JP2013219918A - モータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ロータのN極磁極と、ロータのS極磁極と、A相ステータ磁極と、A相巻線と、B相ステータ磁極と、B相巻線、および、C相ステータ磁極で非対称な2相モータを構成する。A相トルクとB相トルクのロータ回転角位相が異なる構成とし、各相のトルク断続領域を補い合うことにより、円周方向の全周においてトルクの発生を可能とする。特に、A相トルクとB相トルクとがロータの回転に伴って急変する領域においては、巻線を持たないC相ステータ磁極へ起磁力が印加するような通電方法により安定したC相トルクの発生を実現する。単相モータに近い簡素な構成で、断続トルクの問題を解消し、トルクリップルの問題を低減し、低コストと高効率と小型を実現する。
【選択図】 図1
Description
低コストなモータシステムとして、単相交流モータがファンなどの用途に多く使用されている。単相全波の電圧、電流で制御するか、あるいは、いわゆる2相半波といわれる制御が行われている。ファンなどの用途では、アウターロータタイプのモータで、小型のモータであることが多い。
単相交流モータの断面図の例を図18に示す。モータの電磁気的な作用の理解が容易なように、2極のインナーロータタイプのモータモデルを図示している。製品としては、4極、6極、8極などに多極化した構成で使用することが多い。
単相交流のモータは、簡素な構成で低コスト化が図れる特徴がある。しかし欠点として、トルクリップルが大きい問題がある。また、トルクの断続点があるため、モータが停止しているときの起動では、ロータ回転位置によっては起動できない場所も発生する。起動を可能とする種々の方法が提案されている。
トルクの発生が可能な回転位置にロータが停止していれば、単相交流モータであっても起動することが可能である。起動することができれば、ロータの慣性力を使いながら、連続回転を行うことができる。
また、簡素な構成のモータの例として、例えば、特許文献2に記載された2相交流モータがある。
また、2相交流モータは、駆動回路の電力素子の数が3相交流モータの電力素子の数よりむしろ多くなり、低コスト化の点では好ましくないという問題がある。
本発明は、上記事情に基づいて成されたものであり、その目的は、単相モータの特徴を持ち、且つ、単相モータの欠点である断続トルクの問題を解消して連続的なトルク出力が可能なモータを提供することにある。
この構成によれば、簡素な構成のモータでありながら、単相モータのようなトルクの断続点が無いのでトルクリップルが小さく、確実に起動することが可能なモータとすることができる。また、平均トルク出力を大きくすることができ、高効率化、小型化、低コスト化が可能である。
なお、ステータ磁極の円周方向にはスロットの開口部の円周方向幅があること、ステータ磁極の円周方向両端形状が製作性や低騒音化などのために単純形状でないことなどにより、ステータ磁極の円周方向幅の定義が難しいことがある。相対的には、A相ステータ磁極とB相ステータ磁極の円周方向幅に対し、C相ステータ磁極の円周方向幅がおおよそ1/2以下の形状とする。C相ステータ磁極の円周方向幅が小さい方がモータのトルク出力平均値を向上でき、モータ効率を向上できる。逆に、C相ステータ磁極の円周方向幅が小さすぎるとトルク低下部のトルク値が低下する。
この構成によれば、A相のトルクとB相のトルクが増減して移り変わる領域において、安定したトルクが得られるような電流の通電行うモータとすることができる。
この構成によれば、トルクが低下するロータの位置において、電流の振幅を大きくするので、トルクリップルを低減することができる。
この構成によれば、ステータの各スロットの面積を均等に配分することができ、前記A相巻線Waと前記B相巻線Wbと効率よく巻回することができ、占積率を向上することができるのでジュール損を低減でき、モータの効率を向上することができる。
この構成によれば、本発明モータの電圧特性、電流特性を配慮した巻線の結線方法とすることができ、従って、駆動回路のトランジスタで効率良く電圧を印加することができ、効率よく電流を通電することができる。その結果、一部トランジスタをA相、B相の両相に共用することにより電力素子の素子数を減少させ、各トランジスタの利用率を高くすることによりインバータ全体の電流容量を低減することができる。そして、モータシステムとしての小型化と低コスト化を実現することができる。
この構成によれば、両相の巻線が2個の並列巻線とすることにより電圧の印加、通電と磁気エネルギーの回生とを分離することによりトランジスタの数を半分にすることができる。そして、駆動回路の小型化、コスト低減が可能である。
また、本発明のモータは、3相交流モータと比較すると、モータ構成が簡素なので製作が容易であること、巻線と磁気回路の利用率が高いので高効率、小型であることなどにより、低コスト、高効率、小型のモータとすることができる。この点は、単相交流モータと同様である。
モータの駆動回路についても、トランジスタなどの電力素子の利用率を高くすることが可能であり、低コスト、小型とすることができる。具体的には後に示すように、3相交流モータの駆動回路に比較してトランジスタの電流容量を低減することができる。
具体的な本発明のモータ構成を図1の断面図に示す。
12はモータ11のA相ステータ磁極であり、13と14で示すA相の集中巻き巻線を巻回している。15はB相ステータ磁極であり、16と17で示すB相の集中巻き巻線を巻回している。18はC相ステータ磁極で巻線を巻回していない。なお、目的に応じてC相ステータ磁極へ巻線を付加することは可能である。各相のステータ磁極の円周方向角度幅θa、θb、θcは、図1の場合、160°、160°、40°である。
19はロータのN極磁極で、永久磁石により構成している。1AはロータのS極磁極で、永久磁石により構成している。1Bはロータ軸である。特に本発明モータでは、ロータ磁極の円周方向の磁束分布が正弦波状の磁束分布ではなく、台形波状の磁束分布あるいは矩形波状の磁束分布としている。後に示すように、台形波状の磁束分布とすることにより、断続トルクの問題の解消、モータのトルク平均値の向上を実現する。
図1のモータ構成は、電磁気的な作用が理解し易いように2極の構成を示したが、実際には、ステータバックヨークの厚み低減のため、磁石厚みの低減、コイルエンド長さの縮小、モータの製作性などの観点で4極、6極、8極などに多極化して設計し、使用することが多い。
図2の21はA相ステータ磁極であり、22と23で示すA相の集中巻き巻線を巻回している。24はB相ステータ磁極であり、25と26で示すB相の集中巻き巻線を巻回している。27はC相ステータ磁極で巻線を巻回していない。他のステータ磁極と巻線は同様である。28はロータのN極磁極で、29はロータのS極磁極で、永久磁石により構成している。
単相交流モータを想定していて、水平軸はロータ回転角θrの電気角の角度値である。図3の(1)に示すE1は振幅が1の正弦波形状の波形であり、電圧Vおよび電流Iを想定している。図3の(2)のE2に、前記電圧Vと電流Iの積である電力Pinをしめしている。E2は(1)式に示すように、正の値であって平均値が0.5で、振幅が0.5で、2倍の周波数となる。モータが一定回転で回転している場合、トルクTもE2に比例する。
sin(θr)×sin(θr)=0.5−0.5×cos(2θr) (1)
図3のE2は平均値が0.5なので、1.0の直流電圧と1.0の直流電流との積である直流電力1.0に比較すると1/2である。従って、この観点では、正弦波の有効利用率は50%であると見ることができる。
本発明モータでは、この断続トルクの問題を解消し、かつ、前記の有効利用率50%を100%に近づけようとするものである。この有効利用率50%の数字は、モータの高効率化、小型化、低コスト化の余地を示していて、改善の可能性を示している。
なお、3相正弦波の3相交流モータの電力は、図3の(2)に示すE2、E3、E4の和として考えることができ、その和は直流の値で1.5であり、単純理論的にはトルクの脈動が無く、断続トルクの問題は無い。しかし、前記の有効利用率は50%である。また、3相交流モータの構成は、単相交流モータに比較してやや複雑である。
図4の(1)の正弦波形状F2に対して台形波形状のF1は矩形波に近く、F1が電圧と電流であると仮定した場合の電力は図4の(2)のF3となる。モータの場合、そのトルクはF3に比例した値となる。F7の回転位置領域ではトルクが低下するが、大半の回転位置領域であるF8では前記の有効利用率は100%であり、全回転位置領域で見ても、正弦波の二乗であるF4に比較してF3は大幅に改善している。F6の破線で示す領域では、電力およびトルクが低下するので、後に示す改善策が必要である。
今、図4のF8に示すように電力Pinが一定で、電圧Vと電流Iが一定である状態を想定する。また、機械的出力PaはトルクTとロータの回転角速度ωrの積である。モータの内部損失は零であると仮定する。
Pin=V×I (2)
Pa=T×ωr (3)
巻線の巻き回数をNwとし、巻線に鎖交する磁束をφとする。
V=Nw×d(φ)/dt (4)
ロータの回転位置θrと回転角速度ωrとは次式の関係である。
d(θr)/dt=ωr (5)
=d(φ)/dθr×ωr (6)
今、モータの入力電力Pinとモータの機械出力Paとが等しいとすると、(2)〜(6)式より次の関係となる。そして、トルクTの式(9)が得られる。
V×I=Nw×d(φ)/dt×I (7)
=Nw×d(φ)/dθr×ωr×I (8)
=T×ωr
T=Nw×d(φ)/dθr×I (9)
なお、(Nw×φ)は、該当する巻線の磁束鎖交数Ψでもあり、(9)式のトルクTは次のようにも書ける。
T=Nw×d(φ)/dθr×I=d(Ψ)/dθr×I (10)
また、(3)式のモータ出力Paは次のようにも書ける。
Pa=T×ωr= d(Ψ)/dt×I (11)
(10)、(11)式は磁束鎖交数Ψと電流Iで示されていて、モータが磁束と電流との相互作用で動作することを示す物理式である。
Ta=Nw×d(φa)/dθr×Ia (12)
Tb=Nw×d(φb)/dθr×Ib (13)
φaはA相ステータ磁極を通過し、A相巻線Waに鎖交する磁束であり、IaはA相巻線Waの電流である。φbはB相ステータ磁極を通過し、B相巻線Wbに鎖交する磁束であり、IbはB相巻線Wbの電流である。
図5に示すロータ回転位置θrで反時計回転方向CCWの方向のトルクを発生させる場合、(12)式と(13)式の関係からA相鎖交磁束φaとB相鎖交磁束φbについて考える。N極ロータ磁極19とS極ロータ磁極1Aの表面の磁束密度は、ロータ磁極の境界部である41の近傍と42の近傍を除いてほぼ均一な磁束密度Boの大きさであると仮定する。A相ステータ磁極を通過する磁束は、対向するロータ表面部分の磁束が通過すると考える。
今、ロータの半径がRで、モータのロータ軸方向厚みがLで、A相ステータ磁極の円周方向角度幅がθaで、ロータの磁極境界部の回転角位置がA相ステータ磁極の時計回転方向端からθaxであるとする。そして、図5に示すように、ロータ磁極の境界部41と42がそれぞれステータ磁極の円周方向中央部近傍にあると仮定する。
φa=Bo×R×θax×L−Bo×R×(θa−θax)×H
=2×Bo×R×L×(θax−θa/2) (14)
φb=2×Bo×R×L×(θbx−θb/2) (15)
なお、従来の3相交流モータではロータ磁極の円周方向磁束密度の分布が正弦波状であると仮定する場合があるが、本発明モータで高効率を追求する場合は、そのロータ磁極磁束分布は正弦波状の磁束分布ではなく、台形状で矩形波に近い形状の磁束分布である。また、ロータ表面の磁束密度は、永久磁石が十分に強力で、巻線電流により変化しないものと仮定する。勿論、本発明モータは、そのロータ磁極磁束分布を正弦波状の磁束分布として使用することもできる。正弦波状と台形状の中間くらいの磁束分布として使用することもできる。
ロータ回転位置θrは、図1の状態をθr=0°とし、CCW方向の回転に伴って増加する。図5の状態はθr=90°で、この時A相ステータ磁極のトルクTaとB相ステータ磁極のトルクTbおよびモータトルクTmは、(9)式と(14)、(15)式より次式となる。
Ta=2×Bo×R×L×Nw×Ia (16)
Tb=2×Bo×R×L×Nw×Ib (17)
Tm=Ta+Tb=2×Bo×R×L×Nw×(Ia+Ib) (18)
図9は横軸をロータ回転角θrとし、図9の(3)はロータがCCWの方向へ一定回転数で回転している状態でのA相巻線の電圧Vaで、実線の特性で示している。B相巻線の電圧Vbは破線の特性で示している。図9の(2)はロータ回転角θr=180°の前後のA相巻線の電圧VaとB相巻線の電圧Vbを、横軸であるロータ回転角θrの方向へ、4倍程度に拡大した図である。破線の補助線により(3)と(2)との相互の拡大関係を図示している。
Va=Nw×d(φa)/dt=Nw×d(φa)/dθr×ωr (19)
Vb=Nw×d(φb)/dt=Nw×d(φb)/dθr×ωr (20)
図5のロータ回転位置θr=90°では、(14)、(15)式を代入でき、次式となる。
Va=2×Nw×Bo×R×L×ωr (21)
Vb=2×Nw×Bo×R×L×ωr (22)
図9の(3)のθr=90°の前後では、電圧Vaと電圧Vbは一定値となっている。
ロータ磁極の境界部41がスロット開口部近傍に対抗して存在する時は、磁束がスロット開口部近傍の空間とステータ磁極とロータ磁極の間のいわゆるエアギャップの空間を通ってロータ側からステータ側へ通過する。磁束が回転位置に応じて急激に変化する領域であり、(9)式の磁束がロータ回転に伴い急激に変化するので、(16)式、(17)式の様に単純に表現できない。
図6のA相巻線13に流れる電流とB相巻線16に流れる電流の和は零となり、同一空間の電流和が零なのでキャンセルされ、これらの巻線電流がモータに与える電磁気的な影響は無いことになる。
そして、反対側のA相巻線14の電流IaとB相巻線の電流Ibとは図示する電流シンボルの方向であり、その方向は同じである。これらの両電流はC相ステータ磁極18の円周方向前後に位置し、結果としてC相ステータ磁極の巻線であるかの様な作用をなし、矢印43で示す方向の起磁力を生成する。この時、C相トルクTcは(23)式の条件で次式となる。
Tc=2×Bo×R×L×Nw×Ia (24)
このように、巻線を巻回していないC相ステータ磁極を電流の通電方法により、仮想的にC相電流を作り出してC相トルクTcを生成することになる。この結果、モータの発生トルクが全周で得られることになり、単相モータの断続的なトルクを連続トルクとすることができる。また、(24)式のC相トルクTcは、C相ステータ磁極の円周方向幅の範囲で得られるので、ある程度の高速回転においても時間的な余裕を持って、A相電流IaとB相電流Ibとを可変して制御することが可能である。
図7よりCCWへ少し回転するとB相トルクTbが得られることになり、(13)式あるいは(17)式のトルクを得ることができる。この時、A相ステータ磁極の鎖交磁束φaの回転変化率d(φa)/dθrは零なのでA相トルクTaは得られない。
さらにCCWへ回転し、図8で示す回転位置まで回転すると、A相トルクTaは零で、C相トルクTcも得られず、B相トルクTbだけがCCW方向のトルクを生成可能な領域となる。
また、CW方向のトルク発生は、A相電流IaとB相電流Ibの正負を前記説明の逆にすることにより、図5の回転角位置からCW方向へ−180°へ、そして−360°までと、逆の動作を実現できる。
図9の(2)はロータ回転角θr=180°の前後のA相巻線の電圧VaとB相巻線の電圧Vbをロータ回転角θrの方向へ拡大している。51の点はθr=180°−(θc+2θs)/2であり、52の点はθr=180°−θc/2であり、53の点はθr=180°−θs/2であり、54の点はθr=180°+θs/2であり、55の点はθr=180°+θc/2であり、56の点はθr=180°+(θc+2θs)/2である。なお、上記のθsは、ステータ磁極の円周方向にあるスロット開口部の円周方向幅である。
ロータがさらにCCWへ回転し、55の点に差し掛かると、すなわち、ロータ磁極の境界部42がC相ステータ磁極とA相ステータ磁極の間のスロット開口部へ差し掛かると、A相ステータ磁極へS極磁極1Aの磁束が増加し始め、(19)式からVaは負の電圧となる。
ロータがさらにCCWへ回転し、53の点に差し掛かると、すなわち、ロータ磁極の境界部41がA相ステータ磁極とB相ステータ磁極の間のスロット開口部へ差し掛かると、B相ステータ磁極へN極磁極19の磁束が増加し始め、(20)式からVbは負の電圧となる。
Vc=Nw×d(φc)/dt=Nw×d(φc)/dθr×ωr (25)
Vc=−Va+ Vb (26)
このC相の仮想電圧Vcは 図9の(4)にとなる。図1における磁束の方向の定義をステータ側からロータ側の方向としたため、B相電圧Vbが負の値となっている。なお、A相ステータ磁極とB相ステータ磁極とC相ステータ磁極とをロータ側からステータ側へ通過する磁束の総和は零である。
また、図9の(6)に示す程度の凹凸のトルク特性であっても問題なく使用でき、むしろモータ高率、あるいは、駆動回路を含めたモータシステムのコスト低減の方が重要な用途は少なくない。
具体的には、図9の(7)の倍率を図9の(5)に示す電流Ia、Ibへ乗じた値の電流として通電することにより、図9の(6)の凹凸のトルク特性をより均一なトルク特性とすることができる。特にモータの低速回転でトルク脈動が目立って図9の(6)の凹凸のトルク特性が有害となることがあるが、モータの低速回転では補償制御の時間的な余裕があり、より正確なトルク補償制御ができるので、効果的な方法である。
現実的なトルク脈動の補償は、図10の(2)に示す形状の電流特性とは限らず、図10の(3)の上部に示すθcの領域で電流振幅を増加させれば、モータのトルク脈動を減少させることが可能である。
例えば、ステータ磁極の円周方向にはスロットの開口部の円周方向幅θsがあること、ステータ磁極の円周方向両端形状が製作性や低騒音化などのために単純形状でないことなどにより、ステータ磁極の円周方向幅の定義が難しいことがある。このステータ磁極の円周方向両端形状は、低騒音化要求が厳しい場合は両端形状の切り上げ、円弧形状化、スキュー、段スキューなどの形状に製作することがある。なお、ロータ磁極の境界部である41の近傍と42の近傍の形状についても、製作性の都合、低騒音化のために、スキュー、凹み形状など図1とは異なる形状とすることも多い。永久磁石の固定、ロータの強度確保、リラクタンス力の活用などの目的のため、鉄心に埋め込んだ形状とすることもある。モータ形状の種々変形が可能である。
C相ステータ磁極の円周方向幅θcが小さい方がモータのトルク出力平均値を向上でき、モータ効率を向上できる。例えば、図1に示す2極のモータモデル形状の場合、θc=40°で、スロット開口部の円周方向幅θsは5°で作図している。θsが5°であれば、θcは20°程度までは縮小することが十分に可能である。θc=20°の時、A相ステータ磁極幅θaとB相ステータ磁極幅θbは170°となり、さらにモータ効率を向上することが可能である。
前記のように、スロットの開口部の円周方向幅θsが小さい値であれば、θsは無視できるが、θsが大きな値であれば異なる表現も必要である。具体的には、ステータ磁極の形状が突極状の形状となる場合である。
θar=θa−θs (27)
θbr=θb−θs (28)
θcr=θc−θs (29)
θar+θbr+θcr+3×θs=360° (30)
上式より、A相ステータ磁極実幅θar、B相ステータ磁極実幅θbr、C相ステータ磁極実幅θcrの値は、スロットの開口部の円周方向幅θsにも依存することになる。
また、各ステータ磁極の位置関係は、A相ステータ磁極、B相ステータ磁極の間のスロット開口部の円周方向回転角位置に対して、C相ステータ磁極は電気角で180度異なる位置に配置する。そして、A相ステータ磁極とB相ステータ磁極は、ロータ中心に対して点対称ではなく、A相ステータ磁極とB相ステータ磁極との間の境界線である図1の1Cに対して線対称の形状であるとも言える。
次に、A相巻線WaとB相巻線Wbをより効率よく巻回するためのスロット形状の変形方法について図11と図12に示し、説明する。
図11は図2に示した8極の本発明モータの右上側の約1/4を拡大した図である。
61はA相ステータ磁極で、62と63は集中巻きで巻回したA相巻線である。64はB相ステータ磁極で、65と66は集中巻きで巻回したB相巻線である。67と68はC相ステータ磁極で、巻線は巻回していない。なお、図11において、一点鎖線は、各ステータ磁極の中心、および、各ステータ磁極の境界を示しており、各一点鎖線の角度位置を付記している。
A相ステータ磁極61は26.25°の角度を中心として37.5°の円周方向幅であり、電気角では150°の円周方向幅である。B相ステータ磁極64は63.75°の角度を中心として37.5°の円周方向幅であり、電気角では150°の円周方向幅である。C相ステータ磁極は90°の角度を中心として15°の円周方向幅であり、電気角では60°の円周方向幅である。
図12は、前記条件で図11の形状を変形、修正した例である。79は、前記A相ステータ磁極のバックヨークから歯の先端にかける磁路Paの円周方向中心角度位置を時計回転方向CWへ移動した形状である。破線で示す71、73が移動前の磁路Paの形状で、実線で示す72、74が移動後の磁路Paの形状である。この時、ロータと対向するA相ステータ磁極の内周側形状は変えていない。一点鎖線で示す75と77が移動前のA相巻線で、実線で示す76と78が移動後のA相巻線である。前記の空きスペース69を活用しているので、A相巻線の断面積が広くなっている。
次に、ステータの電磁鋼板を分割し、分割したステータコアを組み合わせてステータコアを構成する例を、図13、図14に示し説明する。
図2に示す8極の本発明モータのステータコアを分割する例である。図13の81、87は分割したA相ステータ磁極である。84、8Aは分割していないA相ステータ磁極である。85、8Bは分割したB相ステータ磁極である。82、88は分割していないB相ステータ磁極である。83、89は分割したC相ステータ磁極である。8C、86は分割していないC相ステータ磁極である。8E、8Dのように2重線で示す部分が完全に分割、あるいは、部分的に分割する部位である。
図14は、図13で分割したステータコアを破線で示した図である。8E、8Dのように2重線で示す部分は、部分的に分割している例で、図14が一体となった構成の例である。円周方向に1個おきにステータ磁極を分割コアとしている。従って、各ステータ磁極の間には巻線を巻回する時に自由に使えるスペースができているので、巻線巻回を容易にすることができる。なお、分割した各ステータ磁極のコアへは個別に巻線を巻回することができる。
図15はA相巻線Waの電流IaとB相巻線Wbの電流Ibとを、交流電圧を印加し交流電流を通電する駆動回路の例である。8個の電力素子であるトランジスタを使用した例である。TR1、TR2、TR3、TR4はA相巻線の電圧Va、電流Iaを駆動する。TR5、TR6、TR7、TR8はB相巻線の電圧Vb、電流Ibを駆動する。各トランジスタには逆並列にダイオードを配置している。図15はA相とB相の2組の交流駆動回路を、電気的に独立して構成している。図15の構成はごく自然な構成であるが、改良の可能性はある。
このように、2相のモータ巻線の駆動用トランジスタを共通化するためには、2巻線それぞれの電圧と電流との両方の位相がある程度揃っていると効果的に構成することができる。A相とB相の電圧と電流の両位相が揃っていれば、電力的に利用率を低下させることなく各トランジスタを活用することができる。
また、図15、図16に示すような回路構成において、トランジスタの数はそのベース回路の数、および、制御の複雑さにも関係し、コストへの依存性がある。勿論、トランジスタの数が少ない方が低コスト化が容易であることが一般的である。また、回路からモータへの接続線の数も4本から3本に低減することができる。これらの観点で、図15に示した回路構成に対して図16の回路構成は、小型化、低コスト化の観点で優れている。
3相交流の場合、図3に示すように正弦波であれば利用率が50%である。さらに、矩形波化しても、モータ巻線の接続が星型結線であれば、3個の端子であることから常に1/3に相当する部分は使用していないことになり、利用率は2/3となり、66.7%であると言える。この利用率の観点では、3相交流交流モータのシステムは、100%へ近づけるような改善の余地があると言える。
次に、並列巻線を使用する本発明モータとその通電方法を図17に示し、説明する。
図1のA相巻線13、14を電気的に独立し、磁気的に並列に巻回した2個の巻線Wa1とWa2とする。B相巻線16、17を電気的に独立し、磁気的に並列に巻回した2個の巻線Wb1とWb2とする。2個の巻線Wa1とWa2は同一の磁束が鎖交し、相互インダクタンスが大きい。2個の巻線Wb1とWb2は同一の磁束が鎖交し、相互インダクタンスが大きい。そして、これらの巻線は、図17に示すように、磁気的な鎖交の方向、電圧の方向が逆向きになるように配置し、それぞれの巻線に電圧を印加し、電流を通電する。
B相巻線についても同様に、B相巻線Wb1の片端を電源に接続し、他端をトランジスタTR33へ接続する。B相巻線Wb2はB相巻線Wb1と磁気的に並列に巻回していて、巻線に誘起する電圧方向が逆になるように片端を電源に接続し、他端をトランジスタTR34へ接続する。トランジスタTR33とトランジスタTR34へは逆並列にダイオードD33とダイオードD34をそれぞれ配置している。
正確には、A相巻線Wa1とA相巻線Wa2とB相巻線Wb1およびB相巻線Wb2の全てに鎖交する磁束成分があり、前記に説明した磁気的な関係、電気的な関係より複雑に作用する。しかし、両相の電流の増加、減少の関係は同じである。
アウターロータモータ、2個のモータを内径側と外形側に組み合わせた複合型のモータ、アキシャルギャップ型のモータ、環状巻線と3次元形状磁路で構成するモータ、リニアモータなどへ変形することができる。
駆動回路についても種々変形が可能である。例えば、図示していないが、2個の直列電源が存在する場合は、回路の簡素化が可能である。電圧、電流の制御法についても、いわゆるPWM制御であるパルス幅変調制御を前提に説明したが、種々の電流制御法を適用できる。
ロータの位置検出、速度検出の目的で、エンコーダを使用しない、いわゆるセンサレス制御を適用することができる。モータ電流値を検出するいわゆるセンサレス電流検出も適用することができる。
なお、本発明モータは、単相モータの特徴である簡素な構成、高効率、小型、低コストという特徴も併せ持っている。
12 A相ステータ磁極
13 A相の集中巻き巻線
14 A相の集中巻き巻線
15 B相ステータ磁極
16 B相の集中巻き巻線
17 B相の集中巻き巻線
18 C相ステータ磁極
19 ロータのN極磁極
1A ロータのS極磁極
1B ロータ軸
1C A相ステータ磁極とB相のステータ磁極の境界線
θa A相ステータ磁極の円周方向角度幅
θb B相ステータ磁極の円周方向角度幅
θc C相ステータ磁極の円周方向角度幅
Claims (7)
- 永久磁石を使用するブラシレスモータであって、
ステータに配置するA相ステータ磁極と、
前記A相ステータ磁極に巻回するA相巻線Waと、
前記A相ステータ磁極と同一の円周上に配置するB相ステータ磁極と、
前記B相ステータ磁極に巻回するB相巻線Wbと、
前記A相ステータ磁極と同一の円周上に配置していて前記ステータとロータとの間に磁束を通過させるC相ステータ磁極と、
前記ロータのN極磁極と、
前記ロータのS極磁極とを備えることを特徴とするモータ。 - 請求項1に記載したモータにおいて、
前記C相ステータ磁極の前記ロータに面している形状の円周方向幅θcが電気角で90°以下であることを特徴とするモータ。 - 請求項1に記載したモータにおいて、
ロータ表面の前記N極磁極と前記S極磁極との境界部Fnsが前記A相ステータ磁極と前記B相ステータ磁極との境界部Fabに差し掛かる範囲において、前記A相巻線Waと前記B相巻線Wbとの両方へ同一方向の電流を通電することを特徴とするモータ。 - 請求項1に記載したモータにおいて、
ロータ表面の前記N極磁極と前記S極磁極との境界部Fnsが前記C相ステータ磁極へ対向する範囲において、前記モータへ通電する電流の値を大きくして制御することを特徴とするモータ。 - 請求項1に記載したモータにおいて、
前記A相ステータ磁極から円周方向に見て、前記ステータと前記ロータとのエアギャップの近傍において、前記A相ステータ磁極の円周方向中心角度位置θax、前記B相ステータ磁極の円周方向中心角度位置θbx、前記C相ステータ磁極の円周方向中心角度位置θcxとし、前記A相ステータ磁極のバックヨークから歯の先端にかける磁路Paの円周方向中心角度位置θap、前記B相ステータ磁極のバックヨークから歯の先端にかける磁路Pbの円周方向中心角度位置θbp、前記C相ステータ磁極のバックヨークから歯の先端にかける磁路Pbの円周方向中心角度位置θcpとするとき、(θbx−θax)の大きさより(θbp−θap)の大きさの方が大きくなる構成とすることを特徴とするモータ。 - 請求項1に記載したモータにおいて、
前記A相巻線Waの両端の端子がTa1とTa2であり、
前記B相巻線Wbの両端の端子がTb1とTb2であり、
両巻線WaとWbの誘起電圧の位相が近い方の端子がTa1とTb1であるとき、これらの両端子を接続し、
直流電源PSの正側にトランジスタTR21を配置し、負側にトランジスタTR22を配置し、これら両トランジスタの接続点に前記の両端子Ta1とTb1を接続して、前記A相巻線Waの電流Iaと前記B相巻線Wbの電流Iaとの和である(Ia+ Ib)の電流を通電し、
直流電源PSの正側にトランジスタTR23を配置し、負側にトランジスタTR24を配置し、これら両トランジスタの接続点に前記の端子Ta2を接続して、前記A相巻線Waの負の電流(−Ia)を通電し、
直流電源PSの正側にトランジスタTR25を配置し、負側にトランジスタTR26を配置し、これら両トランジスタの接続点に前記の端子Tb2を接続して、前記B相巻線Wbの負の電流(−Ib)を通電して駆動することを特徴とするモータ。 - 請求項1に記載したモータにおいて、
前記A相巻線Waは電気的に独立し、並列に巻回した2個の巻線Wa1とWa2であり、
前記B相巻線Wbは電気的に独立し、並列に巻回した2個の巻線Wb1とWb2であることを特徴とするモータ。
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