JP2013202893A - 透明断熱シート - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の透明断熱シートの性能面及びコスト面での不十分さを克服して、良好な透過性と断熱性を併せ持つ透明断熱シートを、希少材料である高価な銀合金薄膜や酸化インジウム(ITO)薄膜を使用せずに、高性能な透明断熱シートを安価に提供すること。
【解決手段】プラスチックからなる透明な基体シート上に、導電性金属薄膜と当該導電性金属薄膜の上下に積層されたセラミック薄膜とから構成される多層膜を設けてなる透明断熱シートであって、前記導電性金属薄膜がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金であり、前記セラミック薄膜がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金の窒化膜、酸窒化膜及び/又は酸化膜を含むことを特徴とする透明断熱シート。
【選択図】図1

Description

本発明は、住居家屋・ビルの建物や自動車等の窓に使用して、夏季においては窓から入射する太陽熱エネルギーを遮蔽することにより冷房負荷を軽減し、冬季においては窓からの熱損失を防ぐことにより暖房負荷を軽減して、省エネルギーに寄与する透明断熱シートに関する。より詳細には、太陽エネルギーの光波長選択性に優れ、可視光透過性、紫外線遮蔽性、赤外線遮蔽性を高度に実現する透明断熱積層薄膜を透明フィルム上に成膜した多機能プラスチックシートに関する。
従来、光選択透過性を有する透明断熱シートとしては、熱線反射フィルム、透明断熱フィルム等の名称で市販され、透明断熱積層体としての光学薄膜等多くの提案がなされている。透明断熱積層体は透明セラミック薄膜の多層積層体でも可能であるが、セラミック薄膜のみで高度な光選択性を求めると多くの層数を必要とするため、中間層として屈折率の大きな金属膜を間に挟み、セラミック薄膜と金属膜との組み合わせで透明断熱積層体を形成させるのが一般的である。
例えば特許文献1には、その基本となる酸化チタン層/銀層/酸化チタン層の3層構成の透明断熱積層体(透明な熱反射鏡)が提案されている。
また、特許文献2には、ガラス基板上において、2層の銀層を透明誘電体の酸化インジウム層で挟んだ酸化インジウム層/銀層/酸化インジウム層/銀層/酸化インジウム層の5層構成の透明断熱積層体が開示されている。
更に、特許文献3には、透明なプラスチックフィルム上に、酸化インジウム層/銀層/酸化インジウム層/銀層/酸化インジウム層の5層構成の透明断熱積層体を、平行平板式箱型スパッタユニットを用いて、連続成膜することが提案されている。
従来提案されている、これらの透明断熱積層体やフィルム上の透明断熱シートにおいては、金属薄膜として反射率及び導電性が高い銀層が使用され、反射防止機能を持つ光補償層の誘電体層として酸化インジウム層が使われているのが一般的である。
これらの提案に基づく透明断熱材や透明断熱シート等の製品も多く市販されているが、市販の透明断熱シートの採用は一部に留まっており、近年住環境等での省エネルギーが緊急の課題となっているにもかかわらず、住宅やビル、自動車等に広く採用されるに至っていないのが現状である。
従来の透明断熱シートの普及が進まない原因としては、透明断熱積層体の性能面が不十分であることに加え、透明断熱シートは広い面積で使用されるベース資材であるにも関わらず、使用材料や製法面から価格が高価となっており、価格面においても不十分であることが挙げられる。
すなわち性能面からは、高い透明性(具体的には可視光透過率が70%以上)と高い断熱性(具体的には赤外線透過率が35%以下)との両立が求められるところ、透明性と断熱性とは相反する特性であって、このような特性を併せ持つ実用的な透明断熱シートは存在していないのが実情である。
また価格面からは、価格高の要因として、透明断熱積層体に多く使用される酸化インジウム層の出発材料であるインジウムがレアメタルであり、生産地も中国等に限られており、近年のフラットパネルディスプレイ等への採用による需要増加により非常な価格高騰を呈している状況がある。また、金属層として用いられる銀もまた高価な原材料であり、原材料自体が高価格であることによって、汎用的に使用可能な価格帯の透明断熱シートを製造することが困難であるという課題がある。
米国特許第4,337,990号 特許第2901676号公報 特許第4522320号公報
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、高価な銀や酸化インジウム(ITO)を使用することなく、安価に供給可能である汎用材料を出発原料として、高い透過性と断熱性とを併せ持つ透明断熱シートを提供すること、及び、この透明断熱シートを安定的に量産可能である製造方法を提供することを課題とする。
熱線反射機能をもつ導電性金属薄膜は、膜厚を薄くすることにより光を透過するようになるが、膜表面での反射が大きいため、金属薄膜単独では十分な可視光透過率が得られず、透明断熱性も十分ではない。本発明者らは、このような金属薄膜表面の反射を抑えるために、比較的屈折率の高いセラミック薄膜で金属膜を挟み込むことにより、熱線反射性即ち断熱性を確保しながら透明性を向上できることに着目して鋭意検討を重ねてきた。
その結果、導電性金属薄膜としてアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜、その上下に積層されるセラミック薄膜として、同一のアルミニウムターゲットから成膜される、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)及び/又は酸窒化アルミニウム(AlON)からなる薄膜を用いて構成される積層膜によって、価格面、性能面ともに充足する高性能な透明断熱シートが実現することを見出した。
すなわち本発明は、プラスチックからなる透明な基体シート上に、導電性金属薄膜と当該導電性金属薄膜の上下に積層されたセラミック薄膜とから構成される多層膜を設けてなる透明断熱シートであって、前記導電性金属薄膜がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金であり、前記セラミック薄膜がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金の窒化膜、酸窒化膜及び/又は酸化膜を含むことを特徴とする透明断熱シートに関する。
本発明の透明断熱シートは、熱線反射機能をもつ導電性金属薄膜であるアルミニウム及び/又はアルミニウム合金の薄膜を、セラミック薄膜であるアルミニウム及び/又はアルミニウム合金の窒化膜、酸窒化膜及び/又は酸化膜で挟み込んだ構造を有しており、光の波長域で可視域から赤外域に変わる波長780nm近辺において透過率が大きく変化し、可視光域においては光透過率が高く、かつ、赤外域においては光反射率が高い(すなわち光透過率が低い)という特性を有する。この特性のため、本発明の透明断熱シートは高い透明性と断熱性が両立される。
また本発明の透明断熱シートは、導電性金属薄膜層とセラミック層のどちらもがアルミニウムやアルミニウム合金を主成分とする材料から構成されているため、高価な貴金属やレアメタル類を用いる透明断熱体と比較すると材料価格からも極めて有利となり、従来品と比較して製造コストの大幅な削減が可能である。
本発明の透明断熱シートは、前記導電性金属薄膜の上下に積層された前記セラミック薄膜が、2層以上積層されており、前記積層されたセラミック薄層は、導電性金属薄膜に近い層の屈折率が相対的に大、導電性金属薄膜から離れた層の屈折率が相対的に小となっていることが好ましい。さらに、積層されたセラミック薄膜が、導電性金属薄膜に近い層から、屈折率が相対的に大から小の順である、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム(AlON)、又は酸化アルミニウム(Al)で構成されていることも好ましい。
屈折率の異なるセラミック薄膜を積層することで、導電性金属薄膜の表面での反射をより効率的に抑制し、良好な可視光透過率を得ることができる。また、積層したセラミック薄層を、導電性金属薄膜に近いほうから順に屈折率が大から小へとなるように配置することで、効率的に光選択性を向上できる。特に、窒化アルミニウム(AlN)、酸窒化アルミニウム(AlON)、又は酸化アルミニウム(Al)を組み合わせて用いると、優れた可視光透過率が得られると同時に、いずれも汎用的な材料であるアルミニウムと酸素と窒素とからセラミック薄膜を得ることが可能であるため、コスト的にも優れた透明断熱シートを得ることができる。
また本発明の透明断熱シートは、導電性金属薄膜がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金であって、当該アルミニウム及び/又はアルミニウム合金中に、Nd,Ni,Ag,Cu、Sn、Pd、N、Cから選択される1又は複数の元素を、0.1〜20wt%含有することも好ましい。
良好な透明断熱性を得るためには、可視光域での透過率と赤外光域での反射率とをそれぞれ高めることが必要であるが、そのいずれにおいても光吸収は少ないほうが好ましい。アルミニウムは可視光域で光吸収の少ない金属であるところ、Nd,Ni,Ag,Cu、Sn、Pdから選択される1又は複数の金属を少量(0.1〜20wt%)含有させると、赤外光域での光吸収も低減することが可能であり、より良好な透明断熱シートを得ることができる。また、窒素(N)、炭素(C)を含有させることにより、可視光透過率を向上させることが可能となる。
本発明の透明断熱シートは、導電性金属薄膜の膜厚が、1nm〜50nmであることが好ましい。
かかる範囲の膜厚とすることで、光吸収の少ない均一な膜であって、かつ、十分な光透過性を有する導電性金属薄膜を得ることが可能である。
また本発明の透明断熱シートは、導電性金属薄膜の上下に積層されるセラミック薄膜が、当該アルミニウム及び/又はアルミニウム合金の窒化アルミニウム(AlN)薄膜であり、当該窒化アルミニウム(AlN)薄膜の膜厚が10〜100nmであることが好ましい。
かかる範囲とすることで、可視光領域での反射防止効果を向上できるという効果がある。
また本発明は、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金をターゲットとして、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金からなる導電性金属薄膜を成膜する工程と、前記アルミニウム及び/又はアルミニウム合金をターゲットとして、酸素ガス及び/又は窒素ガスを含有するスパッタガスを用いて、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金の窒化膜、酸窒化膜及び/又は酸化膜を含むセラミック薄膜を成膜する工程と、を含むことを特徴とする、透明断熱積層体の製造方法に関する。
上記の製造方法によれば、同一のアルミニウム及び/又はアルミニウム合金をターゲットとして連続的に導電性金属薄膜とセラミック薄膜とを成膜し、透明断熱積層体を得ることができる。そのため、簡潔で合理的な工程によって、優れた透明断熱積層体を製造することができる。
また、前記の製造方法において、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金からなる導電性金属薄膜を成膜する工程において、スパッタガスとして、窒素ガス又はメタンガスを含むスパッタガスを用いて、窒素(N)又は炭素(C)を含む導電性金属薄膜を成膜することが好ましい。
かかる製造方法を用いると、より可視光透過性に優れた導電性金属薄膜が得られ、優れた透明断熱特性を有する透明断熱積層体を製造することができる。
上記の製造方法は、New Magnetic Hollow-cathode V型スパッタ法(以後N−MHVS法という)によって行うことが好ましい。
N−MHVS法とは後に詳述するとおりであるが、かかる方法によれば、低温プロセスにおいて均一な組成で欠陥の少ない良質な薄膜が得られ、また、スパッタガスに窒素ガス、メタンガス、酸素ガス等を含有させて反応性スパッタを行うことで、所望の組成を有するアルミニウム組成物からなる薄膜を得ることができるため、より良好な透明断熱特性を有する透明断熱積層体を安定的に効率よく製造することができる。
本発明の透明断熱シートは、高い透明性と断熱性とを併せ持ち、透明断熱特性に優れたシートであるとともに、導電性金属薄膜層とセラミック層のいずれもがアルミニウムやアルミニウム合金を主成分とする材料から構成されているため、高価な貴金属やレアメタル類を用いる透明断熱体と比較すると材料価格の点でも極めて有利となり、従来品と比較して製造コストの大幅な削減が可能である。本発明の透明断熱シートは、高い可視光透過率により、採光性、眺望性、開放感に優れるとともに、可視光での反射率が低く外界等の映り込みも少ないため、例えば、住居、大規模建築物、車両等の窓材や採光部材として広範囲に適用することが可能である。
本発明の透明断熱シートにおける多層膜の一例である、3層構造の積層膜(AlN/Al/AlN)を説明する側断面図である。 本発明の透明断熱シートの実施例である、セラミック薄膜を多層化した、より高性能な透明断熱シートである7層構造の積層膜(Al2O3/AlON/AlN/Al/AlN/AlON/Al2O3)を説明する側断面図である。 本発明の透明断熱シートを製造するための低ダメージ対向ターゲットスパッタ法に用いる、N−MHVスパッタ装置の構成を示す説明図である。 実施例1、4、7の透明断熱多層膜についての光透過率の波長依存性を示している。
(透明断熱シートの構成)
本発明の透明断熱シートに用いられるプラスチックからなる透明な基体シートとしては、透光性の良好な各種の高分子フィルム及び/又はシートを用いることができる。シートを構成する高分子は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリ塩化ビニール(PVC)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)等が挙げられる。
なお、「透明な」基体シートとは、可視光の透過率が極めて高いシートをいい、波長550nmの可視光透過率で85%以上であることが好ましい。基体シートの厚みは特に限定されないが、通常は5〜250μmのものが用いられる。
透明断熱シートに含まれる導電性金属薄膜は、光透過性を阻害しないように、一般に極薄膜と呼ばれる非常に薄い膜で構成されるところ、本発明におけるアルミニウム及び/又はアルミニウム合金の薄膜の場合も同様であり、その膜厚は1〜50nmであることが好ましい。膜厚が50nm以上では、高い光透過性を確保することが困難となり、また1nm以下では、膜形成が島状となり、光吸収が発生し、十分な断熱性を得るのが困難になる。
導電性金属薄膜を構成する金属はアルミニウム及び/又はアルミニウム合金であり、アルミニウム合金としては、アルミニウムとSi,Tiなどからなる一般的な合金でもよく、アルミニウムにNd,Ni,Ag,Cu、Sn、Pdから選択される1又は複数の金属を少量(0.1〜20wt%)添加したアルミニウム合金でもよい。例えば、アルミニウムにNdを1〜5wt%添加したアルミニウム合金、アルミニウムにCuを1〜20wt%添加したアルミニウム合金等が好適に使用できる。
また、アルミニウムにNやCをドープしたアルミニウム薄膜を用いることもでき、このような薄膜は、例えば、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金をスパッタ成膜するとき、スパッタガスとしてArガスに流量比0.1〜10%の窒素ガスやメタンガスを混入させて成膜することで得られる。
上述の導電性金属薄膜の上下には、セラミック薄膜が形成されている。なお、金属薄膜の「上」「下」とは、基体シートと金属薄膜との位置関係を見るときに基体シートにより近い側を「下」、基体シートと反対の側を「上」と称呼するものである。
本発明の透明断熱シートのセラミック薄膜は、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金の窒化膜、酸窒化膜及び/又は酸化膜を含み、このようなセラミック薄膜としては例えば、アルミニウムターゲットを用いた窒素や酸素による反応性スパッタ法で成膜された、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム及び酸窒化アルミニウムがある。特に、酸窒化アルミニウムとしては、その製造方法を制御することで酸素と窒素を所望の割合とした酸窒化アルミニウムを用いることができる。
本発明の透明断熱シートにおいて、セラミック薄膜は、導電性金属薄膜の上下に各1層が形成されている構成(つまり、導電性金属薄膜を含めて3層構造の透明断熱積層体)でもよく、導電性金属薄膜の上下それぞれに2層以上が積層された構成であってもよいが、より良好な断熱性を得るためには、2層以上が積層された構成とすることが好ましい。例えば、導電性金属薄膜の上下にそれぞれ2層のセラミック薄膜を積層した5層構造の透明断熱積層体や、導電性金属薄膜の上下にそれぞれ3層のセラミック薄膜を積層した7層構造の透明断熱積層体がある。
このような積層膜におけるセラミック薄膜は、金属薄膜の表面での反射を抑えて良好な可視光透過率を得るために、屈折率が比較的高く透明なセラミック薄膜が必要とされる。詳細には、セラミック薄膜は、屈折率が1.4〜2.5であることが好ましい。屈折率が1.4未満では、金属薄膜の膜表面での反射を効果的に抑えることが困難であり、2.5を越えると、可視光透過率を十分に確保することが困難となる。
セラミック層が積層されている場合、導電性金属薄膜に近い層の屈折率が相対的に大、導電性金属薄膜から遠い層の屈折率が相対的に小となっていることが好ましい。例えば、上記の範囲内の屈折率を有する薄膜を2層ないし3層にして用いることができる。
優れた断熱特性即ち赤外線領域での高反射を実現するためには、高屈折率薄膜と低屈折率薄膜を組み合わせることが重要で、屈折率の差は大きいほうが良い。一般に透明性を持つセラミック薄膜の中での高屈折率薄膜としては、TiO(光波長550nmにおいて屈折率2.4)、Nb(屈折率2.1)、AlN(屈折率2.1)などが挙げられ、低屈折率薄膜としては、SiO(屈折率1.5)、Al(屈折率1.6)などが挙げられる。このように異なる屈折率の薄膜を、薄膜干渉により近赤外線領域で反射率を選択的に強める膜厚にコントロールすることにより、選択的赤外線反射膜を作ることが可能となる。
上記の高屈折率薄膜と低屈折率薄膜の組み合わせにおいて、AlN(屈折率2.1)とAl(屈折率1.6)は同一のアルミニウムを出発材料としており、窒素及び酸素との反応性スパッタ法によって反応ガスを制御することで成膜することで得られる。本発明の透明断熱シートでは、例えば、屈折率が相対的に大から小の順である窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、又は酸化アルミニウムを適宜選択して用いることができる。
セラミック薄膜の膜厚は、10〜100nmであることが好ましく、より好ましくは10〜50nmである。膜厚がこの範囲を外れると、反射防止効果を発現できる領域が可視光領域を外れるという問題がある。
本発明の透明断熱シートの例として代表的な積層膜を図1、図2により説明する。
図1に示す透明断熱積層体はプラスチックの基体シート(1)上に積層されており、アルミニウム薄膜(2)の上下両側を屈折率の高い(屈折率2.1)窒化アルミニウム薄膜(3)で挟み込んだ3層構造の積層膜である。このような構成により熱線反射効果のある金属薄膜のアルミニウム薄膜表面の反射を抑えて可視光透過率を向上させ、赤外域では透過率を抑え反射率を高めることが可能になっている。
図2は、透明断熱特性を向上させるため、アルミニウム薄膜(2)の上下両側を3層のアルミニウム酸窒化薄膜で挟み込んだ7層構造の多層膜となっている。即ち、最下層(つまり基体シートに最も近い側)には、屈折率の比較的低い(屈折率1.6)酸化アルミニウム(Al)薄膜(5)を成膜し、次に中間的屈折率(1.8〜1.9)の酸窒化アルミニウム(AlOxNy)薄膜(4)を、そして高屈折率の高い(2.1)の窒化アルミニウム(AlN)薄膜(3)を成膜している。その上にアルミニウム薄膜(2)を成膜して、その上に窒化アルミニウム薄膜(3)、酸窒化アルミニウム薄膜(4)、酸化アルミニウム薄膜(5)の順序で積層した7層構造の積層膜が形成されている。
このセラミック薄膜の積層構造は、中間の酸窒化アルミニウム薄膜のない5層構造の積層膜を形成してもよく、また、窒化アルミニウム薄膜、酸化アルミニウム薄膜を繰り返す多層構造でもよい。透過光反射率を下げるためには、最外層(金属薄膜から最も遠い層)の屈折率が、その内側の層の屈折率よりも低いことが好ましい。そのため、金属層側に低屈折率のセラミック膜層を形成すると、間に高屈折率層を挟む必要が生じる。一方、金属層側に高屈折率のセラミック膜層を形成する構成にすれば、層数を少なくすることが可能である。このため図2の例では、金属薄膜の両側に高屈折率のセラミック膜層を形成し、順次外に向かって屈折率の低いセラミック膜層を配置する構成にしている。
さらに、本発明の透明断熱シートには、よく行われているように、基体シート(1)上にアンダーコート層を設けて、基体シートの保護膜とし、その上に透明断熱積層体を形成してもよい。また、透明断熱積層体の最上層の上に別のトップコート層を設けて、特性向上や保護機能を持たせても良い。
(製造方法)
本発明の透明断熱シートは、大略的には、基体であるプラスチックシート上に順次、金属薄膜とセラミック薄膜とを成膜することで製造され、金属薄膜とセラミック薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法やスパッタ法等の物理的蒸着(PVD)法、及び化学的蒸着(CVD)法等が挙げられる。より好ましい成膜方法として、PVD法の一種であるNew Magnetic Hollow-cathode V型スパッタ法(以下 N−MHVS法という)があり、かかる方法によれば、優れた金属薄膜・セラミック積層膜を安定的に形成することができる。
N−MHVS法は特許4473852号に詳細に説明されているが、通常のマグネトロンスパッタ法に比べ低温・低ダメージで成膜することが可能なスパッタ法である対向ターゲットスパッタ法(FTS法)を高性能化した方法である。
N−MHVS法によると、一般のマグネトロンスパッタ法に比べて、対向二重磁極による高密度プラズマを発生させることにより極めて低エネルギー(−300V以下のスパッタ電圧)で成膜が可能で、金属極薄膜においては、低温プロセスにおいて均一な組成で欠陥の少ない良質な薄膜が得られ、金属薄膜の導電性と膜表面の平滑性を向上することができる。またN−MHVS法による反応性スパッタで成膜されるセラミック膜においては、高密度プラズマの下での十分な反応性が確保され、表面が平滑で吸収の少ない金属酸窒化薄膜を形成することができ、金属薄膜やセラミック薄膜の表面に凹凸損傷を与えることなく積層することができる。
N−MHVS法の具体装置である、N−MHVスパッタ装置の詳細について図3により説明する。この装置においては、真空雰囲気内において(表示はしていない)、基体シート(1)に対して、ターゲット(11、21)を左右に相対向した位置に基体シート(1)に向かって開かれた状態で配しており、ターゲット背面のターゲット磁極(12、22)及びターゲットを囲むようにその周縁に沿って配置される永久磁石でなる補助磁極(13、23)との二重磁極により、高密度プラズマ(16)を形成させることができる。そして、対向ターゲットの基板反対面に配置されたスパッタガス供給口(14)と、基板近傍の両側に配置された反応ガス供給口(15、25)より反応ガスがそれぞれ供給される。そのため、反応性スパッタを行う場合に、スパッタターゲット近傍ではターゲット材料(金属)のみのスパッタが行われ、酸化、窒化等のプラズマ反応によるセラミック薄膜の形成は、基板近傍側で活性なスパッタ粒子が反応ガスと反応して反応薄膜が形成されるようになっている。このため、ターゲット表面は酸化や窒化等のプラズマ反応に曝されることがなく、安定した反応性スパッタが持続する構造となっている。
このような構成のターゲット構造のため、ターゲット磁極と補助磁極の二重磁極によって発生する強力なターゲット間磁場空間により、圧力の低い状態で、且つスパッタ電圧を非常に低下させることができる。また、強力な二重磁極により、プラズマの閉じ込め効果、及び二次電子等の荷電粒子の閉じ込め効果がより良好に発揮され、低温・低ダメージの成膜が可能となっている。
このN−MHVスパッタ装置を用いてセラミック薄膜を成膜する際には、酸窒化物となる金属材料をターゲット(11、21)に用い、成膜しようとする基体シート(1)を基板ホルダー(表示はしていない)にセットし、真空チャンバーを所定の真空度まで真空排気を行い、スパッタガス(Arガス)及び反応ガス(N、O)を所定量加えて、所定のスパッタパワーとスパッタ時間によるスパッタにより、所定の膜厚のセラミック薄膜が形成される。金属薄膜を成膜する場合は、反応ガスは供給せずスパッタガス(Arガス)のみの供給によりスパッタを行う。
従来、反応性スパッタ法によるセラミック薄膜は、反応性が十分行われないと可視光での透過率が悪く、光吸収が起こり、光学薄膜としての特性が得られにくいこともあったが、発明者らは、低ダメージ反応性スパッタ法であるN−MHVS法により、高密度プラズマによる低エネルギースパッタ法を確立し、反応性を十分高めることに成功した。そして、このN−MHVスパッタ装置において、ターゲット材料をアルミニウム金属に固定し、反応ガスとして酸素ガス及び窒素ガスを供給し、それぞれの分圧を制御していくと、AlN薄膜、AlOxNy薄膜及びAl薄膜を連続して成膜することが可能であり、且つ成膜されたセラミック薄膜の屈折率を、2.1〜1.6まで制御可能であることを確認した。
N−MHVスパッタ装置によれば、屈折率の異なる透明なセラミック薄膜を、屈折率に応じてその膜厚をナノオーダーの厚みで制御することが可能であるため、可視光透過率を維持しつつ、高い赤外線反射率を実現することができる。
最初に試験例として、各薄膜単層での成膜条件及びその成膜結果を記載し、その後それらを多層化した場合の実施例を記載する。
試験例1 アルミニウム薄膜の作成
基体シートとして50mm×50mm×100μmのPETフィルム(波長550nmの可視光透過率95%)を用いて、図3に示すN−MHVスパッタ装置により該シート上に膜厚10nmのAl薄膜を形成した。
詳細には、成膜する材料であるアルミニウムAl(純度5N)をターゲット(11、21)に設置して、上記PETフィルムを脱脂、洗浄、乾燥後、基体シートを基板ホルダーにセットする。その後、真空チャンバー内を10−5Pa以下に真空排気し、スパッタガスであるArガスを所定流量(99cc)供給して、真空チャンバーを所定の真空度0.3Paに設定し、スパッタ電力500wを印加し、1分間のスパッタリングで、10nmのAl薄膜を形成した。得られた薄膜について、波長550nmの可視光透過率を測定した結果を表1に示す。
試験例2 Cu添加アルミニウム薄膜の作成
試験例1と同じPETフィルムを用いて、N−MHVスパッタ装置のターゲット(11、21)に銅(Cu)金属を10wt%含有するアルミニウム合金ターゲットを用いて、試験例1と同様の操作により膜厚10nmのCu添加Al薄膜を形成した。得られた薄膜について、波長550nmの可視光透過率を測定した結果を表1に示す。
試験例3 Nd添加アルミニウム薄膜の作成
試験例1と同じPETフィルムを用いて、N−MHVスパッタ装置のターゲット(11、21)にネオジウム(Nd)金属を2wt%含有するアルミニウム合金ターゲットを用いて、試験例1と同様の操作により膜厚10nmのNd添加Al薄膜を形成した。得られた薄膜について、波長550nmの可視光透過率を測定した結果を表1に示す。
試験例4 窒素ドープアルミニウム薄膜の作成
試験例1と同じPETフィルムを用いて、N−MHVスパッタ装置のターゲット(11、21)にAl(純度5N)を用いて、真空チャンバー内を10−5Pa以下に真空排気し、スパッタガスであるArガスを流量調節しながら98cc供給し、引き続きNガスを2cc供給して、真空チャンバーを所定の真空度0.3Paに設定し、スパッタ電力500wを印加し、1分間のスパッタリングで膜厚10nmのAl薄膜を形成した。得られた薄膜について、波長550nmの可視光透過率を測定した結果を表1に示す。
試験例5 炭素ドープアルミニウム薄膜の作成
試験例1と同じPETフィルムを用いて、N−MHVスパッタ装置のターゲット(11、21)にAl(純度5N)を用いて、真空チャンバー内を10−5Pa以下に真空排気し、スパッタガスであるArガスを流量調節しながら90cc供給し、更にメタンガスを10cc供給して、真空チャンバーを所定の真空度0.3Paに設定し、スパッタ電力500wを印加し、1分間のスパッタリングで膜厚10nmのAl薄膜を形成した。得られた薄膜について、波長550nmの可視光透過率を測定した結果を表1に示す。
試験例6 窒化アルミニウム薄膜の作成
試験例1と同じPETフィルムを用いて、N−MHVスパッタ装置により、該シート上に膜厚30nmの窒化アルミニウム(AlN)薄膜を形成した。
詳細には、Al(5N)をターゲット(11、21)として、真空チャンバー内を10−5Pa以下に真空排気し、スパッタガスであるArガスを所定流量加えていき、真空チャンバーを0.3Paに設定し、更には反応性ガスである窒素ガスを、0.15Paだけ混合して、スパッタ電力を500wで10分間スパッタリングして、膜厚30nmのAlN薄膜を形成した。得られた薄膜について、波長550nmの可視光透過率と屈折率を測定した結果を表1に示す。
試験例7 酸窒化アルミニウム薄膜の作成
試験例6と同様に、PETフィルム上にN-MHVスパッタ装置により、該シート上に膜厚20nmの酸窒化アルミニウム(AlON)薄膜を形成した。
詳細には、Al(純度5N)をターゲット(11、21)として、真空チャンバー内を10−5Pa以下に真空排気し、スパッタガスであるArガスを所定流量加えていき、真空チャンバーを0.3Paに設定し、更には反応性ガスである窒素ガスを、8×10−2Pa及び酸素ガスを5×10−2Pa混合して、スパッタ電力を500Wで8分間スパッタリングして、膜厚20nmのAlON薄膜を形成した。得られた薄膜について、波長550nmの可視光透過率と屈折率を測定した結果を表1に示す。
試験例8 酸化アルミニウム薄膜の作成
試験例6と同様に、PETフィルム上にN-MHVスパッタ装置により、該シート上に膜厚30nmの酸化アルミニウム(Al)薄膜を形成した。
詳細には、Al(純度5N)をターゲット(11、21)として、真空チャンバー内を10−5Pa以下に真空排気し、スパッタガスであるArガスを所定流量加えていき、真空チャンバーを0.3Paに設定し、更には反応性ガスである酸素ガスを、0.1Pa混合して、スパッタ電力を500wで15分間スパッタリングして、膜厚30nmのAl薄膜を形成した。得られた薄膜について、波長550nmの可視光透過率と屈折率を測定した結果を表1に示す。
表1に示すように、アルミニウム薄膜、他種金属添加アルミニウム薄膜、N又はCドープ薄膜のいずれも可視光透過率は50%以上であり、窒素(N)ドープ膜、炭素(C)ドープ膜は純Al薄膜に比べて可視光透過率が5%向上し、銅(Cu)添加膜、ネオジウム(Nd)添加膜においては10%の向上がみられた。セラミック薄膜においては、AlN、AlON、Alいずれもが90%を超える高い可視光透過率を示しており、窒素・酸素と十分な反応性が確保され、それぞれ固有の屈折率を示していることが確認された。N−MHVS法で成膜した薄膜は、低温プロセスにおいて均一な組成で欠陥の少ない良質な薄膜であると考えられる。
試験例9 成膜方法による膜物性の検討
N−MHVS法及び通常マグネトロンスパッタ法(MS法)を用いて、表2に示す膜厚を有するAl薄膜を成膜し、表面抵抗及び比抵抗を測定して膜の物性を確認した。結果を表2に示す。

表2に示すとおり、N−MHVS法でもMS法でも5nm〜22nmの各厚さにおいて低い電気抵抗値を示し、良好な膜が得られた。特に、N−MHVS法による薄膜はいずれの膜厚においてもMS法による薄膜よりも低い表面抵抗値及び比抵抗値を示し、N−HMVS法によればより欠陥の少ない良好な膜が得られることが確認された。
実施例1 AlN/Al/AlN 3層積層膜の作成
N−MHVスパッタ装置を用いて、上記した試験例1及び試験例6の方法を用いて、PETフィルム上に、AlN 30nm/Al 10nm/AlN 30nm の3層構造の透明断熱シートを作成した。詳細には、まずPETフィルム上に、試験例6の方法を用いて窒化アルミニウム(AlN)薄膜を成膜し、続いてスパッタガスを切換え中間の金属薄膜である純Al薄膜を試験例1の方法を用いて成膜し、再度三層目に積層されるセラミック薄膜である窒化アルミニウム(AlN)薄膜を試験例6の方法を用いて成膜する。表3に、作成された積層膜の波長550nmの可視光透過率と波長800nmの近赤外域光透過率の測定結果を示す。
実施例2 AlN/Cu添加Al/Al 3層積層膜の作成
次に、実施例1の透明断熱特性を向上させるため、ターゲット材料のアルミニウムAlに銅Cuを10wt%添加したターゲットで、試験例2及び試験例6の方法により、AlN 30nm/Cu添加Al 10nm/AlN 30nmの3層積層膜を作成した。作成した積層膜の波長550nmの可視光透過率と波長800nmの近赤外域光透過率の測定結果を表3に示す。
実施例3 AlN/Nd添加Al/AlN 3層積層膜の作成
同様に、実施例1の透明断熱特性を向上させるため、ターゲット材料のアルミニウム(Al)にネオジウム(Nd)を2wt%添加したターゲットで、試験例3及び試験例6の方法により AlN 30nm/Nd添加Al 10nm/AlN 30nmの3層積層膜を作成した。作成した積層膜の波長550nmの可視光透過率と波長800nmの近赤外域光透過率の測定結果を表3に示す。
実施例4 AlN/窒素ドープAl/AlN 3層積層膜の作成
次に、実施例1の透明断熱特性を向上させるため、ターゲット材料は純アルミニウムAlを使用し、スパッタガスに流量比2%の窒素ガスをドープした試験例4及び試験例6の方法により、AlN 30nm/窒素ドープAl 10nm/AlN 30nmの3層積層膜を作成した。作成した積層膜の波長550nmの可視光透過率と波長800nmの近赤外域光透過率の測定結果を表3に示す。
実施例5 AlN/炭素ドープAl/AlN 3層積層膜の作成
同様に、実施例1の透明断熱特性を向上させるため、ターゲット材料は純アルミニウムAlを使用し、スパッタガスに流量比10%のメタンガスをドープした試験例5及び試験例6の方法により、AlN 30nm/炭素ドープAl 10nm/AlN 30nm の3層積層膜を作成した。作成した積層膜の波長550nmの可視光透過率と波長800nmの近赤外域光透過率の測定結果を表3に示す。
実施例6 Al2O3/AlN/Al/AlN/Al2O3 5層積層膜の作成
更なる透明断熱特性の向上を目指して、金属薄膜は試験例1の純Al薄膜を用い、セラミック薄膜は試験例8のAl薄膜及び試験例6のAlN薄膜を積層化して、Al2O330nm/AlN 30nm/Al 10nm/AlN 30nm/Al2O330nmの5層構造の透明断熱シートを作成した。この積層体においては、中間の金属膜を挟んで、表面に向かって、屈折率が低くなるようになっており、表3の測定結果で示すように、可視光域では透過率が80%と高く、近赤外線域での透過率は低く、反射率が高くなっていることが推定される。表3に、波長550nmの可視光透過率と波長800nmの近赤外域光透過率の測定結果を示す。
実施例7 AlO/AlON/AlN/Al/AlN/AlON/AlO 7層積層膜の作製
上記した実施例の方法と同様にN−MHVスパッタ装置を用いて、PETフィルム上に、金属薄膜は試験例1の純Al薄膜を用い、セラミック薄膜は、試験例8のAl薄膜、試験例7のAlON薄膜及び試験例6のAlN薄膜を積層化してAlO 30nm/AlON 20nm/AlN 30nm/Al 10nm/AlN 30nm/AlON 20nm/AlO 30nmの7層構造の透明断熱シートを作成した。この積層体においても、中間の金属膜を挟んで表面に向かって屈折率が低くなるような膜構成になっている。表3に、波長550nmの可視光透過率と波長800nmの近赤外域光透過率の測定結果を示す。可視光透過率は85%と高く、近赤外線域での透過率は22%と低く、赤外線の反射率が高くなっていることが推定される。

表3に可視域(550nm)透過率及び近赤外域(800nm)透過率で、透明性及び断熱性の特性を示している。3層構造の実施例の中では、実施例3の銅(Cu)添加3層膜が一番良好である。他の3層構造実施例においても実施例1の純Al3層構造に比べて実施例2、実施例3、実施例4、実施例5共に、可視域透過率が10%以上向上し、近赤外域透過率も下がっており、透明断熱特性が向上していることが確認できる。また、金属薄膜に純Al薄膜を用いた場合に、実施例1と実施例6、実施例7を比較すると、セラミック薄膜の多層化により、可視域透過率が10%以上向上し、近赤外域での透過率が低下し熱線反射率も向上していることが分かる。
図4に、純Al薄膜を用いた3層構造の実施例1、窒素ドープAl薄膜を用いた3層構造の実施例4、セラミック薄膜を多層化した7層構造の実施例7における光透過率の波長依存性を示した。図4に示すように、実施例1は可視域透過率が70%、近赤外透過率が35%以下であり、これは従来の銀薄膜とITO薄膜の5層構造積層膜に相当する。窒素ドープAl薄膜を用いた3層構造の実施例4では可視域透過率が80%と10%近く向上し、近赤外域透過率も低下し透明断熱性は大きく向上させることができている。セラミック薄膜を多層化した実施例7においては、波長550nmを中心とする可視光領域では概ね80%以上の透過率を示し、且つ赤外透過率では25%以下であり、透明断熱性は非常に向上していることが確認された。
このように本発明によれば、インジウムや銀といった希少金属を使うことなく、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金と窒素、酸素という汎用元素のみを使用して、優れた可視光透過率を維持しつつ、赤外線域での反射率を高めて、高性能な透明断熱シートを実現した。
1 透明断熱シートの基体シート
2 極薄金属膜
3 窒化アルミニウム薄膜
4 酸窒化アルミニウム薄膜
5 酸化アルミニウム薄膜
11、21 スパッタターゲット
12、22 ターゲット磁極
13、23 補助磁極
14 スパッタガス供給口
15、25 反応ガス供給口
16 プラズマ領域

Claims (9)

  1. プラスチックからなる透明な基体シート上に、導電性金属薄膜と当該導電性金属薄膜の上下に積層されたセラミック薄膜とから構成される多層膜を設けてなる透明断熱シートであって、前記導電性金属薄膜がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金であり、前記セラミック薄膜がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金の窒化膜、酸窒化膜及び/又は酸化膜を含むことを特徴とする透明断熱シート。
  2. 前記導電性金属薄膜の上下に積層された前記セラミック薄膜が、2層以上積層されており、前記積層されたセラミック薄層は、導電性金属薄膜に近い層の屈折率が相対的に大、導電性金属薄膜から離れた層の屈折率が相対的に小となっていることを特徴とする、請求項1に記載の透明断熱シート。
  3. 前記積層されたセラミック薄膜が、導電性金属薄膜に近い層から、屈折率が相対的に大から小の順である、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、又は酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明断熱シート。
  4. 前記導電性金属薄膜がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金であって、当該アルミニウム及び/又はアルミニウム合金中に、Nd,Ni,Ag,Cu、Sn、Pd、N、Cから選択される1又は複数の元素を、0.1〜20wt%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明断熱シート。
  5. 前記導電性金属薄膜の膜厚が、1nm〜50nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明断熱シート。
  6. 前記導電性金属薄膜がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金であって、その上下に積層されるセラミック薄膜が、当該アルミニウム及び/又はアルミニウム合金の窒化アルミニウム(AlN)薄膜であり、当該窒化アルミニウム(AlN)薄膜の膜厚が10〜100nmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明断熱シート。
  7. アルミニウム及び/又はアルミニウム合金をターゲットとして、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金からなる導電性金属薄膜を成膜する工程と、
    前記アルミニウム及び/又はアルミニウム合金をターゲットとして、酸素ガス及び/又は窒素ガスを含有するスパッタガスを用いて、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金の窒化膜、酸窒化膜及び/又は酸化膜を含むセラミック薄膜を成膜する工程と、
    を含むことを特徴とする、透明断熱積層体の製造方法。
  8. 前記アルミニウム及び/又はアルミニウム合金からなる導電性金属薄膜を成膜する工程において、スパッタガスとして、窒素ガス又はメタンガスを含むスパッタガスを用いて、窒素(N)又は炭素(C)を含む導電性金属薄膜を成膜することを特徴とする、請求項7に記載の透明断熱積層体の製造方法。
  9. 低ダメージ対向ターゲットスパッタ法(N−MHVS法)を用いることを特徴とする、請求項7又は8に記載の透明断熱積層体の製造方法。
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