JP2013203945A - 架橋性ゴム組成物およびゴム架橋物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐油性および引張応力に優れたゴム架橋物を与えることのできるニトリルゴム組成物および架橋性ニトリルゴム組成物、並びに該架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して得られるゴム架橋物を提供することを目的とする。
【解決手段】 共役ジエン単量体単位20〜89.9重量%を含有するカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)、並びに、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有し、原子移動ラジカル重合法で得られた共重合体(B)、からなるニトリルゴム組成物を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐油性および引張応力に優れたゴム架橋物を与えることのできるニトリルゴム組成物および架橋性ニトリルゴム組成物、並びに該架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して得られるゴム架橋物に関する。
従来から、ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)は、耐油性、機械的特性、耐薬品性等を活かして、ホースやチューブなどの自動車用ゴム部品の材料として使用されており、また、ニトリルゴムのポリマー主鎖中の炭素−炭素二重結合を水素化した水素化ニトリルゴム(水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)はさらに耐熱性に優れるため、ベルト、ホース、ダイアフラム等のゴム部品に使用されている。
かかる状況に対して、特許文献1は、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有する水素化ニトリルゴム、ポリアミン系架橋剤及び塩基性架橋促進剤を含有する架橋性ゴム組成物を提案している。該組成物により耐熱性等が改善されたゴム架橋物が得られるものの、耐油性および引張応力を更に改善することが求められていた。
特開2001−55471号公報
本発明は、耐油性および引張応力に優れたゴム架橋物を与えることのできるニトリルゴム組成物および架橋性ニトリルゴム組成物、並びに該架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して得られるゴム架橋物を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、
共役ジエン単量体単位を特定量含有するカルボキシル基含有ニトリルゴムと、
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有し、原子移動ラジカル重合法で得られた重合体とを、併用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、
共役ジエン単量体単位20〜89.9重量%を含有するカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)、並びに、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有し、原子移動ラジカル重合法で得られた重合体(B)、を含有してなるニトリルゴム組成物が提供される。
また、上記カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)のヨウ素価が120以下であることが好ましい。
本発明のニトリルゴム組成物において、上記カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10〜60重量%、共役ジエン単量体単位20〜89.9重量%、カルボキシル基含有単量体単位0.1〜20重量%およびα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位0〜50重量%を含有することが好ましい。
そして、上記重合体(B)が、重合体の末端にアミノ基を有するものであることが好ましい。
また、本発明によれば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有し、原子移動ラジカル重合法で得られ、重合体の末端にアミノ基を有する重合体(B)が提供される。
さらに、本発明によれば、上記に記載のニトリルゴム組成物に、架橋剤を配合してなる架橋性ニトリルゴム組成物、および、該架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
本発明によれば、耐油性および引張応力に優れたゴム架橋物を与えることのできるニトリルゴム組成物および架橋性ニトリルゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該架橋性ニトリルゴム組成物を架橋することにより得られ、耐油性および引張応力に優れたゴム架橋物を提供することができる。
図1は、原子移動ラジカル重合法の一例を示す概略図である。
本発明のニトリルゴム組成物は、共役ジエン単量体単位20〜89.9重量%を含有するカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)、並びに、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有し、原子移動ラジカル重合法で得られた重合体(B)、を含有してなる。
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)
まず、本発明で用いる共役ジエン単量体単位20〜89.9重量%を含有するカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)について説明する。本発明で用いる共役ジエン単量体単位20〜89.9重量%を含有するカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)(以下、単に「カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)」ということがある。)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、カルボキシル基含有単量体、共役ジエン単量体、および必要に応じてα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体を共重合することにより得られるニトリルゴムである。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されず、たとえば、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐油性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
カルボキシル基含有単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能であり、かつ、エステル化等されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基を1個以上有する単量体であれば特に限定されない。カルボキシル基含有単量体を用いることにより、ニトリルゴムに、カルボキシル基を導入することができる。
本発明で用いるカルボキシ基含有単量体としては、たとえば、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体などが挙げられる。また、カルボキシル基含有単量体には、これらの単量体のカルボキシル基がカルボン酸塩を形成している単量体も含まれる。さらに、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の無水物も、共重合後に酸無水物基を開裂させてカルボキシル基を形成するので、カルボキシル基含有単量体として用いることができる。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、フマル酸やマレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルマロン酸、テラコン酸などが挙げられる。また、α,β−不飽和多価カルボン酸の無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
カルボキシル基含有単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。これらの中でも、本発明の効果がより一層顕著になることから、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体が好ましく、マレイン酸モノアルキルエステルがより好ましく、マレイン酸モノn−ブチルが特に好ましい。なお、上記アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、2〜8が好ましい。
カルボキシル基含有単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。カルボキシル基含有単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性が低下するおそれがある。一方、多すぎると、ゴム組成物のスコーチ安定性が悪化したり、得られるゴム架橋物の耐疲労性が低下するおそれがある。
また、本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)は、得られる架橋物がゴム弾性を有するものとするために、共役ジエン単量体単位を20〜89.9重量%含有する。
共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。共役ジエン単量体は一種単独でも、複数種を併用してもよい。
共役ジエン単量体単位(水素化されている部分も含む)の含有量は、全単量体単位に対して、20〜89.9重量%、好ましくは30〜88.8重量%、特に好ましくは30〜79.5重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物のゴム弾性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐熱性や耐化学的安定性が損なわれる可能性がある。
また、本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)は、上記α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、カルボキシル基含有単量体単位、並びに、共役ジエン単量体単位に加えて、さらにα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を含有することが好ましい。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を形成するα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル」の略記。以下同様。);アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシプロピル、メタクリル酸4−エトキシブチル、アクリル酸6−メトキシヘキシル、メタクリル酸4−エトキシヘプチル、アクリル酸8−メトキシオクチルなどの炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸シアノブチルなどの炭素数2〜12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基を有する(メタ) アクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1〜12のフルオロアルキル基を有する(メタ) アクリル酸エステル;などが挙げられるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、アクリル酸n−ブチルが特に好ましい。これらは一種単独でも、複数種を併用してもよい。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは5〜45重量%である。
また、本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、カルボキシル基含有単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体および共役ジエン単量体とともに、これらと共重合可能なその他の単量体を共重合したものであってもよい。このようなその他の単量体としては、エチレン、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体などが例示される。
α−オレフィン単量体としては、炭素数が3〜12のものが好ましく、たとえば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
フッ素含有ビニル単量体としては、たとえば、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。その他の単量体の単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)のヨウ素価は、好ましくは120以下であり、より好ましくは60以下、さらに好ましくは40以下、特に好ましくは30以下である。カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)のヨウ素価が高すぎると、得られるゴム架橋物の耐熱性および耐オゾン性が低下するおそれがある。
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)のポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10〜200、より好ましくは15〜150、さらに好ましくは15〜100、特に好ましくは30〜70である。カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)のポリマームーニー粘度が低すぎると、得られるゴム架橋物の機械特性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると、ニトリルゴム組成物の加工性が低下する可能性がある。
また、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)におけるカルボキシル基の含有量、すなわち、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)100g当たりのカルボキシル基のモル数は、好ましくは5×10−4〜5×10−1ephr、より好ましくは1×10−3〜1×10−1ephr、特に好ましくは5×10−3〜6×10−2ephrである。カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)のカルボキシル基含有量が少なすぎると得られるゴム架橋物の機械的強度が低下するおそれがあり、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)の製造方法は、特に限定されないが、乳化剤を用いた乳化重合により上述の単量体を共重合して共重合体ゴムのラテックスを調製し、必要に応じてこれを水素化することにより製造することが好ましい。乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等の通常用いられる重合副資材を使用することができる。
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸及びリノレン酸等の脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤;などが挙げられる。乳化剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部である。
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物が好ましい。重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。
分子量調整剤としては、特に限定されないが、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;α−メチルスチレンダイマー;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の含硫黄化合物等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。分子量調整剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜0.8重量部である。
乳化重合の媒体には、通常、水が使用される。水の量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部である。
乳化重合に際しては、さらに、必要に応じて安定剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができる。これらを用いる場合においては、その種類、使用量とも特に限定されない。
そして、必要に応じて、得られた共重合体に対して、共役ジエン単量体単位の二重結合を選択的に水素化することにより、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)を製造することができる。なお、水素化を行う場合に用いる水素化触媒の種類と量、水素化温度などは、公知の方法に準じて決めればよい。
重合体(B)
本発明で用いる重合体(B)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有し、原子移動ラジカル重合法で得られた重合体である。
なお、本発明の効果がより一層顕著になることから、重合体(B)が、重合体の末端にアミノ基を有することが好ましい。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成するα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されず、上記カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)の場合と同様のものが例示されるが、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。なお、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは15〜85重量%、さらに好ましくは20〜80重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が上記範囲にある場合に、得られるゴム架橋物の耐油性および耐寒性が良好になる。
また、重合体(B)は、本発明の効果がより一層顕著になることから、さらにα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を含有することが好ましい。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を形成するα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、上記カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)の場合と同様のものが例示されるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシプロピルなどの炭素数2〜5のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、アクリル酸2−メトキシエチルが特に好ましい。なお、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0〜90重量%、より好ましくは15〜85重量%、さらに好ましくは20〜80重量%である。
また、全単量体単位に対する、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位とα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の合計含有量は、好ましくは80〜100重量%である。
本発明で用いる重合体(B)は、共役ジエン単量体単位を含有していてもよい。共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体としては、上記カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)の場合と同様のものが例示されるが、1,3−ブタジエンが好ましい。共役ジエン単量体は、1種単独でも、複数種を併用しても良い。
なお、共役ジエン単量体単位の含有量としては、好ましくは0〜15重量%、より好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0重量%(共役ジエン単量体単位を有さない。)である。共役ジエン単量体単位の含有量が少ないほど、得られるゴム架橋物の耐熱性が良好なものとなる。
また、本発明で用いる重合体(B)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体および共役ジエン単量体と共重合可能なその他の単量体を共重合したものであっても良い。このようなその他の単量体としては、エチレン、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体などが例示され、その具体例としては上記カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)の場合と同様のものが例示される。
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。その他の単量体の単位の含有量は、重合体(B)の全単量体単位に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
本発明で用いる重合体(B)は、原子移動ラジカル重合法で得られた重合体である。
原子移動ラジカル重合法は、遷移金属錯体を触媒とし、有機ハロゲン化合物を重合開始剤とするラジカル重合法であって、重合中のポリマー成長末端のラジカルを有する「活性種」の作用により、未反応単量体をラジカル重合していくものである。そのため原子移動ラジカル重合反応が終了すると、得られた重合体の一方の末端には、有機ハロゲン化合物の残基(ハロゲンが脱離した形態のもの)が結合し、もう一方の末端には脱離したハロゲン原子が結合したものになる。
原子移動ラジカル重合法は、従来公知のラジカル重合法であり、例えば、特表平10−509475号、Polymer Journal,vol.38,No.10,pp1023-1034(2006)、特表2005−524743号、特開2000−186126号、特開平11−116606号などに記載の方法に準じて、実施することができる。
上記原子移動ラジカル重合法の触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、7、8、9、10、11族の遷移金属錯体が好ましく、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体がさらに好ましく、1価の銅の錯体が特に好ましい。
1価の銅の錯体を形成する1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅等であるが、塩化第一銅が好ましい。
銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子が好適に使用されるが、2,2′−ビピリジンが好ましい。
上記遷移金属錯体中の遷移金属の使用量は、重合に用いる単量体1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.05モル、さらに好ましくは0.001〜0.02モル、特に好ましくは0.002〜0.01モルである。
また、上記遷移金属錯体を形成するための配位子の使用量は、遷移金属1モルに対して、好ましくは1〜5モル、さらに好ましくは2〜4モル、特に好ましくは3モルである。
上記原子移動ラジカル重合法の重合開始剤として用いられる有機ハロゲン化合物としては、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物であれば特に限定されないが、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物およびベンジル位にハロゲンを有する化合物が好ましく、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物が特に好ましい。α位にハロゲンを有するカルボニル化合物の具体例としては、2−ブロモイソ酪酸メチル(2−ブロモ−2−メチル−プロパン酸メチル)、2−クロロ−2−エチル−プロパン酸エチル、2−ブロモ−2−エチル−ブタン酸メチル、2−ヨード−2−エチル−ブタン酸メチル、2−ブロモ−2−メチル−ペンタン酸メチルなどが挙げられるが、炭素数が4〜15のα位にハロゲンを有するカルボニル化合物が好ましく、炭素数が4〜8のα位にハロゲンを有するカルボニル化合物がより好ましく、炭素数が4〜8のα位に臭素原子を有するエステルがさらに好ましく、2−ブロモイソ酪酸メチルが特に好ましい。
なお、ベンジル位にハロゲンを有する化合物としては、塩化ベンジルや臭化ベンジルなどが挙げられる。
有機ハロゲン化合物の使用量は、上記遷移金属1モルに対して、好ましくは1〜5モル、さらに好ましくは1〜3モル、特に好ましくは2モルである。
原子移動ラジカル重合法は、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としては、原子移動ラジカル重合を阻害しない有機溶媒であれば特に限定されず、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;等が挙げられが、カーボネート系溶媒が好ましく、エチレンカーボネートが特に好ましい。
また、原子移動ラジカル重合は、40〜90℃で行うことが好ましく、50〜80℃で行うことが特に好ましい。
重合体(B)のH−NMRによって測定した数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは2,000〜50,000、特に好ましくは2,000〜10,000である。重合体(B)の数平均分子量(Mn)が上記範囲にある場合に、本発明の効果がより一層顕著になる。
なお、H−NMRによって測定した数平均分子量(Mn)とは、上述の原子移動ラジカル重合法で得られる、重合体の一方の末端には有機ハロゲン化合物の残基(ハロゲンが脱離した形態のもの)が結合し、もう一方の末端には脱離したハロゲン原子が結合した重合体(B)を、H−NMRで測定し、有機ハロゲン化合物の特定の炭素原子に結合しているプロトン由来のピーク面積を基準とし、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位等の他の単量体単位の特定の炭素原子に結合しているプロトン由来のピーク面積との比を求め、有機ハロゲン化合物に対する他の単量体単位の割合を算出し、分子量を積算することにより求めた数平均分子量で、具体的には後述の実施例に記載したものに準じれば良い。
また、本発明で用いる重合体(B)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有し、原子移動ラジカル重合法で得られ、重合体の末端にアミノ基を有する重合体であることが好ましい。重合体(B)が、重合体の末端にアミノ基を有する重合体である場合には、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)中のカルボキシル基と、末端にアミノ基を有する重合体(B)が反応して、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)に重合体(B)がグラフト結合した重合体が得られ易く、本発明の効果がより一層顕著になる。
重合体の末端にアミノ基を有する重合体(B)(以下、「末端アミノ基重合体(B)」ということがある。)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば上述の重合方法により片方の末端にハロゲン原子が結合した重合体(B)を含有する重合体溶液(x)を得た後に30℃以下に冷却し、アンモニア水を加え、60℃以上に再度加熱し、末端のハロゲン原子をアミノ基に置換することにより得ることができる。この場合において、不純物を取り除くために、30℃以下に冷却した重合体溶液(x)にイオン交換水を加えて重合体(B)を沈殿させ、ろ過して得られた重合体(B)を乾燥した後、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの有機溶媒に再溶解させて、得られた片方の末端にハロゲン原子が結合した重合体(B)を含有する重合体溶液(y)に、アンモニア水を加え、60℃以上に加熱し、末端のハロゲン原子をアミノ基に置換することにより得ることもできる。なお、末端アミノ基重合体(B)の溶液から、末端アミノ基重合体(B)を単離するには、30℃以下に冷却し、多量のイソプロピルアルコールやトルエンなどの貧溶媒を加えて、末端アミノ基重合体(B)を沈殿させ、ろ過して得られた末端アミノ基重合体(B)を乾燥すれば良い。
ニトリルゴム組成物
本発明のニトリルゴム組成物は、共役ジエン単量体単位20〜89.9重量%を含有するカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)、並びに、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有し、原子移動ラジカル重合法で得られた重合体(B)、を含有してなる。
本発明のニトリルゴム組成物中の、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)と重合体(B)の含有割合は、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)100重量部に対し、重合体(B)を1〜70重量部含有することが好ましく、5〜50重量部含有することがより好ましく、10〜40重量部含有することが特に好ましい。
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)と重合体(B)の含有割合が上記範囲にある場合に、得られるゴム架橋物が耐油性および引張応力に優れたものになり易い。
本発明のニトリルゴム組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲で、上述したカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)および重合体(B)以外のその他の重合体を配合してもよい。その他の重合体としては、エチレン−アクリル酸共重合体ゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムなどを挙げることができる。その他の重合体を配合する場合における、ゴム組成物中の配合量は、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)および重合体(B)の合計100重量部に対して、好ましくは30重量部以下であり、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
架橋性ニトリルゴム組成物
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、上記ニトリルゴム組成物と、架橋剤とを含有してなるものである。本発明で使用される架橋剤は、本発明のニトリルゴム組成物を架橋できるものであれば良く、硫黄架橋剤、有機過酸化物架橋剤またはポリアミン架橋剤などが挙げられ、これらのなかでも、耐圧縮永久歪み性改善の観点から、ポリアミン架橋剤が好ましい。
ポリアミン架橋剤は、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNHで表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物および架橋時にその化合物の形態になるものが好ましい。その具体例として、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩などの脂肪族多価アミン類;2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)などの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド構造を2つ以上有する化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが特に好ましい。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物中における、架橋剤の配合量は、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の機械特性および耐圧縮永久歪み性が悪化するおそれがある。一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐疲労性が悪化する可能性がある。
また、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、塩基性架橋促進剤をさらに含有していることが好ましい。塩基性架橋促進剤をさらに含有させることにより、本発明の効果がより一層顕著になる。
塩基性架橋促進剤の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(以下「DBU」と略す場合がある)及び1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(以下「DBN」と略す場合がある)、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メトキシエチルイミダゾール、1−フェニル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−エトキシイミダゾール、1−メチル−4−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−4−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−アミノイミダゾール、1−メチル−4−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール、1−メチル−5−ニトロベンゾイミダゾール、1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−フェニルイミダゾリン、1−メチル−2−ベンジルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−メチル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾリンなどの環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤;テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−オルト−トリルグアニジン、オルトトリルビグアニドなどのグアニジン系塩基性架橋促進剤;n−ブチルアルデヒドアニリン、アセトアルデヒドアンモニアなどのアルデヒドアミン系塩基性架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤が好ましく、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5がさらに好ましく、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7が特に好ましい。なお、上記環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤は、有機カルボン酸やアルキルリン酸などと塩を形成していても良い。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物中における、塩基性架橋促進剤の配合量は、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。塩基性架橋促進剤の配合量が少なすぎると、架橋性ニトリルゴム組成物の架橋速度が遅過ぎて架橋密度が低下する場合がある。一方、配合量が多すぎると、架橋性ニトリルゴム組成物の架橋速度が速すぎてスコーチを起こしたり、貯蔵安定性が損なわれる場合がある。
また、本発明の架橋性ゴム組成物には、上記以外に、ゴム分野において通常使用される配合剤、たとえば、カーボンブラックやシリカなどの補強性充填材、炭酸カルシウムやクレイなどの非補強性充填材、塩基性架橋促進剤以外の架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、顔料などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を配合することができる。
架橋性ニトリルゴム組成物の調整
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物の調整方法は、特に限定されないが、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)、重合体(B)および架橋剤を混合する。
混合方法は、特に限定されないが、非水系で混合(ドライブレンド)することが好ましい。
具体的には、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)と重合体(B)を混合する際に、架橋剤および熱に不安定な架橋助剤などを除いた各成分を添加し、好ましくは、10〜200℃、より好ましくは20〜170℃で、バンバリーミキサ、ブラベンダーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で混練し、ロールなどに移して架橋剤や熱に不安定な架橋助剤などを加えて、好ましくは10〜80℃の条件で、二次混練することにより調製できる。
なお、混合機で混練する際に、カーボンブラック、シリカ、老化防止剤などの各種配合剤や、その他のゴムを同時に混合してもよい。
このようにして得られる本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、コンパウンドムーニー粘度〔ML1+4、100℃〕が、好ましくは10〜200、より好ましくは15〜180、さらに好ましくは20〜150であり、加工性に優れるものである。
ゴム架橋物
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜6時間である。
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、耐油性および引張応力に優れるものである。
このため、本発明のゴム架橋物は、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、ウェルヘッドシール、空気圧機器用シール、エアコンディショナの冷却装置や空調装置の冷凍機用コンプレッサに使用されるフロン若しくはフルオロ炭化水素または二酸化炭素の密封用シール、精密洗浄の洗浄媒体に使用される超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の密封用シール、転動装置(転がり軸受、自動車用ハブユニット、自動車用ウォーターポンプ、リニアガイド装置及びボールねじ等)用のシール、バルブ及びバルブシート、BOP(Blow Out Preventar)、プラターなどの各種シール材;インテークマニホールドとシリンダヘッドとの連接部に装着されるインテークマニホールドガスケット、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板及び負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;印刷用ロール、製鉄用ロール、製紙用ロール、工業用ロール、事務機用ロールなどの各種ロール;平ベルト(フィルムコア平ベルト、コード平ベルト、積層式平ベルト、単体式平ベルト等)、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト等)、Vリブドベルト(シングルVリブドベルト、ダブルVリブドベルト、ラップドVリブドベルト、背面ゴムVリブドベルト、上コグVリブドベルト等)、CVT用ベルト、タイミングベルト、歯付ベルト、コンベアーベルト、油中ベルトなどの各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジェターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材などの減衰材ゴム部品;ダストカバー、自動車内装部材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、化粧品、及び医薬品の分野、食品と接触する分野、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することができる。
これらのなかでも、本発明のゴム架橋物は、シール材、ガスケット、ベルトまたはホースとして好適に用いることができ、シール材として特に好適である。
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。なお、試験、評価は以下によった。
ヨウ素価
ニトリルゴムのヨウ素価は、JIS K 6235に準じて測定した。
カルボキシル基含有量
2mm角のニトリルゴム0.2gに、2−ブタノン100mlを加えて16時間攪拌した後、エタノール20mlおよび水10mlを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、ニトリルゴム100gに対するカルボキシル基のモル数として求めた(単位はephr)。
ニトリルゴムの組成
カルボキシル基含有ニトリルゴムを構成する各単量体単位の含有割合は、以下の方法により測定した。
すなわち、マレイン酸モノn−ブチル単位の含有割合は、上記「カルボキシル基含有量」の測定方法により、カルボキシル基含有ニトリルゴム100gに対するカルボキシル基のモル数を求め、求めたモル数をマレイン酸モノn−ブチル単位の量に換算することにより算出した。
1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)の含有割合は、水素添加反応前のカルボキシル基含有ニトリルゴムのヨウ素価を上記方法で測定することにより算出した。
アクリロニトリル単位の含有割合は、JIS K6383に従い、ケルダール法により、カルボキシル含有ニトリルゴム中の窒素含量を測定することにより算出した。
アクリル酸n−ブチル単位の含有割合は、上記で求めたマレイン酸モノn−ブチル単位、1,3−ブタジエン単位、および、アクリロニトリル単位の含有割合から、計算により求めた。
ムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)
ニトリルゴムのムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)は、JIS K6300に従って測定した(単位は〔ML1+4、100℃〕)。
常態物性(引張応力)
架橋性ゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレス成形してシート状のゴム架橋物を得た。次いで、得られたゴム架橋物をギヤー式オーブンに移して170℃で4時間二次架橋し、得られたシート状のゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の20%引張応力および50%引張応力を測定した。
耐油浸漬試験
上記常態物性の評価と同様にして、シート状のゴム架橋物を得た後、該ゴム架橋物を、温度40℃、72時間の条件で、試験油(イソオクタン/トルエン/エタノール=40/40/20(体積比))に、72時間浸漬することにより、耐油浸漬試験を行った。具体的には、試験油に浸漬前後のゴム架橋物の体積を測定し、浸漬後の体積変化率△V(単位:%)を「体積変化率△V=([油浸漬後の体積−油浸漬前の体積]/油浸漬前の体積)×100」にしたがって算出することで、耐油性の評価を行った。この場合において、[油浸漬後の体積−油浸漬前の体積]が負の値になる場合には、その絶対値を入れて計算を行う。
体積変化率△Vの値が小さいほど、油による膨潤の度合いが小さく、耐油性に優れると判断できる。
原子移動ラジカル重合法で得られた重合体の数平均分子量(Mn)および組成
製造例2および3で得られた、60℃で24時間乾燥後(アンモニア水と接触させる前のもの)のアクリロニトリルとアクリル酸2−メトキシエチルの共重合体のH−NMRを、測定装置(商品名「AVANCEIII500」、BRUKER社製)を用いて測定し、共重合体の数平均分子量(Mn)および組成を求めた。
具体的には、下記の構造式の丸で囲んだ位置の炭素原子に結合しているプロトン由来のピーク面積をそれぞれ求め、2−ブロモイソ酪酸メチルのプロトン由来のピーク面積を基準とし、アクリロニトリルとアクリル酸2−メトキシエチルのプロトン由来のピーク面積との比(各炭素原子に結合しているプロトンの数を計算に入れる)から、2−ブロモイソ酪酸メチル1モルに対する、共重合体中のアクリロニトリルとアクリル酸2−メトキシエチルのモル数を求め、それぞれの分子量をかけ算することにより、共重合体の分子量および組成を算出した。
なお、下記の構造式は、ピーク面積の測定対象となるプロトンが結合している炭素原子の位置を示すためのもので、便宜上、原子移動ラジカル重合する前の単量体の形態で示してある。
Figure 2013203945
Figure 2013203945
Figure 2013203945
製造例1(カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)の製造)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル20部、アクリル酸n−ブチル34部、マレイン酸モノn−ブチル6部、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン40部を仕込んだ。そして、反応器を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、反応器内を攪拌しながら16時間重合反応した。そして、重合反応後、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去することにより、重合体ラテックス(固形分濃度30重量%)を得た。
次いで、上記にて得られた重合体ラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対するパラジウム含有量が1,000ppmになるように、オートクレーブ中に、上記にて製造した重合体ラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行った。
得られた水素添加反応後の重合体ラテックスに2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、60℃で12時間真空乾燥することにより、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)は、カルボキシル基含有量が2.9×10−2ephr、ヨウ素価が7、ポリマー・ムーニー粘度〔ML1+4、100℃〕は45であった。また、得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)は、アクリロニトリル単位20重量%、ブタジエン単位(水素化されている部分含む)40重量%、アクリル酸n−ブチル単位35重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%であった。
製造例2
(アクリロニトリルとアクリル酸2−メトキシエチルの共重合体(b1)の製造)
反応器に、CuCl(塩化第一銅)3部(相対モル比:1、触媒)、2,2′−ビピリジン14部(相対モル比:3、配位子)、アクリロニトリル119部(相対モル比:75)、アクリル酸2−メトキシエチル278部(相対モル比:71)、2−ブロモイソ酪酸メチル11部(相対モル比:2、重合開始剤)およびエチレンカーボネート408部(溶媒、融点である40℃以上に加温して液状としたもの)を入れ、Ar(アルゴン)で置換した後に、60℃に昇温し、原子移動ラジカル重合反応を26時間行った。
反応終了後、反応器を30℃以下に冷却し、溶媒であるエチレンカーボネートが固体状になったため、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)945部を加えて溶解させた後、貧溶媒であるイオン交換水30,000部を加えて共重合体を沈殿させ、ろ過した後、60℃で24時間乾燥した。
次に、乾燥後の共重合体378部を、ジメチルスルホキシド(DMSO)1650部に溶解させ、28重量%のアンモニア水(アンモニアの相対モル比:200)を加え、80℃で72時間反応させ、共重合体の末端に結合した臭素原子をアミノ基で置換した。
置換反応終了後、反応器を30℃以下に冷却し、貧溶媒であるイソプロピルアルコールを、共重合体の大部分が沈殿がするまで注入し、得られた沈殿物をろ過後、60℃で24時間真空乾燥して、末端にアミノ基を有する、アクリロニトリルとアクリル酸2−メトキシエチルの共重合体(b1)を得た。
上記のH−NMRで分析したところ、共重合体(b1)の数平均分子量(Mn)は5490であり、共重合体(b1)の組成は、アクリル酸2−メトキシエチル単位70重量%、アクリロニトリル単位30重量%であった。
また、共重合体(b1)の13C−NMRを、測定装置(商品名「AVANCEIII500」、BRUKER社製)を用いて測定したところ、アミノ基が結合した炭素原子のピークが観察され、共重合体(b1)にアミノ基が結合していることが確認された。さらに、末端CHBr基由来のH−NMRピークが、アンモニア水による置換反応によりCHNHになる結果、H−NMRのピークがシフトした事からも反応の進行が確認できた。
なお、製造例2の反応の概要を、図1に示す。
製造例3
(アクリロニトリルとアクリル酸2-メトキシエチル共重合体(b2)の製造)
反応器に、CuCl3部(相対モル比:1、触媒)、2,2′−ビピリジン14部(相対モル比:3、配位子)、アクリロニトリル272部(相対モル比:172)、アクリル酸2−メトキシエチル117部(相対モル比:30)、2−ブロモイソ酪酸メチル11部(相対モル比:2、重合開始剤)およびエチレンカーボネート408部(溶媒、融点40℃以上に加温して液状としたもの)を入れ、Arで置換した後に、60℃に昇温し、原子移動ラジカル重合反応を20時間行った。
反応終了後、反応器を30℃以下に冷却し、溶媒であるエチレンカーボネートが固体状になったため、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)945部を加えて溶解させた後、貧溶媒であるイオン交換水30,000部を加えて共重合体を沈殿させ、ろ過した後、60℃で24時間乾燥した。
次に、乾燥後の共重合体376部を、ジメチルスルホキシド(DMSO)1650部に溶解させ、28重量%のアンモニア水(アンモニアの相対モル比:200)を加え、80℃で72時間反応させ、共重合体の末端に結合した臭素原子をアミノ基で置換した。
置換反応終了後、反応器を30℃以下に冷却し、貧溶媒であるトルエンを、共重合体の大部分が沈殿がするまで注入し、得られた沈殿物をろ過後、90℃で48時間真空乾燥して、末端にアミノ基を有する、アクリロニトリルとアクリル酸2−メトキシエチルの共重合体(b2)を得た。
上記のH−NMRで分析したところ、共重合体(b2)の数平均分子量(Mn)は5800であり、共重合体(b2)の組成は、アクリル酸2−メトキシエチル単位30重量%、アクリロニトリル単位70重量%であった。
また、共重合体(b2)の13C−NMRを、測定装置(商品名「AVANCEIII500」、BRUKER社製)を用いて測定したところ、アミノ基が結合した炭素原子のピークが観察され、共重合体(b2)にアミノ基が結合していることが確認された。さらに、末端CHBr基由来のH−NMRピークが、アンモニア水による置換反応によりCHNHになる結果、H−NMRのピークがシフトした事からも反応の進行が確認できた。
実施例1
バンバリーミキサを用いて、製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)75部および製造例2で得られた共重合体(b1)25部に、FEFカーボンブラック(商品名:シーストSO、東海カーボン社製)50部、トリメリット酸エステル(商品名:アデカサイザーC−8、ADEKA社製、可塑剤)5部、4,4’−ジ−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名:ナウガード445、Crompton社製、老化防止剤)1.5部、ステアリン酸(滑剤)1部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(商品名:フォスファノールRL210、東邦化学工業社製、加工助剤)1部を添加して、110℃で5分間混練した。次いで、得られた混合物を、温度40℃にしたロールに移して、DBU(商品名:RHENOGRAN XLA−60(GE2014)、RheinChemie社製、DBU60%(ジンクジアルキルジフォスフェイト塩になっている部分を含む)並びにアクリル酸ポリマーと分散剤40%からなるもの、塩基性架橋促進剤)4部、および、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(商品名:Diak#1、デュポン・ダウ・エラストマー社製、ポリアミン架橋剤)1.0部を添加して混練し、架橋性ニトリルゴム組成物を得た。
そして、得られた架橋性ニトリルゴム組成物を用いて、常態物性(引張応力)および耐油性を測定した。結果を表1に示す。
実施例2
カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)75部および製造例2で得られた共重合体(b1)25部に代えて、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)76部および製造例3で得られた共重合体(b2)24部を用いた以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得た。
そして、得られた架橋性ニトリルゴム組成物を用いて、常態物性(引張応力)および耐油性を測定した。結果を表1に示す。
比較例1
カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)75部および製造例2で得られた共重合体(b1)25部に代えて、カルボキシル基含有ニトリルゴム(a1)100部を用いた以外は、実施例1と同様にして、架橋性ニトリルゴム組成物を得た。
そして、得られた架橋性ニトリルゴム組成物を用いて、常態物性(引張応力)および耐油性を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2013203945
表1より、カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)および原子移動ラジカル重合法で得られた重合体(B)からなるニトリルゴム組成物に、ポリアミン架橋剤を配合してなる架橋性ニトリルゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物は、耐油性および引張応力に優れる結果となった(実施例1および2)。
一方、原子移動ラジカル重合法で得られた重合体(B)を使用しないために本発明の要件を満たさない場合は、得られるゴム架橋物は、耐油性および引張応力に劣る結果となった(比較例1)。

Claims (7)

  1. 共役ジエン単量体単位20〜89.9重量%を含有するカルボキシル基含有ニトリルゴム(A)、並びに、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有し、原子移動ラジカル重合法で得られた重合体(B)、を含有してなるニトリルゴム組成物。
  2. 前記カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)のヨウ素価が120以下である請求項1に記載のニトリルゴム組成物。
  3. 前記カルボキシル基含有ニトリルゴム(A)が、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位10〜60重量%、共役ジエン単量体単位20〜89.9重量%、カルボキシル基含有単量体単位0.1〜20重量%およびα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位0〜50重量%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のニトリルゴム組成物。
  4. 前記重合体(B)が、重合体の末端にアミノ基を有するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のニトリルゴム組成物。
  5. α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有し、原子移動ラジカル重合法で得られ、重合体の末端にアミノ基を有する重合体(B)。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のニトリルゴム組成物に、架橋剤を配合してなる架橋性ニトリルゴム組成物。
  7. 請求項6に記載の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
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