JP2013220521A - 切削工具用の基材および表面被覆切削工具 - Google Patents

切削工具用の基材および表面被覆切削工具 Download PDF

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Susumu Okuno
晋 奥野
Shinya Imamura
晋也 今村
Hideaki Kaneoka
秀明 金岡
Takahiro Ichikawa
喬啓 市川
Keiichi Tsuda
圭一 津田
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Abstract

【課題】本発明の目的は、被覆膜との密着性に優れた切削工具用の基材を提供することにある。
【解決手段】本発明の切削工具用の基材は、超硬合金からなるものであって、該基材は、表面領域層を含み、該表面領域層は、金属Coと、CoとWとの複合炭化物とを含み、該表面領域層に含まれる結晶粒の平均粒径は、該表面領域層以外に含まれるWCの平均粒径の50%以下であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、切削工具用の基材およびそれを用いた表面被覆切削工具に関する。
最近の切削加工の動向として、地球環境保全の観点から切削油剤を用いないドライ加工が求められていること、被削材が多様化していること、加工能率を一層向上させるため切削速度がより高速になってきていることなどが挙げられる。このため、切削加工に用いられる切削工具において、加工時の刃先温度は高温になる傾向にあり、工具材料に要求される特性は一段と厳しくなっている。
特に工具表面に形成される被覆膜(セラミックスコーティング膜や硬質層などとも呼ばれる)は、このような要求特性を満たすために非常に重要なファクターとなっている。このような被覆膜に要求される特性として、高硬度(耐摩耗性)および高温での安定性(耐酸化性)に加え、基材との強固な密着性が挙げられる。
基材に対する被覆膜の密着性を向上させるために、特開平05−237707号公報(特許文献1)では、超硬合金からなる基材に対して複数の被覆膜が形成され、その第一層にWおよびCoを拡散させることが提案されている。また特開2002−331403号公報(特許文献2)では、基材表面に突起が形成され、その突起の粒界に被覆膜を偏析させることによりアンカー効果を持たせることが提案されている。
特開平05−237707号公報 特開2002−331403号公報
特許文献1では、第一層の被覆温度が700〜800℃と低温のため、基材と被覆膜との密着性を十分に向上させることはできなかった。また特許文献2では、被覆膜は基材表面の突起に沿って凹凸上に成長するが、均一に結晶成長しないため耐摩耗性や強度が低下する問題があった。
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、被覆膜との密着性に優れた切削工具用の基材およびそれを用いた表面被覆切削工具を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、切削工具用の基材の表面領域の状態、すなわち表面領域層の構成を制御することが重要であるとの知見が得られ、この知見に基づきさらに検討を重ねることにより本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の切削工具用の基材は、超硬合金からなるものであって、該基材は、表面領域層を含み、該表面領域層は、金属Coと、CoとWとの複合炭化物とを含み、該表面領域層に含まれる結晶粒の平均粒径は、該表面領域層以外に含まれるWCの平均粒径の50%以下であることを特徴とする。
また、本発明は、上記の切削工具用の基材と、該基材の表面に形成された被覆膜とを含む表面被覆切削工具にも係わる。ここで、該被覆膜は、一または二以上の層で形成され、そのうち該表面領域層と接する層は、立方晶系の結晶構造を有し、更にはFCC(Face Centered Cubic lattice:面心立方格子)型の結晶構造を有することが好ましい。
また、該被覆膜は、周期律表の4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、5族元素(V、Nb、Taなど)、6族元素(Cr、Mo、Wなど)、Al、およびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成されることが好ましく、該被覆膜のうち該表面領域層と接する層は、Ti、Zr、Hf、Cr、およびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成されることが好ましい。
また、該被覆膜は、化学蒸着(CVD)法により形成されることが好ましい。
本発明の切削工具用の基材は、上記の構成を有することにより、その表面に形成される被覆膜との密着性に優れるという極めて優れた効果を有する。したがって、本発明の基材の表面に被覆膜が形成されてなる表面被覆切削工具は、切削加工において長寿命を達成したものとなる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<切削工具用の基材>
本発明の切削工具用の基材は、超硬合金からなるものであり、その表面部に表面領域層を含み、該表面領域層は、金属Coと、CoとWとの複合炭化物とを含み、該表面領域層に含まれる結晶粒の平均粒径は、該表面領域層以外に含まれるWCの平均粒径の50%以下であることを特徴とする。本発明の基材は、このような表面領域層を備えたことにより、当該表面に形成される被覆膜に対して極めて優れた密着性を有したものとなる。これは、恐らく表面領域層を構成する結晶粒を表面領域層以外に含まれるWCの平均粒径の50%以下という微小な平均粒径とすることにより、基材表面の凹凸が低減され、これによりその表面に形成される被覆膜を構成する結晶粒が極めて均一に成長することによって達成されるものと推測される。
ここで、該表面領域層は、該基材の全表面に形成されることが好ましいが、本発明の効果が奏される限り一部の表面においてこの表面領域層が存在しなかったとしても本発明の範囲を逸脱するものではない。
本発明の切削工具用の基材は、超硬合金により構成されるものである。超硬合金としては、従来公知のものをいずれも用いることができるが、特に炭化タングステンと、鉄族元素の1種以上と、第3成分とを含む超硬合金が好ましく、該第3成分は、Ti、Ta、Nb、V、Cr、Zr等の炭化物、窒化物、炭窒化物であることが好ましい。このような組成の超硬合金は、表面領域層の形成に有利となるためである。
ここで、鉄族元素とは、鉄、ニッケル、コバルトの総称である。また、上記第3成分の具体例としては、TiC、TiN、TiCN、TaC、TaN、TaCN、NbC、NbN、NbCN、ZrC、ZrN、ZrCN、VC、VN、VCN、CrC、CrN、CrCN等を挙げることができる。
本発明の切削工具用の基材は、このように超硬合金により構成されるためWCの粒子(結晶粒)を含んでおり、その平均粒径は0.5〜10μm程度である。
<表面領域層>
本発明の切削工具用の基材は、表面領域層を含み、該表面領域層は、金属Coと、CoとWとの複合炭化物とを含み、該表面領域層に含まれる結晶粒の平均粒径は、該表面領域層以外に含まれるWCの平均粒径の50%以下であることを特徴とする。当該表面領域層がこのような構成を有することにより、上述の通り、その表面に形成される被覆膜を構成する結晶粒の成長を極めて均一にさせることができ、以って被覆膜との密着性が飛躍的に向上したものとなる。該表面領域層に含まれる結晶粒の平均粒径は、より好ましくは該表面領域層以外に含まれるWCの平均粒径の40%以下、さらに好ましくは30%以下である。なお、この比率は、小さくなればなるほど好ましく、特にその下限を限定する必要はないが、WC粒子の通常の平均粒径との関係を考慮すると0.1%以上とすることが好ましい。上記平均粒径が50%を超えると、表面領域層の表面の凹凸が顕著となり被覆膜を構成する結晶粒の成長を均一にすることができなくなる。
当該表面領域層に含まれる結晶粒の平均粒径は、上記のような関係が満たされる限り特に限定されるものではないが、通常10〜2000nm程度とすることが好ましい。10nm未満では、被覆膜との十分な密着力が得られなくなる場合があり、2000nmを超えると強度低下を引き起こし靭性を損なう場合がある。
また、表面領域層に含まれる結晶粒は、主として金属Coと、CoとWとの複合炭化物とにより構成されるものである。なお、この表面領域層は、金属Coと、CoとWとの複合炭化物とを含む限り、他の成分が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。他の成分としては、W、Ti、Ta、Cr、V、Nb、Zr等の炭化物(金属元素を1種含むもの)またはそれらの複合炭化物(金属元素を2種以上含むもの)を挙げることができる。
ここで、当該表面領域層は、基材の表面部において上記の構成を有する領域として定義されるものであるが、通常、基材の表面から0.1〜5μm程度の厚み(深さ)を有する領域となる。0.1μm未満の場合には、その直上に形成される被覆膜との十分な密着力を得られない場合があり、また5μmを超えると表面領域層自体の強度が低下し十分な耐摩耗性が得られない場合がある。
このような表面領域層の存在(組成)は、当該基材の破断面(切断後の断面)を走査型電子顕微鏡とEDS(エネルギー分散型X線分析装置)分析とを組み合わせて観察することにより特定することができる。
また、表面領域層に含まれる結晶粒の平均粒径および表面領域層以外の領域に含まれるWC粒子の平均粒径は、以下のようにして測定することができる。
すなわち、まず表面領域層の表面上の任意の法線を含む平面で基材を切断し、その切断面に対し鏡面電界研磨を施した後、透過型電子顕微鏡を用いて観察する。この観察は、観察視野内に20個の粒子が存在するように任意の倍率にて行ない、その20個の粒子の最大径(最長粒子径)を測定しその平均値を平均粒径とする。なお、観察時において結晶粒(粒子)の粒界が不明瞭となる場合は、任意の回折線を選択し、暗視野観察を行なってもよい。
なお、当該表面領域層は、上記のようにして特定することができるが、この表面領域層と内部領域(表面領域層以外の領域)との境界が特に明確でない場合などは、当該基材の表面において上記の構成を備える限り、本発明の表面領域層が形成されているものとみなされる。
このような表面領域層は、上記のとおり、金属Coと、CoとWとの複合炭化物とを含む組成を有するものであるが、このような組成を有することにより、表面領域層の結晶粒の平均粒径を上記のような微小な粒径とすることができる。当該表面領域層は、基材内部の組成に比し、一般に金属Coの存在割合が低くなるが、その一方でCoとWとの複合炭化物を含有するため、Coの総量自体としては基材内部よりも若干多くなる傾向を示す。なお、当該表面領域層に含まれるCoとWとの複合炭化物は、CoとWの両者を含む炭化物であり、たとえばW6Co6C、W3Co3C、W4Co2C、W2Co4C、W9Co24等を挙げることができる。
なお、本発明の表面領域層は、立方晶系の結晶構造を有することが好ましく、さらに好ましくはFCC型の結晶構造を有することが好適である。これにより、基材の表面領域層の直上に形成される被覆膜を構成する層が立方晶系の結晶構造を有する場合において、被覆膜との密着性をさらに向上させることができる。なお、基材内部、表面領域層、および被覆膜の結晶構造は、透過型電子顕微鏡を用いたX線回析で測定することができる。
<表面領域層の形成方法>
本発明の表面領域層は、既に焼結されている超硬合金からなる基材(以下単に「超硬合金基材」とも記す)に対して、高温加熱工程と低温浸炭工程とからなる複合工程を、一回以上行なうことにより形成することができる。
ここで、高温加熱工程とは、超硬合金基材に対し、圧力50hPa〜大気圧(1013hPa)および温度800〜1350℃の下、Ar、H2、N2、TiCl4、CO等の気体を導入し、15分間以上保持する工程をいう。この工程により、超硬合金基材の表面上にCoとWとの複合炭化物が形成されることになる。
また、低温浸炭工程とは、上記の高温加熱工程を経た超硬合金基材に対し、圧力50〜760hPaおよび温度800〜1100℃の下、H2、CH4、C24、C26等の気体を合計50L/min以下の流量で導入し、5分間以上保持する工程をいう。この工程により、上記の高温加熱工程で表面部に形成されたCoとWとの複合炭化物の一部がCoとWCに再度分解されることにより、基材内部のWC粒子と比較して微細なWC、Co、WCとCoの複合炭化物の粒子(結晶粒)からなる表面領域層が形成されることになる。
なお、この低温浸炭工程において、使用する気体の種類と流量、温度状態、および保持時間を適宜選択することで、CoとWとの複合炭化物をCoとWCに再度分解させる量を任意に変更でき、これにより表面領域層の結晶粒の平均粒径を制御することができる。具体的には、保持温度を低くし、保持時間を短くすることにより、該結晶粒の平均粒径を相対的に小さくすることができ、また、保持温度を高くし、保持時間を長くすることにより、該結晶粒の平均粒径を相対的に大きくすることができる。
<表面被覆切削工具>
本発明は、表面被覆切削工具にも係わり、本発明の表面被覆切削工具は、上記の切削工具用の基材と、該基材の表面に形成された被覆膜とを含むものである。
このような表面被覆切削工具としては、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどを挙げることができる。
本発明の表面被覆切削工具において、被覆膜は基材の全面を被覆することが好ましいが、基材の一部がこの被覆膜で被覆されていなかったり、被覆膜の構成が部分的に異なっていたとしても本発明の範囲を逸脱するものではない。このような被覆膜は、一または二以上の層で形成することができる。
<被覆膜>
上記の被覆膜は、切削工具としての耐摩耗性や耐欠損性等の諸特性を向上させたり、使用済刃先の識別性を付与するために形成されるものである。このような被覆膜としては、この種の表面被覆切削工具の基材表面に形成される従来公知の被覆膜を特に限定することなく採用することができ、一または二以上の層で形成することができるが、そのうち上記表面領域層と接する層(すなわち被覆膜中の最下層)は立方晶系の結晶構造を有することが好ましく、更に好ましくはFCC型の結晶構造を有することが好適である。上記のように基材の表面領域層が立方晶系の結晶構造を有し、さらにFCC型の結晶構造を有する場合、両者の密着力がより一層向上するためである。
このような被覆膜は、その化学組成が特に限定されるものではないが、周期律表の4族元素、5族元素、6族元素、Al、およびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成されることが好ましい。このような化合物としては、たとえばTiC、TiN、TiCN、TiNO、TiCNO、TiB2、TiO2、TiBN、TiBNO、TiCBN、ZrC、ZrO2、HfC、HfN、TiAlN、AlCrN、CrN、VN、TiSiN、TiSiCN、AlTiCrN、TiAlCN、ZrCN、ZrCNO、Al23、AlN、AlCN、ZrN、TiAlC、NbC、NbN、NbCN、Mo2C、WC、W2C等を挙げることができる。
さらに、本発明の被覆膜のうち表面領域層と接する層は、Ti、Zr、Hf、Cr、およびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成されることが好ましい。このような組成の被覆膜を形成することにより、基材との密着性をさらに向上させることができる。なお、このような化合物としては、たとえばTiN、TiCN、TiCNO、TiAlN、ZrN、ZrCNO、HfN、HfCN、CrN等を挙げることができる。
このような被覆膜の厚みは特に限定されないが、たとえば0.5〜40μm、より好ましくは1〜30μmとすることができる。また、このような被覆膜は、物理蒸着(PVD)法や化学蒸着(CVD)法など従来公知の形成方法(成膜方法)を特に限定することなく採用することができるが、とりわけ化学蒸着法により形成することが好ましい。化学蒸着法を採用すると成膜温度が800〜1050℃と比較的高く、物理蒸着法などと比較しても基材との密着性に優れるためである。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
6質量%のCo、1.5質量%のTaC、および残部WCからなる組成(ただし不可避不純物を含む)の原料粉末を、十分に混合した後所望の形状となるようにプレス成型し、続けて真空雰囲気中において1450℃で1時間焼結し、その後平面研削処理および刃先稜線に対してSiCブラシによる刃先処理(すくい面側からみて0.05mm幅のホーニングを施す)を行なうことにより、形状が「CNMG120408N−GU」(住友電工ハードメタル(株)製)の超硬合金製チップを作製し、これを超硬合金からなる切削工具用の基材(以下「超硬合金基材」)とした。
次いで、上記のように作製した超硬合金基材を炉内にセットし、表1および表2記載の条件の高温加熱工程および低温浸炭工程を実行することにより、本発明の超硬合金からなる切削工具用の基材を作製した。
続いて、上記で得られた基材の表面に対して、表3記載の構成の被覆膜(すなわち基材直上に0.5μmのTiN層、8.0μmのTiCN層、0.5μmのTiCNO層、5.2μmのAl23層をこの順で形成)を従来公知の熱CVD法で形成することにより、基材とその表面に形成された被覆膜とを含む表面被覆切削工具を作製した。
上記で作製した表面被覆切削工具を、表面領域層(被覆膜)の表面上の任意の法線を含む平面で切断し、その切断面を走査型電子顕微鏡(商品名:「SU6600」、日立ハイテクノロジーズ社製)とEDS分析装置(商品名:「INCA Energy+」、オックスフォードインストゥルメンツ社製)により観察することにより、本発明の構成を有する表面領域層(すなわち金属Coと、CoとWとの複合炭化物とを含む厚み0.7μmのもの)が形成されていることを確認した。
また上記試料について透過型電子顕微鏡(商品名:「JEM2100F」、日本電子社製)を用いてX線回折を行なったところ、表面領域層およびこの表面領域層に接するTiN層が立方晶系でかつFCC型の結晶構造を有していることが確認できた。また、粒径比(表面領域層に含まれる結晶粒の平均粒径が表面領域層以外に含まれるWC粒子の平均粒径の何%になるか)を、前述の方法により測定した各平均粒径から算出した結果、5%であった。
<実施例2〜7および比較例1〜5>
実施例1における高温加熱工程と低温浸炭工程との条件を表1および表2記載の条件に変更すること、および被覆膜の構成を表3に記載の構成とすることを除き、他は全て実施例1と同様にして実施例2〜7および比較例1〜5の表面被覆切削工具を得た。なお、表1および表2中、空欄部分は、該当する工程を行なわなかったことを示す。また、気体の流量比は、体積比を示し、たとえば「H2/Ar=10/1」とは気体としてH2とArとを使用し、体積比でH2をArの10倍の流量で投入したことを示す。また、温度が表示されているものは、その温度に加熱された時点でその気体を投入したことを示し、流量比はその気体が投入された後の体積比を示す(その気体の投入の前後においてそれ以外の気体の投入量は同一である)。
このようにして得られた実施例2〜7の表面被覆切削工具の基材には、本発明の構成の表面領域層が形成されていたのに対して、比較例1〜5の表面被覆切削工具の基材には、本発明の構成の表面領域層は形成されなかった(比較例4および5は、表面領域層自体が形成されなかった)。
実施例2〜7および比較例1〜5の表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして測定した表面領域層の厚みおよび粒径比、ならびに被覆膜のうち表面領域層と接する層の結晶構造を表3に示す。
表3中、「被覆膜の構成」は、左側のものから順に基材上に積層していることを示し、括弧内の数値(μm)は各層の厚みを示している。また、「結晶構造」とは、被覆膜のうち表面領域層と接する層の結晶構造を示し、FCCとは面心立方格子を示し、HCPとは六方最密充填格子を示す。
Figure 2013220521
Figure 2013220521
Figure 2013220521
<評価>
上記のようにして作製した各実施例および各比較例の表面被覆切削工具について、以下に示す2種の切削試験を行なうことにより評価を行なった。その結果を以下の表4に示す。
<切削試験1:旋削耐摩耗性評価>
被削材=SCM415、切削速度=250m/min、送り量=0.3mm/rev、切込み量=1.5mm、切削油=水溶性切削液、という切削条件で切削を行ない耐摩耗性評価を行なった。切削時間が25分間となった時点での逃げ面平均摩耗幅Vb(mm)を測定した。逃げ面平均摩耗幅Vbが小さいものほど、耐摩耗性に優れていることを示している。
<切削試験2:旋削耐チッピング性評価>
被削材=FCD700溝材、切削速度=140m/min、送り量=0.25mm/rev、切込み量=1.5mm、切削油=水溶性切削液、という切削条件で切削を行ない耐摩耗性評価を行なった。工具刃先部において被覆膜が剥離するまでの切削時間(分)を測定した。この時間が長いものほど、耐チッピング性に優れていることを示している。
Figure 2013220521
表4より明らかなように、実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比較して耐摩耗性および耐チッピング性が向上しており、工具寿命が著しく向上していることが確認できた。これにより、本発明の表面被覆切削工具が高速加工において十分対応できることが確認できた。これは、本発明の切削工具用の基材が本発明の構成を有することにより、被覆膜との密着性が向上したことに起因したものであることは明らかである。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (6)

  1. 超硬合金からなる切削工具用の基材であって、
    前記基材は、表面領域層を含み、
    前記表面領域層は、金属Coと、CoとWとの複合炭化物とを含み、
    前記表面領域層に含まれる結晶粒の平均粒径は、前記表面領域層以外に含まれるWCの平均粒径の50%以下である、切削工具用の基材。
  2. 請求項1記載の切削工具用の基材と、該基材の表面に形成された被覆膜とを含む、表面被覆切削工具。
  3. 前記被覆膜は、一または二以上の層で形成され、そのうち前記表面領域層と接する層は、立方晶系の結晶構造を有する、請求項2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記被覆膜は、周期律表の4族元素、5族元素、6族元素、Al、およびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される、請求項2または3に記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記被覆膜のうち前記表面領域層と接する層は、Ti、Zr、Hf、Cr、およびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される、請求項2〜4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記被覆膜は、化学蒸着法により形成される、請求項2〜5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
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