JP2013211432A - 積層型圧電素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】焦電効果に起因する特性劣化の抑制を確実に実現することができ、圧電体層の薄層化が容易で信頼性の高い積層型圧電素子を提供する。
【解決手段】圧電体層12と、前記圧電体層を挟んで互いに略平行に積層された第1内部電極13及び第2内部電極14と、前記第1内部電極13及び前記第2内部電極14と略平行に積層されており前記圧電体層12より電気抵抗値が低い抵抗層18と、を有する素子本体11と、前記第1内部電極13及び前記抵抗層18に対して電気的に接続された第1外部電極15と、前記第2内部電極14及び前記抵抗層18に対して電気的に接続された第2外部電極16と、を有する。
【選択図】図1
【解決手段】圧電体層12と、前記圧電体層を挟んで互いに略平行に積層された第1内部電極13及び第2内部電極14と、前記第1内部電極13及び前記第2内部電極14と略平行に積層されており前記圧電体層12より電気抵抗値が低い抵抗層18と、を有する素子本体11と、前記第1内部電極13及び前記抵抗層18に対して電気的に接続された第1外部電極15と、前記第2内部電極14及び前記抵抗層18に対して電気的に接続された第2外部電極16と、を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、積層型圧電素子に関する。さらに詳しくは、焦電効果に起因する特性劣化を防止し得る積層型圧電素子に関する。
圧電素子は、圧電効果および逆圧電効果を利用し、機械的な変位と電気的な変位とを相互に変換する素子である。このような圧電素子は、例えば、圧電セラミックスを成形・焼成して素子本体を得た後、これに電極を形成し、さらに分極処理を施すことによって製造される。
圧電素子により得られる機械的変位は比較的微小であるため、圧電素子は、たとえば精密かつ正確な制御が要求されるアクチュエータとして好適に利用される。より具体的には、レンズ駆動用、HDDのヘッド駆動用、インクジェットプリンタのヘッド駆動用、燃料噴射弁駆動用等の用途が挙げられる。
このような圧電素子は、例えば携帯用電子機器等に用いられた場合、周囲の環境変化により、温度変化に曝されることになる。
このような温度変化に曝されることが想定される場合、圧電素子には、焦電効果による分極度の劣化という問題が発生する。特に温度が低下する過程において、圧電素子には、焦電効果による電荷によって分極処理時とは逆方向の電圧が印加されるため、その電圧が大きすぎる場合には、圧電素子の分極度を低下させてしまうおそれがある。このようにして低下した分極度は、温度が再度上昇する過程で回復することはほとんど望めないために、温度変化が繰り返されるたびに分極度が徐々に低下し、最終的には所望の変位が得られなくなるというような、圧電素子の特性劣化を引き起こしてしまう問題があった。
このような問題に対処するため、特許文献1には、積層型圧電素子において、その側面に露出している内部電極をマイグレーション防止用外装材で覆い、さらに該外装材に導電性粒子を分散させる技術が記載されている。
また、特許文献1には、導電性粒子を分散させた外装材により、焦電効果による分極度の低下を抑制できることが記載されている。
しかしながら、内部電極の露出面を外装材で覆う従来技術では、素子本体を形成した後に、別途その表面に外装材を形成する工程が必要となるため、分極度の低下を防ぐ構造を得るために、製造工程が長くなり生産効率が低下するという問題を有する。また、焼成後に圧電素子の集合体を切断する際に、内部電極が切断刃の進入方向に沿って延びてしまう場合があるため、導電粒子を含む外装材によって切断面を覆う従来技術では、外装材を介して形成される経路の抵抗値に、大きな製造バラツキを生じるおそれがある。
また、導電粒子を含有する従来技術の外装材には、導電性粒子の凝集などにより局所的に抵抗値の低い部分が形成され、該部分を通じて内部電極間に短絡を生じる恐れがあるという問題があった。特に、内部電極間の距離(圧電体層の厚み)が小さくなるほど、この問題が顕著になってしまう。
さらに、マイグレーションの防止と分極度低下の抑制を1つの外装材によって達成しようとする従来技術では、外装材が前記した両方の機能を果たすことを求められるために、その構成材料の選択や配合比の調整等が難しく、また外装材の抵抗値の調整が困難であるという問題があった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、焦電効果に起因する特性劣化の抑制を確実に実現することができ、しかも、圧電体層の薄層化が容易で生産性に優れた積層型圧電素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る積層型圧電素子は、圧電体層と、前記圧電体層を挟んで互いに略平行に積層された第1内部電極及び第2内部電極と、前記第1内部電極及び前記第2内部電極と略平行に積層されており前記圧電体層より電気抵抗値が低い抵抗層と、を有する素子本体と、
前記第1内部電極及び前記抵抗層に対して電気的に接続された第1外部電極と、
前記第2内部電極及び前記抵抗層に対して電気的に接続された第2外部電極と、を有する。
前記第1内部電極及び前記抵抗層に対して電気的に接続された第1外部電極と、
前記第2内部電極及び前記抵抗層に対して電気的に接続された第2外部電極と、を有する。
本発明に係る積層型圧電素子は、第1内部電極及び第2内部電極と平行に積層された抵抗層を含む素子本体を有し、当該抵抗層は、第1外部電極と第2外部電極の両方に電気的に接続されている。ここで、抵抗層は、圧電体層より電気抵抗値が低いために、焦電効果に伴い発生した電荷は抵抗層を介して移動し、圧電体層に過剰な電圧が印加されることを防止できる。その結果、本発明に係る圧電素子は、焦電効果によって引き起こされる特性劣化を、抑制することができる。
また、抵抗層を含む素子本体は、これを含まない(第1内部電極、第2内部電極及び圧電体層を含む)素子本体の積層工程に対して、積層されるシートの材質を一部変更するという軽微な変更を加えるだけで、容易に製造することが可能である。したがって、本発明に係る積層型圧電素子は、外装材を追加する従来技術に比べて、簡便な生産工程によって製造することができ、生産性に優れている。
また、抵抗層は素子本体に含まれており、第1内部電極及び第2内部電極に平行に配置されるため、抵抗層によって形成される経路の電気抵抗値は、製造バラツキが少ない。したがって、本発明に係る積層型圧電素子は、抵抗層の電気抵抗値を精度良くコントロールすることが可能であり、電圧印加に伴う機械的変位のような基本特性を好適に確保しつつ、焦電効果による特性劣化を防止することが可能である。
さらに、本発明に係る積層型圧電素子では、たとえ抵抗層内部において電気的性質の不均一が生じたとしても、それによって内部電極間が短絡するというような致命的な問題は発生しないため、安定した性能を有しており、製造が容易である。また、抵抗層は、その内部における電気的特性の偏りを、比較的広く許容することができるため、構成材料の選択や配合比等の製造条件も、比較的自由に決定できる。また、さらに、本発明に係る積層型圧電素子は、圧電体層を薄くしても、抵抗層が内部電極間を短絡させる危険性は生じないため、圧電体層の薄型化に対して有利である。
また、例えば、本発明に係る積層型圧電素子は、前記素子本体において前記第1内部電極および前記第2内部電極が露出している表面の少なくとも一部を覆う絶縁層を、さらに有しても良い。
このような積層型圧電素子は、絶縁層によりマイグレーションを防止し、抵抗層により分極度の低下を抑制することができるため、特に良好な信頼性を有する。また、この場合における絶縁層は、焦電効果によって発生する電荷を逃がす機能を持つ必要がなく、絶縁性の高い材料によって構成すれば良いので、信頼性が高く製造が容易である。
また、例えば、前記抵抗層は圧電体層の間に挟まれていても良い。
抵抗層と圧電体層を積層すると、抵抗層の熱収縮率や機械的性質が圧電体層のそれとは異なることに起因して、積層型圧電素子に歪みが生じるおそれがあるが、抵抗層を圧電体層の間に挟む構造とすることにより、このような現象を防止できる。
また、例えば、前記抵抗層は、前記素子本体の積層方向に関して略対称に配置されていても良い。
抵抗層を素子本体の積層方向に関して略対称に配置することにより、積層型圧電素子を変形させようとする応力を分散させることが可能であり、積層型圧電素子の変形を防止することができる。
また、例えば、前記抵抗層は、前記第1内部電極及び前記第2内部電極を、前記素子本体の積層方向に挟んで、両側に配置されていても良い。
素子本体の両端部には、リークを防止する観点から、内部電極が存在しない部分を形成することが好ましいので、この部分に抵抗層を配置することは、小型化に資する。また、抵抗層を素子本体の両側に配置することにより、積層型圧電素子の変形を防止することができる。
また、例えば、前記第1外部電極は、前記素子本体における第1の表面に形成されていても良く、
前記第2外部電極は、前記素子本体において前記第1の表面とは反対方向を向く第2の表面に形成されていても良く、
前記絶縁層は、前記素子本体において前記第1の表面と前記第2の表面とを接続する第3の表面に形成されていても良い。
前記第2外部電極は、前記素子本体において前記第1の表面とは反対方向を向く第2の表面に形成されていても良く、
前記絶縁層は、前記素子本体において前記第1の表面と前記第2の表面とを接続する第3の表面に形成されていても良い。
本発明に係る積層型圧電素子及び素子本体の形状は特に限定されないが、素子本体が概ね直方体であるような場合は、互いに反対方向を向く面に第1外部電極と第2外部電極が形成され、二つの外部電極を繋ぐ面に絶縁層が形成される構造とすることにより、製造が容易になる。すなわち、このような積層型圧電素子は、素子本体の各側面に、単純に外部電極及び絶縁層を形成することで製造可能であり、また絶縁層を含む素子本体の各部分も、シンプルな形状とすることができる。したがって、このような積層型圧電素子は、非常にシンプルな構造を有しており、製造が容易である。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層型圧電素子10は、略直方体形状であり、素子本体11と、第1外部電極15と、第2外部電極16と、絶縁層17とを有する。素子本体11は、積層型圧電素子10より若干小さい略直方体形状を有しており、第1外部電極15、第2外部電極16及び絶縁層17は、素子本体11の第1側面11a〜第4側面11dに形成されている。
図1〜図3に示すように、素子本体11は、圧電体層12と、第1内部電極13と、第2内部電極14と、抵抗層18とが、積層方向Zに沿って積層された内部構造を有する。素子本体11は、積層方向Zの中央部分に位置し、第1内部電極13及び第2内部電極14が存在する中央部と、積層方向Zの両端部に位置しており、第1内部電極13及び第2内部電極14が存在しない蓋部19とによって構成されている。
図2及び図3に示すように、素子本体11の中央部では、第1内部電極13と第2内部電極14とが、圧電体層12を挟んで交互に積層されている。第1内部電極13と第2内部電極14とは、積層方向に垂直な方向に沿って、互いに略平行に延在しているが、図2に示すように、第1内部電極13は素子本体11の第2側面11bの手前で途切れており、第2内部電極14は第2側面11bとは反対方向を向く第1側面11aの手前で途切れている。
図2に示すように、第2内部電極14が露出せず、第1内部電極13のみが露出している第1側面11aには、第1外部電極15が形成されている。第1外部電極15と第1内部電極13は、電気的かつ物理的に接続されており、第1外部電極15と第1内部電極13は、共に導電材料で構成されているため、常に略同電位となる。
これに対して、第1内部電極13が露出せず、第2内部電極14のみが露出している第2側面11bには、第2外部電極16が形成されている。第2外部電極16と第2内部電極14は、電気的かつ物理的に接続されており、第2外部電極16と第2内部電極14は、共に導電材料で構成されているため、常に略同電位となる。
第1内部電極13及び第2内部電極14を構成する導電材としては、たとえば、Ag、Pd、Au、Pt等の貴金属およびこれらの合金(Ag−Pdなど)、あるいはCu、Ni等の卑金属およびこれらの合金などが挙げられるが、特に限定されない。第1外部電極15及び第2外部電極16を構成する導電材料も特に限定されず、内部電極を構成する導電材と同様の材料を用いることができる。なお、さらに、第1外部電極15及び第2外部電極16の外側には、上記各種金属のメッキ層やスパッタ層が形成してあってもよい。
図2に示すように、素子本体11の中央部における圧電体層12は、第1内部電極13と第2内部電極14に挟まれた圧電活性部12aを有している。圧電活性部12aは、互いに極性の異なる第1内部電極13と第2内部電極14を介して電圧を印加され、機械的な変位を生じる部分である。
圧電体層12の厚みは、特に制限されないが、本実施形態では、好ましくは5〜50μm程度である。また、圧電体層12の材質は、圧電効果あるいは逆圧電効果を示す材料であれば、特に制限されず、たとえば、PbZrxTi1−xO3、BaTiO3などが挙げられる。また、特性向上等のための成分が含有されていてもよく、その含有量は、所望の特性に応じて適宜決定すればよい。
なお、図2及び図3に示すように、圧電体層12は、素子本体11の中央部だけでなく、素子本体11の両端部にある蓋部19にも存在する。蓋部19は、圧電体層12と抵抗層18を有するが、蓋部19には第1内部電極13及び第2内部電極14が存在しない。抵抗層18は、積層方向Zに略垂直な方向に沿って延在しており、素子本体11において、第1内部電極13及び第2内部電極14と略平行に積層されている。
図2に示すように、抵抗層18は、素子本体11の第1側面11aと第2側面11bの両方に露出しており、第1外部電極15と第2外部電極16の両方に対して、物理的かつ電気的に接続されている。抵抗層18は、第1内部電極13及び第2内部電極14を挟む両端部の蓋部19に配置されているが、いずれか一方のみの蓋部19に形成されていてもかまわない。
なお、図4(a)に示すように、本実施形態に係る抵抗層18の断面形状は、素子本体11の断面全体に広がる単純な矩形形状であり、素子本体11の側面のうち、積層方向Zに沿って延在する他の側面である第3側面11c及び第4側面11dにも露出している。ただし、抵抗層18の断面形状としてはこれに限定されず、図4(b)に示すような帯状形状の抵抗層48や、図4(c)に示すように蛇行形状の抵抗層58を採用することも可能である。抵抗層18,48,58は、第1外部電極15が形成されている第1側面11a及び第2外部電極16が形成されている第2側面11bに露出していれば良く、第3側面11c及び第4側面11dには露出していなくても良い。
抵抗層18は、圧電体層12より電気抵抗値が低い。図6に示すように、積層型圧電素子10の2つの極性の電極は、電気的には、圧電体層12によって構成される抵抗R1と、抵抗層18によって構成される抵抗R2とによって、並列に接続されていると考えることができる。抵抗層18に対応する抵抗R2の電気抵抗値は、圧電体層12に対応する抵抗R1の電気抵抗値より低く、例えば、圧電体層12(抵抗R1)の電気抵抗値(Ω)が109オーダーである場合、抵抗層18(抵抗R2)の電気抵抗値(Ω)を106オーダーとすることができる。
抵抗層18の電気抵抗値は、圧電体層12(抵抗R1)に応じて適宜設定すれば良いが、焦電効果によって生じる電荷を適切に移動させるために、例えば圧電体層12(抵抗R1)の電気抵抗値の100分の1程度以下とすることが好ましい。また、抵抗層18の電気抵抗値の下限値は、特に限定されないが、圧電活性部12aが所望の機械的変位を発生するように、少なくとも104Ω程度とすることが好ましい。ここで、抵抗層18の電気抵抗値は、抵抗層18の電気抵抗率、抵抗層18の厚み又は抵抗層18の数(実施形態では2つ)、抵抗層18の平面形状(図4(a)〜(c)参照)等によって調整することができる。なお、抵抗層18の厚みは特に制限されないが、たとえば1〜20μm程度とすることができる。
抵抗層18の材質は、圧電体層12より低い電気抵抗値を得ることができ、抵抗R2が焦電効果により生じる電荷を適切に放電する機能を達成できれば、特に制限されない。具体的な材料としては、所定の抵抗値を有する樹脂、カーボン等の導電性粒子を含む絶縁性樹脂、金属酸化物などが挙げられる。また、圧電体層12の材料に導電性粒子等を含有させ、抵抗率を圧電体層12より低くした材料も、抵抗層18の熱的及び機械的性質を圧電体層12に近づける観点から、抵抗層18の材質として好ましい。
前述したように、積層方向Zに沿って延在する素子本体11の側面のうち、第1側面11aには第1内部電極13のみが露出しており、第2側面11bには第2内部電極14のみが露出しているが、第1側面11aと第2側面11bとを接続する第3側面11c及び第4側面11dには、第1内部電極13と第2内部電極14の両方が露出している(図1及び図3参照)。
図3に示すように、第3側面11cと第4側面11dには、絶縁層17が形成されている。本実施形態に係る絶縁層17は、第3側面11c及び第4側面11dの全体を覆っている。ただし、絶縁層17は、第3側面11c及び第4側面11dの表面のうち、図2に示す圧電活性部12aに面する第1内部電極13及び第2内部電極14が露出している部分を被覆することが特に重要であり、その他の部分は被覆しない構成としても良い。
絶縁層17の材質は、絶縁性が高く、水分の浸入を防止し、内部電極間のマイグレーションを防止できる材料であれば特に制限されない。具体的な材料としては、樹脂、ガラスなどが挙げられる。また、絶縁層17の電気抵抗値は、絶縁性を確保できれば特に制限されないが、本実施形態では、109Ω以上であることが好ましい。絶縁層17の厚みは特に制限されないが、たとえば1〜20μm程度である。
以下に、図5等を用いて、積層型圧電素子10の製造方法の一例を説明する。
積層型圧電素子10の製造方法では、まず、焼成後に素子本体11となる積層体を製造する。積層体の製造工程では、図5に示すように、焼成後に圧電体層12となるグリーンシート22と、焼成後に第1内部電極13となる内部電極ペースト膜が形成された第1内部電極グリーンシート23と、焼成後に第2内部電極14となる内部電極ペースト膜が形成された第2内部電極グリーンシート24と、焼成後に抵抗層18となる抵抗層ペースト膜が形成された抵抗層グリーンシート28とを準備する。
内部電極ペースト膜及び抵抗層ペースト膜が印刷される前のグリーンシートと、グリーンシート22とは、たとえば以下のような方法で製造される。まず、圧電体層12を構成する材料の原料を湿式混合等の手段によって均一に混合した後、乾燥させる。次に、適切に選定された焼成条件で仮焼成し、仮焼粉を湿式粉砕する。そして、粉砕された仮焼粉末にバインダを加えてスラリー化する。次に、スラリーをドクターブレード法またはスクリーン印刷法等の手段によってシート化し、その後に乾燥させてグリーンシートを得る。なお、圧電体層12を構成する材料の原料には、不可避的不純物が含まれていてもよい。
次に、導電材を含む内部電極ペーストを、印刷法等の手段により、グリーンシートの上に塗布することで、所定パターンの内部電極ペースト膜が形成された第1内部電極グリーンシート23と第2内部電極グリーンシート24が得られる。また、抵抗層グリーンシート28は、焼成後に抵抗層18となる抵抗層ペーストを、グリーンシートの上に塗布することで得られる。
なお、抵抗層グリーンシート28は、焼成後に抵抗層18となる材料を含むスラリーをシート化することによって、独立したシートとして準備されても良い。この場合、抵抗層グリーンシート28は、スラリーの構成材料に導電性材料を追加することを除き、グリーンシート22と同様の方法によって作製することができる。
次に、準備したグリーンシート22、第1内部電極グリーンシート23、第2内部電極グリーンシート24及び抵抗層グリーンシート28を、所定の順序で積層する。図5に示すように、焼成後に素子本体11の中央部となる部分では、第1内部電極グリーンシート23と第2内部電極グリーンシート24を交互に積層する。また、焼成後に素子本体11の蓋部19となる両端部では、グリーンシート22の間に抵抗層グリーンシート28を挟むように積層する。なお、抵抗層グリーンシート28とグリーンシート22を積層すると、抵抗層グリーンシート28の熱収縮率がグリーンシート22のそれとは異なることに起因して、焼成時に歪みが生じるおそれがあるが、抵抗層18を圧電体層12の間に挟む構造とすることにより、このような現象を防止できる。
さらに、積層後に圧力を加えて圧着し、乾燥工程等の必要な工程を経た後、焼成後に素子本体11となる積層体を得る。
次に、得られた積層体を所定条件で焼成して焼結体を得た後、焼結体における第1側面11a及び第2側面11bに相当する部分に第1外部電極15および第2外部電極16を形成し、この電極に直流電圧を印加して圧電体層12の分極処理を行う。これにより、第1側面11a及び第2側面11bに外部電極15,16が形成されており、第3側面11c及び第4側面11dが露出した状態の素子本体11が得られる(図1参照)。なお、得られた素子本体11にバレル研磨を行って、素子本体11の角部および稜線部をR面加工しておくことも好ましい。
なお、図5では、各グリーンシート22,23,24,28のパターンを、1個の素子本体11に対応させて表しているが、実際のグリーンシート22,23,24,28としては、図5に示すパターンが一枚のシートに多数形成されたものが用いられる。このようなシートを用いて形成された集合積層体は、焼成前若しくは焼成後に適宜切断されることによって、最終的に図1に表すような素子本体11の形状となる。
最後に、素子本体11の第3側面11c及び第4側面11dに、図3に示すような絶縁層17を形成し、第1内部電極13及び第2内部電極14が露出している部分を覆う。本実施形態では、絶縁性樹脂を塗布して絶縁層17を形成する。このような工程を経て、図1に示すような積層型圧電素子10が製造される。
図1〜図3に示す積層型圧電素子10は、第1内部電極13及び第2内部電極14と平行に積層された抵抗層18を含む素子本体11を有し、図2及び図3に示すように、抵抗層18は、第1外部電極15と第2外部電極16の両方に電気的に接続されている。ここで、図6に示すように、抵抗層18(抵抗R2)は、圧電体層12(抵抗R1)より電気抵抗値が低いために、焦電効果に伴い発生した電荷は抵抗層18を介して移動し、圧電体層12に過剰な電圧が印加されることを防止できる。その結果、積層型圧電素子10は、焦電効果によって引き起こされる特性劣化を、抑制することができる。
また、図5に示すように、抵抗層18を含む素子本体11は、これを含まない(第1内部電極13、第2内部電極14及び圧電体層12のみを含む)素子本体の積層工程に対して、積層されるシートの材質等を一部変更するという軽微な変更を加えるだけで、容易に製造することが可能である。したがって、積層型圧電素子10は、焦電効果によって引き起こされる特性劣化を防止するという作用効果を、外装材を追加する従来技術に比べて、簡便な生産工程によって実現することができ、生産性に優れている。
また、抵抗層18は素子本体11に含まれており、第1内部電極13及び第2内部電極14に平行に配置されるため、抵抗層18によって形成される経路の電気抵抗値は、製造バラツキが少ない。したがって、積層型圧電素子10は、抵抗層18の電気抵抗値を精度良くコントロールすることが可能であり、電圧印加に伴う機械的変位のような基本特性を好適に確保しつつ、焦電効果による特性劣化を防止することが可能である。したがって、積層型圧電素子10は、初期的な機械的変位性能と耐久性とを、好適に両立することが可能である。
さらに、積層型圧電素子10では、たとえ抵抗層18内部において電気的性質の不均一が生じたとしても、それによって内部電極間が短絡するというような致命的な問題は発生しないため、安定した性能を有しており、製造が容易である。また、抵抗層18は、その内部における電気的特性の偏りを、比較的広く許容することができるため、構成材料の選択や配合比等の製造条件も、比較的自由に決定できる。また、さらに、積層型圧電素子10は、圧電体層12を薄くしても、抵抗層18が内部電極間を短絡させる危険性は生じないため、圧電体層12の薄型化に対して有利である。
抵抗層18は、素子本体11の内部であればどの位置に形成されても良いが、素子本体11の両端部に配置される蓋部19に形成されることが好ましい。蓋部19には、リークを防止する観点から内部電極13,14が存在しないため、抵抗層18を形成するためのスペースとして、蓋部19を利用することは、積層型圧電素子10の小型化に資する。また、抵抗層18を素子本体11の両側に配置することにより、焼成時に発生する応力を分散させ、焼成時に発生する積層型圧電素子10の変形を防止することができる。
積層型圧電素子10は、絶縁層17によりマイグレーションを防止し、特に良好な信頼性を有する。また、マイグレーションは、極性の異なる内部電極間の距離が小さいほど生じやすいが、絶縁層17により内部電極13,14の露出部分を被覆することによってマイグレーションを防止できるため、圧電体層12の薄型化にも資する。特に、内部電極13,14のうち、圧電活性部12aに面する部分は、特に内部電極間の距離が小さい部分であるため、当該部分が露出している部分を絶縁層17で覆うことにより、マイグレーションを効果的に防止できる。
その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
たとえば、素子本体の形状は直方体に限定されず、多角柱形状であっても、円柱形状であってもよい。また、第1及び第2外部電極は、対応する第1及び第2内部電極と電気的に接続されていれば、形成される場所は特に制限されず、素子本体の各面において、隣り合う面に形成されていてもよい。さらに、同一面上に極性が同じ外部電極が複数形成されていてもよいし、極性が異なる外部電極が複数形成されていてもよい。
ただし、図1に示す積層型圧電素子10のように、素子本体11の各側面11a〜11dに、単純に外部電極15,16及び絶縁層17を形成する態様は、素子本体11の内部の抵抗層18もシンプルな形状とすることができるので、生産性の向上に資する。
また、抵抗層は、第1内部電極13及び第2内部電極14に平行であって、第1外部電極15及び第2外部電極16の両方に電気的に接続されていれば良く、その限りにおいて様々な形状及び配置が可能である。例えば、抵抗層は、図7に示す積層型圧電素子30における抵抗層38のように、蓋部39に形成されるのではなく、素子本体31の中央部に、第1内部電極13と第2内部電極14とを接続するように形成されても良い。
10,30…積層型圧電素子
11,31…素子本体
11a…第1側面
11b…第2側面
11c…第3側面
11d…第4側面
12…圧電体層
12a…圧電活性部
13…第1内部電極
14…第2内部電極
15…第1外部電極
16…第2外部電極
17…絶縁層
18,38…抵抗層
19,39…蓋部
22…グリーンシート
23…第1内部電極グリーンシート
24…第2内部電極グリーンシート
28…抵抗層グリーンシート
R1,R2…抵抗
38…抵抗層
11,31…素子本体
11a…第1側面
11b…第2側面
11c…第3側面
11d…第4側面
12…圧電体層
12a…圧電活性部
13…第1内部電極
14…第2内部電極
15…第1外部電極
16…第2外部電極
17…絶縁層
18,38…抵抗層
19,39…蓋部
22…グリーンシート
23…第1内部電極グリーンシート
24…第2内部電極グリーンシート
28…抵抗層グリーンシート
R1,R2…抵抗
38…抵抗層
Claims (6)
- 圧電体層と、前記圧電体層を挟んで互いに略平行に積層された第1内部電極及び第2内部電極と、前記第1内部電極及び前記第2内部電極と略平行に積層されており前記圧電体層より電気抵抗値が低い抵抗層と、を有する素子本体と、
前記第1内部電極及び前記抵抗層に対して電気的に接続された第1外部電極と、
前記第2内部電極及び前記抵抗層に対して電気的に接続された第2外部電極と、を有する積層型圧電素子。 - 前記素子本体において前記第1内部電極および前記第2内部電極が露出している表面の少なくとも一部を覆う絶縁層を、さらに有することを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子。
- 前記抵抗層は前記圧電体層の間に挟まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層型圧電素子。
- 前記抵抗層は、前記素子本体の積層方向に関して略対称に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の積層型圧電素子。
- 前記抵抗層は、前記第1内部電極及び前記第2内部電極を、前記素子本体の積層方向に挟んで、両側に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の積層型圧電素子。
- 前記第1外部電極は、前記素子本体における第1の表面に形成されており、
前記第2外部電極は、前記素子本体において前記第1の表面とは反対方向を向く第2の表面に形成されており、
前記絶縁層は、前記素子本体において前記第1の表面と前記第2の表面とを接続する第3の表面に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の積層型圧電素子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012081104A JP2013211432A (ja) | 2012-03-30 | 2012-03-30 | 積層型圧電素子 |
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JP2012081104A Pending JP2013211432A (ja) | 2012-03-30 | 2012-03-30 | 積層型圧電素子 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021070868A1 (ja) * | 2019-10-11 | 2021-04-15 | Tdk株式会社 | 積層型圧電素子 |
US10985309B2 (en) | 2015-03-12 | 2021-04-20 | Murata Manufacturing Co., Ltd. | Multilayer ceramic electronic component and method for manufacturing same |
-
2012
- 2012-03-30 JP JP2012081104A patent/JP2013211432A/ja active Pending
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WO2021070868A1 (ja) * | 2019-10-11 | 2021-04-15 | Tdk株式会社 | 積層型圧電素子 |
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