JP2013207136A - 太陽電池モジュール用封止材シート及びそれを用いた太陽電池モジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】密度0.910g/cm3以下であるポリエチレン系樹脂を用いた太陽電池モジュール用の封止材シートであって、封止材シート中に含有されるトリアリルイソシアヌレートの量が0.15質量%以上15.0質量%以下である太陽電池モジュール用の封止材シートとする。従来、架橋助剤としての作用しか知られていなかったトリアリルイソシアヌレートを密着性向上剤として使用することにより、密着性を向上することができる。
【選択図】図1
Description
まず、図1を参照しながら、本発明の一実施形態である太陽電池モジュール1を例として、本発明に係る封止材シートを用いた太陽電池モジュールの全体構成について簡単に説明する。
本発明の封止材シートの密着強化層を形成するために用いられる封止材組成物は、密度が0.900g/cm3以下の低密度ポリエチレンと、以下に説明する所定量のTAICとを、必須成分として含有する。又、モジュール化までのいずれかの課程において封止材シートに架橋処理を行う場合には、更に、架橋剤を含有したものであってもよい。この場合においては、架橋剤の含有量に対するTAIC含有量の比率を以下に説明する所定の比率とする。
本発明においては密度が0.910g/cm3以下の低密度ポリエチレン(LDPE)、好ましくは直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いる。直鎖低密度ポリエチレンはエチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、本発明においては、その密度が0.910g/cm3以下の範囲内、好ましくは、0.900g/cm3以下、より好ましくは0.870g/cm3以上0.890g/cm3以下の範囲である。この範囲であれば、封止材シートと、ガラス、金属、PET等との密着性が高まる。
本発明の封止材組成物は、多官能モノマーの官能基がアリル基であるトリアリルイソシアヌレート(TAIC)を所定の範囲の量で含有することを特徴とする。TAICは、従来よりオレフィン系樹脂の架橋助剤として広く用いられているものであるが、本発明の封止材組成物は、架橋助剤としての一般的な含有量を大きく上回る量のTAICを含有する。
封止材組成物の成分として架橋剤を用いる場合、架橋剤としては公知のものが使用でき、特に限定されない。例えば、公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐パーオキシ)ヘキシン‐3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス‐3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o‐メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシオクトエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシフタレート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン‐3、t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、又は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジクミルパーオキサイド、といったシラノール縮合触媒等を挙げることができる。架橋剤の使用量は、組成物中に0.015質量%以上1.5質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは0.02質量%以上1.0質量%以下の範囲である。
密着性向上剤として、TAICの他、更に、公知のシランカップリング剤を併用してもよい。シランカップリング剤は特に限定されないが、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤等を好ましく用いることができる。尚、これらは単独で又は2種以上を混合して使用することもできる。これらのうちでも、メタクリロキシ系シランカップリング剤を特に好ましく用いることができる。
本発明の封止材組成物においては、ラジカル重合開始剤となる上記の架橋剤と、それをクエンチするラジカル吸収剤とを併用することにより、架橋の程度を調整することができる。このようなラジカル吸収剤としては、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系の耐候安定化等が例示できる。架橋温度付近でのラジカル吸収能力が高い、ヒンダードフェノール系のラジカル吸収剤が好ましい。ラジカル吸収剤の使用量は、組成物中に0.01質量%以上3質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下の範囲である。この範囲内であれば適度に架橋反応を抑制し、透明基板と封止材の密着性を向上させることができる。
太陽電池モジュール用封止材には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、本発明の封止材組成物から作製された封止材に耐候性を付与するための耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれ封止材組成物中に0.001質量%以上5質量%以下の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、封止材組成物に対して、長期に亘って安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
本発明の封止材シートは、上記において説明した封止材組成物をシート状又はフィルム状に成形加工したものである密着強化層を備える封止材シートである。尚、本発明におけるシート状とはフィルム状も含む意味であり両者に差異はない。
本発明の太陽電池モジュール1を構成する裏面保護シート6は特に限定されないが、一般に、樹脂シート、アルミ箔等の金属箔、又はそれらの積層体が使用される。樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等、各種の樹脂シートを使用することができる。これらは単独層であってもよく、従来公知の接着剤等で積層された複数層からなる積層体であってもよい。
本発明の太陽電池モジュール1は、封止材層である前面封止材層3及び背面封止材層5の少なくとも一方に本発明の封止材シート又は本発明の多層封止材シートを使用するものである。
太陽電池モジュール1は、例えば、上記の透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、及び裏面保護シート6からなる部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。尚、上述した密着強化層中のTAICによる低密度ポリエチレンの濡れ性の向上等による密着性の向上効果は、この加熱圧着成形時に、特に顕著に促進されるものと考えられる。
(単層のシート)
下記表1の組成の封止材組成物を混合し単層用のブレンドとした。上記ブレンドをφ30mm押出し機、200mm幅のTダイスを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度210℃、引き取り速度1.1m/minで総厚400μmの単層の太陽電池モジュール用封止材を作製した(実施例1〜3、比較例1〜3)。
又、下記表2の組成の封止材組成物を混合し3層の多層共押し出し層のシートを成型するための内層用及び外層用のブレンドとした。上記ブレンドを、それぞれ、φ30mm押出し機、200mm幅のTダイスを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度210℃、引き取り速度1.1m/minでフィルム成型し、それらを積層して、3層の多層共押し出し層のシートの封止材シートを作製した。この封止材シートの層厚は、総厚を400μmとし、外層:内層:外層の厚さの比を1:5:1とした。(実施例4、比較例4)。
シラン変性透明樹脂(表1及び2において「Si」と表記):密度0.881g/cm3であり、190℃でのMFRが2g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)98質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とを混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.884g/cm3、190℃でのMFRが1.8g/10分であるシラン変性透明樹脂を得た。
耐候性マスターバッチ(表1及び2において「耐候」と表記):密度0.880g/cm3のチーグラー直鎖状低密度ポリエチレンを粉砕したパウダー100質量部に対して、ベンゾフェノール系紫外線吸収剤3.8質量部とヒンダードアミン系光安定化剤5質量部と、リン系熱安定化剤0.5質量部とを混合して溶融、加工し、ペレット化したマスターバッチを得た。
重合開始剤コンパウンド樹脂1(表1及び2において「重合1」と表記):密度0.880g/cm3、190℃でのMFRが3.1g/10分のM−LLDPEペレット100質量部に対して、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン(重合開始剤A)0.033質量部を含浸させコンパウンドペレットを得た。尚、封止材組成物中の架橋剤の含有量(質量%)を表1及び表2中にそれぞれ示した。
重合開始剤コンパウンド樹脂2(表1及び2において「重合2」と表記):密度0.880g/cm3、190℃でのMFRが3.1g/10分のM−LLDPEペレット100質量部に対して、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン(重合開始剤A)0.066質量部を含浸させコンパウンドペレットを得た。尚、封止材組成物中の架橋剤との含有量(質量%)を表1及び表2中にそれぞれ示した。
重合開始剤コンパウンド樹脂3(表1及び2において「重合3」と表記):密度0.880g/cm3、190℃でのMFRが3.5g/10分のM−LLDPEペレット100質量部に対して、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン(重合開始剤A)0.041質量部を含浸させコンパウンドペレットを得た。
M−LLDPE(表1及び2において「ML」と表記):密度0.901g/cm3、190℃でのMFRが2.0g/10分のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン
TAIC(表1及び2において「TAIC」と表記):トリアリルイソシアヌレート(TAIC)(Statomer社製、商品名SR533)を、封止材組成物中の含有量(質量%)が表1及び2に記載の含有量となるように添加量を調整した。
[金属密着性]
15mm幅にカットした実施例、比較例の封止材シートを、それぞれ酸化亜鉛板(75mm×50mm×3mm)上に密着させて、下記の熱ラミネート条件(a)〜(d)により、真空加熱ラミネータ処理を行い、それぞれの実施例、比較例について太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。これらの太陽電池モジュール評価用サンプルについて、下記の試験条件における密着強度を測定して金属密着性を評価した。
(熱ラミネート条件)
(a)真空引き:5.0分
(b)加圧(0kPa〜100kPa):1.5分
(c)圧力保持(100kPa):8.0分
(d)温度150℃
(金属密着強度(N/15mm)の試験方法)
剥離試験方法:上記太陽電池モジュール評価用サンプルにおいて、酸化亜鉛板上に密着している封止材シートを、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF−1150−H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行い金属密着強度を測定した。本試験においては、密着強度が5N/15mm以上であるものを好ましい金属密着性を備える封止材シートとして、評価し、密着強度が6.5N/15mm以上であるものを更に好ましいものとして評価した。結果を表3に示す。
[樹脂密着性]
酸化亜鉛板の代わりに表面未処理PET( ルミラーS10、TORAY社製:75mm×50mm×0.188mm)を用いた他は、上記と同じ構成、及び熱ラミネート条件で実施例、比較例について、太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。これらの太陽電池モジュール評価用サンプルについて、下記の試験条件における樹脂密着強度を測定して樹脂密着性を評価した。
(樹脂密着強度(N/15mm)の試験方法)
剥離試験方法:上記金属密着強度の試験方法と同じ方法及び条件において試験を行い、樹脂密着強度を測定した。本試験においては、密着強度が5N/15mm以上であるものを好ましい樹脂密着性を備える封止材シートとして評価し、度が5N/15mm以上であるものを好ましい金属密着性を備える封止材シートとして、評価し、密着強度が9.0N/15mm以上であるものを更に好ましいものとして評価した。結果を表3に示す。
[ガラス密着性]
酸化亜鉛板の代わりにガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)を用いた他は、上記と同じ構成、及び熱ラミネート条件で実施例、比較例について、太陽電池モジュール評価用サンプルを得た。これらの太陽電池モジュール評価用サンプルについて、下記の試験条件におけるガラス密着強度を測定して樹脂密着性を評価した。
(ガラス密着強度(N/15mm)の試験方法)
剥離試験方法:上記金属密着強度の試験方法と同じ方法及び条件において試験を行い、ガラス密着強度を測定した。本試験においては、密着強度が20N/15mm以上であるものを好ましい樹脂密着性を備える封止材シートとして評価した。結果を表3に示す。
(TAIC含有量測定方法)
1)60℃トルエン50mlに封止材シート1gを入れ2時間撹拌し封止材を溶解する。
2)常温に戻す。
3)メタノールを500ml滴下する。
4)一晩撹拌する。
5)析出した樹脂固形分をろ過する。
6)ろ液をエバポレーターで取り除く。
7)残った物質をメタノールでメスアップする。
8)島津製作所 GCMS−QP2010で定量測定する。
2 透明前面基板
3 前面封止材層
4 太陽電池素子
5 背面封止材層
6 裏面保護シート
Claims (8)
- 密着強化層を備える、単層又は多層共押し出し層の太陽電池モジュール用の封止材シートであって、
前記密着強化層は、密度0.910g/cm3以下であるポリエチレン系樹脂を含有してなり、
前記前記封止材シートが単層である場合には、前記単層の封止材シートは前記密着強化層からなり、
前記封止材シートが多層共押し出し層である場合には、前記密着強化層は、少なくともいずれか一方の最外層に積層されており、
前記密着強化層中のトリアリルイソシアヌレートの含有量が0.15質量%以上15.0質量%以下である密着強化層を備えることを特徴とする太陽電池モジュール用の封止材シート。 - 前記封止材シートのJIS K7210に準拠して測定した190℃、荷重2.16kgにおけるMFRが、0.08g/10min以上1.0g/10min未満である請求項1に記載の太陽電池モジュール用の封止材シート。
- 前記ポリエチレン系樹脂がメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール用の封止材シート。
- 前記ポリエチレン系樹脂は、少なくともα−オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなるシラン共重合体を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池モジュール用の封止材シート。
- 請求項1から4のいずれかに記載の封止材シートと、
ガラス基板と、
金属製の電極を備える太陽電池素子と、
裏面保護シートと、が積層されており、
前記裏面保護シートの前記封止材シートとの対向面には、密着性を向上するための表面処理が施されていないポリエチレンテレフタレート層が配置されている太陽電池モジュール。 - 密度0.910g/cm3以下のポリエチレン系樹脂と、トリアリルイソシアヌレートと、を含有する太陽電池モジュール用の封止材組成物であって、
架橋剤を実質的に含有せず、前記トリアリルイソシアヌレートの含有量が、0.15質量%以上15.0質量%以下である太陽電池モジュール用の封止材組成物。 - 密度0.910g/cm3以下のポリエチレン系樹脂と、架橋剤と、トリアリルイソシアヌレートと、を含有する太陽電池モジュール用の封止材組成物であって、
前記架橋剤の含有量が0.015質量%以上0.5質量%未満であり、
前記トリアリルイソシアヌレートの含有量が、前記架橋剤の含有量の5倍以上30倍以下である太陽電池モジュール用の封止材組成物。 - トリアリルイソシアヌレートを用いた密着性向上方法であって、
ポリエチレン系樹脂を含む封止材組成物中にトリアリルイソシアヌレートを0.15質量%以上15.0質量%以下添加することによって、前記封止材組成物の金属及びポリエチレンテレフタレート樹脂への密着性を向上させる密着性向上方法。
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