以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、図1には、本発明に従う構造を有する樹脂製品の一実施形態として、自動車のリヤウインドウ用の樹脂ガラス10が、その部分断面形態において示されている。かかる図1から明らかなように、樹脂ガラス10は、樹脂基材12を有し、この樹脂基材12の両面には、アンダーコート層14が、それぞれ積層形成されている。また、それら各アンダーコート層14,14の樹脂基材12側とは反対側の面上には、トップコート層16が、それぞれ、更に積層形成されている。
より具体的には、樹脂基材12は、透明な平板形態を呈し、ポリカーボネートを用いて射出成形された樹脂成形品にて構成されている。なお、樹脂基材12は、ポリカーボネート製の樹脂成形品であれば、射出成形以外の手法で成形されたものであっても良い。
アンダーコート層14は、樹脂ガラス10に対して、紫外線耐性等に基づいた耐候性を付与すること等を目的として、樹脂基材12表面に積層されるもので、薄膜形態を呈している。このようなアンダーコート層14は、一般に、液状のアクリル樹脂やポリウレタン樹脂を樹脂基材12表面上に塗布して、塗膜を形成した後、加熱や紫外線照射等を行って、かかる塗膜を硬化させることにより形成される。なお、このようなアンダーコート層14は、形成工程の簡略化や形成に要する設備コストの低減等を図る上において、紫外線硬化膜にて構成されていることが、望ましい。また、アンダーコート層14は、上記例示以外の樹脂材料や硬化手法を採用して、形成することもできる。更に、かかるアンダーコート層14は、単層構造であっても、複数層が積層された複層構造であっても良い。
アンダーコート層14の厚さは、特に限定されるものではないものの、一般には、単層構造であっても、複層構造であっても、全体の厚さが8〜12μm程度とされる。何故なら、アンダーコート層14の厚さが、8μmよりも薄いと、余りに薄いために、樹脂ガラス10に対して十分な耐候性を付与することが困難となる恐れがあるからであり、また、アンダーコート層14の厚さを12μmよりも厚くしても、樹脂ガラス10の耐候性を更に向上させることは難しく、却って、材料費の無駄となる可能性があるからである。
トップコート層16は、アンダーコート層14側に位置する珪素化合物層18と、この珪素化合物層18上に積層された酸化チタン(TiO2)層20とを有している。そして、それら珪素化合物層18と酸化チタン層20とが、何れも、プラズマCVD法によって形成されたプラズマCVD層(プラズマCVD膜)にて構成されている。つまり、珪素化合物層18が、珪素化合物のプラズマCVD層からなる一方、酸化チタン層20が、酸化チタンのプラズマCVD層からなっている。また、ここでは、珪素化合物層18が、例えばSiO2からなっている。
このように、本実施形態では、硬度が高く、それによって十分な耐摩傷性(耐摩耗性と耐傷付き性)が発揮されるSiO2からなる珪素化合物層18がアンダーコート層14に積層形成されていることによって、樹脂ガラス10に対して、優れた耐摩傷性が付与されている。また、光触媒性に基づいて防曇性と防汚性とを発揮する酸化チタン層20が珪素化合物層18に積層形成されて、トップコート層16の表層部分が、かかる酸化チタン層20にて構成されていることにより、樹脂ガラス10の表面に対して、十分な防曇性と防汚性とが付与されている。
トップコート層16のアンダーコート層14側の基層部分を構成する珪素化合物層18の厚さは、何等、限定されるものではないものの、好ましくは1〜20μm程度とされる。これによって、トップコート層16の全体の厚さを無駄に厚くすることなく、樹脂ガラス10に対して、耐摩傷性を十分に付与することができる。
また、トップコート層16の表層部分を構成する酸化チタン層20の厚さも、特に限定されるものではないものの、5Å〜1μm程度とされていることが望ましい。何故なら、酸化チタン層20の厚さが5Åよりも薄いと、余りに薄いために、樹脂ガラス10の表面に対して、十分な防曇性と防汚性を付与することが困難となる恐れがあるからである。また、酸化チタン層20の厚さを1μmより厚くしても、樹脂ガラス10の表面の防曇性と防汚性の更なる向上が望まれず、却って材料の無駄となるだけでなく、トップコート層16のうちで、酸化チタン層20の占める割合が大きくなり、換言すれば、トップコート層16のうちで、高硬度の珪素化合物層18の占める割合が小さくなり、そのために、珪素化合物層18による樹脂ガラス10の耐摩傷性の向上効果が不充分なものとなる恐れがあるからである。
そして、本実施形態においては、特に、そのような珪素化合物層18と酸化チタン層20との間に、プラズマCVD層からなる中間層22が設けられている。即ち、トップコート層16が、珪素化合物層18と中間層22と酸化チタン層20とを有する複層構造とされているのである。
中間層22には、珪素化合物層18を構成するSiO2と酸化チタン層20を構成するTiO2とが混在している。つまり、中間層22は、プラズマCVD法によって形成された、SiO2からなる部分とTiO2からなる部分とを有するプラズマCVD層にて構成されているのである。そして、かかる中間層22にあっては、SiO2の含有率が、珪素化合物層18側から酸化チタン層20側に向かって徐々に小さくなっている一方、TiO2の含有率が、珪素化合物層18側から酸化チタン層20側に向かって徐々に大きくなっている。つまり、中間層22におけるSiO2の含有率とTiO2の含有率が、珪素化合物層18側から酸化チタン層20側に向かって、それぞれ傾斜的に変化しているのである。
このように、本実施形態では、上記の如き構造を有する中間層22が、SiO2からなる珪素化合物層18と酸化チタン層20との間に設けられていることによって、それら珪素化合物層18と酸化チタン層20との間に、明確な界面が無くされ得るようになっている。そして、その結果として、例えば、長期に亘る使用や周囲の熱環境の変化等によって、珪素化合物層18と酸化チタン層20との界面での剥離等の発生が可及的に防止されて、それら珪素化合物層18と酸化チタン層20との密着性が効果的に高められているのである。
なお、そのような中間層22の厚さも、何等限定されるものではないものの、好適には0.05〜0.5μm程度とされる。何故なら、中間層22の厚さが0.05μmよりも薄いと、余りに薄いために、珪素化合物層18と酸化チタン層20との間の密着性の向上効果が十分に望めなくなる恐れがあるからであり、また、中間層22の厚さが0.5μmよりも厚いと、トップコート層16全体の形成時間が冗長化し、そのために、樹脂ガラス10の生産性の低下や生産コストの高騰が生ずる可能性があるからである。
ところで、上記の如き構造を有する樹脂ガラス10は、例えば、以下の手順に従って製造される。
すなわち、先ず、ポリカーボネート製の樹脂基材12を射出成形等により成形する。その後、この樹脂基材12の両面に、アクリル樹脂やポリウレタン樹脂等の塗膜が熱硬化や紫外線硬化されたアンダーコート層14,14をそれぞれ積層形成して、中間製品24(図2参照)を得る。
次に、図2に示される如き構造を有するプラズマCVD装置26を用いて、中間製品24のアンダーコート層14,14上に、トップコート層16を更に積層形成する。
図2に示されるように、ここで用いられるプラズマCVD装置26は、平行平板方式を採用した従来のプラズマCVD装置と同様な基本構造を備えている。より具体的には、プラズマCVD装置26は、反応室としての真空チャンバ28を有している。この真空チャンバ28は、チャンバ本体30と蓋体32とを更に含んで構成されている。チャンバ本体30は、筒状の側壁部34と、かかる側壁部34の下側開口部を閉塞する下側底壁部36とを備えた有底筒状乃至は筐体状を呈している。蓋体32は、チャンバ本体30の上側開口部38の全体を覆蓋可能な大きさを有する平板にて構成されている。そして、かかる蓋体32が、チャンバ本体30の上側開口部38を覆蓋した状態で、図示しないロック機構にてロックされることによって、チャンバ本体30内が気密に密閉されるようになっている。
また、蓋体32の下面には、上側ホルダ40,40が、一体的に立設されている。それら上側ホルダ40,40には、支持突起42,42が一体的に突設されている。そして、チャンバ本体30内に収容されたカソード電極44が、かかる支持突起42,42にて支持されて、上側ホルダ40,40に保持されている。また、カソード電極44には、給電線46の一端が接続され、この給電線46の他端は、真空チャンバ28外に設置された高周波電源48に接続されている。
チャンバ本体30の下側底壁部36上には、下側ホルダ50,50が、一体的に立設されている。それら下側ホルダ50,50には、上側支持突起52,52と下側支持突起54,54とが、上下に離間して、それぞれ一体的に突設されている。そして、チャンバ本体30内に収容されたアノード電極56が、上側ホルダ40,40にて保持されたカソード電極44と上下方向に所定距離を隔てて対向した状態で、下側支持突起54,54にて支持されて、下側ホルダ50,50に保持されている。このアノード電極56は、アース接地されている。また、下側ホルダ50,50の上側支持突起52,52は、中間製品24を支持可能とされている。
チャンバ本体30の側壁部34の下端部における周上の一箇所には、排気パイプ58が、チャンバ本体30の内外を連通するように側壁部34を貫通して、設置されている。また、かかる排気パイプ58上には、真空ポンプ60が設けられている。そして、この真空ポンプ60の作動によって、チャンバ本体30内の気体が排気パイプ58を通じて外部に排出されて、チャンバ本体30が減圧されるようになっている。
また、側壁部34の上端側部位には、第一、第二及び第三の3個の導入パイプ62a,62b,62cが、側壁部34を貫通して、設置されている。そして、それら第一、第二及び第三導入パイプ62a,62b,62cにおいては、チャンバ本体30内に突入して開口する一端側開口部が、それぞれ、第一、第二、及び第三ガス導入口64a,64b,64cとされている。また、第一導入パイプ62aのチャンバ本体30外への延出側の他端部には、珪素化合物ガスを収容する第一ボンベ66aが接続されている。第二導入パイプ62bのチャンバ本体30外への延出側の他端部には、酸素ガスを収容する第二ボンベ66bが接続されている。第三導入パイプ62cのチャンバ本体30外への延出側の他端部には、チタン化合物ガスを収容する第三ボンベ66cが接続されている。更に、第一乃至第三ボンベ66a,66b,66cの第一乃至第三導入パイプ62a,62b,62cとの接続部には、第一乃至第三開閉バルブ68a,68b,68cが、それぞれ設けられている。
なお、後述するように、第一ボンベ66a内に収容される珪素化合物ガスは、珪素化合物層18を形成するための第一の成膜用ガスを構成する原料ガスとして利用されるものである。また、第二ボンベ66b内に収容される酸素ガスは、珪素化合物層18を形成するための第一の成膜用ガスを構成する反応ガスとして、更には、酸化チタン層20を形成するための第二の成膜用ガスを構成する反応ガスとして、それぞれ利用されるものである。第三ボンベ66c内に収容されるチタン化合物ガスは、酸化チタン層20を形成するための第二の成膜用ガスを構成する原料ガスとして利用されるものである。そして、それら珪素化合物ガスと酸素ガスとチタン化合物ガスは、第一乃至第三ボンベ66a,66b,66c内に、大気圧を超える圧力で収容されている。
第一ボンベ66a内に収容されて、第一の成膜用ガスのうちの原料ガスに利用される珪素化合物ガスを構成する珪素化合物は、特に限定されるものではなく、一般には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6 )等の無機珪素化合物が、それぞれ単独で、或いはそれらが組み合わされて使用される。また、かかる珪素化合物として、有機珪素化合物を使用することも可能である。そして、この有機珪素化合物としては、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン等のシロキサン類や、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、トリメトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシジメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメチルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のシラン類、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン類等が、例示される。そして、それらのうちの1種のものが単独で、或いは2種類以上が組み合わされて用いられる。なお、2種類以上の珪素化合物ガスを用いる場合には、それら複数種類の珪素化合物ガスを混合した状態で、一つの第一ボンベ66a内に収容しても良く、或いは2種類以上の珪素化合物ガスを、複数の第一ボンベ66a内に、それぞれ別個に収容しても良い。
また、第三ボンベ66c内に収容されて、第二の成膜用ガスのうちの原料ガスに利用されるチタン化合物ガスを構成するチタン化合物も、特に限定されるものではなく、プラズマCVD法において従来から用いられるものが、何れも使用可能である。即ち、かかるチタン化合物ガスを構成するチタン化合物としては、四塩化チタンや、チタンテトラi−プロオキシド、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラn−プロオキシド、チタンテトラn−ブトキシド、チタンテトラsec−ブトキシドのチタンアルコシキド等が、例示される。そして、それらのうちの1種のものが単独で、或いは2種類以上が組み合わされて用いられる。なお、2種類以上のチタン化合物ガスを用いる場合には、2種類以上の珪素化合物ガスを用いる場合と同様に、それら複数種類のチタン化合物ガスを混合した状態で、一つの第三ボンベ66c内に収容しても良く、或いは2種類以上のチタン化合物ガスを、複数の第三ボンベ66c内に、それぞれ別個に収容しても良い。
そして、かくの如き構造とされたプラズマCVD装置26を用いて、樹脂基材12の両面に積層されたアンダーコート層14,14上に、トップコート層16をそれぞれ積層形成する際には、先ず、図2に示されるように、樹脂基材12の両面にアンダーコート層14がそれぞれ積層形成されてなる中間製品24を、チャンバ本体30内に設けられた下側ホルダ50,50の上側支持突起52,52に支持させて、下側ホルダ50,50に保持させる。
次いで、上側開口部38を蓋体32にて覆蓋した後、図示しないロック機構にて、蓋体32をチャンバ本体30にロックする。これにより、真空チャンバ28内を気密に密閉する。そして、その後、真空ポンプ60を作動させて、真空チャンバ28内を減圧する。この減圧操作により、真空チャンバ28内の圧力を、例えば10-5〜10-3Pa程度とする。
そして、真空チャンバ28内の圧力が所定の値となったら、真空ポンプ60を作動させたままで、第一導入パイプ62aと第二導入パイプ62bとにそれぞれ接続された第一ボンベ66aの第一開閉バルブ68aと第二ボンベ66bの第二開閉バルブ68bとを各々開作動する。これにより、第一ボンベ66a内の珪素化合物ガスを、第一導入パイプ62a内に流通させて、第一ガス導入口64aから真空チャンバ28内に導入する。また、それと共に、第二ボンベ66b内の酸素ガスを、第二導入パイプ62b内に流通させて、第二ガス導入口64bから真空チャンバ28内に導入する。かくして、珪素化合物ガスと酸素ガスとからなる、珪素化合物層18を形成するための第一の成膜用ガスを真空チャンバ28内に導入して、充満させる。
真空チャンバ28内に珪素化合物ガスと酸素ガスが充満して、真空チャンバ28の内圧が所定の値となったら、高周波電源48をON作動して、真空チャンバ28内に配置されたカソード電極44に対して、高周波電流を給電線46を介して供給する。これにより、カソード電極44とアノード電極56との間で放電現象を惹起させて、真空チャンバ28内に充満した珪素化合物ガスと酸素ガスとをそれぞれプラズマ化し、珪素化合物ガスのプラズマと酸素ガスのプラズマとを、真空チャンバ28内に、比較的に低温の状態で発生させる。
そして、真空チャンバ28内の空間や中間製品24の表面上において、珪素化合物ガスのプラズマと酸素ガスのプラズマとの反応を生じさせて、SiO2を生成すると共に、それを中間製品24の全表面に堆積させる。以て、中間製品24のアンダーコート層14,14上に、SiO2からなる珪素化合物層18を、比較的に低い温度下で、しかも十分に速いスピードで積層形成する。
なお、本工程では、第一ボンベ66aの第一開閉バルブ68aと第二ボンベ66bの第二開閉バルブ68bの開作動が、その開放量を何等変化させることなく、一定の量において、予め設定された一定の時間だけ実施される。これによって、珪素化合物ガスと酸素ガスの真空チャンバ28内への単位時間当たりの導入量がそれぞれ一定の量とされて、真空チャンバ28内の珪素化合物ガス量と酸素ガス量の比率が一定の割合に維持されると共に、真空チャンバ28の内圧も、一定の値に維持される。
アンダーコート層14,14上に積層形成される珪素化合物層18の厚さは、珪素化合物ガスと酸素ガスとが、真空チャンバ28内に一定の導入量で導入される時間、つまり、珪素化合物ガスと酸素ガスとをプラズマCVD法によって反応させる時間に応じて、適宜に調節される。換言すれば、第一ボンベ66aの第一開閉バルブ68aと第二ボンベ66bの第二開閉バルブ68bの一定量での開作動時間は、予め設定された、珪素化合物層18の厚さの設定値等に応じて、適宜に決定されるのである。
そして、第一及び第二ボンベ66a,66bの第一及び第二開閉バルブ68a,68bを開作動してから予め設定された時間が経過した時点で、第一開閉バルブ68aを、その開放量が徐々に小さくなるように閉作動し、閉作動開始から予め設定された時間が経過したときに、第一開閉バルブ68aを完全に閉鎖する。即ち、ここでは、珪素化合物層18を形成するために真空チャンバ28内に導入される第一の成膜用ガスのうちの珪素化合物ガスの真空チャンバ28内への導入量を漸減させていき、やがてゼロとする。このように、珪素化合物ガスと酸素ガスの真空チャンバ28内への導入開始から予め設定された時間が経過して、真空チャンバ28内への珪素化合物ガスの導入量がゼロとなり、真空チャンバ28内に収容される珪素化合物ガスの量がゼロとなった時点で、SiO2の生成を終了するのである。
また、第一開閉バルブ68aの閉作動の開始と略同時に第三ボンベ66cの第三開閉バルブ68cを開作動する。このとき、第一開閉バルブ68aの開放量が小さくなるに従って、第三開閉バルブ68cの開放量が徐々に大きくなるように、第三開閉バルブ68cの開作動を行う。そして、第一開閉バルブ68aが完全に閉鎖された時点からは、第三開閉バルブ68cの開放量を増加させずに一定の量とする。これにより、真空チャンバ28内への珪素化合物ガスの導入量を減少させ始めてから、チタン化合物ガスの真空チャンバ28内への導入を開始すると共に、その導入量を徐々に増やしていく。そして、真空チャンバ28内への珪素化合物ガスの導入量がゼロとなってからは、チタン化合物ガスの真空チャンバ28内への単位時間当たりの導入量を一定とする。そうして、真空チャンバ28内の圧力を一定に維持する。
なお、第三開閉バルブ68cの開作動の開始のタイミング、つまり、真空チャンバ28内へのチタン化合物ガスの導入開始のタイミングは、必ずしも、第一開閉バルブ68aの閉作動の開始による真空チャンバ28内への珪素化合物ガスの導入量の減少開始と厳密に同時とされている必要はなく、かかる珪素化合物ガス導入量の減少開始のタイミングに対して、その前後に多少ずれていても良い。また、真空チャンバ28内への導入量が漸減される珪素化合物ガスの単位時間当たりの減少量と、真空チャンバ28内への導入量が漸増されるチタン化合物ガスの単位時間当たりの増加量は、それぞれ、特に限定されるところではないものの、好ましくは、真空チャンバ28内の圧力が一定に維持されるように、それら珪素化合物ガスの単位時間当たりの減少量とチタン化合物ガスの単位時間当たりの増加量が、それぞれ調節されることとなる。
一方、第二開閉バルブ68bは、第一開閉バルブ68aの閉作動や第三開閉バルブ68cの開作動が開始されてからも、一定の開放量での開作動状態が維持される。つまり、真空チャンバ28内への珪素化合物ガスやチタン化合物ガスの導入量の増減に拘わらず、酸素ガスを、真空チャンバ28内に、一定の量で導入し続けるのである。また、カソード電極44への高周波電流の供給も継続する。
かくして、チタン化合物ガスの真空チャンバ28内への導入の開始から、真空チャンバ28内への珪素化合物ガスの導入量がゼロとされて、真空チャンバ28内の珪素化合物ガスが完全に無くなるまでの間において、真空チャンバ28内の珪素化合物ガスと酸素ガスとチタン化合物ガスとを、それぞれプラズマ化して、それら珪素化合物ガスと酸素ガスとチタン化合物ガスのそれぞれのプラズマを、真空チャンバ28内に発生させる。このとき、真空チャンバ28内での珪素化合物ガスのプラズマの単位時間当たりの発生量は、真空チャンバ28内への珪素化合物ガスの導入量の減少に伴って漸減していくが、真空チャンバ28内でのチタン化合物ガスのプラズマの単位時間当たりの発生量は、真空チャンバ28内へのチタン化合物ガスの導入量の増加に伴って漸増していく。また、酸素ガスのプラズマの単位時間当たりの発生量は、一定量に維持される。
これにより、チタン化合物ガスの真空チャンバ28内への導入の開始から、真空チャンバ28内への珪素化合物ガスの導入量がゼロとなり、更に、真空チャンバ28内における珪素化合物ガスの量がゼロとなるまでの間、真空チャンバ28内の空間や中間製品24の表面上において、珪素化合物ガスのプラズマと酸素ガスのプラズマとの反応(珪素化合物ガスと酸素ガスのプラズマCVD法による反応)を実施して、SiO2を生成する一方、それと並行して、チタン化合物ガスのプラズマと酸素ガスのプラズマとの反応(チタン化合物ガスと酸素ガスのプラズマCVD法による反応)も実施して、TiO2を生成する。このとき、真空チャンバ28内への珪素化合物ガスの導入量の減少に伴って、SiO2の生成量が徐々に減少していく一方、真空チャンバ28内へのチタン化合物ガスの導入量の増加に伴って、TiO2の生成量が徐々に増加していく。
かくして、中間製品24のアンダーコート層14に積層形成された、SiO2からなる珪素化合物層18上に、SiO2とTiO2を堆積させ、以て、かかる珪素化合物層18上に、SiO2とTiO2とが混在してなる中間層22を、比較的に低い温度下で、しかも十分に速いスピードで積層形成する。
なお、上記したように、チタン化合物ガスの真空チャンバ28内への導入の開始から、真空チャンバ28内への珪素化合物ガスの導入量がゼロとされて、真空チャンバ28内における珪素化合物ガスの量がゼロとなるまでの間、SiO2の生成量が徐々に減少していく一方、TiO2の生成量が徐々に増加していく。それ故、中間層22は、珪素化合物層18側(アンダーコート層14側)からそれとは反対側に向かって、SiO2の含有率が徐々に減少する一方、TiO2の含有率が徐々に増加するものとなる。つまり、中間層22内でのSiO2の含有率とTiO2の含有率とが、珪素化合物層18側から酸化チタン層20側に向かって傾斜的に変化するようになっている。
そして、真空チャンバ28内への珪素化合物ガスの導入量がゼロとなって、真空チャンバ28内に酸素ガスとチタン化合物ガスだけが導入されるようになり、また、真空チャンバ28内の珪素化合物ガスの残存量がゼロとなってからは、真空チャンバ28内の空間や中間製品24の表面上(珪素化合物層18上)において、酸素ガスのプラズマとチタン化合物ガスのプラズマとの反応のみが進行する。
これによって、TiO2のみを生成すると共に、それを中間製品24に積層された中間層22上に堆積させる。そして、チタン化合物ガスの真空チャンバ28内への導入開始からの経過時間が、予め設定された時間に達した時点で、第一、第二、及び第三開閉バルブ68a,68b,68cを全て閉作動して、珪素化合物ガスと酸素ガスとチタン化合物ガスの真空チャンバ28内への導入を停止する。以て、かかる中間層22上に、所定厚さの酸化チタン層20を、比較的に低い温度下で、しかも十分に速いスピードで形成する。
かくして、中間製品24のアンダーコート層14上に、珪素化合物層18と中間層22と酸化チタン層20とが、その順番で積層されてなる複層構造を有するトップコート層16を積層形成する。そうして、図1に示される如き構造を備えた、目的とする樹脂ガラス10を得るのである。
なお、酸化チタン層20の厚さは、第一及び第三開閉バルブ68a,68cの上記の如き開閉作動により、チタン化合物ガスの真空チャンバ28内への単位時間当たりの導入量が一定とされ、且つ真空チャンバ28内の珪素化合物ガスの残存量がゼロとなったときから、チタン化合物ガスと酸素ガスの真空チャンバ28内への導入が停止されるまでの時間によって、適宜に調節されることとなる。換言すれば、第三ボンベ66cの第三開閉バルブ68cの一定の開放量での開作動時間は、予め設定された、酸化チタン層20の厚さの設定値等に応じて、適宜に決定されるのである。
このように、本実施形態では、樹脂基材12の表面にアンダーコート層14が積層形成されてなる中間製品24を一つの真空チャンバ28内に収容配置したままで、珪素化合物層18と酸化チタン層20とを有する複層構造のトップコート層16を、プラズマCVD法を利用した一連の操作によって、アンダーコート層14上に、形成することができる。
また、珪素化合物層18の形成操作から酸化チタン層20の形成操作に切り換える際に、珪素化合物層18の成膜用ガス(第一の成膜用ガス)が、真空チャンバ28内から排出されることがなく、それ故、かかる成膜用ガスを真空チャンバ28内から排出するための面倒で時間のかかる作業から開放され得る。
しかも、珪素化合物層18の成膜用ガスに反応ガスとして含まれる酸素ガスは、酸化チタン層20の形成操作において、酸化チタン層20の成膜用ガス(第二の成膜用ガス)に含まれる反応ガスとして、そのまま利用される。また、珪素化合物層18の成膜用ガスに原料ガスとして含まれる珪素化合物ガスは、珪素化合物層18の形成操作から酸化チタン層20の形成操作に切り換える際に、真空チャンバ28内への導入が停止されるものの、かかる導入停止後に真空チャンバ28内に残存する珪素化合物ガスが、その残存量がゼロとなるまで、珪素化合物層18と酸化チタン層20との間に介装される中間層22の形成のために有効利用される。それ故、珪素化合物層18の成膜用ガスが無駄に廃棄されることがない。
従って、本実施形態によれば、樹脂基材12のアンダーコート層14上に、耐摩傷性を発揮する珪素化合物層18と、防曇性及び防汚性を発揮する酸化チタン層20とを含むトップコート層16を、簡便な作業により、効率的に、しかも低コストに形成することができる。
また、本実施形態では、珪素化合物層18と酸化チタン層20との間に、それらを構成するSiO2とTiO2とが混在する中間層22を形成して、トップコート層16が構成されている。そのため、珪素化合物層18と酸化チタン層20との間に明確な界面が形成されず、それによって、珪素化合物層18と酸化チタン層20との界面での剥離等の発生が可及的に防止され、以て、それら珪素化合物層18と酸化チタン層20との密着性が効果的に高められ得るのである。
そして、それらの結果として、本実施形態によれば、耐摩傷性と防曇性と防汚性とにおいて優れた特性を、使用環境の変化等にも拘わらず、より長期に亘って安定的に発揮される樹脂ガラス10を、簡便な作業により、効率的に、しかも低コストに得ることができるのである。
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
先ず、市販のポリカーボネート樹脂を用いて、公知の射出成形を行って、縦×横×厚さが100×100×5mmの矩形平板からなる2個の透明な樹脂基材を得た。
次いで、それら2個の樹脂基材のそれぞれの表面の全面に、市販のアクリル樹脂を塗布し、これに紫外線を照射して硬化させた。これにより、2個の樹脂基材のそれぞれの表面の全面に、アクリル樹脂の塗膜からなるアンダーコート層を形成した。それら2個の樹脂基材表面上のアンダーコート層の厚さは、何れも10μmとした。
そして、表面にアンダーコート層が形成された2個の樹脂基材のうちの1個を、図2に示される如き構造を有するプラズマCVD装置の真空チャンバ内に収容した後、真空チャンバ内を真空状態とした。このときの真空チャンバの内圧を10-4Paとした。
その後、真空チャンバ内に、珪素化合物ガスたるモノシランガスと酸素ガスとを、単位時間当たりの導入量が一定となるように導入して、充満させた後、高周波電源からカソード電極に高周波電流を供給し、酸素ガスのプラズマとモノシランガスのプラズマを発生させて、それらのプラズマガスを反応させることにより、アンダーコート層上に、SiO2からなる珪素化合物層を形成した。なお、この珪素化合物層の形成操作を、30秒間、継続して実施した。また、真空チャンバ内へのモノシランガスの導入量は30ml/sec、真空チャンバ内への酸素ガスの導入量は40ml/secとした。更に、高周波電源の出力値を2000Wとした。かくして形成された珪素化合物層の厚さは0.5μmであった。
そして、酸素ガスとモノシランガスの真空チャンバ内への導入の開始(珪素化合物層の形成操作の開始)から30秒経過した後、モノシランガスの真空チャンバ内への単位時間当たり導入量を徐々に減少させる一方、チタン化合物ガスとしてのチタンテトラi−プロオキシドガスを、真空チャンバ内に、単位時間当たりの導入量が徐々に増加するように導入した。酸素ガスは、珪素化合物層の形成時と同じ単位時間当たりの導入量で、継続的に導入した。
そして、モノシランガスと酸素ガスとチタンテトラi−プロオキシドガスとを真空チャンバ内に導入している間、高周波電源の出力値を2000Wとしたままで、カソード電極に高周波電流を継続的に供給することにより、モノシランガスと酸素ガスとチタンテトラi−プロオキシドガスをそれぞれプラズマ化して、モノシランガスのプラズマと酸素ガスのプラズマとを反応させる一方、それと並行して、チタンテトラi−プロオキシドガスのプラズマと酸素ガスのプラズマとを反応させた。これにより、珪素化合物層上に、SiO2とTiO2とが混在する中間層22を形成した。なお、真空チャンバ内へのモノシランガスの導入量は30ml/secだけ減少するようにした。真空チャンバ内へのチタンテトラi−プロオキシドガスの導入量は50ml/secだけ増加するようにした。真空チャンバ内への酸素ガスの導入量は40ml/secとした。かくして形成された中間層の厚さは0.5μmであった。
引き続き、モノシランガスの真空チャンバ内への導入量の減量開始から30秒後に、モノシランガスの真空チャンバ内への導入を停止させる一方、チタンテトラi−プロオキシドガスの真空チャンバ内への単位時間当たりの導入量を一定とした。また、モノシランガスの真空チャンバ内への導入停止後も、酸素ガスは、単位時間当たりに一定の導入量で、継続的に導入した。
そして、チタンテトラi−プロオキシドガスと酸素ガスとを真空チャンバ内に導入している間、高周波電源の出力値を2000Wとしたままで、カソード電極に高周波電流を継続的に供給して、チタンテトラi−プロオキシドガスのプラズマと酸素ガスのプラズマとを発生させて、それらのプラズマガスを反応させることにより、中間層上に、酸化チタン(TiO2)層を形成した。この酸化チタン層の形成操作を、60秒間、継続して実施した。なお、真空チャンバ内へのチタンテトラi−プロオキシドガスの導入量は50ml/secとし、真空チャンバ内への酸素ガスの導入量は40ml/secとした。また、形成された酸化チタン層の厚さは1μmであった。
かくして、図1に示されるように、ポリカーボネート製の樹脂基材の表面にアンダーコート層が形成されると共に、SiO2からなる珪素化合物層と、SiO2とTiO2が混在する中間層と、酸化チタン層の三層構造を有するトップコート層が、アンダーコート層上に積層形成されてなる透明な樹脂ガラスを得た。そして、この樹脂ガラスを試験例1とした。
一方、比較のために、表面にアンダーコート層が形成された、残りの1個の樹脂基材を、試験例1の樹脂ガラスの製造の際に用いられたプラズマCVD装置の真空チャンバ内に収容した後、真空チャンバ内を真空状態とした。このときの真空チャンバの内圧を10-4Paとした。
その後、真空チャンバ内に、酸素ガスとモノシランガスとを、単位時間当たりの導入量が一定となるように導入して、充満させた後、高周波電源からカソード電極に高周波電流を供給し、酸素ガスのプラズマとモノシランガスのプラズマを発生させて、それらのプラズマガスを反応させることにより、アンダーコート層上に、SiO2からなる珪素化合物層を形成した。なお、この珪素化合物層の形成操作を、30秒間、継続して実施した。このとき、真空チャンバ内へのモノシランガスの導入量は30ml/secとし、真空チャンバ内への酸素ガスの導入量は40ml/secとした。また、高周波電源の出力値を2000Wとした。形成された珪素化合物層の厚さは0.5μmであった。
次に、酸素ガスとモノシランガスの真空チャンバ内への導入開始(珪素化合物層の形成開始)から30秒後に、酸素ガスとモノシランガスの真空チャンバ内への導入を停止し、その後、真空ポンプの作動により、真空チャンバ内に残存する酸素ガスとモノシランガスとを、全て、真空チャンバ内から排出した。
その後、内圧が10-4Paとされた真空チャンバ内に、チタンテトラi−プロオキシドガスと酸素ガスとを、単位時間当たりの導入量が一定となるように導入して、充満させた後、高周波電源からカソード電極に高周波電流を供給し、チタンテトラi−プロオキシドガスのプラズマと酸素ガスのプラズマを発生させて、それらのプラズマガスを反応させることにより、珪素化合物層上に酸化チタン層を積層形成した。なお、この酸化チタン層の形成操作を、30秒間、継続して実施した。また、真空チャンバ内へのチタンテトラi−プロオキシドガスの導入量は30ml/sec、真空チャンバ内への酸素ガスの導入量は40ml/secとした。更に、高周波電源の出力値を2000Wとした。かくして形成された酸化チタン層の厚さは0.5μmであった。
かくして、ポリカーボネート製の樹脂基材の表面にアンダーコート層が形成されると共に、SiO2からなる珪素化合物層と酸化チタン層の二層構造を有するトップコート層が、アンダーコート層上に積層形成されてなる透明な樹脂ガラスを得た。この樹脂ガラスを試験例2とした。
そして、上記のようにして得られた試験例1及び試験例2の2種類の透明な樹脂ガラスを用いて、各樹脂ガラスの耐摩耗性と、トップコート層を構成する珪素化合物層と酸化チタン層との間の密着性とに関する評価試験を以下のようにして実施した。その結果を、下記表1に示す。
<耐摩耗性試験>
JIS R3211に準拠したテーバー摩耗試験の実施前後におけるヘイズ値の差:ΔHを、JIS R3212に基づいて測定した。そして、その測定値:ΔHが2.0%以下のものを、耐摩耗性に優れたものとして、評価結果を○で示し、ΔHが2.0%を超えるものを、耐摩耗性に劣るものとして、評価結果を×で示した。なお、テーバー摩耗試験の実施に際しては、型番:CS−10F(テーバー社製)の摩耗輪を使用した。また、ヘイズ値の測定には、ヘイズ値測定機[型番:HZ−2P(スガ試験機株式会社製)]を使用した。ここで、ΔHの値が2.0%以下のものの評価結果を○としたのは、以下の理由による。即ち、自動車用のフロントガラスに使用される樹脂ガラスには、JIS R3211に準拠したテーバー摩耗試験の実施前後におけるヘイズ値の差:ΔHが2.0%以下であることが要求される。それ故、ここでは、ΔHの値が2.0%以下のものの耐摩耗性に関する評価結果を○としたのである。
<密着性試験>
JIS K5600−5−6に準拠して実施した。そして、密着性試験の結果、剥離がなかったものを、密着性に優れたものとして、評価結果を○で示し、剥離が軽微であったものを、密着性に僅かに劣るものとして、評価結果を△で示した。
かかる表1の結果から明らかなように、トップコート層が、SiO2からなる珪素化合物層と、SiO2とTiO2が混在する中間層と、酸化チタン層とを、その順番で積層した三層構造とされた試験例1の樹脂ガラスと、トップコート層が、SiO2からなる珪素化合物層と酸化チタン層とを直接に積層した二層構造とされた試験例2の樹脂ガラスとを比較した場合、それらの2種類の樹脂ガラスは、耐摩耗性試験の評価結果が、何れも○となっている。しかしながら、試験例1の樹脂ガラスの密着性試験の評価結果が○となっているものの、試験例2の樹脂ガラスは、密着性試験の評価結果が△となっている。これは、本発明手法に従ってトップコート層が形成されてなる樹脂ガラスが、耐摩耗性と密着性の両方において優れた特性を発揮するものであることを、如実に示している。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
例えば、前記実施形態では、珪素化合物層18がSiO2にて構成されていたが、この珪素化合物層18を構成する珪素化合物の種類は、何等限定されるものではなく、珪素化合物層18を、例示されたSiO2に代えて、例えば、SiON やSi3N4 等にて構成することも可能である。
そして、珪素化合物層18がSiON にて構成される場合には、かかる珪素化合物層18を形成するための第一の成膜用ガスが、原料ガスとしての珪素化合物ガスと、反応ガスとしての酸素ガス及び窒素ガスとを含んで構成される。それ故、そのようなSiON にて珪素化合物層18が構成される場合には、SiON からなる珪素化合物層18の形成工程から酸化チタン層20の形成工程に切り換えられる際に、珪素化合物ガスだけでなく、窒素ガスも、真空チャンバ28内への導入量が徐々に減らされ、やがてゼロとされることとなる。
また、珪素化合物層18がSi3N4 にて構成される場合には、かかる珪素化合物層18を形成するための第一の成膜用ガスが、原料ガスとしての珪素化合物ガスと、反応ガスとしての窒素ガスとを含んで構成される。それ故、そのようなSi3N4 にて珪素化合物層18が構成される場合には、Si3N4 からなる珪素化合物層18の形成工程から酸化チタン層20の形成工程に切り換えられる際に、第一の成膜用ガスに含まれる全てのガス成分、つまり原料ガスとしての珪素化合物ガスと反応ガスとしての窒素ガスのそれぞれの真空チャンバ28内への導入量が漸減され、やがてゼロとされることとなる。
さらに、珪素化合物層18と酸化チタン層20の形成に際して用いられるプラズマCVD装置は、例示された構造を有するもの以外にも、公知の構造を有するものが、適宜に採用可能である。例えば、誘導結合方式やアークを発生するプラズマガンを用いた方式の構造を採用することもできる。
さらに、樹脂基材12の一方の面のみに、珪素化合物層18と中間層22と酸化チタン層20の積層構造を有するトップコート層16を設けるようにしても良い。
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車のリヤウインドウ用の樹脂ガラスと、その製造方法に適用したものの具体例を示したが、本発明は、ポリカーボネート製の樹脂成形品からなる樹脂基材の表面に、アンダーコート層と、珪素化合物層を含むトップコート層とが、その順番に積層形成されてなる樹脂製品と、そのような樹脂製品の製造方法の何れに対しても、有利に適用され得るものであることは、勿論である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。