JP2013219862A - 電動車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】電動車両の衝突時に電力変換装置とモータとを接続する電力ケーブルを安全に断線させることによって高圧安全性を向上させることである。
【解決手段】電動車両は、駆動部収容室内に配置されてモータとの間で電力を授受する電力変換装置を収納したケースと、電力変換装置とモータとを電気接続する電力ケーブルPとを備える。電力ケーブルPは、導電性の芯線44と、芯線44よりも伸び率が大きい材料で形成されて芯線44の周囲を被覆する被覆部46とを含む。芯線44には、車両衝突時に引張力が作用したときに破断しやすい芯線破断予定部45が上記ケース側に設けられ、被覆部46には、上記引張力が作用したときに破断しやすい被覆破断予定部47が上記モータ側に設けられている。
【選択図】図9

Description

本発明は、走行用動力源であるモータを搭載した電動車両に関する。
従来、モータを走行用動力源として搭載した電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車等の電動車両が知られている。このような電動車両では、車載バッテリから供給される直流電力をインバータ等の電力変換装置で交流電力に変換して、モータへ印加される。これにより、モータが駆動されて、走行用動力を出力することができる。
上記インバータ等の電力変換装置は、例えばアルミ合金等の金属製のケース(以下、適宜に「インバータケース」または「PCU(Power Control Unit)ケース」という)に収容されて、上記モータと共に車両前部にある駆動部収容室内に搭載されることがある。ここで、ハイブリッド自動車では、内燃機関であるエンジンを走行用動力源として搭載しており、エンジンが収容される車両前部の収容室がエンジンコンパートメントと呼ばれている。したがって、ハイブリッド自動車では、エンジンコンパートメントが電動車両の駆動部収容室に相当する。
上記電動車両に搭載される電力変換装置は高電圧を取り扱うことから、車両衝突時に、電力変換装置を収容するケースが破損しにくいように考慮して、電動車両の高圧安全性を高める必要がある。また、通常、車載されたモータとインバータとは電力ケーブルによって接続されているが、車両衝突時の荷重によってインバータケースが移動した場合でも電力ケーブルが破断しにくくすることも重要である。この場合、電力ケーブルの余裕長を長くとっておくことも衝突時破断を回避する1つの方法であるが、そうすると電力ケーブルに要するコストが高くなるという問題が生じる。
上記のようなインバータケースに関連する先行技術文献として、例えば、特開2001−354040号公報(特許文献1)には、2つのモータを収容するモータケースに、これらのモータ用の第1および第2インバータ、平滑用コンデンサ、ならびに制御装置を収容したインバータケースを車両前方へ下り傾斜した姿勢で取り付けた構造の駆動装置が記載されている。
特開2001−354040号公報
上記特許文献1の駆動装置のように、インバータケースをモータケースに直に搭載することによって、インバータケースとモータとを接続する電力ケーブルの配索長さを短くすることができ、コスト面で有利である。
しかしながら、上記のように電力ケーブルの長さを短くするとケーブル余裕長が短くなることから、車両衝突時の荷重によって電力ケーブルに引っ張り力が作用すると破断が生じやすくなる。そうすると、高電圧が印加される電力ケーブルの芯線が露出することがあり得て、電動車両の高圧安全性が低下することが懸念される。
本発明は、上記のような課題にかんがみてなされたもので、その目的は、電動車両の衝突時に電力変換装置とモータとを接続する電力ケーブルを安全に断線させることによって高圧安全性を向上させることである。
本発明に係る電動車両は、車両の駆動部収容室内に搭載されたモータの駆動力により走行可能な電動車両であって、前記駆動部収容室内に配置され、前記モータとの間で電力を授受する電力変換装置を収納したケースと、前記電力変換装置と前記モータとを電気接続する電力ケーブルと、を備え、前記電力ケーブルは、導電線の芯線と、該芯線よりも伸び率が大きい材料で形成されて前記芯線の周囲を被覆する絶縁性の被覆部とを含み、前記芯線には、車両衝突時に引張力が作用したときに破断しやすい芯線破断予定部が前記ケース側に設けられ、前記被覆部には、前記引張力が作用したときに破断しやすい被覆破断予定部が前記モータ側に設けられているものである。
本発明に係る電動車両において、前記芯線破断予定部は、前記芯線に設けられた切り込み部または脆弱部によって構成されてもよい。
また、本発明に係る電動車両において、前記被覆破断予定部は、前記被覆部に設けられた切り込み部または薄肉部によって構成されてもよい。
また、本発明に係る電動車両において、前記電力ケーブルのケース側端部は前記ケースの外面に設けられたケース側コネクタに連結されており、前記芯線破断予定部は前記ケース側コネクタ内に位置して設けられてもよい。
さらに、本発明に係る電動車両において、前記電力ケーブルのモータ側端部は前記モータを収容するハウジングの外面に設けられたモータ側コネクタに連結されており、前記被覆破断予定部は前記モータ側コネクタ内に位置して設けられてもよい。
本発明に係る電動車両によれば、車両衝突時にケースが移動して電力ケーブルに引張力が作用したとき、まず、伸び率が比較的小さい芯線の破断予定部で断線が生じ、次いで、伸び率が比較的大きい被覆部の破断予定部で破断が生じる。このように電力ケーブルにおいて、芯線がケース側で先に断線することで電力変換装置からモータへの電力供給が遮断されるので、後に被覆部がモータ側で破断して芯線が露出しても高電圧に対する危険がない。したがって、電動車両の衝突時の高圧安全性が向上する。
電動車両の車両前部に位置するエンジンコンパートメント内の構成を平面視で概略的に示す図である。 エンジンコンパートメント内の構成を衝突実験用バリアと共に側面視で概略的に示す図である。 PCUケースと、PCUケースを固定する前後ブラケットとを示す斜視図である。 PCU側コネクタと、モータ側コネクタと、その間に配索された電力ケーブルとを模式的に示す図である。 1本の電力ケーブルの横断面を示す図である。 1本の電力ケーブルの縦断面を部分的に示す図である。 車両の前面衝突時にエンジンコンパートメント内のPCUケースに向かって進入してきたバリアがPCUケースにぶつかるときの様子を示す側面図である。 衝突荷重を受けて前ブラケットおよび後ブラケットが変形してPCUケースが後退移動する様子を示す側面図である。 図8に示すようなPCUケースの後退移動によって電力ケーブルに引張力が作用したときの様子をケーブル縦断面で示したものであり、(a)は衝突時の様子、(b)は芯線が断線したときの様子、(c)は被覆部が破断したときの様子を示す図である。 芯線破断予定部および被覆破断予定部がそれぞれコネクタ内に位置して設けられる変形例を示す、図9(a)に対応する図である。 芯線破断予定部が脆弱部によって構成される別の変形例を示す、図6に対応する図である。
以下に、本発明に係る実施の形態(以下、実施形態という)について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
また、以下においては、電動車両として走行用動力源としてエンジンおよびモータジェネレータを搭載したハイブリッド自動車を例に説明するが、本発明はモータジェネレータのみを走行用動力源として搭載する電気自動車に適用されてもよいし、二次電池からなるバッテリに加えて燃料電池を搭載した燃料電池車に適用されてもよい。
図1は、ハイブリッド自動車10の車両前部に位置するエンジンコンパートメント内の構成を平面視で概略的に示す図である。図1において、左側が車両前方、右側が車両後方、上側が車両右側、下側が車両左側に相当する。
また、図2は、エンジンコンパートメント内の構成を衝突実験用バリアBと共に側面視で概略的に示す図である。図2において、左側が車両前方、右側が車両後方、上側が車両上側、下側が車両下側に相当する。また、図2(図7においても同様)に示される衝突実験用バリアBは、例えば、コンクリートブロック、鉄塊等によって構成される。さらに、図2では、バリアBが地面Gから所定の高さに設けられている例を示す。これは、地面Gから車台までの高さが乗用車に比べて高いトラック等との衝突を想定しているためである。
図1および図2に示すように、ハイブリッド自動車10は、車両の前部にエンジンコンパートメント12を備える。エンジンコンパートメント12は、後述するエンジンおよびモータジェネレータを含む駆動部を収容する駆動部収容室である。エンジンコンパートメント12の上方はフードパネル13によって覆われており、エンジンコンパートメント12の後方は隔壁15によって車室内と仕切られている。
また、ハイブリッド自動車10は、車両の左右両側において車両前後方向に延伸するサイドメンバー14L,14Rを備える。車両前部においてサイドメンバー14L,14R間には、ラジエータ16が上下方向に沿った姿勢で支持されている。
エンジンコンパートメント12内には、内燃機関であるエンジンユニット20が搭載されている。エンジンユニット20は、図示しないブラケットによってサイドメンバー14L,14R等を含む車台に固定されている。エンジンユニット20の出力軸であるクランクシャフト(図示せず)は、後述するトランスアクスルに接続されている。
また、エンジンコンパートメント12内には、トランスアクスル22がエンジンユニット20に隣接して搭載されている。トランスアクスル22には、2つのモータジェネレータMG1,MG2とこれらの出力軸に連結されるギヤ列とが含まれる。トランスアクスル22は、例えばアルミダイカスト製のトランスアクスルハウジング23内にモータジェネレータMG1,MG2等を収容して一体的に構成されている。
トランスアクスル22の出力軸は、図示しない車軸等を介して車輪18に接続されている。これにより、トランスアクスル22は、エンジンユニット20およびモータジェネレータMG1,MG2の動力を車輪18に伝達して走行することができ、他方、減速時等には車輪18からモータジェネレータMG1,MG2の少なくとも一方に動力が入力されて回生発電が行われるようになっている。
なお、本実施形態ではトランスアクスルに2つのモータジェネレータが含まれる例について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、トランスアクスルに1つのモータジェネレータが含まれてもよい。また、トランスアクスルのギヤ列には、モータジェネレータと車軸との間、および/または、エンジンユニットとモータジェネレータとの間の連結を断続するためのクラッチ機構が設けられてもよい。
トランスアクスル22を構成するトランスアクスルハウジング23の上部には、例えばアルミ合金製などの金属製筐体であるPCUケース24が固定されている。PCUケース24は、ブラケット30,32(図3参照)によってトランスアクスル22に取り付けられている。また、図2に示すように、PCUケース24は、上面が前方に下がるように傾斜した姿勢で配置されている。この場合、PCUケース24の前端縁、すなわち、PCUケース24の前方上側角部25の位置がトランスアクスルハウジング23の前方縁部よりも車両後方側となるように配置されている。このようにすることで、車両が前面衝突したときにラジエータ16等が後方へ移動してきても、トランスアクスルハウジング23によって受け止められるので、車両前面衝突時の衝突荷重がPCUケース24に作用するのを抑制でき、その結果、PCUケース24が破損しにくくなって高圧安全性が向上する。
PCUケース24には、直流電圧と交流電圧との間で双方向に変換可能なインバータが収容されている。この意味でPCUケース24はインバータケースとも呼ばれる。また、PCUケース24は、ハイブリッド自動車10における電力制御全般を司るパワーコントロールユニット(Power Control Unit)を収容していてもよく、この意味でPCUケースと呼ばれる。さらに、PCUケース24には、インバータのほかに、車載バッテリ(図示せず)から供給される直流電圧を昇圧してインバータに供給する一方、回生時にインバータから供給される直流電圧を降圧して車載バッテリに充電するための昇降圧コンバータが収容されてもよい。
PCUケース24から各モータジェネレータMG1,MG2には、それぞれ3本、計6本の電力ケーブルP1,P2が延びている。この場合、モータジェネレータMG1,MG2は、それぞれ、三相交流回転電機である。これらの電力ケーブルP1,P2を介してインバータとモータジェネレータMG1,MG2との間で電力の授受が行われる。このように本実施形態では、PCUケース24がトランスアクスルハウジング23(すなわちトランスアクスル22)の直上に搭載されていることで、電力ケーブルP1,P2の余裕長を短くすることができ、コスト低減を図れる利点がある。
ここで、電力ケーブルの本数は、上記の本数に限定されるものではなく、例えば、モータジェネレータを単相回転電機で構成した場合には各2本、計4本の電力ケーブルとなるし、あるいは、モータジェネレータの数に応じても適宜に変更されるものである。また、本実施形態においては全ての電力ケーブルが同一構成を有するものとして説明するため、1本の電力ケーブルを参照符号Pで表すものとする。
なお、図1ではエンジンコンパートメント12内のエンジンユニット20およびトランスアクスル22の周囲は空白となっているが、これらのスペースには駆動系、冷却系、空調系等の様々な補機類が略びっしりと配置されてもよい。
また、エンジンコンパートメント12内においてPCUケース24の前方には、剛性が高い部品を極力配置しないこととして空間としておくのが好ましい。これは、車両の前面衝突時に上記部品が後方に移動することでPCUケース24に衝突するのを避けてPCUケース24の破損を抑制するためである。他方、狭いエンジンコンパートメント12内にこのような空間を設けるとスペース効率が悪くなる。したがって、PCUケース24の前方であってラジエータ16との間に、例えば冷却液リザーブタンク、エアダクト等の比較的つぶれやすい部品を配置してもよい。このように比較的つぶれやすい部品であれば、車両の前面衝突時の衝突エネルギーを吸収・緩和する機能を果たし、PCUケース24の破損を抑制するうえで役に立つし、かつ、エンジンコンパートメント12のスペース効率も良くなる。
図3は、本実施形態におけるPCUケース24と、これをトランスアクスル22のハウジング23に取り付けるための前ブラケット30および後ブラケット32とを示す斜視図である。図3に示すように、PCUケース24は、金属製の筐体であって、上端開口部および下端開口部を有するケース本体26と、ケース本体26の上端開口部を閉じる上ケースカバー28Uと、ケース本体26の下ケースカバー28Lとから構成される。ケース本体26は、矩形筒状をなし、例えばアルミダイカスト等により好適に形成される。
上ケースカバー28Uおよび下ケースカバー28Lは、周縁部においてケース本体26にボルトにより締結固定されている。これらのケースカバー28U,28Lは、ケース本体26よりも伸び率が大きい金属材料により形成されるのが好ましい。具体的には、ケースカバー28U,28Lは、例えば鉄板をプレス加工したものが好適に用いられる。なお、本実施形態におけるPCUケース24は、上ケースカバー28Uと下ケースカバー28Lとを有するものとして説明するが、有底筐体状のケース本体と上ケースカバーとでケースが構成されてもよい。
ケース本体26の前側面および後側面の下部には、それぞれ2つずつの取付部34が突出して形成されている。図3中には、このうち3つの取付部34が示されている。各取付部34には、ボルト挿通孔36がそれぞれ貫通形成されている。これらの取付部34を介して、PCUケース24は、前ブラケット30および後ブラケット32の各上部に締結固定されている。
このようにしてPCUケース24の前端部および後端部が、前ブラケット30および後ブラケット32によってトランスアクスルハウジング23にそれぞれ固定されている。このとき、PCUケース24の下面とトランスアクスルハウジング23との間に隙間または空間が形成されているのが好ましい。これにより、PCUケース24の下面から放熱性を良好にすることができ、また、車両衝突時の荷重によってPCUケース24を、トランスアクスルハウジング23と干渉させずに移動させることができ、衝突エネルギーを効果的に吸収することができる。
図4は、ケース側コネクタ40と、モータ側コネクタ42と、その間に配索された電力ケーブルP1,P2とを模式的に示す図である。PCUケース24の外面にはケース側コネクタ40が取り付けられており、トランスアクスルハウジング23にはモータ側コネクタ42が取り付けられている。そして、各電力ケーブルPは、上端部がケース側コネクタ40に連結され、下端部がモータ側コネクタ42に連結されている。なお、ケース側コネクタ40とPCUケース24内の電力変換装置との間を接続する配線、および、モータ側コネクタ42とトランスアクスルハウジング23内の各モータジェネレータMG1,MG2とを接続する配線の図示が省略されている。
図5は、電力ケーブルPの横断面図である。電力ケーブルPは、略円形状の外形を有する導電性の芯線44と、芯線44の周囲を円環状に被覆する絶縁性の被覆部46とを有する。芯線44は、例えば、銅、アルミ等の低抵抗の金属材料で好適に形成される。また、被覆部46は、芯線44よりも伸び率が大きい材料、例えば樹脂、ゴム等によって好適に形成される。なお、電力ケーブルPは、円形断面の丸形線に限定されるものではなく、略矩形状の横断面を有する角形線が用いられてもよい。
図6は、本実施形態における電力ケーブルPの長手方向に沿った縦断面を部分的に示す図であり、上側がケース側コネクタ40側に相当し、下側がモータ側コネクタ42側に相当する。
図6に示すように、電力ケーブルPの芯線44には、車両衝突時に引っ張り力が作用したときに破断しやすい破断予定部45がPCUケース24に設けられたケース側コネクタ側40側に設けられている。他方、電力ケーブルPの被覆部46には、車両衝突時に引っ張り力が作用したときに破断しやすい破断予定部47がモータジェネレータ側、すなわちモータ側コネクタ42側に設けられている。
本実施形態では、電力ケーブルPの芯線44の破断予定部45、および、被覆部46の破断予定部47は、いずれも、切り込み部によって構成されている。これらの切り込み部は、芯線44および被覆部46の引っ張り強度を低下させて芯線44および被覆部46を車両衝突時に断線または破断しやすくするためのものである。上記切り込み部は、周方向にわたって環状に形成されてもよいし、周方向に飛び飛びに形成されてもよいし、あるいは、周方向の一部だけに形成されてもよい。また、被覆部46の破断予定部47は、他の被覆部分よりも肉厚が薄くなった薄肉部として形成されてもよい。
次に、図7〜図9を参照して、本実施形態のハイブリッド自動車10が前面衝突したときの状態を説明する。図7は、車両の前面衝突時にエンジンコンパートメント12内のPCUケース24に向かって進入してきたバリアBがPCUケース24にぶつかるときの様子を示す側面図である。また、図8は、衝突荷重を受けて前ブラケットおよび後ブラケットが変形してPCUケースが後退移動する様子を示す側面図である。
車両の前面衝突時にエンジンコンパートメント12内に進入してきたバリアBがPCUケース24に直にぶつかるか、または、後退移動したフードパネル13やラジエータ16がぶつかることにより、PCUケース24に車両後方側への荷重が作用する。
図8に示すように、車両前突時の衝突荷重FがPCUケース24に作用すると、前ブラケット30および後ブラケット32が変形することによって、PCUケース24が車両後方側へ後退移動することができ、これにより衝突エネルギーを効果的に吸収してPCUケース24の破損を抑制することができ、その結果、車両衝突時の高圧安全性が向上する。
このとき、PCUケース24が図8に示す破線で示す搭載位置から実線で示す後退位置まで移動したとき、その移動量が電力ケーブルの余裕長でカバーできる程度であれば、電力ケーブルP1,P2に引張力が作用することはない。しかしながら、電力ケーブルP1,P2の余裕長を短くした場合であって、その余裕長を超えてPCUケース24が移動したときには、各電力ケーブルPに引っ張り力が作用することになる。そのときの様子が図9に示される。
図9は、図8に示すようなPCUケース24の後退移動によって電力ケーブルPに引張力が作用したときの様子をケーブル縦断面で示したものであり、(a)は衝突時の様子、(b)は芯線が断線したときの様子、(c)は被覆部が破断したときの様子を示す図である。
図9(a)に示すように、衝突時にPCUケース24が移動することによって電力ケーブルPに引っ張り力T1が作用する。そうすると、電力ケーブルPは長手方向に伸びて、図9(b)に示すように、まず、伸び率が比較的小さい芯線44の破断予定部45に応力集中が生じて、断線または破断する。このとき破断予定部45の周囲は比較的伸び率が大きい被覆部46が引き伸ばされた状態で覆っているため、芯線44の断線箇所で火花が生じてもケーブル外に出ることはなく安全である。
続いて、図9(b)に示す状態から引き続き引っ張り力T2(<T1)が作用していることによって電力ケーブルPが更に引き伸ばされて、図9(c)に示すように、電力ケーブルPの被覆部46が破断予定部47において破断する。そうすると、被覆部47の破断によって芯線44が露出する可能性があるが、電力供給側であるケース側において芯線44が既に断線していて高圧印加状態が解除されているため、芯線44が露出しても安全である。
このように、本実施形態のハイブリッド自動車10によれば、車両の前面衝突時にPCUケース24が後方移動したとき、芯線44がケース側で先に断線することでインバータからモータジェネレータMG1,MG2への電力供給が遮断されるので、その後に被覆部46がモータ側で破断して芯線44が露出しても高電圧に対する危険がない。したがって、ハイブリッド自動車10の衝突時の高圧安全性が向上する。
次に、図10を参照して、電力ケーブルの変形例について説明する。上記実施形態における電力ケーブルPでは、芯線44の破断予定部45がケース側コネクタ40から離れた位置に設けられている例について説明したが、図10に示すように、電力ケーブルPの芯線44の破断予定部45がケース側コネクタ40内に位置して設けられてもよい。この場合、ケース側コネクタ40内において被覆部46が除去されて芯線44の先端部が露出した状態になっており、その先端部がかしめ、ネジ留め、溶接、モールド樹脂等によって端子(図示せず)に固定されている。したがって、この変形例における破断予定部45は、かしめ等によって固定される芯線44の先端部の近傍に位置してケース側コネクタ40内に設けられている。このようにしても、上記実施形態と同様に、芯線44が先立って破断するとともに、火花の飛び散りをケース側コネクタ40によって防止できる。
また、図10に示すように、電力ケーブルPの被覆部46に形成される破断予定部47をモータ側コネクタ42内に位置して設けてもよい。この場合にも、モータ側コネクタ42内において芯線44の先端部が露出されているが、その近傍にある被覆部46の先端部がかしめ等によってモータ側コネクタ42内に固定されているので、上記実施形態の場合と同様に、芯線44の断線に続いて被覆部46の破断を生じさせることができる。
次に、図11を参照して、電力ケーブルの別の変形例について説明する。上記実施形態では、芯線44および被覆部46の破断予定部45,47をそれぞれ切り込み部によって構成するものと説明した。ただし、この場合には、破断予定部45において芯線44の断面積が小さくなって電気抵抗が増すことにより発熱が他の芯線部分よりも大きくなることがある。そこで、図11に示すように、芯線44の断面積を低下させることなく脆性が他の芯線部分より高くされている脆弱部45aを破断予定部として電力ケーブルPの芯線44に設けてもよい。このようにすれば、脆弱部45aにおける抵抗の増加および発熱を低減できる。また、芯線44の周囲の一部に切り込み部を形成した場合には電力ケーブルの曲がりやすさに異方性が生じることがあるが、この変形例ではどの方向にも同様の曲がりやすさとなり、配索が比較的容易となる利点がある。
上記のような脆弱部45aは、例えば芯線44をベリリウム銅によって構成し、焼入れ等の熱処理を加えることによって部分的に脆性を高くすることによって形成されることができる。あるいは、例えば芯線44を部分的に化学処理することによって合金化することによって脆性を高めてもよく、例えば銅とニッケルの合金、銅とタングステンの合金等によって脆性を高めてよい。
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載される事項の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、上記においてはPCUケース24がトランスアクスル22上に前下がり姿勢で搭載されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ケースは、水平姿勢でトランスアクスル上に搭載されてもよいし、あるいは、後下がりの姿勢でトランスアクスル上に搭載されてもよい。
また、上記においては、インバータ等の電力変換装置を収容したPCUケース24がモータジェネレータMG1,MG2を収容するトランスアクスルハウジング23上に取り付けられる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、PCUケースがブラケット等によって車両ボディに固定されてもよい。
さらに、上記においてはPCUケース24の前方にラジエータの上部が位置するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、ラジエータの上部位置が低くてケースの前方がフードパネルとなっている構成であってもよい。
さらにまた、上記においては、車両の前面衝突時に電力ケーブルの破断および断線が生じるときの例を説明したが、本発明は、車両の側面衝突時の荷重によってケースが側方(すなわち車両左右方向)へ移動して電力ケーブルに引っ張り力が作用する場合にも勿論有効である。
10 ハイブリッド自動車(電動車両)、12 エンジンコンパートメント(駆動部収容室)、13 フードパネル、14L,14R サイドメンバー、15 隔壁、16 ラジエータ、18 車輪、20 エンジンユニット、22 トランスアクスル、23 トランスアクスルハウジング、24 PCUケース、25 前方上側角部、26 ケース本体、28U 上ケースカバー、28L 下ケースカバー、30 前ブラケット、32 後ブラケット、34 取付部、36,38 ボルト挿通孔、40 ケース側コネクタ、42 モータ側コネクタ、44 芯線、45 (芯線)破断予定部、45a 脆弱部、46 被覆部、47 (被覆)破断予定部、B 衝突実験用バリア、MG1,MG2 モータジェネレータ、P,P1,P2 電力ケーブル。

Claims (5)

  1. 車両の駆動部収容室内に搭載されたモータの駆動力により走行可能な電動車両であって、
    前記駆動部収容室内に配置され、前記モータとの間で電力を授受する電力変換装置を収納したケースと、
    前記電力変換装置と前記モータとを電気接続する電力ケーブルと、
    を備え、
    前記電力ケーブルは、導電性の芯線と、該芯線よりも伸び率が大きい材料で形成されて前記芯線の周囲を被覆する絶縁性の被覆部とを含み、前記芯線には、車両衝突時に引張力が作用したときに破断しやすい芯線破断予定部が前記ケース側に設けられ、前記被覆部には、前記引張力が作用したときに破断しやすい被覆破断予定部が前記モータ側に設けられている、
    電動車両。
  2. 請求項1に記載の電動車両において、
    前記芯線破断予定部は、前記芯線に設けられた切り込み部または脆弱部によって構成される、電動車両。
  3. 請求項1または2に記載の電動車両において、
    前記被覆破断予定部は、前記被覆部に設けられた切り込み部または薄肉部によって構成される、電動車両。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動車両において、
    前記電力ケーブルのケース側端部は前記ケースの外面に設けられたケース側コネクタに連結されており、前記芯線破断予定部は前記ケース側コネクタ内に位置して設けられる、電動車両。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の電動車両において、
    前記電力ケーブルのモータ側端部は前記モータを収容するハウジングの外面に設けられたモータ側コネクタに連結されており、前記被覆破断予定部は前記モータ側コネクタ内に位置して設けられる、電動車両。
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