(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1に示す架線Cは、線路上空に架設される架空電車線であり、所定の間隔をあけて支持物Sによって支持点で支持されている。図1に示す架線Cは、トロリ線と、ちょう架線と、ハンガイヤーなどから構成されるシンプルカテナリ式ちょう架方式の架線である。架線Cは、例えば、支持物Sによって支持点間の距離(径間)が所定の長さになるように支持されている。支持物Sは、架線Cを支持する構造物であり、架線Cを固定するビーム又はブラケットを電柱によって支持している。き電線Fは、き電用変電所から電車線に電力を供給する電線であり、架線Cと並行に架設されており、一定区間毎に電車線材料C1に電力を供給する。
図1に示す軌道Rは、車両が走行する通路(線路)であり、電車又は電気機関車などの電気車(鉄道車両)の車輪が転がり接触する左右一対のレールを備えている。作業台車Tは、架線Cを点検するときに使用する台車である。作業台車Tは、折り畳み式の梯子状の可搬台車であり、軌道R上を転がり接触する車輪を備えている。作業台車Tは、作業者M1を搭乗させた状態で軌道R上を歩行する作業者M2によって押し出されることで、軌道Rに沿って移動可能である。作業者M1,M2は、架線Cに関する種々の作業を実施する者である。作業者M1は、例えば、電車線材料C1〜C5の状態を検査したり、電車線材料C1〜C5を交換したり、電車線材料C1〜C5を研磨装置1によって研磨したりする。作業者M2は、例えば、作業台車Tを押し出したり作業者M1の作業を補助したりする。
電車線材料C1〜C5は、電気車に電力を供給するために線路に沿って架設される電線路(電車線路)に使用される種々の材料である。電車線材料C1〜C5は、線路上の高い位置に架設される架空式電車線路で使用される電車線とこの支持物、き電線路及びその他の付属設備などある。
電車線材料C1は、電気車の集電装置のすり板が接触するトロリ線(電線)であり、すり板が摺動することによって電気車に負荷電流を供給する。電車線材料C1は、例えば、材質が硬銅又は銀若しくはすずなどを僅かに含有する銅合金であり、鋼線を銅で被覆した複合トロリ線(CSトロリ線)、鋼心をアルミニウムで被覆した複合トロリ線(TAトロリ線)、又は大きな引張強さと高い導電率を有する銅合金トロリ線でCr,Zr,Siを僅かに含有する銅合金を熱処理することによって特性を向上させたクロム・ジルコニウム系高強度銅合金トロリ(PHCトロリ線))などである。電車線材料C2は、電車線材料C1を電車線材料C3に吊り下げるためのハンガイヤー(架線金具(電車線金具))であり、この電車線材料C1の高さを略一定に保持する。電車線材料C2は、例えば、材質がアルミニウム青銅、りん青銅又は可鍛鋳鉄などである。電車線材料C2は、電車線材料C3に吊り下げられるハンガC21と、このハンガC21の下端部に取り付けられて電車線材料C1の両側の溝部を締め付けるイヤーC22などを備えている。電車線材料C3は、電車線材料C1を支持するちょう架線(線条(撚線))であり、この電車線材料C1の重量による弛み(弛度)が小さくなるようにこの電車線材料C1を吊るして水平に保持する。電車線材料C4は、電車線材料C1と電車線材料C3とを電気的に接続するコネクタ(架線金具(電車線金具))であり、電車線材料C1の両側の溝部を締め付けるイヤーC41と、電車線材料C3に取り付けられるクランプC42と、イヤーC41とクランプC42とを接続するリード線C43などを備えている。電車線材料C5は、き電線Fから電車線材料C1に電力を供給するフィードイヤー(架線金具(電車線金具))であり、電車線材料C4と同様に、電車線材料C1の両側の溝部を締め付けるイヤーC51と、き電線Fに取り付けられるクランプC52と、イヤーC51とクランプC52とを接続するリード線C53などを備えている。
図1〜図6に示す研磨装置1は、電車線材料C1の表面を研磨する装置である。研磨装置1は、電車線材料C1の表面に付着した腐食生成物などの付着物を除去してこの付着物を回収する。研磨装置1は、図1に示すように、電車線材料C1に着脱自在に装着可能であり、この電車線材料C1の長さ方向(A方向)に沿って作業者M1の手動操作によって移動可能である。研磨装置1は、電車線材料C1の所定位置に停止させて研磨作業を実施する。研磨装置1は、図4〜図6に示す研磨部2と、図2〜図6に示す収容部5と、連結部6と、図2〜図4に示す漏出防止部7と、ガイド部8A〜8Cと、図2〜図6に示す開閉部9と、図4に示す噴霧部10と、研磨液貯蔵部11と、回収部12と、分離部13と、循環部14と、収容部15と、流路16A,16Bと、図4〜図6に示す回転ブラシ選択部17と、開閉動作選択部18と、電源部19と、制御部20などを備えている。
図4〜図6に示す研磨部2は、研磨液Lが噴霧された電車線材料C1の表面を研磨する手段である。研磨部2は、電車線材料C1の表面に付着する付着物をこの電車線材料C1の表面から除去する。研磨部2は、例えば、図1に示す集電装置のすり板が摺動する電車線材料C1の摺動面(下面)や、電車線材料C1と電車線材料C2との接合面などに付着する付着物を除去する。研磨部2は、図4〜図6に示すように、回転ブラシ部3A〜3Dと、駆動力発生部4A〜4Dなどを備えている。研磨部2は、図6に示す電車線材料C2と干渉しないように、図5に示すように電車線材料C1を中心としてこの電車線材料C1の外周面に沿って所定の間隔をあけて複数の回転ブラシ部3A〜3Dを備えている。研磨部2は、例えば、集電装置のすり板が摺動する電車線材料C1の下面のみを研磨するときには回転ブラシ部3A,3Bを回転駆動し、電車線材料C1と電車線材料C2との接合部のみを研磨するときには回転ブラシ部3C,3Dを回転駆動し、電車線材料C1の摺動面及び接合面を研磨するときには、回転ブラシ部3A〜3Dを回転駆動する。
図4〜図6に示す回転ブラシ部3A〜3Dは、電車線材料C1の表面と回転接触してこの電車線材料C1の表面を研磨する部材である。回転ブラシ部3Aは、電車線材料C1の右側下半分の側面を研磨するように、この電車線材料C1の右斜め下方に配置されている。回転ブラシ部3Bは、電車線材料C1の左側下半分の側面を研磨するように、この電車線材料C1の左斜め下方に配置されている。回転ブラシ部3Cは、電車線材料C1の右側上半分の側面を研磨するように、この電車線材料C1の右斜め上方に配置されている。回転ブラシ部3Dは、電車線材料C1の左側上半分の側面を研磨するように、この電車線材料C1の左斜め上方に配置されている。回転ブラシ部3A〜3Dは、いずれも同一構造であり、収容部5に回転自在に支持されている。回転ブラシ部3A〜3Dは、集電装置のすり板が摺動する電車線材料C1の摺動面と、電車線材料C2,C4のイヤーC22,C41に把持される電車線材料C1の両側面の溝部とを含む電車線材料C1の表面全体に毛先を接触させる。回転ブラシ部3A〜3Dは、電車線材料C1と硬度が同一又は電車線材料C1よりも硬度が低い材料である。回転ブラシ部3A〜3Dは、例えば、電車線材料C1の表面が銅である場合には銅製又はナイロン製のワイヤブラシを備えており、電車線材料C1の表面がアルミニウムである場合にはアルミニウム製又はナイロン製のワイヤブラシを備えている。回転ブラシ部3A〜3Dは、例えば、架設年数が長く長期間放置されている線区の場合には電車線材料C1の腐食が著しいため、電車線材料C1よりも硬度が高い材料のワイヤブラシによって、電車線材料C1に付着する強固な腐食生成物及び汚れを除去する。
図4〜図6に示す駆動力発生部4A〜4Dは、回転ブラシ部3A〜3Dを回転するための駆動力を発生する手段である。駆動力発生部4A〜4Dは、回転ブラシ部3A〜3Dの回転軸を回転駆動するモータなどであり、各回転ブラシ部3A〜3Dの回転軸をそれぞれ個別に回転駆動する。
図2〜図6に示す収容部5は、研磨部2を収容する手段である。収容部5は、架線Cの長さ方向に長い立方体状の容器であり、図2、図3、図5及び図6に示す右側収容部5Rと、左側収容部5Lと、図4に示す流入部5aと、流出部5bなどを備えている。収容部5は、図5に示すように、電車線材料C1を収容したときに、この電車線材料C1を回転ブラシ部3A〜3Dによって研磨可能なように、電車線材料C1の周囲に空間を形成している。収容部5は、電車線材料C1の研磨状態を外部から作業者M1が監視可能なように、透明又は半透明に形成されている。収容部5は、図5及び図6に示すように、右側収容部5Rと左側収容部5Lとに分割可能であり、図5に示す研磨時には右側収容部5Rと左側収容部5Lとが結合し、図6に示す非研磨時には右側収容部5Rと左側収容部5Lとに分割する。収容部5は、図5に示すように、右側収容部5R側の漏出防止部7と左側収容部5L側の漏出防止部7との間に電車線材料C1を挟み込み、この電車線材料C1を収容する。図4に示す流入部5aは、噴霧部10から研磨液Lが流入する部分である。流入部5aは、収容部5を貫通する貫通孔であり、流路16Aに着脱自在に接続されている。流入部5aは、流路16Aから流入する研磨液Lが電車線材料C1に向かって噴射されるようにノズル状に形成されている。流出部5bは、研磨屑及び研磨液Lの混合物が回収部12に流出する部分である。流出部5bは、流入部5aと同様に収容部5を貫通する貫通孔であり、流路16Bに着脱自在に接続されている。流出部5bは、研磨屑及び研磨液Lの混合物が流路16Bに流れ込むように漏斗状に形成されている。
図4及び図5に示す右側収容部5Rは、電車線材料C1の右側側面を収容する部分であり、左側収容部5Lは電車線材料C1の左側側面を収容する部分である。右側収容部5Rは、電車線材料C1の右側面側に開口部を有する断面形状が略U字状の部材であり、左側収容部5Lは電車線材料C1の左側面側に右側収容部5Rと同一形状の開口部を有する断面形状が略U字状の部材である。
図2〜図6に示す連結部6は、右側収容部5Rと左側収容部5Lとを回転自在に連結する手段である。連結部6は、右側収容部5Rの開口部寄りの下縁部と左側収容部5Lの開口部寄りの下縁部とをピン結合(ヒンジ結合)している。連結部6は、図6に示すように、収容部5を電車線材料C1の長さ方向(A方向)に移動させるとき又は収容部5を電車線材料C1に着脱するときには、右側収容部5Rの開口部寄りの上縁部と左側収容部5Lの開口部寄りの上縁部とが離間して、これらの間に間隙部を形成するように、右側収容部5Rと左側収容部5Lとを連結する。
図2〜図4に示す漏出防止部7は、右側収容部5Rと左側収容部5Lとが接合する接合部からの研磨液Lの漏出を防止する手段である。漏出防止部7は、右側収容部5Rと左側収容部5Lとにそれぞれ取り付けられており、右側収容部5R側の開口部の周縁部と左側収容部5L側の開口部の周縁部とを囲むように、これらの周縁部と一体に固定されている。漏出防止部7は、図5に示すように、電車線材料C1を左右方向から挟み込んだときに、この電車線材料C1との間に隙間が形成されないようにこの電車線材料C1と密着する。漏出防止部7は、例えば、電車線材料C1の表面形状に沿って弾性変形可能なゴム又はウレタンなどの弾性体である。
図2〜図4に示すガイド部8A〜8Cは、電車線材料C1の長さ方向に収容部5を移動自在にガイドする手段である。ガイド部8A〜8Cは、電車線材料C1に対して収容部5を位置決めするように、この電車線材料C1の長さ方向に沿って移動可能にこの収容部5をガイドするとともに、この電車線材料C1のからこの収容部5が落下するのを防止する。ガイド部8A〜8Cは、図2に示すように、電車線材料C1を中心として収容部5が傾くのを防ぐために、この電車線材料C1の表面を挟み込むように、図4に示すように収容部5の進行方向前側と進行方向後側とにそれぞれ配置されている。ガイド部8A〜8Cは、図2及び図3に示すように、電車線材料C2と干渉しないように電車線材料C1を中心としてこの電車線材料C1の外周面に沿って所定の間隔をあけて配置されている。ガイド部8Aは、図2及び図3に示すように、電車線材料C1の下側半分の底面と回転接触するように、この電車線材料C1の下方に配置されている。ガイド部8Aは、右側収容部5R及び左側収容部5Lの開閉動作にかかわらず電車線材料C1と接触するように、図2〜図4に示す連結部6に支持されている。ガイド部8Bは、図2に示すように、電車線材料C1の右側上半分の側面と回転接触するように、この電車線材料C1の右斜め上方に配置されている。ガイド部8Bは、図2及び図3に示すように、右側収容部5Rの開閉動作に連動して電車線材料C1と接触及び離間するように、この右側収容部5Rに支持されている。ガイド部8Cは、図2及び図3に示すように、電車線材料C1の左側上半分の側面と回転接触するように、この電車線材料C1の左斜め上方に配置されている。ガイド部8Cは、左側収容部5Lの開閉動作に連動して電車線材料C1と接触及び離間するように、この左側収容部5Lに支持されている。ガイド部8A〜8Cは、図2〜図4に示すように、ガイドローラ8aと、フランジ部8bと、支持部8cなどを備えている。
図2〜図4に示すガイドローラ8aは、電車線材料C1と転がり接触する部材である。ガイドローラ8aは、図2に示すように、電車線材料C1の幅よりも幅が僅かに広く形成されており、電車線材料C1に案内されるようにこの電車線材料C1の形状に沿った形状に形成されている。図2〜図4に示すフランジ部8bは、ガイドローラ8aが電車線材料C1から逸脱するのを防止する部分である。フランジ部8bは、ガイドローラ8aの外周部の両側にこのガイドローラ8aよりも僅かに高く形成された凸部である。支持部8cは、ガイドローラ8aを回転自在に支持する部分である。支持部8cは、図2〜図4に示すガイド部8A側のガイドローラ8aを連結部6に固定し、図2及び図3に示すガイド部8B側のガイドローラ8aを右側収容部5Rに固定し、図2〜図4に示すガイド部8C側のガイドローラ8aを左側収容部5Lに固定する。
図2〜図6に示す開閉部9は、研磨時には電車線材料C1を収容部5に収容し、非研磨時にはこの電車線材料C1をこの収容部5から開放するように、この収容部5を開閉する手段である。開閉部9は、図5及び図6に示すように、右側収容部5Rと左側収容部5Lとが結合状態と分割状態とに切り替わるように収容部5を開閉する。開閉部9は、図2〜図6に示す駆動力発生部9aと、図2、図3、図5及び図6に示す連結部9b,9cなどを備えている。
図2〜図6に示す駆動力発生部9aは、収容部5を開閉させるための駆動力を発生する手段である。駆動力発生部9aは、図5に示すように、研磨時には収容部5を閉じ、図6に示すように非研磨時にはこの収容部5を開く。駆動力発生部9aは、作動流体の流体圧によって駆動力を発生する流体圧シリンダと、この流体圧シリンダを駆動する流体圧回路などを備えている。駆動力発生部9aは、図2、図3、図5及び図6に示すように、連結部6を回転中心として右側収容部5Rと左側収容部5Lとが互に逆方向に回転するように、この右側収容部5Rとこの左側収容部5Lとに同一の大きさの駆動力を互に逆方向に作用させる。図2、図3、図5及び図6に示す連結部9b,9cは、駆動力発生部9aを回転自在に連結する手段である。連結部9bは、駆動力発生部9aのシリンダと右側収容部5Rとをピン結合(ヒンジ結合)し、連結部9cはこの駆動力発生部9aのピストンロッドと左側収容部5Lとをピン結合(ヒンジ結合)する。
図4に示す噴霧部10は、電車線材料C1の表面に研磨液Lを噴霧する手段である。噴霧部10は、例えば、研磨液Lを霧状(ミスト)にして送風によって散布する送風式噴霧器などである。噴霧部10は、研磨液Lを霧化して電車線材料C1の表面に噴霧するとともに、研磨後の研磨液L及び研磨屑を回収して研磨屑を除去し、研磨液Lを再利用する。噴霧部10は、電車線材料C1を研磨液Lによって加湿した後にこの電車線材料C1を研磨部2によって研磨するように、研磨部2の進行方向前側から研磨液Lを噴霧する。噴霧部10は、超音波振動部10aと送風部10bなどを備えている。
超音波振動部10aは、研磨液Lを超音波振動によって霧化する手段である。超音波振動部10aは、例えば、発信器が出力する電気信号に基づいて超音波振動子を振動させて、この超音波振動子からの振動を研磨液Lに伝達し、この研磨液Lを霧化させる。送風部10bは、超音波振動部10aによって霧化された研磨液Lを電車線材料C1に送出する手段である。送風部10bは、例えば、霧化した研磨液Lを空気とともに電車線材料C1に向かって吹き付ける送風ファンである。
研磨液貯蔵部11は、研磨液Lを貯蔵する手段である。研磨液貯蔵部11は、例えば、入手が容易で安価な水などの研磨液Lを収容するタンクなどである。研磨液貯蔵部11は、研磨液Lを補充可能なように収容部15に着脱自在の構造であり、研磨液Lの残存量が所定量を下回るときには、超音波振動部10aに自動的に研磨液Lを供給する。
回収部12は、研磨後に発生する研磨屑及び研磨液Lの混合物を回収する手段である。回収部12は、例えば、研磨後に発生する混合物を収容するタンクなどである。分離部13は、回収部12が回収した混合物から研磨液Lを分離する手段である。分離部13は、例えば、研磨屑と研磨液Lとを分離するフィルタなどであり、研磨屑と研磨液Lとの混合物から研磨屑のみを除去して回収し、研磨液Lを循環部14に排出する。循環部14は、分離部13が分離した研磨液Lを噴霧部10に循環させる手段である。循環部14は、例えば、研磨後の研磨液Lを超音波振動部10aに戻すポンプなどである。
収容部15は、噴霧部10、研磨液貯蔵部11、回収部12、分離部13及び循環部14を収容する手段である。収容部15は、図1に示すように、研磨部2側の収容部5と着脱及び分離可能な構造であり、収容部5に着脱自在に装着して電車線材料C1に装着可能であるとともに、収容部5から分離して作業台車T上又は軌道R上に設置可能である。収容部15は、図4に示すように、流出部15aと流入部15bなどを備えている。流出部15aは、噴霧部10から研磨液Lが流出する部分であり、流路16Aに着脱自在に接続されている。流入部15bは、研磨屑及び研磨液Lの混合物が回収部12に流入する部分であり、流路16Bに着脱自在に接続されている。
流路16Aは、研磨液Lが流れる部分である。流路16Aは、可撓性を有する伸縮自在で柔軟な配管であり、一方の端部が研磨部2側の流入部5aに接続されており、他方の端部が噴霧部10側の流出部15aに接続されている。流路16Bは、研磨後の研磨屑及び研磨液Lが流れる部分である。流路16Bは、流路16Aと同様に可撓性を有する柔軟な配管であり、一方の端部が研磨部2側の流出部5bに接続されており、他方の端部が噴霧部10側の流入部15bに接続されている。
図4〜図6に示す回転ブラシ選択部17は、複数の回転ブラシ部3A〜3Dを任意に選択する手段である。回転ブラシ選択部17は、例えば、回転ブラシ部3A〜3Dを回転させるときに作業者M1が操作する切替スイッチなどであり、作業者M1によって選択された回転ブラシ部3A〜3Dに対応する回転ブラシ選択情報(回転ブラシ選択信号)を制御部20に出力する。
開閉動作選択部18は、開閉部9の開閉動作を選択する手段である。開閉動作選択部18は、例えば、開閉部9によって収容部5を開閉させるときに作業者M1が操作する切替スイッチなどであり、作業者M1によって選択された開動作又は閉動作に対応する開動作情報(開動作信号)又は閉動作情報(閉動作信号)を制御部20に出力する。
電源部19は、研磨装置1に電力を供給する手段である。電源部19は、例えば、電車線材料C1の研磨作業の実施に必要な電力を駆動力発生部4A〜4D、駆動力発生部9a、超音波振動部10a、送風部10b及び循環部14などに供給するバッテリ装置又は発電機などである。
制御部20は、研磨装置1に関する種々の動作を制御する手段(中央処理部(CPU))である。制御部20は、回転ブラシ選択部17が出力する回転ブラシ選択信号に基づいて駆動力発生部4A〜4Dを動作制御したり、開閉動作選択部18が出力する開動作信号及び閉動作信号に基づいて駆動力発生部9aを動作制御したり、超音波振動部10aを動作制御したり、送風部10bを動作制御したり、循環部14を動作制御したり、電源部19に電力の供給を指令したりする。制御部20には、駆動力発生部4A〜4D、駆動力発生部9a、超音波振動部10a、送風部10b、循環部14、回転ブラシ選択部17、開閉動作選択部18及び電源部19などが通信装置によって相互に通信可能に接続されている。
次に、この発明の第1実施形態に係る電車線材料に研磨装置の動作を説明する。
図3及び図6に示すような古い電車線材料C2を新しい電車線材料C2に交換するときには、この古い電車線材料C2を電車線材料C1から取り外した後に、この古い電車線材料C2と電車線材料C1との接合部に付着した付着物を除去する必要がある。先ず、図1に示すように、交換対象となる古い電車線材料C2と電車線材料C1との接合部の下まで作業台車Tを作業者M2が移動して、研磨装置1を持って作業者M1が作業台車Tに搭乗し、図1に二点鎖線で示す電車線材料C2を電車線材料C1から取り外す。
次に、図4〜図6に示す研磨装置1の開閉動作選択部18を作業者M1が操作して開動作を選択すると、開閉動作選択部18が開動作信号を制御部20に出力し、図3及び図6に示すように開閉部9の駆動力発生部9aが伸長動作して右側収容部5Rと左側収容部5Lとが開く。ガイド部8Aのガイドローラ8aを電車線材料C1の下面に接触させた状態で、開閉動作選択部18を作業者M1が操作して閉動作を選択する。その結果、開閉動作選択部18が閉動作信号を制御部20に出力し、開閉部9の開動作を制御部20が開閉部9に指令すると、図2及び図5に示すようにこの開閉部9の駆動力発生部9aが縮小動作して右側収容部5Rと左側収容部5Lとが閉じる。このため、右側収容部5R及び左側収容部5Lと一体となってガイド部8B,8Cが駆動して、図2に示すようにこれらのガイド部8B,8Cのガイドローラ8aが電車線材料C1と接触する。その結果、ガイド部8A側のガイドローラ8aとガイド部8B,8C側のガイドローラ8aとの間で電車線材料C1が挟み込まれて、電車線材料C1に研磨部2が固定され電車線材料C1回りに研磨部2が回転するのが防止される。その後に、図1に示すように、研磨装置1の研磨部2を電車線材料C1に装着した状態で、この研磨装置1の噴霧部10を作業台車T上又は軌道R上に設置し、研磨部2と噴霧部10とを流路16A,16Bによって接続する。
次に、図4〜図6に示す研磨装置1の回転ブラシ選択部17を作業者M1が操作して回転ブラシ部3A〜3Dを選択すると、回転ブラシ選択部17が回転ブラシ選択信号を制御部20に出力し、回転ブラシ部3A〜3Dの回転動作開始を駆動力発生部4A〜4Dに制御部20が指令する。同時に、図4に示す超音波振動部10a、送風部10b及び循環部14の動作開始を制御部20が指令する。その結果、超音波振動部10aが研磨液Lを振動させて霧化し、霧化後の研磨液Lを送風部10bが流路16Aに送出し、電車線材料C1の表面に流入部5aから研磨液Lが噴射させる。
図5に示すように、電車線材料C1の表面に研磨液Lが付着した状態で回転ブラシ部3A〜3Dが回転すると、この電車線材料C1の表面に付着した付着物が回転ブラシ部3A〜3Dによって削り落される。このとき、図3及び図6に示すイヤーC22によって締め付けられる電車線材料C1の溝部に、図5に示すように回転ブラシ部3A〜3Dの毛先が入り込むため、この電車線材料C1の溝部に付着する付着物も回転ブラシ部3A〜3Dが削り落す。図2に示すように、右側収容部5Rと左側収容部5Lとの間の間隙部が漏出防止部7によって塞がれているため、電車線材料C1と漏出防止部7との間から研磨屑及び研磨液Lが漏れ出すことがない。図4に示すように、電車線材料C1が研磨された後に発生する研磨屑及び研磨液Lの混合物が流出部5bから流路16Bに流れ込むと、この混合物を回収部12が回収して研磨屑と研磨液Lとに分離部13が分離し、分離後の研磨液Lを循環部14が超音波振動部10aに戻す。電車線材料C1に対する研磨範囲が長い場合には、電車線材料C1の長さ方向に研磨部2を作業者M1が移動させると、ガイド部8A〜8Cのガイドローラ8aが電車線材料C1に沿って転がり、電車線材料C1に対する回転ブラシ部3A〜3Dの位置が調整される。電車線材料C1に付着する付着物が強固である場合には、この付着物が除去されるまで電車線材料C1に沿って作業者M1が研磨部2を往復移動させる。
研磨作業が終了した後に、図4〜図6に示す開閉動作選択部18を作業者M1が操作して開動作を選択する。その結果、開閉動作選択部18が開動作信号を制御部20に出力し、開閉部9の開動作を制御部20が開閉部9に指令すると、図3及び図6に示すようにこの開閉部9の駆動力発生部9aが伸長動作して右側収容部5Rと左側収容部5Lとが開く。同時に、回転ブラシ部3A〜3Dの回転動作停止を駆動力発生部4A〜4Dに制御部20が指令する。次に、研磨装置1の研磨部2を電車線材料C1から取り外して、新しい電車線材料C2を電車線材料C1に接合し、次に交換する必要のある古い電車線材料C2と電車線材料C1との接合箇所の下まで作業台車Tを作業者M2が移動させて、電車線材料C1の研磨作業と電車線材料C2の交換作業とを作業者M1が繰り返す。
図3及び図6に示すような電車線材料C2を交換せずに、集電装置のすり板が摺動する電車線材料C1の下面のみを研磨する場合には、図4〜図6に示す回転ブラシ選択部17を作業者M1が操作して回転ブラシ部3A,3Bを選択する。その結果、回転ブラシ部3A,3Bが回転して電車線材料C1の下面に付着した付着物が回転ブラシ部3A,3Bによって除去される。図1に示すように、作業者M2が軌道Rに沿って作業台車Tを移動させるとともに、作業者M1が開閉動作選択部18を操作することによって収容部5の開閉動作を繰り返すことによって、図5に示す回転ブラシ部3A〜3Dによって電車線材料C1の下面が連続して研磨される。
この発明の第1実施形態に係る電車線材料の研磨装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、電車線材料C1の表面に研磨液Lを噴霧部10が噴霧し、この研磨液Lが噴霧されたこの電車線材料C1の表面を研磨部2が研磨する。このため、電車線材料C1に研磨液Lを吹き付けることによって、研磨時に発生する粉塵の飛散を抑えることができるとともに、電車線材料C1の表面に付着した強固な付着物を研磨液Lによって容易に除去することができる。その結果、電車線材料C1の研磨作業を効率よく短時間で安全に実施することができ、研磨作業の効率化を図ることができるるとともに、メンテナンスコストを大幅に削減することができる。
(2) この第1実施形態では、研磨後に発生する研磨屑及び研磨液Lの混合物を回収部12が回収する。このため、電車線材料C1の表面に付着した付着物が研磨後に粉塵となって周囲に飛散するのを防ぎ、作業環境を悪化させるのを防ぐことができる。
(3) この第1実施形態では、回収部12が回収した混合物から研磨液Lを分離部13が分離し、この分離部13が分離した研磨液Lを噴霧部10に循環部14が循環させる。このため、研磨後に発生する混合物から研磨屑のみを取り除き、研磨液Lのみを再利用することができる。
(4) この第1実施形態では、研磨液Lを超音波振動によって霧化する超音波振動部10aを噴霧部10が備えている。このため、研磨液Lを簡単にミスト状に生成し電車線材料C1に送出することができる。その結果、液状の研磨液Lを電車線材料C1に吹き付ける場合に比べて、研磨液Lの消費量を大幅に低減することができるとともに、液状の研磨液Lを噴射するための大規模な設備や防水処理などを省略することができる。
(5) この第1実施形態では、電車線材料C1の表面と回転接触してこの電車線材料C1の表面を研磨する回転ブラシ部3A〜3Dを研磨部2が備えている。このため、電車線材料C1の表面に付着した付着物を回転ブラシ部3A〜3Dによって簡単に除去することができる。また、電車線材料C1の凹凸部に回転ブラシ部3A〜3Dの毛先が入り込み、この凹部に付着した付着物を除去することができる。
(6) この第1実施形態では、電車線材料C1の外周面に沿って複数の回転ブラシ部3A〜3Dを研磨部2が備えている。このため、電車線材料C1の表面に付着した付着物を回転ブラシ部3A〜3Dによって広範囲に除去することができる。
(7) この第1実施形態では、複数の回転ブラシ部3A〜3Dを回転ブラシ選択部17によって任意に選択する。このため、例えば、電車線材料C1の一部又は全部を研磨したいときに、最適な回転ブラシ部3A〜3Dを選択して効率的に研磨作業を実施することができる。
(8) この第1実施形態では、噴霧部10から研磨液Lが流入する流入部5aと、回収部12に混合物が流出する流出部5bとを有する収容部5によって研磨部2を収容する。また、この第1実施形態では、研磨時には電車線材料C1を収容部5に収容し、非研磨時にはこの電車線材料C1をこの収容部5から開放するように、この収容部5を開閉部9が開閉する。このため、研磨液L及び研磨屑が外部に飛散して作業環境が悪化するのを防ぐことができる。また、非研磨時には電車線材料C1を収容部5から簡単に開放することができるため、電車線材料C1を研磨部2から迅速に取り外すことができる。
(第2実施形態)
以下では、図1〜図6に示す部分と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図7及び図8に示す車両21は、軌道Rに沿って走行する移動体である。車両21は、研磨部2及び噴霧部10を搭載しており、これらの研磨部2及び噴霧部10とともに移動する。図7及び図8に示す車両21は、鉄道車両が走行する軌道Rと自動車が走行する道路との双方を走行可能な軌陸車、電気関係の地上設備を走行しながら検査する電気検測車、又は軌道Rの保守作業を実施するために軌道R上を走行する保線作業車などである。車両21は、例えば、軌陸車である場合には、道路走行時には道路走行用のゴムタイヤで道路上を走行し、軌道走行時にはこのゴムタイヤの内側の軌道走行用の車輪23aで軌道R上を走行する構造、又は道路走行時には軌道走行用の車輪23aを上昇させて道路走行用のゴムタイヤで道路上を走行し、軌道走行時には軌道走行用の車輪23aを下降させてこの軌道走行用の車輪23aで軌道R上を走行する構造などを備えている。車両21は、車体22と、走り装置23と、昇降装置24と、研磨装置25などを備えている。車両21は、研磨部2を収容する収容部5を昇降装置24によって支持し、噴霧部10を収容する収容部15を車体22の屋根上に支持している。車体22は、作業員及び機器を積載するための構造物である。走り装置23は、車体22を支持して軌道R上を走行する装置であり、車輪23aと、駆動力発生部23bと、回転検出部23cなどを備えている。車輪23aは、軌道R上を走行する部材であり、左右一対のレールと転がり接触する。駆動力発生部23bは、車輪23aを回転するための駆動力を発生する手段であり、電動機又は内燃機関などの原動機と、この原動機からの動力を車輪23aに伝達する伝達機構部などを備えている。回転検出部23cは、車両21の車輪23aの回転を検出する手段であり、車両21の車輪23aの回転数に応じたパルス信号を発生する速度発電機などである。回転検出部23cは、例えば、車輪23aの1回転毎に所定数のパルス信号(距離パルス信号)を発生して車輪23aの回転数を検出し、この検出結果を回転検出情報(回転検出信号)として制御部35に出力する。
昇降装置24は、研磨装置25の収容部5を昇降する装置である。昇降装置24は、架線Cの電車線材料C1から電気車に電力を導く集電装置(パンタグラフ)に近似した構造であり、実際の集電装置とは異なり集電機能を有さない無集電パンタグラフである。昇降装置24は、上昇した状態で側面から見たときの外観形状が菱形であり前後対称構造である菱形パンタグラフを利用可能である。昇降装置24は、支え部24aと、枠組24bと、台枠24cと、駆動力発生部24dなどを備えている。支え部24aは、研磨装置25の収容部5を支持する部分であり、この収容部5を架線Cに対して水平に押上げるとともにこの収容部5にばねによる緩衝作用を与える。枠組24bは、支え部24aを支持し上下方向に昇降する部材である。枠組24bは、上端が支え部24aに回転自在に連結される上枠24eと、上端が上枠24eに回転自在に連結され、下端が台枠24cに回転自在に連結される下枠24fなどを備えている。台枠24cは、枠組24bを支持する部材であり、車体22の屋根上に支持されており、この車体22との間が碍子などによって電気的に絶縁されている。駆動力発生部24dは、収容部5を昇降させるための駆動力を発生する手段である。駆動力発生部24dは、研磨装置25の使用時には支え部24aを上昇させてガイドローラ8aと電車線材料C1とを接触させ、研磨装置25の非使用時にはこの支え部24aを下降させてこのガイドローラ8aと電車線材料C1とを離間させる。駆動力発生部24dは、作動流体の流体圧によって駆動力を発生する流体圧シリンダなどであり、下枠24fを昇降動作させる主軸にこの流体圧シリンダのピストンロッドが連結されている。
図7及び図8に示す研磨装置25は、電車線材料C1の表面を研磨する装置である。研磨装置1は、架線Cに沿って車両21とともに移動しながら電車線材料C1を研磨し、この電車線材料C1に付着した付着物を除去する。研磨装置25は、車両21に着脱自在に搭載されており、軌道R上を走行しながら電車線材料C1を研磨する自走式の研磨装置である。研磨装置25は、図4〜図6に示す研磨部2と、図2〜図6に示す収容部5と、連結部6と、図2〜図4に示す漏出防止部7と、ガイド部8Aと、図2〜図6に示す開閉部9と、図11に示す噴霧部10と、研磨液貯蔵部11と、回収部12と、分離部13と、循環部14と、収容部15と、流路16A,16Bと、図12に示す回転ブラシ選択部17と、開閉動作選択部18と、電源部19と、図9〜図11に示すスライド部26と、装着部27と、図12に示す線路情報記憶部28と、研磨区間設定部29と、現在位置検出部30と、研磨区間通過判定部31と、研磨開始手動操作部32と、研磨停止手動操作部33と、研磨区間設定情報記憶部34と、制御部35などを備えている。図7及び図8に示す研磨装置25は、図1〜図3に示す研磨装置1とは異なり、昇降装置24が収容部5を支持する構造であるため、ガイド部8B,8Cが省略されている。
図9〜図11に示すスライド部26は、電車線材料C1の長さ方向と交差する方向に収容部5を移動自在にガイドする手段である。スライド部26は、電気車の集電装置のすり板が電車線材料C1と同一箇所で摺動するのを防ぐためにこの電車線材料C1に付与されているジグザグ偏位に収容部5が追従して動作するように、この電車線材料C1の長さ方向と交差する方向(図9及び図10に示すB1,B2方向)に往復移動可能にこの収容部5をガイドする。スライド部26は、図11に示すように、収容部5の進行方向前側と進行方向後側とにそれぞれ配置されており、図9〜図11に示すスライダ26aとガイドレール26bなどを備えている。スライド部26は、右側収容部5Rと左側収容部5Lとに収容部5が結合状態から分割状態に切り替わったときであっても、ガイドローラ8aが電車線材料C1と接触状態を維持するように、スライダ26aによって支持部8cを固定している。スライド部26は、例えば、スライダ26a側の凹部とガイドレール26b側の凸部とをスライド自在に嵌合させて、このガイドレール26bに沿ってスライダ26aを往復移動自在にガイドするリニアガイド装置などである。スライダ26aは、ガイドレール26bによってガイドされる部分である。スライダ26aは、外観が板状の部材であり、収容部5を支持した状態でこの収容部5と一体となってこの収容部5の進行方向に対して左右方向(B1,B2方向)に往復移動可能である。ガイドレール26bは、スライダ26aを移動自在にガイドする部分であり、電車線材料C1の長さ方向と直交する方向に沿って配置されている。
装着部27は、軌道Rに沿って走行する車両21に収容部5を装着する手段である。装着部27は、収容部5の下方にこの収容部5と間隔をあけて配置されており、図9及び図10に示すように収容部5の幅よりも僅かに長く形成されており、図11に示すようにこの収容部5の長さよりも僅かに長く形成されている板状部材である。装着部27は、昇降装置24の支え部24aに着脱自在に装着されており、この昇降装置24を介して車両21に装着される。装着部27は、例えば、無集電パンタグラフの集電舟(舟体)を取り外して、この無集電パンタグラフの集電舟を支持する支え部(舟支え部)に装着可能である。装着部27は、スライド部26のガイドレール26bを支持することによってこのスライド部26を介して収容部5を支持している。
図12に示す線路情報記憶部28は、車両21が走行する線路に関する情報を線路情報として記憶する手段である。線路情報記憶部28は、例えば、車両21が通過する各通過地点の位置、距離及び座標などを線路情報として記憶するメモリであり、各通過地点の位置などが変更されたような場合には変更後の線路情報が書き込まれ記憶される。
研磨区間設定部29は、電車線材料C1の研磨区間Dを設定する手段である。研磨区間設定部29は、図7に示す電車線材料C1の研磨を開始してからこの研磨を終了するまでに車両21が移動する研磨区間(移動距離)Dを任意に設定する。研磨区間設定部29は、電車線材料C1の研磨開始地点から研磨終了地点までを予め設定する必要があるときに作業者によって操作される入力装置などである。研磨区間設定部29は、研磨開始地点に車両21が到達したときに電車線材料C1の研磨を自動的に開始する必要があるときに作業者によって設定される。また、研磨区間設定部29は、研磨終了地点に車両21が到達したときに電車線材料C1の研磨を自動的に終了する必要があるときに作業者によって設定される。研磨区間設定部29は、例えば、図12に示す線路情報記憶部28が記憶する線路情報を参照して、起点から研磨開始地点までの距離と、起点から研磨終了地点までの距離とを設定する。研磨区間設定部29は、電車線材料C1の研磨区間Dを複数設定可能であり、各研磨区間Dに対応する研磨区間設定情報(研磨区間設定信号)を制御部35に出力する。
現在位置検出部30は、車両21の現在位置を検出する手段である。現在位置検出部30は、例えば、軌道R側の特定地点に設置された自動列車停止装置(ATS(Automatic Train Stop))のATS地上子との間で相互に情報を送受信するために車両21側に設置されたATS車上子と、このATS車上子からの信号を受信し起点からATS地上子までの距離を表す絶対位置情報(絶対位置信号)を出力するATS受信機と、ATS受信機が出力する絶対位置情報に基づいて車両21の絶対位置を検出し、次のATS地上子に車両21が到達するまでの間に回転検出部23cが出力する回転数検出信号を積算して車両21の現在位置を演算する演算部などを備えている。現在位置検出部30は、回転検出部23cが出力する回転数検出信号とATS受信機が出力する絶対位置信号とに基づいて、起点からの車両21の移動距離(走行距離)を演算し、車両21の現在位置を現在位置情報(現在位置信号)として制御部35に出力する。
研磨区間通過判定部31は、研磨区間設定部29によって設定される研磨区間Dと現在位置検出部30によって検出される現在位置とに基づいて、この研磨区間Dの車両21の通過を判定する手段である。研磨区間通過判定部31は、研磨区間設定部29が設定した研磨区間Dの起点からの距離と、現在位置検出部30が検出した車両21の起点からの走行距離とに基づいて、図7に示す研磨区間Dに研磨部2が進入したか否かを判定するとともに、この研磨区間Dからこの研磨部2が進出したか否かを判定する。研磨区間通過判定部31は、この判定結果を研磨区間通過判定情報(研磨区間通過判定信号)として制御部35に出力する。
研磨開始手動操作部32は、電車線材料C1の研磨を任意の通過地点で強制的に開始するときに手動操作される手段である。研磨開始手動操作部32は、例えば、電車線材料C1の研磨を任意の通過地点で強制的に開始するときに作業者によって手動で操作される0N/OFFスイッチなどである。研磨開始手動操作部32は、例えば、研磨区間設定部29によって研磨区間Dが設定された場合であっても、任意の位置で電車線材料C1の研磨を開始する必要があるときに作業者によって手動で選択される。研磨開始手動操作部32は、作業者によって研磨動作の強制的な開始が選択されたときには、研磨開始手動操作情報(研磨開始手動操作信号)を制御部35に出力する。
研磨停止手動操作部33は、電車線材料C1の研磨を任意の通過地点で強制的に停止するときに手動操作される手段である。研磨停止手動操作部33は、例えば、電車線材料C1の研磨を任意の位置で強制的に終了するときに作業者によって操作される0N/OFFスイッチなどである。研磨停止手動操作部33は、例えば、研磨区間設定部29によって研磨区間Dが設定されてこの研磨区間Dで研磨を開始している場合に、任意の位置で電車線材料C1の研磨を終了する必要があるときに作業者によって手動で選択される。研磨停止手動操作部33は、作業者によって研磨動作の強制的な終了が選択されたときには、研磨停止手動操作情報(研磨停止手動操作信号)を制御部35に出力する。
研磨区間設定情報記憶部34は、研磨区間設定部29によって設定される研磨区間設定情報を記憶する手段である。研磨区間設定情報記憶部34は、例えば、電車線材料C1の研磨区間Dを記憶するメモリなどである。研磨区間設定情報記憶部34は、電車線材料C1の研磨を開始する研摩開始地点までの起点からの距離と、電車線材料C1の研磨を終了する研摩終了地点までの起点からの距離とを記憶する。
制御部35は、研磨装置25の種々の動作を制御する手段(中央処理部(CPU))である。制御部35は、例えば、研磨区間通過判定部31の判定結果、研磨開始手動操作部32からの指令及び研磨停止手動操作部33からの指令に基づいて、開閉部9、研磨部2、噴霧部10、走り装置23及び昇降装置24などを動作制御する。さらに、制御部35は、研磨部2の駆動力発生部4A〜4Dに研磨動作を指令したり、開閉部9の駆動力発生部9aに開閉動作を指令したり、噴霧部10の超音波振動部10aに振動動作を指令したり、噴霧部10の送風部10bに送風動作を指令したり、循環部14に循環動作を指令したり、電源部19に給電動作を指令したり、走り装置23の駆動力発生部23bに回転動作を指令したり、走り装置23の回転検出部23cに検出動作を指令したり、昇降装置24の駆動力発生部24dに昇降動作を指令したり、線路情報記憶部28から線路情報を読み出したり、現在位置検出部30に検出動作を指令したり、研磨区間通過判定部31に判定動作を指令したり、研磨区間設定情報記憶部34に研磨区間設定情報の記憶を指令したり、研磨区間設定情報記憶部34から研磨区間設定情報を読み出したりする。制御部35には、駆動力発生部4A〜4D、駆動力発生部9a、超音波振動部10a、送風部10b、循環部14、回転ブラシ選択部17、開閉動作選択部18、電源部19、駆動力発生部23b、回転検出部23c、駆動力発生部24d、線路情報記憶部28、研磨区間設定部29、現在位置検出部30、研磨区間通過判定部31、研磨開始手動操作部32、研磨停止手動操作部33及び研磨区間設定情報記憶部34などが通信装置によって相互に通信可能に接続されている。
次に、この発明の第2実施形態に係る電車線材料の研磨装置の動作を説明する。以下では、制御部35の動作を中心として説明する。
図13に示すステップ(以下、Sという)100において、現在位置の検出開始を現在位置検出部30に制御部35が指令する。図7及び図8に示す昇降装置24の駆動力発生部24dが枠組24bを上昇させると、昇降装置24が図8に示す折畳状態から図7に示す上昇状態に切り替わる。その結果、図10に示すように、収容部5が上昇してガイド部8Aのガイドローラ8aが電車線材料C1の下面と接触し、電車線材料C1に沿って収容部5が移動可能にガイドされる。このとき、図12に示す開閉部9の駆動力発生部9aが図10に示す収容部5を右側収容部5Rと左側収容部5Lとに分割しているため、右側収容部5Rと左側収容部5Lとが架線Cから離間し、架線Cに収容部5が接触するのを防止する。次に、図7に示すように、軌道R上を車両21が起点から走行を開始すると、図12に示す回転検出部23cが車輪23aの回転を検出して回転数検出信号を制御部35に出力する。現在位置検出部30にこの回転数検出信号を制御部35が出力すると、現在位置検出部30がこの回転数検出信号に基づいて車両21の現在位置を検出する。
S110において、研磨区間Dが設定されているか否かを制御部35が判断する。例えば、図7に示すように、ある走行区間のみの電車線材料C1を研磨する必要があるときには、研磨区間設定部29によって作業者がこの走行区間を研磨区間Dとして設定し、図12に示す研磨区間設定部29が出力する研磨区間設定情報が研磨区間設定情報記憶部34に記憶されている。このため、研磨区間設定情報記憶部34から研磨区間設定情報を制御部35が読み出して、研磨区間Dが設定されているか否かを制御部35が判断する。研磨区間Dが設定されていると制御部35が判断したときにはS120に進み、研磨区間Dが設定されていないと制御部35が判断したときにはS160に進む。
S120において、研磨区間Dに研磨部2が進入したか否かを制御部35が判断する。現在位置検出部30が出力する現在位置情報を研磨区間通過判定部31に制御部35が出力するとともに、研磨区間設定情報記憶部34から読み出した研磨区間設定情報を研磨区間通過判定部31に制御部35が出力する。その結果、図7に示すように、電車線材料C1に沿って移動する研磨部2が研磨区間Dに進入したか否かを研磨区間通過判定部31が判定し、研磨区間Dに研磨部2が進入したと研磨区間通過判定部31が判定したときには、研磨区間通過判定部31が研磨区間通過判定情報を制御部35に出力する。研磨区間通過判定情報が制御部35に入力したときには、研磨部2が研磨区間Dに進入したと制御部35が判断してS130に進む。一方、研磨区間通過判定情報が制御部35に入力しなかったときには、研磨部2が研磨区間Dに進入していないと制御部35が判断して、研磨区間通過判定情報が入力するまでS120の判断を制御部35が繰り返す。
S130において、研磨動作の開始を制御部35が指令する。現在位置検出部30が出力する現在位置情報と研磨区間設定情報記憶部34から読み出した研磨区間設定情報とに基づいて、車両21が研磨区間Dに接近していると制御部35が判断する。その結果、車両21の走行速度が低下するように、駆動力発生部23bを制御部35が駆動制御する。図7に示すように、研磨部2が低速で研磨区間Dに進入すると、研磨部2が電車線材料C1の研磨開始位置に位置決めされて車両21が一時的に停車するように、駆動力発生部23bを制御部35が駆動制御する。次に、図5及び図9に示すように、右側収容部5Rと左側収容部5Lとが結合して電車線材料C1が収容部5内に収容されるように、図12に示す開閉部9の駆動力発生部9aを制御部35が駆動制御する。
噴霧部10及び循環部14を制御部35が動作制御すると、図11に示すように超音波振動部10aが研磨液Lを霧化し送風部10bが研磨液Lを送出し、電車線材料C1の表面に研磨液Lが噴霧される。例えば、集電装置のすり板が摺動する電車線材料C1の下面を連続して研磨するときには、回転ブラシ選択部17によって回転ブラシ部3A,3Bが選択される。このため、駆動力発生部4A,4Bを制御部35が動作制御すると、研磨液Lが噴霧された電車線材料C1の下面を回転ブラシ部3A,3Bが研磨し、この電車線材料C1の表面に付着した付着物が回転ブラシ部3A,3Bによって除去される。電車線材料C1と電車線材料C2との接合部に研磨部2が位置する場合にも、電車線材料C1と電車線材料C2とが接合状態で収容部5内に収容されて、電車線材料C1の下面が回転ブラシ部3A,3Bによって研磨される。研磨後に発生する研磨屑及び研磨液Lの混合物を回収部12が回収し、この混合物から研磨液Lを分離部13が分離し、分離後の研磨液Lを噴霧部10に循環部14が送出する。研磨部2が電車線材料C1の研磨を終了すると、図10に示すように右側収容部5Rと左側収容部5Lとが分割して電車線材料C1が収容部5内から開放されるように、開閉部9の駆動力発生部9aを制御部35が駆動制御する。次に、研磨部2が微小距離だけ移動するように、現在位置検出部30が出力する現在位置情報に基づいて駆動力発生部23bを制御部35が駆動制御する。研磨部2が低速で微小距離だけ移動すると車両21が一時的に停車するように、駆動力発生部23bを制御部35が駆動制御する。次に、図5及び図9に示すように、右側収容部5Rと左側収容部5Lとが結合して電車線材料C1が収容部5内に収容されるように、開閉部9の駆動力発生部9aを制御部35が駆動制御する。以降は、研磨部2の研磨動作、収容部5の開閉動作、噴霧部10の噴霧動作及び車両21の駆動動作などが間欠的に繰り返されて、電車線材料C1の研磨が継続される。
S140において、研磨区間Dから研磨部2が進出したか否かを制御部35が判断する。図12に示す現在位置検出部30が出力する現在位置情報を研磨区間通過判定部31に制御部35が出力するとともに、研磨区間設定情報記憶部34から読み出した研磨区間設定情報を研磨区間通過判定部31に制御部35が出力する。その結果、電車線材料C1に沿って移動する研磨部2が研磨区間Dから進出したか否かを研磨区間通過判定部31が判定し、研磨区間Dから研磨部2が進出したと研磨区間通過判定部31が判定したときには、研磨区間通過判定部31が研磨区間通過判定情報を制御部35に出力する。研磨区間通過判定情報が制御部35に入力したときには、研磨部2が研磨区間Dから進出したと制御部35が判断してS150に進む。その結果、研磨区間Dの研磨終了位置に車両21が到達して電車線材料C1の研磨を終了すると、図6及び図10に示すように右側収容部5Rと左側収容部5Lとが分割して電車線材料C1が収容部5内から開放されるように、開閉部9の駆動力発生部9aを制御部35が駆動制御する。一方、研磨区間通過判定情報が制御部35に入力しなかったときには、研磨部2が研磨区間Dから進出していないと制御部35が判断して、研磨区間通過判定情報が入力するまでS140の判断を制御部35が繰り返す。
S150において、次の研磨区間Dが設定されているか否かを制御部35が判断する。図7に示すような研磨区間Dを作業者が複数設定したときには、研磨区間設定部29が出力する研磨区間設定情報が研磨区間設定情報記憶部34に研磨順に複数記憶されている。このため、図12に示す研磨区間設定情報記憶部34から研磨区間設定情報を制御部35が読み出して、次の研磨区間Dが設定されているか否かを制御部35が判断する。次の研磨区間Dが設定されていると制御部35が判断したときにはS120に戻り、S120以降の処理を制御部35が繰り返し、研磨区間Dが設定されていないと制御部35が判断したときには制御部35が一連の処理を終了する。
S160において、研磨開始手動指令が入力したか否かを制御部35が判断する。研磨区間設定部29によって作業者が研磨区間を設定していない場合であって、任意の通過地点で強制的に電車線材料C1の研磨を作業者が開始する必要があるときには、研磨開始手動操作部32を作業者が手動で操作する。研磨開始手動操作部32を作業者が操作するとこの研磨開始手動操作部32が出力する研磨開始手動操作情報が制御部35に入力し、研磨開始手動操作情報が入力したか否かを制御部35が判断する。研磨開始手動操作情報が制御部35に入力したときにはS170に進み、研磨開始手動操作情報が制御部35に入力しなかったときには制御部35が一連の処理を終了する。
S170において、研磨動作の開始を制御部35が指令する。車両21が一時的に停車するように、駆動力発生部23bを制御部35が駆動制御し、図5及び図9に示すように右側収容部5Rと左側収容部5Lとが結合して電車線材料C1が収容部5内に収容されるように、図12に示す開閉部9の駆動力発生部9aを制御部35が駆動制御する。次に、噴霧部10及び循環部14を制御部35が動作制御すると、図11に示すように電車線材料C1の表面に研磨液Lが噴霧される。例えば、集電装置のすり板が摺動する電車線材料C1の下面を連続して研磨するときには、研磨液Lが噴霧された電車線材料C1の下面を回転ブラシ部3A,3Bが研磨し、この電車線材料C1の表面に付着した付着物が回転ブラシ部3A,3Bによって除去される。研磨部2が電車線材料C1の研磨を終了すると、図6及び図10に示すように右側収容部5Rと左側収容部5Lとが分割して電車線材料C1が収容部5内から開放されるように、開閉部9の駆動力発生部9aを制御部35が駆動制御する。次に、研磨部2が微小距離だけ移動するように、現在位置検出部30が出力する現在位置情報に基づいて駆動力発生部23bを制御部35が駆動制御する。研磨部2が低速で微小距離だけ移動すると車両21が一時的に停車するように、駆動力発生部23bを制御部35が駆動制御する。次に、図5及び図9に示すように、右側収容部5Rと左側収容部5Lとが結合して電車線材料C1が収容部5内に収容されるように、開閉部9の駆動力発生部9aを制御部35が駆動制御する。以降は、研磨部2の研磨動作、収容部5の開閉動作、噴霧部10の噴霧動作及び車両21の駆動動作などが間欠的に繰り返されて、電車線材料C1の研磨が継続される。
S180において、研磨停止手動指令が入力したか否かを制御部35が判断する。作業者が任意の通過地点で強制的に電車線材料C1の研磨を停止する必要があるときには、研磨停止手動操作部33を作業者が手動で操作する。研磨停止手動操作部33を作業者が操作するとこの研磨停止手動操作部33が出力する研磨停止手動操作情報が制御部35に入力し、研磨停止手動操作情報が入力したか否かを制御部35が判断する。研磨停止手動操作情報が制御部35に入力したときには制御部35が一連の処理を終了し、研磨停止手動操作情報が制御部35に入力しなかったときには、研磨停止手動操作情報が入力するまでS180の判断を制御部35が繰り返す。
この発明の第2実施形態に係る電車線材料の研磨装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第2実施形態では、軌道Rに沿って走行する車両21とともに研磨部2及び噴霧部10が移動し、この研磨部2及びこの噴霧部10を制御部35が動作制御する。このため、軌道Rに沿って車両21を走行させながら電車線材料C1を研磨部2によって連続して自動的に研磨することができる。
(2) この第2実施形態では、研磨区間設定部29によって設定される電車線材料C1の研磨区間Dと、現在位置検出部30によって検出される車両21の現在位置とに基づいて、この研磨区間Dのこの車両21の通過を研磨区間通過判定部31が判定し、この研磨区間通過判定部31の判定結果に基づいて研磨部2及び噴霧部10を制御部35が動作制御する。このため、電車線材料C1の研磨を開始し終了するまでの研磨区間Dを予め設定しておき、この研磨区間Dに車両21が進入してから進出するまでの間に電車線材料C1の研磨を自動的に開始し終了することができる。
(3) この第2実施形態では、電車線材料C1の研磨を任意の通過地点で強制的に開始するときに研磨開始手動操作部32が手動操作され、この研磨開始手動操作部32からの指令に基づいて研磨部2及び噴霧部10を制御部35が動作制御する。このため、電車線材料C1の研磨を緊急に実施する必要があるときなどに、簡単な手動操作によって電車線材料C1の研磨を任意の通過地点から迅速に開始することができる。
(4) この第2実施形態では、電車線材料C1の研磨を任意の通過地点で強制的に停止するときに研磨停止手動操作部33が手動操作され、この研磨停止手動操作部33からの指令に基づいて研磨部2及び噴霧部10を制御部35が動作制御する。このため、電車線材料C1の研磨を直ちに中止する必要があるときなどに、簡単な手動操作によって電車線材料C1の研磨を任意の通過地点から迅速に中止することができる。
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、電車線材料C1を研磨する場合を例に挙げて説明したが、電車線材料C1以外の電車線材料C2〜C5を研磨する場合、トロリ線とトロリ線とを添わせて接続するダブルイヤーを研磨する場合、トロリ線とトロリ線とを突き合わせて接続するスプライサを研磨する場合などについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、研磨部2と噴霧部10とが分離可能な構造である場合を例に挙げて説明したがこれらを一体化することもできる。さらに、この実施形態では、研磨液Lとして水を使用する場合を例に挙げて説明したが、C砥石、アルミナ、クロム、酸化鉄又はこれらの混合物を含有する水などを研磨液Lとして使用することもできる。
(2) この実施形態では、架線Cがシンプルカテナリ式ちょう架方式の架線である場合を例に挙げて説明したが、このような架線方式に限定するものではない。例えば、シンプルカテナリ式ちょう架方式の架線Cのトロリ線とちょう架線との間に補助ちょう架線を1本架設し、補助ちょう架線にトロリ線をハンガイヤーによって吊り下げるコンパウンドカテナリ式ちょう架方式の架線についてもこの発明を適用することができる。同様に、シンプルカテナリ式ちょう架方式の架線を所定の間隔をあけて2組平行に架設したツインシンプルカテナリ式ちょう架方式の架線についてもこの発明を適用することができる。この場合には、電車線材料C1の長さ方向に前後にずらして収容部5を複数設置し、それぞれの収容部5内の研磨部2によって電車線材料C1,C2を研磨することができる。また、この実施形態では、電車線として架空式電車線路を例に挙げて説明したが、架空式電車線路のうち線条ではなく剛体を使用する剛体ちょう架式電車線路、導電性レールを使用する第三軌条式(サードレール式)電車線路、車両21が走行する軌道Rの左右のレールなどについてもこの発明を適用することができる。
(3) この実施形態では、4つの回転ブラシ部3A〜3Dによって電車線材料C1を研磨する場合を例に挙げて説明したが、3つの回転ブラシ部3A,3C,3Dによって電車線材料C1を研磨することもできる。この場合には、電車線材料C1の右斜め上方に回転ブラシ部3Cを配置し、電車線材料C1の左斜め上方に回転ブラシ部3Dを配置し、電車線材料C1の下方に回転ブラシ部3Aを配置することができる。また、この実施形態では、超音波振動部10aによって研磨液Lを霧化する場合を例に挙げて説明したが、電熱線などの加熱部によって研磨液Lを霧化することもできる。また、この実施形態では、電車線材料C1を研磨するときに収容部5を間欠的に開閉してこの収容部5を手動又は自動で移動させる場合を例に挙げて説明したが、このような研磨方法に限定するものではない。例えば、収容部5を閉じた状態でこの収容部5を連続して移動させて、右側収容部5R側の漏出防止部7と左側収容部5L側の漏出防止部7との間を電車線材料C1,C2を通過させることもできる。
(4) この第2実施形態では、昇降装置24として菱形パンタグラフを例に挙げて説明したが、車両21の進行方向に対して非対称であるシングルアーム式パンタグラフなどの他の形式のパンタグラフについてもこの発明を適用することができる。また、この第2実施形態では、現在位置検出部30が回転検出部23cの出力信号とATS車上子の出力信号とに基づいて車両21の現在位置を検出する場合を例に挙げて説明したが、このような検出方法に限定するものではない。例えば、GPS(Global Positioning System(全地球測位システム))又は自律航行装置(ジャイロ)を併用して車両21の現在位置を検出することもできる。例えば、トンネル区間以外の明かり区間を車両21が走行するときにはGPS信号などに基づいて現在位置検出部30が車両21の走行距離を演算し、トンネル区間を車両21が走行するときには回転検出部23cの出力信号とATS車上子の出力信号とに基づいて現在位置検出部30が車両21の走行距離を演算することもできる。