JPWO2020070967A1 - 表面被覆切削工具及びその製造方法 - Google Patents

表面被覆切削工具及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

表面被覆切削工具は、基材と、前記基材を被覆する被覆層とを含む表面被覆切削工具であって、前記被覆層は、第1単位層と第2単位層とが交互に積層された交互層を含み、前記第1単位層はアルミニウム及びジルコニウムを含む窒化物からなり、前記第1単位層において、前記第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記ジルコニウムの原子数の比は0.65以上0.95以下であり、前記第2単位層はバナジウム及びアルミニウムを含む窒化物からなり、前記第2単位層において、前記第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記アルミニウムの原子数の比は0.40以上0.75以下である。

Description

本開示は、表面被覆切削工具及びその製造方法に関する。本出願は、2018年10月3日に出願した日本特許出願である特願2018−188077号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
近年、地球環境保全の観点から切削油剤を用いないドライ加工が求められていること、加工能率を向上させるために切削速度がより高速になってきていること、及び被削材が多様化しており特に航空機や医療の分野では難削材と呼ばれる耐熱合金等の切削が増えていること、等の理由から、切削工程における表面被覆切削工具の刃先温度が高温になる傾向にある。刃先温度が高温になると、表面被覆切削工具と被削材との反応が顕著となることから、表面被覆切削工具の寿命が短くなってしまう。従って、このような過酷な切削条件下においても、優れた工具寿命を示すことのできる表面被覆切削工具が求められている。
例えば、特開2003−34859号公報(特許文献1)には、高速高能率切削における切削工具の耐摩耗性を向上することを目的として、(Alb,[Cr1-ee]c)(C1-dd)の組成(ただし、0.5≦b≦0.8、0.2≦c≦0.5、b+c=1、0.05≦e≦0.95、0.5≦d≦1)または(Ma,Alb,[Cr1-ee]c)(C1-dd)の組成(ただし、MはTi、Nb、W、TaおよびMoよりなる群から選択された少なくとも1種であり、0.02≦a≦0.3、0.5≦b≦0.8、0.05≦c、a+b+c=1、0.5≦d≦1、0≦e≦1)からなる被覆層が開示されている。
また、国際公開第2006/070730号(特許文献2)には、ドライ加工を高加工能率で行うことを目的として、AlとCrとの窒化物からなるA層と、TiとAlとの窒化物からなるB層とが交互に積層された交互層を含む被覆層が開示されている。
特開2003−34859号公報 国際公開第2006/070730号
本開示の一態様に係る表面被覆切削工具は、
基材と、前記基材を被覆する被覆層とを含む表面被覆切削工具であって、
前記被覆層は、第1単位層と第2単位層とが交互に積層された交互層を含み、
前記第1単位層はアルミニウム及びジルコニウムを含む窒化物からなり、
前記第1単位層において、前記第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記ジルコニウムの原子数の比は0.65以上0.95以下であり、
前記第2単位層はバナジウム及びアルミニウムを含む窒化物からなり、
前記第2単位層において、前記第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記アルミニウムの原子数の比は0.40以上0.75以下である、表面被覆切削工具である。
本開示の他の一態様に係る表面被覆切削工具の製造方法は、
上記に記載の表面被覆切削工具の製造方法であって、
前記基材を準備する工程と、
前記基材上に、前記被覆層を形成する工程と、を備え、
前記被覆層を形成する工程は、物理的蒸着法を用いて前記第1単位層と前記第2単位層とを交互に積層することにより前記交互層を形成する工程を含む、表面被覆切削工具の製造方法である。
図1は、本開示の一実施の形態に係る表面被覆切削工具の模式的な拡大断面図である。 図2は、本開示の他の一実施の形態に係る表面被覆切削工具の模式的な拡大断面図である。 図3は、本開示の他の一実施の形態に係る表面被覆切削工具の模式的な拡大断面図である。 図4は、本開示の他の一実施の形態に係る表面被覆切削工具の模式的な拡大断面図である。 図5は、第1単位層及び第2単位層の厚みの比の一例を説明するための図である。 図6は、実施例で用いられたカソードアークイオンプレーティング装置の模式的な断面図である。 図7は、図6に示されるカソードアークイオンプレーティング装置の模式的な上面図である。
[本開示が解決しようとする課題]
航空機のエンジン等に用いられるインコネル(登録商標)等に代表される耐熱合金は、Crを含有する場合が多い。上述の特許文献1及び特許文献2の被覆層はCrを含む。従って、これらの切削工具を用いて耐熱合金を切削した場合、被覆層中のCrと被削材中のCrとが相互拡散して、被覆層の損傷が加速される傾向がある。
また、特許文献1及び特許文献2の被覆層を有する工具を用いて、医療産業や航空機産業等で多く使用されている難削材であるチタン合金を切削した場合、チタン合金は高温強度が高いため、加工時に切削温度が高くなる。チタン合金は熱伝導率が低いため、加工時に工具の刃先に熱が蓄積しやすい。更に、チタン合金は高温時に化学的に活性であるため、工具の凝着摩耗が進行しやすい。
そこで、本目的は、特に難削材の加工においても、長寿命を達成することができる表面被覆切削工具を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
上記態様によれば、特に難削材の加工においても、長寿命を達成することができる表面被覆切削工具を提供することが可能となる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る表面被覆切削工具は、
基材と、前記基材を被覆する被覆層とを含む表面被覆切削工具であって、
前記被覆層は、第1単位層と第2単位層とが交互に積層された交互層を含み、
前記第1単位層はアルミニウム及びジルコニウムを含む窒化物からなり、
前記第1単位層において、前記第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記ジルコニウムの原子数の比は0.65以上0.95以下であり、
前記第2単位層はバナジウム及びアルミニウムを含む窒化物からなり、
前記第2単位層において、前記第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記アルミニウムの原子数の比は0.40以上0.75以下である、表面被覆切削工具である。
このような表面被覆切削工具は、難削材の加工において、長寿命を達成することができる。
(2)前記交互層中の隣り合う前記第1単位層と前記第2単位層とにおいて、前記第1単位層の厚みλ1に対する前記第2単位層の厚みλ2の比λ2/λ1は1以上5以下であることが好ましい。
これによると、膜中のアルミニウムの総量が増えるため、表面被覆切削工具全体としての熱遮断性が向上し、特に、連続切削時の表面被覆切削工具の耐摩耗性が向上する。
(3)前記第1単位層は珪素を含み、
前記第1単位層において、前記第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記珪素の原子数の比は0よりも大きく0.20以下であることが好ましい。
これによると、被覆層は高い硬度を有することができる。
(4)前記第2単位層は珪素を含み、
前記第2単位層において、前記第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記珪素の原子数の比は0よりも大きく0.20以下であることが好ましい。
これによると、被覆層は高い硬度を有することができる。
(5)前記第1単位層は硼素を含み、
前記第1単位層において、前記第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記硼素の原子数の比は0よりも大きく0.10以下であることが好ましい。
これによると、被覆層は高い硬度を有することができる。
(6)前記第2単位層は硼素を含み、
前記第2単位層において、前記第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記硼素の原子数の比は0よりも大きく0.10以下であることが好ましい。
これによると、被覆層は高い硬度を有することができる。
(7)前記第1単位層はバナジウムを含み、
前記第1単位層において、前記第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記バナジウムの原子数の比は0よりも大きく0.30以下であることが好ましい。
これによると、被削材の表面被覆切削工具への溶着を抑制することができる。
(8)前記第1単位層及び前記第2単位層は、それぞれ1層の厚みが0.002μm以上0.2μm以下であることが好ましい。これによると、クラックの進展を抑制することができる。
(9)前記被覆層は前記基材と前記交互層との間に配置される下地層を含み、
前記下地層は、前記第1単位層又は前記第2単位層と同一の組成を有することが好ましい。
下地層が第1単位層と同一の組成を有する場合は、切削初期に基材が露出したとしても、基材と被覆層との界面からの酸化を抑制することができる。下地層が第2単位層と同一の組成を有する場合は、フライス加工やエンドミル加工等の断続加工の場合において、被覆層の耐剥離性を向上することができる。
(10)前記下地層の厚みは0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。これによると、上記の酸化抑制や耐剥離性の効果を得ることができ、かつ、コスト面でも有利である。
(11)前記被覆層は前記交互層の表面側に配置される表面層を含み、
前記表面層は、バナジウム及びアルミニウムを含む炭窒化物からなり、
前記表面層において、前記表面層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記アルミニウムの原子数の比は0.40以上0.75以下であることが好ましい。
これによると、表面被覆切削工具は、より長寿命を達成することができる。
(12)本開示の他の一態様に係る表面被覆切削工具の製造方法は、上記(1)から(11)のいずれかに記載の表面被覆切削工具の製造方法であって、
前記基材を準備する工程と、
前記基材上に、前記被覆層を形成する工程と、を備え、
前記被覆層を形成する工程は、物理的蒸着法を用いて前記第1単位層と前記第2単位層とを交互に積層することにより前記交互層を形成する工程を含む、表面被覆切削工具の製造方法である。
物理的蒸着法を用いて形成された交互層は、結晶性が高く、優れた耐摩耗性を有することができる。従って、得られた表面被覆切削工具は、長寿命を達成することができる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態にかかる表面被覆切削工具の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
本明細書において「A〜B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
本明細書において化合物を化学式で表わす場合、原子比を特に限定しない場合は従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のもののみに限定されるものではない。例えば単に「ZrAlN」と記す場合、「Zr」と「Al」と「N」の原子比は従来公知のあらゆる原子比が含まれるものとする。
[実施の形態1:表面被覆切削工具]
本開示の一実施の形態に係る表面被覆切削工具について、図1〜図5を用いて説明する。図1〜図4は、それぞれ本開示の一実施の形態に係る表面被覆切削工具の模式的な拡大断面図である。図5は、第1単位層及び第2単位層の厚みの比の一例を説明するための図である。
図1〜図4に示されるように、本開示の一実施の形態に係る表面被覆切削工具1,21,31,41は、基材2と、前記基材2を被覆する被覆層3,23,33,43とを備える。被覆層3,23,33,43は、基材2の全面を被覆することが好ましいが、基材2の一部が被覆層で被覆されていなかったり、被覆層の構成が部分的に異なっていたとしても本実施形態の範囲を逸脱するものではない。
本実施形態の表面被覆切削工具は、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ等の切削工具として好適に使用することができる。
<基材>
本実施形態の表面被覆切削工具1,21,31,41に用いられる基材2は、この種の基材として従来公知のものであればいずれも使用することができる。例えば、超硬合金(例えばWC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはTi、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等)、立方晶型窒化硼素焼結体、またはダイヤモンド焼結体のいずれかであることが好ましい。
これらの各種基材の中でも、特にWC基超硬合金、サーメット(特にTiCN基サーメット)を選択することが好ましい。これらの基材は、特に高温における硬度と強度とのバランスに優れるため、表面被覆切削工具の基材として用いた場合に、該表面被覆切削工具の長寿命化に寄与することができる。
<被覆層>
本実施形態の表面被覆切削工具1,21,31,41に含まれる被覆層3,23,33,43は、第1単位層12と第2単位層15とが交互に積層された交互層13,13’を含む。被覆層3,23,33,43は、交互層13,13’に加えて、基材2と交互層13,13’との間に配置される下地層16や、交互層13,13’の表面側に配置される表面層14を含むことができる。
被覆層は、基材を被覆することにより、表面被覆切削工具の耐摩耗性、耐チッピング性、耐熱性、耐酸化性等の諸特性を向上させ、表面被覆切削工具の長寿命化をもたらす作用を有する。
被覆層は、全体の厚みが0.8μm以上15μm以下であることが好ましい。被覆層の全体の厚みが0.8μm未満であると、被覆層の厚みが薄すぎて、表面被覆切削工具の寿命が短くなる傾向にある。一方、15μmよりも厚いと、切削初期において被覆層がチッピングしやすくなり、表面被覆切削工具の寿命が短くなる傾向にある。被覆層の全体の厚みは、被覆層の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察することにより測定することができる。具体的には、断面サンプルの観察倍率を5000〜10000倍とし、観察面積を100〜500μmとして、1視野において任意に選択された3箇所の厚み幅を測定し、その平均値を「厚み」とする。本明細書において、SEMを用いて厚みを測定する場合は、同様の方法で測定する。なお、出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいては、厚みの測定結果を測定視野の選択個所を変更して複数回算出しても、測定結果のばらつきはほとんどなく、任意に測定視野を設定しても恣意的にはならないことが確認された。
被覆層の圧縮残留応力は、絶対値が6GPa以下であることが好ましい。被覆層の圧縮残留応力とは、被覆層全体に存する内部応力(固有ひずみ)の一種であって、「−」(マイナス)の数値(単位:本実施形態では「GPa」を使う)で表される応力をいう。このため、圧縮残留応力が大きいという概念は、数値の絶対値が大きくなることを示し、また、圧縮残留応力が小さいという概念は、数値の絶対値が小さくなることを示す。すなわち、圧縮残留応力の絶対値が6GPa以下であるとは、被覆層の残留応力が−6GPa以上0GPa以下であることを意味する。
被覆層の残留応力が0GPaを超えると引っ張り応力となるため、被覆層の最表面から発生したクラックの進展を抑制できない傾向にある。一方、圧縮残留応力の絶対値が6GPaを超えると、応力が大きすぎて、切削開始前に、特に表面被覆切削工具のエッジ部から被覆層が剥離して表面被覆切削工具の寿命が短くなるおそれがある。
圧縮残留応力は、X線残留応力装置を用いてsinψ法(「X線応力測定法」(日本材料学会、1981年株式会社養賢堂発行)の54〜66頁参照)によって測定することができる。
被覆層の結晶構造は、立方晶型であることが好ましい。被覆層の結晶構造が立方晶型であると、被覆層の硬度が向上する。よって、被覆層中の各層のそれぞれの結晶構造が立方晶型であることが好ましい。なお、被覆層および被覆層中の各層の結晶構造は、当該分野で公知のX線回折装置により解析することができる。
被覆層の硬度は、29GPa以上60GPa以下が好ましく、40GPa以上60GPa以下がより好ましい。これによると、被覆層は十分な硬度を有する。なお、被覆層全体の硬度の測定は、ナノインデンター法(MTS社製Nano Indenter XP)により測定することができる。具体的には、被覆層の表面において3箇所の硬度を測定し、その平均値を「硬度」とする。
<交互層>
本実施形態において、被覆層3,23,33,43は、第1単位層12と第2単位層15とが交互に積層された交互層13,13’を含む。第1単位層はアルミニウム(Al)及びジルコニウム(Zr)を含む窒化物からなり、第1単位層において、第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときのジルコニウムの原子数の比は0.65以上0.95以下である。第2単位層はバナジウム(V)及びアルミニウム(Al)を含む窒化物からなり、第2単位層において、第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときのアルミニウムの原子数の比は0.40以上0.75以下である。
本明細書中、「金属原子」とは、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン、酸素、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、ヒ素、アンチモンおよび炭素以外の元素の原子のことをいう。
本明細書中、第1単位層、第2単位層、下地層、中間層及び表面層を含む各層の組成、及び、各層における金属原子の総数に対する各原子(Zr、Al、Si、B、V)の原子数の比は、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて測定することができる。具体的には、試料表面にX線を照射し、試料表面から放出される光電子の運動エネルギーを計測することで、試料表面を構成する元素の組成、化学結合状態を分析する。
交互層13,13’が上記の構成を有することにより、本実施形態の表面被覆切削工具は、難削材の加工においても、長寿命を達成することができるという優れた効果を示す。この理由は、下記(i)〜(vii)の通りと推察される。
(i)第1単位層はAl及びZrを含む窒化物からなる。Alは酸化されやすいため、被覆層の表面側にAlからなる緻密な酸化物層が形成されやすい。更に、ZrはAlより酸化物の標準生成エネルギーが小さいため、Alよりも酸化されやすく、被覆層の最表面にはZrOからなる緻密な酸化物層が形成されやすい。これらの酸化物層により、被覆層の耐酸化性が向上するため、該被覆層を含む表面被覆切削工具は、難削材の加工においても、長寿命を達成することができる。
(ii)第1単位層において、第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときのZrの原子数の比は0.65以上0.95以下である。この場合、巻野の論文(巻野、「擬2元系窒化物硬質被膜の結晶構造制御と特性」、高温学会誌、高温学会、2007年3月、第33巻、第2号、p.50−59)で予測されている通り、第1単位層の結晶構造が立方晶型となり、高硬度化して耐摩耗性が向上する。よって、第1単位層を含む表面被覆切削工具は、長寿命を達成することができる。
(iii)第2単位層はV及びAlを含む窒化物からなる。V、Al及びNを含む層は、耐摩耗性と耐酸化性と靭性とのバランスに優れる。よって、第2単位層を含む表面被覆切削工具は、長寿命を達成することができる。
(iv)第1単位層及び第2単位層は、従来の被覆層に含まれていたクロム(Cr)やチタン(Ti)を含まない。よって、CrやTiを含む難削材の加工時に、被削材中の元素と被覆層中の元素とが相互拡散することがないため、被覆層のの損傷が進むことがない。よって、第1単位層及び第2単位層を含む表面被覆切削工具は、長寿命を達成することができる。
(v)第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときのAlの原子数の比は0.40以上0.75以下である。この場合、第2単位層の結晶構造が立方晶型となり、高硬度化して耐摩耗性が向上する。よって、第2単位層を含む表面被覆切削工具は、長寿命を達成することができる。
(vi)Al及びZrを含む窒化物からなる層とV及びAlを含む窒化物からなる層とを比べた場合、Al及びZrを含む窒化物からなる層は圧縮残留応力が大きく硬度が低い特性を有し、V及びAlを含む窒化物からなる層は圧縮残留応力が小さく硬度が高い特性を有する傾向がある。交互層は、Al及びZrを含む窒化物からなる第1単位層と、V及びAlを含む窒化物からなる第2単位層とを交互に積層して含むため、第1単位層の硬度が低いという特性は高い硬度を有する第2単位層によって補完され、又、第2単位層の圧縮残留応力が小さいという特性は大きな圧縮残留応力を有する第1単位層によって補完される。従って、交互層全体としては、硬度と圧縮残留応力とがバランス良く向上し、表面被覆切削工具の寿命がより長くなると考えられる。
(vii)交互層は第1単位層及び第2単位層を交互に積層しており、各単位層の界面では組成及び結晶格子が不連続となっている。切削工程中に被覆層の表面層からクラックが発生した場合、該界面においてクラックの進展を抑制することができる。従って、表面被覆切削工具の寿命がより長くなると考えられる。
第1単位層はAl及びZrを含む窒化物からなる。第1単位層はTi及びCrを含まない。Al及びZrを含む窒化物としては、例えば、ZrAlN、ZrAlSiN、ZrAlBN、ZrAlVN、ZrAlVSiN、ZrAlVBNが挙げられる。この様に、Al及びZrを含む窒化物とは、構成元素としてAl及びZrを含む窒化物である。
従来、Zrを含む層を物理的蒸着法を用いて形成する場合、Zrの融点が高いため放電の維持が難しく、安定して成膜することが困難であった。本実施形態の表面被覆切削工具では、第1単位層がZrとともに融点の低いAlを含むため、第1単位層全体の融点が下がる。従って、第1単位層を物理的蒸着法を用いて形成する場合、放電の維持が容易となり、安定して成膜することができる。
また、Zrは高価であるため、表面被覆切削工具の被覆層に配合することは、コスト面で不利であった。本実施形態の表面被覆切削工具の被覆層では、Zrを含む第1単位層とZrを含まない第2単位層とが交互に積層されているため、被覆層をZrを含む単一層で形成する場合よりも、被覆層中のZrの含有量を低減することができる。従って、コスト面でも有利である。また、Zrはインコネルやチタン合金等の難削材に含まれないため、加工時に第1単位層中のZrが被削材中の成分と相互拡散して、被覆層の損傷が加速されることはない。
第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときのZrの原子数の比は0.65以上0.95以下である。この場合、第1単位層の結晶構造が立方晶型となり、高硬度化して耐摩耗性が向上する。Zrの原子数の比は0.65未満であると、結晶構造の一部が六方晶型となるため、第1単位層の硬度が低下し、耐摩耗性が低下する場合がある。一方、Zrの原子数の比が0.95よりも大きいと、Alを添加することによる硬度の向上効果が得られず、第1単位層の硬度が低下してしまう。第1単位層の硬度がより高くなる観点からは、Zrの原子数の比は0.7以上0.85以下が好ましく、0.7以上0.8以下がより好ましい。
第2単位層はV及びAlを含む窒化物からなる。第1単位層はTi及びCrを含まない。V及びAlを含む窒化物としては、例えば、AlVN、AlVSiN、AlVBNが挙げられる。このように、V及びAlを含む窒化物とは、構成元素としてV及びAlを含む窒化物である。
V、Al及びNを含む層は、耐摩耗性と耐酸化性と靭性とのバランスに優れる。よって、第2単位層は、表面被覆切削工具の長寿命化に寄与する。
従来、Vは高価であるため、表面被覆切削工具の被覆層の材料として窒化バナジウム(VN)が選択されることはなかった。本実施形態の第2単位層では、VNにAlNを固溶させてV及びAlを含む窒化物とすることで、第2単位層中のVの量を低減することができる。従って、コスト面でも有利である。
第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときのAlの原子数の比は0.40以上0.75以下である。この場合、第2単位層の結晶構造が立方晶型となり、高硬度化して耐摩耗性が向上する。Alの原子数の比が0.75を超えると、結晶構造の一部が六方晶型となるため、第2単位層の硬度が低下し、耐摩耗性が低下する場合がある。一方、Alの原子数の比が0.40未満であると、Alを添加することによる硬度の向上効果が得られず、第2単位層の硬度が低下してしまう。第2単位層の硬度がより高くなる観点からは、Alの原子数の比は0.55以上0.70以下が好ましく、0.6以上0.65以下がより好ましい。
第1単位層は珪素(Si)を含むことができる。第1単位層がSiを含む場合、第1単位層において、第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの珪素の原子数の比は0よりも大きく0.20以下であることが好ましい。
第2単位層は珪素(Si)を含むことができる。第2単位層がSiを含む場合、第2単位層において、第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの珪素の原子数の比は0よりも大きく0.20以下であることが好ましい。
第1単位層及び/又は第2単位層がSiを上記の量で含む場合、メカニズムは明らかでないが、Siを含む層の組織が微細化し硬度がさらに高くなり、被覆層全体の硬度が高くなるとともに、耐酸化性が向上する。
第1単位層及び/又は第2単位層において、Siの原子数の比が0.20を超えると、Siを含む層が脆くなり、摩耗が促進する傾向にある。また、Siを含む層の金属原料となる合金製ターゲットを熱間静水圧処理で作製する場合、合金製ターゲットが焼成中に割れてしまい、第1単位層又は第2単位層の形成に使用可能な材料強度を得ることが難しくなる傾向にある。
第1単位層及び/又は第2単位層の硬度を高くするとともに、上記の合金製ターゲットの強度を向上する観点からは、第1単位層及び/又は第2単位層において、Siの原子数の比は0.01以上0.15以下であることがより好ましい。
第1単位層は硼素(B)を含むことができる。第1単位層がBを含む場合、第1単位層において、第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの硼素の原子数の比は0よりも大きく0.10以下であることが好ましい。
第2単位層は硼素(B)を含むことができる。第2単位層がBを含む場合、第2単位層において、第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの硼素の原子数の比は0よりも大きく0.10以下であることが好ましい。
第1単位層及び/又は第2単位層がBを上記の量で含む場合、メカニズムは明らかでないが、Bを含む層の硬度がさらに高くなり、被覆層全体の硬度が高くなる。また、切削中の表面酸化によって形成されるBの酸化物が、層中のAlの酸化物を緻密化し、耐酸化性が向上する。さらに、Bの酸化物は低融点であるため切削時の潤滑剤として作用し、被削材の凝着を抑制できる。
第1単位層及び/又は第2単位層の硬度及び耐酸化性がより向上する観点からは、第1単位層及び/又は第2単位層において、Bの原子数の比は0.01以上0.10以下であることがより好ましい。
第1単位層はバナジウム(V)を含むことができる。第1単位層がVを含む場合、第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときのバナジウムの原子数の比は0よりも大きく0.30以下であることが好ましい。
この場合、切削時における高温環境において第1単位層の表面が酸化したとしても、Vの酸化物は低融点であるため切削時の潤滑剤として作用し、被削材の凝着を抑制できる。
Vの原子数の比が0.30を超えると、Vを含む層の硬度が低下する傾向にある。被削材の凝着を抑制するともに、Vを含む層の硬度を高くするという観点からは、第1単位層において、Vの原子数の比は0よりも大きく0.15未満であることがより好ましい。
第1単位層及び第2単位層は、Al、Zr、V及びN以外の不可避不純物を含むことができる。不可避的不純物としては、例えば、酸素及び炭素等が挙げられる。第1単位層及び第2単位層のそれぞれにおける不可避不純物全体の含有量は、0原子%より大きく、1原子%未満であることが好ましい。なお、本明細書中、「原子%」とは、層を構成する原子の総原子数に対する原子数の割合(%)のことを意味する。層を構成する原子の総原子数に対する原子数の割合(%)は、上述のXPS分析を用いて測定することができる。
第1単位層及び第2単位層は、それぞれ1層の厚みが0.002μm以上0.2μm以下であることが好ましい。これによると、被覆層の表面で発生したクラックの進展を抑制することができる。第1単位層及び第2単位層のそれぞれの1層の厚みが0.002μm未満であると、各層が混ざり合って第1単位層及び第2単位層を交互に積層したことによる効果を得ることができない傾向にある。一方、第1単位層及び第2単位層のそれぞれの1層の厚みが0.2μmを超えると、クラックの進展の抑制効果が得られにくい傾向にある。第1単位層及び第2単位層のそれぞれの1層の厚みは、0.005μm以上0.15μm以下がより好ましい。
図5に示されるように、交互層中の第1単位層の厚みをλ1、第2単位層の厚みをλ2とした場合、交互層中の隣り合う第1単位層と第2単位層とにおいて、第1単位層の厚みλ1に対する第2単位層の厚みλ2の比λ2/λ1は1以上5以下であることが好ましい。
第2単位層は高い耐酸化性を有していることに加えて、熱伝導率が低く、切削時に発生した熱を基材に伝えにくい性質を持つ。被覆層中の第2単位層の割合が相対的に増えると、被覆層中のAl総量が増えるため、表面被覆切削工具全体としての熱遮断性が向上し、特に、連続切削時の表面被覆切削工具の耐摩耗性が向上する。λ2/λ1が1未満であると、被覆層の靱性が低下する傾向にある。一方、λ2/λ1が5を超えると、第1単位層と第2単位層とを積層したことによるクラックの進展の抑制効果が得られにくい傾向にある。これらの特性のバランスの観点から、λ2/λ1は1以上3未満であることがより好ましい。
交互層において、第1単位層及び第2単位層のそれぞれの積層数、すなわち第1単位層及び第2単位層の繰り返し回数の下限値は2である。交互層において、第1単位層及び第2単位層のそれぞれの積層数は10以上500以下であることが好ましく、100以上400以下がより好ましい。これによると、第1単位層と第2単位層とを積層することにより、硬度と圧縮残留応力とをバランス良く向上させるという効果を十分に得ることができる。
交互層の全体の厚みは、0.8μm以上15μm以下であることが好ましく、2μm以上7μm以下であることがより好ましい。厚みが0.8μm未満では、連続加工において十分に耐摩耗性を発揮できない傾向があり、15μmを超えると、断続切削において耐チッピング性が安定しない傾向がある。
交互層において、第1単位層と第2単位層とが交互に積層して多層構造を形成していることは、被覆層の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、コントラストの差を多層構造を示すものとして確認することができる。
第1単位層の厚み、第2単位層の厚み、第1単位層及び第2単位層の積層数、及び、交互層の厚みは、被覆層の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察することにより測定することができる。具体的には、薄片化した試料に電子線を照射し、試料を透過した電子や散乱した電子を結像し、高倍率で観察することにより測定することができる。厚みは任意に選択された3箇所において測定し、その平均値を「厚み」とする。本明細書において、TEMを用いて他の層の厚みを測定する場合は、同様の方法で測定する。なお、出願人が測定した限りでは、同一の試料において測定する限りにおいては、厚みの測定結果を測定視野の選択個所を変更して複数回算出しても、測定結果のばらつきはほとんどなく、任意に測定視野を設定しても恣意的にはならないことが確認された。
<下地層>
図3及び図4に示されるように、被覆層33,43は、基材2と被覆層33,43との密着性を高めるために、基材2と交互層13’,13との間に配置される下地層16を含むことができる。下地層を構成する元素は、第1単位層又は第2単位層を構成する元素と同一であることが好ましい。例えば、図3では、下地層16を構成する元素は、第1単位層12を構成する元素と同一である。図4では、下地層16を構成する元素は、第2単位層15を構成する元素と同一である。
従来、基材と被覆層との密着性を高めるために、下地層としてTiNからなる層を形成していた。この場合、製造工程において、被覆層を形成するための元素に加えて、下地層を形成するための元素(Ti)を準備する必要があった。本実施形態では、下地層を構成する元素が第1単位層又は第2単位層を構成する元素と同一であるため、製造工程において、下地層を形成するための元素を、被覆層を形成するための元素と別に準備する必要がなく、生産性が向上する。
下地層を構成する元素の原子比率は、第1単位層又は第2単位層を構成する元素の原子比率と同一であっても、異なっていてもよいが、生産性の観点からは、同一であることが好ましい。すなわち、下地層16は、第1単位層12又は第2単位層15と同一の組成を有することが好ましい。
下地層が第1単位層と同一の組成を有するとは、下地層が交互層に含まれる第1単位層と同一の組成を有することを意味する。この場合、下地層は、Al及びZrを含む窒化物からなり、下地層を構成する金属原子の総数を1としたときのZrの原子数の比は0.65以上0.95以下である。
下地層が第1単位層と同一の組成を有すると、切削加工時に基材が露出したとしても、基材と被覆層との界面からの酸化を抑制することができる。
第1単位層と同一の組成を有する下地層はSi、B又はVを含むことができ、これらの含有量は、該第1単位層と同一とすることができる。特に、下地層がSiを含む場合、下地層を構成する金属原子の総数を1としたときのSiの原子数の比は0よりも大きく0.10以下であることが好ましい。これによると、下地層の硬度が高くなり、結晶構造も微細化するため、耐摩耗性が向上する。
第1単位層と同一の組成を有する下地層としては、例えば、ZrAlN、ZrAlSiN、ZrAlBN、ZrAlVN、ZrAlVSiN、ZrAlVBNが挙げられる。
下地層が第1単位層と同一の組成を有する場合、該下地層の厚みは、各第1単位層の厚みより大きい。例えば、下地層の厚みは0.1μm以上が好ましい。下地層の厚みが0.1μm未満であると、下地層を第1単位層と同一の組成とすることによる基材と被覆層との界面からの酸化の抑制効果を得ることができない傾向にある。一方、下地層の厚みの上限値は特に限定されないが、2μmを超えると、上述の酸化の抑制効果を更に向上することができない傾向にある。よって、コスト面を考慮すると、下地層の厚みは2μm以下が好ましい。下地層の厚みは、0.2μm以上1μm以下が好ましく、0.3μm以上0.8μm以下がより好ましい。下地層の厚みはSEMまたはTEMを用いて測定する。
下地層が第2単位層と同一の組成を有するとは、下地層が交互層に含まれる第2単位層と同一の組成を有することを意味する。この場合、下地層は、V及びAlを含む窒化物からなり、下地層を構成する金属原子の総数を1としたときのAlの原子数の比は0.40以上0.75以下である。
下地層が第2単位層と同一の組成を有すると、第2単位層は応力が小さい傾向にあることから、負荷が刃先に繰り返しかかるようなフライス加工やエンドミル加工等の断続加工において、被覆層の耐剥離性が格段に向上する。耐剥離性向上の観点から、下地層を構成する金属原子の総数を1としたときのAlの原子数の比は0.50よりも大きく0.65以下であることが好ましい。
第2単位層と同一の組成を有する下地層はSi、Bを含むことができ、これらの含有量は、該第2単位層と同一とすることができる。
第2単位層と同一の組成を有する下地層としては、例えば、AlVN、AlVSiN、AlVBNが挙げられる。
下地層が第2単位層と同一の組成を有する場合、該下地層の厚みは、各第2単位層の厚みより大きい。例えば、下地層の厚みは0.1μm以上が好ましい。下地層の厚みが0.1μm未満であると、下地層を第2単位層と同一の組成とすることによる耐剥離性の向上効果を得ることができない傾向にある。一方、下地層の厚みの上限値は特に限定されないが、2μmを超えると、上述の耐剥離性の更なる向上が認められない傾向にある。よって、コスト面を考慮すると、下地層の厚みは2μm以下が好ましい。下地層の厚みは、0.2μm以上1μm以下が好ましく、0.3μm以上0.8μm以下がより好ましい。下地層の厚みはSEMまたはTEMを用いて測定する。
<表面層>
被覆層3,23,33,43は、被覆層3,23,33,43の摩擦係数を低下させ、表面被覆切削工具の長寿命化を図るために、交互層13,13’の表面側に表面層14を含むことができる。表面層はバナジウム(V)とアルミニウム(Al)とを含む炭窒化物(炭素と窒素を含む化合物)からなり、表面層を構成する金属原子の総数を1としたときのAlの原子数の比は0.40以上0.75以下であることが好ましい。
一般的に、炭窒化物は窒化物よりも被削材に対する摩擦係数が低い傾向にある。このような摩擦係数の低下は炭素原子の寄与によるものと考えられる。被覆層が表面層を含むと、被削材に対する被覆層の摩擦係数が低下して、表面被覆切削工具が長寿命化する。
また、VとAlとを含む炭窒化物は優れた耐酸化性を有する。表面層の表面は、切削時において他の層の表面と比べて最も高温となるが、本実施形態の表面層は優れた耐酸化性を有するため、表面被覆切削工具は長寿命化する。耐酸化性の向上の観点から、表面層を構成する金属原子の総数を1としたときのAlの原子数の比は0.40よりも大きく0.75以下がより好ましく、0.50以上0.60以下が更に好ましい。
表面層において、NとCの組成比を調整することにより、所定の色を付与することが可能である。これにより、表面被覆切削工具の外観に意匠性及び識別性を付与でき、商業上有用となる。
表面層はSiを含むことができ、表面層を構成する金属原子の総数を1としたときのSiの原子数の比は0よりも大きく0.20以下が好ましく、0.05以上0.15以下がより好ましい。これによると、表面層の硬度が高くなるとともに、耐酸化性が向上する。
表面層はBを含むことができ、表面層を構成する金属原子の総数を1としたときのBの原子数の比は0よりも大きく0.10未満が好ましく、0よりも大きく0.05以下がより好ましい。これによると、表面層の硬度が高くなる。また、切削中の表面酸化によって形成されるBの酸化物が、層中のAlの酸化物を緻密化する傾向があり、耐酸化性が向上する。
表面層はVを含むことができ、表面層を構成する金属原子の総数を1としたときのVの原子数の比は0よりも大きく0.30以下が好ましく、0よりも大きく0.15未満がより好ましい。これによると、表面層の耐凝着性が向上する。
表面層としては、例えば、AlVCN、AlVSiCN、AlVBCNが挙げられる。この様に、VとAlとを含む炭窒化物とは、構成元素としてV及びAlを含む炭窒化物である。
表面層の厚みは、0.1μm以上が好ましい。表面層の厚みが0.1μm未満であると、表面層による潤滑性の付与効果が得られにくい場合がある。一方、表面層の厚みの上限値は特に限定されないが、2μmを超えると、上述の潤滑性の付与効果を更に向上することができない傾向にある。よって、コスト面を考慮すると、表面層の厚みは2μm以下が好ましい。表面層の厚みはTEMを用いて測定する。
<他の層>
被覆層3,23,33,43は、交互層13,13’、下地層16、表面層14に加えて、他の層を含むことができる。他の層としては、例えば、交互層と表面層との間に、中間層やアルミナ層を含んでいてもよい。
[実施の形態2:表面被覆切削工具の製造方法]
実施の形態1の表面被覆切削工具の製造方法は、基材を準備する工程と、基材上に、被覆層を形成する工程と、を備える。被覆層を形成する工程は、物理的蒸着法を用いて第1単位層と第2単位層とを交互に積層することにより交互層を形成する工程を含む。
<基材を準備する工程>
基材としては、実施の形態1で説明した基材を準備する。
<被覆層を形成する工程>
次に、基材上に被覆層を形成する。被覆層を形成する工程は、物理的蒸着法(PVD法)を用いて第1単位層と第2単位層とを交互に積層することにより交互層を形成する工程を含む。
交互層を含む被覆層の耐摩耗性を向上させるためには、結晶性の高い化合物からなる層を形成することが好ましい。出願人らは、交互層の形成方法として種々の方法を検討した結果、物理的蒸着法を用いることが好ましいことを見出した。なお、基材の直上には、基材と被覆層との密着性を高めるために下地層を形成することができる。
物理的蒸着法としては、カソードアークイオンプレーティング法、バランスドマグネトロンスパッタリング法およびアンバランスドマグネトロンスパッタリング法、HiPIMS法からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。特に、原料元素のイオン化率の高いカソードアークイオンプレーティング法を用いることが好ましい。カソードアークイオンプレーティング法を用いた場合には、交互層を形成する前に、基材の表面に対して金属のイオンボンバードメント処理が可能となるため、基材と交互層を含む被覆層との密着性が格段に向上する。
カソードアークイオンプレーティング法は、例えば、装置内に基材を設置するとともにカソードとしてターゲットを設置した後に、ターゲットに高電圧を印加してアーク放電を生じさせることによってターゲットを構成する原子をイオン化して蒸発させて、基材上に物質を堆積させることにより行なうことができる。
バランスドマグネトロンスパッタリング法は、例えば、装置内に基材を設置するとともに平衡な磁場を形成する磁石を備えたマグネトロン電極上にターゲットを設置し、マグネトロン電極と基材との間に高周波電力を印加してガスプラズマを発生させ、このガスプラズマの発生により生じたガスのイオンをターゲットに衝突させてターゲットから放出された原子を基材上に堆積させることにより行うことができる。
アンバランストマグネトロンスパッタリング法は、例えば、上記のバランスドマグネトロンスパッタリング法におけるマグネトロン電極により発生する磁場を非平衡にして行なうことができる。さらに高電圧を印可でき緻密な膜が得られるHiPIMS法を用いることもできる。
なお、交互層の上に、中間層、アルミナ層、表面層等の他の層を形成することができる。これらの他の層は従来公知の化学気相蒸着法や物理的蒸着法により形成することができる。一つの物理的蒸着装置内において、他の層を第1単位層及び第2単位層と連続的に形成できるという観点から、他の層は物理的蒸着法により形成することが好ましい。
<表面被覆切削工具の作製>
[試料1〜試料23]
(1)基材の準備
図6は、本実施例で用いたカソードアークイオンプレーティング装置の模式的な断面図であり、図7は、図6の装置の概略上面図である。
図6及び図7の装置において、チャンバ101内に、被覆層の金属原料となる合金製ターゲットである第1単位層用のカソード106、第2単位層用のカソード107及び表面層用のカソード120と、基材2を設置するための回転式の基材ホルダ104とが取り付けられている。カソード106にはアーク電源108が取り付けられ、カソード107にはアーク電源109が取り付けられている。また、基材ホルダ104には、バイアス電源110が取り付けられている。また、チャンバ101内には、ガス105が導入されるガス導入口が設けられるとともにチャンバ101内の圧力を調節するためにガス排出口103が設けられており、ガス排出口103から真空ポンプによりチャンバ101内のガスを吸引できる構造となっている。
基材ホルダ104に、基材2としてグレードがJIS規格P30の超硬合金であって、形状がJIS規格のCNMG120408と住友電工ハードメタル株式会社製SEMT13T3AGSNであるチップを装着した。
次に、真空ポンプによりチャンバ101内を減圧するとともに、基材2を回転させながら装置内に設置されたヒータにより温度を500℃に加熱し、チャンバ101内の圧力が1.0×10-4Paとなるまで真空引きを行なった。次に、ガス導入口からアルゴンガスを導入してチャンバ101内の圧力を3.0Paに保持し、バイアス電源110の電圧を徐々に上げながら−1000Vとし、基材2の表面のクリーニングを15分間行なった。その後、チャンバ101内からアルゴンガスを排気することによって基材を洗浄した(アルゴンボンバード処理)。
(2)被覆層の形成
次に、基材2を中央で回転させた状態で、反応ガスとして窒素を導入しながら、基材2の温度を500℃、反応ガス圧を2.0Pa、バイアス電源110の電圧を−50V〜−200Vの範囲のある一定値に維持したまま、カソード106、107にそれぞれ100Aのアーク電流を供給することによって、カソード106、107から金属イオンを発生させて、基材上に表1に示される組成を有する下地層および交互層を形成した。なお、カソード106の組成はZr、Al、Si、B、Vの比率が、表1の第1単位層の組成の比率と同一になるように調整してある。また、カソード107の組成は、Ti、Al、V、Si、Bの比率が、表1の第2単位層の組成の比率と同一になるように調整してある。
交互層は、下地層上に第1単位層と第2単位層とを1層ずつ交互に、表1に示される積層数をそれぞれ積層することにより形成した。また、下地層の厚み、交互層中における第1単位層及び第2単位層のそれぞれの厚み及び積層数は、基材の回転速度で調整した。そして、下地層の厚み、及び第1単位層及び第2単位層の積層数が表1に示される値となったところで蒸発源に供給する電流をストップした。
次に、チャンバ101内に反応ガスとして窒素とメタンガスを導入しながら、基材2の温度を400℃、反応ガス圧を2.0Pa、バイアス電源110の電圧を−350Vに維持したまま、カソード120に100Aのアーク電流を供給することによって、カソード120から金属イオンを発生させて、交互層上に表面層を形成した。表面層の厚みが表1に示される厚みとなったところで蒸発源に供給する電流をストップした。なお、カソード120の組成は、Al、V、Si、B、Vの比率が、表1の表面層の組成の比率と同一になるように調整してある。又、表面層の組成の窒素と炭素の比率は、窒素の導入量とメタンガスの導入量との比によって調整した。これにより、試料1〜3,6〜13,15,16,19,20,22,23の刃先交換型切削チップが作製された。
試料4及び試料5では、試料1と同一の基材上に表1に示される組成を有する第1単位層と第2単位層とを交互に形成し、さらに表面層を形成し、下地層は形成せずに、刃先交換型切削チップが作製された。
試料14では、試料1と同一の基材上に表1に示される組成を有する第1単位層と第2単位層とを交互に形成し、下地層と表面層は形成せずに、刃先交換型切削チップが作製された。
試料17では、試料1と同一の基材上に表1に示される組成を有する第2単位層のみを形成し、下地層、第1単位層及び表面層は形成せずに、刃先交換型切削チップが作製された。
試料18及び試料21では、試料1と同一の基材上に表1に示される組成を有する下地層、及び、第1単位層と第2単位層とを交互に形成し、表面層は形成せずに、刃先交換型切削チップが作製された。
Figure 2020070967
表1における下地層、第1単位層、第2単位層及び表面層の組成は、それぞれXPS(X線光電子分光分析装置)を用いて測定されたものである。
表1における「1層厚み」とは、交互層を構成する第1単位層及び第2単位層のそれぞれの1層当たりの厚みのことを意味する。表1における「厚み」とは、下地層、第1単位層、第2単位層、表面層及び被覆層のそれぞれの全体の厚みのことを意味する。「1層厚み」及び「厚み」は、それぞれTEM及びSEMを用いて測定した値である。
表1における「積層数」とは、交互層における第1単位層及び第2単位層のそれぞれの層数のことを意味する。
表1における「被覆層全体の硬度」は、ナノインデンター(MTS社製Nano Indenter XP)により確認された値である。
表1における「被覆層全体の圧縮残留応力」は、X線残留応力測定装置を用いてsinψ法(「X線応力測定法」(日本材料学会、1981年株式会社養賢堂発行)の54〜66頁参照)によって測定された値を絶対値で示したものである。
表1における「被覆層全体の結晶性」は、X線回折装置により解析されたものである。
<表面被覆切削工具の寿命評価>
(旋削試験)
試料1〜試料23のCNMG120408形状の刃先交換型切削チップのそれぞれについて、合金鋼(SCM440)と難削材(インコネル718)に対して表2に示す条件で湿式の連続旋削試験および断続旋削試験を行ない、刃先の逃げ面摩耗量が0.2mmになるまでの時間を測定した。結果を表3に示す。なお、表3において、切削時間の長い方が寿命がより長いことを示している。
Figure 2020070967
Figure 2020070967
試料1〜試料14、試料21〜試料23は、実施例に該当し、試料15〜試料20は比較例に該当する。試料1〜試料14、試料21〜試料23は、試料15〜試料20に比べて、連続旋削試験および断続旋削試験のいずれにおいても、難削材の高速高能率加工において、刃先交換型切削チップの寿命が長くなることが確認された。
(フライス試験)
試料1〜試料23のSEMT13T3AGSN形状の刃先交換型切削チップのそれぞれについて、難削材からなる幅150mmの板の中心線と、それより幅の広いφ160mmのカッターの中心を合わせて、表面フライス削りを、表4に示す乾式のフライス試験の条件で行ない、刃先の逃げ面摩耗量が0.2mmになるまでの切削長を測定した。結果を表5に示す。なお、表5において、切削長の長い方が寿命がより長いことを示している。
Figure 2020070967
Figure 2020070967
試料1〜試料14、試料21〜試料23は、実施例に該当し、試料15〜試料20は比較例に該当する。試料1〜試料14、試料21〜試料23は、試料15〜試料20に比べて、刃先の切削長さが大きく増加しており、難削材の高速高能率及びドライ条件下のフライス加工においても刃先交換型切削チップの寿命が長くなることが確認された。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,21,31,41 表面被覆切削工具、2 基材、3,23,33,43 被覆層、12 第1単位層、13,13’ 交互層、14 表面層、15 第2単位層、16 下地層。

Claims (12)

  1. 基材と、前記基材を被覆する被覆層とを含む表面被覆切削工具であって、
    前記被覆層は、第1単位層と第2単位層とが交互に積層された交互層を含み、
    前記第1単位層はアルミニウム及びジルコニウムを含む窒化物からなり、
    前記第1単位層において、前記第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記ジルコニウムの原子数の比は0.65以上0.95以下であり、
    前記第2単位層はバナジウム及びアルミニウムを含む窒化物からなり、
    前記第2単位層において、前記第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記アルミニウムの原子数の比は0.40以上0.75以下である、表面被覆切削工具。
  2. 前記交互層中の隣り合う前記第1単位層と前記第2単位層とにおいて、前記第1単位層の厚みλ1に対する前記第2単位層の厚みλ2の比λ2/λ1は1以上5以下である、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記第1単位層は珪素を含み、
    前記第1単位層において、前記第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記珪素の原子数の比は0よりも大きく0.20以下である、請求項1又は請求項2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記第2単位層は珪素を含み、
    前記第2単位層において、前記第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記珪素の原子数の比は0よりも大きく0.20以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記第1単位層は硼素を含み、
    前記第1単位層において、前記第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記硼素の原子数の比は0よりも大きく0.10以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記第2単位層は硼素を含み、
    前記第2単位層において、前記第2単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記硼素の原子数の比は0よりも大きく0.10以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具。
  7. 前記第1単位層はバナジウムを含み、
    前記第1単位層において、前記第1単位層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記バナジウムの原子数の比は0よりも大きく0.30以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具。
  8. 前記第1単位層及び前記第2単位層は、それぞれ1層の厚みが0.002μm以上0.2μm以下である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具。
  9. 前記被覆層は前記基材と前記交互層との間に配置される下地層を含み、
    前記下地層は、前記第1単位層又は前記第2単位層と同一の組成を有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具。
  10. 前記下地層の厚みは0.1μm以上2μm以下である、請求項9に記載の表面被覆切削工具。
  11. 前記被覆層は前記交互層の表面側に配置される表面層を含み、
    前記表面層は、バナジウム及びアルミニウムを含む炭窒化物からなり、
    前記表面層において、前記表面層を構成する金属原子の総数を1としたときの前記アルミニウムの原子数の比は0.40以上0.75以下である、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具。
  12. 請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具の製造方法であって、
    前記基材を準備する工程と、
    前記基材上に、前記被覆層を形成する工程と、を備え、
    前記被覆層を形成する工程は、物理的蒸着法を用いて前記第1単位層と前記第2単位層とを交互に積層することにより前記交互層を形成する工程を含む、表面被覆切削工具の製造方法。
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