[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る車両用シート装置について図1〜図4を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印Wは車両幅方向を示している。
図1には、本発明の第1の実施形態に係る車両用シート装置10の全体構成が模式的な側面図にて示されている。この図に示されるように、車両用シート装置10は車体フロア12上に設けられている。
車体フロア12は、平板をプレスした複数のフロアパンが接合されることで形成されており、また、プレス精度のばらつきや自重等で極僅かな撓みが生じうる構成部であるが、図1ではこれを模式化して平板状に示している。また、車体フロア12において車両前後方向の中間部に配置されるセンタフロアパンは、その前端部がフロントフロアパンと直接又は間接的に結合され、後端部がリヤフロアパンと直接又は間接的に結合されている。このため、車体フロア12における前端部側及び後端部側では、車体フロア12における車両前後方向の中間部に比べて車両上下方向の寸法ばらつきを抑えやすい。
車体フロア12上には、車両前方側から順に第一クロスメンバ14、第二クロスメンバ16、及び第三クロスメンバ18が配設されており、これらは、車体下部の骨格部材を構成している。なお、図1は、模式図であるため、便宜上三本のクロスメンバ(フロアクロスメンバ)を図示しているが、クロスメンバは四本以上設定されてもよい。
図2には、車体フロア12上の一部が平面図にて示されている。図1及び図2に示されるように、第一クロスメンバ14、第二クロスメンバ16、及び第三クロスメンバ18は、車両幅方向を長手方向として配置され、長手方向の両端部が図示しないサイドメンバに結合されている。なお、前記サイドメンバは、車体下部の両サイド側に左右一対で設けられた骨格部材であり、略車両前後方向を長手方向として配置されている。
図1に示されるように、第一クロスメンバ14、第二クロスメンバ16、及び第三クロスメンバ18は、それぞれ下向きに開口するハット形状に形成され、開口縁から互いに離反する方向に延設されたフランジ14A、16A、18Aを備えている。フランジ14A、16A、18Aは、車体フロア12の上面にスポット溶接により結合されている。これにより、車体フロア12と第一クロスメンバ14とで閉断面部20が構成され、車体フロア12と第二クロスメンバ16とで閉断面部22が構成され、車体フロア12と第三クロスメンバ18とで閉断面部24が構成されている。閉断面部20、閉断面部22、及び閉断面部24の中には、嵩上げ部材(異音防止用の部材や荷重支持用の部材等)の配置が可能である。
第一クロスメンバ14、第二クロスメンバ16、及び第三クロスメンバ18の上方側(換言すれば、車体フロア12の上方側)には、レールとしてのスライドレール30(「ロアレール」ともいう)が車両前後方向を長手方向として配置されている。
スライドレール30の前端部(長手方向の一方側の端部)は、第一クロスメンバ14の上壁部14Bにボルト締結されている。すなわち、第一クロスメンバ14の上壁部14Bの下面には図示しないウエルドナットが予め固着されており、このウエルドナットに、スライドレール30を貫通したボルト26(図2参照)が螺合している。また、スライドレール30の後端部(長手方向の他方側の端部)は、第三クロスメンバ18の上壁部18Bにボルト締結されている。すなわち、第三クロスメンバ18の上壁部18Bの下面には図示しないウエルドナットが予め固着されており、このウエルドナットに、スライドレール30を貫通したボルト28(図2参照)が螺合している。これにより、スライドレール30は、長手方向の両端部が車体フロア12側に固定されている。
なお、図1では、スライドレール30の第一クロスメンバ14への締結部におけるボルト26(図2参照)及び前記ウエルドナットの図示は省略し、ボルト26(図2参照)に代えてボルト締結線を一点鎖線26Xで示している。また、スライドレール30の第三クロスメンバ18への締結部におけるボルト28(図2参照)及び前記ウエルドナットの図示は省略し、ボルト28(図2参照)に代えてボルト締結線を一点鎖線28Xで示している。
また、詳細図示を省略するが、スライドレール30の下方側には、第一クロスメンバ14の上面側及び第三クロスメンバ18の上面側にそれぞれ補強用のフロアクロスリインフォースが配置されている。また、スライドレール30の下面側には、第一クロスメンバ14の上方側及び第三クロスメンバ18の上方側のいずれか一方又は両方に補強用のロアレールリインフォース(レールブラケット)が配置されていてもよい。
図3には、図2の3−3線に沿った拡大断面に相当する縦断面図が示されている。図3に示されるように、スライドレール30は、その断面形状が上向きに開口するチャンネル形状とされている。スライドレール30の上部における左右両側にはTモール31が配設されている。
スライドレール30内には、可動部としてのアッパレール32が配置されている。アッパレール32は、スライドレール30に対してスライド可能に係合しており、スライドレール30の長手方向に沿って移動可能とされている。なお、車両の衝突時にアッパレール32を上方側へ変位させようとする上向き荷重fが作用した場合には、アッパレール32を介してスライドレール30にも上向き荷重fが作用することになる。
図1に示されるように、アッパレール32にはシート本体34の下部が固定されている。すなわち、シート本体34は、スライドレール30の上方側に配置され、アッパレール32を介してスライドレール30に支持されており、スライドレール30の長手方向に沿って移動可能とされている。
シート本体34は、アッパレール32が固定されて乗員着座用とされたシートクッション34Aを備えると共に、シートクッション34Aの後端部にはリクライニング装置(詳細図示省略)によって傾倒可能なシートバック34Bを備えている。前述したスライドレール30の前後長は、シートクッション34Aの前後長に対して数倍長く設定されている。このため、シート本体34は車両前後方向の広範囲に移動可能となるので、乗員拘束用のシートベルト装置36はシート本体34と共に移動するように設置されている。
シートベルト装置36は、シートクッション34Aにおけるシート幅方向外側の後端部に一端が固定されたウエビングベルト36Aを備えている。ウエビングベルト36Aは、着座乗員に装着される長尺帯状のベルトであり、リトラクタ36Bにおける筒状のスプールに基端側が巻き取られる。リトラクタ36Bは、シートバック34Bのシート幅方向外側の肩部に配設され、前記スプールを巻取方向へ回転させることで当該スプールにウエビングベルト36Aを基端側から巻き取らせる装置であり、シートベルト装置36の一部を構成する。また、シートベルト装置36は、ウエビングベルト36Aの中間部を摺動可能に挿通させたタングプレート36Cを備えると共に、シートクッション34Aにおけるシート幅方向外側の後端部に設けられてタングプレート36Cが着脱されるバックル装置36Dを備えている。
次に、スライドレール30の長手方向の中間部と第二クロスメンバ16との間に設けられた中間構造部40について説明する。なお、図1では、中間構造部40を模式化して二点鎖線のボックスで示している。
図3に示されるように、スライドレール30の長手方向の中間部にはレールブラケットとしてのロアレールリインフォース42(「ロアレールブラケット」ともいう。)が固定されている。具体的には、図2及び図3に示されるように、ロアレールリインフォース42の中央部は、スライドレール30の下面に重ね合わせられ、ロアレールリインフォース42とスライドレール30との重合部44を貫通するかしめピン46がかしめられることで、スライドレール30に固定されている。
ロアレールリインフォース42は、重合部44から左右両側に略水平に延出され、その左右両端末は、車両平面視でスライドレール30の左右両端を越える位置にまで至っている。図3に示されるように、ロアレールリインフォース42の左右両端部は、車体フロア12側に設けられた周辺部材(後述する段付きボルト50(フランジ部56)及びフロアクロスリインフォース60)に対して車両上下方向に隙間をもって配置されるフローティング部42Aとされている。このように、フローティング部42Aは、スライドレール30の長手方向に見てロアレールリインフォース42のスライドレール30への固定部に対して左右両側に形成されているが、その周辺部材との配置関係については詳細後述する。これらのフローティング部42Aには、貫通孔42Cが形成されている。
ロアレールリインフォース42の下方側には、フロアクロスリインフォース60(「アンダーボデーリインフォース」ともいう)が配置されている。フロアクロスリインフォース60は、第二クロスメンバ16の上壁部16Bに配置された補強部材である。ロアレールリインフォース42とフロアクロスリインフォース60との間には車両上下方向に隙間が設定されている。換言すれば、フロアクロスリインフォース60に対してロアレールリインフォース42のフローティング部42Aは上方側に隙間をもって配置されている。また、かしめピン46とフロアクロスリインフォース60との間にも車両上下方向に隙間が設定されている。
ロアレールリインフォース42及びかしめピン46と、フロアクロスリインフォース60との間の隙間は、着座乗員の体重によってスライドレール30が下方側に変位しても、ロアレールリインフォース42及びかしめピン46と、フロアクロスリインフォース60とが当接しない寸法に(異音が発生しないように)設定されている。
フロアクロスリインフォース60には、ロアレールリインフォース42の貫通孔42Cの下方側にボルト挿通孔60Cが貫通形成されている。また、第二クロスメンバ16(閉断面部22)における上壁部16Bには、フロアクロスリインフォース60のボルト挿通孔60Cの下方側にボルト挿通孔16Cが貫通形成されている。
第二クロスメンバ16における上壁部16Bの下面側には、ボルト挿通孔16Cの外周部にウエルドナット48(広義には「締結具」として把握される要素である。)が予め固着されている。ウエルドナット48には、フロア側部材としての段付きボルト50(広義には「締結具」として把握される要素である。)の雄ねじ部52Aが螺合されている。
段付きボルト50の雄ねじ部52Aは、段付きボルト50における軸線方向一端部側を構成する小径軸部52に形成されている。段付きボルト50の小径軸部52は、ロアレールリインフォース42の貫通孔42C、フロアクロスリインフォース60のボルト挿通孔60C、及び第二クロスメンバ16における上壁部16Bのボルト挿通孔16Cをこの順で上方側から貫通している。
段付きボルト50には、小径軸部52の上方側(先端側とは反対側)に連続して大径軸部54が形成されている。大径軸部54は、小径軸部52と同軸とされると共に小径軸部52よりも大径とされている。大径軸部54とウエルドナット48との間には、フロアクロスリインフォース60及び第二クロスメンバ16における上壁部16Bが挟まれて締め付けられている。つまり、大径軸部54は、ウエルドナット48との間でフロアクロスリインフォース60及び第二クロスメンバ16における上壁部16Bに締結荷重を作用させている。これにより、段付きボルト50は、閉断面部22に固定されている。
また、大径軸部54の一部は、前述したロアレールリインフォース42における貫通孔42Cの内周側に配置されている。大径軸部54の外周面とロアレールリインフォース42における貫通孔42Cの内周面は、非接触とされ、両者間には隙間が設定されている。
さらに、段付きボルト50には、大径軸部54の上端部から径方向外側に延設されたフランジ部56が形成されている。この段付きボルト50のフランジ部56に対して前述したロアレールリインフォース42のフローティング部42Aは下方側に隙間をもって配置されている。段付きボルト50のフランジ部56とロアレールリインフォース42のフローティング部42Aとの間の隙間は、衝突時の荷重によってロアレールリインフォース42のフローティング部42Aが上方側に変位した場合にフローティング部42Aが段付きボルト50のフランジ部56に当接するように設定されている。
また、段付きボルト50において、大径軸部54及びフランジ部56の上方側(小径軸部52の側とは反対側)には、ボルト頭部58が形成されている。ボルト頭部58、大径軸部54の上部及びフランジ部56は、スライドレール30の側方に配置されている。
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態に係る車両用シート装置10では、図1に示されるように、車体フロア12の上方側に配置されたスライドレール30は、長手方向の両端部が車体フロア12側に固定されており、シート本体34が固定されたアッパレール32は、スライドレール30に対してスライド可能に係合している。ここで、図3に示されるスライドレール30の長手方向の中間部にはロアレールリインフォース42が固定されている。ロアレールリインフォース42のフローティング部42Aは、車体フロア12側に設けられた周辺部材(段付きボルト50(フランジ部56)及びフロアクロスリインフォース60)に対して車両上下方向に隙間をもって配置されている。このため、車体フロア12に車両上下方向の歪みがあっても、スライドレール30の長手方向の中間部は、前記歪みの影響を受けないので、スライドレール30の湾曲が抑えられる。
補足説明すると、スライドレール(30)が長手方向の両端部及び中間部で車体フロア(12)側に固定される対比構造では、スライドレール(30)の長手方向の中間部が車体フロア(12)の歪みの影響を受けてしまう。そして、前述したように、車体フロア(12)における車両前後方向の中間部は、車体フロア(12)における前端部側及び後端部側に比べて車両上下方向の寸法ばらつきが大きくなりやすいので、前記対比構造では、スライドレール(30)の湾曲量が大きくなることもあり得る。これに対して、本実施形態に係る車両用シート装置10では、図1に示されるスライドレール30の長手方向の中間部が車体フロア12の歪みの影響を受けないので、そのような建付けの不具合を回避することができる。
このようにスライドレール30の湾曲が抑えられると、シート本体34を車両前後方向にスライドさせる際に必要とされる操作力の増加が抑えられる(スライド操作性の確保)。
一方、シート本体34に乗員(図示省略)が着座しかつウエビングベルト36Aを装着した状態で、車両用シート装置10を備えた車両が前面衝突すると、シート本体34には、シートベルト装置36を介して前向きの慣性力Fが働き、この慣性力Fによってシート後部を持ち上げる方向のモーメントMが作用する。このモーメントMによって、スライドレール30は、図1の二点鎖線で示されるように変形しようとし、図3に示されるアッパレール32及びスライドレール30(長手方向の中間部)には上向き荷重fが作用する。
このとき、ロアレールリインフォース42のフローティング部42Aは、上向き荷重fによってスライドレール30(長手方向の中間部)と共に上方側に変位し、図4に示されるように、段付きボルト50のフランジ部56に当接する。これにより、スライドレール30に作用する上向き荷重fの一部がロアレールリインフォース42を経由して段付きボルト50で支持される。このため、スライドレール30に作用する上向き荷重fは、第二クロスメンバ16側にも分散されるので、図1に示される第一クロスメンバ14側及び第三クロスメンバ18側での支持荷重が低減される。すなわち、前面衝突時にスライドレール30に作用する荷重は分担されて支持される。
これにより、例えば、ベルトアンカ試験(例えば、米国規格FMVSS210)で規定される荷重入力に耐え得る構造をも容易に設定することができる。
なお、本実施形態では、図4に示される上向き荷重fが所定値以上の場合には、ロアレールリインフォース42及び段付きボルト50のフランジ部56が塑性変形する。この塑性変形によって前面衝突時のエネルギーが吸収されるので、前面衝突時の衝撃が低減される。
ちなみに、本実施形態の構成では、前述したように、スライドレール30の長手方向の中間部に上向き荷重fが作用した場合、スライドレール30の長手方向の中間部が上方側に撓んで変位してからロアレールリインフォース42のフローティング部42Aが段付きボルト50のフランジ部56に当接する。このため、本実施形態の構成では、前面衝突時にスライドレール30の長手方向の中間部を支持する支持構造部に分担させる荷重を比較的確保しやすく、ロアレールリインフォース42のフローティング部42A及び段付きボルト50のフランジ部56を塑性変形させるための設定も比較的容易となっている。
また、図3に示されるように、本実施形態に係る車両用シート装置10では、ロアレールリインフォース42は、スライドレール30の長手方向に見てロアレールリインフォース42のスライドレール30への固定部に対して左右両側にフローティング部42Aを有しているので、前面衝突時の上向き荷重fによってロアレールリインフォース42が上方側に変位した場合には一対のフローティング部42Aが段付きボルト50に当接する。このため、前面衝突による荷重入力時には、一つのフローティング部42Aではなく一対のフローティング部42Aに対応する段付きボルト50で上向き荷重fを受けることができる。よって、ロアレールリインフォース42に入力された上向き荷重fが分散して支持される。
また、本実施形態に係る車両用シート装置10では、車体フロア12と第二クロスメンバ16とで閉断面部22が形成されており、段付きボルト50が閉断面部22に固定されている。このため、フローティング部42Aから段付きボルト50への荷重は、剛性が高い閉断面部22で支持される。また、段付きボルト50は、閉断面部22とは別体で構成されているので、フローティング部42Aからの荷重入力に対する曲げ剛性の設定が容易になっている。
詳細に説明すると、段付きボルト50は、雄ねじ部52Aがウエルドナット48に螺合され、大径軸部54がウエルドナット48との間で閉断面部22における上壁部16Bに締結荷重を作用させることで、閉断面部22における上壁部16Bに固定されている。また、段付きボルト50の大径軸部54の上端部からはフランジ部56が径方向外側に延設されており、フローティング部42Aは、段付きボルト50のフランジ部56に対して下方側に隙間をもって配置されている。このため、前面衝突時の上向き荷重fによってロアレールリインフォース42のフローティング部42Aが上方側に変位した場合には、フローティング部42Aが段付きボルト50のフランジ部56に当接する。そして、簡易な構成でありながら、前面衝突時にフローティング部42Aを支持する部材の曲げ剛性が容易に確保できる。
以上説明したように、本実施形態に係る車両用シート装置10によれば、車体フロア12側の歪みに起因するスライドレール30の湾曲を抑えながら、車両の衝突時における荷重分散性能を確保することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両用シート装置について、図5及び図6を用いて説明する。図5には、本発明の第2の実施形態に係る車両用シート装置70の要部が縦断面図(第1の実施形態における図3に相当する縦断面図)にて示されている。また、図6には、車両用シート装置70におけるレールブラケットとしてのロアレールリインフォース72(「ロアレールブラケット」ともいう。)の設置を説明するための斜視図が示されている。
なお、本実施形態の構成は、以下において第1の実施形態とは異なるものとして説明する点を除いて第1の実施形態と実質的に同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、適宜、同一符号を付して説明を省略する。
図5に示されるように、車体フロア66の上方側には、スライドレール30が配置されている。図5に示される車体フロア66は、第1の実施形態の車体フロア12(図3等参照)と同様の構成部であるが、便宜上符号を変えて示している。スライドレール30は、長手方向の両端部が車体フロア66側に固定されている。また、図5に示されるアッパレール32には、図示を省略するが、第1の実施形態と同様のシート本体34(図1参照)が固定されてスライドレール30の上方側に配置されている。
スライドレール30の長手方向の中間部にはロアレールリインフォース72が固定されている。具体的には、ロアレールリインフォース72の中央部は、スライドレール30の下面に重ね合わせられており、ロアレールリインフォース72とスライドレール30との重合部74を貫通するかしめピン76がかしめられることで、スライドレール30に固定されている。
ロアレールリインフォース72は、車両正面視の断面形状がハット形状とされている。すなわち、ロアレールリインフォース72は、かしめピン76が貫通する頂壁部72Aと、頂壁部72Aの左右両側の端部から垂下された左右一対の垂下部72Bと、左右一対の垂下部72Bの下端部から互いに離反する方向に延出された左右一対のフローティング部72Cと、を備えている。これにより、ロアレールリインフォース72は、スライドレール30の長手方向に見てスライドレール30への固定部に対して左右両側にフローティング部72Cを有している。
これに対して、第二クロスメンバ68の上壁部68Bには、ロアレールリインフォース72の垂下部72Bに対応してスリット68Dが形成されている。なお、第二クロスメンバ68は、スリット68Dが形成されている点を除いて、第1の実施形態における第二クロスメンバ16(図1及び図3参照)と実質的に同様の構成とされている。
図6に示されるように、第二クロスメンバ68の上壁部68Bに設定されたスリット68Dは、車両前後方向を長手方向として形成されている。スリット68Dの長手方向の前端部側は、幅広部68D1とされている。幅広部68D1は、ロアレールリインフォース72のフローティング部72Cが上方側から挿通可能な幅寸法に設定されている。また、スリット68Dにおいて幅広部68D1の車両後方側には幅狭部68D2が連続して形成されている。幅狭部68D2は、ロアレールリインフォース72のフローティング部72Cの車両幅方向寸法よりも小さい幅寸法で、かつロアレールリインフォース72の垂下部72Bの板厚よりも若干大きい幅寸法に設定されている。
ロアレールリインフォース72の設置時には、まず、フローティング部72C及び垂下部72Bの下部がスリット68Dの幅広部68D1に上方側から挿通される(矢印A参照)。その後、ロアレールリインフォース72が第二クロスメンバ68の上壁部68Bに対して相対的に車両後方側に移動させられる(矢印B参照)。これにより、ロアレールリインフォース72のフローティング部72Cは第二クロスメンバ68の上壁部68Bに対して車両上下方向に見てオーバーラップして配置される。
図5に示されるように、ロアレールリインフォース72のフローティング部72Cは、車体フロア66側に設けられた周辺部材(第二クロスメンバ68(上壁部68B)及び車体フロア66)に対して車両上下方向に隙間をもって配置されている。より詳細には、ロアレールリインフォース72のフローティング部72Cは、第二クロスメンバ68の上壁部68Bに対して下方側に隙間をもって配置されると共に、車体フロア66に対して上方側に隙間をもって配置されている。また、ロアレールリインフォース72のフローティング部72Cは、衝突時の荷重によって上方側に変位した場合にフロア側部材としての第二クロスメンバ68の上壁部68Bに当接するように設定されている。
以上説明した本実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用が得られ、車体フロア12側の歪みに起因するスライドレール30の湾曲を抑えながら、車両の衝突時における荷重分散性能を確保することができる。
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、図3及び図5に示されるスライドレール30の長手方向の中間部にフローティング部42A、72Cを備えたロアレールリインフォース42、72(レールブラケット)が一個固定されているが、レールの長手方向の中間部にフローティング部を備えたレールブラケットが複数固定されていてもよい。
また、上記実施形態では、ロアレールリインフォース42、72(レールブラケット)は、スライドレール30の長手方向に見てスライドレール30への固定部に対して左右両側にフローティング部42A、72Cを有しており、このような構成が好ましいが、レールブラケットのフローティング部は、対を成さずに一個だけ形成されてもよい。
また、上記第1の実施形態では、図4に示される上向き荷重fが所定値以上の場合には、ロアレールリインフォース42及び段付きボルト50のフランジ部56が塑性変形するように設定されているが、前面衝突に伴う上向き荷重fに対してロアレールリインフォース42及び段付きボルト50のフランジ部56を塑性変形させないような設定としてもよい。
また、上記実施形態の変形例として、車体フロアの下方側に上向きに開口する断面逆ハット形状のクロスメンバ(車体下部の骨格部材)が配置され、車体フロアと前記クロスメンバとで閉断面部が形成されてもよい。その場合、上記第1の実施形態の変形例として、前記閉断面部における上壁部(車体フロア)に図3に示される段付きボルト50(フロア側部材)が固定され、上記第2の実施形態の変形例として、前記閉断面部における上壁部(車体フロア)に図5に示されるスリット68Dに相当するスリットが形成される。
また、上記第1の実施形態では、図3に示される閉断面部22に固定された段付きボルト50がフロア側部材とされているが、フローティング部に隙間をもって配置されるフロア側部材は、段付きボルト50に代えて、例えば、閉断面部に溶接やボルト締結等で固定された屈曲板状のブラケット等のような他のフロア側部材であってもよい。変形例について補足説明すると、前記屈曲板状のブラケットは、例えば、図3の二個の段付きボルト50の取付位置付近にそれぞれ配置されて互いに対向する側を開口させた断面略コ字形状の部材であってもよく、前記ブラケットの下壁部がフロアクロスリインフォース60の上面に固定されてフローティング部42Aの下方側に隙間をもって配置されると共に、前記ブラケットの縦壁部がフローティング部42Aの貫通孔42Cを貫通し、さらに、前記ブラケットの上壁部がフローティング部42Aの上方側に隙間をもって(フランジ部56と同様の高さ位置に)配置されてもよい。また、前記ブラケットには、剛性確保の観点からビード等の補強構造が設けられてもよい。なお、前記ブラケットの上壁部とフローティング部42Aとを車両上下方向に見てオーバーラップさせるために、例えば、フローティング部42Aの貫通孔42Cに代えて、図6に示される第二クロスメンバ68の上壁部68Bのスリット68Dと同様のスリットを、図3に示されるスライドレール30の長手方向(図3の紙面に垂直な方向)に沿う方向を長手方向として、フローティング部42Aに形成してもよい。この場合、前記ブラケットの設置時には、まず、前記ブラケットの上壁部及び縦壁部の上部がスリットの幅広部に下方側から挿通され、その後に、前記ブラケットが車両前後方向に移動させられることによって前記ブラケットの縦壁部がスリットの幅狭部に配置されることになる。
また、上記第1の実施形態では、車体フロア12と第二クロスメンバ16(骨格部材)とで形成された閉断面部22に段付きボルト50(フロア側部材)が固定されているが、フローティング部に隙間をもって配置されるフロア側部材が車体フロアと車体下部の骨格部材とで形成された閉断面部以外に固定される構成も可能である。
また、上記実施形態では、図1に示されるスライドレール30が車両前後方向を長手方向として配置されているが、レールは、例えば、車両幅方向を長手方向として配置されたレール等のような他の方向を長手方向として配置されたレールであってもよい。
また、上記実施形態では、スライドレール30に対してアッパレール32がスライド可能に係合しているが、可動部は、例えば、レールに対してスライド可能に係合する非レール状のスライダ等のような他の可動部であってもよい。
さらに、請求項1に記載の「前記周辺部材を構成するフロア側部材」の概念には、上記実施形態のように、「前記周辺部材が複数存在していて(第1の実施形態では、段付きボルト50及びフロアクロスリインフォース60、第2の実施形態では、第二クロスメンバ68及び車体フロア66)それらの周辺部材のいずれかを構成するフロア側部材(第1の実施形態では、段付きボルト50、第2の実施形態では、第二クロスメンバ68)」のようなものが含まれる他、例えば、「前記周辺部材が一個のみであってその周辺部材を構成するフロア側部材」のようなものも含まれる。
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。