JP2013228437A - 眼鏡レンズ、眼鏡レンズの製造方法および処理液 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】レンズ基材と、前記レンズ基材の表面、または前記レンズ基材の表面に設けられた他の層に設けられた防汚層と、前記防汚層の表面にロジンを含む処理液を塗布して設けられたすべり防止層と、を含む、眼鏡レンズ。
【選択図】図1
Description
一方、眼鏡レンズは、眼鏡レンズを研削して眼鏡フレームに収める形状に加工(いわゆる玉型加工)されて使用される。玉型加工は、まず玉型加工機のチャックに眼鏡レンズの加工中心を吸着保持させる。或いは眼鏡レンズの加工中心を両側から押圧を加えて挟む。そして、摩擦力で眼鏡レンズを保持しながら眼鏡レンズの縁を砥石で研削する。しかしながら、撥水性および撥油性の防汚層は摩擦係数が著しく小さく、表面の滑りがよい。そのため、研削時に砥石の研削圧力によって眼鏡レンズがチャックに対して滑り、位置がずれてしまう軸ずれが生じ、正確な玉型加工ができないという問題があった。
そこで、特許文献1に記載されるように、レンズ表面に塩素化ポリプロピレン又は塩素化ポリエチレンからなる重合性の被膜を形成し、重合性の被膜上にレンズ加工用の両面テープを貼着することでチャックを固定し、レンズを保持させる玉型加工方法が知られている。
また、特許文献2には、乾燥したポリウレタンラテックス主体の組成物から成る仮コートを形成し、仮コート上に接着保持パッドなどを用いてレンズを保持させる玉型加工方法が記載されている。
また、本発明の一態様のすべり防止層は非重合性の膜であるため、眼鏡レンズとともに研削される。したがって、重合性の膜のように研削されずに残留することや、所定以上の面積で剥離して玉型加工機の配管に詰まることがない。したがって、すべり防止層が眼鏡レンズの研削の妨げとなることなく、眼鏡レンズを加工することができる。
さらに、ロジンは有機系極性溶媒に可溶であるため、玉型加工機から眼鏡レンズを取り外した後は、有機系極性溶媒で、例えば拭き取ることにより、簡単にすべり防止層を除去できる。したがって、軸ずれ防止テープや樹脂性の膜を剥がすといった後処理が不要になる。また、眼鏡レンズの表面に接着剤等が残留する、テープや膜を剥がす際に指紋等が付着するといった汚染を抑制することができる。
ここで、外周面とは、コバ面とも言い、本態様のレンズ基材を用いた眼鏡レンズにおいて、物体側の面および眼球側の面と交差する面を言う。
また、本態様の処理液をレンズに塗布してなるすべり防止層は非重合性の膜であるため、眼鏡レンズとともに研削される。したがって、重合性の膜のように研削されずに残留することや、所定以上の面積で剥離して玉型加工機の配管に詰まることがない。したがって、すべり防止層が眼鏡レンズの研削の妨げとなることがなく、眼鏡レンズを加工することができる。
図1に示すように、本実施形態における眼鏡レンズ100(以下、単にレンズ100ともいう)は、眼鏡用のプラスチックレンズであり、物体側の面が凸面101で、眼球側の面が凹面102のメニスカスレンズである。
レンズ100において、レンズ基材110の凸面101および凹面102には防汚層120が設けられ、防汚層120の表面にすべり防止層130が設けられている。また、本実施形態においては、コバ面113(外周面)に第2すべり防止層131が設けられている。
防汚層120は、フッ素系化合物、例えば、含フッ素シラン化合物を含む厚さ10nm以下の撥水性や撥油性を有する層である。
ロジン(松脂)は、マツ科の植物の樹脂に含まれる樹脂酸の混合物である。ロジンに含まれる樹脂酸の主なものは、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸が挙げられる。ロジンは、採取方法によって、前記した樹脂酸の含有量が異なり、ロジンとしては、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジンの3種に分類される。本実施形態においては、これらのロジンのいずれも用いることができる。
また、ロジンは、有機系極性溶媒に可溶かつ水に不溶な粉末である。ロジンは、有機系極性溶媒に可溶であるため、玉型加工後には、例えばアルコールなどを含ませた布で拭き取るだけで、簡単に取り除くことができ、後処理が容易である。また、レンズ100の玉型加工時には、研削によって生じる基材等の粉を除去するために水を用いるが、ロジンは水に不溶であるため、すべり防止層130が玉型加工中に溶けてなくなってしまうことがない。また、ロジンは天然樹脂であるため、取り扱いが容易である。
ここで、防汚層120との密着性は、拡張収縮法により防汚層120に対する処理液の動的後退接触角を測定することにより知ることができる。時間に対し、処理液の動的接触角が小さくなるほど、すべり防止層130と防汚層120との密着性が高くなる。フッ素系界面活性剤としては、処理液の動的接触角の最小値が10°以下となるものを用いることが好ましい。このようなフッ素系界面活性剤としては、オリゴマー型のものを用いることが好ましい。
ハードコート層は、例えば、オルガノポリシロキサンを主成分とする光硬化性シリコーン組成物、アクリル系紫外線硬化型モノマー組成物、SiO2、TiO2などの無機微粒子を有する無機微粒子含有熱硬化性組成物を用いて形成されることが好ましい。
反射防止層としては、例えば、多層からなる無機層が挙げられる。このような無機層としては、例えば、ハードコート層131側から順にSiO2層/ZrO2層/SiO2層/ZrO2層/SiO2層の5層構造や、SiO2層/TiO2層/SiO2層/TiO2層/SiO2層の5層構造がある。ただし、反射防止層は、有機層により構成されていてもよい。
図1に示すように、レンズ100を玉型加工機に保持する際には、レンズ100を玉型加工機のチャック2,3でレンズの光軸の両側からレンズ100を挟んで押圧する。ここで、レンズ100の凸面101側には、通常、傷防止と加工位置決めのためのレンズロックテープ4が貼着され、レンズ100の凸面101側のチャック3は、レンズロックテープ4を介してレンズ100表面を押圧している。そして、レンズ100をチャック2,3によって固定した状態で、眼鏡のフレーム形状のデータに基づいて砥石5を用いて玉型加工を行う。
これに対して、本実施形態のレンズ100では、最表面にすべり防止層130が設けられているため、チャック2,3に対して軸ずれすることなくレンズを保持して玉型加工ができる。
また、本実施形態の上記レンズ保持部材は、レンズロックテープ4と接する側に、くい込み歯を有している。くい込み歯は、レンズロックテープ4にくい込むので、レンズ加工時にレンズ100の保持をより確実にする。ただし、レンズ加工の際のレンズ100の回転速度や、砥石5とレンズ100との摩擦によって生じるトルクの大小に応じて、レンズ保持部材のくい込み歯を省略してもよいし、レンズ保持部材そのものを省略してもよい。なお、レンズ保持部材の構造は、例えば実開平6−24852号公報に記載されている構成を採用することができる。
レンズ100は、すべり防止層130を有機系極性溶媒を含ませた布等で拭きとることにより、最表面に防汚層120が設けられ、フレームに装着できる形状の完成レンズとなる。
すべり防止層130を重合性の膜で形成した場合、玉型加工終了後に重合性の膜を剥がす必要がある。重合性の膜を剥がす際には、膜の一部が剥がれずにレンズ100表面に残留したり、膜を剥がす際にレンズ100に指紋や皮脂がつくなど、レンズ100を汚染する可能性がある。また、従来のように軸ずれ防止テープを用いた場合には、接着剤がレンズ100に残留する可能性がある。しかしながら、本実施形態のレンズ100では、すべり防止層130を拭きとるだけでよいので、レンズ100を汚染することなく、簡単にすべり防止層130を除去できる。また、重合性の膜は、加工前の取扱い時に膜全体が防汚層から剥がれてしまい、玉型加工ができなくなる場合もある。これに対し、本実施形態のすべり防止層130は重合性の膜ではないので、部分的に剥離することはあっても膜全体が剥離することはない。なお、軸ずれ防止テープは、レンズロックテープ4よりも粘着力の強いテープである。防汚層120の表面に軸ずれ防止テープを貼り、さらに軸ずれ防止テープの表面にレンズロックテープ4を貼り付けることで、レンズ100の軸ずれを抑制する。
さらに、処理液におけるロジンの濃度を1質量%以上30質量%以下としたので、レンズ100を玉型加工機で軸ずれを起こすことなく保持して、正確に玉型加工を行うことができる。
また、処理液におけるフッ素系界面活性剤の濃度を0.01質量%以上1質量%以下としたので、処理液と防汚層120との密着性が十分となり、すべり防止層130を好適に設けることができる。
さらに、第2すべり防止層131をレンズ基材110のコバ面113に設けたので、レンズ100のコバ面113を持っても滑りにくく、搬送や取扱が容易である。
上記実施形態では、すべり防止層130および第2すべり防止層131を設けたが、第2すべり防止層131は設けなくてもよい。また、上記実施形態では、凸面101と凹面102の両方にすべり防止層130を設けたが、どちらか一方の面だけにすべり防止層130を設けてもよい。ただし、より確実にレンズ100の軸ずれを防止するためには、両方の面にすべり防止層130を設けることが好ましい。
(フッ素系界面活性剤の種類)
エタノールを主成分とする溶媒(日本アルコール販売株式会社製、ソルミックス(登録商標)AP−7)に各種フッ素系界面活性剤0.1質量%を添加した溶液を調製した。溶液をレンズに塗布し、接触角計(DM−700 協和界面科学株式会社製)を使用して、拡張収縮法により動的後退接触角を測定した。なお、フッ素系界面活性剤としては、以下のものを用いた。730FMは、710FLよりもフッ素含有量が少ない。
オリゴマー型フッ素系界面活性剤
710FL:株式会社ネオス製、フタージェント(登録商標)710FL
730FM:株式会社ネオス製、フタージェント730FM
A:フッ素系界面活性剤無添加
B:710FL添加
C:730FM添加
なお、EおよびF、GおよびHは、同じ条件で2度測定した結果を示す。
D:フッ素系界面活性剤無添加
EおよびF:710FL添加
GおよびH:730FM添加
(レンズの製造)
エタノールを主成分とする溶媒(日本アルコール販売株式会社製、ソルミックスAP−7)に、ロジン、フッ素系界面活性剤を添加し、表1および表2に示す処理液を調製した。
上記処理液を浸漬槽に入れ、等速引上げ装置にセットした。なお、浸漬槽はロジンの沈殿を防ぐため、絶えずマグネチックスターラーで攪拌した。
プライマー層、ハードコート層、反射防止層、および防汚層120を形成したレンズ100を治具に取り付け、10秒浸漬後、引上げ速度50mm/分で引き上げ、すべり防止層130のディッピングを行った。ディッピング後のレンズを加熱炉に入れ、50℃で30分間乾燥し、すべり防止層130を形成した。
すべり防止層130が形成されたレンズ100をレンズメータにセットし、処方に合わせて印点を打刻した。
ディッピング後のレンズ100の状態を目視観察することによって評価した。
A:ほぼレンズ全面が濡れる。
B:レンズ周縁部のみ弾く。
C:レンズ周縁部に加えて面内にも弾く部分がある。
本評価は、玉型加工機を用いてレンズ100を所定のフレーム形状に研削加工する際、チャック部(レンズを加工機の軸と固定している部位)とレンズ表面との間の滑りによって生ずる軸ズレ発生の有無を観察することによって行った。
実施例において、フッ素系界面活性剤を添加せず表1に示す処理液を調製した以外は、実施例と同様にレンズを製造し、実施例と同様に濡れ性および軸ずれを評価した。各比較例のロジン濃度は表1の通りである。結果を表1に示す。
・比較例5
すべり防止層を設けないレンズを準備し、上述の実施例と同様に濡れ性および軸ずれを評価した。結果を表1に示す。
実施例13〜21において、フッ素系界面活性剤の種類を変更し、表2に示す処理液を調製した以外は、実施例13〜21と同様にレンズ100を製造し、上述の方法で濡れ性および軸ずれを評価した。結果を表2に示す。
比較例1〜4は、処理液にフッ素系界面活性剤を添加しなかったので、レンズ面内にも処理液が弾かれる部分があり、すべり防止層を適切に形成することができなかった。そのため、すべり防止層のない比較例5と同程度に軸ずれが生じた。一方、フッ素系界面活性剤を添加した実施例1〜46における軸ずれは比較例1〜4の半分以下に抑えられた。
実施例13〜21において、フッ素系界面活性剤の種類を非オリゴマー型フッ素系界面活性剤に変更し、表2に示す処理液を調製した以外は、実施例1と同様にレンズを製造し、実施例13〜21と同様に濡れ性および軸ずれを評価した。結果を表3に示す。
非オリゴマー型フッ素系界面活性剤
222F:株式会社ネオス製、フタージェント222F
208G:株式会社ネオス製、フタージェント208G
実施例1において、フッ素系界面活性剤の代わりにフッ素を含有していない界面活性剤(スルホコハク酸ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて、表3に示す処理液を調整した以外は、実施例と同様にレンズを製造し、実施例と同様に濡れ性を評価した。結果を表3に示す。
また、表3の比較例6〜14に示すように、フッ素を含有していない界面活性剤を添加したロジン濃度10質量%の処理液においても、界面活性剤の濃度を1質量%まで高くしても、レンズ面内にも処理液が弾かれる部分があり、すべり防止層を適切に形成することができなかった。
Claims (8)
- レンズ基材と、
前記レンズ基材の表面、または前記レンズ基材の表面に設けられた他の層に設けられた防汚層と、
前記防汚層の表面にロジンを含む処理液を塗布して設けられたすべり防止層と、
を含む、眼鏡レンズ。 - 前記防汚層は、フッ素化合物を含み、
前記処理液は、フッ素系界面活性剤を含む、請求項1に記載の眼鏡レンズ。 - 前記処理液において、前記ロジンの濃度は1質量%以上30質量%以下である、請求項1または請求項2に記載の眼鏡レンズ。
- 前記処理液において、前記フッ素系界面活性剤の濃度は0.01質量%以上1質量%以下である、請求項2または請求項3に記載の眼鏡レンズ。
- 前記レンズ基材の外周面に前記処理液を塗布して設けられた第2すべり防止層をさらに含む、請求項1から請求項4のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
- レンズ基材の表面、または前記レンズ基材の表面に設けられた他の層の表面に防汚層を形成することと、
前記防汚層の表面にロジンを含む処理液を塗布してすべり防止層を形成することと、
前記すべり防止層が形成されたレンズ基材を保持して加工することと、
を含む、眼鏡レンズの製造方法。 - 1質量%以上30質量%以下の濃度のロジンと、
フッ素系界面活性剤と、
を含む、処理液。 - 前記フッ素系界面活性剤の濃度は0.01質量%以上1質量%以下である、請求項7に記載の処理液。
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