JP2013219164A - テクスチャ形成面を有するシリコン基板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基板面方位(111)のシリコン基板の表面に、ドライエッチング法によってテクスチャを形成することで、新しいテクスチャ形成面を有するシリコン基板を提供すること。
【解決手段】本発明は、テクスチャを形成されたテクスチャ形成面を有する基板面方位(111)のシリコン基板であって、前記テクスチャ形成面には、複数の六角錘状の凹部が形成され、かつ前記凹部の深さは100nm〜10μmの範囲にあるシリコン基板を提供する。本発明のシリコン基板の製造方法は、基板面方位(111)のシリコン基板を用意するステップと、前記シリコン基板表面にエッチングガスを吹き付けるステップとフッ硝酸水で洗浄するステップを有し、前記エッチングガスには、ClF3,XeF2,BrF3,BrF5およびNF3からなる群から選ばれる一以上のガスが含まれる。
【選択図】図1

Description

本発明は、テクスチャ形成面を有するシリコン基板と、その製造方法に関する。
シリコン太陽電池(光電変換素子)などにおいて、シリコン基板の受光面にテクスチャと称される凹凸形状を設けて、入射光の反射を抑え、かつシリコン基板に取り込んだ光を外部に漏らさないようにしている。シリコン基板の表面へのテクスチャ形成は、一般的にアルカリ(KOH)水溶液をエッチャントとするウェットプロセスにより行われている。
ウェットプロセスによるテクスチャ形成は、後処理としてフッ化水素による洗浄工程や、熱処理工程などが必要とされる。そのため、シリコン基板表面を汚染する恐れがあるばかりか、コスト面からも不利な点があった。
しかも、ウェットプロセスによりテクスチャ形成できるシリコン基板は、基板面方位(100)のシリコン基板に限られ(特許文献1を参照);他の基板面方位を有するシリコン基板の表面に、ウェットプロセスによりテクスチャ形成することはできなかった。
一方で、シリコン基板の表面へのテクスチャ形成をドライプロセスにて行う方法も提案されている。例えば、1)プラズマによる反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching)といわれる手法を用いる方法、2)シリコン基板のある大気圧雰囲気下の反応室に、ClF3,XeF2,BrF3およびBrF5のいずれかのガスを導入することで、シリコン基板表面をエッチングする方法が提案されている(特許文献2を参照)。
特開2000−150937号公報 特開平10−313128号公報
前述の通り、ウェットプロセスによりテクスチャ形成できるシリコン基板は、基板面方位(100)のシリコン基板に限られていた。そのため、他の基板面方位のシリコン基板にテクスチャを形成することで、これまでとは異なるユニークなテクスチャが得られることが期待される。
例えば、ウェットプロセスにより形成されたテクスチャは10μm〜20μmの高さの突起を有する。そのため、シリコン基板全体の厚みはそれ以上にならざるを得ず、太陽電池のシリコン基板として必要とされる厚み以上の厚みにならざるを得なかった。これに対して、テクスチャをより微細な構造で構成できれば、シリコン基板全体の厚みを低減することができ、シリコンの材料効率を高めることができる。
また上述の通り、シリコン基板表面のテクスチャの形成をドライプロセスにて行う方法も提案されている。
しかしながら、当該手法によっては、所望のテクスチャ構造が得られない場合があった。その理由の一つは、ClF3,XeF2,BrF3およびBrF5などのガスはシリコン基板と発熱反応を起こし、シリコン基板の温度を上昇させて、異方的なエッチングができない場合があるためである。更には、エッチングガスの組成も好適化されていなかったため、適切なテクスチャ構造が得られにくかった。
そこで本発明は、基板面方位(111)のシリコン基板の表面に、好ましくはドライエッチング法によってテクスチャを形成することで、新しいテクスチャ形成面を有するシリコン基板を提供することを目的とする。また、それを含む太陽電池を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、以下に示すテクスチャ形成面を有するシリコン基板、およびそれを含む太陽電池に関する。
[1]テクスチャ形成面を有する基板面方位(111)のシリコン基板であって、
前記テクスチャ形成面には、六角錘状の凹部が複数形成され、かつ前記凹部の深さは、100nm〜10μmの範囲にある、シリコン基板。
[2]上記[1]において、凹部の深さは、100nm〜1500nmの範囲である、シリコン基板。
[3]上記[1]または[2]において、凹部を構成する錐の底面の対角線の長さは、100nm〜50μmの範囲である、シリコン基板。
[4]上記[1]〜[3]において、テクスチャ形成面における前記凹部の密度は、10〜1000個/100μm2である、シリコン基板。
[5]上記[1]〜[4]において、前記シリコン基板のテクスチャ形成面への入射光(波長0.5〜10μm)の吸光率は80%以上である、シリコン基板。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載のシリコン基板を含み、テクスチャ形成面を受光面とする太陽電池。
また本発明は、以下に示すテクスチャ形成面を有するシリコン基板の製造方法に関する。
[7]基板面方位(111)のシリコン基板を準備するステップと、
前記シリコン基板の表面にエッチングガスを吹き付けるステップと、
前記シリコン基板を酸またはアルカリで洗浄するステップと、を有するテクスチャ形成面を有するシリコン基板の製造方法であって、
前記エッチングガスには、ClF3,XeF2,BrF3,BrF5およびNF3からなる群から選ばれる一以上のガスが含まれ、
前記テクスチャ形成面に六角錘状の凹部が複数形成され、かつ前記凹部の深さは、100nm〜10μmの範囲にあるシリコン基板を得る、テクスチャ形成面を有するシリコン基板の製造方法。
[8]上記[7]において、エッチングガスには、分子中に酸素原子を含有するガスが更に含まれる、製造方法。
[9]上記[7]において、前記エッチングガスには、不活性ガスが更に含まれる、製造方法。
[10]上記[7]において、シリコン基板の温度を130℃以下に保持する、製造方法。
[11]上記[7]において、シリコン基板のエッチングは、減圧環境下にて行われる、製造方法。
[12]上記[7]〜[11]において、シリコン基板の洗浄は、フッ硝酸水で洗浄する、製造方法。
[13]上記[7]〜[11]において、シリコン基板の洗浄は、水酸化ナトリウムで行なう、製造方法。
本発明のシリコン基板はテクスチャ形成面を有しており、その反射率が低い。よって、テクスチャ形成面を受光面とすることで、太陽電池用のシリコン基板として好適に用いられる。しかも、本発明のテクスチャは微細構造からなるので、シリコン基板を薄くすることができ、シリコン基板の材料効率を高めることができ、更にはデバイス設計の自由度を高めることができる。
本発明のシリコン基板のテクスチャ形成面の第一の例を示す図であり、図1A、図1Bは、テクスチャ形成面を模式的に示す上面図、断面図であり;図1Cは、テクスチャ形成面の上面斜視の電子顕微鏡写真を示す図 シリコン基板をドライエッチングしたが、所望のテクスチャ形成面が得られなかった例を示す図 実施例で用いたテクスチャ形成装置の概要を示す図 図4Aは、基板面方位(111)のシリコン基板のテクスチャ未形成表面(参考例)および実施例1で得たシリコン基板のテクスチャ形成面における反射率を示すグラフであり;図4Bは、基板面方位(111)のシリコン基板のテクスチャ未形成のシリコン基板の表面(参考例)および実施例1で得たシリコン基板のテクスチャ形成面における吸光率を示すグラフを示す図
1.テクスチャ形成面を有するシリコン基板について
本発明のシリコン基板は、基板表面にテクスチャが形成されていることを特徴とする。テクスチャが形成された基板表面を、テクスチャ形成面という。
シリコン基板は、単結晶シリコンであることが好ましく;p型ドーピングされていてもよいし、n型ドーピングされていてもよし、真性シリコンであってもよい。いずれにしても、シリコン基板は、基板面方位(111)のシリコン基板である。基板面方位(111)以外の基板面方位を有するシリコン基板には、本発明におけるテクスチャ形成面が実現されにくい。
本発明のテクスチャ形成面を有するシリコン基板の特徴の一つは、シリコン基板面方位(111)であることである。これまでのウェットエッチング法により基板面方位(100)のシリコン基板にテクスチャを形成することはできたが、基板面方位(111)のシリコン基板にテクスチャを形成することはできず、等方的にエッチングされてしまう。
テクスチャ形成面とは、低反射表面を意味する。低反射表面とは、0.5〜1.0μmの波長の光に対する鏡面の反射率を100%とした場合の反射率が、約20%以下の表面であることが好ましく、10%以下の表面であることがより好ましく、実質的に反射率が0%の表面をいう。また、本発明のテクスチャ形成面を有するシリコン基板の吸光率(波長領域0.5〜1.0μm)は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。吸光率は、積分球分光光度計にて測定することができ;式「吸光率(%)=100×{入射光強度−(反射光強度+透過光強度)}/入射光強度」で求めることができる。
具体的に本発明のテクスチャ形成面は、六角錐状の凹部を有する。テクスチャ形成面には、複数の六角錐状の凹部が密集していることが好ましい(図1Aに示される模式図を参照)。六角錘状とは、底面が三角形の錐体であり、頭頂点を有していることがあっても問題はない。また、六角錘状とは、正六角錐に近い形状であることが好ましいが、厳密な六角錐である必要はない。六角錘状の凹部は密集して重なっているため、必ずしも一つ一つが六角錘になっている必要はない。
六角錘状の凹部の深さH(図1A、図1B参照)は、通常100nm〜10μmであり、好ましくは100nm〜1μmである。六角錘状の凹部の底面の対角線の長さL(図1A、図1B参照)は、通常100nm〜50μmであり、好ましくは100nm〜10μmである。また、頭頂点の角度θ(図1A、図1B参照)は40〜80°であることが好ましい。
本発明のテクスチャ形成面を有するシリコン基板の特徴の一つは、テクスチャを構成する凹部が小さいことである。これまでのウェットエッチング法やイオンプラズマエッチング法で形成されたテクスチャの凹部の深さははるかに大きく(例えばウェットエッチング法で形成されたテクスチャの突起部の高さは10〜20μmである)、本発明のように微細な凹部は形成できなかった。テクスチャの構造が微細であるほど、テクスチャ形成面での光の反射は抑制される。例えば、テクスチャの加工精度を1μm以下とすれば、テクスチャ形成面での波長1μmの光の反射をほぼ0にすることができる。
本発明のテクスチャ形成面を有するシリコン基板の更なる特徴は、シリコン基板を薄くすることができることである。すなわち、テクスチャを構成する凹部が微細であるが故に、その分のシリコン基板厚みを低減することができる。本発明のシリコン基板の厚みは、凹部の深さを含めて、150μm以下とすることができ、好ましくは100μm以下とすることができ、より好ましくは50μm以下である。シリコン基板の厚みの下限は特に限定されず、基板としての強度を保つことができればよく、通常は10μm以上である。
テクスチャ形成面には、複数の六角錘状の凹部があるが;複数の六角錘状の凹部は、それぞれ別個の形状を有していてもよい。また、テクスチャ形成面における凹部の密度は、単位面積(100μm2)あたり10〜1000個であることが好ましい。
更に、六角錘状の凹部の表面には、微細な凹凸が形成されていてもよい。例えば、六角錘状の凹部の表面は、階段状または多層状になっていてもよい(図示せず)。これらの微細な凹凸により、テクスチャ形成面での光の反射率は、より低減されうる。
上記の通り、テクスチャ形成面には複数の六角錐状の凹部があるが、それとともに、それ以外の形状が形成されていても構わない。例えば、六角錐状ではなく、三角錐状や円錐状の凹部などが形成されていてもよい。
また、シリコン基板表面の全面にテクスチャが形成されていてもよく、その一部にテクスチャが形成されていてもよい。例えば、本発明のシリコン基板を太陽電池用のシリコン基板として用いる場合に、受光面側に配置する表面電極(コネクタ電極,バー電極,グリッド電極などを含む)を配置する領域には、テクスチャを形成することなく、平坦状にされていることが好ましい。
2.テクスチャ形成面を有するシリコン基板の製造方法について
本発明のシリコン基板の製造方法は、基板面方位(111)のシリコン基板を用意するステップと、シリコン基板にエッチングガスを吹き付けるステップとを含む。好ましくは、シリコン基板に冷却ガスを吹き付けるステップを更に含み;エッチングガスを吹き付けるステップと冷却ガスを吹き付けるステップとを交互に繰り返してもよい。
基板面方位(111)のシリコン基板とは、主面方位が(111)面である単結晶シリコン基板である。シリコン基板は半導体ウェハであってもよいし、他の基板に積層された半導体層であってもよい。いずれにしても、主面方位である(111)面にテクスチャを形成する。
また、用意するシリコン基板は、真性シリコンであってもよく、p型またはn型にドーピングされたシリコンであってもよい。太陽電池用のシリコン基板を得る場合には、p型にドーピングされたシリコン基板を用意することが多い。
シリコン基板へのエッチングガスの吹き付けは、大気圧〜80KPaの減圧条件下にて行われることが好ましい。更に30KPa以下であることが好ましく、20KPa以下であることがより好ましく、10KPa以下であることが更に好ましく、50Pa以下であってもよい。より低圧条件下でエッチングを行うほど緻密な形状が得られるが、圧力が高いほうが微細な形状が得られやすい。
エッチングガスには、少なくともClF3,XeF2,BrF3,BrF5およびNF3のうちの少なくとも一つのガス(「フッ素含有ガス」とも称する)を含む。エッチングガスに含まれるフッ素含有ガスは、これらのガスの2種以上の混合ガスであってもよい。
フッ素含有ガスの分子は、シリコン基板の表面に物理吸着して、エッチングサイトに移動する。エッチングサイトに到達したガス分子は分解し、シリコンと反応して揮発性のフッ素化合物を生成する。それにより、シリコン基板表面がエッチングされ、テクスチャが形成される。
エッチングガスには、フッ素含有ガスとともに、更に不活性ガスが含まれていることが好ましい。不活性ガスとは、窒素ガス、アルゴンやヘリウムなどであり、シリコンとの反応性を有さないガスであればよい。エッチングガスに含まれる不活性ガスは、2種以上のガスの混合ガスであってもよい。
エッチングガスにおける不活性ガスの合計濃度(体積濃度)は、フッ素含有ガスの合計濃度に対して、3倍以上であることが好ましく、10倍以上または20倍以上であってもよい。エッチングガスにおけるフッ素含有ガスの合計濃度が高いほど、六角錐状の凹部が大きくなる(凹部の深さが大きくなる)傾向がある。よって、凹部を小さくしたい場合には、不活性ガスの濃度を高めてフッ素含有ガスの濃度を相対的に下げることが好ましい。
エッチングガスにおける不活性ガスの濃度が低く、フッ素含有ガスの濃度が相対的に高くなると、シリコン基板表面を等方的にエッチングしやすくなる場合があり、シリコン基板表面に所望のテクスチャを形成しにくいことがある。
更に、エッチングガスには、フッ素含有ガスとともに、その分子内に酸素原子を含有するガスが含まれていることが好ましい。酸素原子を含有するガスとは、典型的には酸素ガス(O2)であるが、二酸化炭素(CO2)や二酸化窒素(NO2)などであってもよい。
エッチングガスにおける酸素原子含有ガスの濃度(体積濃度)は、フッ素含有ガスの合計濃度の2倍超であることが好ましく、4倍以上であることがより好ましい。また、エッチングガスにおける酸素原子含有ガスの濃度(体積濃度)は、フッ素含有ガスと不活性ガスとの合計濃度に対して、30〜80%であることが好ましい。エッチングガスにおける酸素原子含有ガスの濃度が低すぎると、オーバーエッチングによって所望のテクスチャが得られない場合がある。
エッチングガスに酸素原子含有ガスを含ませることで、太陽電池のテクスチャとして適切な凹凸形状を、半導体基板表面に形成することができる。その理由は、特に限定されないが、例えばClF3ガスがシリコン表面に物理吸着すると、シリコンと反応してSiF4となってガス化する。このとき、シリコンネットワーク構造のダングリングボンドに酸素原子がターミネートすることで、Si−O結合が部分的に構成される。それにより、エッチングされやすい領域(Si−Si)と、エッチングされにくい領域(Si−O)とができる。そのエッチングレートの差でケミカルな反応が促進され、形状制御が可能となると考えられる。
エッチングガスの基板表面への吹き付け圧力を高めると、得られる六角錘状の凹部の表面を、階段状にしたり、多層状にしたりすることができる場合がある。吹き付け圧力を高めるには、例えば、基板表面とエッチングガスの噴出し口との間隔を狭くしたり、吹き付けるエッチングガスの流速を高めたりすればよい。
本発明のシリコン基板の製造方法では、エッチング中のシリコン基板の温度を低温に維持することが重要である。シリコン基板の温度は、50℃以上150℃の範囲にすることが好ましい。更に130℃以下に維持することが好ましく、100℃以下に維持することがより好ましく、80℃以上に維持することが更に好ましい。シリコン基板の温度を低温に維持するために、シリコン基板を載置するステージの温度を室温程度(25℃)以下に維持することが好ましい。
前記の通り、本発明のシリコン基板の製造方法は、シリコン基板に冷却ガスを吹き付けるステップを含んでいてもよい。冷却ガスとは、前述の不活性ガスと同様であり、窒素ガス、アルゴンやヘリウムなどを意味する。エッチングガスとの反応によって発熱したシリコン基板に冷却ガスを吹き付けることによって、発熱した基板を冷却する。
本発明のシリコン基板の製造方法において、シリコン基板にエッチングガスを吹き付けるステップと、冷却ガスを吹き付けるステップとを交互に繰り返してもよい。シリコン基板にエッチングガスを吹き付けるステップのプロセス時間を制御することで、基板温度を低温に維持する。プロセス時間は特に限定されないが、1分間〜10分間程度であればよい。シリコン基板にエッチングガスを吹き付けるステップの後に、冷却ガスを吹き付けて基板温度を低下させて、再びシリコン基板にエッチングガスを吹き付ければよい。
エッチングガスによって、シリコン基板表面に凹部が形成されたら、シリコン基板に残存したエッチングガスまたはその分解物を除去することが好ましい。例えば、シリコン基板を水素ガス雰囲気下において、残留したフッ素成分を除去してもよい。
表面に凹部が形成されたシリコン基板を、フッ硝酸の溶液で洗浄することで、シリコン表面が更にエッチングされ、所望の六角錘状の凹部が形成される。洗浄液はアルカリ溶液でも可能で例えば水酸化ナトリウムを使用することができる。
3.テクスチャ形成面を有するシリコン基板の用途
このように、本発明のシリコン基板は、太陽電池用のシリコン基板として用いられることが好ましい。太陽電池用のシリコン基板とするには、シリコン基板のテクスチャ形成面にエミッタ層を形成してpn接合を形成することが好ましい。例えば、p型シリコン基板にテクスチャ形成面を形成した場合には、オキシ塩化リンガス雰囲気中でテクスチャ形成面を加熱して、テクスチャ形成面にn型エミッタ層を形成し、pn接合を形成する。更に、エミッタ層に反射防止層を積層することで、太陽電池としての反射率を更に低下させることができ、光電変換率が向上する。反射防止層とは、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、酸化チタン膜などでありうる。
更に、テクスチャ形成面である受光面に表面電極を配置し、非受光面に裏面電極を配置することで、太陽電池が得られる。もちろん、太陽電池の態様が上述したものに限定されるわけではない。
図3には、実施例で用いたテクスチャ形成装置の概要が示される。図3Aは、テクスチャ形成装置10の外観斜視図であり;図3Bは、減圧チャンバ20内を透視した斜視図である。図3ABに示されるテクスチャ形成装置10は、減圧チャンバ20内に、エッチングガスを噴出するノズル30と、冷却ガスを噴出するノズル40と、シリコン基板100を載置するためのステージ50と、を有する。エッチングガスを噴出するノズル30は、エッチングガス供給配管31に接続しており;冷却ガスを噴出するノズル40は、冷却ガス供給配管41に接続している。ステージ50に載置されたシリコン基板100に、エッチングガスと冷却ガスとを吹き付けることで、テクスチャ形成面を有するシリコン基板を製造した。
[実施例1]
図3に示されるテクスチャ形成装置10のステージ50に、基板面方位(111)のシリコン基板100を載置した。エッチングガスを噴出するノズル30とシリコン基板100との間隔を10mmにセットした。シリコン基板100の基板面の面積は、125mm×125mmである。ステージ50の温度を25℃に設定した。減圧チャンバ20内の圧力を90KPaに調整した後、エッチングガスを噴出するノズル30からのエッチングガスを3分間かけてシリコン基板100の表面全体に吹き付けた。吹き付けたエッチングガスの組成は「ClF3/O2/N2=50〜1000cc/3500cc/1000〜5000cc」とした。次に、エッチングガスを吹き付けたシリコン基板をフッ硝酸溶液に5分浸漬した。
得られたシリコン基板のテクスチャ形成面を図1に示す。図1Cに示される通り、六角錐状の凹部が密集して形成されていることがわかる。そして、図1Cに示される通り、その凹部の深さは、100nm〜200nmであることがわかる。図1A、図1Bは、テクスチャ形成面を模式的に示す上面図と断面図である。
[比較例1]
図3に示されるテクスチャ形成装置10のステージ50に、基板面方位(111)のシリコン基板100を載置した。シリコン基板100の基板面の面積は、125mm×125mmである。ステージ50の温度を80℃に設定した。減圧チャンバ20内の圧力を90KPaに調整した後、エッチングガスを噴出するノズル30からのエッチングガスを3分間かけてシリコン基板100の表面全体に吹き付けた。吹き付けたエッチングガスの組成は「ClF3/O2/N2=500cc/0cc/2000〜5000cc」とした。
得られたシリコン基板表面の形状を、図2に示す。図2に示されるように、シリコン基板表面が粗面化されているものの、形状が乱れており、六角錘状の凹部を形成できていない。これは、シリコン基板の温度を低温に維持できなかったためであると考えられる。
実施例1で得られたシリコン基板のテクスチャ形成面での反射率と吸光率とを測定した。また、参照例として、基板面方位(111)のシリコン基板のテクスチャ未形成表面での反射率と吸光率とを測定した。反射率および吸光率の測定は、積分球分光光度計(U4000,日立ハイテクフィールディング)で行った。
図4Aは、基板面方位(111)のシリコン基板のテクスチャ未形成表面(参考例)および実施例1で得たシリコン基板のテクスチャ形成面における反射率を示すグラフであり;図4Bは、基板面方位(111)のシリコン基板のテクスチャ未形成のシリコン基板の表面(参考例)および実施例1で得たシリコン基板のテクスチャ形成面における吸光率を示すグラフである。
図4Aおよび図4Bに示されるように、実施例1のシリコン基板のテクスチャ形成面での反射率(波長500nm〜1000nm)は20%以下に抑制されており、かつ吸光率(波長500nm〜1000nm)は80%以上にまで高められている。
本発明のシリコン基板はテクスチャ形成面を有しており、その反射率が低い。しかも、テクスチャ形成面には、従来よりも微細な形状が形成されているので、シリコン基板を薄層化することも可能である。よって、テクスチャ形成面を受光面とすることで、太陽電池用のシリコン基板として好適に用いられる。それにより、太陽電池の光電変換率の向上に寄与する。
10 テクスチャ形成装置
20 減圧チャンバ
30 エッチングガスを噴出するノズル
31 エッチングガス供給配管
40 冷却ガスを噴出するノズル
41 冷却ガス供給配管
50 ステージ
100 シリコン基板

Claims (13)

  1. テクスチャ形成面を有する基板面方位(111)のシリコン基板であって、
    前記テクスチャ形成面には、六角錘状の凹部が複数形成され、かつ前記凹部の深さは、100nm〜10μmの範囲にあること、
    を特徴とするテクスチャ形成面を有するシリコン基板。
  2. 前記凹部の深さは、100nm〜1500nmの範囲である、請求項1に記載のテクスチャ形成面を有するシリコン基板。
  3. 前記凹部を構成する錐の底面の対角線の長さは、100nm〜50μmの範囲である、請求項1または2に記載のテクスチャ形成面を有するシリコン基板。
  4. 前記テクスチャ形成面における前記凹部の密度は、10〜1000個/100μm2である、請求項1〜3の何れか一項に記載のテクスチャ形成面を有するシリコン基板。
  5. 前記シリコン基板のテクスチャ形成面への入射光(波長0.5〜10μm)の吸光率は80%以上である、請求項1〜4の何れか一項に記載のテクスチャ形成面を有するシリコン基板。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載のシリコン基板を含み、前記テクスチャ形成面を受光面とする太陽電池。
  7. 基板面方位(111)のシリコン基板を準備するステップと、
    前記シリコン基板の表面にエッチングガスを吹き付けるステップと、
    前記シリコン基板を酸またはアルカリで洗浄するステップと、を有するテクスチャ形成面を有するシリコン基板の製造方法であって、
    前記エッチングガスには、ClF3,XeF2,BrF3,BrF5およびNF3からなる群から選ばれる一以上のガスが含まれ、
    前記テクスチャ形成面に六角錘状の凹部が複数形成され、かつ前記凹部の深さは、100nm〜10μmの範囲にあるシリコン基板を得ること、
    を特徴とするテクスチャ形成面を有するシリコン基板の製造方法。
  8. 前記エッチングガスには、分子中に酸素原子を含有するガスが更に含まれる、請求項7記載のテクスチャ形成面を有するシリコン基板の製造方法。
  9. 前記エッチングガスには、不活性ガスが更に含まれる、請求項7に記載のテクスチャ形成面を有するシリコン基板の製造方法。
  10. 前記シリコン基板の温度を130℃以下に保持する、請求項7に記載のテクスチャ形成面を有するシリコン基板の製造方法。
  11. 前記シリコン基板のエッチングは、減圧環境下にて行われる、請求項7に記載のテクスチャ形成面を有するシリコン基板の製造方法。
  12. 前記シリコン基板の洗浄は、フッ硝酸で洗浄する、請求項7〜11の何れか一項に記載のテクスチャ形成面を有するシリコン基板の製造方法。
  13. 前記シリコン基板の洗浄は、水酸化ナトリウムで行なう、請求項7〜11の何れか一項に記載のテクスチャ形成面を有するシリコン基板の製造方法。
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