JP2013209729A - 水素透過性銅合金、水素透過膜及び水蒸気改質装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】水素透過率及び強度に優れたCu−Pd合金を提供する。
【解決手段】組成式:PdaCubXc
(X:Al、Ga及びInの少なくとも1種、a:43〜49at%、b:1-a-c、c:0.02〜2at%)
で表され、
300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の平均結晶粒径が4μm以下となる水素透過性銅合金。
【選択図】なし
【解決手段】組成式:PdaCubXc
(X:Al、Ga及びInの少なくとも1種、a:43〜49at%、b:1-a-c、c:0.02〜2at%)
で表され、
300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の平均結晶粒径が4μm以下となる水素透過性銅合金。
【選択図】なし
Description
本発明は、水素透過性銅合金、水素透過膜及びこれを用いた水蒸気改質装置に関し、より詳細には、水素透過性Cu−Pd合金、水素透過膜及びこれを用いた水蒸気改質装置に関する。
水素の用途は広く、例えば石油精製分野では脱硫剤として、化学工業分野ではアンモニアやメタノールをはじめとする各種化学品の原料として、半導体分野では還元雰囲気ガスとして、燃料電池分野では燃料として利用されている。
水素の製造技術としては、炭化水素や石炭から水素を製造する水蒸気改質法が知られており、例えば金属触媒下、700〜800℃の高温で水蒸気をメタンと反応させ、一酸化炭素と水素を得るという方法である。一酸化炭素は更にシフト反応により、二酸化炭素に変換される。水素及び副生成物を含む混合ガスから水素を分離・精製する方法としては水素透過膜を利用する方法が知られている。水素透過膜は水素のみを選択的に透過する特性を有しており、水素透過膜の一方の面(一次側)に対して混合ガスで加圧すると、水素だけが水素透過膜中に溶け込んで拡散し、反対側の面(二次側)に到達することができる。このようにして混合ガスから水素を分離することにより、水素を高純度に精製できる。
最近では、水素透過膜と改質器とを組み合わせることで、水素の生成反応と水素の分離・精製を同時に行うメンブレンリフォーマー技術の開発が進んでいる。これは、シフト反応器や一酸化炭素の選択除去を必要としないことから新たな水素製造方法として期待されている技術であり、改質触媒を利用して550〜650℃程度の従来に比べて低温でしかも高い改質効率で改質反応を進行させることができるという利点がある。
パラジウムは水素の選択透過性を有していることから、水素透過膜の材料としてパラジウムを主体とする合金が使用されており、その中でもPd−Cu合金が知られている。特開2001−262252号公報(特許文献1)では、Pdを主成分としてCuを0〜20at%添加することで水素脆化を抑制することが記載されている。特開2004−174373号公報(特許文献2)ではCuはPdを合金化して強度を向上させ、水素脆化を抑制する効果があり、水素ガスが400℃以上になり得る水素ガス精製・分離装置に適用するには、高温強度を維持できるようにPdを主成分としてCuを1〜40at%含んだ合金組成とすることが好ましいとされている。
水素透過膜は、上述のように水素分離に用いられるが、水素分離は圧力差を利用することで進行するため、水素の分離速度を大きくするためには水素透過膜の一方の面(一次側)の混合ガスの圧力を高くする必要がある。特に水蒸気改質反応における水素製造で、メンブレンリフォーマーとして水素透過膜を用いる場合には、1〜2MPaという圧力に設定されることがある。そのため、水素透過膜にはこのような高圧に耐え得る強度が求められるが、強度を得ようとして膜厚を大きくすると、水素透過膜の水素分離速度が低下してしまう。また、水素透過膜用の材料として有望なPd−Cu合金については、高価な貴金属であるPdを使用しているため、膜厚を大きくすることはコスト面で不利である。さらに、Pd−Cu合金は高温下における水素透過率が極端に低下するという問題がある。また、水素透過膜には、高温で応力が継続してかかるため、高温での強度が良好であることが要求される。
そこで、本発明は、高温・高圧下での水素透過率及び強度に優れたCu−Pd合金を提供することを課題の一つとする。また、本発明はそのようなCu−Pd合金を材料とした水素透過膜を提供することを別の課題の一つとする。また、本発明はそのような水素透過膜を利用した水蒸気改質装置を提供することを更に別の課題の一つとする。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、所定の組成をもつCu−Pd合金に対してAl、Ga及びInの少なくとも一種を所定量含有させて合金中のβ相の割合を制御し、且つ、所定の熱処理を行ったときに、β相の平均結晶粒径が所定値以下となるように制御することで、高温・高圧下での水素透過率及び強度が有意に改善することを見出した。
上記知見を基礎として完成した本発明は一側面において、組成式:PdaCubXc
(X:Al、Ga及びInの少なくとも1種、a:43〜49at%、b:1-a-c、c:0.02〜2at%)
で表され、
300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の平均結晶粒径が4μm以下となる水素透過性銅合金である。
(X:Al、Ga及びInの少なくとも1種、a:43〜49at%、b:1-a-c、c:0.02〜2at%)
で表され、
300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の平均結晶粒径が4μm以下となる水素透過性銅合金である。
本発明に係る水素透過性銅合金は一実施形態において、300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の平均結晶粒径が2μm以下となる。
本発明に係る水素透過性銅合金は別の一実施形態において、300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の最大結晶粒径が10μm以下となる。
本発明に係る水素透過性銅合金は更に別の一実施形態において、300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の最大結晶粒径が5μm以下となる。
本発明に係る水素透過性銅合金は更に別の一実施形態において、300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の結晶粒径の標準偏差が1μm以下となる。
本発明に係る水素透過性銅合金は更に別の一実施形態において、前記XがAlであり、前記cが0.2〜2at%である。
本発明に係る水素透過性銅合金は更に別の一実施形態において、前記銅合金が最終圧延加工度80%以上の圧延銅合金である。
本発明は別の一側面において、本発明に係る銅合金でできた水素透過膜である。
本発明に係る水素透過膜は一実施形態において、厚みが1〜200μmである。
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る水素透過膜を用いた水蒸気改質装置である。
本発明によれば、水素透過率及び強度に優れた水素透過膜を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(水素透過性銅合金の構成)
本発明に係る銅合金は、組成式:PdaCubXc
(X:Al、Ga及びInの少なくとも1種、a:43〜49at%、b:1-a-c、c:0.02〜2at%)
で表される。
Cu及びPdで構成されたCu−Pd合金は300℃以上の高温で強度が低下する。これに対し、本発明に係る銅合金は、上述のようにCu−Pd合金に対してAl、Ga及びInの少なくとも1種が添加されているため、高温下における強度が向上するという効果がある。Al、Ga及びInの少なくとも1種が合金組成において0.02at%以上含まれているとその効果が生じ始める。ただし、Al、Ga及びInの少なくとも1種の割合が合金組成において2at%を超えると、今度は水素透過率の向上効果が小さくなり、逆に悪化する場合もある。また、膜にピンホールが生じ易くなる傾向がある。そのため、本発明に係る銅合金ではAl、Ga及びInの少なくとも1種の割合は0.02〜2at%と規定されている。また、Al、Ga及びInの少なくとも1種の割合は、より好ましくは0.2〜1.0at%である。
上記X成分は、Alのみで構成されているのがより好ましく、その場合、Alの割合は0.2〜2at%であるのがより好ましい。Alは、GaやInと比べて、高温(300℃以上)での水素透過性の改善効果が高く、強度も高くなるためである。
本発明に係る銅合金は、組成式:PdaCubXc
(X:Al、Ga及びInの少なくとも1種、a:43〜49at%、b:1-a-c、c:0.02〜2at%)
で表される。
Cu及びPdで構成されたCu−Pd合金は300℃以上の高温で強度が低下する。これに対し、本発明に係る銅合金は、上述のようにCu−Pd合金に対してAl、Ga及びInの少なくとも1種が添加されているため、高温下における強度が向上するという効果がある。Al、Ga及びInの少なくとも1種が合金組成において0.02at%以上含まれているとその効果が生じ始める。ただし、Al、Ga及びInの少なくとも1種の割合が合金組成において2at%を超えると、今度は水素透過率の向上効果が小さくなり、逆に悪化する場合もある。また、膜にピンホールが生じ易くなる傾向がある。そのため、本発明に係る銅合金ではAl、Ga及びInの少なくとも1種の割合は0.02〜2at%と規定されている。また、Al、Ga及びInの少なくとも1種の割合は、より好ましくは0.2〜1.0at%である。
上記X成分は、Alのみで構成されているのがより好ましく、その場合、Alの割合は0.2〜2at%であるのがより好ましい。Alは、GaやInと比べて、高温(300℃以上)での水素透過性の改善効果が高く、強度も高くなるためである。
本発明者の検討結果によれば、Al、Ga及びInの少なくとも1種を含む系においては、上記の43〜49at%の範囲が300℃付近の高温下における高い水素透過率を得る観点で好ましく、49at%を超えると逆に水素透過率が低下していく傾向にある。また、Pdの割合は、より好ましくは44〜48at%である。
本発明に係る銅合金は、Cu、Pd、及び、Al、Ga及びInの少なくとも1種で構成されており、他の元素を積極的に含有させることはないが、製造過程で混入する不可避的不純物のように他の元素が極微量含有していても構わないため、そのような場合も本発明の範囲とする。他の元素の許容値は一概には決定できないが、300℃付近における水素透過係数に有意な悪影響を与えない程度の場合(例:水素透過係数の低下率が5%以下)、例えばCu、Pd、及び、Al、Ga及びInの少なくとも1種の合計に対してそれぞれ0.1at%以下の濃度で混入している場合には有意な悪影響はないと考えられる。他の元素としては、限定的ではないが、水素透過膜への添加元素として公知であるPt、Rh、Ir、Ru、Ni、Co、Ti、Nb、Ta、Ag、B、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuが挙げられる。
本発明の水素透過性銅合金は、300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の平均結晶粒径が4μm以下となる。このような所定の熱処理を行ったときにβ相の平均結晶粒径が4μm以下であれば、銅合金の引張強さが良好となる。また、300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の平均結晶粒径が2μm以下となるのが好ましく、典型的には0.05〜1.0μmとなる。
所定の熱処理を行ったときのβ相の結晶粒径については、その最大値も銅合金の引張強さに関係する。すなわち、当該β相の最大結晶粒径が大きいと、銅合金の引張強さに悪影響を与える。そこで、本発明の水素透過性銅合金は、300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の最大結晶粒径が10μm以下となるのが好ましい。当該β相の最大結晶粒径が10μmを超えると、銅合金の引張強さが低下する可能性がある。また、300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の最大結晶粒径が5μm以下となるのがより好ましく、典型的には1〜4μmとなる。
また、所定の熱処理を行ったときのβ相の結晶粒径については、そのばらつきも銅合金の引張強さに関係する。すなわち、当該β相の結晶粒径のばらつきが大きいと、銅合金の引張強さに悪影響を与える。そこで、本発明の水素透過性銅合金は、300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の結晶粒径の標準偏差が1μm以下となるのが好ましい。当該β相の結晶粒径の標準偏差が1μmを超えると、銅合金の引張強さが低下する可能性がある。また、300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の結晶粒径の標準偏差が0.5μm以下となるのがより好ましく、典型的には0.1〜0.3μmとなる。
本発明に係る銅合金は、最終圧延加工度80%以上の圧延銅合金であるのが好ましい。最終圧延加工度80%以上の圧延銅合金であれば、結晶粒が微細化するため、熱処理を行ったときに上述のようなβ相に相変化しやすくなる。
本発明に係る銅合金は、このようにAl、Ga及びInの少なくとも1種を所定量添加したCu−Pd合金であり、高温での水素透過率及び引張強さが良好となる。このため、高温で、且つ、1〜2MPa等の高圧下において水素含有ガスから水素を分離することが要求される場合に用いる水素透過膜として特に好適に使用できる。
(水素透過性銅合金の製造方法)
本発明に係る銅合金は、限定されるものではないが、所定の成分に調整したインゴットを溶解鋳造した後、適宜焼鈍及び圧延を繰り返すことで製造可能である。具体的には、800℃以上で加熱したインゴットを熱間圧延し、黒皮除去後、冷間圧延で所定厚みまで薄くする。冷間圧延時の油膜厚を小さくして圧延し、オイルピットを減らすことにより、せん断変形を少なくして、板厚が薄くしてもピンホールを発生しにくくなることを見出した。
圧延時の油膜厚は下記式(1)で表される。
h=3η(μ1+μR)/(pθ) (1)
(hは理論油膜厚(m);ηは油膜粘度[(N/m2)s];μ1は材料速度(m/s);μRはロール周速(m/s);pは材料の降伏応力(N/m2);θは噛み込み角(rad))
本発明の水素透過膜を製造する際、0.1×10-6(m)≦h≦0.5×10-6(m)を満たすようにη、μ1、μR、p、θを制御すると、せん断変形が少なくなり、ピンホールが発生しにくくなるため好ましい。
また、熱処理後は圧延時の加工度が大きい方が、結晶粒が微細化するため、熱処理を行ったときに上述のようなβ相に相変化しやすくなる。従って、80%以上の最終圧延加工度で冷間圧延するのが好ましい。必要に応じて焼鈍を行う。また、湿式めっきやスパッタリングで作製することも可能である。
本発明に係る銅合金は、限定されるものではないが、所定の成分に調整したインゴットを溶解鋳造した後、適宜焼鈍及び圧延を繰り返すことで製造可能である。具体的には、800℃以上で加熱したインゴットを熱間圧延し、黒皮除去後、冷間圧延で所定厚みまで薄くする。冷間圧延時の油膜厚を小さくして圧延し、オイルピットを減らすことにより、せん断変形を少なくして、板厚が薄くしてもピンホールを発生しにくくなることを見出した。
圧延時の油膜厚は下記式(1)で表される。
h=3η(μ1+μR)/(pθ) (1)
(hは理論油膜厚(m);ηは油膜粘度[(N/m2)s];μ1は材料速度(m/s);μRはロール周速(m/s);pは材料の降伏応力(N/m2);θは噛み込み角(rad))
本発明の水素透過膜を製造する際、0.1×10-6(m)≦h≦0.5×10-6(m)を満たすようにη、μ1、μR、p、θを制御すると、せん断変形が少なくなり、ピンホールが発生しにくくなるため好ましい。
また、熱処理後は圧延時の加工度が大きい方が、結晶粒が微細化するため、熱処理を行ったときに上述のようなβ相に相変化しやすくなる。従って、80%以上の最終圧延加工度で冷間圧延するのが好ましい。必要に応じて焼鈍を行う。また、湿式めっきやスパッタリングで作製することも可能である。
(水素透過膜の構成)
本発明に係る銅合金を水素透過膜として利用する場合、水素透過量は膜厚に反比例するため、膜厚が薄いほど単位面積当たりの透過量は上昇する。また、同じ面積でも膜厚が薄いと使用する材料も少なくなることから、膜厚を薄くすることは水素透過膜として使用する場合、非常に効果的である。ただし、あまり薄すぎると機械的強度が保てず、ピンホール等によって水素以外の不純物ガスが二次側に到達してしまうことから一定以上の膜厚があることが必要である。一方、膜厚があまり厚すぎると今度は二次側に到達する水素の量が少なくなり、生産性が悪くなる。そこで、膜厚は1〜200μmとするのが好ましく、5〜50μmとするのがより好ましい。膜厚は圧延時の圧下率を制御することで調節可能である。
本発明に係る銅合金を水素透過膜として利用する場合、水素透過量は膜厚に反比例するため、膜厚が薄いほど単位面積当たりの透過量は上昇する。また、同じ面積でも膜厚が薄いと使用する材料も少なくなることから、膜厚を薄くすることは水素透過膜として使用する場合、非常に効果的である。ただし、あまり薄すぎると機械的強度が保てず、ピンホール等によって水素以外の不純物ガスが二次側に到達してしまうことから一定以上の膜厚があることが必要である。一方、膜厚があまり厚すぎると今度は二次側に到達する水素の量が少なくなり、生産性が悪くなる。そこで、膜厚は1〜200μmとするのが好ましく、5〜50μmとするのがより好ましい。膜厚は圧延時の圧下率を制御することで調節可能である。
本発明に係る水素透過膜を利用して水素含有ガスから水素を分離する方法は、水素含有ガスが当該水素透過膜を通過する工程を含む。一般的には、膜の一方の面(一次側)に水素を含有する混合ガスを配置し、一次側の圧力を膜の他方の面(二次側)に対して高くする方法が採用される。本発明に係る水素透過膜は特に300℃付近での水素透過率に優れていることから、水素含有ガスは250〜400℃の温度として水素透過膜を通過することが好ましく、280〜350℃の温度として水素透過膜を通過することがより好ましい。また、本発明に係る水素透過膜は良好な強度も有しており、例えば1〜2MPa等の高圧下でも支持体を適正に設置することで、ピンホール等の破壊が良好に抑制される。
(水蒸気改質装置の構成)
水素透過膜を利用して水素含有ガスから水素を分離する水蒸気改質装置の構成自体は公知であり、本発明に係る水蒸気改質装置としては、任意の公知の構成を採用することができ、特に制限はない。一例を挙げると、本発明に係る水蒸気改質装置は、本発明に係る水素透過膜を内壁面に形成した通気性多孔質アルミナセラミックス反応管内に改質触媒層を設けると共に、当該反応管を囲んで水素回収室を設けることで構成してもよい。
水素透過膜を利用して水素含有ガスから水素を分離する水蒸気改質装置の構成自体は公知であり、本発明に係る水蒸気改質装置としては、任意の公知の構成を採用することができ、特に制限はない。一例を挙げると、本発明に係る水蒸気改質装置は、本発明に係る水素透過膜を内壁面に形成した通気性多孔質アルミナセラミックス反応管内に改質触媒層を設けると共に、当該反応管を囲んで水素回収室を設けることで構成してもよい。
以下に本発明を実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
Cu、Pd、及び、X(Al、Ga及びInの少なくとも1種)で構成され、表1に記載の原子比を満足する組成となるように成分調整したCu−Pd合金をそれぞれ溶解鋳造後、800℃以上に加熱したインゴットを熱間圧延し、黒皮除去後、所定の最終加工度にて所定の膜厚の膜に冷間圧延した。
膜厚はマイクロメータで測定した5箇所の平均値を指す。
合金のβ相の平均結晶粒径、最大結晶粒径、及び、標準偏差は以下のように測定した。最初に、圧延試料を脱脂・洗浄した後、Ar雰囲気下300℃で20時間熱処理後、室温に急冷(水冷)して構造を維持させた測定用試料を作製した。次に、各試料をEBSP装置にセット後、クリーンアップ処理をかけ、試料傾斜角度70度、測定範囲を64μm×48μm、ステップ幅を0.1μmとして、結晶方位を合計4箇所にわたって測定し、マップを得た。続いて、それぞれのマップで平均粒径、最大粒径、標準偏差を算出した。平均粒径と標準偏差については4箇所の平均とし、最大粒径は4箇所の中で最大のものを最大粒径とした。
また、プレシジョンカッターで圧延平行方向に1/8インチの幅に切り、引張り試験機チャックに試料を挟み、チャック間の距離を50mmに調整し、引張り速度を2.5mm/分で引張り試験を行い、引張強さ(TS:MPa)を測定した。
Cu、Pd、及び、X(Al、Ga及びInの少なくとも1種)で構成され、表1に記載の原子比を満足する組成となるように成分調整したCu−Pd合金をそれぞれ溶解鋳造後、800℃以上に加熱したインゴットを熱間圧延し、黒皮除去後、所定の最終加工度にて所定の膜厚の膜に冷間圧延した。
膜厚はマイクロメータで測定した5箇所の平均値を指す。
合金のβ相の平均結晶粒径、最大結晶粒径、及び、標準偏差は以下のように測定した。最初に、圧延試料を脱脂・洗浄した後、Ar雰囲気下300℃で20時間熱処理後、室温に急冷(水冷)して構造を維持させた測定用試料を作製した。次に、各試料をEBSP装置にセット後、クリーンアップ処理をかけ、試料傾斜角度70度、測定範囲を64μm×48μm、ステップ幅を0.1μmとして、結晶方位を合計4箇所にわたって測定し、マップを得た。続いて、それぞれのマップで平均粒径、最大粒径、標準偏差を算出した。平均粒径と標準偏差については4箇所の平均とし、最大粒径は4箇所の中で最大のものを最大粒径とした。
また、プレシジョンカッターで圧延平行方向に1/8インチの幅に切り、引張り試験機チャックに試料を挟み、チャック間の距離を50mmに調整し、引張り速度を2.5mm/分で引張り試験を行い、引張強さ(TS:MPa)を測定した。
このようにして得られたそれぞれの試料に対して、以下の要領で水素透過係数を測定した。
水素のガスボンベ、加熱炉11、一次側水素配管12、二次側水素配管13、管状炉内に配置され、一次側水素配管及び二次側水素配管を連結する1/2VCR(登録商標)継手内にフィルター付ガスケットと共に固定された水素透過膜14(水素透過部の直径11.2mm)、二次側の水素配管に連結した水素測定器(水素用マスフローコントローラ(山武、MQV9050)を備えた測定系を構築した(図1参照)。水素のガスボンベから配管を通じて供給される水素はVCR継手の一次側に入り、水素透過膜を通過して、VCR継手の二次側から出てくる。水素透過膜を固定したVCR継手が入っている管状炉は所定の温度に加熱可能となっており、水素固定部のVCR継手部分の温度を熱電対で測定している。測定試験は、一次側圧を0.3MPaG、二次側圧を0MPaGとし、一次側の水素供給量を50sccmとして300℃に水素を加熱しながら24時間供給し続けたときの水素透過量を測定し、以下の式により水素透過係数qを測定した。
q=fM・d・S-1・(P1/2−p1/2)-1
q:水素透過係数(mol・m-1・sec-1・Pa-1/2)
fM:二次側水素流量(mol・sec-1)
d:膜厚(m)
S:膜面積(m2)
P:一次側圧力(Pa)
p:二次側圧力(Pa)
水素透過係数qは、0.7E-8以上で「○」と判定した。
水素のガスボンベ、加熱炉11、一次側水素配管12、二次側水素配管13、管状炉内に配置され、一次側水素配管及び二次側水素配管を連結する1/2VCR(登録商標)継手内にフィルター付ガスケットと共に固定された水素透過膜14(水素透過部の直径11.2mm)、二次側の水素配管に連結した水素測定器(水素用マスフローコントローラ(山武、MQV9050)を備えた測定系を構築した(図1参照)。水素のガスボンベから配管を通じて供給される水素はVCR継手の一次側に入り、水素透過膜を通過して、VCR継手の二次側から出てくる。水素透過膜を固定したVCR継手が入っている管状炉は所定の温度に加熱可能となっており、水素固定部のVCR継手部分の温度を熱電対で測定している。測定試験は、一次側圧を0.3MPaG、二次側圧を0MPaGとし、一次側の水素供給量を50sccmとして300℃に水素を加熱しながら24時間供給し続けたときの水素透過量を測定し、以下の式により水素透過係数qを測定した。
q=fM・d・S-1・(P1/2−p1/2)-1
q:水素透過係数(mol・m-1・sec-1・Pa-1/2)
fM:二次側水素流量(mol・sec-1)
d:膜厚(m)
S:膜面積(m2)
P:一次側圧力(Pa)
p:二次側圧力(Pa)
水素透過係数qは、0.7E-8以上で「○」と判定した。
(比較例)
Cu-Pd合金、又は、Cu、Pd、比較例1〜3についてはさらにX(Al、Ga及びInの少なくとも1種)で構成された銅合金を、表1に記載の原子比を満足する組成となるように成分調整したCu−Pd合金に対し、実施例と同様の方法により、それぞれ溶解鋳造後、800℃以上に加熱したインゴットを熱間圧延し、黒皮除去後、所定の最終加工度にて所定の膜厚の膜に冷間圧延した。
このようにして得られたそれぞれの試料に対して、実施例と同様に各評価を行った。試験結果を表1に示す。
Cu-Pd合金、又は、Cu、Pd、比較例1〜3についてはさらにX(Al、Ga及びInの少なくとも1種)で構成された銅合金を、表1に記載の原子比を満足する組成となるように成分調整したCu−Pd合金に対し、実施例と同様の方法により、それぞれ溶解鋳造後、800℃以上に加熱したインゴットを熱間圧延し、黒皮除去後、所定の最終加工度にて所定の膜厚の膜に冷間圧延した。
このようにして得られたそれぞれの試料に対して、実施例と同様に各評価を行った。試験結果を表1に示す。
(評価結果)
実施例1〜12は、いずれも水素透過係数が良好(水素透過率が良好)で、引張強さも良好であった。
比較例1〜3は、最終圧延加工度が80%未満であり、300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の平均結晶粒径が4μm超であるため、引張強さが不良であった。
比較例4〜6は、Cu-Pd合金がXを含んでいないため、引張強さが不良であった。
実施例1〜12は、いずれも水素透過係数が良好(水素透過率が良好)で、引張強さも良好であった。
比較例1〜3は、最終圧延加工度が80%未満であり、300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の平均結晶粒径が4μm超であるため、引張強さが不良であった。
比較例4〜6は、Cu-Pd合金がXを含んでいないため、引張強さが不良であった。
11 加熱炉
12 一次側水素配管
13 二次側水素配管
14 水素透過膜
12 一次側水素配管
13 二次側水素配管
14 水素透過膜
Claims (10)
- 組成式:PdaCubXc
(X:Al、Ga及びInの少なくとも1種、a:43〜49at%、b:1-a-c、c:0.02〜2at%)
で表され、
300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の平均結晶粒径が4μm以下となる水素透過性銅合金。 - 300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の平均結晶粒径が2μm以下となる請求項1に記載の水素透過性銅合金。
- 300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の最大結晶粒径が10μm以下となる請求項1又は2に記載の水素透過性銅合金。
- 300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の最大結晶粒径が5μm以下となる請求項3に記載の水素透過性銅合金。
- 300℃で20時間の熱処理を行ったときに、β相の結晶粒径の標準偏差が1μm以下となる請求項1〜4のいずれかに記載の水素透過性銅合金。
- 前記XがAlであり、前記cが0.2〜2at%である請求項1〜5のいずれかに記載の水素透過性銅合金。
- 前記銅合金が最終圧延加工度80%以上の圧延銅合金である請求項1〜6のいずれかに記載の水素透過性銅合金。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の銅合金でできた水素透過膜。
- 厚みが1〜200μmである請求項8に記載の水素透過膜。
- 請求項8又は9に記載の水素透過膜を用いた水蒸気改質装置。
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WO2023037851A1 (ja) * | 2021-09-09 | 2023-03-16 | 田中貴金属工業株式会社 | PdCu合金からなる水素透過膜及び水素透過膜による水素精製方法 |
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2012
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