JP2013232453A - キャビネットの制震構造 - Google Patents

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【課題】制震性能を低下させることなく、重心位置の引き下げとコストダウンとを図ることができ、また内キャビネットの天井部の利用の自由度を向上させることができるキャビネットの制震構造を提供する。
【解決手段】フレーム部材を溶接またはコーナー部材により強固に接合した外キャビネット1の内部に、内キャビネット2を収納する。内キャビネット2の下部は外キャビネット1に粘弾性体13を備えた制震部材9を介して支持され、内キャビネット2の上部は外キャビネット1にねじ止め固定される。内キャビネット2の天井部の粘弾性体を無くしたにも拘わらず、天井部にも粘弾性体13を配置した従来構造と同様の制震効果を得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、地震の際にサーバ等の内部機器の震動による損傷を防止するためのキャビネットの制震構造に関するものである。
電気電子機器を収納したキャビネットが地震による震動を受けた際に内部機器を保護するために、キャビネットを外キャビネットと内キャビネットとの二重構造とし、内キャビネットの上部と下部を粘弾性体からなる制震部材を介して外キャビネットに支持させた制震構造が知られている。(特許文献1)
この特許文献1のキャビネットの制震構造は、粘弾性体を変形させることにより震動のエネルギを熱エネルギに換えて震動を減衰させるものである。内キャビネットの上下に配置された粘弾性体によって内キャビネットに加わる震動が緩和されるとともに、内キャビネットの揺れを早期に収束させることができる。
ところが、内キャビネットの天井部に制震部材を取付けるために重量のある内キャビネットの板状の天井部材や制震部材の取付金具が必要となるため、内キャビネットの重心が高くなることが避けられない。この結果、内キャビネットのばね定数が小さくなり、内キャビネットの剛性が低くなるという問題があった。
また、内キャビネットに板状の天井部材を取付けるため、キャビネットの天井部(外キャビネットの天井部)から内部に配線を引き込みたい場合や、換気扇を天井部に配置したい場合の障害となるという問題があった。さらに高価な制震部材を多数使用するため、コストが高くなるという問題もあった。
特開2007−211916号公報
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、制震性能を低下させることなく、重心位置の引き下げとコストダウンとを図ることができ、また内キャビネットの天井部の利用の自由度を向上させることができるキャビネットの制震構造を提供することである。
上記の課題を解決するためになされた本発明のキャビネットの制震構造は、フレーム部材を溶接またはコーナー部材により強固に接合した外キャビネットと、その内部に収納された内キャビネットとからなり、
内キャビネットの下部は外キャビネットに粘弾性体を備えた制震部材を介して支持されるとともに、内キャビネットの上部は外キャビネットに固定されることにより、キャビネット全体の重心が中央よりも低い位置にあり、
外キャビネットのばね定数は内キャビネットのばね定数より大きく、
内キャビネットの減衰定数は外キャビネットの減衰定数より大きいことを特徴とするものである。
なお請求項2のように、内キャビネットのマウントレールの上端を外キャビネットのフレーム部材に固定し、キャビネットの天井部のフレーム部材を共通化した構造とすることができる。
本発明のキャビネットの制震構造は、フレーム部材を溶接またはコーナー部材により強固に接合したばね定数の大きい外キャビネットの内部に、ばね定数が小さい内キャビネットを収納し、内キャビネットの下部は外キャビネットに粘弾性体を備えた制震部材を介して支持するが、内キャビネットの上部は外キャビネットに固定したものである。このような構造を採用することにより、天井部の制震部材をなくしたにもかかわらず、後記する実験データに示すように、従来品に比べて遜色のない制震性能を確保することができる。
このため、従来品よりもキャビネット全体の重心位置を下げることができ、天井部に板状の天井部材がないため天井部からの配線引き込みや、換気扇の取付も自由である。更に高価な制震部材の使用数を減少できるので、大幅なコストダウンが可能となる。
本発明の制震構造を用いたキャビネットの全体斜視図である。 本発明の制震構造を用いたキャビネットの正面図である。 下部の斜視図である。 上部の斜視図である。 奥行フレーム上の制震部材を示す斜視図である。 制震部材の斜視図である。 制震部材の断面図である。
以下に本発明の実施形態を示す。
図1は本発明の制震構造を用いたキャビネットの全体斜視図であり、1は外キャビネット、2はその内部に収納された内キャビネットである。外キャビネット1は12本のフレーム部材3を直方体状に組み立てた骨格構造を有するもので、従来と同様に天板4のほか、図示を略した側板、背板、扉などを取付けて構成されている。
この外キャビネット1は地震などの外力に対して強い強度を持たせる必要があるため、フレーム部材3どうしを溶接またはコーナー部材により強固に接合した構造となっている。また各フレーム部材3のうち少なくとも鉛直方向に配置される支柱フレームにはロール成型された板厚が厚い多角形中空フレームを用い、断面係数を大きくして剛性を高めている。このような構造であるため、外キャビネット1のばね定数は内キャビネット2よりも大きく、外力を受けた場合の減衰係数は小さくなっている。
内キャビネット2は支柱となる4本のマウントレール5によって構成されるものであり、4本のマウントレール5の下端部は、図1、図3に示されるように内キャビネット2の底板6の四隅に形成された固定部7にねじ止め固定されている。また4本のマウントレール5の上端は、図2、図4に示されるように外キャビネット1の天井部の奥行フレーム8に接続金具17を介してねじ止め固定されている。これらのねじ止め部は地震発生時には接合した部材どうしがこすれ合うことにより震動エネルギを熱エネルギに変換し、震動を吸収する震動吸収部としても機能する。なお、内キャビネット2の底板は必須ではなくフレーム部材同士をねじ止め固定枠構造であって、マウントレール5の下端部は枠構造にねじ止め固定したものであってもよい。天井部の奥行フレーム8は幅広に折曲形成されていて、外キャビネット1の奥行フレームであると同時にマウントレール5の上端が接続金具17を介して固定されるため内キャビネットの天井部の奥行フレームとしても機能する。
またこのように、内キャビネット2を構成するマウントレール5の上端を外キャビネット1の天井部の奥行フレーム8に固定することにより外キャビネット1と内キャビネット2の天井部を共通化し、重量の軽減とともにコストダウンを図っている。
なお、内キャビネット2を構成するマウントレール5は折曲形成したフレーム部材である。このため内キャビネット2のばね定数は外キャビネット1のばね定数よりも小さくなっている。
図3に示すように、内キャビネット2の底板6は外キャビネット1の底部の奥行フレーム8に固定されているが、内キャビネット2の底板6の下面には、図6、図7に示す粘弾性体13を備えた制震部材9が配置されている。図5は奥行フレーム8上の制震部材9を示す斜視図、図6は1個の制震部材9の斜視図、図7はその中央縦断面図である。この実施形態では6個の制震部材9が配置されているが、いずれも同一構造である。
図6、図7に示されるように、制震部材9はベース板10と、中間板11と、上板12と、それらの間に挟まれた上下2段の平板状の粘弾性体13とによって構成されている。ベース板10は取付金具15を介して外キャビネット1の天井部の奥行フレーム8に固定され、上板12の上面に内キャビネット2の底板6が支持される。震動により内キャビネット2が外キャビネット1に対して変位(震動)すると粘弾性体13が変形し、震動エネルギを吸収して震動を減衰させる。なお、中間板11の4辺にはストッパ14が取り付けられ、下部の粘弾性体13の過度の変形を防止している。また中間板11の両端部でストッパ14の外側には荷重支持部材16が設けられ、内キャビネットに係る荷重によって粘弾性体13が押し潰されることを防止している。
粘弾性体13の変位量はそのばね定数keによって決定され、ばね定数が小さいほど変位量が大きくなる。粘弾性体13のばね定数を決定する要素としてはその厚さH、配置個数N、面積A、せん断弾性係数Gがある。厚さHが大きくなるとばね定数は小さくなって変位量は大きくなり、配置個数Nが少なくなるとばね定数は小さくなって変位量は大きくなり、面積が小さくなるとばね定数は小さくなって変位量は大きくなる。またせん断弾性係数Gが小さく(柔らかく)なると、ばね定数は小さくなって変位量は大きくなる。これらの間には、ke=G・A・N/Hの関係式が成立する。また、想定される最大地震力Fに対する粘弾性体13の変位XはX=F/keとなるから、上記の特性を考慮して粘弾性体13を選択する。
前記したように外キャビネット1はもっとも剛性が高く、内キャビネット2はそれよりも剛性が低く、粘弾性体13の剛性はもっとも小さい。このため震災発生時における内キャビネット2の震動は粘弾性体13によって速やかに減衰され、後記する実験データに示すように、キャビネット全体として優れた減衰性能を得ることができる。
なお、ばね定数keと固有振動数fと質量mとの間にはf=(1/2π)(ke/m)1/2の関係が成立し、ばね定数keによって固有振動数fが変化する。従って想定する地震の振動数を考慮しつつ内キャビネット2に搭載される内部機器の質量を考慮してばね定数keを設定する。
このように構成された本発明のキャビネットの制震構造においては、内キャビネット2はその底面が粘弾性体13を備えた制震部材9を介して外キャビネット1の底面に支持されているが、内キャビネット2のマウントレール5の上端は外キャビネット1の天井部の奥行フレーム8にねじ等によって固定されている。このため内キャビネットの重心は内キャビネットの中央よりも低い位置にある。このように特許文献1の従来構造とは異なり、内キャビネット2の天井部に外キャビネットとの間に制震部材9が配置されていないため、そのための重量のある内キャビネットの板状の天井部材や制震部材9の取付金具が不要となり内キャビネット2の質量が大幅に低減される。このためf=ma(aは地震波に対する応答加速度、fはそれによる発生荷重)として計算される地震発生時に内キャビネット2が受ける荷重が小さくなる。また質量mの減少により、E=mv/2として算出される内キャビネット2に入力されるエネルギが減少する。このため、従来構造と比べてキャビネット全体の重心がキャビネットの中央よりも低い位置となり、後記する実験データに示す通り、内キャビネット2の天井部の制震部材9を無くしたにも拘わらず、制震部材9を配置した従来構造と同様の制震効果を得ることができる。
また本発明のキャビネットの制震構造においては、重量のある内キャビネット2の天井部材や制震部材9の取付金具が配置されていないため、内キャビネット2の重心位置が低くなる。これによって内キャビネット2のばね定数が大きくなり、破損しにくくなる。また内キャビネット2を構成するマウントレール5の上端に作用する力が低減するため、ねじ止めによる震動吸収部によっても震動エネルギを吸収可能である。
さらに本発明のキャビネットの制震構造においては、内キャビネット2の天井部材等の障害物がなくなるため、キャビネットの天井部からの配線が容易であり、またキャビネットの天井部に換気扇を配置することも可能となる。さらにキャビネットの上部空間に余裕ができるため、高さ方向の機器の設置スペースを増大させることもできるうえ、大幅なコストダウンを図ることができる。
次に、震動試験のデータを示す。試験は実施形態に示した通り内キャビネット2の下部のみに制震部材9を配置したものと、従来のように内キャビネット2の上下に制震部材9を配置したものと、全く制震部材9を配置しないものとの3種類を作成し、振動試験機に載せて前後方向に1000galの試験加速度を加えて行なった。各内キャビネット2の内部には、積載許容荷重の100%に相当する500kgのおもりを搭載した。なお、いずれも外キャビネット1の固有振動数は6Hz、内キャビネット2の固有振動数は2Hzであり、ばね定数は外キャビネット1の方が大きい。また減衰定数は外キャビネット1が2%、内キャビネット2が8%である。外キャビネット頂部の変形量と内キャビネット上部の加速度とを測定し、全く制震部材9を配置しないものを基準として表1に指数で表示した。
Figure 2013232453
表1に示すように、本発明のキャビネットの制震構造は従来構造に比較して、内部機器をフル搭載した状態で震動を受けた場合の加速度は同一であり、頂部の変形量もわずかに劣る程度に過ぎないことが確認された。
1 外キャビネット
2 内キャビネット
3 フレーム部材
4 天板
5 マウントレール
6 底板
7 固定部
8 奥行フレーム
9 制震部材
10 ベース板
11 中間板
12 上板
13 粘弾性体
14 ストッパ
15 取付金具
16 荷重支持部材
17 接続金具

Claims (2)

  1. フレーム部材を溶接またはコーナー部材により強固に接合した外キャビネットと、その内部に収納された内キャビネットとからなり、
    内キャビネットの下部は外キャビネットに粘弾性体を備えた制震部材を介して支持されるとともに、内キャビネットの上部は外キャビネットに固定されることによりキャビネット全体の重心が中央よりも低い位置にあり、
    外キャビネットのばね定数は内キャビネットのばね定数より大きく、
    内キャビネットの減衰定数は外キャビネットの減衰定数より大きいことを特徴とするキャビネットの制震構造。
  2. 内キャビネットのマウントレールの上端を外キャビネットのフレーム部材に固定し、キャビネットの天井部のフレーム部材を共通化したことを特徴とする請求項1記載のキャビネットの制震構造。
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