JPWO2020075355A1 - 切削工具及びその製造方法 - Google Patents

切削工具及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2020075355A1
JPWO2020075355A1 JP2019562671A JP2019562671A JPWO2020075355A1 JP WO2020075355 A1 JPWO2020075355 A1 JP WO2020075355A1 JP 2019562671 A JP2019562671 A JP 2019562671A JP 2019562671 A JP2019562671 A JP 2019562671A JP WO2020075355 A1 JPWO2020075355 A1 JP WO2020075355A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
base material
cutting tool
cutting
constituent element
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019562671A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6641611B1 (ja
Inventor
福井 治世
治世 福井
瀬戸山 誠
誠 瀬戸山
田中 敬三
敬三 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Hardmetal Corp
Original Assignee
Sumitomo Electric Hardmetal Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Electric Hardmetal Corp filed Critical Sumitomo Electric Hardmetal Corp
Priority claimed from PCT/JP2019/027268 external-priority patent/WO2020075355A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6641611B1 publication Critical patent/JP6641611B1/ja
Publication of JPWO2020075355A1 publication Critical patent/JPWO2020075355A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Drilling Tools (AREA)

Abstract

基材と、上記基材上に形成されている被膜とを含む切削工具であって、上記被膜は、上記基材上に形成されている第1層と上記第1層上に形成されている第2層とを含み、上第1層は、チタンを構成元素として含むホウ化物からなり、上記第2層は、ジルコニウムを構成元素として含む窒化物からなる、切削工具。

Description

本開示は、切削工具及びその製造方法に関する。本出願は、2018年10月10日に出願した日本特許出願である特願2018−191736号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
近年の切削工具における技術の動向として、以下の点が挙げられる。(1)地球環境保全の観点から切削油剤を用いないドライ加工が求められていること、(2)加工能率を向上させるために切削速度がより高速になってきていること、(3)被削材が多様化していること、(4)航空・宇宙(ロケット、エンジン)、化学プラント(電極、反応槽、熱交換器)、自動車・オートバイ(エンジン部品、超電動モーター、スプリング、マフラー)、医療(インプラント)等の技術分野で、耐熱合金及び軽量化素材として用いられているチタン合金等の切削が増えていること。このような状況下、切削工程における表面被覆切削工具の刃先温度(刃先の温度)が高温になる傾向にある。刃先温度が高温になると、表面被覆切削工具と被削材とが反応する等して表面被覆切削工具の寿命が短くなる傾向がある。したがって、このような過酷な切削条件下においても、優れた工具寿命を示すことのできる表面被覆切削工具が求められている。
例えば、特開2003−034859号公報(特許文献1)には、高速・高能率切削における切削工具の耐摩耗性を向上することを目的として、(Al,[Cr1−αα)(C1−d)の組成(ただし、0.5≦b≦0.8、0.2≦c≦0.5、b+c=1、0.05≦α≦0.95、0.5≦d≦1)からなる切削工具用硬質皮膜が開示されている。さらに、特許文献1には(M,Al,[Cr1−αα)(C1−d)の組成(ただし、MはTi、Nb、W、TaおよびMoよりなる群から選択された少なくとも1種であり、0.02≦a≦0.3、0.5≦b≦0.8、0.05≦c、a+b+c=1、0.5≦d≦1、0≦α≦1)からなる切削工具用硬質皮膜も開示されている。
また、国際公開2006/070730号(特許文献2)には、ドライ加工を高加工能率で行うことを目的として、AlとCrとを含む窒化物からなるA層と、TiとAlとを含む窒化物からなるB層とが交互に積層された交互層を含む被覆層を含む表面被覆切削工具が開示されている。
特開2003−034859号公報 国際公開2006/070730号
本開示の一態様に係る切削工具は、
基材と、上記基材上に形成されている被膜とを含む切削工具であって、
上記被膜は、上記基材上に形成されている第1層と上記第1層上に形成されている第2層とを含み、
上記第1層は、チタンを構成元素として含むホウ化物からなり、
上記第2層は、ジルコニウムを構成元素として含む窒化物からなる。
本開示の他の一態様に係る切削工具の製造方法は、
上記切削工具の製造方法であって、
上記基材を準備する工程と、
物理的蒸着法を用いて、上記基材上に上記第1層を形成する工程と、
物理的蒸着法を用いて、上記第1層上に上記第2層を形成する工程と、
を含む。
図1は、本開示の一実施の形態に係る切削工具の模式的な拡大断面図である。 図2は、本開示の他の実施の形態に係る切削工具の模式的な拡大断面図である。 図3は、本開示の別の他の実施の形態に係る切削工具の模式的な拡大断面図である。 図4は、本開示の別の他の実施の形態に係る切削工具の模式的な拡大断面図である。 図5は、実施例で用いられたマグネトロンスパッタリング装置の模式的な断面図である。 図6は、図5に示されるマグネトロンスパッタリング装置の模式的な平面図である。
[本開示が解決しようとする課題]
航空機のエンジン等に用いられるインコネル(登録商標)等に代表される耐熱合金の多くは、Crを含有する。硬質被膜にCrを含有する切削工具を用いてCrを含有する耐熱合金を切削した場合、被覆層中のCrと被削材中のCrとが相互拡散して、被覆層の損傷が加速される場合がある。
また、医療産業及び航空機産業等で多く使用されているチタン合金は、難削材と呼ばれ以下の特徴を有している。(1)高温強度が高いことから切削温度が高くなること、(2)熱伝導率が低いために刃先に熱が蓄積し、更に化学的に活性であるため凝着摩耗が進行しやすいこと。このようなチタン合金を切削加工する場合、切削加工に伴う発熱によって上記切削工具の寿命が低下したり、切削加工中にびびり振動が発生し加工精度が低下したりする場合があった。
そこで本開示は、チタンを含む被削材の加工において、長寿命を達成することができる切削工具及びその製造方法を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
上記態様によれば、チタンを含む被削材の加工において、長寿命を達成することができる切削工具及びその製造方法を提供することが可能となる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る切削工具は、
基材と、上記基材上に形成されている被膜とを含む切削工具であって、
上記被膜は、上記基材上に形成されている第1層と上記第1層上に形成されている第2層とを含み、
上記第1層は、チタンを構成元素として含むホウ化物からなり、
上記第2層は、ジルコニウムを構成元素として含む窒化物からなる。
このような構成を備えることによって、上記切削工具は、チタンを含む被削材の加工において、長寿命を達成することができる。
(2)上記第1層の厚さは、0.5μm以上10μm以下である。これによると、上記切削工具は、チタンを含む被削材の加工において、さらなる長寿命を達成することができる。
(3)上記第2層の厚さは、0.5μm以上10μm以下である。これによると、上記切削工具は、チタンを含む被削材の加工において、さらなる長寿命を達成することができる。
(4)上記ホウ化物は、TiBを含む。これによると、膜硬度が高く、さらに熱伝導率が高いことで切削工具全体としての熱浸透性が更に向上するので切削熱を基材(切削工具が切削チップである場合には当該切削チップを固定するホルダ)へ逃がすことができ、特に、連続切削時の切削工具の耐摩耗性が向上する。
(5)上記窒化物は、ZrNを含む。これによると、被削材との凝着が低減され、特に、連続切削時の切削工具の耐摩耗性が向上する。
(6)上記ホウ化物は、ケイ素を構成元素として更に含み、
上記ホウ化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、上記ケイ素の原子数比は0を超えて0.2以下である。これによると、被膜は高い硬度を有することができる。
(7)上記窒化物は、ケイ素を構成元素として更に含み、
上記窒化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、上記ケイ素の原子数比は0を超えて0.2以下である。これによると、被膜は高い硬度を有することができる。
(8)上記ホウ化物は、バナジウムを構成元素として更に含み、
上記ホウ化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、上記バナジウムの原子数比は0を超えて0.2以下である。上記ホウ化物にバナジウムが含まれると低融点酸化物が生成され潤滑性が向上するため、上記ホウ化物の摩擦摩耗特性が向上する。
(9)上記窒化物は、バナジウムを構成元素として更に含み、
上記窒化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、上記バナジウムの原子数比は0を超えて0.2以下である。これによると、被膜は表面に高い潤滑性を有することができる。
(10)上記被膜は、上記第2層上に形成されている表面層を更に含み、
上記表面層は、ジルコニウムを構成元素として含む炭窒化物からなる。これによると、切削工具は、耐凝着性能が向上し、より長寿命を達成することができる。
(11)上記被膜は、上記基材と上記第1層との間に形成されている下地層を更に含み、
上記下地層は、チタン及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を構成元素として含む金属又は化合物からなる。これによると、密着性に優れる切削工具となる。
(12)本開示の一態様に係る切削工具の製造方法は、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の切削工具の製造方法であって、
上記基材を準備する工程と、
物理的蒸着法を用いて、上記基材上に上記第1層を形成する工程と、
物理的蒸着法を用いて、上記第1層上に上記第2層を形成する工程と、
を含む。
物理的蒸着法を用いて形成された被膜は、結晶性が高く、優れた耐摩耗性を有することができる。従って、得られた切削工具は、長寿命を達成することができる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す。)について説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。なお以下の実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分又は相当部分を表わす。本明細書において「A〜B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
さらに、本明細書において、例えば「ZrN」等のように、構成元素の組成比が限定されていない化学式によって化合物が表された場合には、その化学式は従来公知のあらゆる組成比(元素比)を含むものとする。このとき上記化学式は、化学量論組成のみならず、非化学量論組成も含むものとする。例えば「ZrN」の化学式には、化学量論組成「Zr」のみならず、例えば「Zr0.8」のような非化学量論組成も含まれる。このことは、「ZrN」以外の化合物の記載についても同様である。
≪表面被覆切削工具≫
本実施形態に係る表面被覆切削工具(以下、単に「切削工具」という場合がある。)は、
基材と、上記基材上に形成されている被膜とを含む切削工具であって、
上記被膜は、上記基材上に形成されている第1層と上記第1層上に形成されている第2層とを含み、
上記第1層は、チタンを構成元素として含むホウ化物からなり、
上記第2層は、ジルコニウムを構成元素として含む窒化物からなる。
このような構成を備えることによって、上記切削工具は、チタンを含む被削材の加工において、長寿命を達成することができる。ここで、「チタンを含む被削材」とは、金属チタンからなる被削材、又はチタンを構成元素として含む合金からなる被削材のことを意味する。チタンを含む合金としては、例えば、Ti6AL−4V合金等が挙げられる。
本実施形態に係る切削工具は、チタンを構成元素として含むホウ化物からなる第1層と、ジルコニウムを構成元素として含む窒化物からなる第2層とを被膜に含む。上記第1層は高い熱伝導率を有するため、切削工具全体としての熱浸透性が向上し、切削加工時に発生する切削熱を基材へ逃がすことができる。そのため、特に、連続切削時の切削工具の耐摩耗性が向上し、長寿命化する。
従来、切削工具の基材上に被膜を形成するときは、基材よりも被膜の方が高硬度であるので、上記被膜を構成する層のうち、上記基材の硬度に近い層から順に積層し、表面側に硬度が高い層を形成していた。
しかし、本発明者らは、「チタンを構成元素として含むホウ化物」の高い熱伝導率に着目し、被膜に蓄積される切削熱を速く基材側へ逃がすために、当該ホウ化物を第1層として基材上に形成し、当該ホウ化物よりも硬度が低い「ジルコニウムを構成元素として含む窒化物」を上記第1層上に形成するという構成を初めて見出した。
また、上記第1層は圧縮残留応力が高く、硬度が高く、靱性が低い傾向がある。上記第2層は、上記第1層に比べて低応力で低硬度且つ高靱性である傾向がある。このように上記第1層と上記第2層とは備える特性が異なるため、第1層の靱性が低いという特性は高い靱性を有する第2層によって補完され、又、第2層の圧縮残留応力が小さいという特性は大きな圧縮残留応力を有する第1層によって補完される。したがって、被膜全体としては、靱性、硬度及び圧縮残留応力がバランス良く向上し、チタンを含む被削材の加工において切削工具の寿命が長くなると考えられる。なお、当該切削工具は、チタンを含む被削材の加工に適した切削工具ではあるが鉄、鋼、鋳鉄、ステンレス鋼等、従来から知られている他の材料の加工に用いることもできる。
上記切削工具について、図1を用いて説明する。図1は、本開示の一実施の形態に係る切削工具の模式的な拡大断面図である。
図1に示されるように、本開示の一実施の形態に係る切削工具1は、基材2と、上記基材2上に形成されている被膜3とを含む。被膜3は、基材2の全面を被覆することが好ましいが、基材2の一部が被膜3で被覆されていなかったり、被膜3の構成が部分的に異なっていたとしても本実施形態の範囲を逸脱するものではない。
本実施形態の切削工具は、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ等の切削工具として好適に使用することができる。
<基材>
本実施形態の切削工具1に用いられる基材2は、この種の基材として従来公知のものであればいずれも使用することができる。例えば、超硬合金(例えば炭化タングステン(WC)基超硬合金、WCの他にCoを含む超硬合金、WCの他にTi、Ta、Nb等の炭窒化物を添加した超硬合金等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等)、立方晶型窒化硼素焼結体(cBN焼結体)及びダイヤモンド焼結体からなる群より選ばれるいずれかであることが好ましい。
これらの各種基材の中でも、特にWC基超硬合金、サーメット(特にTiCN基サーメット)を選択することが好ましい。これらの基材は、特に高温における硬度と強度とのバランスに優れるため、切削工具の基材として用いた場合に、該切削工具の長寿命化に寄与することができる。
<被膜>
本実施形態の切削工具1に含まれる被膜3は、基材2上に形成されている第1層31と上記第1層31上に形成されている第2層32とを含む(図1)。被膜3は、上記第1層31及び上記第2層32に加えて、他の層を含むことができる。当該他の層としては、例えば、上記第2層32上に形成されている表面層33(図2)、上記基材2と上記第1層31との間に形成されている下地層34(図3)、上記第1層31と上記第2層32との間に形成されている中間層35(図4)等を挙げることができる。上記表面層33、上記下地層34及び上記中間層35については後述する。
被膜3は、基材2を被覆することにより、切削工具の耐摩耗性及び耐欠損性等の諸特性を向上させ、切削工具の長寿命化をもたらす作用を有する。
上記被膜は、全体の厚さが1μm以上15μm以下であることが好ましい。被膜の全体の厚さが1μm未満であると、被膜の厚さが薄すぎて、所望の効果が達成されない場合がある。一方、被膜の全体の厚さが15μmを超えると、切削初期において被膜がチッピングしやすくなり、切削工具の寿命が短くなる傾向にある。被膜の全体の厚さは、被膜の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察することにより測定することができる。具体的には、断面サンプルの観察倍率を5000〜10000倍とし、観察面積を100〜500μmとして、1視野において3箇所の厚さを測定し、それらの平均値を「厚さ」とする。後述の各層の厚さについても、特に記載のない限り同様である。
被膜の圧縮残留応力は、その絶対値が6GPa以下であることが好ましい。被膜の圧縮残留応力とは、被膜全体に存する内部応力(固有ひずみ)の一種であって、「−」(マイナス)の数値(単位:本実施形態では「GPa」を使う)で表される残留応力をいう。このため、「圧縮残留応力が大きい」という概念は、数値の絶対値が大きくなることを示す。また、「圧縮残留応力が小さい」という概念は、数値の絶対値が小さくなることを示す。すなわち、「圧縮残留応力の絶対値が6GPa以下である」とは、被膜の残留応力が−6GPa以上0GPa未満であることを意味する。
被膜の残留応力が0GPaを超えると引張残留応力となるため、被膜の最表面から発生したクラックの進展を抑制しづらくなる傾向にある。一方、圧縮残留応力の絶対値が6GPaを超えると、圧縮残留応力が大きすぎて、切削開始前に、特に切削工具のエッジ部から被膜が剥離して切削工具の寿命が短くなる傾向がある。
圧縮残留応力は、X線残留応力装置を用いて2θ−sinψ法(「X線応力測定法」(日本材料学会、1981年株式会社養賢堂発行)の54〜66頁参照)によって測定することができる。
被膜の硬度は、29GPa以上60GPa以下であることが好ましく、40GPa以上60GPa以下であることがより好ましい。これによると、被膜は十分な硬度を有する。なお、被膜全体の硬度の測定は、ナノインデンター(例えば、MTS社製Nano Indenter XP)を用いた方法により測定することができる。具体的には、被膜の表面において3箇所の硬度を測定し、それらの平均値を「硬度」とする。
(第1層)
上記第1層は、上記基材上に形成されている。ここで、上記第1層は、上記基材の表面に直接接して形成されていてもよいし、後述する下地層を介して基材上に形成されていてもよい。上記第1層は、Ti(チタン)を構成元素として含むホウ化物からなる。これによると、上記第1層は膜硬度が高く、さらに熱伝導率が高い。そのため、切削工具全体としての熱浸透性が向上し、切削熱を基材へ逃がすことができる。特に、加工時に刃先温度が高くなる難削材の加工において、切削工具の耐摩耗性が向上し、長寿命を達成することができる。
上記ホウ化物としては、例えば、TiB、TiB、TiSiB、TiVB等が挙げられる。上記ホウ化物は、TiBを含むことが好ましい。上記ホウ化物は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
上記第1層の組成、及び、上記第1層における金属原子の総数に対する各原子(Ti、B、並びに、後述するSi及びV)の原子数比は、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて測定することができる。具体的には、試料表面にX線を照射し、試料表面から放出される光電子の運動エネルギーを計測することで、試料表面を構成する元素の組成、化学結合状態を分析する。後述する第2層、下地層、表面層及び中間層を含む各層の組成、及び、各層における金属原子の総数に対する各原子(Ti、Cr、Zr、Si、V)の原子数比についても同様に、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて測定することができる。
本明細書中、「金属原子」とは、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン、酸素、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、炭素及びホウ素以外の元素の原子のことをいう。
上記ホウ化物は、六方晶型であることが好ましい。上記ホウ化物が六方晶型で(001)配向していると、結晶のc軸が基材の主面に対して垂直となり、高強度化して耐摩耗性が向上する傾向にある。上記第1層中の結晶構造は、当該分野で公知のX線回折装置により解析することができる。
上記ホウ化物は、Si(ケイ素)を構成元素として含むことができる。すなわち、上記ホウ化物は、ケイ素を構成元素として更に含み、上記ホウ化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、上記ケイ素の原子数比は0を超えて0.2以下であることが好ましい。当該ホウ化物としては、例えば、Ti1−ySi(ただし、yは、0を超えて0.2以下である。)が挙げられる。メカニズムは明らかでないが、上記ホウ化物がケイ素を構成元素として更に含むと、上記第1層の組織が微細化し硬度がさらに高くなり、被膜全体の硬度が高くなるとともに、耐酸化性が向上する。
上記ケイ素の原子数比が0.2を超えると、上記第1層が脆くなり、摩耗が促進する傾向にある。また、上記ホウ化物の金属原料となる合金製ターゲットを熱間静水圧処理で作製する場合、合金製ターゲットが焼成中に割れてしまい、上記第1層の形成に使用可能な材料強度を得ることが難しくなる傾向にある。
第1層の硬度を高くするとともに、上記の合金製ターゲットの強度を向上する観点からは、上記ホウ化物を構成する金属原子の総数を1としたときのケイ素の原子数比は0.01以上0.15以下であることがより好ましく、0.05以上0.15以下であることが更に好ましい。
上記ホウ化物は、V(バナジウム)を構成元素として含むことができる。すなわち、上記ホウ化物は、バナジウムを構成元素として更に含み、上記ホウ化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、上記バナジウムの原子数比は0を超えて0.2以下であることが好ましい。当該ホウ化物としては、例えば、Ti1−z(ただし、zは、0を超えて0.2以下である。)が挙げられる。この場合、切削時における高温環境において第1層の表面が酸化したとしても、バナジウムの酸化物は低融点であるため切削時の潤滑剤として作用し、被削材の凝着を抑制できる。
バナジウムの原子数比が0.2を超えると、上記第1層の硬度が低下する傾向にある。上記第1層の硬度を高くするという観点からは、上記ホウ化物を構成する金属原子の総数を1としたときの上記バナジウムの原子数比は0を超えて0.15以下であることがより好ましく、0.05以上0.15以下であることが更に好ましい。
第1層は、Ti、B、Si及びV以外の不可避不純物を含むことができる。すなわち、「第1層は、チタンを構成元素として含むホウ化物からなる」とは、第1層がチタンを構成元素として含むホウ化物のみからなる場合だけでなく、本開示の効果を奏する限りにおいて第1層がチタンを構成元素として含むホウ化物およびこれに不可避不純物が混入している場合をも含む概念である。不可避的不純物としては、例えば、酸素及び炭素等が挙げられる。上記第1層における不可避不純物全体の含有割合は、0原子%を超えて1原子%未満であることが好ましい。なお、本明細書中、「原子%」とは、上記第1層を構成する原子の総原子数に対する原子数の割合(%)のことを意味する。上記第1層を構成する原子の総原子数に対する原子数の割合(%)は、上述のXPS分析を用いて測定することができる。
上記第1層の厚さは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上4μm以下であることがより好ましい。第1層の厚さは、被膜の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察することにより測定することができる。
(第2層)
上記第2層は、上記第1層上に形成されている。ここで、上記第2層は、上記第1層の表面に直接接して形成されていてもよいし、後述する中間層を介して第1層上に形成されていてもよい。上記第2層は、Zr(ジルコニウム)を構成元素として含む窒化物からなる。ジルコニウムを構成元素として含むため第2層は、耐摩耗性と耐酸化性と靭性とのバランスに優れる。また、第2層中にCr(クロム)及びTiを含まない場合、被削材の元素が拡散することで被膜の損傷が進むことがない。よって、第2層を含む切削工具は、長寿命を達成することができる。
上記窒化物としては、例えば、ZrN、ZrSiN、ZrVN等が挙げられる。上記窒化物は、ZrNを含むことが好ましい。上記窒化物は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
上記窒化物は、立方晶型であることが好ましい。上記窒化物の結晶構造が立方晶型で結晶の稠密面である(111)配向していると、高強度化して耐摩耗性が向上する。なお、上記第2層中の結晶構造は、当該分野で公知のX線回折装置により解析することができる。
上記窒化物は、Si(ケイ素)を構成元素として含むことができる。すなわち、上記窒化物は、ケイ素を構成元素として更に含み、上記窒化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、上記ケイ素の原子数比は0を超えて0.2以下であることが好ましい。当該窒化物としては、例えば、Zr1−vSiN(ただし、vは、0を超えて0.2以下である。)が挙げられる。メカニズムは明らかでないが、上記窒化物がケイ素を構成元素として更に含むと、上記第2層の組織が微細化し硬度がさらに高くなり、被膜全体の硬度が高くなるとともに、耐酸化性が向上する。
ケイ素の原子数比が0.2を超えると、上記第2層が脆くなり、摩耗が促進する傾向にある。また、上記窒化物の金属原料となる合金製ターゲットを熱間静水圧処理で作製する場合、合金製ターゲットが焼成中に割れてしまい、上記第2層の形成に使用可能な材料強度を得ることが難しくなる傾向にある。
上記第2層の硬度を高くするとともに、上記の合金製ターゲットの強度を向上する観点からは、上記窒化物を構成する金属原子の総数を1としたときのケイ素の原子数比は0.01以上0.15以下であることがより好ましく、0.05以上0.15以下であることが更に好ましい。
上記窒化物は、V(バナジウム)を構成元素として含むことができる。すなわち、上記窒化物は、バナジウムを構成元素として更に含み、上記窒化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、上記バナジウムの原子数比は0を超えて0.2以下であることが好ましい。当該窒化物としては、例えば、Zr1−wN(ただし、wは、0を超えて0.2以下である。)が挙げられる。この場合、切削時における高温環境において第2層の表面が酸化したとしても、バナジウムの酸化物は低融点であるため切削時の潤滑剤として作用し、被削材の凝着を抑制できる。
バナジウムの原子数比が0.2を超えると、上記第2層の硬度が低下する傾向にある。被削材の凝着を抑制するともに、上記第2層の硬度を高くするという観点からは、上記窒化物を構成する金属原子の総数を1としたときの上記バナジウムの原子数比は0を超えて0.15以下であることがより好ましく、0.05以上0.15以下であることが更に好ましい。
第2層は、Zr、Si、V及びN以外の不可避不純物を含むことができる。すなわち、「第2層は、ジルコニウムを構成元素として含む窒化物からなる」とは、第2層がジルコニウムを構成元素として含む窒化物のみからなる場合だけでなく、本開示の効果を奏する限りにおいて第2層がジルコニウムを構成元素として含む窒化物およびこれに不可避不純物が混入している場合をも含む概念である。不可避的不純物としては、例えば、酸素及び炭素等が挙げられる。上記第2層における不可避不純物全体の含有割合は、0原子%を超えて1原子%未満であることが好ましい。上記第2層を構成する原子の総原子数に対する原子数の割合(%)は、上述のXPS分析を用いて測定することができる。
上記第2層の厚さは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上4μm以下であることがより好ましい。第2層の厚さは、被膜の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察することにより測定することができる。
また、上記第1層及び上記第2層の合計の厚さは、1μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上15μm以下であることがより好ましく、2μm以上7μm以下であることが更に好ましい。厚さが1μm未満では、連続加工において十分に耐摩耗性を発揮できない傾向があり、20μmを超えると、断続切削において耐チッピング性が安定しない傾向がある。
(他の層)
本実施形態の切削工具1に含まれる被膜3は、上記第1層31及び上記第2層32に加えて、他の層を含むことができる。他の層としては、例えば、上記第2層32上に形成されている表面層33(図2)、上記基材2と上記第1層31との間に形成されている下地層34(図3)、上記第1層31と上記第2層32との間に形成されている中間層35(図4)等を挙げることができる。
(表面層)
本実施形態に係る表面層33は、上記第2層32上に形成されている(図2)。上記表面層33は単層であってもよいし、多層であってもよい。上記表面層33は、ジルコニウムを構成元素として含む炭窒化物からなることが好ましい。上記炭窒化物としては、例えば、ZrCN、ZrSiCN、ZrVCN等が挙げられる。上記炭窒化物は、1種類を単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
一般的に、炭窒化物は窒化物よりも被削材に対する摩擦係数が低い傾向にある。このような摩擦係数の低下は炭素原子の寄与によるものと考えられる。被膜が表面層を含むと、被削材に対する被膜の摩擦係数が低下して、切削工具が長寿命化する。
上記表面層において、NとCの組成比を調整することにより、所定の色を付与することが可能である。これにより、切削工具の外観に意匠性及び識別性を付与でき、産業上有用となる。
上記炭窒化物は、ケイ素を構成元素として更に含むことが好ましい。上記炭窒化物を構成する金属原子の総数を1としたときのケイ素の原子数の比は、0を超えて0.2以下であることが好ましく、0.05以上0.15以下であることがより好ましい。これによると、表面層の硬度が高くなるとともに、耐酸化性が向上する。
上記炭窒化物は、バナジウムを構成元素として更に含むことが好ましい。上記炭窒化物を構成する金属原子の総数を1としたときのバナジウムの原子数の比は、0を超えて0.2以下であることが好ましく、0を超えて0.15以下であることがより好ましい。これによると、表面層の耐凝着性が向上する。
上記炭窒化物は、B(ホウ素)を構成元素として更に含むことが好ましい。上記炭窒化物を構成する非金属原子(すなわち、C、N及びB)の総数を1としたときのホウ素の原子数の比は、0を超えて0.5以下であることが好ましく、0を超えて0.2以下であることがより好ましい。これによると、被膜硬度が向上する。
上記表面層の厚さは、0.1μm以上であることが好ましい。上記表面層の厚さが0.1μm未満であると、表面層による潤滑性の付与効果が得られにくい傾向がある。一方、上記表面層の厚さの上限値は特に限定されないが、2μmを超えても、上述の潤滑性の付与効果がそれ以上変わらない傾向がある。よって、コスト面を考慮すると、上記表面層の厚さは、2μm以下であることが好ましい。表面層の厚さは、被膜の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察することにより測定することができる。
(下地層)
本実施形態に係る下地層34は、上記基材2と上記第1層31との間に形成されている(図3)。上記下地層34は、単層であってもよいし、多層であってもよい。上記下地層34は、Ti(チタン)及びCr(クロム)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を構成元素として含む金属又は化合物からなることが好ましい。上記下地層を設けることによって、上記基材1と上記第1層31との密着力が向上する傾向にある。当該金属としては、例えば、金属チタン、金属クロム、チタン及びクロムを構成元素として含む合金等が挙げられる。当該化合物としては、例えば、CrN、TiN等が挙げられる。
上記下地層の厚さは、2nm以上0.5μm以下であることが好ましく、2nm以上0.1μm以下であることがより好ましい。下地層の厚さは、被膜の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)、またはTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察することにより測定することができる。
≪表面被覆切削工具の製造方法≫
上述の本開示の一実施の形態に係る切削工具の製造方法は、上記切削工具の製造方法であって、
上記基材を準備する工程(以下、「第1工程」という場合がある。)と、
物理的蒸着法を用いて、上記基材上に上記第1層を形成する工程(以下、「第2工程」という場合がある。)と、
物理的蒸着法を用いて、上記第1層上に上記第2層を形成する工程(以下、「第3工程」という場合がある。)と、
を含む。
上記切削工具の製造方法では、耐摩耗性を有する被膜を基材上に形成することを目的とするため、結晶性の高い化合物からなる層を形成することが望ましい。本発明者らがそのような被膜を開発すべく、各種成膜技術を検討したところ、その手段としては物理的蒸着法を用いることが適切であった。物理的蒸着法とは、物理的な作用を利用して原料(蒸発源、ターゲットともいう。)を気化し、気化した原料を基材上に付着させる蒸着方法である。特に、本実施形態で用いる物理的蒸着法は、カソードアークイオンプレーティング法、バランスドマグネトロンスパッタリング法及びアンバランスドマグネトロンスパッタリング法からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
カソードアークイオンプレーティング法を用いる場合、被膜を形成する前に、基材の表面に対して金属のイオンボンバード洗浄処理が可能であるので、洗浄時間を短縮することもできる。カソードアークイオンプレーティング法は、装置内に基材を設置するとともにカソードとしてターゲットを設置した後、このターゲットに高電流を印加してアーク放電を生じさせる。これにより、ターゲットを構成する原子を蒸発させイオン化させて、負のバイアス電圧を印可した基材上に堆積させて被膜を形成する。
さらに、例えば、バランスドマグネトロンスパッタリング法は、装置内に基材を設置するとともに平衡な磁場を形成する磁石を備えたマグネトロン電極上にターゲットを設置し、マグネトロン電極と基材との間に高周波電力を印加してガスプラズマを発生させる。このガスプラズマの発生により生じたガスのイオンをターゲットに衝突させてターゲットから放出された原子をイオン化させ、基材上に堆積させることにより被膜を形成する。
アンバランスドマグネトロンスパッタリング法は、上記バランスドマグネトロンスパッタリング法におけるマグネトロン電極により発生する磁場を非平衡にすることにより、被膜を形成する。
<第1工程:基材を準備する工程>
第1工程では基材が準備される。例えば、基材として超硬合金基材が準備される。超硬合金基材は、市販品を用いてもよく、一般的な粉末冶金法で製造してもよい。一般的な粉末冶金法で製造する場合、例えば、ボールミル等によってWC粉末とCo粉末等とを混合して混合粉末を得る。該混合粉末を乾燥した後、所定の形状に成形して成形体を得る。さらに該成形体を焼結することにより、WC−Co系超硬合金(焼結体)を得る。次いで該焼結体に対して、ホーニング処理等の所定の刃先加工を施すことにより、WC−Co系超硬合金からなる基材を製造することができる。第1工程では、上記以外の基材であっても、この種の基材として従来公知の基材であればいずれも準備可能である。
(基材を洗浄する工程)
後述する第2工程の前に、基材を洗浄する工程を行なうことができる。例えば、第2工程においてマグネトロンスパッタリング法を用いて第1層を形成する前に、基材の表面に対してイオンボンバードメント処理を施すことができる。これにより例えば、基材として超硬合金基材を用いた場合、基材の表面から軟質な結合相を除去することができる。その後、基材上に第1層又は下地層を形成することにより、第1層又は下地層と基材とが接する部分における硬質粒子の占有率を高めることができる。このとき基材における第1層又は下地層と接する面積のうち80%以上がWCであることがより好ましい。
(下地層を形成する工程)
さらにイオンボンバードメント処理自体により、下地層を形成することができる。すなわちイオンボンバードメント処理においてクロム、チタン又はこれらの組合せの元素を含むターゲットを使用することにより、基材の表面を洗浄しながら、これらの元素を下地層として基材の表面に付着させることができる。そして、これらの元素が付着した表面上に、後述する第2工程である第1層を形成する工程を行なうことにより、密着力に優れる下地層を、第1層と併せて形成することができる。イオンボンバードメント処理に使用され、かつ下地層に含まれる元素としては、クロムであることがより好ましい。クロムは昇華性の元素であるため、イオンボンバードメント処理の際に溶融粒子(ドロップレット)の発生が少なく、基材の表面荒れを防止できるからである。
例えば第1工程及びその後の基材を洗浄する工程は、次のようにして行なうことができる。まず、基材2として任意の形状のチップを準備する(第1工程)。次に成膜装置120のチャンバ130内に、上記基材2を装着する。例えば、図5に示す成膜装置120を用いて説明すれば、基材2を、チャンバ130内の中央に回転可能に備え付けられた回転テーブル121上の基材ホルダ122の外表面に取り付ける。基材ホルダ122には、バイアス電源142を取り付ける。
続いて、図6に示すように、チャンバ130内の所定位置に、被膜の金属原料である合金製ターゲットを対応する第1層形成用の蒸発源131、第2層形成用の蒸発源132、イオンボンバードメント用の蒸発源133及び表面層形成用の蒸発源134にそれぞれ取り付ける。第1層形成用の蒸発源131及び第2層形成用の蒸発源132にはパルス電源141を取り付け、イオンボンバードメント用の蒸発源133、表面層形成用の蒸発源134にもそれぞれパルス電源(図示せず)を取り付ける。
チャンバ130内には、雰囲気ガスを導入するためのガス導入口123が設けられ、チャンバ130から雰囲気ガスを排出するためのガス排出口124が設けられている。このガス排出口124から真空ポンプによってチャンバ130内の雰囲気ガスを吸引することができる。
まず、真空ポンプによりチャンバ130内を1.0×10−5〜1.0×10−3Paまで減圧するとともに、回転テーブル121を回転させることにより基材ホルダ122の基材2を回転させながら、装置内に設置されたヒータ(図示せず)により基材2の表面温度を400〜700℃に加熱する。
次に、ガス導入口123から雰囲気ガス(スパッタリングガス)としてアルゴンガスを導入し、チャンバ130内の圧力を1.0〜4.0Paに保持し、バイアス電源142の電圧を徐々に上げながら−1000〜−400Vとし、基材2の表面を15〜90分に亘り洗浄する(アルゴンイオンによるイオンボンバードメント処理)。これにより、基材2が超硬合金基材である場合、その表面から結合相を除去することができる。
イオンボンバードメント用の蒸発源133にパルス電源を用いて5.5〜7.5kWの電力を印可し、基材2の表面に対してイオンボンバードメント処理を15〜90分に亘り施すことにより、基材2の表面をさらに洗浄するとともに、所定の金属元素を表面に付着させる(下地層を形成する工程)。
<第2工程:第1層を形成する工程>
第2工程では、上記基材上に第1層が形成される。その方法としては、形成しようとする第1層の組成に応じて、各種の方法が用いられる。例えば、チタン、ホウ素、ケイ素及びバナジウム等の粒径をそれぞれ変化させた合金製ターゲットを使用する方法、それぞれ組成の異なる複数のターゲットを使用する方法、成膜時に印可するバイアス電圧をパルス電圧とする方法、成膜時にガス流量を変化させる方法、又は、成膜装置において基材を保持する基材ホルダの回転速度を調整する方法等を挙げることができる。これらの方法を組み合わせて第1層を形成することもできる。
例えば、第2工程は、次のようにして行なうことができる。すなわち、上記基材2の洗浄に引き続き、基材2をチャンバ130内の中央で回転させた状態で、雰囲気ガスとしてArを導入する。さらに、基材2を温度400〜700℃に、ガス圧を0.3〜0.5Paに、バイアス電源142の電圧を−30〜−100Vの範囲に維持したまま第1層形成用の蒸発源131にパルス電源141を用いて5.5〜7.5kWの電力を供給する。これにより、蒸発源131から金属イオン及びホウ素のイオンを発生させ、所定の時間が経過したところでパルス電源141からの電力の供給を止めて、基材2の表面上に第1層を形成する。さらに、成膜時間を調節することにより、第1層の厚さが所定範囲になるように調整する。
<第3工程:第2層を形成する工程>
第3工程では、上記第1層上に第2層が形成される。その方法としても第2工程と同様に、形成しようとする第2層の組成に応じて、各種の方法が用いられる。例えば、ジルコニウム、ケイ素及びバナジウム等の粒径をそれぞれ変化させた合金製ターゲットを使用する方法、それぞれ組成の異なる複数のターゲットを使用する方法、成膜時に印可するバイアス電圧をパルス電圧とする方法、ガス流量を変化させる方法、又は、成膜装置において基材を保持する基材ホルダの回転速度を調整する方法等を挙げることができる。これらの方法を組み合わせて第2層を形成することもできる。
例えば、第3工程は、次のようにして行なうことができる。すなわち、第1層を形成する工程に引き続き、第1層が形成された基材2をチャンバ130内の中央で回転させた状態で、スパッタリングガスとしてアルゴンガスを、反応ガスとして窒素ガスを導入する。さらに、当該基材2を温度400〜700℃に、反応ガス圧を0.3〜1Paに、バイアス電源142の電圧を−30〜−100Vの範囲に維持したまま、第2層形成用の蒸発源132にパルス電源141より5.5〜7.5kWの電力を供給することによって、蒸発源132から金属イオンを発生させる。その後、所定の時間が経過したところでパルス電源141からの電力供給を止めて、上記第1層上に第2層を形成する。さらに、成膜時間を調節することにより、第2層の厚さが所定範囲になるように調整する。
(表面層を形成する工程)
上記第3工程の後に、表面層を形成する工程を行なうことができる。例えば、表面層を形成する工程は以下のようにして行われる。すなわち、第2層を形成する工程に引き続き、第2層が形成された基材2をチャンバ130内の中央で回転させた状態で、スパッタリングガスとしてアルゴンガスを、反応ガスとして窒素ガスを導入する。さらに、当該基材2を温度400〜700℃に、反応ガス圧を0.3〜1Paの範囲に、バイアス電源142の電圧を−30〜−100Vの範囲に維持したまま、表面層形成用の蒸発源134にパルス電源より5.5〜7.5kWの電力を供給する。これにより、当該蒸発源134から金属イオンを発生させ、所定の時間が経過したところでパルス電源からの電力の供給を止めて、第2層上に表面層を形成する。なお、表面層の組成によっては、表面層形成用の蒸発源134の代わりに第2層形成用の蒸発源132を用いて、表面層を形成してもよい。
(その他の工程)
第1層及び第2層を形成した後、被膜に圧縮残留応力を付与してもよい。靭性が向上するからである。圧縮残留応力は、例えばブラスト法、ブラシ法、バレル法、イオン注入法等によって付与することができる。
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
(付記1)
基材と、前記基材上に形成されている被膜とを含む表面被覆切削工具であって、
前記被膜は、前記基材上に形成されている第1層と前記第1層上に形成されている第2層とを含み、
前記第1層は、構成元素としてTiを含むホウ化物からなり、
前記第2層は、構成元素としてZrを含む窒化物からなる、表面被覆切削工具。
(付記2)
前記第1層は、その厚さが0.5μm以上10μm以下である、付記1に記載の表面被覆切削工具。
(付記3)
前記第2層は、その厚さが0.5μm以上10μm以下である、付記1又は付記2に記載の表面被覆切削工具。
(付記4)
前記ホウ化物は、TiBを含む、付記1〜付記3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(付記5)
前記窒化物は、ZrNを含む、付記1〜付記4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(付記6)
前記ホウ化物は、構成元素としてSiを更に含み、
前記ホウ化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、前記Siの原子数比は0を超えて0.2以下である、付記1〜付記5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(付記7)
前記窒化物は、構成元素としてSiを更に含み、
前記窒化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、前記Siの原子数比は0を超えて0.2以下である、付記1〜付記6のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(付記8)
前記ホウ化物は、構成元素としてVを更に含み、
前記ホウ化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、前記Vの原子数比は0を超えて0.2以下である、付記1〜付記7のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(付記9)
前記窒化物は、構成元素としてVを更に含み、
前記窒化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、前記Vの原子数比は0を超えて0.2以下である、付記1〜付記8のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(付記10)
前記被膜は、前記第2層上に形成されている表面層を更に含み、
前記表面層は、構成元素としてZrを含む炭窒化物からなる、付記1〜付記9のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(付記11)
前記被膜は、前記基材と前記第1層との間に形成されている下地層を更に含み、
前記下地層は、Ti及びCrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を構成元素として含む金属又は化合物からなる、付記1〜付記10のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(付記12)
付記1〜付記11のいずれかに記載の表面被覆切削工具の製造方法であって、
前記基材を準備する工程と、
物理的蒸着法を用いて、前記基材上に前記第1層を形成する工程と、
物理的蒸着法を用いて、前記第1層上に前記第2層を形成する工程と、
を含む、表面被覆切削工具の製造方法。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、後述する被膜、第1層、第2層及び表面層それぞれの厚さは、以下の方法で求めた値である。すなわち、作製した切削工具を切断することで得られた断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて上述した手順で観察し、それぞれの断面において測定した厚さを平均することで求めた値である。
<切削工具の作製>
図5は、本実施例で用いた成膜装置(マグネトロンスパッタリング装置)の模式断面図である。図6は、本実施例で用いた成膜装置の模式平面図である。
(第1工程:基材を準備する工程)
本実施例では、基材2としてグレードがJIS規格P30の超硬合金であって、形状がJIS規格のCNMG120408及び住友電工ハードメタル株式会社製SEMT13T3AGSNであるチップ、並びに、ラジアスエンドミル(φ12mm)それぞれを準備した(基材を準備する工程)。
図5に示すように、基材2は、成膜装置120のチャンバ130内の中央に回転可能に備え付けられた回転テーブル121上の基材ホルダ122の外表面に取り付けた。
図6に示すように、チャンバ130には、被膜の金属原料となる合金製ターゲットである第1層形成用の蒸発源(第1層を構成する組成の金属原料からなる合金製蒸発源)131、第2層形成用の蒸発源(第2層を構成する組成の金属原料からなる合金製蒸発源)132及び表面層形成用の蒸発源(表面層を構成する組成の金属原料からなる合金製蒸発源)134を取り付けた。
図5に示すように、第1層形成用の蒸発源131及び第2層形成用の蒸発源132にはパルス電源141を取り付けた。さらに、イオンボンバードメント用の蒸発源133及び表面層形成用の蒸発源134にもパルス電源(図示せず)を取り付けた。
基材ホルダ122には、バイアス電源142を取り付けた。チャンバ130内には、雰囲気ガスを導入するためのガス導入口123が設けられ、チャンバ130から雰囲気ガスを排出するためのガス排出口124が設けられているので、このガス排出口124から真空ポンプによってチャンバ130内の雰囲気ガスを吸引して排気することができる。
まず、図5及び図6に示す成膜装置120において、真空ポンプによりチャンバ130内を減圧するとともに、回転テーブル121を回転させることにより基材ホルダ122の基材2を回転させた。続いて、装置120内に設置されたヒータ(図示せず)により基材2の表面温度を600℃に加熱し、チャンバ130内の圧力が1.0×10−4Paとなるまで真空引きを行なった。
(基材を洗浄する工程)
次に、ガス導入口123からスパッタリングガスとしてアルゴンガスを導入し、チャンバ130内の圧力を3.0Paに保持し、バイアス電源142の電圧を徐々に上げながら−1000Vとし、基材2の表面のクリーニング(15分間)に加え、基材2の表面から結合相を除去する処理(アルゴンイオンによるイオンボンバードメント処理)を行なった。その後、チャンバ130内からアルゴンガスを排気した(基材を洗浄する工程)。
(第2工程:第1層を形成する工程)
実施例1〜実施例10及び比較例2においては、上記の基材2の洗浄に引き続き、基材2をチャンバ130内の中央で回転させた状態で、雰囲気ガスとしてAr(アルゴン)を導入した。さらに、基材2を温度600℃に、ガス圧を0.5Paに、バイアス電源142の電圧を−50V〜−100Vの範囲の一定値にそれぞれ維持したまま第1層形成用の蒸発源131に6kWの電力を供給した。これにより、蒸発源131から金属イオン及びホウ素のイオンを発生させ、所定の時間が経過したところで電力の供給を止めて、基材2上に表1に示す組成の第1層を形成した。このとき第1層は、表1に示す厚さを有するように、電力供給の時間を調整しながら作製した。
比較例1、及び比較例3〜比較例5においては、雰囲気ガスであるArに加えて、反応ガスとして窒素を導入し、形成される第1層が窒化物となるようにし、その他は上記と同様にして第1層を作製した。
比較例1及び比較例5については第1層に相当する層としてZrN層(ZrNで表される化合物からなる層、以下同様。)を作製した。比較例3及び比較例4については、第1層に相当する層として、それぞれ表1に示す組成を有するAlTiN層及びAlCrN層を作製した。比較例1〜比較例4は、いずれも後述するように第2層を形成しない例である。これにより、第2工程を実施した。
Figure 2020075355
(第3工程:第2層を形成する工程)
次に、実施例1〜実施例10において、基材2の温度、ガス圧及びバイアス電圧を上記のまま維持し、第2層形成用の蒸発源132に6kWの電力を供給することによって、蒸発源132から金属イオンを発生させた。このとき反応ガスとして窒素を用いた。所定の時間が経過したところで電力の供給を止めて、第1層上に表1に示す組成の第2層を形成した。このとき第2層は、表1に示す厚さを有するように、電力供給の時間を調整しながら作製した。
比較例1〜比較例4については第2層を形成しなかった。比較例5は、第2層としてTiB層を形成した。
(表面層を形成する工程)
ここで実施例2〜実施例4及び実施例7〜実施例9においては、上記第2層を形成する工程に引き続き、表2に示す組成及び厚さを有する表面層を形成した。具体的には、第2層を形成した基材2をチャンバ130の中央で回転させた状態で、雰囲気ガスとしてAr、反応ガスとして窒素及びメタンガスの両方を導入して行なった。さらに、基材2を温度400℃に、反応ガス圧を0.4Paに、バイアス電源142の電圧を−150Vに維持したまま、表面層形成用の蒸発源134に6kWの電力を供給した。これにより、当該蒸発源134から金属イオンを発生させ、所定の時間が経過したところで電力の供給を止めて、第2層上に表面層を形成した。
Figure 2020075355
以上のようにして、実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例5の切削工具を製造した。なお、表2における被膜全体の厚さには、表面層の厚さも含まれる。
表1における第1層及び第2層の「組成」、並びに、表2における表面層の「組成」は、それぞれXPS(X線光電子分光分析装置)を用いて測定されたものである。
表2における被膜全体の「硬度」は、ナノインデンター(MTS社製Nano Indenter XP)により確認された値である。
表2における被膜全体の「圧縮残留応力」は、X線残留応力測定装置を用いて2θ−sinψ法(「X線応力測定法」(日本材料学会、1981年株式会社養賢堂発行)の54〜66頁参照)によって測定された値である。
表1における第1層及び第2層の「結晶性」は、X線回折装置により解析されたものである。
<切削工具の寿命評価>
(旋削試験:切削試験1〜切削試験3)
実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例5のCNMG120408形状の刃先交換型切削チップそれぞれについて、合金鋼(SCM440)とニッケル基の超合金(インコネル(登録商標)718)とに対して表3に示す条件で湿式の連続旋削試験(切削試験1、切削試験3)及び断続旋削試験(切削試験2)を行ない、刃先の逃げ面摩耗量が0.2mmになるまでの時間を測定した。結果を表4に示す。表4において、切削時間の長い方がより長い寿命であることを示している。なお、インコネル(登録商標)718は、チタンを微量しか含まないため、本明細書における「チタンを含む被削材」には該当しない。
Figure 2020075355
Figure 2020075355
実施例1〜実施例8は、実施例9、実施例10及び比較例1〜比較例5に比べて、連続旋削試験及び断続旋削試験のいずれにおいても刃先の逃げ面摩耗量が大きく低減しており、難削材の高速高能率加工においても、刃先交換型切削チップの寿命が大幅に長くなることが確認された。
(フライス試験:切削試験4及び切削試験5)
実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例5のSEMT13T3AGSN形状の刃先交換型切削チップそれぞれについて、難削材(SKD11又はFCD700)からなる幅150mmの板の中心線と、それより幅の広いφ160mmのカッターの中心を合わせて、表面フライス削りを、表5に示す乾式のフライス試験の条件で行ない、刃先の逃げ面摩耗量が0.2mmになるまでの切削長を測定した。結果を表6に示す。なお、表6において、切削長の長い方がより長い寿命であることを示している。
Figure 2020075355
Figure 2020075355
実施例1〜実施例8は、実施例9、実施例10及び比較例1〜比較例5に比べて、刃先の切削長さが大きく増加しており、難削材の高速高能率及びドライ条件下のフライス加工においても刃先交換型切削チップの寿命が大幅に長くなることが確認された。
(エンドミル試験:切削試験6)
実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例5のφ12mmのラジアスエンドミルそれぞれについて、表5に示す湿式のエンドミル試験の条件で行ない、刃先の逃げ面摩耗量が0.2mmになるまでの切削長を測定した。結果を表6に示す。なお、表6において、切削長の長い方がより長い寿命であることを示している。
実施例1〜実施例10は、比較例1〜比較例5に比べて、チタン合金のエンドミル加工において工具寿命が大幅に長くなることが確認された。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 切削工具、2 基材、3 被膜、31 第1層、32 第2層、33 表面層、34 下地層、35 中間層、120 成膜装置、121 回転テーブル、122 基材ホルダ、123 ガス導入口、124 ガス排出口、130 チャンバ、131、132、133、134 蒸発源、141 パルス電源、142 バイアス電源。

Claims (12)

  1. 基材と、前記基材上に形成されている被膜とを含む切削工具であって、
    前記被膜は、前記基材上に形成されている第1層と前記第1層上に形成されている第2層とを含み、
    前記第1層は、チタンを構成元素として含むホウ化物からなり、
    前記第2層は、ジルコニウムを構成元素として含む窒化物からなる、切削工具。
  2. 前記第1層の厚さは、0.5μm以上10μm以下である、請求項1に記載の切削工具。
  3. 前記第2層の厚さは、0.5μm以上10μm以下である、請求項1又は請求項2に記載の切削工具。
  4. 前記ホウ化物は、TiBを含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の切削工具。
  5. 前記窒化物は、ZrNを含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の切削工具。
  6. 前記ホウ化物は、ケイ素を構成元素として更に含み、
    前記ホウ化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、前記ケイ素の原子数比は0を超えて0.2以下である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の切削工具。
  7. 前記窒化物は、ケイ素を構成元素として更に含み、
    前記窒化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、前記ケイ素の原子数比は0を超えて0.2以下である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の切削工具。
  8. 前記ホウ化物は、バナジウムを構成元素として更に含み、
    前記ホウ化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、前記バナジウムの原子数比は0を超えて0.2以下である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の切削工具。
  9. 前記窒化物は、バナジウムを構成元素として更に含み、
    前記窒化物を構成する金属原子の総数を1としたとき、前記バナジウムの原子数比は0を超えて0.2以下である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の切削工具。
  10. 前記被膜は、前記第2層上に形成されている表面層を更に含み、
    前記表面層は、ジルコニウムを構成元素として含む炭窒化物からなる、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の切削工具。
  11. 前記被膜は、前記基材と前記第1層との間に形成されている下地層を更に含み、
    前記下地層は、チタン及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を構成元素として含む金属又は化合物からなる、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の切削工具。
  12. 請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の切削工具の製造方法であって、
    前記基材を準備する工程と、
    物理的蒸着法を用いて、前記基材上に前記第1層を形成する工程と、
    物理的蒸着法を用いて、前記第1層上に前記第2層を形成する工程と、
    を含む、切削工具の製造方法。
JP2019562671A 2018-10-10 2019-07-10 切削工具及びその製造方法 Active JP6641611B1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018191736 2018-10-10
JP2018191736 2018-10-10
PCT/JP2019/027268 WO2020075355A1 (ja) 2018-10-10 2019-07-10 切削工具及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6641611B1 JP6641611B1 (ja) 2020-02-05
JPWO2020075355A1 true JPWO2020075355A1 (ja) 2021-02-15

Family

ID=69320984

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019562671A Active JP6641611B1 (ja) 2018-10-10 2019-07-10 切削工具及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6641611B1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102314641B1 (ko) * 2020-02-25 2021-10-20 주식회사 현대케피코 연료 인젝터용 부품과 그 코팅 방법
CN115595538B (zh) * 2022-10-17 2024-06-14 贵州永红航空机械有限责任公司 不锈钢列管式散热器表面TiAlN膜层的制备方法

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05222551A (ja) * 1992-02-07 1993-08-31 Sumitomo Electric Ind Ltd 被覆サーメット切削工具の製造方法
JPH10176289A (ja) * 1996-12-10 1998-06-30 Balzers Ag 被覆硬質合金
US6492011B1 (en) * 1998-09-02 2002-12-10 Unaxis Trading Ag Wear-resistant workpiece and method for producing same
JP3763144B2 (ja) * 2002-07-11 2006-04-05 住友電気工業株式会社 被覆切削工具
JP2006001006A (ja) * 2004-05-17 2006-01-05 Mitsubishi Materials Corp 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP2014014895A (ja) * 2012-07-09 2014-01-30 Mitsubishi Materials Corp 表面被覆切削工具

Also Published As

Publication number Publication date
JP6641611B1 (ja) 2020-02-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6222675B2 (ja) 表面被覆切削工具、およびその製造方法
US7901796B2 (en) Coated cutting tool and manufacturing method thereof
JP4072155B2 (ja) 表面被覆切削工具およびその製造方法
JP6641610B1 (ja) 切削工具及びその製造方法
JP2004074361A (ja) 被覆硬質工具
WO2018216256A1 (ja) 被膜および切削工具
JP3914686B2 (ja) 切削工具とその製造方法
JP4268558B2 (ja) 被覆切削工具
JP7067689B2 (ja) 表面被覆切削工具及びその製造方法
JP6984108B2 (ja) 表面被覆切削工具及びその製造方法
JP6641611B1 (ja) 切削工具及びその製造方法
CN112368094B (zh) 表面被覆切削工具及其制造方法
JP4398287B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP3950385B2 (ja) 表面被覆切削工具
WO2020075356A1 (ja) 切削工具及びその製造方法
JPWO2019239654A1 (ja) 表面被覆切削工具、及びその製造方法
JP7055961B2 (ja) 表面被覆切削工具及びその製造方法
JP2005262355A (ja) 表面被覆切削工具
JP4080481B2 (ja) 表面被覆切削工具およびその製造方法
WO2020075355A1 (ja) 切削工具及びその製造方法
JP7409553B1 (ja) 切削工具
JP7409555B1 (ja) 切削工具
JP7409554B1 (ja) 切削工具
JP6743349B2 (ja) 切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191112

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20191112

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20191127

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191203

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191211

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6641611

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250