太陽電池発電は、無尽蔵な太陽エネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電方式である。このため、太陽電池発電は、エネルギー問題を大幅に軽減する技術として、近年技術開発が活発になり、市場も大きく拡大している。
現在、太陽電池の基板には、単結晶シリコン基板、又は多結晶シリコン基板が多く採用される。単結晶シリコン基板などを採用する太陽電池は、5インチ〜6インチ角程度の大きさを有する太陽電池セルと呼ばれる複数の基板により形成される。太陽電池を形成する複数の太陽電池セルの間を集電用配線で接続して、それぞれの太陽電池セルで生成された電気エネルギーを集電する。太陽電池セルと集電用配線との間の接続は、半田による溶融液相接合が多く採用される。この集電用配線は、集電用インターコネクターと称され、半田被覆された銅平角線により形成される。一般的に、銅平角線は、丸線を圧延して平角線(金属テープ)とするか、所定の厚さまで板を圧延して、その後スリット加工することによって製造される。一般的な集電用インターコネクターに使用される半田被覆平角銅線に使用される平角銅線の断面形状は、厚さが0.1〜0.3mm、幅が1mm〜3mmの範囲にある。また太陽電池用モジュール内で使用されるインターコネクターに使用される半田被覆平角銅線の断面形状は、厚さが0.1〜0.3mm、幅が3mm〜10mm程度の範囲にある。また、半田の目付量は、厚さの平均で片側10μm〜40μmであるが、20μm以上の場合が多い。
図1は、集電用インターコネクターが実装される、一般的な結晶型の太陽電池の一部を概略的に示す図である。
図1に示すように、太陽電池は、太陽電池セル1a、1b、及び1cと、金属テープである集電用インターコネクター2a、2b、2c、及び2dとを有する。太陽電池セル1a、1b、及び1cと、集電用インターコネクター2a、2b、2c、及び2dとは、半田、又は導電接着剤により機械的、電気的に接合されることにより、それぞれ実装される。このように、金属の側面長手方向に他の材料と接合、実装する形態を、以下では線実装と呼ぶ。
集電用インターコネクター2a、及び2bは、太陽電池セル1aの表面、及び太陽電池セル1aのL方向3の方向に隣接して配置される太陽電池セル1bの裏面に線実装される。ここで、表面は、D方向4の正方向に向く面をいい、裏面は、D方向4の負方向に向く面をいう。集電用インターコネクター2c、及び2dは、太陽電池セル1bの表面、及び太陽電池セル1cの裏面に線実装される。このように集電用インターコネクター2a、2b、2c、及び2dにより接続されることにより、太陽電池セル1a、1b、及び1cは、電気的に直列接続される。集電用インターコネクター2a、及び2bは、W方向5の方向に適当な間隔を空けて配置される。同様に、集電用インターコネクター2c、及び2dは、W方向5の方向に適当な間隔を空けて配置される。
このような太陽電池において、導電材料の代表的な素材である銅やアルミニウムと半導体の代表的な材料であるシリコンとを接続した場合、常温で接合しない限りは、金属と半導体の熱膨張係数の差に応じた熱応力が発生する。導電材料とシリコンとの間に金属電極を介していたとしても、一般的に金属電極は、シリコンに比較して薄く、シリコンに対する剛性が小さいことから、導電材料との熱応力を考える場合、導電材料とシリコンとの熱膨張差が特に問題となる。
集電用インターコネクターを太陽電池セルに接合するために、集電用インターコネクター及び太陽電池セルを昇温して液相接合した後に室温に冷却する処理を実施する必要がある。この処理において、太陽電池セルの主たる構造体であるシリコンの熱膨張係数と、集電用インターコネクターを構成する主たる構造体である銅の熱膨張係数との差に起因して、熱応力が発生する。金属とシリコンの室温近傍における代表的な線膨脹係数は、銅が16.6×10−6(K−1)、銀が19×10−6(K−1)、アルミニウムが25×10−6(K−1)、シリコンが3×10−6(K−1)である。仮に銅とシリコンとを200℃で接合した場合、約0.26%の長さの差が生じ、実際は、銅とシリコンの間に熱応力、反りが発生する。このように、銅の熱膨張係数と、シリコンの熱膨張係数との比率は、約5倍と大きいため、発生する熱応力により、太陽電池セルは、変形し、破損する可能性がある。
太陽電池は、発電電力を電流として出力するエネルギーデバイスであることから、集電用インターコネクターの断面積、及び集電用インターコネクターと太陽電池セルとの間の接続面の面積は、集電用インターコネクターに流れる電流量を考慮して決定する必要がある。
一方、シリコン材料が逼迫する状況に対応し、かつ太陽電池セルのコストダウンを図るために、太陽電池セルに使用される基板の薄型化が進んでいる。例えば、厚さ180μmなど、非常に薄いシリコン基板が、太陽電池セルとして使用されるようになってきている。このため、熱応力による太陽電池セルの破損は、さらに大きな問題になっている。
この問題を解決するための方策としては、大きく分けて2つの方策が挙げられる。1つは構造による方策であり、多くの方策が提案されている。(例えば、特許文献1〜2参照。)。
特許文献1に記載される発明は、集電用インターコネクターの長さ方向に、波型部を形成することにより応力を解放する方策である。また、特許文献2に記載される発明は、太陽電池セルの電極の長さ方向に、電極が形成されない非接続部を任意の間隔で形成することにより、集電用インターコネクターを接続した後の冷却工程における熱応力を低減する方策である。
太陽電池セルと、集電用インターコネクターとの間の接続構造を変更することにより熱応力を緩和する技術は、大変有効である。しかしながら、特許文献1に記載される技術では、必要な集電用インターコネクターの長さが長くなるため、集電用インターコネクターの材料費、及び電気抵抗が大きくなる可能性がある。また、特許文献1及び2に記載される技術では、太陽電池セルと、集電用インターコネクターとの間の接合面積が減少するため、接続抵抗が増加し、かつ接合部分(ノッチ部分)の電気抵抗が増加する可能性がある。
したがって、このような技術とは別に、集電用インターコネクターの材質自体を更に低ヤング率化、低降伏応力化することによって、集電用インターコネクターの機械特性を改善することが求められており、このような改善がもう一つの方策である(例えば、非特許文献1参照。)。
なお、多結晶シリコン基板を用いた太陽電池以外の様々な種類の太陽電池においても、太陽電池の材料と、導電用導体とは材料が異なることから、同様の問題が生じる。
金属とシリコンの熱膨張係数から、軟質化とは、特に降伏応力を低下させることが重要であり、指標として、0.2%耐力が用いられる場合が多い。すなわち、0.2%耐力を下げることによって、金属側を降伏させ、熱応力や反りを低減させることが重要になる。金属を軟質化させるためには、焼鈍により転位密度を低下させる方法がとられる。
しかしながら、一般に使用される焼鈍による軟化では、0.2%耐力の低減に限界があり、太陽電池セル基板のさらなる薄膜化などに対応することは困難である。そこで、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献3〜6参照。)。
特許文献3では、質量百万分率で、ジルコニウム及びマグネシウムのうち少なくとも1種を3〜20ppm、酸素を5ppm以下とすることにすることにより、結晶粒の粗大を阻害する元素である硫黄を固着させることにより、平均結晶粒径を300μm以上とすることによって、集電用インターコネクターの変形抵抗を小さくする手法を取っている。
特許文献4では、集電用インターコネクターであるリード線の0.2%耐力を小さくするために結晶粒を20μm以上と大きくしすぎると変形に伴う亀裂発生が起こり易く、発生した亀裂の拡大と応力集中により、容易に疲労破壊が生じる問題があり、一方、6μm以下であると導体の軟質性が失われるとして、導体の結晶粒径としては、6〜20μmの範囲が好ましいとしている。
特許文献5に記載される発明は、導体中心部の結晶方位(めっき線軸方位)を(211)方位に30%以上の割合で配向させることによって、集電用インターコネクターの0.2%耐力を低下させて、太陽電池セルの反りを低減する方策である。
一方、特許文献3では、長手方向に<100>方位を揃えることにより、集電用インターコネクターの長手方向のヤング率と降伏応力を低下させ、対向して半田接続される際の熱応力を小さくすることが可能になり、半導体の反りを小さくするとともに接続界面への熱応力を低減し、半導体の破壊が抑制されるとしている。
近年の太陽電池の需要拡大に応じ、シリコン原料のひっ迫、低コスト化から結晶型太陽電池の薄肉化に対する要請は一層大きくなり、シリコンセルへの損傷を低減する集電用インターコネクターの軟質化に対する要求は高まっている。
太陽電池用の集電用インターコネクターは、直線状に並んだセルの幅の狭い電極上に実装する必要上、高い直線性が求められる。幅の狭い平角金属線の製造は、丸金属線を圧延機で押しつぶして平角金属線とする方法が一般的であるが、特に幅の狭い平角金属線を製造しようとする場合、圧延機のロールの平行度が少しでも悪いと線材が幅方向に曲がる問題がある。
一方、近年、金属からなるバンプを半導体ウエハ上に半田接続して、金属線、又は金属テープを接合するワイヤバンプが提案されている(例えば、特許文献7参照)。半田による接続を行う場合でも熱応力が発生する可能性があるため、上述の太陽電池の集電用インターコネクターと同様の問題が生じる可能性がある。
また、平角金属線を、半導体チップと外部金属電極とを接続するタブ線と呼ばれるワイヤボンディング用の線材として利用する用途がある。平角金属線の場合、平角金属線の幅広面を半導体チップ上の金属電極や外部電極に超音波を用いて接合する、ウエッジボンディングと呼ばれる手法が取られる。この場合、金属電極と平角金属線の接合力を増すために、超音波と金属電極への圧下力によって平角金属線が線材の幅方向と長手方向に容易に変形する必要があり、軟質な平角金属線が求められている。
一方、長手方向の軟質化の方策を目的としていないが、特許文献8では、複数本の金属材を束ねて構成されている金属箔の太陽電池素子接続用インナーリードが考案されている。特許文献8の作用効果は、複数本の金属材を束ねることで、従来の銅箔と同じ断面積を確保しつつ、太陽電池素子接続用インナーリードを加熱しながら太陽電池素子の半導体基板の表面に設けた表面電極に半田付けで固定するときの短手方向の可撓性を高めることができることである。金属線同士が短手方向にずれることにより、太陽電池素子接続用インナーリードが電極の形状に沿いやすくなり、溶着ポイントの溶着面積を増やすことができるため、太陽電池素子接続用インナーリードの剥離を有効に抑制することができるようになる。また、前記複数本の金属材を束ねて構成される前記金属箔はその各々の金属材が金属箔の幅方向に一列状に配列されるようにしたことにより、更に太陽電池素子接続用インナーリードの短手方向の可撓性が向上するため、太陽電池素子接続用インナーリードと電極の溶着面積を向上させ、密着強度を向上させることができるようになるとしている。
しかしながら、特許文献8は、集電用インターコネクターの長手方向の軟質化に関する技術思想はない。
また、近年太陽電池の普及のために、低コスト化が強く求められている。その中でインターコネクターのコストダウンは持続可能なエネルギー源の活用に資するものである。
現在最も主流になっている銅を芯材とし半田が被覆され、被覆された半田のリフローによって接続するタイプのインターコネクター場合、主要な材料である銅と錫の材料費を比較した場合、錫は銅に比して重量当たり約3倍の価格で推移している。したがって、半田の目付量はできるだけ小さい方がコスト的に望ましいが、半田のリフローで接合しようとする場合、片面に目付量で20μm以上の厚さの半田を被覆することが殆どである。銅芯材の標準的な厚さは0.2mmであるから、体積率で20%以上の半田を被覆する必要がある。これは、半田の目付量を減らすと太陽電池セル上の電極に半田が十分供給されず接合不良を引き起こすからである。図1に示したようにインターコネクターはセルの受光面と反対面に交互に接続されることから、インターコネクターの両側に半田を被覆する必要があり、インターコネクターの接合に使用されない接合面反対面の半田は接合に寄与しないため無駄になる。一般的な鉛錫半田の錫の成分は60〜70重量%、鉛フリーの半田は錫の組成が95重量%以上を占めるから、インターコネクターの半田量を低減することは、コスト的にも資源的にも重要であり、また鉛半田を使用するインターコネクターでは鉛の使用量の低減は環境にも好ましい。しかしながら、先に示した接合性の問題により、現行主流の半田リフロー型のインターコネクターでは、半田量を低減することが困難であった。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
以下に示す本発明の形態は、導電材料を主に長さ(長手)方向に軟質化して、接合される半導体、又はその上に設けられた金属電極との間に生じる熱応力の緩和、並びに接合時の変形を容易にすることによる接合性の向上、更には疲労破壊による断線の防止を実現するために適した形態である。
本発明に係る導電材料は線材であり、巨視的には平角線であり、線材長さ方向に対して垂直な面内において、扁平したテープ状の導体である。テープの長さ方向と平行な互いに対向する面のうち幅の広い面(すなわち、一般的にテープ面と呼ばれる面)は、巨視的には平行であることが好ましいが、微視的には凹凸があっても良い。他の対向する面(すなわち、一般的に言う側面)は平面である必要はなく、曲面であっても良い。本発明では、厚さとは、テープ面間の巨視的な長さ、すなわち最大値をいい、幅とは、側面間の最大値を言う。なお、幅方向は、短手方向とも呼ばれる。
本発明の大きな用途は、結晶型太陽電池を構成するシリコンセルと、かかるシリコンセルの上に設けられた金属電極を介して電力を集電・輸送するための集電用インターコネクターと呼ばれる導電材料を提供する。したがって、以下では、代表的な例として、本発明に係るテープ状導電材料が太陽電池用の集電用インターコネクターとして利用される場合を例として本発明の形態を説明するが、本発明は、長さ方向あるいは幅方向に軟質な半導体実装用導電材料、あるいは一般的な導電材料として利用可能である。
太陽電池用の集電用インターコネクターの場合、金属線とシリコンとの接合は、半田を用いるのが一般的である。一般的な半田の融点は180℃〜250℃の間であり、200℃から300℃で半田をリフローして接合する。この場合、金属とシリコンとの熱膨張差を考慮した場合、最大で0.3%程度歪がかかる。最近、使用され始めた導電性フィラーを含有したコンタクトフィルムと呼ばれる樹脂を介した接合方法でも、180℃程度の温度は求められる。
シリコンは、導電材料である金属に比較して塑性変形し難いため、導電材料である金属材料を塑性変形し易くすることによって、接合時の熱応力を緩和する形態とする。すなわち、金属線材の長手方向の降伏応力、換言すれば耐力を低下させることが、極めて有効である。
そこで本発明では、金属の降伏応力を表す時の代表的な指標である0.2%耐力を用いる。
一般的に、0.2%耐力が小さいことは、降伏応力が小さく、おおよそ1%以下の歪み領域で歪に対する応力が小さく、弾性率や弾性限界も小さいことを意味するため、0.2%耐力の小さな材料は変形し易い。したがって、0.2%耐力は、シリコン結晶型太陽電池用の導電材料だけではなく、広く接合時並びに使用時に材料に加わる弾性領域から塑性領域にかけての熱応力が問題となる用途に用いられる材料の、軟質性を表す指標となる。
<テープ状導電材料の構成について>
本発明は、導電材料に関するものであるから、使用される主たる導体は、導電性の高い材料である必要がある。金属で導電性が高い材料は、銀、銅、アルミニウム、金などが挙げられる。原料価格を考慮した場合、用いる導体としては、銅、又はアルミニウムが好ましい。純度は一般的に高い方が、軟質であり電気伝導度も高くなるため、純度は高い方が望ましいが、純度を高くすると材料コストも高くなる。一般的には、99.9%〜99.999%の範囲の純度が、工業的には一般的である。銅であれば、無酸素銅、タフピッチ銅を用いることが一般的である。
本発明のテープ状導電材料(以下、単に、導電材料ともいう。)は、具体的には、例えば図2a〜図2hに示すような断面形態を有している。すなわち、本発明のテープ状導電材料は、銅、もしくはアルミニウムを主体とする2本以上の単芯線(以下、金属単芯線ともいう。)6が互いに電気的に導通を保ちながら、長さ方向に平行かつ一平面内に整列して接合又は結束されることで一体化されている。また、単芯線の長さ方向に対して直角な方向の断面において、結晶粒の大きさが、単芯線の断面積1本の円相当径に対して、5%以上の円相当の面積平均径を有する形態をとる。なお、図2a〜図2hは代表的な例であって、以下に示す思想に合う形態であれば、例示した断面形態に限らない。本発明において断面、あるいは断面積とは、断らない限り、金属線の長さ方向に対して垂直な断面、あるいはその面積を言う。
本発明の導電材料は、テープ状導体であって、テープの厚さ方向に対して垂直な表面、すなわちテープ面で半導体上の電極と接続して使用するものであり、少なくともテープ面の一部は、電気的に導通するよう金属が露出している。また、本発明は、電気伝導度を確保しながら長さ方向に極力軟質化することが目的であるから、各単芯線6が絶縁体で被覆されていた場合、導体断面積が小さくなるため、目的に合致しない。そのため、それぞれの単芯線6は、導通した状態で結束されている。これによって、単芯線の一部が断線しても、断線した単芯線を流れていた電流は、他の線にバイパスすることが可能である。結束する線の数は、2本以上であれば良い。
本発明は、太陽電池やパワー系の半導体を接続する線材に利用されるテープ状導電材料に関するものであって、数Aという大電流を流すものであるため、極力、銅やアルミニウムを主体とする金属芯材の断面積は大きい方が望ましく、金属芯材は金属単芯線であることが好ましい。細い金属線を撚って一体化した金属線は、線と線の間に空間ができ、同じ電流容量とした時の外形が大きくなり、第一の目的である軟質化が達成されないため、好ましくない。長さ方向に塑性変形しやすくするためには、複数の金属単芯線6を一平面内に整列した構造であることが望ましい。
本発明は、金属単芯線をテープ材の幅方向に並べて断面アスペクト比の大きな材料を形成するものであるため、構成要素となる金属単芯線のアスペクト比は大きくなくてよく、構成の効率から、最大径と最小径のアスペクト比は例えば2以下であることが望ましい。最も一般的な単芯線は丸線であり、その断面の形態は円であって、アスペクト比は1である。
また、銅、もしくはアルミニウムを主体とする2本以上の単芯線は、導体断面内の空間をなるべく密にして電流容量を確保する必要から、一体化されている必要がある。また、太陽電池用セル等の半導体に対して実装される前段階では、ハンドリングの関係からも一体化されている必要がある。
一体化の手法としては、図2a〜図2cに示したように、単芯線同士を一列に並べた状態で結束接合材料7により被覆して結束する方法と、図2eのように単芯線同士を溶接したり、図2dのように異種の結束接合材料7を使用して接合したりする方法が挙げられる。また、図2f〜図2hのように、これらの2つの方法を併用することができる。図2fのような導体は、金属単芯線を1列平行に並べて側面で溶接しテープ状導体とした後、これを圧延でテープ面を平らにし、更に例えば溶融めっきで金属被覆することによって得ることができる。
なお、各単芯線6を一体化するための結束接合材料7としては、金属材料である必要はなく、導電性接着材であっても良い。
図3は、一般的に使用されている太陽電池用集電用インターコネクターの断面形態であり、平角単芯銅線10が半田11によって被覆されている。本発明の実施の形態の代表例を図2a、図2b、図2fに示す。半田11の被覆量は、用途に応じて自由に選択できる。また、銅やアルミニウムで構成される金属単芯線6は、丸線である必要はなく、図2fのような形態をとることができる。
<結晶粒について>
図2、並びに図3で示した六角格子8は、本発明の銅、またはアルミニウムの単芯線6の断面積における結晶粒界を、模式的に示したものである。図2、並びに図3で示した1つの六角格子8の大きさが、結晶粒の大きさに対応することとなる。ただし、実際の結晶粒界で囲まれた結晶粒は、形、大きさが互いに同じではない。この結晶粒の大きさが、太陽電池用集電用インターコネクターの0.2%耐力に影響を与える。
特に、単芯線6の断面積に対して結晶粒の大きさが大きいほど0.2%耐力が小さくなり、図2、図3で示したように、単芯線1本当たりの断面積が小さく、この断面積に対する結晶粒の相対的な大きさが大きくなる本発明の形態が、軟質な導体を実現するのに有効である。具体的な指標については、後述する。本発明では、金属単芯線6は、図2a〜図2d、図2fに示したように結束接合材料7で結束されるか、図2eで示したように接触点で溶接されることで結束された平角金属線とする。結束接合材料7が半田のような金属材料である場合は、この領域も多結晶体であるが、本発明は、半田を始めとして周囲の金属は軟質であるか、断面積に占める割合が小さいため、機械的な特性に与える影響は小さいため省略している。
図3に示したような1本の単芯線で構成される導電材料と比べて、本発明の最大の効果である線材の長手方向の軟質化を達成するためには、各金属単芯線が長さ方向に平行かつ一平面内に整列して接合又は結束され一体化されているだけでは、十分ではない。金属単芯線が軟質化されていることが要件であり、更にそれぞれの金属単芯線が互いに強く拘束されていないことが必要になる。
上記のような金属単芯線の軟質化や、金属単芯線が互いに強く拘束されていない状態を実現するために、本発明では、金属単芯線の長さ方向に対して直角な方向の断面において、金属単芯線を構成する結晶粒の大きさが、金属単芯線1本あたりの断面積の円相当径に対して、5%以上の円相当の面積平均径を有する形態とする。
金属の降伏応力を小さくする方法として、結晶粒を粗大化する方法が知られている。金属の結晶粒の粒径をdとした場合、降伏応力はdの平方根に逆比例することが経験的に知られており、ホールペッチの法則と呼ばれている。これは、金属結晶の変形を担うすべり面が結晶粒界で不連続となり、転位の運動を阻害するためと説明される。ホールペッチの法則によれば、金属線材の断面内の結晶粒径が断面積より十分大きい時、結晶粒径が同じであれば、結晶粒径の大きさそのもので降伏応力が決まることとなる。
例えば、一般的な太陽電池用インターコネクターの形態である図3にその断面を示すような銅平角線と半田で構成された材料と、図3と同じ物質、同じ総断面積である銅と半田とで構成された図2aの断面を有する導体とを比較する。この際、銅単芯線6に対して、その結晶粒界8で囲まれる結晶粒径が十分細かい時、同じ平均結晶粒径を有する図2aの断面を有する導体の長さ方向の降伏応力と、図3の断面を有する導体の長さ方向の降伏応力とは同じになり、本発明の効果は得られない。厳密には、結束接合材料7である被覆した半田の組織形態に差があれば半田の組織形態の差が影響するが、銅に対して半田の強度は小さく、銅を主体とする導体であれば、半田に起因する影響を無視できる。
しかし、銅単芯線の断面積に対して、結晶粒径がある一定以上になった場合、銅単芯線の降伏応力は、ホールペッチの法則から外れ、更に低くなり、結晶粒の大きさが、単芯線1本あたりの断面積の円相当径に対して、5%以上の円相当の面積平均径を有する形態をとった時、その効果が得られる事が判明した。すなわち、単芯線6の1本あたりの断面積の円相当径に対して、5%以上の円相当の面積平均径を有する形態をとった時、銅の結晶粒径が同じであったとしても、図2aの断面を有する導体の降伏応力は、図3の断面を有する導体の降伏応力より小さい値が得られる。特に、結晶粒の平均粒径の銅単芯線1本の直径に対する比が20%以上である場合、更に0.2%耐力が低下し、50%以上では更に低下する。
実際の材料の結晶粒径は、図2、図3の模式図に示されているように材料内で同じではなく、分布を有しており、結晶粒径の大きさを表す時は平均粒径を用いる。
本発明で定量的に結晶粒の大きさを示す時、結晶粒は、回転角で15°以上の方位差を有する結晶粒界で囲まれる領域とする一般的な基準を用いる。双晶境界は、結晶粒界に含まれないものとする。また、結晶粒の大きさは、面積で重みづけされた円相当径の平均、すなわち面積平均径(MA)であって、次の式で定義されるものとする。
ここで、Nは平均粒径を出すために必要な十分な面積を有する断面積内の結晶粒の総数であり、Aiは結晶粒iの面積であり、νiは、結晶粒iの円相当径である。
本発明では、金属単芯線の結晶粒径は、単芯線の断面積に対して大きい方が望ましく、断面に対して数十個以下、望ましくは数個以下になることが理想的である。この場合、一部の結晶粒が粗大化し、粗大粒とそれ以外の粒の径が大きく異なる場合があり、平均粒径の表し方として、面積で重みづけされた円相当径の平均による定義が適当である。また、本発明では、単芯線の長さ方向に対して垂直な断面を用いて測定した値とするが、断面内の結晶粒数が30個以下であった場合には、複数の断面について測定を実施し、少なくとも測定された結晶粒の総数が30個以上になるようにした上で、それぞれの断面で得られた面積相当径を単純平均して得たものとする。
本発明の金属単芯線の断面形状のアスペクト比は、最大でも2(すなわち、2以下)と小さな値となることが好ましいため、金属単芯線の断面形状が円でなくても、金属単芯線の断面の円相当径に対する望ましい結晶粒径の比は、金属単芯線の断面形状に影響されない。
ここで、金属単芯線の断面積は、金属単芯線が丸線である場合は断面形状が円であるため、金属単芯線の直径から算出できる。一方、金属単芯線の断面積を容易に算出できない場合には、断面の光学顕微鏡像、SEM像から画像処理によって断面積を得る一般的な手法を用いることができる。
結晶粒径の測定に最も一般的な手法は電子線後方散乱回折(Electron BackScattered Diffraction:EBSD)法であるが、特に定めるものではない。EBSD法で得られる情報は、通常、数千〜数十万の十分な数の位置と方位情報を持つピクセル(測定点)で構成されており、ピクセル間の回転角が指定した角度以上の値の場合に、このピクセル間の境界を結晶粒界とする。角度は任意に指定できるが、本発明では、15°以上を粒界と定義する。そして、結晶粒界により閉じられた領域が結晶粒と定義され、結晶粒を構成しているピクセルの個数から面積が求まり、さらにこの面積を円換算した場合の直径を粒径とする。
結晶粒径を大きくするためには、材料を加熱して再結晶させる方法が一般的にとられる。再結晶の主な駆動力は歪エネルギーであり、歪を蓄積するほど結晶粒が成長し易くなる。したがって、同じ母材から、例えば図3と図2aの材料のように、金属芯材が同じ総断面積、すなわち同じ電気伝導度を有する導体を製造した時、金属単芯線を結束する本発明構造の方が断面積が小さくなるため、加工歪を大きく蓄積することとなり、結晶粒が大きくなり易い。また、再結晶の他の駆動力の1つに表面エネルギーがある。芯材が同じ断面積であった場合、表面積、あるいは界面の面積が大きくなる本発明構造の方が、結晶粒成長の点で極めて有利である。
したがって、同じ断面積の条材より伸線、あるいは圧延加工で同じ総断面積の材料を作製して、半田めっき工程あるいは別の熱処理工程で同じ温度、時間の熱履歴をかけた時は、本発明の導体の方が結晶粒の大きさが大きくなる上、1本の金属単芯線断面積に対する結晶粒径の相対的な大きさは圧倒的に有利となり、線材の軟質化に対する効果は極めて顕著になる。本発明が要件とする単芯線の断面積1本の円相当径に対して、5%以上の円相当の面積平均径を有する形態を得るために、より低温で、短時間の熱処理で軟質化されるため、コスト的に有利である。
以上説明してきたように、複数の金属単芯線を結束、あるいは接合して平角線を構成し、更に構成する金属単芯線内の結晶粒が、その単芯線の断面積1本の円相当径に対して、5%以上の円相当の面積平均径を有する形態をとる時、同じ平均結晶粒径を有する1本の金属平角線で構成するより、長手方向の降伏応力を低下させることが可能になる。更に、このような組織を得るのに、1本の単芯線断面積の小さい本発明の形態の方が、技術的にも、コスト的にも有利である。
この効果は、太陽電池に使用されるインターコネクターに使用される平角線の断面サイズである、厚さ0.1mm〜0.3mmであり、幅が1mm〜10mmの範囲にある大きさの平角銅線を代替するのに顕著であり、幅方向を厚さ方向の大きさと同等の大きさに分割することで、1本の平角銅線では通常の工業プロセスでは得ることが困難な50MPa以下の0.2%耐力が得られる。この時の耐力値は、10〜40μmの半田を溶融めっきしたテープ状導体の長手方向に0.2%の組成歪みを与えた時の荷重を、該単芯線の総断面積で除して得た値である。
1本の単芯線断面積の小さい本発明の形態の方が、技術的にも、コスト的にも大きな結晶粒径を得るのに有利であるが、本発明の最大の効果である長手方向に軟質な導体を得るためには、1本1本の単芯線同士が緩く結束、あるいは接合され、ある程度独立して変形できる必要がある。例えば、同質の材料で強固に接合されていた場合は、それぞれの結晶粒同士が、互いに強く拘束され、導体の微視的な変形挙動は1本の平角線と同じようにふるまうことになるためである。
したがって、本発明では、溶接等の方法で単芯線同士が接合する図2d〜図2fの形態である場合、隣り合う単芯線同士は部分的に、望ましくは単芯線の周面の面積に対して、最大で25%以下と、接合面積は小さい方が良い。
また、長さ方向には、連続的に接合されているよりは、単芯線同士がばらけない範囲で、部分的に接合されている形態が有利である。また、部分的な接合の方が、図2fの形態をとった場合、後に述べるテープ面の表裏面間の半田供給の面で望ましい。
図2a〜図2dと図2fの形態の場合、それぞれの単芯線を巨視的に結束している結束用金属は、単芯線よりも軟質な方が望ましい。その差は大きい方が、単芯線の軟質な特性が導体全体の特性に反映するので有利である。
個々の材料の柔らかさは、引張試験等による応力−歪曲線やビッカース硬度等の硬度で評価できる。
仮に金属単芯線より結束接合材料の方が強度、硬度が大きい場合であっても、図2c、図2dのように全体の導体に占める割合が小さい場合は、導体全体の降伏応力に対する影響は小さい。強度、硬度差にもよるが、金属単芯線より結束接合材料の方が強度、硬度が大きい場合は、金属単芯線の総断面積に対する結束接合材料の断面積は10%以下であることが望ましい。この時、金属単芯線の総断面積に対する割合は、その値が小さいほどテープ状導電材料全体としては軟質となり望ましいが、結束接合材料のその他の機能、例えば、半導体との接合性、耐食性、光学特性等を勘案して決定される。
金属単芯線が弱く結束されている条件の下では、結晶粒の平均粒径が1本の単芯線の断面積の50%以上であるような竹の節状の組織である時、導体長さ方向の巨視的な変形は、銅やアルミニウムも最もすべりやすいすべり方位を向いている結晶粒が変形することになる。この時、巨視的な耐力は面心立方金属単結晶のシュミット因子が最も大きな方位の降伏応力に近づき、非常に柔らかくふるまうことが可能になり、本発明の材料として極めて好ましい形態である。
<具体的な材料や物性値について>
以下、一般的な太陽電池用のインターコネクターとして使用される場合の、材料や物性値について、具体的に説明する。
一般的な太陽電池用のインターコネクターとして使用される銅平角線の断面形状が0.2×1.5mmの導体を考える。この導体と同じ断面積、材料を有する本発明の導電材料を考える。同じ総断面積を得るためには、直径252μmの材料6本を束ねれば良い。厚さはやや厚くなるが、太陽電池用のインターコネクターとしては支障のない範囲である。
本発明の規定を満たすためには、この導体の銅芯材の平均粒径は、12.85μm以上が必要である。この大きさ以上の粒径を得ようとした場合、例えば無酸素銅を用いることとすると、引抜加工による冷間加工率が減面率で98%以上の加工と、200℃で1時間程度の再結晶熱処理とが必要である。これらの条件は、一般的な銅線の加工、熱処理条件ではないが、工業的に十分可能な範囲である。
伸線加工時の各回減面率にもよるが、銅線がタフピッチ銅線、半田が鉛錫半田であり、鉛錫半田の目付量が片側約20μmとした場合、一般的な銅平角線のインターコネクターは、0.2%耐力が90〜120MPa程度であるのに対し、本発明の材料では、70MPa以下と軟質化できる。ここでの耐力値は、半田を含めた全体の断面積ではなく、銅芯材部分の断面積で得られる値である。銅を無酸素銅とした場合、あるいは芯材をアルミニウムとした場合は、より小さな降伏応力を得ることができる。ただし、アルミニウムは銅に比較して電気比抵抗値は大きいため、同じ電流容量を得るためには、その分芯材の断面積を増す必要がある。
半田をめっきする前に更に高い温度で熱処理を加えることによって、本発明の導電材料は更に軟質化することができる。上記のような典型的な断面形態を有し、銅が無酸素銅の場合、構成する銅単芯線内の結晶粒が、その単芯線の断面積1本の円相当径に対して、20%以上の円相当の面積平均径を有する形態をとる時、0.2%耐力値は、一般的な太陽電池終電用インターコネクターの0.2%耐力の下限に近い50MPa程度まで低減できる。更に、結晶粒の平均粒径が1本の単芯線の断面積の50%以上であるような竹の節状の組織である時、導体長さ方向の巨視的な変形は、銅の最もすべりやすいすべり方位を向いているシュミット因子の最も大きな方位を向いた結晶粒が変形することになり、20MPaまで0.2%耐力値を低減することも可能である。
金属単芯線を著しく高純度化することにより、0.2%耐力は20MPa未満に低減できるが、実装時のテンションで塑性変形してハンドリングが難しくなるため、0.2%耐力は20MPa以上が好ましい。
<太陽電池用集電用インターコネクターの具体的な製造方法について>
一般的な太陽電池用集電用インターコネクターの場合、平角金属線に被覆した半田を溶融させて接合する。図2a〜cの結束接合材料7が半田材料である場合、半導体との接合用材料を兼ねることもできる。半田は、Pb−Sn系の鉛半田合金やSn−Ag系、あるいはSu−Ag−Cu系の鉛フリー半田合金のいずれでもよく、本発明で特に限定されるものではない。通常、鉛半田中の錫の組成は60質量%程度であり、鉛フリー系の半田材料における銀の組成は1〜4質量%、銅の組成は0〜1質量%程度で、残部は微量の添加元素と錫である。これらの組成の半田材料は、銅よりも柔らかいため、本発明の結束接合材料7としては好ましい材料である。
太陽電池用の集電用インターコネクターを使用した実装は、図1に示したような形態を取る場合が多く、両側に半田を被覆させておく場合が多い。また、外部からの半田供給はない場合が多く、相手の銀電極はペースト材を焼成したものであるから、凹凸が多い。したがって、片側に10〜40μm、一般的には片側20μm以上の厚い半田を盛る場合が多い。半田の大きな割合を占める錫や銀は銅よりも高価であることから、特に鉛フリー系半田を使用した場合、価格に占める割合が大きくなる。図2a〜図2cに示したように、金属単芯線6は、金属単芯線を半田によって幅方向に一列に結束した形態をとることによって、銅やアルミニウムで構成される金属単芯線の間を通して接合面と反対側に半田が供給されるため、例えば図2bや図2cのように半田の目付量を減らせる利点がある。
また、結束接合材料7が半田であり、これを溶融させて接合する場合は、本発明の集電用インターコネクターは、導体長さ方向に軟質である上、テープ面が幅方向にも自由に変形できるため、特に凹凸の大きな電極状に接合させる上で都合が良い。
融点の低い材料で金属単芯線を結束する方法の1つとして、金属単芯線6を溶融めっき槽に連続的に潜らせてめっきする方法が挙げられる。金属単芯線6への被覆の目付量や幅方向の金属単芯線同士の間隔は、溶融めっき液面から金属単芯線6が出る出口に適度な形状の孔が空いた絞りダイスを配置した上で当該絞りダイスを通過させたり、ワイピングノズルと呼ばれるノズルから不活性ガス等をめっき直後に噴射して、余分な溶融金属を吹き飛ばす手段を用いたりすることで、調整することができる。
本発明の導電材料は、テープ状の導体を同芯円、あるいはアスペクト比の小さな断面を有する材料を結束して製造することが可能であるため、従来の平角金属線の製造プロセスのように、平たく潰す圧延工程が不要である。したがって、本発明の導電材料の製造にあたっては圧延機が不要であり、特に太陽電池用の集電用インターコネクターで必要とされる幅方向に曲がっていない、直線性に優れるテープ状導体を製造するのに有利である。
近年、集電用インターコネクターと太陽電池セルを、導電粒子を分散させたコンタクトフィルムと呼ばれるポリマーシートを介して接合する技術が開発されているが、この場合必ずしも導体が半田金属で被覆されている必要はない。本発明に係る導電材料は、図2eのように被覆されていない導体であっても良い。ただし、この場合は、幅方向に結束するために金属単芯線同士を接合する必要がある。図2eのような溶接・拡散接合部9が長さ方向に連続的に形成されていても良いが、長さ方向は適当な間隔を空けて部分的にスポット状に接合されていても良い。このような間隔を空けて部分的に接合された(すなわち、非連続的に接合された)状態を、以下では簡単に点接合と称することとする。
図2g及び図2hは、点接合で結束された本発明のインターコネクターの一例を示すものであり、点接合部の断面を示した模式図である。本形態は、インターコネクターの軟質化に加えて、以下詳細に説明する半田目付量の低減効果を有し、本発明のインターコネクターとしてより好ましい形態である。
図2gは、単芯線とは異なる結束接合材料7により単芯線を幅方向に互いに点接合した例であり、図2hは、単芯線を互いに直接接合した例である。
点接合の形成方法としては、加熱による拡散や部分溶融が挙げられる。例えば、複数の銅、又はアルミニウムの単芯線を所定の面内、長さ方向にテープを形成するように密に並べた上で、線材を送りながらテープ材の幅方向から通電して接触部を加熱溶融する方法や、長さ方向に適度な間隔でアークを飛ばしてスポット溶接する方法などが挙げられる。この場合、長手方向と直角な(長手方向に対して直交する)テープ材断面における単芯線同士の結束部は、図2eのようになる。また、単芯線よりも融点の低い異種の金属からなる結束接合材料を用いて部分的にろう付けしても良いし、導電性接着剤を使用して単芯線の長手方向に間欠的に線材同士を結束させても良い。単芯線の長手方向に単芯線を束ねた状態にして、間欠的にめっきを施しても良い。
半田をリフローして接合する太陽電池用インターコネクターでは、単芯線の周囲に接合用半田を被覆する。本発明の太陽電池用インターコネクターにおいて、この被覆材料12も太陽電池モジュールとして使用するときには、結束接合材料でもある。しかし、インターコネクターを太陽電池に接続、配線する際、被覆材料12は溶融する。この時、結束接合材料7が被覆材料12より融点が高く、配線する温度で溶融しなければ、各単芯線が配線中にばらける心配がない。また、被覆材料12を被覆する溶融めっき工程時にも単芯線が予め結束され、被覆時に溶融せず固相であれば、ハンドリングが容易である。したがって、点接合に用いる結束接合材料7は、被覆材料12より融点が高いか、単芯線側面でのスポット溶接のように単芯線と同種の金属を介して接合されることが望ましい。1枚の太陽電池セル上でのインターコネクターの接合長さは、セルサイズと同等で、一般的に5インチから6インチであることから、単芯線長手方向の点接合の距離が60mm以下であることが望ましい。60mm以下であれば5インチセルの電極1本当たり、2か所の接合箇所が必ず存在することになり、リフロー接合時の単芯線がばらけることを防止するのに有効だからである。
単芯線長手方向に間欠的に点接合した方が望ましい理由は、半田目付量の低減が可能な点にある。前述したように、現行の太陽電池用インターコネクターの接続方法では、接合する太陽電池セルと反対側の半田は、インターコネクターの断面形態が幅広のテープ状であるため、リフロー時に接合面に回り込むことができず、無駄になる。一方、本発明のインターコネクターでは、リフロー時に被覆材料12は溶融するため、単芯線同士に隙間が生じる。太陽電池セル上の電極に半田が濡れ広がる時のインターコネクターからセル電極への半田の流動によるスポイト効果により、単芯線同士の隙間よりセル反対側の半田が供給されるため、半田は、一般的なインターコネクターの半田目付量よりも少なくて済む。この効果は、単芯線長手方向の点接合の距離が5mm以上で効果が大きい。
また、単芯線の側面の隙間を介して半田が接合面反対側から接合面に回る効果により、受光面では単芯線の形状を反映した凹凸が生じ、太陽電池モジュールを組んだ時、入射してインターコネクターに入った光が凹凸形状により拡散反射され、拡散反射した光がガラスや樹脂の界面で再反射して、セル受光面に入る確率が高まり、効率が増すという効果が生じる。
断面が正方形の金属単芯線同士を接合する形態の場合、側面全面で接合する形態は、軟質化するという本発明の目的を達せられないので、本発明の形態に含まれない。長さ方向に部分的に接合するなどして、単芯線の隣り合う側面同士の一部で接合する必要がある。
また、本発明の導体が被覆しない銅線である場合は、ベンゾトリアノール等の防錆材を表面に塗布しておくことが望ましい。
コンタクトフィルムを使用して太陽電池セルに接合する集電用インターコネクターや半導体接続用のタブ線の場合、結束接合材料7は、融点の低い半田のような材料である必要はない。かかる場合、結束接合材料7として、コンタクトフィルムと電気的な接触が取り易い、金、銀等の貴金属を被覆しても良く、耐食性のあるニッケルや錫、貴金属等の金属を被覆してもよい。
特にコンタクトフィルムを使用して太陽電池セルに接合する集電用インターコネクターでは、銀やアルミニウムの光沢被覆を行うことによって、集電用インターコネクターで反射した光がガラス面に再反射して、セルに入光する効果が得られ、太陽電池の変換効率を向上させる効果を持たせられる。特に図2cのような形態のものは、表面の凹凸によって、太陽光を乱反射させる効果があり、乱反射した光は表面のガラス層の界面で再反射して、発電セルに入光して発電効率を向上させることができる。
またこのような形態は、凹凸があることにより同じ接合力、超音波を与えた時に接合圧力が大きくなり、また超音波も集中するため、変形し易くボンディング用のタブ線としても優れている。
金属の被覆方法としては、湿式めっき、溶融めっきの他に、焼きばめ等でクラッド材を母材とし、これを伸線するプロセスが挙げられる。
このような複層材を前述した加熱接合により結束して本発明の導体を形成させても良いし、溶融めっきの代わりに湿式めっきによる金属被覆で金属単芯線6同士を結束しても良い。また、これらを併用してもかまわない。
例えば、銅単芯線を軟質のアルミニウムで結束した材料は、安価で電気伝導性が高く、表面反射性の良い集電用インターコネクター、またボンディング用のタブ線としても優れている。アルミニウムの場合、溶融めっきを施すことが一般的である。アルミニウムは反応温度が高いため、銅との界面に反応相である硬い金属間化合物層を形成する場合がある。金属間化合物層の成長を抑制するために、あらかじめ銅の上に化学めっき等で薄いニッケル等の金属を被覆してもよい。このように、全体の機械的な性質に大きな影響を与えない限りにおいては、どのような材料が使用されていても良い。このように3種類以上の材料で本発明の導電材料が構成されていた場合は、導電材料全体の断面の中で、金属単芯線より硬質な材料の断面積に占める割合は、10%以下であることが望ましい。
また、結束接合材料7は、金属材料である必要はなく、導電性を有していれば良く、導電性樹脂であっても良い。導電性樹脂は一般的に金属単芯線となる銅やアルミニウムに比較して柔らかいので、本発明における結束接合材料として適している。
<まとめ>
このように、本発明に係るテープ状導電材料は、線材の長手方向に対して低降伏応力で変形し易く、低コストで直線性の優れた半導体接続用導体である。本発明に係るテープ状導電材料は、導体を軟質化して、接合される半導体又はその上に設けられた金属電極との間に生じる熱応力の緩和、並びに接合時の変形を容易にすることにより、接合性が向上すると共に疲労破壊による断線が起こりにくくなる。特に、対向する電極とのなじみが良く、また半田の使用量が少なくて済む。また、本発明に係るテープ状導電材料は、太陽電池の発電効率を高める集電用インターコネクターや半導体接続用のタブ線に使用されるテープ状の金属導電材料として利用することが可能である。
更に、本発明の効果として、特に太陽電池用集電用インターコネクターは、接合時の熱応力以外にも外部環境下に設置されることによる繰り返しの熱応力にさらされる。図2のように、接合によって金属単芯線を多芯化することによって、1本の単芯線に亀裂が形成し、亀裂の入った単芯線が疲労により破壊に至っても、そこで亀裂の進展が防止できるため、テープ材が断線することを防止することができ、疲労破壊に強い長期信頼性の高い太陽電池用集電用インターコネクターを形成することができる。
以下では、実施例を示しながら、本発明の実施形態に係るテープ状導電材料について、具体的に説明する。なお、以下で示す実施例は、本発明の実施形態に係るテープ状導電材料のあくまでも一例であって、本発明の実施形態に係るテープ状導電材料が下記の例に限定されるわけではない。
(実施例1)
純度99.99%の純アルミニウム焼鈍丸棒材から2種類のテープ状導体(試料1及び試料2)を製造して、機械的特性を比較した。試料1は、アルミニウム単芯線を銀めっきで結束した本発明の形態に属するテープ状導電材料であり、試料2は、比較のため作製したアルミニウム平角線の銀めっき導体である。
試料1のテープ状導電材料は、以下のようにして製造した。
すなわち、Φ25mmの焼鈍丸棒材をΦ2mmまでスエージで減面した後、伸線ダイスを使用し引抜加工でΦ200μmまで伸線した。その後、真空中で500℃、1時間の熱処理を行ない、得られた線材の表面に約0.1μmの亜鉛置換めっきを施した。次いで、表面処理した線材3本を並列に並べ、幅0.6mmのガイドローラーを通すことで線材同士を接触させた状態で送線しながら、電気めっきで厚さ2μmの銀を覆うことで一体化した。このテープ材のアルミニウムの断面は、0.0942mm2であった。試料1は、本発明の形態である。また、アルミニウム芯材の総断面積に対する銀の断面積は、4.04%であった。
試料2のテープ状導電材料は、以下のようにして製造した。
すなわち、Φ54mmの焼鈍丸棒材をΦ2mmまでスエージで減面した後、伸線ダイスを使用し引抜加工でΦ0.4mmまで伸線した後、圧延加工により厚さ0.24mmまで圧延して、幅0.6mm、厚さ0.18mmの断面形態とした。その後、真空中で500℃、1時間の熱処理を行ない、得られた線材の表面を送線しながら約0.1μmの亜鉛置換めっきを施し、その上に電気めっきで厚さ2μmの銀めっきを施した。このテープ状導体の両端は丸みを帯びており、アルミニウムの断面は、0.0942mm2と試料1と同じであった。また、焼鈍丸棒からの冷間加工率は試料2の方がやや大きかった。試料2は、比較材である。
これらの材料の断面を研磨し、EBSD法によって、面積で重みづけされた円相当径の平均値、すなわち面積平均径を評価した。結晶粒は、双晶境界を除く回転角で15°以上の方位差を有する結晶粒界で囲まれる領域と定義した。その結果、試料1及び試料2の面積平均径はほぼ同じであって、約102μmであった。これは、アルミニウム単芯線全体の断面積から算出される円相当径の29.4%である。試料1の場合、アルミニウム芯材は3本の単芯線で構成されることから、単芯線1本の直径である200μmに対する結晶粒の面積平均径の大きさは、51.0%である。
次に、これらの材料について引張試験を行って、0.2%耐力を評価した。引張試験は、JIS Z2201に準じて行い、標点間距離100mm、引張速さ10mm/min.の条件で実施した。0.2%耐力は、オフセット法を用い、アルミニウム芯材の断面積で割ることによって算出した。
試料1と試料2の荷重−伸び線図を比較すると、同じ伸び値での応力は、常に試料1が下回った。破断伸びは、両者ともほぼ同じで30%程度であった。一方、0.2%耐力は、試料1が20.1MPaであったのに対し、試料2は50.4MPaであった。
結晶粒の大きさが同水準であるため、試料1が試料2より軟質である理由は、試料1のアルミニウム単芯線1本当たりの断面積が試料2に比較して1/3であり、3本の単芯線同士が弱く結合されている結果、それぞれがある程度自由に変形することができた効果であるといえる。すなわち、試料1の結晶粒が相対的に大きくなって軟質化した効果である。
(実施例2)
純度99.9%のタフピッチ銅線(C1100)に半田がめっきされた太陽電池用集電用インターコネクターを製造し、0.2%耐力を比較すると共に、実際のシリコン結晶型太陽電池セルを接合し、反り量を比較した。
試料3は、銅単芯線を半田で結束した本発明の形態に属するテープ状導電材料であり、試料4は、比較のため製造した銅平角線の半田めっき導体である。
試料3のテープ状導電材料は、以下のようにして製造した。
すなわち、Φ8mmの連続鋳造材をΦ2mmまでスエージで減面した後、伸線ダイスを使用し、引抜加工でΦ250μmまで伸線した。その後、得られた単芯線を5本同時に、N2−5体積%H2気流中で600℃に加熱した炉長1mの管状炉に2m/min.で通線した直後、大気に触れさせることなく、230℃に加熱溶融したSn−1.0質量%Ag−0.5質量%Cuめっき槽に浸出し、めっき槽液面に配置した1.4×0.27mmのアルミナ製絞りダイスを通過させることによって製造した。このように、試料3は、直径250μmのタフピッチ銅単芯線5本が、半田を介して長さ方向に平行かつ一平面内に整列して接合され一体化した、テープ状の導電材料である。銅の総断面積は、0.245mm2である。半田の目付量は、1m当たり、0.39gであった。試料3は、巨視的には、図2aに示した形態をしており、本発明の形態である。
試料4の半田めっき導体は、以下のようにして製造した。
すなわち、Φ8mmの連続鋳造材をΦ2mmまでスエージで減面した後、伸線ダイスを使用して引抜加工でΦ1.2mmまで伸線し、その後圧延加工して厚さ0.2に扁平させ、断面形状を0.2×1.30mmに成型してテープ材とした。続いて、このテープ材をN2−5体積%H2気流中で600℃に加熱した炉長1mの管状炉に2m/min.で通線した直後、大気に触れさせることなく、230℃に加熱溶融したSn−1質量%Ag−0.5質量%Cuめっき槽に浸出・通過させた。銅の総断面積は、試料3とほほ同じく0.246mm2であり、また半田目付量も0.39gと同じになるように調整した。試料4の半田目付量の平均値は片側20μmであり、巨視的な形態は、図3に示したように、中央部が最も厚く、片側約40μmであった。試料4は比較材である。
これらの材料の断面を研磨し、EBSD法を使用して面積で重みづけされた円相当径の平均値、すなわち面積平均径を評価した。結晶粒は、双晶境界を除く回転角で15°以上の方位差を有する結晶粒界で囲まれる領域と定義した。その結果、試料3、及び試料4の面積平均径は、それぞれ12.6μmと9.1μmであった。同じ母材から出発したにもかかわらず、粒径が異なるのは、加工率が試料3の方が大きく、再結晶時の粒成長の駆動力が大きかったことと、表面(実際は半田との界面)エネルギーの寄与である。すなわち、同じ総断面積の導体を得る場合、本発明の方が大きな結晶粒を得やすいことが確認された。
また断面のビッカース硬度をJIS Z2244に準じて測定した結果、試料3の銅部分の硬度が52、半田部分が15、試料3の銅部分の硬度が58、半田部分が15であった。
次に、これらの材料について引張試験を行って、0.2%耐力を評価した。引張試験は、JIS Z2201に準じて行い、標点間距離100mm、引張速さ10mm/min.の条件で実施した。0.2%耐力は、オフセット法を用い、銅の総断面積で割ることによって算出した。
試料3と試料4の荷重−伸び線図を比較すると、同じ伸び値での応力は常に試料3が下回った。一方、0.2%耐力は、試料3が70.0MPaであったのに対し、試料4は98.1MPaであった。
試料3が試料4より軟質である理由は、試料3の単芯線5本からなる銅芯材の結晶粒径が大きいこと、及び試料3の銅単芯線1本当たりの断面が試料4に比較して1/5であり、5本の単芯線同士が軟質な半田材料で弱く結合されている結果、それぞれがある程度自由に変形することができたためである。換言すれば、試料3では単芯線1本当たりの面積相当径の比が5.04%、試料4では銅単芯線全体の断面積から算出される円相当径に対する面積相当径の比が1.63%であり、試料3は試料4に対して、実際の結晶粒径差以上の大きな結晶粒を有する線材としてふるまったためである。
試料3、及び試料4を実際の太陽電池ウエハに接合し、ウエハの反りの程度を調べた。使用した太陽電池用ウエハは、大きさ150×155mm、厚さ200μmの多結晶シリコンであり、集電用インターコネクターを配線する銀電極幅は3mmであり、平行に片面3本の電極が形成されている。この受光面側の電極3本に、試料3と試料4の集電用インターコネクターを別々に3枚ずつ、合計6枚接合した。
セルは、175℃に加熱したホットプレートの上に置いておき、セル上電極にフラックスを塗り、集電用インターコネクターを銀電極上にセル端部間全長さに配置し、ピンで抑えてホットエア加熱して、半田を溶融させ接合した。
いずれの集電用インターコネクターも、銀電極長さ方向に均一に接合することができた。接合部真上から見た時の、集電用インターコネクターの幅方向の半田のはみ出しは、試料4の方が多かったのに対し、試料3の集電用インターコネクターは、均一なフィレットが形成され、はみ出しは極めて少なかった。試料3の集電用インターコネクターは、単芯線間を通って電極反対面からも十分供給されるが、不要な半田は、スポイト効果により単芯線間を通って電極反対側に戻ることにより、十分かつ必要な分だけ半田が供給された結果、均一かつ集電用インターコネクター幅方向へのはみ出しが少なかったものと考えられる。
ウエハを冷却した後、セルは集電用インターコネクターを接合した面を内側にして、集電用インターコネクターの長さ方向に反っていることが分かった。これは、銅の熱収縮率がシリコンより大きかったためである。セルの一端を支点にして、その反り量を支点反対側の端部で測定したところ、本発明の試料3の集電用インターコネクターを接合したセルの反りが2.1mmであったのに対し、比較材である試料4の集電用インターコネクターを接合したセルの反り量は5.3mmであった。これは、試料3に集電用インターコネクターの耐力が小さく、塑性変形量が大きく、熱応力が小さくて済んだためである。
次に、セル離面にも集電用インターコネクターを配置し、200℃に加熱したホットプレートの上で、集電用インターコネクターを銀電極上にセル端部間全長さに配置し、ピンで抑えてホットエア加熱して、半田を溶融させ接合したセルを、試料3と試料4について3枚ずつ製造し、セル表裏面から回路を形成して、ソーラーシミュレータを使用して同一条件で発電効率を測定した。その結果、本発明の試料3の集電用インターコネクターを接合したセルの発電効率の平均が、15.1%であったのに対し、比較材である試料4の集電用インターコネクターを接合したセルの発電効率は14.5%であった。これは、試料3に集電用インターコネクターの耐力が小さいため、塑性変形量が大きく、熱応力が小さくて済んだため、微細なクラックがない、より健全な接合が形成されたためである。
(実施例3)
本実施例では、純度99.99%の無酸素銅線(C1020)に半田がめっきされた太陽電池用集電用インターコネクターを製造し、0.2%耐力を比較すると共に、実際のシリコン結晶型太陽電池セルの接合し、反り量を比較した。
試料5〜試料9は、銅単芯線を半田で結束したテープ状導電材料である。試料6〜試料9は、本発明の実施例であるが、試料5は結果的に本発明の組織上の要件を満たさなかった比較例である。試料10〜試料11は、銅平角線の半田めっき導体であり、比較例である。
試料5のテープ状導電材料は、以下のようにして製造した。
すなわち、Φ25mmの焼鈍丸棒材をΦ2mmまでスエージで減面した後、伸線ダイスを使用し、引抜加工でΦ250μmまで伸線した。その後、得られた単芯線を6本同時に、N2−5体積%H2気流中で600℃に加熱した炉長1mの管状炉に30m/min.で通線、連続焼鈍した直後、大気に触れさせることなく、205℃に加熱溶融したPb−60質量%Snめっき槽に浸出し、めっき槽液面に配置した1.6×0.30mmのアルミナ製絞りダイスを通過させた。すなわち、試料3は、直径250μmの無酸素銅単芯線6本が、半田を介して長さ方向に平行かつ一平面内に整列して接合され一体化したテープ状の導電材料である。銅の総断面積は、0.294mm2であった。半田の目付量は、絞りダイス通過直後にワイピングノズルにより、テープ面両側からアルゴンガスを吹き付け、その流量を制御することで調整し、1m当たり、0.5gになるようにした。試料5は、本発明の形態に近いが、平均結晶粒径から比較材となった。
また、試料6〜9のテープ状導電材料は、試料5と同じ手法でΦ250μmまで伸線した材料をステンレスボビンに巻いて、バッチ炉を使用して、真空中でそれぞれ200℃(試料6)、300℃(試料7)、400℃(試料8)、500℃(試料9)で1時間の焼鈍をした単芯線材を、試料5と同じ条件で管状炉での連続焼鈍と半田めっきを施した。銅の総断面積は、0.294mm2であった。半田の目付量は、試料5と同じであった。試料5〜試料9は、本発明の形態である。本実施例では、バッチ焼鈍の時間が、その後の連続焼鈍に比較して十分長いため、焼鈍の影響は、バッチ焼鈍の方が大きい。
試料10、及び試料11の半田めっき導体は、以下のようにして製造した。
すなわち、Φ25mmの焼鈍丸棒材をΦ2mmまでスエージで減面した後、伸線ダイスを使用し引抜加工でΦ1.2mmまで伸線し、その後圧延加工して厚さ0.2に扁平させ、断面形状を0.2×1.52mmに成型してテープ材とした。その後、このテープ材をステンレスボビンに巻き、バッチ炉を使用して、試料10は、真空中で300℃、1時間、試料11は、真空中で500℃、1時間焼鈍し、それぞれ線材とした。続いて、得られたそれぞれの線材を、N2−5体積%H2気流中で600℃に加熱した炉長1mの管状炉に20m/min.で通線した直後、大気に触れさせることなく、205℃に加熱溶融したPb−60質量%Snめっき槽に浸出、通過させることで製造した。半田の目付量は、絞りダイス通過直後にワイピングノズルにより、テープ面両側からアルゴンガスを吹き付け、その流量を制御することで調整し、試料5〜試料8に合わせた。したがって、銅の総断面積は、試料5〜9と同じく0.294mm2であり、半田目付量も0.5gと同じである。試料10、及び試料11の半田目付量の平均値は片側20μmであり、中央部が最も厚く、片側約40μmであった。試料10、及び試料11は、比較材である。
これらの材料の断面を研磨し、EBSD法を使用して面積で重みづけされた円相当径の平均値、すなわち面積平均径を評価した。結晶粒は、双晶境界を除く回転角で15°以上の方位差を有する結晶粒界で囲まれる領域と定義した。また、断面その断面を利用して銅と半田の部分のビッカース硬度をJIS Z2244に準じて測定をおこなった。
次に、試料5〜試料11について引張試験を行って、0.2%耐力を評価した。引張試験は、JIS Z2201に準じて行い、標点間距離100mm、引張速さ5mm/min.の条件で実施した。0.2%耐力は、オフセット法を用い、塑性歪が0.2の時の荷重値を銅の総断面積で割ることによって算出した。全ての試料において、伸び値が10%以下の領域では、同じ歪の時の応力値は、0.2%耐力値の小さい試料ほど小さかった
次に、試料5〜試料11の半田めっき線を実際の太陽電池ウエハに接合し、ウエハの反りの程度を調べた。使用した太陽電池用ウエハは、大きさ150×155mm、厚さ200μmの多結晶シリコンであり、集電用インターコネクターを配線する銀電極幅は3mmであり、平行に片面3本の電極が形成されている。この受光面側の電極3本に集電用インターコネクターを種類ごとに3枚ずつ、合計45枚接合した。
セルは175℃に加熱したホットプレートの上に置いておき、セル上電極にフラックスを塗り、集電用インターコネクターを銀電極上にセル端部間全長さに配置し、ピンで抑えてホットエア加熱して、半田を溶融させ接合した。
ウエハを冷却した後、セルはインターコネクターを接合した面を内側にして、集電用インターコネクターの長さ方向に反っていることが分かった。これは、銅の熱収縮率がシリコンより大きかったためである。セルの一端を支点にして、その反り量を支点反対側の端部で測定した。
以上の試験結果を、表1にまとめて示した。
試料断面のEBSD測定の結果得られた試料内の銅の面積相当径で表した結晶粒の平均粒径(面積平均粒径)は、バッチ焼鈍をしていない6本の単芯線を結束した試料5と300℃で焼鈍した平角銅線1本で構成される試料10がほぼ同等であり、約9μmであった。また、0.2%耐力値もほぼ同等であった。銅単芯線1本の円相当径に対する銅の結晶粒の面積平均径の相対的な大きさは、大きな違いが認められたが、いずれも5%未満であり、銅単芯線1本の断面積に対して十分小さかったため、0.2%耐力値は、平均結晶粒径の絶対値に依存した。
試料7と試料10は加工後の熱履歴としては同じである。同じ母材から出発したにもかかわらず、再結晶後の粒径が異なるのは、加工率が試料6の方が大きく、再結晶時の粒成長の駆動力が大きかったことと、表面(実際は半田との界面)エネルギーの寄与である。すなわち、同じ総断面積の導体を得る場合、本発明の方が大きな結晶粒を得やすいことが確認された。
6本の単芯線を結束した試料は、バッチ焼鈍することによって、銅単芯線1本の円相当径に対する銅の結晶粒の面積相当径が5%を超え、0.2%耐力値が大きく低下し、50MPaを下回る値が得られた。
一方、平角銅線1本で構成される試料11は500℃でバッチ焼鈍を行い平均結晶粒径28.3μmまで粒成長したが、0.2%耐力値は、50MPaを下回らなかった。一方、ほぼ同じ面積平均径を有する試料7の0.2%耐力は、46.1MPaであった。これは、試料7では1本の銅単芯線径に対して、結晶粒径が5%を超え、大きくなった効果である。
1本の銅単芯線径に対して、結晶粒径が20%を超える試料8では0.2%耐力値が40MPaを下回り、更に50%を超える試料9では34.9MPaの値が得られた。これは、1本の銅単芯線径に対して、結晶粒径が更に大きくなり、これらがより軟質な鉛錫半田で結束された結果、1本1本の線の変形に対する拘束が小さいための効果である。
すなわち、1本の平角銅芯線で構成される導体と、軟質な半田で結束された6本の銅単芯線で構成される導体を比較すると、後者の導体は、再結晶により大きな結晶粒が得やすい上、1本の銅単芯線断面が平角銅芯線断面の1/6であることから、1本の銅単芯線断面に対する結晶粒を相対的に粗大化でき、更に6本の単芯線同士が軟質な半田材料で弱く結合されている結果、それぞれがある程度自由に変形することができ、長手方向に軟質な導体とすることができる。
試料5〜試料11の集電用インターコネクターは、いずれも銀電極長さ方向に均一に接合することができた。接合部真上から見た時の、集電用インターコネクターの幅方向の半田のはみ出しは、試料10、及び試料11の方が多かったのに対し、試料5〜試料9の集電用インターコネクターは、均一なフィレットが形成され、はみ出しは極めて少なかった。試料5〜試料9の集電用インターコネクターは、単芯線間を通って電極反対面からも十分供給されるが、不要な半田は、スポイト効果により単芯線間を通って電極反対側に戻ることにより、十分かつ必要な分だけ半田が供給された結果、均一かつ集電用インターコネクター幅方向へのはみ出しが少なかったものと考えられる。
ウエハを冷却した後のセルは集電用インターコネクターを接合した面を内側にして、集電用インターコネクターの長さ方向に反っていたが、その反り量は試料間で異なった。本発明の形態である試料6〜試料9の集電用インターコネクターを使用して接合したセルは、一般的な形態の集電用インターコネクターを使用して接合したセルに比較して反り量が小さいが、これは試料6〜試料9の0.2%耐力が小さいためである。
試料内の銅の面積相当径で表した結晶粒の平均粒径の銅単芯線1本の直径に対する比が5%以上である場合、0.2%耐力が低下し、更に銅単芯線の結晶粒径が50μm以上、結晶粒の平均粒径の銅単芯線1本の直径に対する比が20%以上である場合、一段と0.2%耐力が低下することから、セルに集電用インターコネクターを接合する時の集電用インターコネクター塑性変形量が大きく、熱応力が小さくて済み、結果としてセルの反りが小さく済んでいる。結果、セルのダメージが小さく、またセルの反りが小さいとその後のラミネート処理時のセルの矯正量も小さくなるため、矯正時のセルの破壊によるモジュールの歩留まり低下も小さくて済む。
(実施例4)
純度99.99%の無酸素銅線(C1020)に、ニッケル、アルミニウム、又は半田がめっきされた金属テープ導体をそれぞれ製造し、0.2%耐力を比較すると共に反射率の測定を行った。試料12は、ニッケルめっきされた材料であり、比較例である。試料13は試料12を焼鈍して製造された材料であり、本発明の実施例である。試料14、試料15は、試料13にそれぞれ半田、アルミニウムの溶融めっきを施して製造した試料であり、本発明の実施例である。
試料12のテープ状導電材料は、以下のようにして製造した。
すなわち、Φ8mmの連続鋳造材をΦ2mmまでスエージで減面した後、伸線ダイスを使用し、引抜加工でΦ200μmまで伸線した。次いで、表面処理した単芯線3本を並列に並べ、幅0.6mmのガイドローラーを通すことで単芯線同士を接触させた状態で送線しながら、硫酸ニッケル浴内において電気めっきで厚さ1μmのニッケルを覆うことで一体化した。このテープ状導電材料の銅の断面は、0.0942mm2であった。また、銅芯材の総断面積に対するニッケルの断面積は2.01%であった。
また、試料12と同様にして製造したテープ状導電材料をアルゴン中で350℃、30分の熱処理を行なうことで、試料13を製造した。
試料14のテープ状導電材料は、以下のようにして製造した。
すなわち、試料12と同様の連続鋳造材を用い、同じ手法により伸線及び表面処理した単芯線を利用した。この単芯線3本を並列に並べた上で、N2−5体積%H2気流中で600℃に加熱した炉長1mの管状炉に20m/min.で通線した直後、大気に触れさせることなく、200℃に加熱溶融したSn−40質量%Pbめっき槽に浸出し、めっき槽液面に配置した0.8×0.25mmのアルミナ製絞りダイスを通過させることによって半田めっきを行ない、試料14を製造した。試料14は、絞りダイスを通過直後にワイピングノズルを使用して、通線方向と反対方向からアルゴンガスを吹き付けることによって、半田のめっき厚を平均で10μmに制御して、半田めっきされた材料である。
試料15のテープ状導電材料は、以下のようにして製造した。
すなわち、試料12と同様の連像鋳造材を用い、同じ手法により伸線及び表面処理した単芯線を利用した。この単芯線3本を並列に並べた上で、N2−5体積%H2気流中で700℃に加熱した炉長1mの管状炉に2m/min.で通線した直後、大気に触れさせることなく、700℃に加熱溶融したAlめっき槽に浸出し、めっき槽液面に配置した0.8×0.25mmのアルミナ製絞りダイスを通過させることによってアルミニウムめっきを行ない、試料15を製造した。試料15は、絞りダイスを通過直後にワイピングノズルを使用して、通線方向と反対方向からアルゴンガスを吹き付けることによって、アルミニウムのめっき厚を平均で10μmに制御して、アルミニウムめっきされた材料である。
試料12〜試料15は、いずれも銅単芯線の線径に対して、薄いめっきであったため、線径に従った凹凸を有していた。
これらの材料の断面を研磨し、EBSD法を使用して面積で重みづけされた円相当径の平均値、すなわち面積平均径を評価した。結晶粒は、双晶境界を除く回転角で15°以上の方位差を有する結晶粒界で囲まれる領域と定義した。また、得られた断面を利用して、銅と半田、又はアルミニウムめっきの部分のビッカース硬度測定をJIS Z2244に準じて行った。ニッケルの硬度は、ニッケルめっきの厚さが小さいため、測定できなかった。ただし、銅芯材の断面積に対するニッケルめっきの断面積は小さいため、耐力を始めとする機械的な特性に対する影響は小さい。
次に、試料12〜試料15について引張試験を行って、0.2%耐力を評価した。引張試験は、JIS Z2201に準じて行い、標点間距離100mm、引張速さ5mm/min.の条件で実施した。0.2%耐力は、オフセット法により、塑性歪が0.2の時の荷重値を銅の総断面積で割ることによって算出した。全ての試料において、伸び値が10%以下の領域では、同じ歪の時の応力値は、0.2%耐力値の小さい試料ほど小さかった。
次に、試料12〜試料15のテープ線材のテープ面の反射率を測定した。反射率の測定は、アルミニウムの蒸着鏡を参照試料とし、様々な方向の反射を総和した、いわゆる拡散反射を測定した。測定波長範囲は、太陽電池で発電によく利用される240nm〜800nmの波長領域での平均値を算出した。
以上の試験結果を、表2にまとめて示した。
試料断面のEBSD測定の結果得られた試料内の銅の面積相当径で表した結晶粒の平均粒径(面積平均粒径)は、バッチ焼鈍していない試料12の試料が最も小さく、1.8μmであった。この試料の銅単芯線1本の円相当径に対する銅の結晶粒の面積平均径の相対的な大きさは、5%以下であり、0.2%耐力は、大きな値を示した。
一方、350℃でバッチ焼鈍した試料(試料13)の銅芯材の平均粒径は40.1μmであった。この試料の銅単芯線1本の円相当径に対する銅の結晶粒の面積平均径の相対的な大きさは、20%であり、めっき厚が小さいこともあり、0.2%耐力は、小さい値が得られた。
試料14と試料15における銅の面積相当径で表した結晶粒の平均粒径(面積平均粒径)は、バッチ焼鈍しなかった分、試料13の平均粒径より小さかったが、光輝焼鈍と溶融めっきによる熱履歴により、結晶粒が成長した。その結果、試料14及び試料15における銅単芯線1本の円相当径に対する銅の結晶粒の面積平均径の相対的な大きさは、本発明の基準である5%を超え、低耐力値が得られた。試料14は、半田より硬質なアルミニウムめっきを施したにもかかわらず、溶融アルミニウムめっきの高い熱履歴によって結晶粒が成長したことで、試料13よりも耐力値が小さくなった。
反射率は、アルミニウムめっきを施した試料15が最も高くなった。丸線を結束したことによる凹凸により、反射光は散乱する。この試料を太陽電池用のインターコネクターに使用した場合、インターコネクターで遮られた太陽光線は、インターコネクターで高い反射率で乱反射される。従って、反射光は、EVA等で構成される透明モールド材や表面ガラスの界面で再度反射され、再度太陽電池セルの受光面に入射することが期待でき、太陽光モジュールの効率向上に寄与する。
(実施例5)
本実施例では、純度99.99%の無酸素銅線(C1020)に目付量の異なる半田をめっきした太陽電池用集電用インターコネクターを製造し、実際のシリコン結晶型太陽電池セルに接合し、接合マージンを比較した。
試料16〜試料21は、銅丸線を結束した本発明のテープ状導電材料である。試料22は、銅平角線の半田めっき導体であり、比較例である。
試料16〜試料21のテープ状導電材料は、以下のようにして製造した。
すなわち、Φ25mmの焼鈍丸棒材をΦ2mmまでスエージで減面した後、伸線ダイスを使用し、引抜加工でΦ250μmまで伸線した。その後、ボビンに巻いた8巻の試料から繰り出した銅単芯線を幅2.7mm、高さ200μmの穴の空いた2個のガイドに8本平行に一列に並べて通し、ガイドに並べた一列の銅単芯線束の幅方向の一方の側面から他方の側面に対向した電極を設け、銅単芯線を送線しながら電極に間欠的に通電し、8本の銅単芯線同士を平行に接合した。銅単芯線同士の接合部の長さは長さ方向に約1mmであった。試料16〜試料21は、通電間隔を変化させることによって、接合部同士の間隔が異なる試料であり、試料16は接合間隔が4mm、試料17は接合間隔が5mm、試料18は接合間隔が30mm、試料19は接合間隔が60mm、試料20は接合間隔が63mm、試料21は接合間隔が70mmの試料である。その後、幅方向を拘束しながら圧延して、1巻のステンレスボビンに巻き取った。
このようにして作製したテープ状銅線はボビンごと真空中で500℃1時間の焼鈍を行った。その後、N2−5体積%H2気流中で600℃に加熱した炉長1mの管状炉に30m/min.で通線、連続焼鈍した直後、大気に触れさせることなく、240℃に加熱溶融した98.5%Sn−1.0Ag−0.5Cuめっき槽に浸出し、半田めっきを施した。すなわち、試料16〜21は、幅広面が図2fのように扁平した、無酸素銅線8本が、半田を介して長さ方向に平行かつ一平面内に整列して接合され一体化したテープ状の導電材料である。銅の総断面積は、0.31mm2であった。半田の目付量は、絞りダイス通過直後にワイピングノズルにより、テープ面両側からアルゴンガスを吹き付け、その流量を制御することで調整し、1m当たり、2.96gになるようにした。線は予め結束されているため、単芯線を整列させるためのガイドや絞りダイスを使用する必要はなかった。
試料22の半田めっき導体は、以下のようにして製造した。
すなわち、Φ25mmの焼鈍丸棒材をΦ2mmまでスエージで減面した後、伸線ダイスを使用し引抜加工でΦ1.2mmまで伸線し、その後圧延加工して厚さ0.2に扁平させ、断面形状を0.16×2.0mmに成型してテープ材とした。その後、このテープ材をステンレスボビンに巻き、バッチ炉を使用して、真空中で500℃、1時間焼鈍し、それぞれ線材とした。続いて、得られたそれぞれの線材を、N2−5体積%H2気流中で600℃に加熱した炉長1mの管状炉に20m/min.で通線した直後、大気に触れさせることなく、240℃に加熱溶融した98.5%Sn−3.0Ag−0.5Cuめっき槽に浸出、通過させることで製造した。
半田の目付量は、ワイピングノズルにより、テープ面両側からアルゴンガスを吹き付け、その流量を制御することで調整し、試料16〜試料21に合わせた。したがって、銅の総断面積は、試料16〜21と同じく0.31mm2であり、半田目付量も0.296gと同じである。試料22の半田目付量の平均値は片側20μmである。
これらの材料の断面を研磨し、EBSD法を使用して面積で重みづけされた円相当径の平均値、すなわち面積平均径を評価した。結晶粒は、双晶境界を除く回転角で15°以上の方位差を有する結晶粒界で囲まれる領域と定義した。また、断面その断面を利用して銅と半田の部分のビッカース硬度をJIS Z2244に準じて測定をおこなった。
次に、試料16〜試料22について引張試験を行って、0.2%耐力を評価した。引張試験は、JIS Z2201に準じて行い、標点間距離100mm、引張速さ5mm/min.の条件で実施した。0.2%耐力は、オフセット法を用い、塑性歪が0.2の時の荷重値を銅の総断面積で割ることによって算出した。全ての試料において、伸び値が10%以下の領域では、同じ歪の時の応力値は、0.2%耐力値の小さい試料ほど小さかった。
次に、試料16〜試料22の半田めっき線を実際の太陽電池ウエハに接合し、接合の状態を調べた。使用した太陽電池用ウエハは、大きさ125×125mm、厚さ160μmの単結晶シリコンであり、集電用インターコネクターを配線する銀電極幅は3mmであり、平行に片面2本の電極が形成されている。セルは(株)エヌ・ピー・シー社製の自動配線装置を使用し、3枚のセルを直列に接続したストリングスを作製した。接合条件は、溶着テーブル温度180℃、ホットエア設定温度:350℃、ピン押さえ時間3秒とした。
作製したストリングスの外観を観察したのち、3本のセルをつないでいるインターコネクターをセルの間で切断し単セルとし、その上からEVAをかぶせ、更に強化ガラスを載せて160℃まで減圧中で加熱し、疑似モジュールを作製した。このモジュールについて太陽電池シミュレーターの下でI−V特性を測定し、太陽電池としての効率を測定した。
得られた結果を、まとめて表3に示した。
試料16〜試料21は、銅単芯線1本の円相当径に対する銅の結晶粒の面積平均径の相対的な大きさが50%を超え、非常に低い耐力値が得られた。一方、試料22は、冷間加工率が小さかったことと、銅単芯線1本当たりの断面積が大きいため、試料16〜試料21に比較して耐力値は大きかった。試料16〜試料21の差を詳細に比較すると、試料16のインターコネクターの耐力値はやや劣っていた。これは、点接合の間隔が小さすぎ、単芯線に引張応力を加えた際に、単芯線同士の拘束が大きかったためと考えられる。
ストリングスの全体の反りは、耐力を反映したものであった。定量的な測定は困難であったが、試料16〜試料21のインターコネクターを使用して作製したストリングスは、平面に載置するとほぼ浮きがなかったのに対し、試料22のインターコネクターを使用して作製したストリングスは、平面に載置するとやや浮きが認められた。同じ熱歪み与えた際のインターコネクターの応力が、耐力値の高い試料22では大きかったためである。
ストリングスの外観を調べると、試料16〜試料21の集電用インターコネクターは、いずれも銀電極長さ方向に均一に接合することができた。接合部真上から見た時の、集電用インターコネクターの幅方向の半田のはみ出しを評価すると、試料16〜試料21のインターコネクターを使用したストリングスでは、均一なフィレットが形成され、はみ出しは極めて少なかった。ストリングスを形成した試料16〜21のインターコネクターの受光面の状態を観察すると、接合前より単芯線の形状を反映した凹凸が大きくなっていた。すなわち、試料16〜試料21の集電用インターコネクターは、単芯線間を通って電極反対面からも十分供給されるが、不要な半田は、スポイト効果により単芯線間を通って電極反対側に戻ることにより、十分かつ必要な分だけ半田が供給された結果、均一かつ集電用インターコネクター幅方向へのはみ出しが少なかったものと考えられる。
試料20並びに試料21のインターコネクターを接合したストリングスを観察すると、殆どのセルで1本の電極当たり2か所の接合点があったが、中には中央部1点でのみ結束されていないセルが見られた。一般的に使用されている太陽電池セルは5インチセルと6インチセルがあるが、本実施例で使用したセルは5インチセルでの小型のセルである。1つのセル内の1本の電極に2点以上の結束点があった方が良く、接合間隔は60mm以下である方が望ましい。
太陽電池としての効率を比較すると、試料16〜試料21のインターコネクターを使用して作製したセルの効率が、試料22のインターコネクターを使用して作製したセルの効率より高いことが分かった。これは、耐力が小さくセルにかかる応力が小さいことにより接合が健全であったこと、また受光面のインターコネクターの凹凸により、インターコネクターに当たった光が乱反射され、EVA樹脂やガラスの界面で光が再反射されセルに戻った効果によるものと考えられる。
(実施例6)
次に、ワイピングノズルにより、テープ面両側から吹き付けるアルゴンガス量を変化させ、半田の目付量を0.26g、0.24gと、実施例5の場合より減少させたインターコネクターを作製し、接合性を比較した。それ以外は、実施例5における試料16〜試料21の作製方法を同じプロセスとした。ストリングスの作製条件も実施例5と同じである。
点接合したインターコネクターでは、点接合間隔が4mmの試料で、目付量が0.24gの時、一部接合できていない部分が見られたが、装置が停止することなく3直のストリングスが形成出来た。一方、目付量が0.24gの試料22と同様な1本の銅平角線で構成されたインターコネクターでは、半田の供給不足により健全な接合ができず、インターコネクターが剥離し、装置の自動連続運転ができなかった。一方、点接合したインターコネクターでは目付量を減らしても、接合面反対側からの半田の供給があったため、インターコネクターが剥離することはなかった。
以上、説明してきたように本発明の形態をとることにより、導体断面積、すなわち電流容量を確保しながら導線を軟質化することができ、また、半田目付量を低減することができ、集電用インターコネクターを始めとする半導体の実装材料として優れた材料を提供することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。