JP5681094B2 - 積層硬質皮膜 - Google Patents
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Description
ここで、「基材」は、治具、工具、機械部品(モールド、ダイおよびパンチを含む)のような摺動部材や切削工具の基材と定義される。また、「部材」は、積層硬質皮膜で被覆された基材と定義される。
このように窒素を含むB層とすると、潤滑性が向上するため、部材の長寿命化を図ることができる。
このようにすると、基材の表面に密着性の高い積層硬質皮膜を形成するので、切削工具や摺動部材の長寿命化を図ることができる。
A層とB層を交互に含むと、A層により、B層と基材の密着性を改善することができ、B層により、耐摩耗性を向上させることができる。そのため、部材の長寿命化を図ることができる。
このようにすると、下地層により基材とA層の密着性をさらに向上させることができる。その結果、部材の長寿命化を図ることができる。
このようにすると、積層硬質皮膜は、一または複数のB層がTiBN、SiCN、BCN、TiB2、SiC、B4Cからなる群のうちの1または複数から選択され得る。この場合、B層は、極めて硬く、耐摩耗性に優れており、さらにNを含む場合は潤滑性も優れているため、部材の長寿命化を図ることができる。
図1は、例えば、切削工具や摺動部材などの部材10の断面図であり、部材10の基材2の表面に本発明の第1実施形態に係る積層硬質皮膜1が形成されている。
第1実施形態に係る積層硬質皮膜1は、基材2の表面上にA層11とB層12をこの順で交互に1回以上繰り返して積層されている。つまり、積層硬質皮膜1の最下層がA層11となるように、基材2の表面上に積層されている。
B層12は、前記した選択肢から選ばれる少なくとも1種であるので、これらの中から選択される1種類からなるもののほか、適宜に選択される2種類からなるもの、3種類全てからなるものとすることができる。
なお、B層12が、前記した選択肢から2種類からなる場合としては、例えば、SiCとTiB2の組み合わせ、SiCとB4Cの組み合わせ、TiB2とB4Cの組み合わせを挙げることができる。
B層12は任意に、少なくとも一部に窒素(N)を含ませることができる。つまり、B層12は、TiBN、SiCN、BCN、TiB2、SiC、B4Cのうちの1つまたは複数使用して任意に形成することができる。なお、Nの量は、原子比で0.5以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。Nの量が原子比で0.5を超えると、密着性を改善することができず、部材10の長寿命化を図ることができない。
なお、図3は、第1実施形態(図1参照)と同様、基材2の表面上に形成されるA層11とB層12の積層の繰り返し回数が4回のものを例に示している。また、図4は、基材2の表面上にA層11とB層12をそれぞれ1層ずつ形成したものを示している。
真空アーク蒸発源101は、カソード放電型のアークイオンプレーティング蒸発源であれば好適に用いることができる。
スパッタリング蒸発源102は、アンバランスドマグネトロンスパッタリング蒸発源とも呼ばれており、例えば、神戸製鋼所製UBMS202を好適に用いることができる。
なお、図5では、真空アーク蒸発源101とスパッタリング蒸発源102を2つ備えた成膜装置100を示しているが、これらをそれぞれ3つ備え、かつ交互に配置したものであってもよい。
例えば、一方の真空アーク蒸発源101には、Ti0.8Si0.2、Ti0.95Si0.05、Ti0.9Si0.1、Ti0.7Si0.3、Ti0.6Si0.4およびTi0.7Si0.2B0.1のいずれかからなるターゲットが取り付けられる。
また、例えば、他方の真空アーク蒸発源101には、Ti0.5Al0.5、Ti、Ti0.9Al0.1、Ti0.1Al0.9、Al0.5Cr0.5、Ti0.2Cr0.2Al0.6、Ti0.5Al0.47Si0.03、Al0.45Cr0.5Si0.05、Ti0.2Cr0.2Al0.55Si0.05、Nb0.5Al0.5、Hf0.7Al0.3および(Ti0.5Al0.5)Cのいずれかからなるターゲットが取り付けられる。
下地層とA層は、N2ガス存在下(No.14やNo.15においてはさらに少量のCH4ガスを導入して)で150Aの電流値でアーク放電を実施して形成した。
B層は、A層を形成した後、アーク放電を停止し、チャンバー内にArガスを導入しつつ0.6Paまで減圧し、スパッタリングを行って形成した。A層とB層が各々2層以上の場合、A層の形成とB層の形成を繰り返し実施した。
<ドライ旋削の条件>
被削材 :AISI 316
切削速度 :200m/分
送り :0.14mm/刃
深さ切り込み:4.5mm
潤滑 :ドライ
特に、No.33〜55は、基材とA層の間に下地層を形成したので、密着力と工具寿命がさらに良い結果となった。中でも、No.33〜35、37、39〜55は、M1-yAly(BaCbNcOd)[ただし、0.05≦y≦0.8、0≦a≦0.2、0≦b≦0.4、0.5≦c≦1、0≦d≦0.2、Mは4A族元素、5A族元素、6A族元素およびSi、Yから選ばれる1種以上の元素]からなる下地層であったので、密着力と工具寿命がさらにより良い結果となった。
No.5は、B層を形成しなかったので、No.1と比較して密着力が低く、工具寿命も短かった。
No.6は、A層がSiを含有しない(Siの原子比が0)ものであったため、No.1と比較して密着力が低く、工具寿命も短かった。
No.12は、A層中におけるSiの原子比が0.4を超えていたので、No.1と比較して工具寿命が短かった。
No.16は、A層の厚みが100nm未満であったため、No.1と比較して密着力が低く、工具寿命も短かった。
No.18は、B層の厚みが50nm未満であったため、No.1と比較して密着力が低く、工具寿命も短かった。
No.20は、A層とB層の厚みの合計が500nm未満であったため、No.1と比較して密着力が低く、工具寿命も短かった。
No.26は、A層とB層を入れ替えて皮膜を形成した(つまり、A層の位置にSiC層を形成し、B層の位置にTi0.8Si0.2N層を形成した)ため、No.1と比較して密着力が低く、工具寿命も短かった。
No.58は、B層に含まれるNの量が多いので、No.1と比較して密着力が低く、工具寿命も短かった。
11 A層
12 B層
13 下地層
2 基材
10、20、30、40 部材
Claims (11)
- 基材の表面に形成される積層硬質皮膜であって、
Ti1-xSix(BpCqNr)[ただし、0.05≦x≦0.4、p≧0、q≧0、r>0、p+q+r=1]からなり、少なくとも100nmの厚みを有するA層と、
TiB2、SiC、B4Cから選ばれる少なくとも1種からなり、少なくとも50nmの厚みを有するB層と、を備え、
前記表面側から、前記A層と前記B層をこの順で交互に1回以上繰り返して積層され、
前記A層と前記B層の厚みの合計が少なくとも500nmであり、かつ、
最下の前記A層が、最下の前記B層と前記表面との間にある積層硬質皮膜。 - 請求項1に記載の積層硬質皮膜であって、
前記B層がさらに窒素を含んでいることを特徴とする積層硬質皮膜。 - 請求項1に記載の積層硬質皮膜であって、
前記表面上に1つの前記A層を配置し、このA層上に1つの前記B層を配置したことを特徴とする積層硬質皮膜。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層硬質皮膜であって、
前記表面と最下層となる前記A層の間に、
M1-yAly(BaCbNcOd)[ただし、0.05≦y≦0.8、0≦a≦0.2、0≦b≦0.4、0.5≦c≦1、0≦d≦0.2、Mは4A族元素、5A族元素、6A族元素およびSi、Yから選ばれる1種以上の元素]からなる下地層が形成されていることを特徴とする積層硬質皮膜。 - 請求項4に記載の積層硬質皮膜であって、
前記下地層の組成に関する組み合わせが、AlCr(CN)、TiAl(CN)、TiCrAl(CN)、AlCrSi(CN)、TiAlSi(CN)、またはTiCrAlSi(CN)であることを特徴とする積層硬質皮膜。 - 請求項1に記載の積層硬質皮膜であって、
前記基材が切削工具および/または摺動部材であることを特徴とする積層硬質皮膜。 - 請求項1に記載の積層硬質皮膜であって、
前記基材が切削工具であることを特徴とする積層硬質皮膜。 - 請求項1に記載の積層硬質皮膜であって、
前記基材が摺動部材であることを特徴とする積層硬質皮膜。 - 請求項1に記載の積層硬質皮膜であって、
前記A層と前記B層を交互に含んでなることを特徴とする積層硬質皮膜。 - 請求項4または請求項5に記載の積層硬質皮膜であって、
前記下地層と、前記A層と、前記B層とでなることを特徴とする積層硬質皮膜。 - 請求項1に記載の積層硬質皮膜において、
少なくとも1つの前記B層を、TiBN、SiCN、BCNからなる群のうちの少なくとも1つで形成したことを特徴とする積層硬質皮膜。
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