JP2009106826A - 保護コート膜の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】撥水・撥油性能を有する防汚膜が形成されたプラスチック眼鏡レンズの表面に、容易に塗膜することができると共に、透明度が高く、しかも除膜することが可能な安全性に優れた保護コート膜の形成方法を提供する。
【解決手段】撥水・撥油性能を有する防汚膜が形成されたプラスチック眼鏡レンズの表面に、エタノールと水との混合比が40:60程度である混合溶液中に、少なくともポリビニルアルコールを溶解した塗布溶液を、湿式法を用いて塗膜して、膜厚さが10μm程度の保護コート膜を形成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、プラスチック眼鏡レンズに好適に用いることができる保護コート膜の形成方法に関する。
プラスチック眼鏡レンズは、ガラスレンズに比べて軽量であり、成形性、加工性、染色性等に優れ、しかも割れにくく安全性も高いため、眼鏡レンズ分野において急速に普及し、その大部分を占めている。
プラスチック眼鏡レンズは、ガラスレンズに比べて傷が付き易いため、一般的にプラスチック眼鏡レンズの表面にハードコート膜を形成し、表面硬度を向上させている。また、表面反射を防止する目的でハードコート膜の上面に無機物質を蒸着した反射防止膜を成膜され、さらに最表面(反射防止膜の表面)にレンズ表面の撥水・撥油性能を付与する目的で防汚膜が形成される等の表面処理が施されている。
表面処理が施されたプラスチック眼鏡レンズは、通常、眼鏡の小売店等において、レンズの周縁を眼鏡フレームの枠に収める形状に砥石で研削する玉型加工等が行われて、眼鏡が完成する。このような玉型加工を含むレンズの取り扱い時には、打ちキズ等の発生による損傷を受け易い。
こうした不具合に対応するために、成形品の表面に保護コート膜として、均一で且つ剥離可能な粘着性樹脂塗膜と、非粘着性樹脂被膜とがこの順序で形成されたプラスチック成形品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平10−249981号公報
しかしながら、特許文献1に示される保護コート膜は、プラスチック成形品表面の損傷を防止することは可能であるが、粘着性樹脂塗膜と非粘着性樹脂被膜との2種類の被膜が、コーティング法を用いて重ねて形成されることから、厚さムラが発生し易く、部分的に白濁して透明度が損なわれ易い。また、それぞれの塗膜を形成するコーティング液の溶媒として有機溶媒が用いられるために、「有機溶剤中毒予防規則」、「PRTR法」および「消防法」等の法令および規制に従った安全面に対する設備や管理方法等の対応が必要であり、小売店での使用が大幅に制限される。
一方、最表面に防汚膜が施されたプラスチック眼鏡レンズは、表面における濡れ性が小さく(接触角が大きい)、保護コート膜用溶液を塗膜することが困難であると共に、摩擦係数が著しく小さく、レンズの取り扱い時に滑り易い等の不具合も存在する。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例に係る保護コート膜の形成方法は、撥水・撥油性能を有する防汚膜が形成されたプラスチック眼鏡レンズの表面に、エタノールと水との混合溶液中に少なくともポリビニルアルコールを溶解した塗布溶液を、湿式法を用いて塗膜することを特徴とする。
これによれば、撥水・撥油性能を有する防汚膜が形成されたプラスチック眼鏡レンズの表面に、エタノールと水との混合溶液中に少なくともポリビニルアルコールを溶解した塗布溶液を、湿式法を用いて塗膜することにより、濡れ性が低い防汚膜上に、透明度が高く、且つ必要に応じて除膜することが可能な保護コート膜を容易に形成し、その後の眼鏡フレームの枠入れ形状に合わせる玉型加工等の取り扱い時におけるレンズ面のキズの発生を防ぐことができる。また、眼鏡の小売店等において「有機溶剤中毒予防規則」、「PRTR法」等の法令および規制に従った設備や各種管理措置等に対応することなく、安全に保護コート膜を形成することができる。さらに、滑りやすい(摩擦係数が低い)防汚膜上に保護コート膜が形成されることにより、玉型加工の際にレンズが保持具からずれたり、取り扱い時に滑って落下させたりすることもなく、加工効率および取り扱い性が大幅に向上する。
なお、ここでの水は、脱イオン処理をしたイオン交換水レベルの純水のことを言う。
[適用例2]
上記適用例に係る保護コート膜の形成方法において、前記混合溶液のエタノールと水との混合比が40:60程度であることが好ましい。
これによれば、保護コート膜を形成する塗布溶液が、ポリビニルアルコールをエタノールと水との混合比が40:60程度の混合溶液中に混合されることにより、混合溶液中にポリビニルアルコールを溶解することができる。そして、その塗布溶液を用いて形成された保護コート膜は、高い透明性を有すると共に、容易に除膜することができる。また、この塗布溶液は、撥水・撥油性能の依存性がないことから保護コート膜の下層に位置する防汚膜の撥水・撥油性能を低下させない。さらに、塗布溶液は、速乾性を有することから作業性が向上する。
[適用例3]
上記適用例に係る保護コート膜の形成方法において、前記塗布溶液を塗膜して形成された前記保護コート膜の膜厚が、10μm程度であるのが好ましい。
これによれば、エタノールと水との混合溶液中にポリビニルアルコールが溶解した塗布溶液を、湿式法を用いて塗膜して形成された保護コート膜の膜厚が10μm程度であることにより、高い透明性を有し、取り扱い時におけるレンズ面のキズの発生を防ぐと共に、必要に応じて容易に除膜することができる。
本実施形態は、表面に撥水・撥油性を付与する性能を有する防汚膜が形成されたプラスチック眼鏡レンズ(以後、眼鏡レンズと表す)の最表面、すなわち防汚膜の表面に、キズ等による損傷を防ぐための保護コート膜の形成方法である。また、眼鏡の小売店等において、「有機溶剤中毒予防規則」、「PRTR法」等の法令および規制に従った設備や各種管理措置に対応することなく、安全に取り扱うことを可能にした保護コート膜の形成方法である。
なお、眼鏡レンズの最表面に形成される保護コート膜は、小売店等においてレンズの周縁を眼鏡フレームの枠に収める形状に砥石で研削する玉型加工等の取り扱い時に、レンズ面に落下キズや打ちキズ等の発生による損傷を防止するために設けられる。そして、加工が終了した段階で除膜される。したがって、保護コート膜には、膜剥れが発生せず、しかも容易に剥がすことができることが求められる。さらに、玉型加工する眼鏡レンズを装置に取り付ける際の加工基準となるアライメントマーク等を視認したり、レンズ度数を測定したりすることを可能とするためには、良好な透明性を有しているのが好ましい。
本実施形態において保護コート膜が形成される眼鏡レンズは、レンズ基材の両面(凸面および凹面)に、レンズ基材の表面から順にハードコート膜、反射防止膜、防汚膜が形成されている。これらの膜は、いずれも高い透明性を有している。
なお、防汚膜はプラスチックレンズ基材(以後、レンズ基材と表す)の表面に直接設けられている場合であってもよい。
レンズ基材の材質としては、重合性組成物を硬化した透明プラスチック樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)、ポリウレタン樹脂、チオウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
この内、好ましいレンズ基材として1.60以上の屈折率を有するポリイソシアネート化合物またはポリチオール化合物より成るチオウレタン系樹脂が挙げられる。チオウレタン系プラスチックレンズ基材の具体例としては、屈折率1.67のセイコースーパーソブリン(セイコーエプソン(株)製)生地が例示される。
レンズ基材は、例えば、テープモールド法等を用いて製造される。テープモールド法は、レンズの一方の面(凸面)を成形する成形型と、レンズの他方の面(凹面)を成形する成形型とを所定の間隔に対向配置し、2個の成形型の外周側面に粘着テープが巻き回された成形用モールド内に、原料組成物を注入した後、重合硬化されてレンズ基材が完成する。成形型の成形面には、所定の球面、回転対称非球面、トーリック面、累進面、あるいはこれらを合成した曲面等の形状が形成されている。
ハードコート膜は、レンズ基材の表面に、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン等の有機珪素化合物と、酸化チタンを含有する複合酸化物微粒子等を含むコーティング組成物を塗布して形成されている。塗布法としては、例えばディッピング法、スピンコート法、スプレー法等を用いることができる。塗布されたコーティング組成物は、温度が70℃〜130℃程度の熱風乾燥または遠赤外線照射等により硬化して形成される。ハードコート膜は、レンズ基材に耐擦傷性を付与すると共に、レンズ基材と反射防止膜の間に介在させることで、ハードコート膜の表面に形成される反射防止膜の密着性を良好にし、ハードコート膜の剥離を防止する機能を有する。
反射防止膜は、ハードコート膜の表面に、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層した誘電体多層膜で構成されている。例えば、ハードコート膜側より順に、SiO2(酸化ケイ素)、ZrO2(酸化ジルコニウム)、SiO2、ZrO2、SiO2より成る5層の誘電体多層膜である。各層の光学膜厚は、設計波長λを520nmとしてλ/4である。反射防止膜は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、または化学蒸着法(CVD法)等を用いて成膜して形成される。
防汚膜は、反射防止膜の表面に、フッ素含有シラン組成物より成る塗膜で形成されている。防汚膜を形成するコーティング組成物としては、フッ素含有シラン化合物を有機溶剤で希釈した防汚性処理液を塗布して形成される。塗布法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法等の湿式法を用いて形成される。
この防汚膜は、眼鏡レンズを使用するに際し、レンズ面に手垢、汗、化粧料等による汚れが付着し難く、しかも汚れを拭き取りやすくするために、防汚性能(撥水・撥油性能)を付与する機能を有する。
フッ素含有シラン化合物として、下記の一般式(1)で表されるフッ素含有シラン化合物(パーフルオロポリアルキレンエーテル変性シラン)を好ましく用いることができる。この具体例としては、「KY−130」(商品名、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
Figure 2009106826
但し、式中、Rは炭素原子数1〜8の一価の炭化水素基であり、Xは加水分解性基またはハロゲン原子である。nは0〜2の整数であり、mは1〜5の整数であり、bは2または3の整数を表す。
この一般式(1)で表されるフッ素含有シラン化合物は、大きい接触角(純水接触角108°)と、低い摩擦係数(静摩擦係数0.143)の特性を有する。すなわち、濡れ難く(濡れ性が小さい)、しかも滑り易い特性を有する。
また、フッ素含有シラン化合物は、前記一般式(1)で表されるフッ素含有シラン化合物に代えて下記の一般式(2)で表されるフッ素含有シラン化合物を用いることができる。この具体例としては、「オプツールDSX」(商品名、ダイキン工業(株)製)が挙げられる。
Figure 2009106826
但し、式中、hは1〜10の整数を表す。
この一般式(2)で表されるフッ素含有シラン化合物は、一般式(1)で表されるフッ素含有シラン化合物に比べて多少大きな接触角(純水接触角112°)と、多少高い摩擦係数(静摩擦係数0.202)の特性を有するものの、濡れ難さおよび滑り易さは、一般式(1)で表されるフッ素含有シラン化合物と同程度である。
なお、接触角および摩擦係数は、一般式(1),(2)に示すフッ素含有シラン化合物を含む防汚性処理液を用いて形成されたそれぞれの防汚膜に、接触角計(CA−D型、協和科学(株)製)を用いて液滴法により接触角を測定し、ポータブル摩擦計(HEIDONトライボギアミューズType:94iII、新東科学(株)製)を用いて摩擦係数を測定した。
こうしたレンズ基材の表面から順にハードコート膜、反射防止膜、防汚膜が形成された眼鏡レンズの表面、すなわち防汚膜の表面に、保護コート膜が形成される。
保護コート膜は、エタノールと水を混合した混合溶液に、ポリビニルアルコール(PVA)を溶解した塗布溶液を塗膜して形成される。ポリビニルアルコールは、水溶性高分子であり、部分けん化物は結晶化し難く水に容易に溶解するが、一旦、膜になると水に溶け難くなる性質を有している。また、廃棄時等に環境に負荷を与えない環境に優しい生分解性高分子でも有る。なお、混合溶液に用いる水とは、脱イオン処理をしたイオン交換水レベルの純水のことを言う。
この塗布溶液には、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤を添加することで、塗布面に対する接触角を小さくして、濡れ性をより大きくすることができる。一方、この塗布溶液は速乾性を有するので、それに対応した管理が必要である。
また、塗布溶液は、ポリビニルアルコールを溶解するエタノールと水との混合溶液の混合比を調整して用いられる。エタノールと水との好ましい混合比等については、後述する実施例に基づいて説明する。
保護コート膜は、こうした塗布溶液がディッピング法、スピンコート法、刷毛塗り法、スプレーコート法等の湿式法を用いて塗膜される。この内、眼鏡の小売店等においては、高価な装置を必要としない刷毛塗り法、スプレーコート法を用いるのが好ましい。
次に、本発明の実施形態に基づく実施例を説明する。
(実施例1)
エタノール(特級、関東化学(株)製)と水とを、40:60の混合比で混合した混合溶液中に、固形分濃度10.0%のポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール部分けん化型、平均分子量3100〜3900、和光純薬工業(株)製)を混合した後、60℃程度の温度に保持した状態で4時間程度攪拌して、エタノールと水から成る溶液中にポリビニルアルコールが溶解した調合溶液を得た。
そして、調合溶液中に、調合溶液の全体量に対する0.05%の界面活性剤L7001(東レ・ダウコーニング(株)製)を添加し、1時間程度攪拌して、保護コート膜形成用の塗布溶液を得た。
そして、得られた塗布溶液を、予めチオウレタン系プラスチックレンズ基材(商品名:セイコースーパーソブリン生地、屈折率1.67)の表面に、レンズ基材の表面から順に、ハードコート膜、反射防止膜、「KY−130」(商品名、信越化学工業(株)製)のフッ素含有シラン組成物より成る防汚膜が形成された眼鏡レンズの表面(防汚膜の表面)に、刷毛塗り法を用いて塗膜した。
塗布溶液の塗布方法は、眼鏡レンズの一方のレンズ面(例えば、凸面)上に、塗布溶液を4ml程度滴下して、その塗布溶液をレンズ面の全面に刷毛で塗り広げて塗膜した。塗膜の際、防汚膜の撥水作用による塗布溶液のハジキもなく防汚膜の表面に保護コート膜を塗布することができた。そして、塗布溶液が塗膜された眼鏡レンズを、室温環境下に10分間放置して自然乾燥を行った。その後、塗布溶液を同様な塗布方法で他方のレンズ面(凸面)にも塗膜して、防汚膜の表面に保護コート膜が塗膜されて形成された眼鏡レンズを得た。
なお、それぞれのレンズ面に塗布された塗布溶液は、10分間の自然乾燥中、塗布後5分程度で乾燥した。すなわち、塗布溶液は速乾性を有し、塗布溶液のハンドリング可能時間が5分程度である。したがって、これに対応した塗布作業および塗布溶液の管理が求められる。
眼鏡レンズに形成された保護コート膜は透明性を有していた。また、保護コート膜の膜厚を大塚電子(株)製の反射率分光膜厚計「FE−3000」を用いて測定したところ11.1μmであった。
また、その眼鏡レンズを玉型加工装置にセットして、レンズの周縁を眼鏡フレームの枠に収める形状に砥石で研削する外形研削、研削面のバフ研磨、穴開け加工等の玉型加工を行った。その結果、眼鏡レンズがレンズを保持するチャック等の保持具からずれることや、眼鏡レンズの取り扱い時に滑って落下させる等もなく、レンズ面に形成された保護コート膜の剥れも発生しなかった。
因みに形成された保護コート膜の摩擦係数を、ポータブル摩擦計(HEIDONトライボギアミューズType:94iII、新東科学(株)製)を用いてを測定したところ、0.50程度であった。
そして、玉型加工装置から取り外した眼鏡レンズは、クロスカット100マス試験により、保護コート膜の膜剥がし具合の確認を行った。
クロスカット100マス試験は、JIS規格K5600−5−6に準じた試験方法を用いて行った。その試験方法は、眼鏡レンズのレンズ表面を約1mm間隔で基盤目に100目クロスカットし、このクロスカットした部分に粘着テープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標))を強く貼り付けた後、レンズ表面から急速に粘着テープを剥がし、保護コート膜の剥れ状態を確認した。その結果、100目クロスカットされた保護コート膜の全てを剥がすことができた。
保護コート膜が剥がされて、レンズ面の表面に防汚膜が露出した眼鏡レンズは、キズの発生もなかった。また、防汚膜が露出したレンズ面に水滴等を滴下して防汚性能(撥水・撥油性能)を確認したが、撥水・撥油性能が低下することなく、当初の防汚性能が維持されていた。
(実施例2)
ポリビニルアルコールを溶解するエタノールと水との混合溶液の混合比が10:90の塗布溶液を用いた以外は、実施例1と同じレンズ基材、調合方法および塗布方法により、防汚膜の表面に保護コート膜を形成した。
しかし、一方のレンズ面(例えば、凸面)上に、塗布溶液が塗膜された眼鏡レンズは、室温環境下に放置して自然乾燥を行ったが、5分間程度では乾燥せず、さらに10分経過しても乾燥しなかった。そして、最終的に塗布溶液が乾燥した保護コート膜が形成されたのは、塗膜30分程度経過後であった。これはポリビニルアルコールを溶解する溶液中のエタノール比率が低い(水の比率が高い)ことによると推測される。
保護コート膜が形成された眼鏡レンズは、透明性を有し、保護コート膜の膜厚は10.5μmであった。
そして、実施例1と同様に、眼鏡レンズの玉型加工、クロスカット100マス試験、防汚性能確認を行った。その結果、実施例1と同様に、眼鏡レンズがレンズを保持するチャック等の保持具からずれることや、眼鏡レンズの取り扱い時に滑って落下させることはなく、レンズ面に形成された保護コート膜の剥れも発生しなかった。また、保護コート膜の剥がし具合、レンズ面のキズ発生およびレンズ面の表面に露出した防汚膜の防汚性能等の面においても良好な結果であった。
すなわち、実施例2で得られた眼鏡レンズは、保護コート膜を形成する塗布溶液の乾燥に長い時間を要する以外は、良好な結果であった。しかしながら、眼鏡レンズの両面(凸面および凹面)に保護コート膜を形成するのに、塗布溶液の乾燥のためのみに1時間程度を費やしてしまい、作業効率が大幅に低下する。
(実施例3)
保護コート膜を形成する塗布溶液を得るために、エタノール(特級、関東化学(株)製)と水とを、50:50の混合比で混合した混合溶液中に、実施例1と同様に、固形分濃度10.0%のポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール部分けん化型、平均分子量3100〜3900、和光純薬工業(株)製)を添加した後、60℃程度の温度に保持した状態で4時間程度攪拌した。しかし、この調合溶液は、ポリビニルアルコールがエタノールと水との混合液中に溶解せずに分散した状態であった。さらに、その混合溶液を60℃の温度に保持した状態で8時間程度攪拌したが、ポリビニルアルコールは溶解しなかった。すなわち、保護コート膜を形成する塗布溶液を得ることができなかった。これはポリビニルアルコールを溶解する溶液中のエタノール比率が高いことによると推測される。
以上の実施例1〜実施例3の結果から、ポリビニルアルコールを溶解するエタノールと水との混合溶液におけるエタノールの比率が、少なくとも50%以上の場合には、ポリビニルアルコールが混合溶液に溶解せず(実施例3)、エタノールの比率が少なくとも10%未満の場合には、塗布溶液の乾燥時間が長くなる(実施例2)。
したがって、実施例1に示すように、保護コート膜を形成する塗布溶液は、ポリビニルアルコールを溶解するエタノールと水との混合溶液の好ましい混合比が40:60程度であり、その塗布溶液を塗膜して形成された保護コート膜の好ましい膜厚は、略10μmである。
以上の実施例1〜実施例3において、レンズ基材の表面に、上記一般式(1)で表される「KY−130」(商品名、信越化学工業(株)製)のフッ素含有シラン組成物より成る防汚膜が形成されている場合で説明したが、上記一般式(2)で表される「オプツールDSX」(商品名、ダイキン工業(株)製)のフッ素含有シラン化合物を用いて形成された防汚膜であっても略同様の結果が得られた。
なお、この一般式(2)で表されるフッ素含有シラン化合物の静摩擦係数は、一般式(1)で表されるフッ素含有シラン化合物(0.143)に比べて多少高いものの、0.202程度の低い値であった。
また、安全面から眼鏡の小売店で使用するのは好ましくないが、参考に、エタノールと水の混合溶液に代えて、有機溶剤のトルエン(特級、関東化学(株)製)およびテトラヒドロフラン(特級、関東化学(株)製)を使用した2種類の塗布溶液の調合確認を行った。
塗布溶液の調合は、それぞれの有機溶剤中に、実施例1と同様に、有機溶剤に対する固形分濃度10.0%のポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール部分けん化型、平均分子量3100〜3900、和光純薬工業(株)製)を混合した後、8時間程度攪拌した。しかし、この調合溶液は、共にポリビニルアルコールが有機溶剤中に溶解せずに分散した状態であった。また、2種類の調合溶液は、共に速乾性を有し、ハンドリング可能時間が5分程度であった。
以上に説明した保護コート膜の形成方法によれば、撥水・撥油性能を有する防汚膜が形成されたプラスチック眼鏡レンズの表面に、エタノールと水との混合溶液中に少なくともポリビニルアルコールを溶解した塗布溶液を、湿式法を用いて塗膜することにより、濡れ性が低い防汚膜上に、透明度が高く、且つ必要に応じて除膜することが可能な保護コート膜を容易に形成し、その後の眼鏡フレームの枠入れ形状に合わせる玉型加工時に、レンズ面のキズの発生を防ぐことができる。また、眼鏡の小売店等において「有機溶剤中毒予防規則」、「PRTR法」等の法令および規制に従った設備や各種管理措置に対応することなく、安全に保護コート膜を形成することができる。さらに、滑りやすい(摩擦係数が低い)防汚膜上に保護コート膜が形成されることにより、玉型加工の際にレンズが保持具からずれたり、取り扱い時に滑って落下させたりすることもなく、加工効率および取り扱い性が大幅に向上する。
また、保護コート膜を形成する塗布溶液が、ポリビニルアルコールをエタノールと水との混合比が40:60程度の混合溶液中に混合されていることにより、ポリビニルアルコールを混合溶液中に溶解することができる。そして、その塗布溶液を湿式法を用いて塗膜して形成された保護コート膜の膜厚が10μm程度であることにより、高い透明性を有すると共に、容易に除膜することができる。さらに塗布溶液は、撥水・撥油性能の依存性がないことから保護コート膜の下層に位置する防汚膜の撥水・撥油性能を低下させない。さらにまた、塗布溶液は、速乾性を有することから作業性が向上する。
なお、以上の実施形態において、実施例1に示す保護コート膜の形成方法が、塗布溶液を刷毛塗り法を用いて塗布する場合で説明したが、刷毛塗り法に代えてディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法等の別の湿式法を用いて塗膜する場合であってもよい。但しその場合には、形成される保護コート膜の膜厚が10μm程度に形成されるような塗布条件で塗布することが必要である。

Claims (3)

  1. 撥水・撥油性能を有する防汚膜が形成されたプラスチック眼鏡レンズの表面に、
    エタノールと水との混合溶液中に少なくともポリビニルアルコールを溶解した塗布溶液を、
    湿式法を用いて塗膜することを特徴とする保護コート膜の形成方法。
  2. 請求項1に記載の保護コート膜の形成方法であって、
    前記混合溶液のエタノールと水との混合比が40:60程度であることを特徴とする保護コート膜の形成方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の保護コート膜の形成方法であって、
    前記塗布溶液を塗膜して形成された前記保護コート膜の膜厚が、10μm程度であることを特徴とする保護コート膜の形成方法。
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