、ブラケット樹脂部441の軸受ハウジング部の外周の径を同じ寸法とした場合、軸受ハウジング部の外周に防振ゴムを取り付ける電動機では、同じ部品(防振ゴム)を使用することが可能なことから、製品コストの低減と、製造上の品質の向上が図れる。
図45に示すブラケット440のブラケット板金部442は、3箇所で折り曲げられている。
(1)ブラケット板金部442の外周部442aが、モールド固定子350のブラケット圧入部353に圧入される部分となる。
(2)ブラケット板金部442の外周部442aに対し90°曲げられた部分が、モールド固定子350のブラケット圧入部353への軸方向設置面442bとなる。
(3)さらに90°曲げられた内周部442cが、ブラケット樹脂部441の圧入部441a(図46参照)が圧入される部分となる。
(4)さらに90°曲げられてブラケット樹脂部441の軸方向設置面442dとなっている。
また、ブラケット板金部442の開口部442gは、ブラケット樹脂部441の軸受ハウジング部441bの外周より大きな径である。
ブラケット樹脂部441のブラケット板金部442の軸方向設置面441c(図46参照)に、周り止めとなる突起441dが形成されている。
ブラケット板金部442のブラケット樹脂部441の軸方向設置面442dに、ブラケット樹脂部441の周り止め用の突起441dが嵌め合わされる切り欠き442eが形成されている。
また、ブラケット樹脂部441の圧入部441aの径を固定子300の内径より大きくすること、かつ、ブラケット樹脂部441の圧入部441aの軸方向の長さを、ブラケット板金部442のモールド固定子350の軸方向設置面442bとブラケット樹脂部441の軸方向設置面442dとの間の距離と同一とする。それにより、ブラケット440がモールド固定子350に組付けられた際に、ブラケット樹脂部441は、ブラケット板金部442とモールド固定子350に挟持されて軸方向に動くことがなくなり、品質の向上が図れる。
図45乃至図48に示すブラケット440は、ブラケット板金部442が3箇所で折り曲げられて、ブラケット板金部442の外周部がモールド固定子350のブラケット圧入部353に圧入される部分となる。ブラケット板金部442の外周部442aに対し90°曲げられた部分が、ブラケット圧入部353の軸方向設置面442bとなり、さらに90°以下に曲げられ内壁(圧入部441a)が形成され、さらに曲げられブラケット圧入部353の軸方向の設置面に平行となる面(軸方向設置面442d)を形成している。
ブラケット板金部442の開口部には、ブラケット樹脂部441が組みつけられた際には、ブラケット樹脂部441に備える突起441dと組み合わされて周り止めとなる切り欠き442eを備えている。ブラケット板金部442とブラケット樹脂部441が一体化された際に、ブラケット樹脂部441の回転が防止出来ることから、低騒音、かつ、低振動となり品質の向上が図れる。
図49乃至図52は実施の形態1を示す図で、図49は変形例1のブラケット540の断面図、図50は変形例1のブラケット540の分解斜視図、図51は変形例1のブラケット540の斜視図、図52は軸受410に嵌合したブラケット540をモールド固定子350に圧入した状態を示す部分拡大図である。
図49乃至図52を参照しながら、変形例1のブラケット540について説明する。変形例1のブラケット540は、ブラケット樹脂部541の軸受ハウジング部541bの外周面をブラケット板金部542の圧入部541aとしている点が、ブラケット440(図45参照)と相違している。
変形例1のブラケット540は、圧入部541aよりも径の大きい鍔部541eの外周に、切欠き541fが形成されている。切欠き541fは、ブラケット樹脂部541がブラケット板金部542に圧入された状態で、ブラケット板金部542の平坦部542fと係合して周り止めとなる。
変形例1のブラケット540は、ブラケット板金部542と軸受410との間の浮遊容量が、許容範囲内でブラケット440よりも若干大きくなるものの(図52参照)、ブラケット板金部542の圧入部の軸方向距離を長く確保が可能なことから、圧入代を小さくすることが可能となり、ブラケット板金部542の歪を小さくすることが可能となり、製造上の品質の向上が図れる。
図53乃至図56は実施の形態1を示す図で、図53は変形例2のブラケット640の断面図、図54は変形例2のブラケット640の分解斜視図、図55は変形例2のブラケット640の斜視図、図56は軸受410に嵌合したブラケット640をモールド固定子350に圧入した状態を示す部分拡大図である。
変形例2のブラケット640は、ブラケット板金部642のブラケット樹脂部641の軸方向設置面642dを、ブラケット樹脂部641の圧入部642cよりさらに90°折り曲げて形成している点に特徴がある。
また、ブラケット板金部642には、周り止めとなる切り欠き642eが形成されている。ブラケット樹脂部641がブラケット板金部642に圧入されて組付けられた際に、ブラケット樹脂部641の周り止め突起641dが、ブラケット板金部642の切り欠き642eに嵌め合わされて周り止めとなる。
変形例1のブラケット540では、ブラケット板金部542のブラケット樹脂部541が圧入される部分の軸方向端面に軸方向にバリが発生する可能性もあるため、処理が必要となり製造上のコストが高くなることが想定される。しかし、変形例2のブラケット640では、軸方向設置面642dの先端において、中心に向かってバリが発生する。そのため、処理の必要がないため、製造上のコストの低減が可能である。
図57乃至図60は実施の形態1を示す図で、図57は変形例3のブラケット740の断面図、図58は変形例3のブラケット740の分解斜視図、図59は変形例3のブラケット740の斜視図、図60は軸受410に嵌合したブラケット740をモールド固定子350に圧入した状態を示す部分拡大図である。
変形例3のブラケット740は、ブラケット板金部742と、ブラケット樹脂部741の2種類の部品で構成される。そして、変形例3のブラケット740は、ブラケット板金部742にブラケット樹脂部741を一体に成形して形成される。
ブラケット板金部742はモールド固定子350への圧入部を、ブラケット樹脂部741は軸受ハウジング部を形成する。
このように、モールド固定子350の軸受ハウジング部と共に、ブラケット740の軸受ハウジング部となるブラケット樹脂部741を電気的に絶縁された樹脂のみで形成することにより、軸受410の電食耐力の向上が図れる。それにより、モールド電動機400の品質が向上する。
また、モールド固定子350と、ブラケット樹脂部741の軸受ハウジング部の外周の径を同じ寸法とした場合、軸受ハウジング部の外周に防振ゴムを取り付ける電動機では、同じ部品(防振ゴム)を使用することが可能なことから、製品コストの低減と、製造上の品質の向上が図れる。
図61、図62は実施の形態1を示す図で、図61は変形例4のブラケット840の断面図、図62は軸受410に嵌合したブラケット840をモールド固定子350に圧入した状態を示す部分拡大図である。
変形例4のブラケット840も、ブラケット板金部842と、ブラケット樹脂部841の2種類の部品で構成される。そして、変形例4のブラケット840も、ブラケット板金部842にブラケット樹脂部841を一体に成形して形成される。
ブラケット板金部842はモールド固定子350への圧入部を、ブラケット樹脂部841は軸受ハウジング部を形成する。
変形例4のブラケット840は、ブラケット板金部842のモールド固定子350のブラケット圧入部353(図43参照)への軸方向設置面842bまで、樹脂が充填されている点が、変形例3のブラケット740と異なる。
変形例4のブラケット840は、ブラケット樹脂部841の電動機内部側の端面を、ブラケット板金部842のモールド固定子350のブラケット圧入部353の軸方向の設置面と同一とすることで、ブラケット樹脂部841をブラケット板金部842と一体に成形する金型を、簡素にすることが可能なことから、製造上のコスト低減が可能となっている。
図63は実施の形態1を示す図で、モールド電動機400に内蔵された電動機内蔵駆動回路160の回路図である。図63を参照しながら、電動機内蔵駆動回路160について説明する。図63に示すように、モールド電動機400の外部に設けられた商用交流電源162から交流の電力が電動機内蔵駆動回路160に供給される。商用交流電源162から供給される交流電圧は整流回路163で直流電圧に変換される。整流回路163で変換された直流電圧は、インバータ主回路164で可変周波数の交流電圧に変換されてモールド電動機400に印加される。モールド電動機400はインバータ主回路164から供給される可変周波数の交流電力により駆動される。尚、整流回路163には商用交流電源162から印加される電圧を昇圧するチョッパー回路や整流した直流電圧を平滑にする平滑コンデンサなどを有する。
インバータ主回路164は3相ブリッジのインバータ回路であり、インバータ主回路164のスイッチング部はインバータ主素子となる6つのIGBT166a〜166f(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、単にトランジスタと定義する)と6つのフライホイルダイオード(FRD)としてシリコンカーバイド(SiC)を用いたSiC−SBD167a〜167f(ショットキーバリアダイオード、単にダイオードと定義する)を備えている。FRDであるSiC−SBD167a〜167fはIGBT166a〜166fが電流をONからOFFする時に生じる逆起電力を抑制する逆電流防止手段である。
尚、本実施の形態1ではIGBT166a〜166fとSiC−SBD167a〜167fは同一リードフレーム上に各チップが実装されエポキシ樹脂でモールドされてパッケージされたICモジュールとする。IGBT166a〜166fはシリコンを用いたIGBT(Si−IGBT)に代えてSiC、GaNを用いたIGBTとしてもよく、またIGBTに代えてSiもしくはSiC、GaNを用いたMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)などの他のスイッチング素子を使用してもよい。
整流回路163とインバータ主回路164の間には直列に接続された2つの分圧抵抗168a,168bが設けられており、この分圧抵抗168a,168bによる分圧回路にて高圧直流電圧を低圧化した電気信号をサンプリングし保持する直流電圧検出部168が設けられている。
また、モールド電動機400は、回転子200(図38)とモールド固定子350(図43)とを備えており、インバータ主回路164から供給される交流電力により回転子200が回転する。モールド固定子350の回転子200の近傍には、位置検出用マグネット11を検出するホールIC49bが設けられており、そのホールIC49bからの電気信号を処理して回転子200の位置情報に変換する回転子位置検出部170が設けられている。
回転子位置検出部170が検出する回転子200の位置情報は出力電圧演算部180に出力される。この出力電圧演算部180は電動機内蔵駆動回路160の外部から与えられる目標回転数Nの指令若しくは装置の運転条件の情報と回転子200の位置情報に基づいてモールド電動機400に加えられるべき最適なインバータ主回路164の出力電圧を演算する。出力電圧演算部180はその演算した出力電圧をPWM信号生成部190に出力する。PWMは、Pulse Width Modulationの略語である。
PWM信号生成部190は出力電圧演算部180から与えられた出力電圧となるようなPWM信号をインバータ主回路164のそれぞれのIGBT166a〜166fを駆動する主素子駆動回路164aに出力し、インバータ主回路164のIGBT166a〜166fはそれぞれ主素子駆動回路164aによってスイッチングされる。
尚、本実施の形態1ではインバータ主回路164を3相ブリッジとしているが単相など他のインバータ回路でもよい。
ここでワイドバンドギャップ半導体について説明する。ワイドバンドギャップ半導体はSiよりもバンドギャップが大きい半導体の総称であって、SiC−SBD167a〜167fに使用しているSiCはワイドバンドギャップ半導体の一つであり、その他には窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンドなどがある。さらにワイドバンドギャップ半導体、特にSiCはSiに比べて耐熱温度や絶縁破壊強度や熱伝導率が大きい。尚、本実施の形態1ではSiCをインバータ回路のFRDに用いる構成としているが、SiCに代えてその他のワイドバンドギャップ半導体を用いてもよい。
図64は実施の形態1を示す図で、モールド電動機400の製造工程図である。モールド電動機400は、以下に示す工程で製造される。
(1)ステップ1:ヨーク4を成形する。
(2)ステップ2:ヨーク4の外周に樹脂マグネット5を一体に成形する。
(3)ステップ3:樹脂マグネット5を脱磁する。
(4)ステップ4:樹脂マグネット5のランナー(ドーナツ状ランナー36、リブ状ランナー35)を切除する。併せて、位置検出用マグネット11を成形する。併せて、回転子コア10を製作する。
(5)ステップ5:回転子マグネットと位置検出用マグネット11と回転子コア10とを熱可塑性樹脂で一体に成形し回転子樹脂組立100を製作する。併せて、軸1の加工を行う。
(6)ステップ6:回転子樹脂組立100と軸1とをコーキングして組付ける。
(7)ステップ7:回転子マグネット3(樹脂マグネット5、位置検出用マグネット11)を着磁する。併せて、Eリング420、軸受410を製造する。
(8)ステップ8:軸1に軸受410、Eリング420を組付けて回転子200を製造する。併せて、固定子300、ブラケット440、他を製造する。
(9)ステップ9:モールド電動機400を組立てる。
図65、図66は実施の形態1を示す図で、図65は天井埋込型空気調和機900の側面を示す構成図、図66は天井埋込型空気調和機900の平面を示す構成図である。
図65、図66を参照しながら、本実施の形態のモールド電動機400を駆動源に用いる送風機を搭載した天井埋込型空気調和機900(空気調和機の一例)について説明する。
天井埋込型空気調和機900は、室内空気を冷媒と熱交換させて空調する室内側熱交換器908、室内側熱交換器908や冷媒配管からの結露水を一時貯留するドレンパン909、室内側熱交換器908に室内空気を送風する送風機935、送風機935用電源や制御装置という電装品を格納した制御ボックス919などを、本体ケーシング902内に内蔵している。
本体ケーシング902は、左右の側板、天板、前板、背板、および、下面後部の底板から中空の矩形箱状に形成されていて、天井933の空調機取付開口に設置されるようになっている。この本体ケーシング902は、側板に突設された保持用金具に吊下げ棒を介して天井裏に吊下げ保持される。
また、本体ケーシング902はケーシング内が通風経路となっていて仕切板903により送風用空間904と熱交換用空間905とに区画されている。
本体ケーシング902の前板にはそれぞれ吸込口を有するダクト接続部920が設けられ、これらのダクト接続部920に吸込ダクト922が連結されている。
一方、背板には吹出口921が形成されていて吹出ダクト923と連結されている。
送風用空間904に配備された送風機935は、両軸タイプの軸1を有するモールド電動機400と、軸1の両端に取り付けられたシロッコファンなどの送風ファン907と、この送風ファン907を格納するファンケーシング906とから構成されている。
ファンケーシング906はその吹出口912が仕切板903を貫いて工事用スペース911に開口するように配置され、底面に水抜き穴が穿設されている。水抜き穴は栓体により開閉可能に封止されている。そして、本体ケーシング902内の室内側熱交換器908と送風機935との間には、作業者の頭部M1および上半身M2を収容可能な広さの工事用スペース911が設けられている。前記した室内側熱交換器908の下方に設置されたドレンパン909は底板の上方に配備されている。
一方、本体ケーシング902における工事用スペース911の下方には、工事用スペース911と連通する開口部が形成され、送風用空間904の下方は開口部が形成されている。開口部も作業者の頭部M1および上半身M2を入れられる大きさに設定されていて、ヒンジ部回りに揺動する蓋板によって開閉可能に密閉されるようになっている。また、前記の制御ボックス919は工事用スペース911内で側板に設置されている。前記のドレンパン909の底部には図外の排水ホースなどと連結される流下口が設けられている。室内側熱交換器908につながる冷媒配管916と、例えば室外側熱交換器(図示省略)につながる他の冷媒配管917との接続部は、本体ケーシング902内におけるドレンパン909の上方に配置されている。それぞれの冷媒配管916は接続部側が高くドレンパン909側が低くなるよう傾斜して配置されている。冷媒配管917は制御ボックス919の上方に配置された配管カバーを介して側板に固定されている。
すなわち、以上に述べたファンケーシング906、送風ファン907、室内側熱交換器908、ドレンパン909、接続部、冷媒配管916、冷媒配管917、配管カバー、または、制御ボックス919(それぞれ、工事関連空調機器の例)は、本体ケーシング902内における工事用スペース911の周囲位置であって、作業者の手の届く範囲に配置されている。
天井埋込型空気調和機900は上記のように構成されている。通常の空調運転時は、冷凍サイクルを成す室外側熱交換器および冷媒絞り装置(いずれも図示省略)により冷熱または温熱を受けた冷媒が室内側熱交換器908に流入する。一方、モールド電動機400の起動で送風ファン907が駆動することにより、室内から吸込ダクト922を経て室内空気がファンケーシング906に吸い込まれる。このように吸い込まれた空気は吹出口912から吹き出され、工事用スペース911を通って熱交換用空間905へ至り、室内側熱交換器908で冷媒との熱交換により冷却または暖められたのち吹出口921から吹き出される。吹出口921を出た空気は吹出ダクト923から室内に戻されて室内を冷房または暖房する。