JP2013194341A - 無機系繊維構造体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 細い繊維からなり、嵩高であるにも関わらず、保形性に優れる無機系繊維構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の無機系繊維構造体は、平均繊維径3μm以下の無機系繊維からなる、空隙率が90%以上の無機系繊維構造体であり、部分的に融着している。本発明の無機系繊維構造体は、培養担体として用いることができる。また、本発明の無機系繊維構造体の製造方法は、(1)無機成分を主体とする化合物を含む紡糸用無機系ゾル溶液を用いて、静電紡糸法により無機系繊維を紡糸する工程、(2)前記無機系繊維とは反対極性のイオンを照射し、集積させ、無機系繊維集合体を形成する工程、(3)前記無機系繊維集合体を部分的に融着する工程、を含む。
【選択図】 図1

Description

本発明は、無機系繊維構造体及びその製造方法に関する。本発明の無機系繊維構造体は、例えば、細胞培養担体、スキャフォールド、抗菌材料、断熱材、液体又は気体用濾過材など各種用途に使用することができる。
従来、静電紡糸法によれば、細く繊維径の揃った繊維が3次元のネットワーク構造を成した、孔径が均一な不織布を製造できる。
このような静電紡糸法は、紡糸原液を紡糸空間へ供給するとともに、供給した紡糸原液に対して電界を作用させて延伸して繊維化し、対向電極上に集積させることによって製造する方法である。このように、電界の作用により延伸し、紡糸された繊維は対向電極上に、直接電界の力で集積するため、ペーパー状の不織布になる。しかしながら、断熱材の用途、濾過用途などに使用する場合には、嵩高な不織布であるのが好ましい。
そのため、本願出願人は、紡糸するポリマー溶液(紡糸原液)に電荷を付与するステップ、前記電荷を付与したポリマー溶液(紡糸原液)を紡糸空間へ供給し静電気力により飛翔させるステップ、前記供給して形成した繊維に、前記繊維とは反対極性のイオンを照射するステップ、紡糸した繊維を回収するステップを含む、嵩高な不織布の製造方法(=中和紡糸法、特許文献1、2)を提案した。
この嵩高な不織布は、繊維同士が接着していないか、あるいは、極めて弱く接着した低密度で綿状の不織布であるため、保形性や強度を必要としない用途には適用できたが、液体又は気体用濾過、細胞培養など、保形性や強度を必要とする用途においては、不織布形態を保つことができず、実用に適さない場合があった。
そのため、本願出願人は、「無機系接着剤で接着した無機系繊維不織布であり、前記無機系繊維不織布の空隙率が90%以上、かつ切断荷重が単位目付あたり9.8mN以上であることを特徴とする、無機系繊維不織布」(特許文献3)、及び「平均繊維径3μm以下の無機系ナノファイバーからなる無機系繊維構造体であり、内部を含む全体が無機系接着剤で接着した、空隙率が90%以上の無機系繊維構造体」(特許文献4)を提案した。
特開2004−238749号公報 特開2005−264374号公報 特開2010−185164号公報 国際公開第2010/082603号パンフレット
確かにこれら無機系繊維不織布又は無機系繊維構造体はある程度の保形性を有するものであったが、更に保形性に優れる嵩高な無機系繊維構造体が待望されていた。
本発明はこのような状況下においてなされたものであり、細い繊維からなり、嵩高であるにも関わらず、保形性に優れる無機系繊維構造体を提供することを目的とする。
本発明の請求項1にかかる発明は、「平均繊維径3μm以下の無機系繊維からなる、空隙率が90%以上の無機系繊維構造体であり、部分的に融着していることを特徴とする、無機系繊維構造体」である。
本発明の請求項2にかかる発明は、「無機系接着剤で接着していることを特徴とする、請求項1に記載の無機系繊維構造体」である。
本発明の請求項3にかかる発明は、「培養担体として用いる、請求項1又は請求項2に記載の無機系繊維構造体」である。
本発明の請求項4にかかる発明は、「(1)無機成分を主体とする化合物を含む紡糸用無機系ゾル溶液を用いて、静電紡糸法により無機系繊維を紡糸する工程、(2)前記無機系繊維とは反対極性のイオンを照射し、集積させ、無機系繊維集合体を形成する工程、(3)前記無機系繊維集合体を部分的に融着する工程、を含むことを特徴とする、無機系繊維構造体の製造方法」である。
本発明の請求項5にかかる発明は、「(2)無機系繊維集合体を形成する工程の後に、熱処理する工程を更に含むことを特徴とする、請求項4に記載の無機系繊維構造体の製造方法」である。
本発明の請求項6にかかる発明は、「(3)融着する工程の前又は後に、無機成分を主体とする化合物を含む接着用無機系ゾル溶液に由来する無機系接着剤で、無機系繊維集合体を接着する工程を、更に含むことを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の無機系繊維構造体の製造方法」である。
本発明の請求項1にかかる発明は、平均繊維径3μm以下という細い無機系繊維からなる、空隙率が90%以上と多孔性で嵩高であるにも関わらず、部分的に融着していることによって、保形性に優れる無機系繊維構造体であることを見出したものである。特に、液体中においても、保形性に優れている。また、部分的に融着していることによって、無機系繊維構造体から無機系繊維の離脱を防ぐこともできる。更に、無機系繊維構造体の空隙率が90%以上であるため、断熱材の用途、液体又は気体用濾過用途、細胞等の培養担体用途、スキャフォールド用途、抗菌材料用途など、嵩高であるのが好ましい用途に適用することができる。
本発明の請求項2にかかる発明は、融着していることに加えて、無機系接着剤で接着しているため、更に保形性に優れる無機系繊維構造体である。つまり、溶液中など様々な使用条件下で形態を維持でき、無機系繊維構造体内部を有効に利用できる。例えば、培養基材として使用した場合、3次元に培養でき、細胞が組織環境に近い状態で培養されるため、細胞機能を発現しやすい。また、細胞培養担体として使用し、細胞を固定化、脱水及び乾燥を行なったとしても、無機系繊維構造体の形態を保持することができる。更に、培養担体として使用した場合、細胞に必要不可欠な栄養素や酸素などの供給効率を向上させることができ、かつ、細胞培養に必要な足場が多いため、高密度培養できる。
本発明の請求項3にかかる発明は、培養担体として使用すると、平均繊維径が3μm以下と細く、表面積が広いため、細胞と、細胞との足場となる繊維との接着効率が向上し、更に、細胞に必要不可欠な栄養素や酸素などの供給効率が向上するため、細胞増殖能に優れ、高密度培養できる。また、細胞機能が発現しやすく、培養状態を観察しやすいものである。
本発明の請求項4にかかる発明は、静電紡糸法により細い無機系繊維を紡糸することができ、しかも無機系繊維とは反対極性のイオンを照射して中和していることにより、多孔性で嵩高の無機系繊維集合体とした後に、部分的に融着しているため、保形性に優れ、無機系繊維の離脱のない無機系繊維構造体を製造することができる。
また、静電紡糸法により紡糸された繊維は繊維径が小さいため、表面積が広い無機系繊維構造体を製造することができる。また、孔径分布が均一であることから、無機系繊維構造体内部に均一な空間が存在する無機系繊維構造体を製造することができる。そのため、このようにして製造した無機系繊維構造体を、例えば、培養担体として使用した場合、細胞の足場となる表面積が広いため、表面積が広い均一空間での3次元培養が可能である。また、細胞と、細胞との足場となる繊維との接着効率が向上し、更に、細胞に必要不可欠な栄養素や酸素などの供給効率が向上するため、細胞増殖能に優れ、高密度培養できる。
また、無機系繊維とは反対極性のイオンを照射し、集積して、無機系繊維集合体を形成しており、高い空隙率(嵩高)とすることができる結果、繊維密度が低いため、無機系繊維構造体内部を有効に利用できる無機系繊維構造体を製造することができる。このようにして製造した無機系繊維構造体を、例えば、培養基材として使用した場合、繊維密度が低いため、細胞が培養担体内部まで広がりやすいという効果を奏する。また、無機系繊維とは反対極性のイオンを照射し、集積して、無機系繊維集合体を形成しているため、観察可能なまでの繊維密度と厚さの制御をすることができる。
本発明の請求項5にかかる発明は、無機系繊維集合体を形成した後の熱処理により、繊維同士を接着することができるため、更に保形性に優れる無機系繊維構造体を製造することができる。また、耐熱性も向上する。
本発明の請求項6にかかる発明は、無機系接着剤で無機系繊維集合体を接着しているため、更に保形性に優れる無機系繊維構造体を製造することができる。
本発明の製造方法における無機系繊維の紡糸と集積を実施することのできる静電紡糸装置の一態様を模式的に示す説明図 紡糸用無機系ゾル溶液中に浸したエッジ電極を模式的に示す説明図 紡糸用無機系ゾル溶液中に浸したコンベア状のワイヤ電極を模式的に示す説明図 (a) 沿面放電素子の構造を模式的に示す平面図 (b) 沿面放電素子の構造を模式的に示す側面図 本発明の製造方法における無機系繊維の紡糸と集積を実施することのできる静電紡糸装置の別の一態様を模式的に示す説明図 本発明の製造方法における無機系繊維の紡糸と集積を実施することのできる静電紡糸装置の更に別の一態様を模式的に示す説明図
以下、添付図面に沿って、本発明の製造方法について説明し、その後、本発明の無機系繊維構造体について説明する。
本発明の製造方法は、
(1)無機成分を主体とする化合物を含む紡糸用無機系ゾル溶液を用いて、静電紡糸法により無機系繊維を紡糸する工程(紡糸工程)、
(2)前記無機系繊維とは反対極性のイオンを照射し、集積させ、無機系繊維集合体を形成する工程(集積工程)、
(3)前記無機系繊維集合体を部分的に融着する工程(融着工程)、
を含み、所望により、(2)の集積工程の後に、熱処理する工程を更に含むことができる。また、(3)の融着工程の前又は後に、無機成分を主体とする化合物を含む接着用無機系ゾル溶液に由来する無機系接着剤で、無機系繊維集合体を接着する工程を更に含むことができる。
更には、金属イオン含有化合物含有溶液を前記無機系繊維構造体に付与し、無機系繊維構造体に機能性を付与する工程(金属イオン含有化合物含有溶液付与工程)を更に含むことができる。なお、金属イオン含有化合物含有溶液付与工程に替えて、又は加えて、紡糸工程(1)で使用する紡糸用無機系ゾル溶液に金属イオン含有化合物を添加することができる。また、接着用無機系ゾル溶液に由来する無機系接着剤で無機系繊維集合体を接着する工程を更に含む場合には、金属イオン含有化合物含有溶液付与工程に替えて、又は加えて、接着用無機系ゾル溶液に金属イオン含有化合物を添加することができる。
図1は、本発明の製造方法における紡糸工程(1)及び集積工程(2)を実施することのできる静電紡糸装置の一態様を模式的に示す説明図である。
図1において、静電紡糸装置1は、繊維の原料となる、無機成分を主体とする化合物を含む紡糸用無機系ゾル溶液を吐出できる紡糸ノズル2と、この紡糸ノズル2の先端下方に配置された繊維回収装置である繊維回収容器3内に配置された捕集部材4とを備えている。さらに、紡糸ノズル2に対向して配置され、吐出されて形成する繊維とは反対極性のイオンを発生できるイオン発生手段であると共に、電気的に繊維を吸引できる対向電極5を備えている。紡糸ノズル2には、紡糸用無機系ゾル溶液を供給できるゾル溶液供給機6が接続されており、紡糸ノズル2及び対向電極5には、それぞれ第1高電圧電源7、第2高電圧電源8が接続されている。また、繊維回収容器3には、繊維を繊維回収容器3に吸引できる吸引機9が設けられている。
紡糸ノズル2としては、内径0.01〜5ミリ程度の金属又は非金属パイプを使用できる。また、図2に示すように、紡糸用無機系ゾル溶液21を収容したゾル溶液容器22中に回転するノコギリ状歯車20を浸漬させ、対向電極5に向かうノコギリ状歯車20の先端部20aを電極とするエッジ電極を使用することもできる。同様に図3に示すように、ワイヤ20bをローラー23によってゾル溶液容器22内を回転させ、紡糸用無機系ゾル溶液21の付着したコンベア状のワイヤ20bを電極として使用することもできる。なお、図3においては、対向電極(図示しない)は、紙面に対して垂直に配置されている。さらに、従来の種々の静電紡糸用電極を利用することができる。
対向電極5としては、例えば、コロナ放電用ニードル(高電圧印加あるいは接地でもよい)、コロナ放電用ワイヤ(高電圧印加あるいは接地でもよい)、交流放電素子などが使用できる。この交流放電素子として、図4(a)(b)に示すような沿面放電素子を使用できる。すなわち図4(a)(b)において、沿面放電素子25は、誘電体基板26(例えば、アルミナ膜)を挟んで放電電極27及び誘起電極28を設け、これらの電極間に交流電源29によって交流高電圧を印加することにより、放電電極27部分で沿面放電を起こし、正及び負のイオンを生成させることができる。
紡糸工程(1)では、まず、(1)無機成分を主体とする化合物を含む紡糸用無機系ゾル溶液を形成する。本明細書において「無機成分を主体とする」とは、無機成分が50mass%以上を占めていることを意味し、60mass%以上を占めているのがより好ましく、75mass%以上を占めているのがより好ましい。
この紡糸用無機系ゾル溶液は、本発明の製造方法で最終的に得られる無機系繊維を構成する元素を含む化合物を含む溶液(原料溶液)を、100℃以下程度の温度で加水分解させ、縮重合させることによって得ることができる。前記原料溶液の溶媒は、例えば、有機溶媒(例えば、アルコール)及び/又は水であることができる。
この化合物を構成する元素は特に限定するものではないが、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、又はルテチウムなどを挙げることができる。
前記の化合物としては、例えば前記元素の酸化物を挙げることができ、具体的には、SiO、Al、B、TiO、ZrO、CeO、FeO、Fe、Fe、VO、V、SnO、CdO、LiO、WO、Nb、Ta、In、GeO、PbTi、LiNbO、BaTiO、PbZrO、KTaO、Li、NiFe、SrTiOなどを挙げることができる。前記無機成分は、一成分の酸化物から構成されていても、二成分以上の酸化物から構成されていても良い。例えば、SiO−Alのニ成分から構成されていても良い。
前記の紡糸用無機系ゾル溶液は、後述する繊維を形成する工程において紡糸が可能となる粘度を有していることが必要である。その粘度は、紡糸可能な粘度である限り特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜100ポイズ、より好ましくは0.5〜20ポイズ、特に好ましくは1〜10ポイズ、最も好ましくは1〜5ポイズである。粘度が100ポイズを超えると細繊維化が困難となり、0.1ポイズ未満になると繊維形状が得られなくなる傾向があるためである。なお、ノズルを使用する場合には、ノズル先端部分における雰囲気を原料溶液の溶媒と同様の溶媒ガス雰囲気とすることにより、100ポイズを超える紡糸用無機系ゾル溶液であっても紡糸可能な場合がある。
紡糸工程(1)で用いる紡糸用無機系ゾル溶液は、上述のような無機成分以外に、有機成分を含んでいることができ、この有機成分として、例えば、シランカップリング剤、染料などの有機低分子化合物、ポリメチルメタクリレートなどの有機高分子化合物、などを挙げることができる。より具体的には、前記原料溶液に含まれる化合物がシラン系化合物である場合には、メチル基やエポキシ基で有機修飾されたシラン系化合物が縮重合したものを含んでいることができる。
前記原料溶液は、前記原料溶液に含まれる化合物を安定化する溶媒[例えば、有機溶媒(例えば、エタノールなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド)又は水]、前記原料溶液に含まれる化合物を加水分解するための水、及び加水分解反応を円滑に進行させる触媒(例えば、塩酸、硝酸など)を含んでいることができる。また、前記原料溶液は、例えば、化合物を安定化させるキレート剤、前記化合物の安定化のためのシランカップリング剤、圧電性などの各種機能を付与することができる化合物、接着性改善、柔軟性、硬度(もろさ)調整のための有機化合物(例えば、ポリメチルメタクリレート)、あるいは染料などの添加剤を含んでいることができる。なお、これらの添加剤は、加水分解を行う前、加水分解を行う際、或いは加水分解後に添加することができる。
また、前記原料溶液は、無機系又は有機系の微粒子を含んでいることができる。前記無機系微粒子としては、例えば、酸化チタン、二酸化マンガン、酸化銅、二酸化珪素、活性炭、金属(例えば、白金)を挙げることができ、有機系微粒子として、色素又は顔料などを挙げることができる。また、微粒子の平均粒径は特に限定されるものではないが、好ましくは0.001〜1μm、より好ましくは0.002〜0.1μmである。このような微粒子を含んでいることによって、光学機能、多孔性、触媒機能、吸着機能、或いはイオン交換機能などを付与することができる。更に、前記原料溶液は後述の金属イオン含有化合物を含有していても良い。
テトラエトキシシランの場合、水の量がアルコキシドの4倍(モル比)を超えると曳糸性のゾル溶液を得ることが困難になるため、アルコキシドの4倍以下であるのが好ましい。
なお、触媒として塩基を使用すると、曳糸性のゾル溶液を得ることが困難になるため、塩基を使用しないのが好ましい。
また、反応温度は使用溶媒の沸点以下であれば良いが、低い方が、適度に反応速度が遅く、曳糸性のゾル溶液を形成しやすい。あまり低すぎても反応が進行しにくいため、10℃以上であるのが好ましい。
前述のような静電紡糸装置1による無機系繊維集合体の形成[すなわち、紡糸工程(1)及び集積工程(2)]は、次のように行われる。
まず、紡糸する繊維の原料となる紡糸用無機系ゾル溶液をゾル溶液供給機6から紡糸ノズル2に供給する。次に、紡糸ノズル2及び対向電極5間に高電圧を印加した状態で、紡糸ノズル2の先端から紡糸用無機系ゾル溶液を吐出する。すると、帯電した液状のゾル溶液はその溶媒が揮発し、凝固してゲル状の無機系繊維となり対向電極5に向かって飛翔する[以上、紡糸工程(1)]。このとき、紡糸ノズル2に対向して配置された対向電極5から、繊維に向かってイオン5aが照射される。このイオンによって繊維の帯電が中和され、静電気力による飛翔力を失い、重力に従って落下、微風により、或いは吸引機9により吸引され、繊維は繊維回収容器3の方向へ飛翔し、繊維回収容器3内の捕集部材3の上に集積する。従って、低密度で綿状の無機系繊維集合体を得ることができる[以上、集積工程(2)]。
なお、イオンの発生及び照射は、連続的に又は不連続的に行うことができる。また、紡糸ノズル2と対向電極5との間に電界が生じれば良く、いずれか一方のみに高電圧を印加し、他方を接地しても良い。また、紡糸ノズル2は加熱されていても、加熱されていなくても良い。
図5は、本発明の製造方法における紡糸工程(1)及び集積工程(2)を実施することのできる静電紡糸装置の別の一態様を模式的に示す説明図である。
図5において、静電紡糸装置1Aは、図1におけるイオンを発生できると共に、繊維を吸引できる対向電極5に替えて、電離放射線を照射できる電離放射線源10と、繊維を吸引できるネット状の対向電極5(第3高電圧電源11に接続されている)を用いること以外は、図1における静電紡糸装置1と同様の構成であるため、重複する説明は割愛する。
静電紡糸装置1Aにおいて、第1高電圧電源7及び/又は第3高電圧電源11により所定の電圧を紡糸ノズル2及び/又は対向電極5に印加することにより、紡糸ノズル2と対向電極5との間に電位差が生じ、繊維は電気的に吸引されて、対向電極5に向かって飛翔する[以上、紡糸工程(1)]。この飛翔する繊維に対して、電離放射線源10から電離放射線10aを照射し、気体をイオン化して、イオン源として作用する。このイオンによって、繊維の帯電が中和され、静電気力による飛翔力を失い、重力に従って落下、微風により、或いは吸引機9により吸引され、繊維が繊維回収容器3に向かって飛翔し、捕集部材4の上に集積する。従って、低密度で綿状の無機系繊維集合体を得ることができる[以上、集積工程(2)]。電離放射線源10を使用した場合には、その線量を紡糸ノズル2と対向電極5との間の電位差の形成とは独立して調節できるため、安定して無機系繊維集合体を得ることができる。
なお、電離放射線源10としては種々の放射線源を使用することができ、特にX線照射装置が望ましい。なお、対向電極5は紡糸ノズル2との間に電位差が生じれば良く、接地されていても、電圧が印加されていても良い。また、電離放射線源10は、繊維に対して放射線を照射できれば良く、対向電極5の背後に位置している必要はない。さらに、対向電極5はネット状である必要はなく、電離放射線が透過できれば種々の部材を使用することができ、蒸着フィルムであっても使用できる。
図6は、本発明の製造方法における紡糸工程(1)及び集積工程(2)を実施することのできる静電紡糸装置の更に別の一態様を模式的に示す説明図である。
図6において、静電紡糸装置1Bは、第1紡糸ノズル2aと第2紡糸ノズル2bとが、互いに対向して配置されている。第1紡糸ノズル2aには、紡糸用無機系ゾル溶液を供給できる第1ゾル溶液供給機6a及び高電圧を印加できる第1高電圧電源7が接続され、第2紡糸ノズル2bには、紡糸用無機系ゾル溶液を供給できる第2ゾル溶液供給機6b及び第1高電圧電源7とは反対極性の高電圧を印加できる第2高電圧電源8がそれぞれ接続されている。その他は、静電紡糸装置1と同様な構成であるため、重複する説明は割愛する。
静電紡糸装置1Bにおいて、第1高電圧電源7及び第2高電圧電源8により互いに反対極性の電圧を、それぞれ第1紡糸ノズル2a、第2紡糸ノズル2bに印加しながら、第1紡糸ノズル2a及び第2紡糸ノズル2bから紡糸用無機系ゾル溶液を吐出する[以上、紡糸工程(1)]。すると、互いに反対極性に帯電した繊維は、対向して吐出されることにより接触及び接近して電荷が中和され、静電気力による飛翔力を失い、重力に従って落下、微風により、或いは吸引機9により吸引され、繊維は繊維回収容器3に向かって飛翔し、捕集部材4の上に集積する。従って、低密度で綿状の無機系繊維集合体を得ることができる[以上、集積工程(2)]。なお、第1紡糸ノズル2aからのゾル溶液吐出条件と、第2紡糸ノズル2bからのゾル溶液吐出条件とが異なるように調整することにより、繊維径が異なる、繊維構成材の組成が異なるなど、異種の無機系繊維が混在する無機系繊維集合体を製造できる。
なお、第1紡糸ノズル2a及び第2紡糸ノズル2bからの紡糸用無機系ゾル溶液の吐出は、連続的に又は不連続的に行うことができる。また、第1紡糸ノズル2aと第2紡糸ノズル2bとの間に電界が生じれば良く、これらのいずれか一方のみに高電圧を印加し、他方を接地しても良い。また、第1紡糸ノズル2a及び第2紡糸ノズル2bは加熱されていても、加熱されていなくても良い。
上述した静電紡糸装置1、静電紡糸装置1A、静電紡糸装置1Bにおいては、1つの紡糸ノズル2、2a、2bに対して1本の紡糸ノズルを使用した態様であるが、紡糸ノズルは1本である必要はなく、生産性を高めるために、2本以上の紡糸ノズルを備えていることができる。
また、これらの静電紡糸装置においては、紡糸空間における空気の速度を5〜100cm/秒、好ましくは10〜50cm/秒とすることができるように、捕集部材4の下方に吸引機9を設けているが、吸引機9に加えて、又はこれに替えて、送風装置を捕集部材4の上方に設けることができる。これによって、繊維の捕集性を向上させ、安定して無機系繊維集合体を製造することができる。
集積工程(2)で得られた無機系繊維集合体は、そのままの状態で次の融着工程(3)に供給することができるし、熱処理した後に、次の融着工程(3)に供給することもできる。この熱処理(以下、後述の「接着用熱処理」と区別する必要がある場合、「集積後熱処理」と称することがある)を実施することにより、繊維同士を接着することができるため、保形性に優れる無機系繊維構造体を製造することができる。また、耐熱性も向上する。
この集積後熱処理は、例えば、オーブン、焼結炉等を用いて実施することができ、その温度は無機系繊維集合体を構成する無機成分によって適宜設定する。
この集積後熱処理温度は200℃以上であるのが好ましく、300℃以上であるのが好ましい。このような温度で集積後熱処理をすると、無機系繊維集合体の構造が安定化及び強度が増す、つまり、繊維同士がその交点で点状に接着するため、次の融着工程等の際に、無機系繊維集合体の形態を維持することができる。
この集積後熱処理の温度が500℃以下であると、無機系繊維構造体の親水性を高めることができる。また、培養基材として使用する場合には、細胞をスフェロイド形態で培養しやすい。例えば、無機系繊維が水酸基を有する場合、500℃以下の温度で集積後熱処理を実施することによって、繊維単位重量あたりの水酸基量を50μmol/g以上とすることができるため、親水性に優れている。
一方で、集積後熱処理の温度を500℃よりも高くすることによって、無機系繊維同士の接着力が高まるため、無機系繊維集合体の強度を高めることができる。また、集積後熱処理の温度を500℃よりも高くすることによって、疎水性を高めることができるため、例えば、培養基材として使用した場合には、細胞の接着性を高めることができ、細胞をシート形態で培養しやすい。
集積工程(2)で得られた無機系繊維集合体は、そのままの状態で融着工程(3)に供給することができるし、前述のように集積後熱処理した後に、融着工程(3)に供給することもできる。
この融着工程(3)は、静電紡糸法により形成した細い繊維からなり、無機系繊維とは反対極性のイオンを照射することにより低密度で嵩高とした、無機系繊維集合体の嵩高さを損なうことなく、保形性を有するように、無機系繊維集合体を部分的に融着して、本発明の無機系繊維構造体を製造する。また、部分的に融着することによって、無機系繊維の離脱も防ぐことができる。
この部分的に融着した部分はドット状又はライン状であることができ、前者のドット状である場合、その形状は、例えば、長方形などの矩形、円形、楕円形、長円形などの丸形、又はこれらの組合せであることができ、後者のライン状である場合、直線、曲線又はこれらの組合せであることができる。特に、無機系繊維集合体の外縁をライン状又はドット状に融着すると、無機系繊維構造体の保形性に優れているため好適である。
このように外縁を融着加工する場合、保形性に優れているように、外縁部における無機系繊維構造体の厚さ方向における内部においても、無機系繊維が融着するように、融着加工するのが好ましい。具体的には、外縁部における無機系繊維構造体の厚さ方向における断面の電子顕微鏡写真において、粒状の塊(融着部)の占める面積が、無機系繊維構造体の断面積の5%以上となるように、好ましくは10%以上となるように、更に好ましくは15%以上となるように、更に好ましくは20%以上となるように、融着加工を行うのが好ましい。なお、前記粒状の塊(融着部)の占める面積が5%未満であっても、融着部の数が5ヶ所以上であるように融着加工を実施すれば、保形性に優れる無機系繊維構造体を製造できる。
なお、後述のような無機系接着剤で接着しない場合には、無機系繊維集合体の外縁をライン状又はドット状に融着加工するとともに、無機系繊維集合体の主面における、融着加工した外縁よりも内側においても、ドット状又はライン状に部分的に融着して、保形性を高めるのが好ましい。このように、無機系繊維集合体の主面における、融着加工した外縁よりも内側においても融着加工する場合、保形性に優れるように、主面における融着加工した外縁よりも内側における融着総面積が、主面における融着した外縁に囲まれた面積の5%以上を占めるように融着加工を実施するのが好ましく、10%以上を占めるように融着加工するのがより好ましい。なお、主面における融着した外縁に囲まれた領域における融着部が1点以上であるように融着加工するのが好ましく、5点以上であるように融着加工するのがより好ましい。また、主面における融着した外縁に囲まれた領域に2点以上融着加工する場合、任意に設定した箇所に融着加工することができるが、融着部が分散するように融着加工すると、保形性の点で優れている。
このように、無機系繊維集合体を部分的に融着する方法としては、例えば、集光した光やレーザーを照射する方法、ガスバーナーを使用する方法、放電を使用する方法、電子ビームを使用する方法、などを挙げることができる。これらの中でもレーザーによる方法は、熱源が広範囲に広がらず、所望箇所のみを融着させるのが容易で、また、非接触であることから小さい歪で融着させることができるため、嵩高性を損なうことがなく、更には、瞬時に伝送・投下が可能な熱源であるため、好適である。
本発明の無機系繊維構造体は上述のような、紡糸工程(1)、集積工程(2)及び融着工程(3)により製造することができるが、融着工程(3)の前又は後に、無機成分を主体とする化合物を含む接着用無機系ゾル溶液に由来する無機系接着剤で、無機系繊維集合体を接着する工程(接着工程)を含んでいると、無機系繊維構造体の保形性及び無機系繊維の離脱防止性を更に高めることができる。
この接着工程は無機系繊維集合体の表面のみなど一部のみを接着しても良いが、保形性、離脱防止性を高める意味では無機系繊維集合体の内部を含む全体を無機系接着剤で接着するのが好ましい。なお、無機系繊維集合体の全体を無機系接着剤で接着する際に嵩が潰れてしまわないように、接着用無機系ゾル溶液を付与した後の余剰の接着用無機系ゾル溶液は、通気により除去するのが好ましい。
この接着用無機系ゾル溶液を構成する化合物としては、無機系繊維を構成する元素を含む化合物と同様のものを使用できるが、無機系繊維集合体を接着できる限り、紡糸用無機系ゾル溶液と同じであっても異なっていてもよい。例えば、接着用無機系ゾル溶液は曳糸性である必要はなく、曳糸性がなくてもよい。また、粒子が含まれていてもよい。更に、紡糸用無機系ゾル溶液を希釈したものであってもよく、濃度は適宜選択することができる。特には、金属アルコキシド加水分解縮合物であるのが好ましい。更に、接着用無機系ゾル溶液は金属イオン含有化合物を含有していても良い。
この接着用無機系ゾル溶液の無機系繊維集合体への付与は無機系繊維集合体に付与できる限り、特に限定するものではないが、その全体に均一に、すなわち、無機系繊維集合体の外側部分と同様に、内部まで接着用無機系ゾル溶液を到達させ、付与できるように、例えば、無機系繊維集合体を接着用無機系ゾル溶液に浸漬することにより、付与するのが好ましい。なお、集積工程(2)の後に、無機系繊維集合体の集積後熱処理を実施した場合には、接着用無機系ゾル溶液に浸漬してもばらけにくいため、接着用無機系ゾル溶液に浸漬する場合には集積後熱処理を実施するのが好ましい。
このように、無機系繊維集合体を接着用無機系ゾル溶液に浸漬した場合には、無機系繊維集合体に含まれる余剰の接着用無機系ゾル溶液を、通気により除去するのが好ましい。無機系繊維集合体は、無機系繊維から構成されているため、吸引及び/又は加圧により通気させて余剰の接着用無機系ゾル溶液を除去しても、厚さを潰すことがなく、また、繊維間に被膜を形成することなく、無機系接着剤で接着することができるためである。
無機系繊維集合体を無機系接着剤で接着する場合、接着用無機系ゾル溶液を無機系繊維集合体に付与した後に、室温で自然乾燥するか、熱処理(「接着用熱処理」ということがある)をして接着することができる。接着用熱処理する場合、接着用無機系ゾル溶液に含まれる溶媒などを揮発させることができれば良く、例えば、80〜150℃の温度で10〜30分間保持することにより実施することができる。
なお、この接着用熱処理においては、接着用無機系ゾル溶液に含まれる溶媒などを揮発させた後に、所望により、接着用無機系ゾル溶液及び/又は無機系繊維を無機化するために、焼成処理を行なうことができる。この焼成処理を実施することにより、接着用無機系ゾル溶液を無機化した場合には、無機系繊維集合体の繊維交点を接着した無機系接着剤の強度及び耐熱性が向上し、無機系繊維を無機化した場合には、無機系繊維の強度及び耐熱性が向上する。この焼成処理は、例えば、焼結炉やオーブンを用いて実施することができ、その温度は無機系接着剤又は無機系繊維を構成する無機成分によって適宜設定する。一般的に焼成温度は200℃以上であることが好ましく、より好ましくは300℃以上である。なお、焼成をする場合には、無機系繊維間に被膜を形成することなく、また、空隙率を下げることのないように、無加重で焼成を実施するのが好ましい。
この接着用熱処理(焼成処理を含む)の温度が500℃以下であると、無機系繊維構造体の親水性を高めることができる。また、培養基材として使用する場合には、細胞をスフェロイド形態で培養しやすい。例えば、無機系繊維が水酸基を有する場合、500℃以下の温度で接着用熱処理(焼成処理を含む)を実施することによって、繊維単位重量あたりの水酸基量を50μmol/g以上とすることができるため、親水性が向上する。
一方で、この接着用熱処理温度(焼成処理を含む)を500℃よりも高くすることによって、無機系繊維同士の接着力が高まり、無機系繊維構造体の強度及び耐熱性を高めることができる。また、無機系繊維構造体の疎水性を高めることができる。このような疎水性を高めた無機系繊維構造体を培養基材として使用すると、細胞の接着性を高めることができ、細胞をシート形態で培養することができる。
本発明においては、紡糸工程(1)、集積工程(2)、融着工程(3)及び/又は接着工程に加えて、金属イオン含有化合物含有溶液を無機系繊維構造体に付与し、機能性を無機系繊維構造体に付与することができる。
この金属イオン含有化合物を構成する金属として、例えば、カルシウム、ナトリウム、鉄、マグネシウム、カリウム、銅、ヨウ素、セレン、クロム、亜鉛、又はモリブデンなどを挙げることができる。これらの金属は、細胞機能誘導因子又は抗菌作用を奏する。
この金属イオン含有化合物は、例えば、金属塩であることができ、金属塩としては、例えば、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、リン酸水素塩、炭酸水素塩、硝酸塩、水酸化物などを挙げることができる。特に、カルシウムイオン含有塩、マグネシウムイオン含有塩、アパタイト(りん灰石)を付与すると、細胞機能を高めた細胞培養を行うことができる。
この金属イオン含有化合物の付与方法としては、例えば、金属イオン含有化合物含有溶液中に無機系繊維構造体を浸漬する方法、金属イオン含有化合物含有溶液を無機系繊維構造体に塗布又はスプレーする方法などを挙げることができる。無機系繊維がシリカ繊維の場合、金属イオン含有化合物含有溶液に浸漬、金属イオン含有化合物含有溶液を塗布又はスプレーした後、熱処理(焼成処理)を行い、金属イオン含有化合物を高濃度で付与するのが好ましい。
より具体的には、カルシウムイオン含有塩又はマグネシウムイオン含有塩を付与した機能性を有する無機系繊維構造体は、例えば、カルシウム塩又はマグネシウム塩を適当な溶媒(例えば、低級アルコール)に溶解した溶液に、無機系繊維構造体を浸漬することにより、あるいは、前記溶液を塗布又はスプレーすることにより得ることができる。
また、アパタイトを付与した機能性を有する無機系繊維構造体は、例えば、シリカ繊維のように、表面に水酸基を含む無機系繊維を、少なくともリン酸イオンとカルシウムイオンを含む人工体液中に浸漬させることにより、無機系繊維上にアパタイトを析出させることができる。無機系繊維がシリカ繊維の場合(特に、骨培養基材用繊維構造体とする場合)には、集積後熱処理を行なわないか、集積後熱処理を行う場合には、無機系繊維集合体を500℃以下の温度で集積後熱処理するのが好ましく、120〜300℃で集積後熱処理するのがより好ましい。このような集積後熱処理であることによって、繊維単位重量あたりの水酸基量を50μmol/g以上とすることができ、好ましくは100μmol/g以上とすることができる。
また、接着用無機系ゾル溶液を付与した後の接着用熱処理(乾燥及び/又は焼成)においても、上記集積後熱処理と同様の温度範囲で行い、繊維単位重量あたりの水酸基量を50μmol/g以上(より好ましくは100μmol/g以上)とするのが好ましい。
本発明の無機系繊維構造体は、平均繊維径3μm以下の無機系繊維からなる、空隙率が90%以上の無機系繊維構造体であり、部分的に融着している、保形性に優れ、無機系繊維の離脱しにくいものであり、所望により、金属イオン含有化合物を含んでいる。このような本発明の無機系繊維構造体は、例えば、前述のような製造方法により作製することができる。
本発明における無機系繊維には、例えば、無機系ゲル状繊維、無機系乾燥ゲル状繊維又は無機系焼結繊維が含まれる。
無機系ゲル状繊維とは、溶媒を含む状態の繊維であり、例えば、無機系繊維の原料がテトラエトキシシラン(TEOS)、エタノール、水、塩酸からなる場合は、最も沸点の高い物質が水であるため、100℃未満の温度で熱処理をした、又は熱処理をしていない繊維である。
また、無機系乾燥ゲル状繊維とは、無機系ゲル状繊維中に含まれる溶媒などが抜けた状態を意味する。例えば、無機系繊維の原料がテトラエトキシシラン(TEOS)、エタノール、水、塩酸からなる場合は、最も沸点の高い物質が水であるため、100℃以上の温度で熱処理をした繊維である。
更に、無機系焼結繊維とは、無機系乾燥ゲル状繊維(多孔質)が、焼結(無孔質)した状態を意味する。例えば、無機系繊維の原料がシリカ系の場合は、800℃以上で熱処理をした繊維である。
本発明の無機系繊維構造体においては、無機系繊維の平均繊維径は表面積が広く、機能性に優れるように3μm以下である。好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1μm以下である。本発明における「平均繊維径」は繊維50点における繊維径の算術平均値をいい、「繊維径」は無機系繊維構造体を撮影した5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定した、無機系繊維の長さ方向に対して直交する方向における距離を無機系繊維の直径とし、無機系繊維の横断面形状が非円形であったとしても、無機系繊維の長さ方向に対して直交する方向における距離を無機系繊維の直径とする。
無機系繊維構造体の形態は、例えば、不織布のような二次元的形態、中空円筒形、円筒形などの三次元的形態などであることができる。なお、三次元的形態の無機系繊維構造体は、例えば、不織布形態等の二次元的形態の無機系繊維集合体を成形することによって製造できる。或いは、無機系繊維を三次元的形態で捕集した後に、部分的に融着、場合により無機系接着剤でも接着して製造することができる。
本発明の無機系繊維構造体は、空隙率が90%以上の高い空隙率(嵩高)を有し、繊維密度が低いため、無機系繊維構造体の内部を有効に利用することができ、例えば、断熱材の用途、液体又は気体用濾過用途、細胞等の培養担体用途、スキャフォールド用途、抗菌材料用途など、嵩高であるのが好ましい用途に適用することができる。特に、培養担体として使用した場合、平均繊維径が3μm以下と細く、表面積が広いため、細胞と、細胞との足場となる繊維との接着効率が向上し、更に、繊維密度が低く、細胞が培養担体の内部まで広がりやすく、また、細胞に必要不可欠な栄養素や酸素などの供給効率が向上するため、細胞増殖能に優れ、高密度培養できる。好ましい空隙率は91%以上であり、より好ましくは92%以上であり、更に好ましくは93%以上であり、更に好ましくは94%以上である。上限は特に限定するものではないが、保形性の点から99.9%以下であるのが好ましい。
なお、「空隙率」は次の式から算出することができる。
P=[1−Wf/(V×SG)]×100
ここで、Pは空隙率(%)、Wfは繊維重量(g)、Vは体積(cm)、SGは繊維の比重(g/cm)をそれぞれ表す。
例えば、不織布のように厚さが均一な場合、次の式から算出することができる。
P=[1−Wn/(t×SG)]×100
ここで、Pは空隙率(%)、Wnは目付(g/m)、tは厚さ(μm)、SGは繊維の比重(g/cm)をそれぞれ表す。
なお、目付は、最も面積の広い面の面積と重量を測定し、1m当たりの重量に換算した値であり、厚さは、最も面積の広い面における荷重が30g/cmとなるように設定したマイクロメーターで測定した値である。
本発明の無機系繊維構造体は部分的に融着した状態にあるため、保形性に優れ、無機系繊維が離脱しにくい。特に、液体中においても、保形性に優れている。
この部分的に融着した部分はドット状又はライン状であることができ、前者のドット状である場合、その形状は、例えば、長方形などの矩形、円形、楕円形、長円形などの丸形、又はこれらの組合せであることができ、後者のライン状である場合、直線、曲線又はこれらの組合せであることができる。特に、無機系繊維集合体の外縁をライン状又はドット状に融着していると、無機系繊維構造体の保形性に優れているため好適である。
このように外縁が融着している場合、保形性に優れているように、外縁部における無機系繊維構造体の厚さ方向における内部においても、無機系繊維が融着しているのが好ましい。具体的には、外縁部における無機系繊維構造体の融着部を含む厚さ方向断面の電子顕微鏡写真において、粒状の塊(融着部)の占める面積が、無機系繊維構造体の断面積の5%以上を占めており、好ましくは10%以上占めており、更に好ましくは15%以上占めており、更に好ましくは20%以上占めている。なお、前記粒状の塊(融着部)の占める面積が5%未満であっても、融着部の数が5ヶ所以上であるように融着していれば、保形性に優れる無機系繊維構造体である。
なお、外縁部における無機系繊維構造体の厚さ方向断面における、粒状の塊(融着部)の占める面積の比率及び融着部の数は、次の操作により得られる値をいう。
(1)無機系繊維構造体の融着部を含む厚さ方向断面の電子顕微鏡写真を撮影する。
(2)前記電子顕微鏡写真において、融着部分における厚さを一辺(短辺)とし、前記厚さの5倍の長さを一辺(長辺)とする長方形の枠を任意の箇所に設定し、測定領域を確定する。
(3)前記測定領域内における粒状の塊(融着部)の占める面積、又は融着部の数を測定する。なお、粒状の塊(融着部)の占める面積の比率(Arc)は、次の式から算出する。
Arc=(Atc/Amc)×100
ここで、Atcは測定した融着部の面積の総和、Amcは測定領域の面積、をそれぞれ意味する。
なお、無機系接着剤で接着していない場合には、無機系繊維構造体の外縁がライン状又はドット状に融着しているとともに、無機系繊維構造体の主面における融着した外縁よりも内側においても、ドット状又はライン状に部分的に融着しているのが好ましい。保形性に優れているためである。このように、無機系繊維構造体の主面における融着した外縁よりも内側においても融着している場合、保形性に優れるように、融着した外縁よりも内側における融着部の総面積が、主面における融着した外縁に囲まれた面積の5%以上を占めるように融着しているのが好ましく、10%以上を占めるように融着しているのがより好ましい。なお、無機系繊維構造体の主面における融着部が1点以上であるように融着しているのが好ましく、5点以上で融着しているのがより好ましい。また、主面における融着した外縁に囲まれた領域に2点以上融着している場合、任意の箇所で融着していることができるが、融着部が分散して融着していると、保形性の点で優れている。
なお、無機系繊維構造体の主面における融着した外縁よりも内側において、粒状の塊(融着部)の占める面積の比率及び融着部の数は、次の操作により得られる値をいう。
(1) 無機系繊維構造体の主面全体の電子顕微鏡写真を撮影する。
(2) 無機系繊維構造体の主面における外縁の粒状の塊(融着部)により囲まれた領域の面積を測定する。
(3) 無機系繊維構造体の主面における外縁の粒状の塊(融着部)により囲まれた領域における、粒状の塊(融着部)の占める面積、又は融着部の数を測定する。なお、粒状の塊(融着部)の占める面積の比率(Ars)は、次の式から算出する。
Ars=(Ats/Ams)×100
ここで、Atsは無機系繊維構造体の主面における融着部の占める面積の総和、Amsは無機系繊維構造体の主面における外縁の粒状の塊(融着部)により囲まれた領域の面積、をそれぞれ意味する。
本発明における「融着」とは、繊維が溶融して繊維形状を喪失し、繊維横断面積の2倍以上の大きさを有する粒状の塊の状態で固着し、繊維間に介在していることをいう。このような状態は、無機系繊維構造体の厚さ方向における断面電子顕微鏡写真、及び/又は無機系繊維構造体の主面における電子顕微鏡写真から確認することができる。なお、「繊維横断面積」は前述の平均繊維径を基に、計算上得られる横断面積をいう。また、「繊維が溶融して粒状の塊の状態で固着している」ことは、EDX(エネルギー分散型X線分析:Energy dispersive X-ray spectrometry)などの微小領域を分析可能な元素分析により、繊維を構成する元素と粒状の塊を構成する元素とが同じであることによって確認できる。
本発明の無機系繊維構造体を培養基材として用いる場合、繊維単位重量あたりの水酸基量は親水性に優れるように、50μmol/g以上であるのが好ましく、100μmol/g以上であるのがより好ましく、200μmol/g以上であるのが更に好ましく、300μmol/g以上であるのが更に好ましく、400μmol/g以上であるのが更に好ましく、500μmol/g以上であるのが更に好ましい。
この繊維単位重量あたりの水酸基量は無機系繊維構造体の水酸基量を水酸基量測定に用いた無機系繊維構造体の繊維量(単位:g)で除した商である。
なお、水酸基量は中和滴定法を用いて定量した値である。つまり、無機系繊維構造体を20vol%の塩化ナトリウム水溶液50mL中に分散させた後、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を中和点まで滴下し、中和に必要な水酸化ナトリウム滴下量から、無機繊維構造体の水酸基量を決定する(参考文献参照)。
(参考文献)George W S.,Determination of Specific Sufface Area of Colloidal Silica by Titration with Sodium Hydroxide,Anal.Cheam.;28,1981-1983,(1956)
本発明の無機系繊維構造体は無機系接着剤で接着されているのが好ましい。更に保形性に優れ、無機系繊維の離脱も生じにくいためである。特に、無機系繊維構造体の内部を含む全体において、無機系繊維間に被膜を形成することなく、無機系接着剤で接着されていると、無機系繊維構造体の内部構造を損なうことなく、保形性及び繊維離脱防止性に優れているため好適である。例えば、無機系繊維構造体を培養担体として使用した場合、細胞に必要不可欠な栄養素や酸素などの供給効率を向上させることができ、かつ、細胞培養に必要な足場が多いため、高密度培養できる。
本発明の無機系繊維構造体は培養担体として好適に使用できる。培養担体として使用した場合、平均繊維径が3μm以下と細く、表面積が広いため、細胞と、細胞との足場となる繊維との接着効率が高く、細胞増殖能が高い。また、溶液中など様々な使用条件下で使用しても形態を維持できるため、3次元に培養でき、細胞が組織環境に近い状態で培養されるため、細胞機能を発現しやすい。更に、細胞を固定化、脱水及び乾燥を行なったとしても、無機系繊維構造体の形態を保持することができる。更に、細胞に必要不可欠な栄養素や酸素などの供給効率を向上させることができ、かつ、細胞培養に必要な足場が多いため、高密度培養できる。更に、嵩高であるため培養状態を観察しやすい。
なお、無機系繊維構造体が機能性に優れているように、金属イオン含有化合物を含有していると、細胞機能誘導因子又は抗菌作用を奏する。例えば、細胞の分裂・増殖・分化、血液の凝固、筋肉の収縮、神経感覚細胞の興奮、貪食、抗原認識、抗体分泌など免疫反応、各種ホルモン分泌など広範囲な生体反応に関与し、また、リンと共にヒドロキシアパタイト結晶を形作って骨や歯牙のマトリクス構造に沈着して強度を与えるカルシウム、細胞外液の浸透圧維持のために働くナトリウム、酸素の運搬作用、及びエネルギー代謝における電子伝達体(チトクロムC)の必須部位である鉄、骨と歯牙の主要な無機成分であるマグネシウム、神経興奮性の維持、筋肉の収縮、細胞内の浸透圧維持のために働くカリウム、或いは銅、ヨウ素、セレン、クロム、亜鉛又はモリブデンなどの金属を含んでいると、細胞機能を向上させることができる細胞培養基材として使用することができる。
この金属イオン含有化合物は、例えば、金属塩であることができ、金属塩としては、例えば、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、リン酸水素塩、炭酸水素塩、硝酸塩、水酸化物などを挙げることができる。特に、カルシウムイオン含有塩、マグネシウムイオン含有塩、アパタイト(りん灰石)を含有する無機系繊維構造体は、細胞機能を高めた細胞培養を行うことができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
紡糸工程(1)及び集積工程(2)
金属化合物としてのテトラエトキシシラン、溶媒としてのエタノール、加水分解のための水、及び触媒として1規定の塩酸を、1:5:2:0.003のモル比で混合し、温度78℃で10時間の還流操作を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去して濃縮した後、温度60℃に加熱して、粘度が2ポイズのゾル溶液を形成した。得られたゾル溶液を紡糸用無機系ゾル溶液として用い、中和紡糸法によりゲル状シリカ繊維ウエブを作製した。
なお、中和紡糸法は、特開2005−264374号公報の実施例8と同じ紡糸条件で実施した。つまり、図1の対向電極5として、図4の対向電極(沿面放電素子25)を紡糸容器室内に収納した紡糸装置を使用し、次の条件で紡糸した。
紡糸ノズル:内径0.4mmの金属製注射針(先端カット)
紡糸ノズルと対向電極との距離:200mm
対向電極及びイオン発生電極(両電極を兼ねる):ステンレス板(誘起電極)上に厚さ1mmのアルミナ膜(誘電体基板)を溶射し、その上に直径30μmのタングステンワイヤ(放電電極)を10mmの等間隔で張った沿面放電素子(タングステンワイヤ面を紡糸ノズルと対向させると共に接地し、ステンレス板とタングステンワイヤ間に交流高電圧電源により50Hzの交流高電圧を印加)
第1高電圧電源:−16kV
第2高電圧電源:±5kV(交流沿面のピーク電圧:5kV、50Hz)
気流:水平方向(紙面上、左から右方向)25cm/sec、鉛直方向(紙面上、捕集部材4の上から下方向)15cm/sec
紡糸容器内の雰囲気:温度25℃、湿度40%RH以下
連続紡糸時間:30分以上
集積後熱処理
次に、前記工程で得られたゲル状シリカ繊維ウエブを、800℃で3時間の集積後熱処理をすることにより、乾燥シリカ繊維ウエブ(目付:8g/m)を作製した。
接着用無機系ゾル溶液付与工程
繊維間接着のために用いる接着用無機系ゾル溶液として、金属化合物としてテトラエトキシシラン、溶媒としてエタノール、加水分解のための水、及び触媒として硝酸を、1:7.2:7:0.0039のモル比で混合し、温度25℃、攪拌条件300rpmで15時間反応させた。反応後、酸化ケイ素の固形分濃度が0.25%となるようにエタノールで希釈し、シリカゾル希薄溶液(接着用無機系ゾル溶液)とした。
次いで、乾燥シリカ繊維ウエブを前記シリカゾル希薄溶液に浸漬した後、吸引により余剰のシリカゾル希薄溶液を除去することにより、シリカゾル希薄溶液含有シリカ繊維ウエブを作製した。
接着用熱処理工程
次いで、シリカゾル希薄溶液に含まれる溶媒を除去し、繊維交点の接着のために、シリカゾル希薄溶液含有シリカ繊維ウエブを500℃で3時間焼成(接着用熱処理)して、シリカで接着したシリカ繊維不織布を作製した。
融着工程
次いで、前記シリカ繊維不織布に対して、パルス状炭酸ガスレーザー(波長:10.6μm、出力:3W、レーザー径:127μm、レーザー照射数:1000パルス/インチ)を走査速度2cm/secで照射し、1cm角の大きさとなるように融着するとともに切断して、外縁をライン状(連続した直線状)に融着したシリカ繊維融着不織布を作製した。
このシリカ繊維融着不織布(=無機系繊維構造体、シリカの比重=2g/cm)を構成するシリカ繊維の平均繊維径は1μmであり、無機系繊維構造体の融着部を含む厚さ方向断面の電子顕微鏡写真において、粒状の塊(融着部)の占める面積が、無機系繊維構造体の断面積の23.6%を占めていた。また、各種物性は表1に示す通りであった。
(実施例2)
実施例1の接着用無機系ゾル溶液付与工程を行っていない集積後乾燥処理を行った乾燥シリカ繊維ウエブに対して、炭酸ガスレーザー(波長:10.6μm、出力:3W、レーザー径:127μm、レーザー照射数:1000パルス/インチ)を走査速度2cm/secで照射し、1cm角の大きさとなるように融着するとともに切断して、外縁をライン状(連続した直線状)に融着した乾燥シリカ繊維融着不織布(=無機系繊維構造体、シリカの比重=2g/cm)を製造した。乾燥シリカ繊維融着不織布を構成する乾燥シリカ繊維の平均繊維径は1μmであり、無機系繊維構造体の融着部を含む厚さ方向断面の電子顕微鏡写真において、粒状の塊(融着部)の占める面積が、無機系繊維構造体の断面積の22%を占めていた。また、各種物性は表1に示す通りであった。
(実施例3)
実施例1の接着用無機系ゾル溶液付与工程を行っていない集積後乾燥処理を行った乾燥シリカ繊維ウエブに対して、炭酸ガスレーザー(波長:10.6μm、出力:3W、レーザー径:127μm、レーザー照射数:1000パルス/インチ)を走査速度2cm/secで照射し、1cm角の大きさとなるように融着するとともに切断して、外縁をライン状(連続した直線状)に融着した。
その後、乾燥シリカ繊維ウエブの主面における前記外縁よりも内側に対して、たて方向、よこ方向ともに1mm間隔で、ドット状にレーザーを照射し、部分的に融着した乾燥シリカ繊維融着不織布(=無機系繊維構造体、シリカの比重=2g/cm)を製造した。乾燥シリカ繊維融着不織布を構成する乾燥シリカ繊維の平均繊維径は1μmであり、外縁融着部を含む、無機系繊維構造体の厚さ方向断面の電子顕微鏡写真において、粒状の塊(融着部)の占める面積が、無機系繊維構造体の断面積の27%を占めており、無機系繊維構造体の主面における電子顕微鏡写真において、外縁の融着部から内側における粒状の塊(融着部)の占める面積は、外縁の融着部から内側における面積の10%を占めていた。また、各種物性は表1に示す通りであった。
(比較例1)
融着工程に替えて、1cm角のポンチでシリカ繊維不織布を打ち抜いたこと以外は実施例1と同様にして、シリカ繊維不織布(=無機系繊維構造体、シリカの比重=2g/cm)を製造した。シリカ繊維不織布を構成するシリカ繊維の平均繊維径は1μmであり、また、各種物性は表1に示す通りであった。
(比較例2)
実施例1と同様にして作製したゲル状シリカ繊維ウエブを1cm角のポンチでゲル状シリカ繊維ウエブを打ち抜いて、ゲル状シリカ繊維構造体(シリカの比重=2g/cm)を製造した。ゲル状シリカ繊維構造体を構成するシリカ繊維の平均繊維径は1μmであり、また、各種物性は表1に示す通りであった。
(比較例3)
実施例1と同様に集積後熱処理を実施した乾燥シリカ繊維ウエブを1cm角のポンチで乾燥シリカ繊維ウエブを打ち抜いて、乾燥シリカ繊維構造体(シリカの比重=2g/cm)を製造した。乾燥シリカ繊維構造体を構成する乾燥シリカ繊維の平均繊維径は1μmであり、また、各種物性は表1に示す通りであった。
Figure 2013194341
(無機系繊維構造体の保形性の評価1)
実施例1〜3及び比較例1〜3の無機系繊維構造体をそれぞれ、純水30mLが入った試薬ビンに挿入し、純水中に浸漬した。その後、純水に浸漬した状態で、次の条件でオートクレーブ又は震盪機にかけ、目視により無機系繊維構造体の表面の乱れ及び層間剥離がないかを確認した。
オートクレーブ:120℃、20分
震盪機:往復回数・・100rpm、2時間
また、試薬ビンに挿入前における無機系繊維構造体の厚さに対する、オートクレーブ後における無機系繊維構造体の厚さの増加率を、各無機系繊維構造体について計測した。これらの結果は表2に示す通りであった。
Figure 2013194341
○:無機系繊維構造体の表面に乱れがなく、かつ層間剥離もない。
△:層間剥離はないが、無機系繊維構造体の表面に乱れがある。
×:層間剥離及び無機系繊維構造体の表面の乱れが激しい。また、取り扱い性が悪い。
この表2の実施例2と比較例3との比較から、部分的に融着することにより、表面の乱れは見られるが、層間剥離のない、保形性に優れる無機系繊維構造体を製造できることがわかった。
また、実施例1と比較例1との比較から、部分的に融着することにより、厚さ増加率が低くなり、より保形性を高められることがわかった。
更に、実施例2及び実施例3との比較から、無機系接着剤で接着しなくても、部分的に融着することにより、保形性を高められることがわかった。
(無機系繊維構造体の保形性の評価2)
実施例1及び比較例1の無機系繊維構造体を培養基材として、14日間の培養を行なった。培養条件は次の通りである。
(培養条件)
HepG2細胞(ATCC:HB-0865、参考文献:Knowles BB, et al., Human hepatocellular carcinoma cell lines secrete the major plasma proteins and hepatitis B surface antigen., Science 209:497-499,1980.PubMed:6248960)の培養を、Williams’s Medium E(購入会社名:シグマ社)に、10%ウシ胎児血清(FBS)、抗生物質(60μg/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシン)、及び1mmol/L NHClを添加した培地を使用し、37℃、5%CO条件下にて実施した。培養環境としては、24ウェルプレートの各ウェル内に、評価用の培養担体(1cm×1cm)を載置し、HepG2細胞(5×10cells/mL)1mLを播種し、1日毎に培地交換を行った。
14日間培養した後、電子顕微鏡による細胞形態観察を実施するために、細胞の固定化、脱水及び乾燥処理を行った。つまり、まず、培地を10%ホルマリン溶液で置換し、2時間放置し、前固定を行った。次いで、10%ホルマリン溶液を2%グルタルアルデヒド/10%ホルマリン溶液で置換し、2時間放置した。その後、HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)バッファーで15分間放置するのを2回繰り返し、ホルマリン溶液を洗浄除去して、タンパク質を変成させて破裂することがないように、細胞を固定化(後固定)した。
その後、電子顕微鏡で観察するために、固定化後の培養細胞に含まれる水分や固定化処理溶媒を取り除くために、脱水及び乾燥処理を行った。まず、次の手順により水分を取り除いた。
(1)10%エタノール溶液、50%エタノール溶液、60%エタノール溶液で順番に置換し、各々15分間放置した。
(2)70%エタノール溶液、80%エタノール溶液で順番に置換し、15分間放置する操作を2回繰り返した。
(3)90%エタノール溶液で置換し、15分放置した。
(4)100%エタノール溶液で置換し、30分間放置した。
(5)前記(4)の半分の量の100%エタノール溶液で置換し、30分間放置した。
次いで、次の手順により、乾燥処理を行った。
(1)脱水した培養基材をt−ブチルアルコール溶液中に投入し、20分間放置した。その後、100%t−ブチルアルコールで置換し、20分間放置する操作を2回繰り返し、t−ブチルアルコールで置換した。
(2)凍結させた後、真空容器に培養基材を挿入し、真空容器内を減圧して真空状態とし、凍結した状態のまま、t−ブチルアルコールを昇華させて乾燥した。
実施例1の無機系繊維構造体を培養基材として、14日間の培養をした場合には、無機系繊維構造体に層間剥離が生じることがなかったため、何の問題もなく、電子顕微鏡による細胞形態の観察できた。これに対して、比較例1の無機系繊維構造体を培養基材として、14日間の培養をした場合には、無機系繊維構造体の端部に層間剥離が発生した箇所が見られたため、比較例1の無機系繊維構造体は電子顕微鏡による細胞形態の観察には不適切な培養基材であった。この結果からも、本発明の無機系繊維構造体は保形性に優れていることが明らかとなった。
つまり、このような細胞の固定化、脱水及び乾燥処理の際に、試薬の浸透圧、処理時間等によって細胞に歪が生じ、培養基材に接着している細胞が収縮し、培養基材にも応力が加わるため、この応力に耐えられず、比較例1の無機系繊維構造体は層間剥離を発生したため、培養基材として不適切なものであった。これに対して、部分的に融着した実施例1の無機系繊維構造体は細胞の収縮による応力に耐えることのできる、培養基材として適切なものであり、保形性に優れるものであった。
本発明の無機系繊維構造体は、例えば、断熱材、濾過材、分析ツール、細胞などの培養担体、触媒担体、スキャフォールド、抗菌材料などに適用することができる。なお、細胞培養担体は、細胞培養を用いたあらゆる分野に適用することができる。例えば、細胞培養を用いた分析ツール、再生医療、有用物質生産などが挙げられる。
1、1A、1B 静電紡糸装置
2 紡糸ノズル
2a 第1紡糸ノズル
2b 第2紡糸ノズル
3 繊維回収容器
4 捕集部材
5 対向電極
5a イオン
6 ゾル溶液供給機
6a 第1ゾル溶液供給機
6b 第2ゾル溶液供給機
7 第1高電圧電源
8 第2高電圧電源
9 吸引機
10 電離放射線源
10a 電離放射線
11 第3高電圧電源
20 ノコギリ状歯車
20a 先端部
20b ワイヤ
21 紡糸用無機系ゾル溶液
22 ゾル溶液容器
23 ローラー
25 沿面放電素子
26 誘電体基板
27 放電電極
28 誘起電極
29 交流電源

Claims (6)

  1. 平均繊維径3μm以下の無機系繊維からなる、空隙率が90%以上の無機系繊維構造体であり、部分的に融着していることを特徴とする、無機系繊維構造体。
  2. 無機系接着剤で接着していることを特徴とする、請求項1に記載の無機系繊維構造体。
  3. 培養担体として用いる、請求項1又は請求項2に記載の無機系繊維構造体。
  4. (1)無機成分を主体とする化合物を含む紡糸用無機系ゾル溶液を用いて、静電紡糸法により無機系繊維を紡糸する工程、
    (2)前記無機系繊維とは反対極性のイオンを照射し、集積させ、無機系繊維集合体を形成する工程、
    (3)前記無機系繊維集合体を部分的に融着する工程、
    を含むことを特徴とする、無機系繊維構造体の製造方法。
  5. (2)無機系繊維集合体を形成する工程の後に、熱処理する工程を更に含むことを特徴とする、請求項4に記載の無機系繊維構造体の製造方法。
  6. (3)融着する工程の前又は後に、無機成分を主体とする化合物を含む接着用無機系ゾル溶液に由来する無機系接着剤で、無機系繊維集合体を接着する工程を、更に含むことを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の無機系繊維構造体の製造方法。
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