JP2013227521A - オレフィン系樹脂組成物並びにそれを用いた積層体および複合化製品 - Google Patents

オレフィン系樹脂組成物並びにそれを用いた積層体および複合化製品 Download PDF

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Abstract

【課題】 各種の基材材料に対して格別に優れた接着性能を有するオレフィン系樹脂組成物並びに積層体および複合化製品を提供する。
【解決手段】 エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとを、遷移金属触媒の存在下に共重合することで得られる極性基含有オレフィン共重合体(A)と、オレフィン系樹脂(B)とを含む樹脂組成物(C)であって、オレフィン系樹脂(B)の配合量が極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対し、25〜100,000重量部であることを特徴とする、オレフィン系樹脂組成物。
【選択図】 図5

Description

本発明は、極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂とを含むオレフィン系樹脂組成物、並びにそれを用いた積層体に関し、より詳しくは、特定の極性基を含有した極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂とを特定の割合で含有したオレフィン系樹脂組成物であって、各種の基材材料に対して格別に優れた接着性能を有するオレフィン系樹脂組成物並びに積層体および複合化製品に係るものである。
一般に、オレフィン系樹脂は機械強度が高く、耐薬品性や耐腐食性などに優れ、安価で、かつ成形性に優れ、更に環境問題や資源再利用性にも適合しているので、産業用資材として重用され、例えば、射出成形、押出成形、吹込成形などによって、フィルム、積層体、容器、ブロー瓶などに成形されて、広範囲な用途に使用されている。
更には、EVOHやアルミニウム箔などのガス遮断性材料などの基材と積層することにより、上記特性に加えてガス遮断性などの性質を付加させることができ、高機能の包装用材料や容器とすることが可能となる。
しかし、オレフィン系樹脂は一般的に非極性であり、積層材料に使用するに際しては、他の合成樹脂、金属、木材などの極性の高い異種材料への接着強度が極めて低いか、接着しないという欠点がある。
そこで、極性の高い異種材料との接着性を向上させるために、有機過酸化物を用いて極性基含有モノマーをグラフトする方法が広く行われている(例えば、特許文献1を参照)。
しかし、この方法では、グラフト化反応と並行してオレフィン系樹脂同士の分子間架橋、及びオレフィン系樹脂の分子鎖切断などが発生するため、グラフト変性物にオレフィン系樹脂の優れた物性が維持されないという問題が発生する。
例えば、分子間架橋によって不要な長鎖分岐が導入されることで溶融粘度の上昇や分子量分布の広域化が発生し、接着性や成形性に悪影響を及ぼす。また、分子鎖切断によってオレフィン系樹脂の低分子量成分が増加することにより、成形加工時に目ヤニや発煙が発生するといった問題点を呈している。
更に、オレフィン系樹脂中の極性基含有量を高めることにより、極性の高い異種材料との接着性を上昇させられるが、グラフト変性によって多量の極性基含有モノマーをオレフィン系樹脂にグラフトすることは容易ではない。極性基含有モノマーの含有量を増やす方法として、例えば、グラフト変性に供する極性基含有モノマー量、及び有機過酸化物量を増やす方法が考えられるが、その方法を用いた場合、オレフィン重合体の更なる分子間架橋や分子鎖切断につながり、オレフィン系樹脂の物性が損なわれる。また、樹脂中に残留する未反応の極性基含有モノマーや有機過酸化物の分解物の量が増加し、樹脂の劣化を早めたり、不快な臭気を発生させたりするという不具合も発生する。そのため、樹脂中の極性基含有モノマーの含量を高めようとしても、自ずと限界があった。
これら、グラフト変性によって発生する問題点を解決する方法として、グラフト変性材料として直鎖状LDPEを用い、特定の化合物の存在下に無水マレイン酸をグラフトして、グラフト変性物の汚染やグラフト変性時に発生する分子間架橋を少なくし、グラフト効率の高い変性物を得るための製造方法が開示されている(特許文献2を参照)。
しかし、分子間架橋の防止効果やグラフト効率の向上は限定的であり、また、グラフト変性による根本的な弊害である未反応の極性基含有モノマーや有機過酸化物の分解物の残留を無くすことはできず、未だ充分な改良法とはいえない。
ところで、オレフィン系樹脂同士の分子間架橋やゲル化及び分子鎖の切断が無く、オレフィン系樹脂中に極性基含有モノマーを含量せしめる手段として、高圧ラジカル法重合プロセスを用いてエチレンと極性基含有ビニルモノマーとを共重合させ、極性基含有オレフィン共重合体を得る方法も開示されている(例えば、特許文献3及び特許文献4を参照)。
なお、高圧ラジカル法重合プロセスを用いて極性基を導入したオレフィン系樹脂の分子構造例を図1(a)に示すが、この方法によれば、グラフト変性によって発生する問題点は解決され、オレフィン系樹脂中の極性基含有モノマーの含有量をグラフト変性と比較して高めることが可能である。しかし、重合プロセスが高圧ラジカル法であるため、図1(a)に図示されるように、得られる極性基含有オレフィン共重合体は多くの長鎖分岐及び短鎖分岐を不規則に持つ分子構造となる。このために、金属触媒を用いて重合されるオレフィン系樹脂と比較して、低弾性率かつ機械物性の低い極性基含有オレフィン共重合体しか得られず、高強度が要求される用途への応用範囲は限定的であった。
一方、従来一般に用いられているメタロセン触媒を用いた重合方法においては、エチレンと極性基含有モノマーを共重合させる際に、触媒重合活性が低下し共重合し難いとされていたが、近年、特定のリガンドが遷移金属に配位した、いわゆるポストメタロセン触媒の存在下で極性基含有オレフィン共重合体を重合する方法が提案されている(特許文献5〜8を参照)。これらの方法によれば、高圧ラジカル法プロセスで得られる極性基含有オレフィン共重合体と比較して高い弾性率と機械強度を有し、極性基含有量を高めることが可能だが(なお、遷移金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体の分子構造のイメージ図を図2及び図3に示す。)、これらの文献に記載の方法は主にメチルアクリレートやエチルアクリレートといったアクリレート基を含むモノマーや、酢酸ビニルといった特定の極性基含有モノマーとエチレン若しくはα−オレフィンとの共重合体に主眼を置いており、これらの官能基を有する極性基含有オレフィン共重合体は極性の高い異種材料との接着性が充分ではない。また、極性の高い異種材料との具体的な接着性能についても触れられておらず、接着性能を目的とした、特定の極性基含有オレフィン共重合体としての使用は開示されていない。更には、極性基含有オレフィン共重合体とその他のオレフィン系樹脂との樹脂組成物の接着性能についても全く触れられていない。
更になお、オレフィン共重合体に導入することにより、極性の高い異種材料と優れた接着性を発現することが可能な極性基として、カルボキシル基又はその誘導体が知られている。カルボキシル基又はその誘導体を含んだ極性基含有オレフィン共重合体であって、高圧ラジカル法重合プロセスを用いずに重合されたオレフィン共重合体として、特定のメタロセン系触媒及び充分な量の有機アルミニウムの存在下で(2,7−octadien−1−yl)succinic anhydrideとエチレン、及びα−オレフィンを共重合させた極性基含有オレフィン共重合体が提案されている(特許文献9を参照)。
しかし、この発明によると、極性基含有オレフィン共重合に際し、多量の有機アルミニウムを必要とし、製造コストが高くならざるを得ない。また、多量の有機アルミニウムは不純物として共重合体中に存在し、除去するには更なるコストアップにつながる。更に発明の効果は、主として高い重合活性で極性基含有オレフィン共重合体を製造することであり、極性の高い異種材料との具体的な接着性能について触れられていない。しかもこの特許文献には、極性基含有オレフィン共重合体が極性の高い異種材料と充分な接着性を得るために必要な樹脂物性についても全く触れられておらず、高い接着性能を目的としたオレフィン共重合体としての使用は開示されていない。更には、極性基含有オレフィン共重合体とその他のオレフィン系樹脂との樹脂組成物の接着性能についても全く触れられていない。
他の極性基含有オレフィン共重合体としては、特定の構造を持った極性基含有モノマーと、エチレン、α−オレフィン、非共役ジエンに由来する構造単位、とからなる官能基を有するオレフィン共重合体が提案されている(特許文献10を参照)。
しかし、該特許文献によって提案された極性基含有オレフィン共重合体の製造方法は、予め、重合に用いる極性基含有環状オレフィンと有機金属化合物を反応させて極性基をマスキングする必要があり、また、共重合工程の後に脱マスキング処理も行うため、製造工程が煩雑となって製造コストが高くならざるを得ない。更に、マスキングに用いた有機金属化合物が共重合体中に残留し各種樹脂物性に悪影響を与える懸念があり、除去するにしても更なる製造コスト増につながる。更には、極性基含有オレフィン共重合体とその他のオレフィン系樹脂との樹脂組成物の接着性能についても全く触れられていない。
別の極性基含有オレフィン共重合体の製造方法として、高分子鎖の片末端、両末端、又は分子鎖内部に二重結合を持ったオレフィン共重合体の二重結合部分を変性することで、分子鎖中に極性基を導入する方法が開示されている(特許文献11〜15を参照)。これら方法によって極性基含有オレフィン共重合体を製造する場合、予め分子鎖中に二重結合を有するオレフィン重合体を重合しておき、その後、オレフィン共重合体中の二重結合部分に極性基含有化合物を反応させるという工程を経る必要があり、極性基含有ビニルモノマーとエチレン若しくはα−オレフィンを直接共重合させて極性基含有オレフィン共重合体を得る場合と比較して、製造工程が煩雑となり、製造コスト増につながる。更に、片末端もしくは両末端に二重結合があるオレフィン共重合体を変性することで極性基含有オレフィン共重合体を得ようとする場合、その方法の原理上、高分子鎖の分子量と極性基含有量を別々に制御することは不可能であり、得られた極性基含有オレフィン共重合体の用途は限定的となってしまう。更には、極性基含有オレフィン共重合体とその他のオレフィン系樹脂との樹脂組成物の接着性能についても全く触れられていない。
以上の従来法を鑑みると、オレフィン系重合体への極性基の導入方法である、グラフト変性、高圧ラジカル法重合プロセス、多量の有機アルミニウムを用いる方法、重合に際して極性基含有モノマーの極性基を有機アルミニウムなどの有機金属化合物でマスキングし共重合する方法、二重結合を分子鎖に持つオレフィン共重合体の二重結合部分を変性する方法、などのそれぞれの問題点を内包する、いずれの方法にもよらずに、簡易で効率の良い重合法により製造され、諸物性に優れたオレフィン系樹脂組成物の開発が望まれているのは明白である。特に、極性の高い異種材料に対して優れた接着性能を呈するオレフィン形樹脂組成物、及びそれを用いた積層体の提案が所望されている。
特開昭50−004144号公報 特公平3−11290号公報 特許第2792982号公報 特開平3−229713号公報 特開2010−202647号公報 特開2010−150532号公報 特開2010−150246号公報 特開2010−260913号公報 特許第4672214号公報 特許第3603785号公報 特開2005−97587号公報 特開2005−97588号公報 特開2006−131707号公報 特開2009−155655号公報 特開2009−155656号公報
本発明は、背景技術として前述した従来の各問題点に鑑み、それぞれの問題点を内包する、従来のいずれの方法にもよらずに、簡易で効率の良い重合法により製造され、諸物性に優れた、極性基含有オレフィン共重合体の開発を行い、それによって、オレフィン系重合体への極性基導入の主目的である、オレフィン系重合体の接着性能を向上させることを発明の課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、極性基含有オレフィン共重合体の製造においては、簡易で効率的な製法による当共重合体の製造を目指し、極性基の導入方法や重合触媒の選択について検証した。
その結果、本発明者等は先に、エチレン又は炭素数3〜20のα―オレフィンと、特定の極性基含有モノマーとを、いわゆるポストメタロセン触媒等の遷移金属触媒の存在下に共重合することで得られるランダム共重合体であって、特定の構造単位量比と重量平均分子量を満たす範囲の新規の極性基含有オレフィン共重合体が、優れた接着性能を有することを見出し、先願の「特願2011−282521号」において、提案している。
本発明者は、更に接着性に優れ、かつ製造コスト等の経済性にも優れたオレフィン系樹脂組成物を得るべく、該極性基含有オレフィン共重合体の更なる検討として、該極性基含有オレフィン共重合体と混合するオレフィン系樹脂の種類・組成の種々の検証、及び極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂との組成比率の吟味実証などを行ったところ、意外にも、上記極性基含有オレフィン共重合体に対し、他のオレフィン系樹脂とを特定の配合割合でブレンドする事により、該極性基含有オレフィン共重合体を単独で用いる場合に比べて、異種材料との接着性能が飛躍的に優れたオレフィン系樹脂組成物が得られることを見い出し、本発明の創作に至った。
すなわち本発明は、より具体的には極性基含有オレフィン共重合体の極性の高い異種材料に対する接着性能をより高めることを目的とした、遷移金属触媒を用いて重合された特定の極性基含有オレフィン共重合体を含むオレフィン系樹脂組成物であり、主要成分の極性基含有オレフィン共重合体は特定のモノマーを重合することで得られる共重合体であり、かつ、特定の極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂とが特定範囲の比率で混合された樹脂組成物であって、格別に優れた接着性を呈し、積層体および複合化製品へ応用して顕著な効能を示すことを特徴としている。
本発明は具体的には、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとを、遷移金属触媒の存在下に共重合することで得られる、極性基含有オレフィン共重合体(A)と、オレフィン系樹脂(B)とを含む樹脂組成物(C)であって、オレフィン系樹脂(B)の配合量が極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対し、25〜100,000重量部である、オレフィン系樹脂組成物を基本発明(第1の発明)とする。
本発明の基本発明に追従する実施態様発明である、下位の各発明を順次記載すると、第2の発明は、極性基含有オレフィン共重合体(A)がエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとのランダム共重合であり、分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量より多いことを特徴とする、第1の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
第3の発明は、極性基含有オレフィン共重合体(A)の、GPCによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜3.5の範囲であることを特徴とする、第1又は第2の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
本発明の第4の発明は、極性基含有オレフィン共重合体(A)の、DSCにより測定される吸収曲線の最大ピ−ク位置の温度で表される融点が、50℃〜140℃であることを特徴とする、第1〜第3の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
本発明の第5の発明は、極性基含有オレフィン共重合体(A)が、キレート性配位子を有する第5〜11族の遷移金属触媒の存在下に重合されたことを特徴とする、第1〜第4の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
本発明の第6の発明は、本極性基含有オレフィン共重合体(A)が、パラジウムまたはニッケル金属にトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒の存在下に重合されたことを特徴とする、第1〜第5の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
本発明の第7の発明は、オレフィン系樹脂(B)が、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれるモノマーを少なくとも1種以上、重合することで得られるオレフィン系樹脂であることを特徴とする、第1〜第6の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
本発明の第8の発明は、オレフィン系樹脂(B)が、エチレン単重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする第1〜第7の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
本発明の第9の発明は、極性基含有オレフィン共重合体(A)の重合に供される極性基含有モノマーがジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーであることを特徴とする、第1〜第8の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
本発明の第10の発明は、第1〜第9の発明におけるオレフィン系樹脂組成物からなる層と、基材層とを少なくとも含む積層体である。
本発明の第11の発明は、基材層が、オレフィン系樹脂、極性の高い熱可塑性樹脂、金属、無機酸化物の蒸着フィルム、紙類、セロファン、織布、不織布から選ばれることを特徴とする、第10の発明における積層体である。
本発明の第12の発明は、第1〜第9の発明におけるオレフィン系樹脂組成物を含有してなるラミネート材料を用い、少なくとも1層以上の基材層とラミネート加工することにより積層された事を特徴とするラミネート積層体である。
本発明の第13の発明は、第1〜第9の発明におけるオレフィン系樹脂組成物を含有してなる押出成形品である。
本発明の第14の発明は、第1〜第9の発明におけるオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層と、基材層とを少なくとも含む多層共押出成形品である。
本発明の第15の発明は、第1〜第9の発明におけるオレフィン系樹脂組成物を含有してなる射出成形品である。
本発明の第16の発明は、第1〜第9の発明におけるオレフィン系樹脂組成物を含有してなる部材と、基材とを、射出成形によって複合化する事を特徴とする複合化射出成形品である。
本発明の第17の発明は、第1〜第9の発明におけるオレフィン系樹脂組成物を含有してなる被覆材料が、金属に被覆された事を特徴とする極性基含有オレフィン共重合体被覆金属部材である。
なお、本発明は、特定の新規な極性基含有オレフィン共重合体(A)を、オレフィン系樹脂(B)との樹脂組成物(C)とすることにより、極性基含有オレフィン共重合体(A)の優れた接着性能を、更に高めた格別の接着性能を顕現する特徴を呈しており、かかる組成物は従来の特許文献からは窺えない。
本発明のオレフィン系樹脂組成物は、簡易で効率の良い重合法により製造され、諸物性に優れた、特定の分子構造を有する極性基含有オレフィン共重合体と、特定のオレフィン系樹脂とを特定範囲の配合比率で混合することにより、他の基材との高い接着性を発現し、工業的に有用な積層体の製造を可能にした。なお、かかる顕著な効果は、後述する本発明の各実施例のデータ及び各実施例と各比較例との対照により実証されている。
また、本発明による極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂とを特定範囲の配合比率で混合した樹脂組成物(C)は、優れた接着性能を有すると共に、混合するオレフィン系樹脂組成物の機械的・熱的な物性や成形性等をも付与する事が可能となり、さまざまな用途、例えば、押出成形、吹込成形などによって、多層フィルム、多層ブロー瓶などに成形され、広範囲な用途に使用可能である。
高圧ラジカル法重合プロセスにより重合されたオレフィン共重合体(a)の分子構造イメージ図である。 金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体(b)の長鎖分岐が無い場合の分子構造のイメージ図である。 金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体(b)の少量の長鎖分岐がある場合の分子構造のイメージ図である。 極性基含有オレフィン共重合体(A−1)の配合比率による接着強度の変化を示すグラフ図である。 極性基含有オレフィン共重合体(A−2)の配合比率による接着強度の変化を示すグラフ図である。
以下においては、本発明のオレフィン系樹脂組成物、及び極性基含有オレフィン共重合体(A)、オレフィン系重合体(B)について、更には、それらの製造方法並びにその組成物を用いた積層体について、項目毎に具体的かつ詳細に説明する。
〔I〕極性基含有オレフィン共重合体(A)
(1)極性基含有オレフィン共重合体(A)の基本的な特徴
本発明における主要成分である、極性基含有オレフィン共重合体(A)は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとの共重合体である。
なお、極性基含有オレフィン共重合体(A)の分子構造や製造方法は、本発明の関連発明である、先願の「特願2011−282521」に記載の極性基含有オレフィン共重合体と、重量平均分子量(Mw)等の一部の物性を除いて、基本的には同一である。
当共重合体(A)は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとを、遷移金属触媒、特にいわゆるポストメタロセン触媒(第5〜8の発明に示される)の存在下に共重合することで得られることを特徴とする。
すなわち、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとを、共重合することで得られる極性基含有オレフィン共重合体は、グラフト重合や高圧ラジカル法重合その他前述した重合法において既に公知のものであるが、本発明においては、かかる公知の極性基含有オレフィン共重合体に対して、遷移金属の存在下に重合されたランダム共重合体であるという要件その他を備えており、これは、上記の極性基含有オレフィン共重合体とは顕著に異なるものである。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)は、遷移金属触媒の存在下で製造されることを特徴としており、その分子構造は主に直鎖状(長鎖分岐を全く含まないか、少量の長鎖分岐を含む構造)であり、高圧ラジカル重合法によって得られる長鎖分岐を過多に含む分子構造の共重合体とは明確に異なる。高圧ラジカル重合法プロセスにより重合されたオレフィン共重合体のイメージ図を図1に、金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体のイメージ図を図2及び図3に、それぞれ例示した様に、製造方法によってその分子構造は異なる。この分子構造の違いは製造方法を選択する事によって制御が可能であるが、例えば、特開2010−150532号公報に示される様な、回転式レオメータで測定した複素弾性率によっても、その分子構造を推定する事ができる。
より具体的には、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δ(G*=0.1MPa)が40度以上である場合、その分子構造は図2に示されるような、長鎖分岐を全く含まないか、図3に示されるような機械的強度に影響を与えない程度の少量の長鎖分岐を含む構造を示し、遷移金属触媒の存在下で重合されたものと推定される。
また、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δ(G*=0.1MPa)が40度より低い場合、その分子構造は図1に示されるような、長鎖分岐を過多に含む構造を示し、高圧ラジカル重合法により重合されたものと推定され、機械的強度が劣るものとなる。回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δは分子量分布と長鎖分岐の両方の影響を受けるが、Mw/Mn≦4、より好ましくはMw/Mn≦3のものに限れば長鎖分岐の量の指標になり、長鎖分岐が多いほどδ(G*=0.1MPa)値は小さくなる。なお、Mw/Mnが1.5以上であれば、長鎖分岐をもたない場合でもδ(G*=0.1MPa)値が75度を上回ることはない。
(2)エチレン及びα−オレフィン
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の重合に供せられる極性基を持たないモノマーはエチレン及び/又はα−オレフィンから選択される。α−オレフィンの炭素数は3〜20の範囲であれば良く、更にその中でも3〜12のものが好ましく、具体的にはプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテン、オクテン−1、ドデセン−1、などが挙げられる。エチレン及び/又はα−オレフィンの中では、特にエチレンが好ましく選択される。
また、これらのエチレン又はα−オレフィンに由来する構造単位量は、通常90〜99.999mol%、好ましくは95〜99.99mol%の範囲で選択されることが望ましい。
また、用いられるエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンは単独でも良く、2種類以上を合わせて用いても良い。
(3)極性基含有モノマー
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の重合に供せられる極性基含有モノマーは、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含有する必要がある。カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を持ったオレフィン共重合体であれば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂鹸化物(EVOH)などの極性の高い熱可塑性樹脂、及びアルミニウム、スチールなどの金属材料の基材と積層接着することが可能となる。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の重合に供せられる極性基含有モノマーは、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含有していれば特に限定されないが、モノマー構造中に環状骨格を有し、更に環状骨格中に二重結合を有したものであると、高活性での共重合が可能であり、更に好ましい。
また、極性基含有モノマー中に含まれる官能基がジカルボン酸無水物であると、極性の高い異種材料との接着性の面からより有用である。
本発明に関わる極性基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、及び、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、テトラシクロ[ 6 .2 .1 .1 , .0 , ] ドデカ−9−エン−4 ,5−ジカルボン酸無水物、2,7−オクタジエン−1−イルコハク酸無水物などの不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。
これらの中で特に、下記化学式で表される2,7−オクタジエン−1−イルコハク酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物などが好ましい。
Figure 2013227521
2,7−オクタジエン−1−イルコハク酸無水物
Figure 2013227521

5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物
Figure 2013227521

3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物
極性基含有モノマーとして不飽和ジカルボン酸無水物を含んだモノマーを用いた極性基含有オレフィン共重合体(A)は、含有するジカルボン酸無水物基の一部が空気中などに存在する水や水蒸気と反応して開環し、カルボキシル基となる場合がある。本発明の組成物の主旨を逸脱しない範囲においてならば、ジカルボン酸無水物基が開環していても良い。
(4)極性基含有オレフィン共重合体(A)の構造単位
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の構造単位と構造単位量について説明する。
エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィン、及び極性基含有モノマー、それぞれ1分子に由来する構造を、極性基含有オレフィン共重合体(A)中の1構造単位と定義する。そして、極性基含有オレフィン共重合体(A)中の各構造単位の比率をmol%で表したものが構造単位量である。極性基含有オレフィン共重合体(A)の分子構造例で説明すると、下記の化4、化5、化6の構造中のA1、A2及びA3がそれぞれ構造単位であり、それぞれの存在比率が構造単位量となる。
(5)極性基含有モノマーの構造単位量
これらの極性基含有モノマーに由来する構造単位量は、通常10〜0.001mol%の範囲、好ましくは5〜0.01mol%の範囲で選択されることが望ましい。もし、この範囲より極性基含有モノマーに由来する構造単位量が少なければ、極性の高い異種材料との接着性が充分ではなく、この範囲より多ければ充分な機械物性が得られない。更に、用いられる極性基含有モノマーは単独でも良く、2種類以上を合わせて用いても良い。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)中の分子鎖末端、分子鎖内部の極性基含有モノマー構造単位量、及び極性基の総構造単位量は13C−NMRスペクトルを用いて求められる。13C−NMRスペクトルは以下の方法によって測定できる。
極性基含有オレフィン共重合体(A)100mgを、o−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(CBr)=4/1(体積比)2.4ml及び化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に10mmφのNMR試料管に入れ溶解し、クライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400M型NMR装置を用いて試料温度130℃、パルス角90°、パルス間隔20秒、積算回数を500回以上としてプロトン完全デカップリング法にて測定する。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチル炭素のピークを1.98ppmとして設定し、他の炭素によるピークの化学シフトはこれを基準とする。
極性基含有モノマー種が5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物である場合、極性基含有モノマーが分子鎖末端に導入された場合には、下記A1の構造(以下構造A1と記す)を、分子鎖の主鎖内部に導入された場合にはA2の構造(以下構造A2と記す)を持つ。
13C−NMRスペクトルの33.6ppm付近には構造A1の二重結合に隣接するメチレン炭素A1αのピークが、42.1ppm付近には構造A2のメチン炭素A2brのピークが検出される。また、29.9ppm付近には主鎖メチレン炭素によるピークが検出される。例えば33.6ppm付近の炭素A1αのピークの積分強度をI33.6等と表記した時、構造A1及びA2の含有量は以下の式−1、2より求められる。
構造A1の含有量(mol%)
=2×I33.6×100/(2×I33.6+I42.1+I29.9)・・・式−1
構造A2含有量(mol%)
=I42.1×100/(2×I33.6+I42.1+I29.9)・・・式−2
極性基の総構造単位量は上記式−1及び2で求めた構造A1含有量と構造A2含有量の和として求めることができる。
Figure 2013227521
Figure 2013227521
Figure 2013227521
極性基含有モノマー種が(2,7−オクタジエン−1−イル)コハク酸無水物である場合、極性基含有モノマーが分子鎖の主鎖内部に導入された場合にはA3の構造(以下構造A3と記す)を持つ。この場合、38.0ppm付近に主鎖に結合した構造A3のメチン炭素A3brのピークが検出される。また、極性基含有モノマーが主鎖内部に導入されても、分子鎖末端に導入されても何れも41.0ppm付近にコハク酸無水物基のメチン炭素A3CHのピークを生じる。38.0ppm付近の炭素A3brのピークの積分強度をI38.0、41.0ppm付近の炭素A3CHのピーク積分強度をI41.0等と表記した時、極性基の総構造単位量と構造A3の含有量は式−3、4より求められる。
極性基の総構造単位量(mol%)
=2×I41.0×100/(2×I41.0+I29.9)・・・式−3
構造A3含有量(mol%)
=2×I38.0×100/(2×I41.0+I29.9)・・・式−4
Figure 2013227521
本発明の極性基含有オレフィン共重合体(A)においては、分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量より多いことが、分子量を低下させずに極性基含有オレフィン共重合体(A)に充分な量の極性基を導入させるために好ましい。分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量より少ない場合、極性基の殆どは分子鎖末端に存在することとなる。分子量が大きくなればなるほど、分子鎖中の極性基含有量が相対的に低下し、充分な接着性が得られなくなってしまう。また、分子鎖中の極性基含有量を上げるためには、分子量を小さくすることが必要となるが機械物性や耐衝撃性が劣るものとなる。つまり、充分な大きさの分子量と極性基含有量を両立することは難しい。
また、極性基含有オレフィン共重合体(A)の分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量は、10〜0.001mol%、好ましくは5〜0.01mol%、更に好ましくは2〜0.03mol%の範囲から選択され、必ず本発明の極性基含有オレフィン共重合体(A)に存在していることが好ましい。
一方、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量は、10mol%以下、好ましくは5mol%以下、更に好ましくは0.1mol%以下の範囲から選択され、0.001mol%程度の極めて微量存在するか又は0mol%であってもよい。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと極性基含有モノマーの共重合体のランダム共重合体であることが望ましい。
本発明における極性基含有オレフィン共重合体(A)の分子構造例を下記に示す。ランダム共重合体とは、A構造単位とB構造単位の、ある任意の分子鎖中の位置においてそれぞれの構造単位を見出す確率が、その隣接する構造単位の種類と無関係な共重合体である。また、極性基含有オレフィン共重合体(A)の分子鎖末端は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンであっても良く、極性基含有モノマーであっても良い。
下記のように、本発明における極性基含有オレフィン共重合体(A)の分子構造(例)は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンとカルボキシル基又はその誘導体を含むモノマーとが、ランダム共重合体を形成している。
Figure 2013227521

Figure 2013227521
なお、グラフト変性によって極性基を導入したオレフィン共重合体の分子構造(例)も参考に掲載すると、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンが共重合されたオレフィン共重合体の一部が、カルボキシル基又はその誘導体を含むモノマーにグラフト変性されている。
Figure 2013227521

Figure 2013227521
(6)極性基含有オレフィン共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)
極性基含有オレフィン共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜300,000の範囲であることが望ましい。
Mwが1,000未満では機械強度や耐衝撃性といった樹脂物性が充分ではなく、1,000,000を超えると溶融粘度が非常に高くなり、成形加工が困難となる。
本発明の極性基含有オレフィン共重合体(A)は、単独で接着材として用いる場合には、良好な接着性を示す範囲の物性(重量平均分子量)が限られてしまうが、本発明の樹脂組成物においては、オレフィン系樹脂(B)と適合量配合することにより、接着性のレベルが飛躍的に向上するため、広い範囲の物性の極性基含有オレフィン共重合体を用いることができる。
極性基含有オレフィン共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、通常1.5〜3.5、好ましくは1.6〜3.3、更に好ましくは1.7〜3.0の範囲であることが望ましい。Mw/Mnが1.5未満では積層体の成形を始めとして各種加工性が充分でなく、3.5を超えると接着強度が劣るものとなる。また、(Mw/Mn)を分子量分布パラメーターと表現することがある。
本発明に関わる重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnを算出するものである。
本発明に関わるGPCの測定方法は以下の通りである。ウォーターズ社製150C型を使用し、下記の条件で測定を行うことによって重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を得た。
カラム:ShowdexHT−G及び同HT−806M×2本 溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB) 温度:140℃ 流量:1.0ml/分
カラムの較正は、昭和電工製単分散ポリスチレンで行った(S−7300,S−3900,S−1950,S−1460,S−1010,S−565,S−152,S−66.0,S−28.5,S−5.05の各0.2mg/ml溶液)。
n−エイコサン及びn−テトラコンタンの測定を行い、溶出時間と分子量の対数値を4次式で近似した。なお、ポリスチレンとポリエチレンの分子量の換算には次式を用いた。
PE=0.468×MPS
(7)極性基含有オレフィン共重合体(A)の融点
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク温度によって示される。
ポリエチレンを想定した場合、融点は50℃〜140℃であることが好ましく、60℃〜138℃であることが更に好ましく、70℃〜135℃が最も好ましい。
この範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、この範囲より高い場合は接着性が劣るものとなる。
(8)極性基含有オレフィン共重合体(A)の製造
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の製造方法は、遷移金属触媒を用いてエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含んだ極性基含有モノマーとを共重合させることによって得られる。本発明に関わる重合触媒の種類は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含んだ極性基含有モノマーとを共重合することが可能なものであれば特に限定されない。
〔i〕重合触媒
本発明の極性基含有オレフィン共重合体(A)の製造方法の一例として、いわゆるポストメタロセン触媒と称される、キレート性配位子を有する第5〜101族の遷移金属化合物を触媒として用い、重合する方法がある。
好ましい遷移金属の具体例として、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、鉄原子、白金原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子、銅原子などが挙げられる。
これらの中で好ましくは、バナジウム原子、鉄原子、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子、ロジウム原子であり、特に好ましくは、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子である。これらの金属は、単一であっても複数を併用してもよい。
さらに、本発明の遷移金属錯体の遷移金属は、ニッケル(II)、パラジウム(II)、白金(II)、コバルト(II)及びロジウム(III)からなる群から選択される元素であることが、さらには第10族の元素であることが重合活性の観点から好ましく、特に価格等の観点から、ニッケル(II)が好ましい。
キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位( bidentate )又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、その構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。
好ましくは、二座アニオン性P,O配位子として例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、リンエノラートが挙げられ、他に、二座アニオン性N,O配位子として例えば、サリチルアルドイミナ−トやピリジンカルボン酸が挙げられ、他に、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、ジアミド配位子が挙げられる。
キレート性配位子から得られる金属錯体の構造は、置換基を有してもよいアリールホスフィン化合物、アリールアルシン化合物又はアリールアンチモン化合物が配位した下記構造式(A)及び/又は(B)で表される。
Figure 2013227521
Figure 2013227521
(構造式(A)、(B)において、Mは、元素の周期表の第5〜11族のいずれかに属する遷移金属を表す。Xは、酸素、硫黄、−SO−、又は−CO−を表す。Yは、炭素又はケイ素を表す。nは、0又は1の整数を表す。Eは、リン、砒素又はアンチモンを表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、OR、CO、COM’、C(O)N(R、C(O)R、SR、SO、SOR、OSO、P(O)(OR2−y(R、CN、NHR、N(R、Si(OR3−x(R、OSi(OR3−x(R、NO、SOM’、POM’、P(O)(ORM’又はエポキシ含有基を表す。M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数、yは、0から2までの整数を表す。なお、RとRが互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素、窒素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5〜8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。Rは、水素又は炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。Lは、Mに配位したリガンドを表す。また、RとLが互いに結合して環を形成してもよい。)より好ましくは、下記構造式(C)で表される遷移金属錯体である。
Figure 2013227521
(構造式(C)においてMは、元素の周期表の第5〜11族のいずれかに属する遷移金属を表す。Xは、酸素、硫黄、−SO−、又は−CO−を表す。Yは、炭素又はケイ素を表す。nは、0又は1の整数を表す。Eは、リン、砒素又はアンチモンを表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。R、R、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、OR、CO、COM’、C(O)N(R、C(O)R、SR、SO、SOR、OSO、P(O)(OR2−y(R、CN、NHR、N(R、Si(OR3−x(R、OSi(OR3−x(R、NO、SOM’、POM’、P(O)(ORM’又はエポキシ含有基を表す。M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数、yは、0から2までの整数を表す。なお、R〜R11から適宜選択された複数の基が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素、窒素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5〜8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。Rは、水素又は炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。Lは、Mに配位したリガンドを表す。また、RとLが互いに結合して環を形成してもよい。)
ここで、キレート性配位子を有する第5〜11族の遷移金属化合物を触媒としては、代表的に、いわゆる、Shop系及びDrent系と称される触媒が知られている。
Shop系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがニッケル金属に配位した触媒である(例えば、WO2010‐050256号公報を参照)。また、Drent系は置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがパラジウム金属に配位した触媒である(例えば、特開2010−202647号公報を参照)。
〔ii〕重合方法
本発明において、重合方法に特に制限はない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが好ましく用いられる。
また、重合形式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。また、リビング重合であってもよいし、連鎖移動を併発しながら重合を行ってもよい。更に、いわゆるchain shuttling agent(CSA)を併用し、chain shuttling反応や、coordinative chain transfer polymerization(CCTP)を行ってもよい。
具体的な製造プロセス及び条件については、例えば、特開2010−260913号公報、特開2010−202647号公報を参照することができる。
〔II〕オレフィン系樹脂(B)
(1)オレフィン系樹脂(B)について
本発明においては、オレフィン系樹脂は特に特定されない。オレフィン系樹脂(B)は、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型又はシングルサイト触媒を用い高中低圧法及びその他の公知の方法により得られる、エチレン単独重合体又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られる単独重合体、若しくはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される2種類以上のモノマーを共重合して得られる共重合体、更にはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体から選択することができる。その中でも、エチレン単独重合体、若しくはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンの共重合体、エチレンと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体が好ましい。
(2)単独重合体
オレフィン系樹脂(B)の単独重合体は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを単独で重合して得られる。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセンなどを挙げることができる。好ましい単独重合体は、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体、1−ヘキセン単独重合体、1−オクテン単独重合体、1−ドデセン単独重合体等を挙げる事ができ、より好ましいのはエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体である。
(3)共重合体
オレフィン系樹脂(B)において、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される2種類以上のモノマーを共重合して得られる共重合体は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される2種類以上のモノマーを重合することにより得られる共重合体であれば特に限定されない。重合に供されるモノマーは2種類であっても良いし、3種類以上であっても良い。エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される2種類以上のモノマーの共重合体として好ましいのは、エチレンを必須で含み、炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される1種以上のα−オレフィンとの共重合体である。更に好ましいのはエチレンを必須で含み、炭素数3〜10のα−オレフィンから選択される1種以上のα−オレフィンとの共重合体である。より好適に用いることができるのは、エチレンを必須で含み、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから選択される1種、もしくは2種以上のα−オレフィンとの共重合体である。
(5)極性基含有共重合体
オレフィン系樹脂(B)において、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと、極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体は、エチレン及び/または炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと、極性基を含有したビニルモノマーとを重合することにより得られる共重合体であれば特に限定されない。
エチレン及び/または炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーは1種であっても2種以上でも良く、また、極性基を含有したビニルモノマーは1種であっても2種以上でも良い。また、エチレン及び/または炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体の重合に供せられるモノマーは2種であっても、3種以上であっても良い。エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体として好ましいのは、エチレンと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体である。
オレフィン系樹脂組成物に含まれるオレフィン系樹脂(B)の極性基含有共重合体は、配合される極性基含有オレフィン共重合体(A)と同一であってはならないが、含まれる極性基含有モノマーの種類や組成比率、樹脂物性などが異なっていれば、配合しても良い。
エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合に供される、極性基を含有したビニルモノマーは、カルボン酸基又は酸無水基含有モノマー(a)、エステル基含有モノマー(b)、ヒドロキシル基含有モノマー(c)、アミノ基含有モノマー(d)、シラン基含有モノマー(e)から選択された少なくとも一種のモノマーである。
カルボン酸基又は酸無水基含有モノマー(a)としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸又はこれらの無水物、アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、酢酸ビニル、ペンテン酸などの不飽和モノカルボン酸が挙げられる。
エステル基含有モノマー(b)としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられるが、特に好ましいものとしてはアクリル酸メチルを挙げることができる。
ヒドロキシル基含有モノマー(c)としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
アミノ基含有モノマー(d)としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
シラン基含有モノマー(e)としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセチルシラン、ビニルトリクロロシランなどの不飽和シラン化合物が挙げられる。
(6)オレフィン系樹脂の製造方法
オレフィン系樹脂(B)の製造方法は特に限定されないが、例えば、チューブラー法やオートクレーブ法などの公知の高圧ラジカル重合法、チーグラー系、フィリップス型又はシングルサイト触媒を用いた高中低圧法及びその他の公知の方法によって製造することができる。
(7)シングルサイト触媒を用いたオレフィン系樹脂(B)の製造方法
シングルサイト触媒を用いたオレフィン系樹脂(B)の製造法例として、特開昭58−19309号公報、特開昭59−95292号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭60−35009号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報の各公報、ヨーロッパ特許出願公開第420,436号明細書、米国特許第5,055,438号明細書、及び国際公開公報W091/04257号明細書などに記載されている方法、すなわちシングルサイト系触媒、メタロセン/アルモキサン触媒、又は、例えば国際公開公報W092/07123号明細書等に開示されているようなメタロセン化合物と、以下に述べるシングルサイト系触媒と反応して安定なイオンとなる化合物とからなる触媒を使用し重合させる方法を挙げることができる。
上述のシングルサイト系触媒と反応して安定なイオンとなる化合物とは、カチオンとアニオンのイオン対から形成されるイオン性化合物或いは親電子性化合物であり、メタロセン化合物と反応して安定なイオンとなって重合活性種を形成するものである。このうち、イオン性化合物は、下記式(I)で表される。
[Q]m+[Y]m− (I)
(mは1以上の整数)
式中のQは、イオン性化合物のカチオン成分であり、カルボニウムカチオン、トロピリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどが挙げられ、更には、それ自身が還元され易い金属の陽イオンや有機金属の陽イオンも挙げることができる。
これらのカチオンは、特表平1−501950号公報等に開示されているようなプロトンを与えることができるカチオンだけでなく、プロトンを与えないカチオンでも良い。
これらのカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウム、ジフェニルカルボニウム、シクロヘプタトリエニウム、インデニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリメチルホスホニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、ピリリウム、さらには銀イオン、金イオン、白金イオン、パラジウムイオン、水銀イオン、フェロセニウムイオンなどが挙げられる。
上記式中のYは、イオン性化合物のアニオン成分であり、メタロセン化合物と反応して安定なアニオンとなる成分であって、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオン、有機ガリウム化合物アニオン、有機リン化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アンチモン化合物アニオンなどが挙げられ、具体的にはテトラフェニルホウ素、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−(t−ブチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、テトラフェニルアルミニウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、テトラフェニルガリウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ガリウム、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ガリウム、テトラキス(3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)ガリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム、テトラフェニルリン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)リン、テトラフェニルヒ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ヒ素、テトラフェニルアンチモン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモン、デカボレート、ウンデカボレート、カルバドデカボレート、デカクロロデカボレートなどが挙げられる。
上記親電子性化合物としては、ルイス酸化合物として知られているもののうち、メタロセン化合物と反応して安定なイオンとなって重合活性種を形成するものであり、種々のハロゲン化金属化合物や固体酸として知られている金属酸化物などが挙げられる。具体的にはハロゲン化マグネシウムやルイス酸性無機化合物などが例示される。
また、他のシングルサイト触媒を用いたオレフィン系樹脂(B)の製造法例としては、特開平8−325333号公報、特開平9−031263号公報、特開平9−087440号公報に開示されている、シングルサイト系触媒化合物の混合系からなる固体触媒と助触媒を用いて製造する方法、特開2006−265387号公報、特開2006−265388号公報、特開2006−282927号公報に開示されている、単一反応器で、複数種のシングルサイト系触媒を用いて製造する方法、特表2001−525457号公報に開示されている、ハフニウムメタロセン型触媒を用いて製造する方法、などを挙げることができる。
〔III〕樹脂組成物(C)
(1)樹脂組成物(C)について
樹脂組成物(C)は、極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対してオレフィン系樹脂(B)を25〜100,000重量部配合したものである。オレフィン系樹脂(B)の配合量は、好ましくは25〜20,000重量部、また好ましくは25〜9,900重量部、更に好ましくは28〜5,000重量部、より好ましくは30〜3,500重量部である。オレフィン系樹脂(B)の配合量が25重量部より少なくても、また、100,000重量部より多くても、樹脂組成物(C)の接着性が劣るものとなる これら配合量比と接着性能の関係を示した本願発明の実施例・比較例を、図4及び図5としてまとめているが、極性基含有オレフィン共重合体(A)の含有量が80wt%以下(すなわち、他のオレフィン系樹脂(B)の含有量が極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対して25重量部以上)であると、極性基含有オレフィン共重合体を単独で使用する場合に比べて、飛躍的に接着性能が上昇していることが確認される。一方、極性基含有オレフィン共重合体(A)の量が少なすぎる(他のオレフィン系樹脂(B)の含有量が100,000重量部を超える)と、接着性能は低下する。
樹脂組成物(C)に配合されるオレフィン系樹脂(B)の配合量が極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対し25〜100,000重量部の範囲であれば、極性の高い異種材料と優れた接着性を有する理由は明確ではないが、おそらく、樹脂組成物中に極性基を含む分子鎖と、極性基を含まない(若しくは、極性基を含んだとしても極性基の種類が異なる)分子鎖とが、ある範囲の配合比率で混在していることが必要なのではないかと考えられる。
極性の高い異種材料とオレフィン共重合体との接着性能は、JIS K6854−1〜4「接着材−はくり接着強さ試験法」で例示されるような剥離試験により測定される数値で評価されるが、この方法で測定される数値は、異種材料同士の界面での化学的、及び物理的な結合力と、材料の凝集力若しくは変形する際の応力との合算であると考えられる。全ての分子鎖が極性基を有した樹脂組成物と、極性基を含む分子鎖と極性基を含まない分子鎖の混在した樹脂組成物を比較すると、剥離試験における凝集力若しくは変形応力に差異が発生するか、樹脂組成物側の凝集破壊形態が異なるために、樹脂組成物(C)のようなブレンド材の方が高い接着性を示すものと推察される。
実施例には、樹脂組成物(C)に配合されるオレフィン系樹脂(B)の配合量が極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対し25〜100,000重量部の範囲であれば接着強度の上昇が見られることが示されており、この範囲の混合割合であれば、接着性向上が見込めることが分かる。
なお、樹脂組成物(C)に配合されるオレフィン系樹脂(B)の配合量が極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対し100,000重量部より多い場合、樹脂組成物(C)中の極性基含有量が著しく低下し、接着性も発現しなくなる。
樹脂組成物(C)に含まれる極性基含有オレフィン共重合体(A)は単独であっても良く、複数を用いても良い。また、オレフィン系樹脂(B)は単独であっても複数を用いても良い。
(2)樹脂組成物(C)の製造方法
樹脂組成物(C)(オレフィン系樹脂組成物)は公知の方法を利用して製造することができ、例えば、極性基含有オレフィン共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)と、所望により添加される他成分を、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、往復式混練機(BUSS KNEADER)、ロール混練機等、などを用いて溶融混練する方法、極性基含有オレフィン共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)と、所望により添加される他成分を適当な良溶媒(例えば、へキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、キシレンなどの炭化水素溶媒)に溶解し、次いで溶媒を除去する方法で製造することができる。
(3)添加剤
樹脂組成物(C)には、本発明の組成物の機能の主旨を逸脱しない範囲において、他の機能を付加するために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、架橋剤、発泡剤、核剤、難燃剤、充填材、導電材などの添加剤を配合しても良い。
(4)その他の成分
樹脂組成物(C)には、本発明の組成物の機能の主旨を逸脱しない範囲において、各種の樹脂改質材などを配合してもよい。その成分としては、ブタジエン系ゴム、イソブチレンゴム、イソプレン系ゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、石油樹脂などが挙げられ、これらは単独でも混合物でもよい。
〔IV〕積層体
(1)積層体の材料
本発明の積層体は、本発明のオレフィン系樹脂組成物からなる層と基材層とを含む積層体であって、該基材層は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂鹸化物(EVOH)などの極性の高い熱可塑性樹脂、接着性フッ素樹脂、アルミニウム、スチールなどの金属材料、などの基材を例示することができる。
(2)複合化製品
本発明の複合化製品は、本発明のオレフィン系樹脂組成物からなる部材と、基材を含む部材を複合化した複合化製品であって、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂鹸化物(EVOH)、接着性フッ素樹脂などの極性の高い熱可塑性樹脂、アルミニウム、スチールなどの金属材料、などの基材を例示することができる。
上記基材の具体例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などのポリエチレン系樹脂、アイオノマー、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミドなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、芳香族ポリエステル類などのポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、セロハンなどセルロース系ポリマーのようなフィルム形成能を有する熱可塑性樹脂フィルム又はシート(及びこれらの延伸物、印刷物)、アルミニウム、鉄、銅、又はこれらを主成分とする合金などの金属箔又は金属板、シリカ蒸着プラスチックフィルム、アルミナ蒸着プラスチックフィルムなどの無機酸化物の蒸着フィルム、金、銀、アルミニウムなど金属、又はこれら金属の酸化物以外の化合物などの蒸着フィルム、上質紙、クラフト紙、板紙、グラシン紙、合成紙などの紙類、セロファン、織布、不織布などを挙げることができる。
これらの基材層は、用途や被包装物の種類により適宜選択することができる。例えば、被包装物が腐敗し易い食品である場合には、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステルの如く、透明性、剛性、ガス透過抵抗性の優れた樹脂を用いることができる。また、被包装物が菓子或いは繊維などである場合には、透明性、剛性、水透過抵抗性の良好なポリプロピレンなどを用いることが好ましい。
自動車等の燃料タンクや、燃料が通過するチューブ・ホース・パイプ等に適応させる場合には、EVOH、ポリアミド類、変性フッ素樹脂のような燃料透過防止性能の優れた樹脂を用いる事が出来る。
ガスや水分などのバリア性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ポリエステル(OPET)、延伸ポリアミド、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルムなどの金属、無機酸化物の蒸着フィルム、アルミ蒸着などの金属蒸着フィルム、金属箔などが挙げられる。
(2)積層体の用途
本発明に関わる積層フィルムは、例えば、食品の包装材として好適である。食品の具体例としては、ポテトチップなどのスナック菓子、ビスケット、煎餅、チョコレートなどの菓子類、粉スープなどの粉末調味料、削り節や薫製などの食品などが挙げられる。
また、パウチ類の容器としては、上記積層体のエチレン系共重合体層面同士を向かい合わせ、その少なくとも一部をヒートシールすることにより形成することができる。具体的には、例えば、水物包装、一般袋、液体スープ包袋、液体紙器、ラミ原反、特殊形状液体包装袋(スタンディングパウチなど)、規格袋、重袋、セミ重袋、ラップフィルム、砂糖袋、油物包装袋、食品包装用などの各種包装容器、輸液バックなどに好適に使用される。
(3)積層体の製造
加工方法としては、通常のプレス成形、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、フラットダイ成形(T−ダイ成形)、水冷インフレーション成形などの押出成形、押出ラミネート加工、サンドラミネート加工、ドライラミネート加工等のラミネート加工法、ブロー成形、圧空成形、射出成形、回転成形など、従来公知の方法が挙げられる。
(4)ラミネート積層体
本発明に関わるラミネート積層体とは、押出ラミネート加工、サンドラミネート加工、ドライラミネート加工等、公知のラミネート加工法で製造する事が出来る積層体であり、該ラミネート積層体は本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなるラミネート材料と、少なくとも1層以上の基材層とラミネート加工することで製造する事ができる積層体である。本発明におけるラミネート材料とは、各種公知のラミネート加工法に供する事が可能な本発明のオレフィン系樹脂組成物を含む樹脂材料の事である。
押出ラミネート加工は、Tダイより押出した溶融樹脂膜を基材上に連続的に被覆・圧着する方法で、被覆と接着を同時に行う成形加工法である。また、サンドラミネート加工は、紙と積層するフィルムの間に溶融した樹脂を流し込んで、この溶融した樹脂が接着剤のような働きをして接着・積層する方法であり、ドライラミネート加工は、基材と積層するフィルムを貼合する接着剤及び/又は接着剤の塗布ロール付近の雰囲気湿度を除湿するか、前記接着剤及び/又は接着剤の塗布ロールの温度を温熱するか、フィルムシートの貼合面を乾燥させる方法である。
サンドラミネート加工、ドライラミネート加工においては、本発明に用いるオレフィン系樹脂組成物を含む層が形成される側で、基材とオレフィン系樹脂組成物を含む層との間に、バリア性を向上させるため、上記アルミ箔、ポリエステル系フィルム、各種バリア性フィルムなどを積層させることが容易である。
本発明に関わるラミネート用材料と積層する基材層としては、段落0101〜0102に記載の各種材料を適宜用いる事ができる。
(5)多層共押出成形品
本発明に関わる多層共押出成形品とは、公知の多層共押出成形によって成形する事が可能な多層共押出成形品であり、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層を少なくとも含む多層共押出成形品である。また、多層共押出成形品とは、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、種々の賦形方法によって成形することにより製造する事が可能な、多層構造を持った成形品の事である。
本発明に関わる多層共押出成形品の製造方法としては、多層空冷インフレーション成形、多層空冷2段冷却インフレーション成形、多層高速インフレーション成形、多層水冷インフレーション成形、多層フラットダイ成形(T−ダイ成形)、多層管状品成形、多層コルゲートパイプ成形等、公知の多層共押出成形を挙げる事ができる。本発明に関わる多層共押出成形品における基材層としては、段落0101〜0102に記載の各種材料を適宜用いる事ができる。本発明に関わる多層共押出成形品は、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物を含む層と適当な基材とを、適当な成形方法によって加工することにより、多層フィルム、多層シート、多層パイプ、多層ホース、多層チューブ、多層コルゲートパイプ等の公知の多層共押出成形品として製造する事ができる。
(6)多層フィルム
本発明に関わる多層フィルムとは、公知の多層フィルム成形法によって製造する事が可能な多層フィルムであり、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層フィルムである。本発明に関わる多層フィルムの製造方法としては、多層空冷インフレーション成形、多層空冷2段冷却インフレーション成形、多層高速インフレーション成形、多層水冷インフレーション成形、多層フラットダイ成形(T−ダイ成形)等、公知の多層フィルム成形法を用いる事ができる。本発明に関わる多層フィルムの基材層としては、段落0101〜0102に記載の各種材料を適宜用いる事ができる。
(7)多層ブロー成形品
本発明に関わる多層ブロー成形品とは、公知の多層ブロー成形によって製造する事が可能な多層ブロー成形品であり、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層ブロー成形品である。本発明に関わる多層ブロー成形品の製造方法としては、多層ダイレクトブロー成形、多次元多層ブロー成形、多層ロータリーブロー成形等、公知のブロー成形法を挙げる事ができる。本発明に関わる多層ブロー成形品の基材層としては、段落0101〜0102に記載の各種材料を適宜用いる事ができる。
(8)多層管状成形品
本発明に関わる多層管状成形品とは、公知の多層管状成形法によって成形する事が可能な多層管状成形品であり、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層管状成形品である。本発明に関わる多層管状成形法は、例えば、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、円形もしくは異形の吐出口から吐出することによって連続的に吐出口形状に準じた形状の管状成形品が成形され、適当な賦形方法、および冷却方法によって成形、冷却固化することで管状の成形品を得る方法を挙げる事ができる。本発明に関わる多層管状成形法の吐出口形状は特に限定されず、円形、楕円、多角形、その他公知の吐出口形状を選択する事ができる。また、本発明に関わる多層管状成形法の成形方法は特に限定されず、サイジングプレート法、内圧サイジング法、内径サイジング法、真空サイジング法、押出した溶融材料を金型で挟み込み、マンドレル側からの圧空や金型側からの真空引き等で賦形しつつ冷却する方法等、公知の成形法を用いる事ができ、冷却方法も水冷、空冷、金型での挟み込み等、適宜使用することができる。さらに、一度冷却固化させた多層管状成形品を再加熱し、さらに別の形状へと加工することもできる。本発明に関わる多層管状成形品の基材層としては、段落0101〜0102に記載の各種材料を適宜用いる事ができる。
(9)多層シート
本発明に関わる多層シートとは、公知の多層シート成形によって製造する事が可能な多層シートであり、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層シートである。本発明に関わる多層シートの製造方法としては各種公知の方法を用いる事ができ、例えば、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、フラットダイやサーキュラーダイ等公知のダイから吐出させることでシート状に成形する方法を挙げる事ができる。また、これら方法において、必要に応じてシートの端部をスリットしたり、円形のシートを切り開く加工を加えたりしても良い。本発明に関わる多層シートの基材層としては、段落0101〜0102に記載の各種材料を適宜用いる事ができる。
(10)押出成形品
本発明に関わる押出成形品とは、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物を押出成形によって成形した押出成形品である。本発明に関わる押出成形品は、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、水冷インフレーション成形といった各種インフレーション成形、フラットダイ成形、異形押出成形、管状品成形、カレンダー成形等、公知の押出成形法によって製造する事ができる。
(11)射出成形品
本発明に関わる射出成形品とは、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物を射出成形によって成形した射出成形品である。本発明に関わる射出成形品の製造には公知の方法を用いる事ができる。
(12)複合化射出成形品
本発明に関わる複合化射出成形品とは、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる部材を少なくとも含み、射出成形を用いて複数の部材を複合化することで製造できる複合化射出成形品である。複合化射出成形品は2種類以上の材料が複合化されていればよく、例えば、2種の異なる本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる部材が複合化されていても良く、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる部材と基材からなる部材が複合化されていても良い。さらに、3種以上の部材が複合化されていても良い。本発明に関わる複合化射出成形品は、公知の複合化射出成形が可能な射出成形法によって成形する事ができる。本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる部材の2種類以上を複合化してなる複合化射出成形品であってもよいが、本発明の特徴である異種材料との高い接着性を有する点を考慮すると、異種材料からなる部材と複合化させた複合化射出成形品であるほうが好ましい。複合化射出成形品の製造が可能な射出成形法としては、公知の方法を挙げる事ができる。例えば、あらかじめ射出成形や押出成形、プレス成形、切削加工等公知の方法により本発明のオレフィン系樹脂組成物を部材へと加工し、該部材を射出金型内部にインサートした状態でさらに基材材料を射出することで複合化させる方法、あらかじめ基材を部材へと加工し、基材の部材を射出金型内にインサートした状態で本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物を射出することで複合化させる方法、複数の射出ユニットを有する多色射出成形機を用い、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物と基材材料を適当な順序で順次、金型内に射出することによって複合化する方法などを挙げる事ができる。
本発明に関わる複合化射出成形品において、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物と複合化させる部材の種類としては、段落0101〜0102に記載の各種基材を適宜使用する事ができる。
(13)被覆金属部材
本発明に関わる被覆金属部材とは、金属に本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物を金属被覆材料として用い、金属被覆材料を金属に被覆することにより製造できる、被覆金属部材である。本発明に関わる被覆金属部材は公知の金属被覆方法によって製造する事ができる。被覆金属部材の例としては、例えば、鋼管の外面もしくは内面に、必要に応じてアンダーコート等を介して被覆材料を被覆させた被覆鋼管、金属被覆材料で被覆された被覆金属ワイヤー、金属被覆材料で被覆された電線、紛体に加工された被覆金属材料を用いて流動浸漬法によって被覆された被覆金属、紛体に加工された被覆金属材料を用いて静電塗装法によって被覆された被覆金属等を挙げる事ができる。
〔V〕その他の用途
本発明の樹脂組成物(C)は、上記の接着性樹脂材料として好適に用いられるばかりでなく、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの各種樹脂の改質材、或いは、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂とポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶樹脂などのエンジニアリングプラスチックとの相溶化剤としても好適に適用される。
また、他の用途としては、鋼管被覆、電線被覆、線材被覆、ドラム缶やタンクの内壁被覆などの被覆用、或いは難燃剤に使用されるカップリング材などとして好適に使用される。
以下において、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明し、好適な各実施例のデータ及び各実施例と各比較例の対照により、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。
本発明において製造される極性基含有オレフィン共重合体(A)の物性試験方法、樹脂組成物(C)の製造方法、得られた積層体の試験方法は、以下の通りである。
(1)極性基含有オレフィン共重合体(A)中の極性基含有構造単位量
極性基含有オレフィン共重合体(A)中の極性基含有構造単位量は、13C−NMRスペクトルを用いて求めた。詳しくは前述している。
(2)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布パラメーター(Mw/Mn)
重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求めた。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnによって算出した。詳しくは前述している。
(3)融点
融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク温度によって示される。測定にはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社社製のDSC(DSC7020)を使用し、次の測定条件で実施した。
試料約5.0mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで上昇し、200℃で5分間保持した後に10℃/分で30℃まで降温させた。30℃で5分間保持した後、再度、10℃/分で昇温させる際の吸収曲線を測定し、そのピーク温度を融点とした。
4)接着強度
接着強度は、極性基含有オレフィン共重合体のプレス板とEVOHフィルム、及びポリアミドフィルムをそれぞれ調製し、その2種を重ね合わせて熱プレスすることによって積層体を作製し、剥離試験を行うことによって測定した。各工程の調整方法/測定方法を順に説明する。
極性基含有オレフィン共重合体樹脂板の調製方法
極性基含有オレフィン共重合体を、寸法:50mm×60mm、厚さ1mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで溶融樹脂中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、厚さが約0.9mmの極性基含有オレフィン共重合体樹脂板を作製した。
EVOHフィルムの調製方法
多層Tダイ成形機を用い、中央層がEVOH、両外層がLLDPEの2種3層多層フィルムを成形後、外層のLLDPEを剥離することで、厚さ150μmのEVOH単層フィルムを調製した。フィルム成形条件は以下の通りである。
成形機:2種3層Tダイ 成形温度:200℃ 層構成:LLDPE/EVOH/LLDPE 膜厚:350μm(100μm/150μm/100μm) 外層:LLDPE(日本ポリエチレン(株)社製 銘柄:ノバテック UF943)MFR=2.0g/10分、密度=0.937/cm 中間層:EVOH((株)クラレ製 銘柄:エバール F101B)
ポリアミドフィルムの調製方法
多層Tダイ成形機を用い、中央層がポリアミド、両外層がLLDPEの2種3層多層フィルムを成形後、外層のLLDPEを剥離することで、厚さ150μmのポリアミド単層フィルムを調製した。フィルム成形条件は以下の通りである。
成形機:2種3層Tダイ 成形温度:250℃ 層構成:LLDPE/EVOH/LLDPE 膜厚:350μm(100μm/150μm/100μm) 外層:LLDPE(日本ポリエチレン(株)社製 銘柄:ノバテック UF943)MFR=2.0g/10分、密度=0.937/cm 中間層:ポリアミド(東レ(株)製 銘柄:アミラン CM1021FS)
EVOHフィルムと極性基含有オレフィン共重合体との積層体の調製方法
上記の樹脂板調製方法によって得られた極性基含有オレフィン共重合体の樹脂板と、上記EVOHフィルムの調製方法によって得られたEVOHフィルムを50mm×60mmの寸法に切断したものを重ね合わせ、寸法:50mm×60mm、厚さ1mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度200℃の熱プレス機を用いて4.9MPaで4分間加圧した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、極性基含有オレフィン共重合体とEVOHの積層体を調製した。
ポリアミドフィルム(PA)と極性基含有オレフィン共重合体との積層体の調製方法
上記の樹脂板調製方法によって得られた極性基含有オレフィン共重合体の樹脂板と、上記ポリアミドフィルムの調製方法によって得られたポリアミドフィルムを50mm×60mmの寸法に切断したものを重ね合わせ、寸法:50mm×60mm、厚さ1mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度250℃の熱プレス機を用いて4.9MPaで3分間加圧した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、極性基含有オレフィン共重合体とポリアミドの積層体を調製した。
積層体の接着強度測定方法
積層体の調製方法によって得られた積層体を10mm幅に切断し、テンシロン(東洋精機(株)製)引張試験機を用いて、50mm/分の速さでT剥離することで接着強度を測定した。接着強度の単位はgf/10mmで示した。また、接着強度が非常に強い場合、剥離試験に際して極性基含有オレフィン共重合体層が降伏し、さらには破断する。これは、積層体の接着強度が極性基含有オレフィン共重合体層の引張破断強度よりも高いために発生する現象であり、その接着性は非常に高いものと判断できる。該現象により接着強度が測定できない場合、各実施例の接着強度測定結果には「剥離不可」と記載し、接着強度の数値が測定されたものよりも、より高度に接着されたと判断する。
(5)メルトフローレイト(MFR)
JIS K7210「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイトI(MVR)の試験方法」に従い、190℃、2.16kg荷重の条件下に測定した。
(6)密度
JIS K7112「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」に従い、D法で測定した。
〔製造例1〕極性基含有オレフィン共重合体(A−1)の製造
充分に窒素置換した30mLフラスコに、100μmolのパラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。
次に、内容積2.4リッターの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、極性含有モノマー濃度が0.1mol/Lとなるように精製トルエン、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。
先に調製した触媒溶液を添加し、100℃、エチレン圧を1MPaで重合を開始した。反応中は温度を100℃に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給した。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られた極性基含有オレフィン共重合体(A−1)をアセトン(1L)を用いて共重合体を再沈させ、沈殿した共重合体を濾過した。濾過により得られた固形の極性基含有オレフィン共重合体(A−1)をアセトンで洗浄後、60℃で3時間減圧乾燥後、最終的に極性基含有オレフィン共重合体(A−1)を回収した。重合条件及び活性を表1に示す。
〔製造例2〜4〕極性基含有オレフィン共重合体(A−2,A−3,A−4)の製造
製造例1に記載の方法のうち、配位子種、配位子量、極性基含有モノマー種、極性基含有モノマー濃度、重合圧量、重合温度、重合時間、をそれぞれ変更して重合することにより、製造例2〜4の極性基含有オレフィン共重合体(A−2,A−3,A−4)を調製した。重合条件及び活性を表1に示す。また、表1中の配位子種(I)〜(III)を下記化学式に示す。
各製造例によって得られた極性基含有オレフィン共重合体(A−1,A−2,A−3,A−4)の分析データを表2に示す。なお、表2中の末端導入は末端に導入された極性基含有モノマーの極性基含有構造単位量を、主鎖導入は分子鎖の内部(主鎖中)に導入された極性基含有モノマーの極性基含有構造単位量を、総構造単位は導入された極性基含有構造単位の総量をそれぞれ示している。
Figure 2013227521
〔製造例5〕SHOP系配位子の合成:WO2010−050256記載(合成例4)の方法に従い、下記の配位子B−27DMを得た。
錯体の形成:
初めに50mlのナス型フラスコに、下記B−27DMを112mg(200μmol)秤り取った。次に、ビス−1、5−シクロオクタジエンニッケル(0)(以下Ni(COD)2と称する)を50mlナス型フラスコに56mg(200μmol)秤り取り、20mlの乾燥トルエンに溶解させ10mmol/lのNi(COD)2トルエン溶液を調製した。ここで得られたNi(COD)2トルエン溶液全量(20ml)を、B−27DMの入ったナス型フラスコに加え、40℃の湯浴で30分攪拌することで、B−27DMとNi(COD)2の反応生成物の10mmol/l溶液を20ml得た。
次に、内容積2.4リットルの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、極性含有モノマー濃度が0.05mol/Lとなるように精製トルエン(1.0L)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(8.2g)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。オートクレーブの温度を100℃とした後、0.1mol/lに希釈したトリノルマルオクチルアルミニウムのトルエン溶液を1ml加えた。その後、窒素を0.3MPaまで導入し、さらにエチレンを2.8MPaまで導入した。温度と圧力が安定した後、先に調製した錯体溶液2ml(20μmol)を窒素で圧入することで反応を開始した。反応中は温度を100℃に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給して30分間重合を行った。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られた極性基含有オレフィン共重合体はアセトン(1L)を用いて析出させ、析出した共重合体を濾過した。濾過により得られた固形の極性基含有オレフィン共重合体をアセトンで洗浄後、60℃で3時間減圧乾燥後、最終的に極性基含有オレフィン共重合体を回収した。重合条件及び活性を表1に示す。
〔製造例6〕製造例5に記載の方法のうち、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の濃度を0.02mol/lにし、錯体溶液量を1.0ml(錯体として10μmol)に変更して、重合を20分間行うことで極性基含有オレフィン共重合体を得た。重合条件及び活性を表1に示す。
Figure 2013227521
Figure 2013227521
Figure 2013227521
〔実施例1〕
極性基含有オレフィン共重合体(A−1)0.4gと線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:F30HG、表中では「LLDPE」と表記する)7.6gとをドライブレンドし、小型二軸混練機(DSM Xplore社製 型式:MC15)に投入し、5分間溶融混練した。その際のバレル温度は200℃、スクリュー回転数は100rpmとした。5分経過後、樹脂吐出口から棒状の樹脂組成物を押出し、ステンレス製トレーの上に載せ、室温で冷却して固化させた。冷却した樹脂組成物をペレット状に裁断して、樹脂組成物のペレットを製造した。得られた樹脂組成物のペレットを上記の接着強度測定に供し、接着強度を測定した。接着強度測定結果を表3に示す。
〔実施例2〜8,24,25〕
実施例1に記載の方法のうち、極性基含有オレフィン共重合体の種類、極性基含有オレフィン共重合体と線状低密度ポリエチレンの配合比率をそれぞれ変更して製造することにより実施例2〜8、および実施例24、実施例25の樹脂組成物を製造した。原料樹脂の配合比率、及び接着強度測定結果を表3に示す。
〔比較例1〕
極性基含有オレフィン共重合体(A−1)のみ8.0gを、実施例1と同様の方法で溶融混練し、極性基含有オレフィン共重合体(A−1)単体のペレットを得た。得られたペレットを上記の接着強度測定に供し、接着強度を測定した。接着強度測定結果を表3に示す。
〔比較例2〕
極性基含有オレフィン共重合体(A−2)のみ8.0gを、実施例1と同様の方法で溶融混練し、極性基含有オレフィン共重合体(A−2)単体のペレットを得た。得られたペレットを上記の接着強度測定に供し、接着強度を測定した。接着強度測定結果を表3に示す。
〔比較例3〕
線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:F30HG)のみ8.0gを、実施例1と同様の方法で溶融混練し、線状低密度ポリエチレン単体のペレットを得た。得られたペレットを上記の接着強度測定に供し、接着強度を測定した。接着強度測定結果を表3に示す。
〔比較例4〜7〕
実施例1に記載の方法のうち、極性基含有オレフィン共重合体の種類、極性基含有オレフィン共重合体と線状低密度ポリエチレンの配合比率をそれぞれ変更して製造することにより比較例4〜7の樹脂組成物を製造し、接着強度を測定した。原料樹脂の配合比率、及び接着強度測定結果を表3に示す。
〔実施例9〕
極性基含有オレフィン共重合体(A−3)2.4gと線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:F30HG)5.6gとをドライブレンドし、小型二軸混練機(DSM Xplore社製 型式:MC15)に投入し、5分間溶融混練した。その際のバレル温度は200℃、スクリュー回転数は100rpmとした。5分経過後、樹脂吐出口から棒状の樹脂組成物を押出し、ステンレス製トレーの上に載せ、室温で冷却して固化させた。冷却した樹脂組成物をペレット状に裁断して、樹脂組成物のペレットを製造した。得られた樹脂組成物のペレットを上記の接着強度測定に供し、接着強度を測定した。線状低密度ポリエチレンのメーカー、商品名、グレード、重合に供されたモノマー種、樹脂物性を表4に、接着強度測定結果を表5に示す。表4中の、「HDPE」は高密度ポリエチレン、「LDPE」は高圧法低密度ポリエチレン、「LLDPE」は線状低密度ポリエチレンをそれぞれ表す。
〔実施例10〜22,26〜28〕
実施例9に記載の方法のうち、極性基含有オレフィン共重合体の種類、オレフィン系樹脂の種類、極性基含有オレフィン共重合体と線状低密度ポリエチレンの配合比率をそれぞれ変更して製造する事により、実施例10〜22、および実施例26〜28の樹脂組成物を製造し、接着強度を測定した。各オレフィン系樹脂のメーカー、商品名、グレード、重合に供されたモノマー種、樹脂物性を表4に、極性基含有オレフィン共重合体の種類、オレフィン系樹脂の種類、極性基含有オレフィン共重合体と線状低密度ポリエチレンの配合比率、及び接着強度測定結果を表5に示す。
〔実施例23〕
実施例9の極性基含有オレフィン共重合体(A−3)を極性基含有オレフィン(A−4)に、変更した以外は実施例9と同様の方法によって樹脂組成物を製造し、接着強度を測定した。線状低密度ポリエチレンのメーカー、商品名、グレード、重合に供されたモノマー種、樹脂物性を表4に、接着強度測定結果を表5に示す。
〔比較例8〕
極性基含有オレフィン共重合体(A−3)のみ8.0gを、実施例9と同様の方法で溶融混練し、極性基含有オレフィン共重合体(A−3)単体のペレットを得た。得られたペレットを上記の接着強度測定に供し、接着強度を測定した。接着強度測定結果を表5に示す。
〔比較例9〕
極性基含有オレフィン共重合体(A−4)のみ8.0gを、実施例9と同様の方法で溶融混練し、極性基含有オレフィン共重合体(A−4)単体のペレットを得た。得られたペレットを上記の接着強度測定に供し、接着強度を測定した。接着強度測定結果を表5に示す。
Figure 2013227521
Figure 2013227521
Figure 2013227521
〔実施例と比較例の結果の考察〕
極性基含有オレフィン共重合体100重量部に対し線状低密度ポリエチレンが25〜100,000重量部の範囲で配合された実施例1〜8、および実施例24、実施例25の樹脂組成物は、比較例1、比較例2の極性基含有オレフィン共重合体単体と比較して接着性能が格段に向上している。また、比較例3は線状低密度ポリエチレン単体であり、異種材料との接着性が見られない。更に、比較例4〜7は極性基含有オレフィン共重合体100重量部に対し線状低密度ポリエチレンの配合量が25重量部より低く、接着性能の向上は殆んど見られない。実施例1〜4と、比較例1及び比較例3〜5を図4に、実施例5〜8および実施例25、実施例26と、比較例2,3,6,7を図5にまとめた。図4、図5とも、極性基含オレフィン共重合体の含有量が80wt%以下、すなわち、LLDPEの含有量が極性基含有オレフィン共重合体100重量部に対して25重量部以上であれば、LLDPEの含有量がそれ以下のものと比較して接着性が上昇している。或いは100,000重量部以下であれば、LLDPEの含有量がそれ以上のものと比較して接着性が上昇している。
この事実は、極性基含有オレフィン共重合体100重量部に対しオレフィン系樹脂が25〜100,000重量部の範囲で配合された樹脂組成物であれば、接着性を有することを示している。
実施例9〜22は極性基含有オレフィン共重合体100重量部に対し、各種オレフィン系樹脂が233重量部配合されている。オレフィン樹脂のMFR、密度、重合に供されたモノマー種がいずれの物であっても、比較例8の極性基含有オレフィン共重合体単体と比較して接着性能が格段に向上している。この事実は、オレフィン系樹脂がどのような種類、物性のものであっても、特定範囲の配合比率で極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂がブレンドされていれば、接着性が向上する事を示している。
実施例23は極性基含有オレフィン共重合体の重合に供される極性基含有モノマーの種類が実施例9〜22で用いられたものと異なっているが、この極性基含有オレフィン共重合体100重量部に対し、線状低密度ポリエチレンが233重量部配合された実施例23の樹脂組成物は、比較例9の極性基含有オレフィン共重合体単体と比較して接着性能が格段に向上している。この事実は、極性基含有オレフィン共重合体の重合に供される極性基含有モノマーの種類がいずれの物であっても、特定範囲の配合比率で極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂がブレンドされていれば、接着性が向上する事を示している。
実施例26〜28は、樹脂組成物の製造に供される極性基含有オレフィン共重合体の製造に用いた金属触媒の種類が、実施例1〜25で用いたものと異なっている。実施例26〜28の樹脂組成物はEVOHと高い接着性を示しており、この事実は、樹脂組成物の製造に供される極性基含有オレフィン共重合体の製造方法がいずれの方法であっても、特定範囲の配合比率で極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂がブレンドされていれば、接着性が向上する事を示している。
さらに、実施例26〜28は、ポリアミドとも高い接着性を示している。この事実は、本発明オレフィン系樹脂組成物は、特定の極性の高い素材とのみ接着性を有しているのではなく、各種極性の高い素材とも十分な接着性を有することを明らかにした。
以上の各実施例の良好な結果、及び各比較例との対照により、本発明の構成(発明特定事項)の有意性と合理性及び従来技術に対する卓越性が明確にされている。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、特定の分子構造及び樹脂物性を有する極性基含有オレフィン共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)とが特定範囲の配合比率でブレンドされたことにより他の基材との高い接着性を発現し、工業的に有用な積層体、および複合化製品の製造を可能にした。
本発明によって製造することが可能な樹脂組成物は、接着性だけでなく機械的かつ熱的な物性に優れ、有用な多層成形体として応用可能であり、各種の基材に積層されて、広く包装材、包装容器分野、繊維、パイプ、燃料タンク、中空容器、ドラム缶などの産業資材分野、止水材料などの土木分野、電子・家電部材などの電子分野、電線・ケーブルなどの電線分野などにおいて活用される。

Claims (17)

  1. エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとを、遷移金属触媒の存在下に共重合することで得られる極性基含有オレフィン共重合体(A)と、オレフィン系樹脂(B)とを含む樹脂組成物(C)であって、オレフィン系樹脂(B)の配合量が極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対し、25〜100,000重量部であることを特徴とする、オレフィン系樹脂組成物。
  2. 極性基含有オレフィン共重合体(A)がエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとのランダム共重合体であり、分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量より多いことを特徴とする、請求項1に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
  3. 極性基含有オレフィン共重合体(A)の、GPCによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜3.5の範囲であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
  4. 極性基含有オレフィン共重合体(A)の、DSCにより測定される吸収曲線の最大ピーク位置の温度で表される融点が、50℃〜140℃の範囲であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
  5. 極性基含有オレフィン共重合体(A)が、キレート性配位子を有する第5〜11族の遷移金属触媒の存在下に重合されたことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
  6. 極性基含有オレフィン共重合体(A)が、パラジウム又はニッケル金属にトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒の存在下に重合されたことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
  7. オレフィン系樹脂(B)が、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれるモノマーを少なくとも1種以上、重合することで得られるオレフィン系樹脂であることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
  8. オレフィン系樹脂(B)が、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
  9. 極性基含有オレフィン共重合体(A)の重合に供される極性基含有モノマーがジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーであることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物と、基材層とを少なくとも含むことを特徴とする積層体。
  11. 基材層が、オレフィン系樹脂、極性の高い熱可塑性樹脂、金属、無機酸化物の蒸着フィルム、紙類、セロファン、織布、不織布から選ばれることを特徴とする、請求項10に記載された積層体。
  12. 請求項1〜9のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物を含有してなるラミネート材料を用い、少なくとも1層以上の基材層とラミネート加工することにより積層された事を特徴とするラミネート積層体。
  13. 請求項1〜9のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物を含有してなる押出成形品。
  14. 請求項1〜9のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層と、基材層とを少なくとも含む多層共押出成形品。
  15. 請求項1〜9のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物を含有してなる射出成形品。
  16. 請求項1〜9のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物を含有してなる部材と、基材とを、射出成形によって複合化する事を特徴とする複合化射出成形品。
  17. 請求項1〜9のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物を含有してなる被覆材料が、金属に被覆された事を特徴とする極性基含有オレフィン共重合体被覆金属部材。
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