JP2013191754A - 太陽電池裏面封止シートおよび太陽電池モジュール - Google Patents

太陽電池裏面封止シートおよび太陽電池モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の太陽電池裏面封止シートは、良好な耐加水分解性、電気絶縁性、ガスバリア性を有し、さらに加工時に歪みが生じにくい。また、本発明の太陽電池裏面封止シートは良好な生産性をもって提供する。
【解決手段】1枚のポリエステルフィルムのみからなる太陽電池裏面封止シートであり、当該ポリエステルフィルムは、フィルムを構成するポリエステルのカルボキシル末端濃度がポリエステルに対し25eq/ton以下であり、厚みが150〜380μmであり、広角X線回折法により測定した(−105面)における長手方向に配向した結晶の長さが30Å以上であり、フィルム厚みを50μmに換算したときのMORの値(MOR−C)が1.0〜2.0であり、フィルムの密度が1.37〜1.40g/cmであることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、太陽電池裏面封止シートに関し、さらに詳しくはポリエステルフィルム1枚のみを用いていながら、耐加水分解性、バリア性、電気絶縁性に優れる太陽電池裏面封止シートに関する。
近年、地球温暖化の原因となる石油エネルギーに代わるエネルギー手段として、太陽電池が注目を浴びており、その需要が高まっている。太陽電池は、太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムである。太陽電池素子として、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等の半導体や、化合物系あるいは有機物系色素等が使用されている。一般的に、太陽電池素子は、数枚〜数十枚の太陽電池素子を直列、並列に配線して、長期間(約20年以上)に亘って素子を保護するための種々のパッケージングが行われ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼ぶ。
ここで、一般的に太陽電池モジュールは、太陽光が当たる面がガラスで覆われ、その下の太陽電子素子は封止材で間隙を埋められ、裏面がバックシートと呼ばれる耐熱、耐候性プラスチック材料等の複数の層構成からなる保護シートで保護された構成になっている。太陽電池素子を充填する封止材としてはエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂(以下、EVA)、ポリビニルブチラール樹脂(以下、PVB)等のオレフィン系樹脂が用いられる。これらの封止材を用い、上記ガラス基板/封止材/太陽電池素子/封止材/バックシートの構成で重ね合わせ、真空ラミネーター等で加熱圧着することによりモジュールが作製される。封止材には、太陽電池素子を接着固定するとともに、外部からの湿気の侵入を防ぎ、太陽電池素子を保護する役割がある。
従来、太陽電池モジュールの表面保護部材としては、ガラスを用いることが一般的であった。近年、耐衝撃性や軽量化の点で、可とう性を有したポリエステル等のプラスチックフィルムへの関心が高まっている(特許文献1〜5)。また、太陽電池モジュールの裏面を封止するバックシートの構成部材としても、安価でコスト的に有利なポリエステルフィルムが用いられるようになっている。
しかしながら、ポリエステルフィルムを太陽電池部材として長期にわたり高温高湿下で使用すると、分子鎖中のエステル結合部位の加水分解が起こり、機械的強度が低下する問題が発生する。そのため、高温高湿環境や屋外での使用に限界がある。ポリエステルの加水分解は、ポリエステル分子鎖のカルボキシル末端濃度(酸価)が高いほど、加水分解が速く進行することが知られている。これまで、ポリエステルの耐加水分解性を高めるために、フィルム樹脂のカルボキシル末端濃度(酸価)を低く抑えるべく様々な検討が行われている(特許文献6、7)。また、劣化がある程度進んでも、機械的強度を大きく低下させないために、分子量が比較的高い(固有粘度が比較的高い)ポリエステルが用いられている(特許文献8〜11)。
さらに、これらのフィルムは電気絶縁性や遮光性、ガス遮断性、光反射性などを確保するための他のフィルムやバリア性フィルムなどと積層させて太陽電池裏面封止シートとして用いることが常であり、そのために太陽電池裏面封止シートの製造プロセスが複雑になったり、コスト高となったりしていた。
特開2010―186932号公報 特開2007―253463号公報 特開2006−261287号公報 特開平11−261085号公報 特開2000−114565号公報 特開2007−150084号公報 特開2007−204538号公報 特開2002−134770号公報 特開2002−26354号公報 特開2006−270025号公報 特開2008−311680号公報
上記特許文献で提案されたフィルムは、樹脂組成の改良により従来のポリエステルフィルムに比べ、耐加水分解性の向上が認められる。しかしながら、過酷な使用環境において長期間にわたる使用を継続したところ、これらのフィルムを用いた太陽電池裏面封止シートは当初の想定と異なり早期に破損する場合があった。さらに、複数のフィルムを貼り合せた積層体の太陽電池裏面封止シートでは、近年、生産性の向上から積層体作製時の加工温度が高温化しつつあるため、フィルムの熱寸法安定性に起因するカールやシワ等により、積層体の品位が低下するおそれがあるだけでなく、これらによってもたらされる加工時の歪みにより、より早期に破損する恐れが高まってきた。
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、一枚のポリエステルフィルムのみからなるにもかかわらず優れた耐加水分解性、電気絶縁性、ガス遮断性を有し、さらに加工時に歪みが生じにくい太陽電池裏面封止シートを提供することを目的とする。
本発明者が上記のように想定よりも早期に生じる破損の発生について検討したところ、これは太陽電池裏面封止シートに用いられるフィルム面内の配向性と結晶性のバランスに起因することを見出した。つまり、配向性や結晶性のバランスが悪いと、カルボキシル末端濃度や固有粘度等のポリエステル樹脂物性が改良されても、樹脂がもつ本来の耐候性を発現できないことが分かった。さらに、ポリエステルフィルムの配向性及び結晶性を制御することで、太陽電池用途として優れた耐加水分解性を発揮するという驚くべき効果を見出した。
本発明の太陽電池裏面封止シートは1枚のポリエステルフィルムのみからなる太陽電池裏面封止シートであり、当該ポリエステルフィルムは、厚みが150〜380μmであり、 広角X線回折法により測定した(−105面)における長手方向に配向した結晶の長さが30Å以上であり、フィルム厚みを50μmに換算したときのMORの値(MOR−C)が1.0〜2.0であり、フィルムの密度が1.37〜1.40g/cmであることを特徴とする太陽電池裏面封止シートである。
前記フィルムの150℃における熱収縮率は、長手方向、幅方向ともに、−1.0%以上、3.0%以下であることが好ましく、より好ましくは−0.5%以上、0.5%以下である。フィルムを構成するポリエステルは、アルミニウム及び/又はその化合物と、フェノール部位を有するリン系化合物を含有する重縮合触媒を用いて重合されてなり、カルボキシル末端濃度がポリエステルに対し25eq/ton以下であり、フィルムの固有粘度(IV)が0.60〜0.90dl/gであることが好ましい。なお、MORは、molecular orientation ratioの略であり、MOR−Cはmolecular orientation ratio-correctionの略である。
ここで、1枚のポリエステルフィルムのみからなる太陽電池裏面封止シートとは、フィルムやシート状物、金属箔など独立して形態を保持している素材を複数貼り合わせたものではなく、これら独立して形態を保持している素材としてはポリエステルフィルム1枚のみであるシートを意味する。なお、ポリエステルフィルムには表面に塗工層や印刷層を有していても良い。
本発明の太陽電池裏面封止シートは、少なくとも片面の表層に充填剤層との接着性を向上させるための塗布層を持つことが好ましい。さらには、前記塗布層とは反対側に着色塗布層やバリアコート層、防汚コート層、耐傷付き層が設けられていることも好ましい形態である。
加えて本発明は、上記の太陽電池裏面封止シートと、太陽電池裏面封止シートに隣接する充填剤層と、充填剤層に埋設された太陽電池素子を備えることを特徴とする太陽電池モジュールである。
本発明の太陽電池裏面封止シートは、良好な耐加水分解性、電気絶縁性、ガスバリア性を有し、さらに加工時に歪みが生じにくい。また、本発明の太陽電池裏面封止シートは良好な生産性をもって提供することができる。
本発明者は、前述のように、高温高湿の環境における長期にわたる使用により想定より早く生じる太陽電池裏面封止シートの破断が、用いられているフィルム面内における配向特性と結晶性のバランスに起因することを見出した。まず、配向特性のバランスについては、フィルム面内での配向特性に相違がある場合は、それに起因して面内方向での強度バランスに差異が生じる。そのため、加水分解が進行すると各方向(長手方向、幅方向)において略等速度に機械的強度が低下するため、初期状態における強度バランスの差異が相対的に大きなものとなる。これにより、フィルムの劣化によりフィルム面内での機械強度のバランスを失い、相対的に弱い部位からフィルムの破損が生じる。そのため、フィルムの耐久性の向上に当たっては、ポリエステル樹脂組成の改変だけでなく、フィルム面内における配向バランスが良いことが好ましい。特に、一般的になされる長手方向(MD方向)−幅方向(TD方向)の逐次二軸延伸法では、後段での幅方向(TD方向)の延伸軸に配向が残存しやすくなり、配向の差によるフィルム面内の機械的強度の差異が生じやすい。そのため、長手方向の配向特性を保持することが、フィルム面内の機械強度のバランスを制御するのに好適である。
次に結晶性については、フィルム全体の結晶性が高くなると、加水分解による劣化が進行した場合に脆性が増し、フィルム破断が生じやすくなる。一方、フィルム全体の配向性が低くなると、絶対値としてのフィルム強度が弱くなり、太陽電池部材としての強度を保持できなくなる。そのため、フィルムとしては配向性を高く保持したまま、結晶性を低くすることが好ましい。フィルム中にはポリエステルの結晶態様として、主として延伸配向に起因し方向性を有する配向結晶と、主として加熱冷却に起因する熱結晶とがある。そこで、配向結晶を保持したまま、熱結晶を少なくすることで、フィルム全体として配向性を高く保持したまま、結晶性を低くすることにより結晶性のバランスを制御し、フィルムの耐久性の向上を図ることができる。
すなわち、上記技術思想に基づく本発明の太陽電池裏面封止シートに用いられる太陽電池用ポリエステルフィルムの特性は、広角X線回折法により測定した(−105面)における長手方向に配向した結晶の長さが30Å以上であり、フィルム厚みを50μmに換算したときのMORの値(MOR−C)が1.0〜2.0であり、フィルムの密度が1.37〜1.40g/cm3であることを特徴とする。
前記太陽電池用ポリエステルフィルムは、広角X線回折法により測定した(−105)面における長手方向に配向した結晶の長さが30Å以上であり、好ましくは31Å以上、より好ましくは32Å以上である。(−105)面における長手方向(MD方向)の結晶サイズは、主として長手方向(MD方向)の延伸による配向結晶を示し、その結晶サイズは配向強度の大きさに依存する。よって、長手方向(MD方向)の(−105)面の結晶サイズが上記範囲である場合は、フィルム配向性が高く、太陽電池裏面封止シートとしての特定の強度を有する。また、一般的になされる長手方向(MD方向)−幅方向(TD方向)の逐次二軸延伸法では、後段での幅方向(TD方向)の延伸軸に配向が残存しやすくなり、配向の差によるフィルム面内の機械的強度の差異が生じやすい。そのため、長手方向の配向性を上記範囲に保持することが、フィルム面内の機械強度のバランスを制御するのに好適である。なお、上記結晶の長さは60Å以下が好ましい、60Åより大きい場合は、幅方向の延伸が困難であり、製膜中の破断等により生産性が悪化する場合がある。上記結晶サイズを制御するためには、延伸倍率の大きさを大きくしたり、延伸温度を低くする等によりフィルムの配向強度を高くすることが好ましい。
前記太陽電池用ポリエステルフィルムは、フィルム厚みを50μmに換算したときのMOR値(MOR−C)が、1.0〜2.0であり、好ましくは1.3〜1.9、より好ましくは1.4〜1.8である。MOR−Cはフィルム長手方向と幅方向のバランスを示す指標である。フィルムのMOR−Cを上記範囲に制御し、フィルム面内の配向バランスを制御することは、長期の加水分解劣化試験における機械的強度や耐久性の維持に有効である。また、太陽電池部材として他の機能層との積層時に生じるカールの発生も抑制することができ、密着性の向上にも有効である。MOR−Cを上記範囲にする方法としては、延伸工程における長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の延伸倍率の比を制御することが挙げられる。
前記太陽電池用ポリエステルフィルムは、フィルムの密度が1.370〜1.400g/cm3であり、好ましくは1.375〜1.398g/cm3、より好ましくは1.380〜1.395g/cm3である。フィルムの密度は、フィルム全体としての結晶性を示す指標である。フィルム密度を上記範囲で比較的低く保持することより、加水分解による劣化が進行してもフィルムの破断が生じにくく、耐久性が保持される。延伸配向による配向結晶の結晶サイズを上記範囲に制御しながら、フィルム密度を上記範囲に制御するためには、熱結晶を抑制することが望ましい。フィルムの熱結晶は、フィルム製膜時の熱固定工程で成長しやすいため、フィルム密度を上記範囲にするには熱固定温度を低くすることが好ましい。なお、フィルムが後述する微粒子を含む場合、これらの微粒子を除いたポリエステル成分の密度を、フィルム密度とする。
前記太陽電池用ポリエステルフィルムは、上記各特性を高度に両立させることにより、優れた耐久性を奏する。すなわち、上記特性が独立的に寄与するのはなく、いずれも不可欠に組み合わさることが本発明の優れた耐加水分解性にとって重要である。前記太陽電池用ポリエステルフィルムは、耐加水分解性の評価である105℃、100%RH、0.03MPa下、200時間処理での伸度保持率が、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。斯かる範囲にあることにより、太陽電池用ポリエステルフィルムは、屋外での長期使用に耐えうる高い耐加水分解性を奏することができる。
前記太陽電池用ポリエステルフィルムは、150℃における熱収縮率が、長手方向(MD方向、縦方向)及び幅方向(TD方向、横方向)ともに、−1.0%以上であることが好ましく、より好ましくは−0.5%以上であり、3.0%以下であることが好ましく、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.8%以下である。また、例えば、高温での使用や高温加工での精密性等太陽電池部材としてより厳しい低熱収縮率が求められる場合、150℃における熱収縮率は、長手方向(MD方向、縦方向)及び幅方向(TD方向、横方向)ともに、−0.5%〜0.5%であることが好ましい。これにより、粘着層等を形成する際等の加熱加工時や積層状態における、カールの発生等を抑制することができる。150℃の熱収縮率を上記範囲にする方法としては、延伸条件を制御する、もしくは熱固定工程において縦緩和処理、及び横緩和処理を施すことが挙げられる。
前記太陽電池用ポリエステルフィルムの厚さは、太陽電池用白色ポリエステルフィルムの厚みは150〜380μmとする。180μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましい。また、350μm以下が好ましく、330μm以下がより好ましい。フィルムの厚みを上記範囲にすることで、電気絶縁性に優れると共に、軽量化や薄膜化されやすい。一方、フィルムの厚みが380μmより大きい場合は、軽量化や薄膜化に対応しにくい。また、150μmより小さい場合は、電気絶縁効果やバリア性が奏しにくい。
(ポリエステル)
前記太陽電池用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のごとき芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールのごときグリコールとを重縮合させて製造されるポリエステルである。これらのポリエステルは、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接反応させる方法;芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後重縮合させる方法;芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させる方法;等によって製造することができる。このポリエステルは第三成分を共重合したものであっても良いが、耐久性の点からホモポリマーが好ましい。かかるポリエステルの代表例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等が挙げられる。
前記ポリエステルの重縮合触媒としては、アンチモン及び/又はその化合物、チタン及び/又はその化合物、ゲルマニウム及び/又はその化合物、スズ及び/又はその化合物、アルミニウム及び/又はその化合物等を用いることができる。特に、熱酸化劣化の抑制には金属含有量が少ない方が有利であり、特に少量のアルミニウム及び/又はその化合物と助触媒であるリン化合物を併用し、重合活性を確保することが好ましい。さらにリン化合物はフェノール部位を持つことが好ましい。フェノール部位含有のリン化合物は、酸素下でラジカル機構により分解するポリエステル劣化を抑制する効果を有する。この機能を高めるためには、フェノール部位が立体的、電子的に安定化され、よりラジカルトラップ能を発現するヒンダードフェノール骨格を有することが好ましい。
また、ポリエステルを重合した後に、得られたポリエステルから触媒を除去するか、又はリン系化合物等の添加によって触媒を失活させることによって、ポリエステルの熱安定性をさらに高めることができる。
ポリエステルの耐熱酸化の程度は、下記式により表される熱安定性パラメータ(TS)により示すことができる。高い熱安定性を奏する場合、ポリエステルの熱安定性パラメータ(TS)は、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.20以下である。TSが上記範囲のポリエステルを用いることにより、フィルムを製造する際の溶融工程における熱安定性が優れたものとなり、高度な耐久性を奏することができる。
TSは下記方法により算出する。ポリエステル(固有粘度[IV]f)1gをガラス試験管に入れ、130℃で12時間真空乾燥する。次いで、非流通窒素雰囲気下で、300℃にて2時間溶融状態に維持した後、サンプルを取り出し冷凍粉砕する。それを真空乾燥後、固有粘度([IV]f)を測定する。例えば、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートの場合には、次式により計算することができる。
TS=0.245×{[IV]f -1.47−[IV]i -1.47
ポリエステルの重合中には、ジアルキレングリコールが副生する。太陽電池部材として長期間高温に曝されると、ジアルキレングリコールの影響により、耐久性が低下する場合がある。代表的なジアルキレングリコールとしてジエチレングリコールを例にすると、ジエチレングリコール量は、2.3モル%以下であることが好ましく、より好ましくは2.0モル%以下、さらに好ましくは1.8モル%以下である。ジエチレングリコール量を上記範囲にすることにより、耐熱安定性を高めることができ、乾燥時、成形時の分解によるカルボキシル末端濃度の増加(酸価の上昇)をより小さくすることが出来る。なお、ジエチレングリコール量は少ない方が良いが、ポリエステル製造の際のテレフタル酸のエステル化反応時、テレフタル酸ジメチルのエステル交換反応時に副反応物として生成するものであり、現実的には下限は1.0モル%、さらには1.2モル%である。
本発明では、耐久性を付与するため、太陽電池用ポリエステルフィルムの原料樹脂として固有粘度が0.60dl/g超のポリエステルを用いるのが好ましい。また、前記太陽電池用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの固有粘度は、0.60から0.90dl/gが好ましく、より好ましくは0.65から0.75dl/g、さらに好ましくは0.68から0.72dl/gである。フィルムの固有粘度が0.60dl/gより低い場合には、フィルムの耐加水分解性、耐熱性が劣る場合がある。また、0.90dl/gより高い場合には、生産性が悪化する場合がある。
ポリエステルのカルボキシル末端は、自己触媒作用により加水分解を促進する作用がある。そのため、太陽電池用ポリエステルフィルムのカルボキシル末端濃度は、ポリエステルに対し25eq/ton以下であることが好ましい。カルボキシル末端濃度が25eq/ton以下であると、太陽電池用部材としての高度な耐加水分解性を好適に奏することができる。上記カルボキシル末端濃度は、ポリエステルに対して20eq/ton以下であることが好ましく、より好ましくは18eq/ton以下、さらに好ましくは16eq/ton以下である。カルボキシル末端濃度は低いことが好ましいが、生産性の点からは0.5eq/ton以上であることが好ましい。なお、ポリエステルのカルボキシル末端濃度の測定は、後述する滴定法より測定することができる。
ポリエステルフィルムのカルボキシル末端濃度を上記範囲にするには、原料樹脂として用いるポリエステルチップのカルボキシル末端濃度を25eq/ton未満にすることが好ましい。また、ポリエステルフィルムの固有粘度を上記範囲にするには、原料樹脂として用いるポリエステルチップの固有粘度を0.60dl/g以上とすることが好ましい。ポリエステルチップのカルボキシル末端濃度及び固有粘度を上記範囲にすることは、樹脂の重合条件を適宜選択することにより行うことができる。例えば、エステル化反応装置の構造等の製造装置要因や、エステル化反応槽に供給するスラリーのジカルボン酸とグリコールの組成比、エステル化反応温度、エステル化反応圧、エステル化反応時間等のエステル化反応条件もしくは固相重合条件等を適宜設定することにより行えばよい。特に、生産性の点から固相重合法は好適に採用しうる。さらに、ポリエステルチップの水分量を制御したり、溶融工程での樹脂温度を制御することが好ましい。また、エポキシ化合物やカルボジイミド化合物等によりポリエステルのカルボキシル末端を封鎖することも好ましい方法である。本発明のフィルムでは、バランスの取れた配向特性を有するため、ポリエステルのカルボキシル末端濃度及び固有粘度を上記範囲内とすることにより、良好な耐久性を保持することができる。
太陽電池用ポリエステルフィルムには、易滑性を付与する目的で、微粒子を含有させても良い。含有させる微粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタン、硫化亜鉛等が例示されるが特に限定されるものではない。
フィルムに十分な易滑性を有する程度に粒子を添加すると、フィルム全体として透明性が低下したり、カルボキシル末端濃度が増加する傾向があったりする場合がある。そのため、太陽電池用ポリエステルフィルムは、3層以上の多層構造を有するものであって、滑り性の改善のための無機もしくは有機粒子を少なくとも最外層に含有させ、内層には粒子を含有させないかもしくは含有量を最外層より少なくさせることも好ましい態様である。さらに、後述する太陽電池用易接着性ポリエステルフィルムにおいて、高い透明性が求められる場合は、基材となるポリエステルフィルムに粒子を含有させず、もしくは少量含有させ、塗布層に粒子を含有させる構成も好ましい。
この場合、粒子を含む最外層はフィルムの厚みに対して両面合計で2〜50%、さらには4〜40%、特には6〜30%であることが好ましい。
前記微粒子は、その平均粒径が0.01μm以上、10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上、8μm以下、最も好ましくは0.1μm以上、3μm以下である。なお、上記微粒子の平均粒径の測定は以下の方法により行う。走査型電子顕微鏡(SEM)で粒子の写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径(最も離れている2点間の距離)を測定し、その平均値を平均粒径(個数基準)とする。
また、微粒子の含有量としては、最外層を構成するポリエステル樹脂中に0.01質量%以上、5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、1質量%以下である。微粒子の含有量が0.01質量%より小さい場合、フィルムの易滑性が劣るため、工程中でロール等との間の摩擦によりキズが発生したり、後加工におけるハンドリング性が低下するため好ましくない。また、粒子の含有量が5質量%より多くなる場合は、ヘイズ値、フィルム表面粗さを好適範囲内に制御することが困難となるおそれがある。
内層の粒子含有量を最外層より少なくさせる場合や、基材全体に少量含有させて塗布層に粒子を含有させる場合は、内層や基材全体の粒子の含有量は0.05質量%未満、さらには0.03質量%未満、特には0.01質量%未満であることが好ましい。
太陽電池用ポリエステルフィルムは、分子量やカルボキシル末端濃度の異なるポリエステルからなる2層以上の多層構造であっても良い。この様なフィルムで厚さ方向に非対称となる多層構造である場合には、分子量がより高い層またはカルボキシル末端濃度のより低い層が外側となるように太陽電池モジュールを構成することが好ましい。
分子量やカルボキシル末端濃度の異なるポリエステルからなる2層以上の多層構造は、前述の最外層に粒子含有層を配置した3層以上のフィルムの内層部分に適応させることもできる。
このような、最も分子量が高いかまたはカルボキシ末端濃度の低い層の厚みのいずれか(但し、最外層に粒子含有層を配置した3層以上のフィルムの内層部分に適応させた場合の内層部分の最も分子量が高いかまたはカルボキシ末端濃度の低い層の厚みのいずれか)はフィルム全体の厚みの20%以上、さらには25%以上、特には30%以上であることが好ましく、80%以下、さらには75%以下、特には70%以下であることが好ましい。
さらに、必要に応じて、ポリエステル中に添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、赤外線吸収色素、熱安定剤、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、界面活性剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能である。安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、イオウ系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
太陽電池用ポリエステルフィルムの製造方法は任意であり、特に制限されるものではないが、例えば以下のようにして製造することが出来る。
重合により得られたポリエステルチップを押出機で溶融し、ダイから樹脂をシート状に押し出し、冷却ロールで引き取ることにより未延伸フィルムを形成する。押出機内におけるポリエステル樹脂の最高温度は、280℃以上が好ましく、より好ましくは290℃以上である。溶融温度を上げることにより、押出機内での濾過時の背圧が低下し、良好な生産性を奏することができる。しかし、樹脂温度を310℃よりも高くした場合には、樹脂の熱劣化が進行するため好ましくない。よって、押出機内におけるポリエステル樹脂の最高温度は、310℃以下が好ましく、300℃以下がさらに好ましい。溶融温度が高すぎるとポリエステルの熱劣化が進行し、ポリエステルのカルボキシル末端濃度が上昇し、耐加水分解性が低下する場合がある。
次に得られたフィルムの延伸方法について、説明する。逐次二軸延伸では、得られた未延伸フィルムを加熱ロールや非接触ヒーターで加熱した後、速度差をもったロール間で長手方向に延伸(ロール延伸)を行い、次いでクリップにて一軸延伸フィルムの両端部を把持し、オーブン内で加熱した後に幅方向に延伸を行い更に高い熱をかけて熱固定を行う(テンター延伸)。
長手方向の延伸倍率は、3.0〜4.5倍が好ましく、より好ましくは3.5〜3.8倍である。長手方向の延伸温度は、90〜110℃が好ましい。また、幅方向の延伸倍率は、3.2〜4.8倍が好ましく、より好ましくは3.5〜4.5倍である。幅方向の延伸温度は、120〜150℃が好ましい。長手方向の延伸倍率と幅方向の延伸倍率との比は、(長手方向の延伸倍率)/(幅方向の延伸倍率)=0.8〜1.0であることが好ましい。いずれにしても、上記範囲でフィルムとして前述の所定の特性を得られるよう適宜制御することが好ましい。
太陽電池裏面封止シートとして、より高度な熱寸法安定性が要求される場合は、縦緩和処理を施すことが望ましい。縦緩和処理の方法としては、公知の方法を用いることができるが、例えばテンターのクリップ間隔を徐々に狭くして縦緩和処理を行う方法(特公平4−028218号公報)や、テンターの内で端部に剃刀を入れ切断しクリップの影響を避けて緩和処理を行う方法(特公昭57−54290号公報)等が利用できる。また、オフラインで熱をかけ緩和させる方法を用いても良い。縦、横方向の熱収縮率については、−1.0%以上3.0%以下の範囲、更には−0.5%以上0.5%以下の範囲が好ましい。熱収縮率が−1.0%より小さい場合は、加工時に太陽電池裏面封止シートがたわみ問題となる。また、3.0%より大きい場合は、加工時の収縮が大きく、太陽電池モジュールの端部を完全に覆いきれなかったり、残留歪みとなって長期の使用中に剥離する場合がある。
また、接着性、絶縁性、耐擦り傷性、ガスバリア性、遮光性、光反射性、防汚性等の各種機能を付与するために、フィルム表面にコーティング法により高分子樹脂を被覆してもよい。また、被覆層にのみ無機及び/又は有機粒子を含有させて、易滑ポリエステルフィルムとしてもよい。さらに、無機蒸着層もしくはアルミ層を設け水蒸気バリア機能を付与したりすることもできる。
易接着性が要求される場合、フィルムの少なくとも一方の表面に水溶性または水分散性の共重合ポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液を用いて塗布層を設けることが好ましい。これらの塗布液としては、例えば、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報などに開示された水性塗布液が挙げられる。
特に本発明の太陽電池裏面封止シートは、EVAやPVBなどのオレフィン樹脂の充填剤層と接する面に、充填剤層に対する易接着性を奏するため、易接着層を設けることが好適である。易接着層としては水性塗布液にポリウレタン樹脂を含有させたものを塗布することが好ましく、中でも、耐熱性、耐加水分解性に優れて、太陽光による黄変防止の点から、脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするポリウレタン樹脂を含有させることが好ましい。このようなポリウレタン樹脂を含有させることで、湿熱下での接着性を向上させることができる。
脂肪族系ポリカーボネートポリオールとしては、脂肪族系ポリカーボネートジオールや脂肪族系ポリカーボネートトリオールなどが挙げられるが、脂肪族系ポリカーボネートジオールの数平均分子量としては、好ましくは1500〜4000であり、より好ましくは2000〜3000である。脂肪族系ポリカーボネートジオールの数平均分子量が1500より小さいと、強硬なウレタン成分が増加し、基材の熱収縮による応力を緩和できず、接着性が低下する場合がある。また、数平均分子量が4000を超えると、接着性や高温高湿処理後の強度が低下する場合がある。
脂肪族系ポリカーボネートポリオールのモル比は、ポリウレタン樹脂の全ポリイソシアネート成分を100モル%としたときに、3モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、60モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましい。モル比が3モル%未満の場合は、水分散性が困難になる場合がある。また、60モル%を超えると、耐水性が低下するため耐湿熱性が低下する。
上記ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は特に限定されないが、0℃未満が好ましく、−5℃未満がより好ましい。これにより、加圧接着の際に部分的に溶融したEVAやPVBなどのオレフィン樹脂と粘度が近くなり、部分的混合により接着性が向上し、好適な柔軟性が奏しやすい。
本発明において、塗布層の強度を向上させるために架橋剤を混合させても良い。混合させる架橋剤としては、イソシアネート系、メラミン系、エポキシ系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等が挙げられる。塗布液の経時安定性、高温高湿処理下の密着性向上効果からイソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系が好ましい。また、架橋反応を促進させるため、触媒等が必要に応じて適宜使用される。
(添加剤)
本発明において、塗布層中に粒子を含有させることもできる。粒子は、(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられる。
前記粒子は、平均粒径が1〜500nmのものが好適である。平均粒子径は特に限定されないが、フィルムの透明性を維持する点から1〜100nmであれば好ましい。前記粒子は、平均粒径の異なる粒子を2種類以上含有させても良い。なお、上記の平均粒径(個数基準)は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で積層フィルムの断面を撮影し、塗布層の断面に存在する10個以上の粒子の最大径を測定し、それらの平均値として求めることができる。
粒子の含有量としては、0.5質量%以上20質量%以下が好ましい。少ない場合は、十分な耐ブロッキング性を得ることができない。また、耐スクラッチ性が悪化してしまう。多い場合は、塗膜強度が低下する。
塗布層には、コート時のレベリング性の向上、コート液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系等いずれのものでも構わないが、シリコーン系、アセチレングリコール系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、封止材との接着性を損なわない程度の範囲、例えば、塗布液中に0.005〜0.5質量%の範囲で含有させることが好ましい。
塗布層に他の機能性を付与するために、充填剤との接着性を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤等が挙げられる。
塗布液をポリエステルフィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、等が挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工する。
インラインコート法による場合、塗布層は未延伸あるいは一軸延伸後のポリエステルフィルムに前記塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を行って形成させる。
本発明において、最終的に得られる塗布層の厚みは、好ましくは10〜3000nm、より好ましくは10〜1000nm、さらに好ましくは10〜500nm、特に好ましくは10〜400nmである。また、塗布層の乾燥後の塗布量は、好ましくは0.01〜3g/m2、より好ましくは0.01〜1g/m2、さらに好ましくは0.01〜0.5g/m2、特に好ましくは0.01〜0.4g/m2である。塗布層の塗布量が0.01g/m2未満であると、接着性に対する効果がほとんどなくなる。一方、塗布量が3g/m2を超えると、耐ブロッキング性が低下してしまう。
その他の塗工層
さらには、前記の充填剤層との易接着塗布層とは反対側に絶縁性、耐擦り傷性、ガスバリア性、遮光性、光反射性、防汚性等の各種機能を付与するための塗工層が設けられていることも好ましい形態である。
耐擦り傷性の塗工層としてはアクリル系のハードコートが代表として挙げられる。防汚コートとしてはフッ素系のコートや酸化チタン含有コートが挙げられる。バリア性コートとしてはPVDCコートや無機層状化合物含有コートが挙げられる。光反射性コートとしては酸化チタン等の白色顔料含有コートが挙げられる。遮光性コートとしては酸化チタン、カーボンブラックなどの着色顔料含有コートが挙げられる。中でも、光反射性コートや遮光性コートなどの着色塗布層を設けることは発電効率を向上させたり、紫外線による劣化を防ぐために好ましい。光反射性コートや遮光性コートには、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂が好ましいバインダー樹脂として用いられる。
これらのコートの下地として前述の易接着コートを設けてもよい。
本発明の太陽電池裏面封止シートの部分放電電圧は1000V以上であることが好ましい。部分放電電圧はさらには1050V以上、特には1100V以上であることが好ましい。部分放電電圧はポリエステルフィルムの厚さを厚くすることで高めることができる。また、ポリエステルフィルムの触媒由来の析出粒子の影響で部分放電電圧が低下することがあるため、ポリエステルを製造する際の触媒種、触媒量、添加時期、条件を調整することにより粒子の析出を抑制したり、溶融樹脂をフィルターに通過させて粒子を除去することも部分放電電圧を高めるためには効果的である。
部分放電電圧の上限はフィルムの厚みの上限の関係から、2000V程度である。
本発明の太陽電池裏面封止シートの水蒸気透過性は7g/m・d以下であることが好ましい。水蒸気透過性はさらには5g/m・d以下、特には3g/m・d以下であることが好ましい。水蒸気透過性はポリエステルフィルムの厚さを厚くすることで低くする他、バリアコートを設けることで低くすることができる。水蒸気透過性の下限は特に定めるものではないが、現実的値として0.01g/m・d程度である。
(太陽電池モジュール)
太陽電池モジュールは、太陽光、室内光などの入射光を取り込んで電気に変換し、当該電気を蓄えるシステムをいい、例えば、配線を配設した光起電力素子としての太陽電池素子と、太陽電池素子を挟むように介在する充填剤と、受光面側の透明部材、本発明の太陽電池裏面封止シートを用いて構成される。充填剤としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体やポリビニルブチラール樹脂等のオレフィン樹脂が好適に用いられる。
太陽電池素子としては、結晶シリコン系、アモルファスシリコン系、結晶シリコンとアモルファスシリコンを組み合わせたハイブリッド系、化合物系、色素増感系、有機薄膜系などがある。特に限定するものではないが、これらの中でも結晶シリコン系、アモルファスシリコン系、ハイブリッド系等のシリコン系素子が水分や酸素の劣化に対して強いため、本発明の太陽電池裏面封止シートを用いる対象として好ましく、特に結晶シリコン系の素子に用いることが好ましい。結晶シリコン系としては単結晶型、多結晶型いずれにも好ましく適応することができる。
受光側の部材としては、ガラス、透明樹脂シート、透明樹脂フィルムなどが用いられる。
充填剤としては、ラミネート工程による加熱圧着後に別ラインに設けたオーブンでのキュア工程により硬化反応をさせるスタンダードキュアタイプと、ラミネート工程でのラミネーター内部で硬化反応をさせるファストキュアタイプとに分類されるが、いずれも適用しうる。
充填剤の主成分としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体やポリビニルブチラール樹脂等のオレフィン樹脂が用いられる。なお、ここで、「主成分」とは、充填剤のうち50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有することを意味する。充填剤には、例えば、架橋反応を進行させるための架橋剤や反応開始材等が添加される。例えば、熱架橋を行う場合は、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロキシパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物が用いられる。また、光硬化を行う場合には、ベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチルやベンゾインエーテル等の光増感剤が用いられる。さらに、ガラス基板との接着を考慮してシランカップリング剤も配合しても良い。接着性及び硬化を促進する目的で、エポキシ基含有化合物を配合してもよい。エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アクリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有化合物が用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
1.評価方法
1−1.ポリエステル原料・フィルムの固有粘度(IV)
ポリエステル原料又はフィルムを、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの6/4(質量比)混合溶媒を使用して溶解し、温度30℃にて測定した。
1−2.ガラス転移温度
JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、「DSC6200」)を使用して、DSC曲線からガラス転移開始温度を求めた。
1−3.長手方向(MD方向)に配向した結晶の長さ
X線回析装置(理学電機社製)の試料ホルダーに、フィルムのMD方向の子午線方向を測定するように試料を設置した。フィルムの幅方向に対するX線の入射角を変えながら、透過法で回析ピークを観測した。このとき、2θが約43°の回析ピークから、同ピークの回析結晶面である(−105)面方向の結晶サイズD(オングストローム)を、シェラーの式に従って算出し、「長手方向(MD方向)に配向した結晶の長さ」とした。
D=λ/(B−b)cosθ
ここで、B:回析ピーク半価幅(rad)、b=0.12(rad)、λ:CuのKα線波長(1.5418オングストローム)
1−4.フィルム厚み
縦方向に連続したテープ状サンプル(横方向5cm×縦方向1m)を採取し、電子マイクロメータ(セイコーイーエム社製、「ミリトロン1240」)を用いて、1cmピッチで20点の厚みを測定し、その平均値として求めた。
1−5.MOR−C
フィルムを幅方向に5等分し、それぞれの位置で長手方向、幅方向が100mmの正方形サンプルを採取した。得られたサンプルを、マイクロ波透過型分子配向計(王子計測機器社製、「MOA−6004」)を用いて、MOR値を測定した。厚み補正を50μmとしてMOR−C値を求め、5点の平均値を算出した。
1−6.ポリエステルフィルムの密度
JIS K 7112に準じて、密度勾配管を用いて25℃で測定した。
1−7.150℃におけるフィルムの熱収縮率(HS150)
フィルムを幅10mm、長さ250mmのサイズに長辺(250mm)がそれぞれ長手方向、幅方向と一致する方向に沿ってカットし、試験片を作製した。試験片に、2点の印を約200mm間隔となるようにつけ、5gの一定張力下でこれら2点の間隔Aを測った。続いて、試験片を、無荷重で、150℃の雰囲気のオーブン中で30分間放置した。フィルムをオーブンから取り出し、室温まで冷却した後、5gの一定張力下で印の間隔Bを求め、以下の式により熱収縮率を求めた。なお、フィルムの150℃における熱収縮率は、フィルム幅方向に100mm間隔で測定し、サンプル3点の平均値を小数第3位の桁で四捨五入し、小数第2位の桁に丸め使用し、長手方向、幅方向で値の大きい方向の値を用いた。
熱収縮率(%)=[(A−B)/A]×100
1−8.カルボキシル末端濃度(AV)
フィルム及び原料ポリエステル樹脂について、下記の方法で測定した。なお、ポリエステル樹脂の場合はチップをそのまま、太陽電池裏面封止シートの場合はナイフでコート層を削り取りサンプルとした。
i.試料の調製
サンプルを粉砕し、70℃で24時間真空乾燥を行った後、天秤を用いて0.20±0.0005gの範囲となるように秤量した。このときの質量をW(g)とした。試験管にベンジルアルコール10mlと秤量した試料を加え、試験管を205℃に加熱したベンジルアルコール浴に浸し、ガラス棒で攪拌しながら試料を溶解した。溶解時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれA,B,Cとした。次いで、新たに試験管を用意し、ベンジルアルコールのみ入れ、同様の手順で処理し、時間を3分間、5分間、7分間としたときのサンプルをそれぞれa,b,cとする。ただし、サンプル中に無機微粒子が存在する場合は、無機微粒子の質量を除いた値がW(g)となるようにした。なお、無機微粒子の含有量は、サンプルを溶媒で溶解した後、遠心分離で固形分を回収、質量を測定することにより求めることができる。
ii.滴定
予めファクターの分かっている0.04mol/l水酸化カリウム溶液(エタノール溶液)を用いて滴定した。指示薬はフェノールレッドを用い、黄緑色から淡紅色に変化したところを終点とし、水酸化カリウム溶液の滴定量(ml)を求めた。サンプルA,B,Cの滴定量をXA,XB,XC(ml)とし、サンプルa,b,cの滴定量をXa,Xb,Xc(ml)とした。
iii.カルボキシル末端濃度の算出
各溶解時間に対しての滴定量XA,XB,XCを用いて、最小2乗法により、溶解時間0分での滴定量V(ml)を求めた。同様にXa,Xb,Xcを用いて、滴定量V0(ml)を求めた。次いで、次式に従いカルボキシル末端濃度を求めた。
カルボキシル末端濃度(eq/ton)=[(V−V0)×0.04×NF×1000]/W
NF:0.04mol/l水酸化カリウム溶液のファクター
1−9.ジエチレングリコール含量(DEG)
ポリエステル0.1gをメタノール2ml中で250℃で加熱分解した後、ガスクロマトグラフィーにより定量して求めた。
1−10.耐加水分解性
i.サンプル処理
JIS C−60068−2−66で規格化されているHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)を行った。機器はエスペック社製EHS−221を用い、105℃、100%Rh、0.03MPa下の条件で行った。
フィルムを70mm×190mmにカットし、治具を用いてフィルムを設置した。各フィルムは各々が接触しない距離を保ち設置した。105℃、100%Rh、0.03MPaの条件下で200時間処理を行った。
ii.破断伸度保持率
耐加水分解性の評価は、破断伸び保持率で行った。それぞれの処理前、処理後の破断伸びをJIS C 2318−1997 5.3.31(引張強さ及び伸び率)に準拠して測定し、下記式に従い破断伸度保持率を算出した。
破断伸度保持率(%)=〔(処理後の破断伸び)×100〕/(処理前の破断伸び)
1−11.熱酸化安定性パラメータ(熱安定性パラメータ)(TS)
フィルム([IV]i)を冷凍粉砕して20メッシュ以下の粉末にした。この粉末を130℃で12時間真空乾燥し、粉末300mgを内径約8mm、長さ約140mmのガラス試験管に入れ70℃で12時間真空乾燥した。次いで、シリカゲルを入れた乾燥管を試験管上部につけて乾燥した空気下で、230℃の塩バスに浸漬して15分間加熱した後の[IV]f1を測定した。
TSは、下記のように求めた。ただし、[IV]i及び[IV]f1はそれぞれ加熱試験前と加熱試験後のIV(dl/g)を指す。冷凍粉砕は、フリーザーミル(米国スペックス社製、6750型)を用いて行った。専用セルに約2gのレジンチップ又はフィルムと専用のインパクターを入れた後、セルを装置にセットし液体窒素を装置に充填して約10分間保持し、次いでRATE10(インパクターが1秒間に約20回前後する)で5分間粉砕を行った。
TS=0.245{[IV]f1 -1.47−[IV]i -1.47
1−12.部分放電電圧
下記の測定法に基づき部分放電電圧Umax(V)を測定した。
(測定方法)
準拠規格 :IEC60664/A2:2002 4.1.2.4
試験器 :KPD2050(菊水電子工業製)
開始電圧電荷しきい値:1.0pC
消滅電圧電荷しきい値:1.0pC
試験時間 :22.0s。
測定パターン:台形
測定数:10点の平均
(評価)
○:1000eV以上
△:800eV以上、1000eV未満
×:800eV未満
1−13.水蒸気透過性
水蒸気透過度は、JIS−K7129 B法に準じて
水蒸気透過度測定装置(PERMATRAN-W 3/31、Modern Controls社製)により、温度40℃、湿度90%RH、2日パージ後測定した。単位はg/m2・24hrである。
○:5g/m・24hr以下
△:7g/m2・24hr以下
×:7g/m2・24hrより大きい
1−14.接着性
太陽電池裏面封止シートを100mm×100mmに、下記のEVAシートを70mm×90mmに切り出したものを用意し、太陽電池裏面封止シート/EVAシート/太陽電池裏面封止シート(いずれの太陽電池裏面封止シートも塗布層面がEVAシートに対向するように設置した。)の構成で重ね、下記接着条件で加熱圧着し、サンプルを作製した。作製したサンプルを20mm×100mmに切り出した後、SUS板に貼りつけ、引張り試験機を用いて下記条件でフィルム層とEVAシート層の剥離強度を測定した。剥離強度は極大点を超えた後に安定して剥離している部分の平均値として求めた。下記の基準でランク分けした。
○:いずれのEVAを用いたサンプルも75N/20mm以上の接着力を示した。
△:1〜3種のEVAにおいて50N/20mm未満の接着力であった。
×:いずれのEVAを用いたサンプルも50N/20mm未満の接着力であった。
(サンプルの作製条件)
装置:真空ラミネーター(エヌ・ピー・シー社製、LM−30×30型)
加圧:1気圧
EVAシート:
A.スタンダードキュアタイプ
I.サンビック社製、UltraPearl(登録商標)PV standard cure Type(0.4mm)
ラミネート工程:100℃(真空5分、真空加圧5分)
キュア工程:熱処理150℃(常圧45分)
II.三井ファブロ社製、ソーラーエバ(登録商標)SC4(0.4mm)
ラミネート工程:130℃(真空5分、真空加圧5分)
キュア工程:熱処理150℃(常圧45分)
B.ファストキュアタイプ
I.サンビック社製UltraPearl(登録商標)PV fast cure Type(0.45mm)
ラミネート工程:135℃(真空5分、真空加圧15分)
II.三井ファブロ社製ソーラーエバ(登録商標)RCO2B(0.45mm)
ラミネート工程:150℃(真空5分、真空加圧15分)
2.PET樹脂の製造
2−1.PET−Iの製造
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸86.4質量部及びエチレングリコール64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部及びトリエチルアミンを0.16質量部添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kgf/cm2、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、酢酸マグネシウム4水和物0.071質量部、次いでリン酸トリメチル0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部、次いで酢酸ナトリウム0.0036質量部を添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、減圧下260℃から280℃へ徐々に昇温し、285℃で重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後、フィルター(ナスロン社製、95%カット径が5μm)で濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたPET樹脂(PET−I)の固有粘度は0.620dl/gであり、酸価は14.5eq/tonであり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。
2−2.PET−IIの製造
PET−Iを予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、固有粘度0.70dl/g、酸価10eq/tonのPET樹脂(PET−II)を得た。
2−3.PET−IIIの製造
PET−Iと同様の方法で、平均粒径2.3μmの不定形塊状シリカ粒子を1000ppm含有したポリエチレンテレフタレートのマスターバッチペレット(固有粘度0.62dl/g)を作製した。
2−4.PET−IVの製造
PET−IIIを予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、固有粘度0.71dl/g、酸価10eq/tonのPET樹脂(PET−IV)を得た。
2−5.PET−Vの製造
I.重縮合触媒溶液の調製
(1)リン化合物のエチレングリコール溶液の調製
窒素導入管、冷却管を備えたフラスコに、常温常圧下、エチレングリコール2.0リットルを加えた後、窒素雰囲気下200rpmで攪拌しながら、リン化合物としてIrganox(登録商標)1222(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)を200g加えた。さらに2.0リットルのエチレングリコールを追加した後、ジャケット温度の設定を196℃に変更して昇温し、内温が185℃以上になった時点から60分間還流下で攪拌した。その後加熱を止め、直ちに溶液を熱源から取り去り、窒素雰囲気下を保ったまま、30分以内に120℃以下まで冷却した。得られた溶液中のIrganox1222のモル分率は40%、Irganox1222から構造変化した化合物のモル分率は60%であった。
(2)アルミニウム化合物の水溶液の調製
冷却管を備えたフラスコに、常温常圧下、純水5.0リットルを加えた後、200rpmで攪拌しながら、塩基性酢酸アルミニウム200gを純水とのスラリーとして加えた。さらに全体として10.0リットルとなるよう純水を追加して常温常圧で12時間攪拌した。その後、ジャケット温度の設定を100.5℃に変更して昇温し、内温が95℃以上になった時点から3時間還流下で攪拌した。攪拌を止め、室温まで放冷し水溶液を得た。
(3)アルミニウム化合物のエチレングリコール混合溶液の調製
上記方法で得たアルミニウム化合物水溶液に等容量のエチレングリコールを加え、室温で30分間攪拌した。その後、内温80〜90℃にコントロールし、徐々に減圧して、到達27hPaとして、数時間攪拌しながら系から水を留去し、20g/lのアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を得た。得られたアルミニウム溶液の27Al−NMRスペクトルのピーク積分値比は2.2であった。
II.エステル化反応及び重縮合
3基の連続エステル化反応槽及び3基の重縮合反応槽よりなり、且つ第3エステル化反応槽から第1重縮合反応槽への移送ラインに、高速攪拌器を有するインラインミキサーが設置された連続式ポリエステル製造装置を用いた。高純度テレフタル酸1質量部、エチレングリコール0.75質量部をスラリー調製槽に連続的に供給し、スラリーを調整した。調製されスラリーをエステル化反応層へ連続的に供給し、第1エステル化槽が反応温度250℃、110kPa、第2エステル化反応槽が260℃、105kPa、第3エステル化反応槽が260℃、105kPaとした。同時に、第2エステル化反応槽にエチレングルコール0.025質量部を連続的に投入しポリエステルオリゴマーを得た。該オリゴマーを3基の反応槽よりなる連続重縮合装置に連続的に移送した。この際、移送ラインに設置されたインラインミキサーに上記方法で調製したアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液及びリン化合物のエチレングリコール溶液を添加した。なお、それぞれポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子及びリン原子として0.015モル%及び0.036モル%となるように攪拌式のミキサーで攪拌しながら連続的に添加した。初期重縮合反応槽を265℃、9kPa、中期重縮合反応槽を265〜268℃、0.7kPa、最終重縮合反応槽を273℃、13.3Paとして重縮合を行い、固有粘度が0.630dl/g、カルボキシル末端濃度が10.5eq/tonのPET樹脂(PET−V)を得た。
2−6.PET−VIの製造
PET−Vを、回転型真空重合装置を用い、0.5mmHgの減圧下、220℃で時間を変えて固相重合を行い、固有粘度が0.72dl/g、カルボキシル末端濃度が5.0eq/tonのPET樹脂(PET−VI)を作製した。
3−1.塗布液Aの調整
4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート43.75質量部、ジメチロールブタン酸12.85質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール153.41質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、および溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拝し、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。ポリウレタンプレポリマー溶液に水450質量部を添加し、25℃に調整して2000min−1で擁拝混合することによって水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分35%の水溶性ポリウレタン樹脂溶液を調製した。得られたポリウレタン樹脂のガラス転移温度は−30℃であった。
次いで、水55.86質量%、イソプロパノール30.00質量%、上記で得られたポリウレタン樹脂溶液13.52質量%、粒子(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)0.59質量%、界面活性剤(シリコーン系、固形分濃度100質量%)0.03質量%となるように混合し、塗布液を調製した。
4.太陽電池用ポリエステルフィルム
実施例1
(フィルムの作製)
PET樹脂(PET−II)50質量%と、(PET−IV)50質量%とを混合したものを(A)層の原料とした。PET樹脂(PET−II)100質量%を(B)層の原料とした。これらの原料を、それぞれ別々の押出機に投入し、285℃で混合、溶融し、続いてフィードブロックを用い、A/B/A層となるように溶融状態で接合した。このとき、A層とB層の吐出量比率は、ギアポンプを用いて制御した。次いでT−ダイを用いて30℃に調節された冷却ドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。
(2軸延伸フィルムの作製)
得られた未延伸シートを、加熱ロールを用いて75℃に均一加熱し、非接触ヒーターで100℃に加熱して3.3倍のロール延伸を行った。縦延伸を終えた一軸配向PETフィルムに、塗布液Aをロールコート法でPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.15g/m2になるように調整した。得られた1軸延伸フィルムをテンターに導き、140℃に加熱して4.0倍に横延伸し、幅固定して215℃で5秒間の熱処理を施し、更に210℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚み250μm(A/B/A=15/220/15μm)の太陽電池裏面封止シートを得た。
実施例2
実施例1で作製したフィルムを、オフラインのドライヤー(5ゾーン温度制御、各ゾーン長3m、幅2m、非接触、風速7m/min)で最高設定温度170℃、速度30m/minで通した。なお、平面性を保つため、ラインテンションをコントロールしながら処理を行い、太陽電池裏面封止シートを得た。
実施例3
実施例1と同様の方法で得られた未延伸シートを、加熱ロールを用いて75℃に均一加熱し、非接触ヒーターで100℃に加熱して3.3倍のロール延伸を行った。縦延伸を終えた一軸配向PETフィルムに、塗布液Aをロールコート法でPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.15g/m2になるように調整した。得られた1軸延伸フィルムをテンターに導き、140℃に加熱して4.0倍に横延伸し、幅固定して215℃で5秒間の熱処理を施した。更に210℃で幅方向に4%緩和させ、さらに170℃でフィルムの両端部をカットした。次いで、端部をピンチロールで把持しながら引き取りロールの速度を調整して縦方向の弛緩処理を行い、太陽電池裏面封止シートを得た。
実施例4
実施例1において、縦方向の延伸倍率を3.7倍、横の延伸倍率を3.8倍とした以外は実施例1と同様の方法で、厚み250μmの太陽電池裏面封止シートを得た。
実施例5
A層とB層の厚みを表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行い、太陽電池裏面封止シートを得た。
実施例6
B層にポリエチレンテレフタレート樹脂(PET−VI)100質量%とした以外は実施例1と同様の方法で、厚み250μmの太陽電池裏面封止シートを得た。
実施例7
A層とB層の厚みを表1に示すように変えた以外は実施例6と同様に行い、太陽電池裏面封止シートを得た。
実施例8
A層とB層の厚みを表1に示すように変えた以外は実施例6と同様に行い、太陽電池裏面封止シートを得た。
実施例9
B層を2層構成にし(A層/B1層/B2層/A層)、B1層にポリエチレンテレフタレート樹脂(PET−VI)100質量%、B2層にポリエチレンテレフタレート樹脂(PET−II)100質量%とした以外は実施例1と同様の方法で、厚み250μmの太陽電池裏面封止シートを得た。なお、コートはB2層側に行った。
実施例10
フィルムの両面に塗工を行った以外は実施例1と同様に行い、フィルムを得た。さらに、得られたフィルムの片面に下記条件で白色塗工を施し、太陽電池裏面封止シートを得た。
(顔料分散液の調整)
メチルエチルケトン120重量部、疎水性シリカとしてCAB−O−CIL TS−7
20(キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク社製)18.2重量部、酸化チ
タンとしてタイピュアR−105(デュポン株式会社製)100重量部を混合した後、T
.K.ホモディスパー(特殊機化工業株式会社製)を使用して30分間分散させ、顔料分
散液を調整した。
(フッ素含有樹脂コート剤塗料)
フッ素含有樹脂(A)としてルミフロンLF200(旭硝子株式会社製、CTFE系フ
ッ素樹脂、52mgKOH/g(solid)、60%溶液)を100重量部、架橋剤(
B)としてスミジュールN3300(住化バイエルウレタン株式会社製、HMDI系ポリイソシアネート)6.4重量部、架橋促進剤(C)としてBXX3778−10(東洋インキ製造株式会社製、ジオクチル錫ジラウレート、固形分濃度2.5%)を0.004重量部、溶媒としてメチルエチルケトンを110重量部添加し、混合してフッ素含有樹脂コート剤塗料を調整した。
(白色塗工)
フッ素含有樹脂コート剤塗料221重量部に、顔料分散液1を87重量部添加し、混合して調整したコート剤塗料をフィルム片面上に、乾燥塗膜重量が30g/m2となるようにバーコーターを使用して塗工し、120℃で1分間乾燥後、23℃50%RH環境下で7日間静置し、太陽電池裏面封止シートを得た。
比較例1
(A)、(B)層共にポリエチレンテレフタレート樹脂(PET−I)100質量%とした以外は製造例1と同様の方法で、厚み250μmの太陽電池裏面封止シートを得た。
比較例2
実施例1において、縦延伸倍率を2.6倍、横延伸倍率を3.8倍、テンターでの熱固定温度を245℃とした以外は実施例1と同様の方法で、厚み250μmの太陽電池裏面封止シートを得た。
比較例3
実施例1において、フィルム厚みを100μmとした以外は実施例1と同様の方法で太陽電池裏面封止シートを得た。
得られた太陽電池裏面封止シートの評価結果を表1に示した。
本発明の太陽電池裏面封止シートは、ポリエステルフィルム1枚の構成でありながら、耐加水分解性、電気絶縁性、ガス遮断性を有し、さらに加工時に歪みが生じにくいため充填剤との接着性に優れ、生産性に優れ耐久性の高い太陽電池モジュールとすることができる。

Claims (8)

  1. 1枚のポリエステルフィルムのみからなる太陽電池裏面封止シートであり、当該ポリエステルフィルムは、
    フィルムを構成するポリエステルのカルボキシル末端濃度がポリエステルに対し25eq/ton以下であり、
    厚みが150〜380μmであり、
    広角X線回折法により測定した(−105面)における長手方向に配向した結晶の長さが30Å以上であり、
    フィルム厚みを50μmに換算したときのMORの値(MOR−C)が1.0〜2.0であり、
    フィルムの密度が1.37〜1.40g/cmであることを特徴とする太陽電池裏面封止シート。
  2. フィルムの150℃における熱収縮率が、長手方向、幅方向ともに、−1.0%以上、3.0%以下である請求項1に記載の太陽電池裏面封止シート。
  3. フィルムの150℃における熱収縮率が、長手方向、幅方向ともに、−0.5%以上、0.5%以下である請求項1に記載の太陽電池裏面封止シート。
  4. フィルムを構成するポリエステルが、
    アルミニウム及び/又はその化合物と、フェノール部位を有するリン系化合物を含有する重縮合触媒を用いて重合されてなり、
    フィルムを構成するポリエステルの固有粘度(IV)が0.60〜0.90dl/gである請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池裏面封止シート。
  5. 太陽電池裏面封止シートが少なくとも片面の表層に充填剤層との接着性を向上させるための塗布層を持つことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池裏面封止シート。
  6. 前記塗布層が、脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする請求項5に記載の太陽電池裏面封止シート。
  7. 前記塗布層とは反対側に着色塗布層が設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の太陽電池裏面封止シート。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池裏面封止シートと、太陽電池裏面封止シートに隣接する充填剤層と、充填剤層に埋設された太陽電池素子を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
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