JP2013191516A - リチウムイオン電池用正極材料及びリチウムイオン電池用正極並びにリチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のリチウムイオン電池用正極材料1は、電極活物質の1次粒子2と、この電極活物質の1次粒子2が凝集した2次粒子3との混合物が、さらに凝集した凝集体であり、1次粒子2及び2次粒子3は炭素質被膜にて被覆されており、これら1次粒子2の間、2次粒子3の間、1次粒子2と2次粒子3との間は、炭素質被膜の頸部状結合部5により結合され、これらの間の隙間は細孔6となっている。
【選択図】図1
Description
中でも、リチウムイオン電池は、従来の鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等の二次電池と比べて、軽量かつ小型であるとともに、高エネルギーを有するという特徴があり、実用化が進められている。
このリチウムイオン電池の正極材料に使用される電極活物質としては、LiCoO2をはじめとして、LiNiO2やLiMnO2、あるいはこれらの複合酸化物等のリチウム遷移金属酸化物が実用化され、これらを使用した大容量のリチウムイオン電池が携帯用情報端末等のモバイル機器を中心に搭載され、機器の小型化、軽量化に大きな貢献をしている。
一方、リチウムイオン電池の新たな用途として、電力備蓄用の大型電池やEV等の車載用電池の用途への検討が進められており、今後の展開が期待されている。
しかしながら、リチウム遷移金属酸化物等の電極活物質は、充電状態で加熱すると200〜300℃の温度にて酸素放出を開始するという特性がある。リチウムイオン電池では、電解液として可燃性の有機電解液を用いていることから、酸素放出が始まると、有機電解液が発火したり、あるいは爆発する等の危険があり、リチウム遷移金属酸化物を大型電池や車載用電池へ適用するのは、安全性確保の点から容易ではない。
これらのオリビン構造を有する電極活物質は、安全性の他、十分な理論容量や高速充放電性等の期待される特性を有するが、リチウム遷移金属酸化物と異なり、電子伝導性が悪く、また、リチウムイオンの挿入脱離速度が遅く、高い電池容量が得られ難いという問題点がある。
そこで、このような問題点を解決するために、電極活物質を有機物の加熱分解により生成する炭素質被膜で被覆し、電子伝導性を向上させる技術(特許文献1)が提案されている。また、電極活物質を微粒子化し、挿入脱離速度が遅くとも高い電池容量を得る技術が提案されている(特許文献2)。
そこで、これらの問題を解決するために、微粒子化した電極活物質を凝集体とすることにより比表面積を減少させ、結着剤量の低減を図る技術が提案されている(特許文献3)。
リチウムイオン電池の正極の高容量化や高速充放電特性の改善を考えた場合、電極活物質の1次粒子を数百nm以下にまで微細化・高比表面積化することで、電極活物質粒子内を移動する電子やリチウムイオンの移動距離を十分短くし、かつリチウムイオンの挿入脱離反応を生じさせる電極活物質の表面を増大させる必要がある。ところが、この様にした場合、凝集体の体積密度の低下が顕著になってしまい、その結果、電極活物質の1次粒子を覆っている炭素質被膜が不均一になり、電池容量の低下を招く。そこで、電極活物質の1次粒子を微細化しつつ、この1次粒子を凝集した凝集体の体積密度を向上させる更なる改良が求められていた。
この技術によれば、1次焼成で得られた塊状のLiFePO4を5μm以下に粉砕することで、1次粒子により形成された空間のないLiFePO4粒子を得、このLiFePO4粒子に樹脂等の炭素前駆体を混合し、造粒して凝集体とし、この凝集体を2次焼成することにより、LiFePO4粒子と炭素とを複合した凝集体からなる正極材料を得ており、この正極材料を用いることで、電極中への正極材料の高充填を果たしている。
この凝集体は、予め表面に炭素質被膜が形成された電極活物質の1次粒子、あるいは電極活物質の1次粒子及び炭素原材料を、溶媒中に分散させ、得られたスラリーを高温雰囲気下に噴霧することにより得られる。
この技術によれば、凝集体を構成する電極活物質の1次粒子間の細孔径を、この1次粒子の平均粒子径の0.1倍以上かつ0.9倍以下に制御することにより、結着剤が1次粒子間へ侵入するのを防止して電子伝導性の低下を抑制し、よって、高電池容量と負荷特性の両立を実現している。
この多孔質リチウム酸化物ナノ粒子は、電極活物質前駆体を造粒・焼成することにより、炭素を介した10〜100nmのナノ結晶の多孔質体とし、さらに、このナノ結晶の多孔質体と炭素材等の導電剤とを造粒することにより、大きな比表面積と高導電性を実現した多孔質リチウム酸化物マイクロ粒子を得ている。この多孔質リチウム酸化物マイクロ粒子は高出力用途に適応している。
この技術によれば、微細化された電極活物質の1次粒子の比表面積を保ちつつ凝集体化することが可能である。
このように、電極活物質の1次粒子間が頸部状に結合されず、点接触になり易いことから、結着剤が電極活物質の1次粒子間に浸透し易くなり、したがって、電子伝導性の改善が不十分なものになっている。
また、多孔質リチウム酸化物マイクロ粒子は、単に炭素材料が加えられているのみであるから、結果として、多孔質リチウム酸化物ナノ粒子の表面に炭素粒子が単に吸着しているのみとなる。したがって、電極活物質の1次粒子の表面に形成された炭素質被膜の膜厚が均一にならないという問題点があった。この炭素質被膜の膜厚の不均一は、電子伝導性及びリチウムイオンの挿入脱離反応を十分に得ることができず、電池容量が低下する一因となる。
このように、特許文献6記載の技術は、微細化された電極活物質の1次粒子を高比表面積に保ちつつ2次粒子化する技術としては有効であるが、炭素質被膜の膜厚を均一化することができず、電子伝導性が不十分なものとなり、電池容量が低下する一因となる。
前記凝集体は、表面が炭素質被膜にて被覆された前記1次粒子が凝集してなる中実の2次粒子を含有してなることが好ましい。
水銀圧入法により測定した累積細孔径分布の50%における数平均細孔径(D50)は10nm以上かつ300nm以下であることが好ましい。
前記凝集体の外周部における前記炭素質被膜の平均膜厚A及び該凝集体の中心部における前記炭素質被膜の平均膜厚Bは、下記式(1)
0.7≦B/A≦1.3 ……(1)
を満たすことが好ましい。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料は、電極活物質の1次粒子と前記電極活物質の1次粒子が凝集した2次粒子との混合物がさらに凝集した凝集体であり、前記1次粒子及び前記2次粒子は炭素質被膜にて被覆されており、前記凝集体は、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下の体積密度を有する多孔性の凝集体を含有した正極材料である。
これら1次粒子2の間、2次粒子3の間、1次粒子2と2次粒子3との間は、それぞれ炭素質被膜の一部が頸部状化した頸部状結合部5により結合されるとともに、これらの間の隙間は細孔6となっている。
これにより、これらの粒子間にリチウムイオンの拡散浸透が可能な細孔6が形成され、かつ炭素質被膜4が電子伝導を阻害しない程度の密度を有するので、頸部状結合部5があっても、リチウムイオンは電極活物質の表面に到達することができ、リチウムイオンの挿入脱離反応を効率的に行うことができる。また、各粒子間が頸部状結合部5により結合されているので、電子伝導が容易である。よって、電池容量を向上させることができる。また、各粒子間を頸部状結合部5により結合することにより、結着剤浸入による粒子間への影響を防止し、電子電導性を保つことができる。
この多孔性の凝集体の体積密度を、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下とした理由は、この範囲が炭素質被膜を形成する際の有機物の加熱分解時に発生する有機物分解ガスが凝集体内から逃げ難くなる範囲であり、この多孔性の凝集体の体積密度を、中実の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下としたことにより、電極活物質の1次粒子2の表面近傍における有機物分解ガスの濃度を高めることができ、電極活物質の1次粒子の表面を覆う炭素質被膜の膜厚を均一にすることができる。
このように、中実の2次粒子を含有することにより、凝集体全体の体積密度を向上させることができ、炭素質被膜を均一化することができる。
中実の2次粒子を構成する1次粒子間には空隙が存在するが、この空隙とは、粒子間の空気以外のものが含まれない空間のことであり、電極活物質の1次粒子間の炭素質被膜の細孔6は含めないものとする。
ここで、凝集体の平均粒子径を上記の範囲とした理由は、平均粒子径が0.5μm未満では、凝集体が細かすぎるために舞い易くなり、電極塗工用ペーストを作製する際に取り扱いが困難になるからであり、一方、平均粒子径が100μmを超えると、電池用電極を作製した際に、乾燥後の電極の膜厚を超える大きさの凝集体が存在する可能性が高くなり、したがって、電極の膜厚の均一性を保持することができなくなるからである。
ここで、数平均細孔径(D50)が10nm未満では、電解液の浸透が阻害される虞があるので好ましくなく、また、300nmを超えると、凝集体の体積密度が低下するので好ましくない。
なお、数平均細孔径(D50)が10nm未満では、電解液の浸透が阻害される虞があるので好ましくなく、また、300nmを超えると、凝集体の体積密度が低下するので好ましくない。
ここで、比表面積が5m2/g未満では、凝集体中の電極活物質の表面積が少なすぎるうえに、この電極活物質の粒径も大きすぎてしまい、リチウムイオンの拡散距離が長くなりすぎるので好ましくなく、一方、凝集体の比表面積が50m2/gを超えると、電極活物質の1次粒子の粒径が小さくなりすぎてしまい、上述した分散液の凝集度合いを制御することが難しくなるので好ましくない。
ここで、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
ここで、1次粒子の平均粒子径の範囲を上記の範囲とした理由は、この範囲が、電極活物質を分散媒中に分散させた分散液における凝集度合いを制御しやすく、かつ、リチウムイオンの挿入脱離反応が行われる電極活物質の表面積及び粒子内部へリチウムイオンが拡散する拡散距離を制御することが容易だからである。
平均粒子径が0.03μm未満では、分散液の凝集度合いを制御することが難しく、得られた凝集体の粒度分布の幅が狭くなってしまい、凝集体の体積密度を向上させることが難しくなるので好ましくなく、また、0.5μmを超えると、電極活物質の表面積が減少する上、リチウムイオンの拡散距離が長くなりすぎてしまい、特に高速で充放電させたときの電池容量が低下してしまうので好ましくない。
ここで、平均粒子径が0.05μm未満では、分散液の粒度分布の幅が狭くなってしまうので好ましくなく、また、0.7μmを超えると、凝集体の細孔径が300nmを超えてしまう虞があるので好ましくない。
炭素質被膜の被覆率は、透過電子顕微鏡(TEM)、エネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いて測定することができる。ここで、炭素質被膜の被覆率が80%未満では、炭素質被膜の被覆効果が不十分となり、リチウムイオンの脱挿入反応が電極活物質表面にて行なわれる際に、炭素質被膜が形成されていない箇所においてリチウムイオンの脱挿入に関わる反応抵抗が高くなり、放電末期の電圧降下が顕著になるので、好ましくない。
ここで、炭素質被膜中の炭素量を上記の範囲に限定した理由は、炭素量が0.6質量部未満では、炭素質被膜の被覆率が80%を下回ってしまい、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となるからである。一方、炭素量が10質量部を超えると、電極活物質に対して炭素質被膜の量が多くなり、よって、炭素を必要な導電性を得る量以上に含むこととなり、凝集体としたときの炭素の質量及び体積密度が低下し、その結果、電極密度が低くなり、単位体積あたりのリチウムイオン電池の電池容量が低下するからである。
0.7≦B/A≦1.3 ……(1)
を満たすことが好ましい。
この凝集体では、その外周部における炭素質被膜の平均膜厚Aと、中心部における炭素質被膜の平均膜厚Bの関係が、上記式(1)を満たすことにより、炭素質被膜の厚みムラを減らし、リチウムイオンの挿入脱離反応の生じ易さや、炭素被膜の電子伝導性のムラを減らすことができる。よって、正極の内部抵抗を減少させることができ、その結果、電池容量を向上させることができる。
本実施形態の正極材料の製造方法は、電極活物質粒子を分散媒中に分散させて電極活物質分散液とし、この電極活物質分散液に炭素前駆体となる有機化合物を添加し、得られたスラリー中の電極活物質の粒度分布における累積体積百分率が90%のときの粒子径(D90)と累積体積百分率が10%のときの粒子径(D10)との比(D90/D10)が5以上かつ30以下となるように調整し、このスラリーを造粒・乾燥することにより、本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料、すなわち電極活物質の1次粒子と該電極活物質の1次粒子が凝集した2次粒子との混合物がさらに凝集した凝集体であり、1次粒子及び2次粒子が炭素質被膜にて被覆され、この凝集体の体積密度は、それを中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下である正極材料を得る方法である。
ここで、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
この化合物としては、例えば、酢酸リチウム(LiCH3COO)、塩化リチウム(LiCl)等のリチウム塩、あるいは水酸化リチウム(LiOH)からなる群から選択されたLi源と、塩化鉄(II)(FeCl2)、酢酸鉄(II)(Fe(CH3COO)2)、硫酸鉄(II)(FeSO4)等の2価の鉄塩と、リン酸(H3PO4)、リン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)、リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)等のリン酸化合物と、水とを混合して得られるスラリー状の混合物を、耐圧密閉容器を用いて水熱合成し、得られた沈殿物を水洗してケーキ状の前駆体物質を生成し、このケーキ状の前駆体物質を焼成して得られた化合物を好適に用いることができる。
ここで、有機化合物の炭素量換算の配合比が0.6質量部未満では、炭素質被膜の被覆率が80%を下回ることとなり、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となる。一方、有機化合物の炭素量換算の配合比が10質量部を超えると、相対的に電極活物質の配合比が低くなり、電池を形成した場合に電池の容量が低くなるとともに、炭素質被膜の過剰な担持により電極活物質が嵩高くなり、したがって、電極密度が低くなり、単位体積あたりのリチウムイオン電池の電池容量の低下が無視できなくなる。
電極活物質と有機化合物とを水に溶解あるいは分散させる方法としては、電極活物質が分散し、有機化合物が溶解または分散する方法であれば、特に限定しないが、例えば、ボールミル、サンドミル等の分散装置を用いる方法が好ましい。
この噴霧の際の液滴の平均粒径は、0.05μm以上かつ100μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上かつ20μm以下である。
噴霧の際の液滴の平均粒径を上記の範囲とすることで、平均粒子径が0.5μm以上かつ100μm以下、好ましくは1μm以上かつ20μm以下の乾燥物が得られる。
この非酸化性雰囲気としては、窒素(N2)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましく、より酸化を抑えたい場合には水素(H2)等の還元性ガスを含む還元性雰囲気が好ましい。また、焼成時に非酸化性雰囲気中に蒸発した有機分を除去する目的で、酸素(O2)等の支燃性及び可燃性ガスを不活性雰囲気中に導入することとしてもよい。
以上により、本実施形態の正極材料、すなわち電極活物質の1次粒子と該電極活物質の1次粒子が凝集した2次粒子との混合物がさらに凝集した凝集体であり、1次粒子及び2次粒子が炭素質被膜にて被覆され、この凝集体の体積密度は、それを中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下である正極材料が得られる。
本実施形態のリチウムイオン電池用正極は、本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料を正極層に含有している。
この正極層は、本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料と結着剤との混合物をアルミニウム等の金属箔上に塗布し、乾燥してシート状としたもので、本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料を含有したことにより、正極の内部抵抗が低下し、電池容量も向上している。
本実施形態のリチウムイオン電池は、本実施形態のリチウムイオン電池用正極を備えている。
このリチウムイオン電池は、本実施形態のリチウムイオン電池用正極と、黒鉛系炭素材料を用いた負極と、これら正極及び負極を仕切る多孔質ポリプロピレン等からなるセパレータと、リチウムイオン伝導性を有する電解液とにより構成されており、本実施形態のリチウムイオン電池用正極を用いることにより、正極の内部抵抗が低下し、電池容量も向上し、しかも、高速充放電特性に優れたものとなっている。
例えば、本実施例では、電極材料自体の挙動をデータに反映させるため、負極に金属Liを用いたが、炭素材料、Li合金、Li4Ti5O12等の負極材料を用いてもかまわない。また電解液とセパレータの代わりに固体電解質を用いても良い。
(正極材料の作製)
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCH3COO)、2molの硫酸鉄(II)(FeSO4)、2molのリン酸(H3PO4)を混合し、原料スラリーを調製した。
次いで、この原料スラリーにエチレングリコールを、水以外の原料100質量部に対して3質量部となるように添加し、さらに全体量が4L(リットル)になるように水を添加し、スラリー状の混合物を調整した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、120℃にて1時間、水熱合成を行った。次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質を得た。
次いで、得られたスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し乾燥して、乾燥物を得た。次いで、得られた乾燥物を窒素(N2)ガスからなる不活性雰囲気下、700℃にて1時間焼成し、実施例1のリチウムイオン電池用正極材料(A1)を得た。
また、この凝集体を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したところ、平均粒子径100nmの1次粒子同士が炭素質被膜による頸部状結合部を介して結合して平均粒子径200nmの2次粒子となり、この2次粒子同士が凝集して凝集体を構成していることが確認された。この凝集体の透過型電子顕微鏡(TEM)像を図2に示す。
ここで2次粒子の平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)像の視野内で無作為に選んだ10個の2次粒子の長軸方向の長さを測定し、この操作を5視野にて行った場合の、50個の2次粒子の長軸方向の長さの平均値のことである。
この正極材料の体積密度、凝集体内部の数平均細孔径(平均細孔径)D50、炭素質被膜の平均膜厚の比(中心部炭素質被膜の厚み/外周部炭素質被膜の厚み)、比表面積それぞれの評価を行った。
評価方法は下記のとおりである。
水銀ポロシメーターを用いて測定した。
(2)凝集体内部の平均細孔径(D50)
水銀ポロシメーターを用いて測定した。
(3)炭素質被膜の平均膜厚の比
凝集体の炭素質被膜を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、凝集体の中心部における炭素質被膜の厚みと、外周部における炭素質被膜の厚みを、それぞれ5点測定して、それぞれの平均値を算出し、これらの平均値を基に炭素質被膜の平均膜厚の比(中心部炭素質被膜の厚み/外周部炭素質被膜の厚み)を算出した。
比表面積計 BelsorpII(日本ベル社製)を用いて正極材料の比表面積(m2/ g)を測定した。
これらの評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(A1)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)とを、質量比が90:5:5となるように混合し、さらに溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を加えて流動性を付与し、スラリーを作製した。
次いで、このスラリーを厚み15μmのアルミニウム(Al)箔上に塗布し、乾燥した。その後、600kgf/cm2の圧力にて加圧し、実施例1のリチウムイオン電池の正極を作製した。
一方、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを1:1(質量比)にて混合し、さらに1MのLiPF6溶液を加えて、リチウムイオン伝導性を有する電解質溶液を作製した。
次いで、上記の電池用部材を上記の電解質溶液に浸漬し、実施例1のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の放電容量、充放電特性及び内部抵抗それぞれの評価を行った。
評価方法は下記のとおりである。
(1)放電容量
上記のリチウムイオン電池の充放電試験を、室温(25℃)にて、カットオフ電圧2−4.5V、充放電レート0,1C、1Cの定電流にて実施した。それぞれの充放電レートでの初期放電容量を表2に示す。
(2)充放電特性
室温(25℃)にて、カットオフ電圧2−4.2V、充放電レート1Cの定電流(1時間充電の後、1時間放電)下にて実施した。充放電特性を図3に示す。
上記の充放電特性においては、放電末期に認められる電圧降下が、正極材料の表面の炭素質被膜のムラの大きさ、すなわち内部抵抗の高低を示している。そこで、電圧降下が顕著に認められる試料を、内部抵抗が高い試料と判断した。
ここでは、電圧降下が認められないか、電圧降下が小さい試料を「○」、電圧降下が顕著に認められる試料を「×」と評価した。
これらの評価結果を表2に示す。
スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が15となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した外は、実施例1に準じて、実施例2の正極材料(A2)を得た。得られた正極材料(A2)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径120nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A2)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
エチレングリコールの添加量を、水以外の原料100質量部に対して1質量部とした他は、実施例1に準じて、1次粒子の平均粒子径が130nmの電極活物質粒子を得た。
次いで、この電極活物質粒子を用い、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が8となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて実施例3の正極材料(A3)を得た。得られた正極材料(A3)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径150nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A3)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図3に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が16となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて実施例4の正極材料(A4)を得た。得られた正極材料(A4)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径180nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A4)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
エチレングリコールを無添加とした他は、実施例1に準じて、1次粒子の平均粒子径が210nmの電極活物質粒子を得た。
次いで、この電極活物質粒子を用い、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が7となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて実施例5の正極材料(A5)を得た。得られた正極材料(A5)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径230nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A5)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図3及び図4に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
エチレングリコールを無添加とし、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が15となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて実施例6の正極材料(A6)を得た。得られた正極材料(A6)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径260nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A5)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図4に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
エチレングリコールを無添加とし、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が25となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて実施例7の正極材料(A7)を得た。得られた正極材料(A7)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径390nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A7)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図4に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
水熱合成の条件を170℃にて1時間とし、エチレングリコールを無添加とした他は、実施例1に準じて実施例8の正極材料(A8)を得た。得られた正極材料(A8)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径340nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A8)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図3に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
水熱合成の条件を170℃にて1時間とし、エチレングリコールを無添加とし、さらに、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が14となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて実施例9の正極材料(A9)を得た。得られた正極材料(A9)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径540nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A9)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
鉄源となる硫酸鉄(II)(FeSO4)の代わりに、マンガン源として硫酸マンガン(II)(MnSO4)を用い、実施例1に準じて平均粒子径が50nmの単相のLiMnPO4からなるケーキ状の電極活物質を得た。
次いで、この電極活物質142.5g(固形分換算)と、炭化剤としてポリビニルアルコール50gを水500gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、炭化触媒として酢酸リチウム、クエン酸鉄およびリン酸を、リン酸鉄リチウム換算で7.5gと、媒体粒子として直径5mmのジルコニアボール500gをボールミルに投入し、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が7となるように、ボールミルの撹拌時間を調整し、分散処理を行った。
この正極材料(A10)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
鉄源となる硫酸鉄(II)(FeSO4)の代わりに、マンガン源として硫酸マンガン(II)(MnSO4)を用い、実施例1に準じて平均粒子径が50nmの単相のLiMnPO4からなるケーキ状の電極活物質を得た。
次いで、この電極活物質142.5g(固形分換算)と、炭化剤としてポリビニルアルコール50gを水500gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、炭化触媒として酢酸リチウム、クエン酸鉄およびリン酸を、リン酸鉄リチウム換算で7.5gと、媒体粒子として直径5mmのジルコニアボール500gをボールミルに投入し、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が27となるように、ボールミルの撹拌時間を調整し、分散処理を行った。
この正極材料(A11)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
エチレングリコールを無添加とし、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が3となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて比較例1の正極材料(B1)を得た。得られた正極材料(B1)は、平均粒子径6μmの凝集体であり、平均粒子径230nmの1次粒子同士が炭素を介して結合しており、炭素によって結合された2次粒子はほぼ存在していないことが確認された。
この正極材料(B1)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図3及び図4に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
水熱合成の条件を230℃にて1時間とし、エチレングリコールを無添加とした他は、実施例1に準じて比較例2の正極材料(B2)を得た。得られた正極材料(B2)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径920nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(B2)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
実施例1に準じて作製された正極材料(A1)150g(固形分換算)と、水200gと、媒体粒子として直径5mmのジルコニアボール500gをボールミルに投入し、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が3以下になるまで粉砕し、炭素質被覆された電極活物質粒子からなるスラリーを得た。
次いで、このスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し乾燥して、乾燥物を得た。次いで、得られた乾燥物を窒素(N2)ガスからなる不活性雰囲気下、700℃にて30分間焼成し、比較例3のリチウムイオン電池用正極材料(B3)を得た。
この正極材料(B3)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図4に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
鉄源となる硫酸鉄(II)(FeSO4)の代わりに、マンガン源として硫酸マンガン(II)(MnSO4)を用い、実施例1に準じて平均粒子径が50nmの単相のLiMnPO4からなるケーキ状の電極活物質を得た。
次いで、この電極活物質142.5g(固形分換算)と、炭化剤としてポリビニルアルコール50gを水500gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、炭化触媒として酢酸リチウム、クエン酸鉄およびリン酸を、リン酸鉄リチウム換算で7.5gと、媒体粒子として直径5mmのジルコニアボール500gをボールミルに投入し、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が3となるように、ボールミルの撹拌時間を調整し、分散処理を行った。
この正極材料(B4)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
2 電極活物質の1次粒子
3 2次粒子
4 炭素質被膜
5 頸部状結合部
6 細孔
Claims (7)
- 電極活物質の1次粒子と前記電極活物質の1次粒子が凝集した2次粒子との混合物がさらに凝集した凝集体であり、
前記1次粒子及び前記2次粒子は炭素質被膜にて被覆されており、
前記凝集体は、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下の体積密度を有する多孔性の凝集体を含有してなることを特徴とするリチウムイオン電池用正極材料。 - 前記1次粒子の表面が炭素質被膜にて被覆され、かつ前記1次粒子と前記2次粒子とは炭素質被膜を介して結合されていることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン電池用正極材料。
- 前記凝集体は、表面が炭素質被膜にて被覆された前記1次粒子が凝集してなる中実の2次粒子を含有してなることを特徴とする請求項1または2記載のリチウムイオン電池用正極材料。
- 水銀圧入法により測定した累積細孔径分布の50%における数平均細孔径(D50)は10nm以上かつ300nm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のリチウムイオン電池用正極材料。
- 前記凝集体の外周部における前記炭素質被膜の平均膜厚A及び該凝集体の中心部における前記炭素質被膜の平均膜厚Bは、下記式(1)
0.7≦B/A≦1.3 ……(1)
を満たすことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のリチウムイオン電池用正極材料。 - 請求項1ないし5のいずれか1項記載のリチウムイオン電池用正極材料を正極層に含有してなることを特徴とするリチウムイオン電池用正極。
- 請求項6記載のリチウムイオン電池用正極を備えてなることを特徴とするリチウムイオン電池。
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