JP2013191516A - リチウムイオン電池用正極材料及びリチウムイオン電池用正極並びにリチウムイオン電池 - Google Patents

リチウムイオン電池用正極材料及びリチウムイオン電池用正極並びにリチウムイオン電池 Download PDF

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Abstract

【課題】電極活物質の電子伝導性を向上させることにより、電池容量を向上させることができ、しかも、高速充放電特性に優れたリチウムイオン電池用正極材料及びリチウムイオン電池用正極並びにリチウムイオン電池を提供する。
【解決手段】本発明のリチウムイオン電池用正極材料1は、電極活物質の1次粒子2と、この電極活物質の1次粒子2が凝集した2次粒子3との混合物が、さらに凝集した凝集体であり、1次粒子2及び2次粒子3は炭素質被膜にて被覆されており、これら1次粒子2の間、2次粒子3の間、1次粒子2と2次粒子3との間は、炭素質被膜の頸部状結合部5により結合され、これらの間の隙間は細孔6となっている。
【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン電池用正極材料及びリチウムイオン電池用正極並びにリチウムイオン電池に関し、特に、高速充放電特性に優れた車載用バッテリー等に用いて好適なリチウムイオン電池用正極材料、及び、このリチウムイオン電池用正極材料を含有したリチウムイオン電池用正極、並びに、このリチウムイオン電池用正極を備えたリチウムイオン電池に関するものである。
近年、小型化、軽量化、高容量化が期待される電池として、リチウムイオン電池等の非水電解液系の二次電池が提案され、実用に供されている。
中でも、リチウムイオン電池は、従来の鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等の二次電池と比べて、軽量かつ小型であるとともに、高エネルギーを有するという特徴があり、実用化が進められている。
このリチウムイオン電池の正極材料に使用される電極活物質としては、LiCoOをはじめとして、LiNiOやLiMnO、あるいはこれらの複合酸化物等のリチウム遷移金属酸化物が実用化され、これらを使用した大容量のリチウムイオン電池が携帯用情報端末等のモバイル機器を中心に搭載され、機器の小型化、軽量化に大きな貢献をしている。
一方、リチウムイオン電池の新たな用途として、電力備蓄用の大型電池やEV等の車載用電池の用途への検討が進められており、今後の展開が期待されている。
しかしながら、リチウム遷移金属酸化物等の電極活物質は、充電状態で加熱すると200〜300℃の温度にて酸素放出を開始するという特性がある。リチウムイオン電池では、電解液として可燃性の有機電解液を用いていることから、酸素放出が始まると、有機電解液が発火したり、あるいは爆発する等の危険があり、リチウム遷移金属酸化物を大型電池や車載用電池へ適用するのは、安全性確保の点から容易ではない。
これに対して、350℃でも酸素の放出が生じない安全性に優れた電極活物質として、LiFePO、LiMnPOに代表されるオリビン構造を有する電極活物質が知られている。
これらのオリビン構造を有する電極活物質は、安全性の他、十分な理論容量や高速充放電性等の期待される特性を有するが、リチウム遷移金属酸化物と異なり、電子伝導性が悪く、また、リチウムイオンの挿入脱離速度が遅く、高い電池容量が得られ難いという問題点がある。
そこで、このような問題点を解決するために、電極活物質を有機物の加熱分解により生成する炭素質被膜で被覆し、電子伝導性を向上させる技術(特許文献1)が提案されている。また、電極活物質を微粒子化し、挿入脱離速度が遅くとも高い電池容量を得る技術が提案されている(特許文献2)。
ところで、電極活物質を微粒子化した場合、この電極活物質微粒子の表面積が増大することから、この電極活物質微粒子を集電体上に接着して電極活物質層を形成する場合に多量の結着剤が必要となり、電極活物質層中の電極活物質量が減少したり、あるいは微粒子間に回りこんだ結着剤により電子伝導性が阻害されてしまうという問題点があり、その結果、電池容量が低下してしまうという問題点があった。また、これらの欠点を補うために結着剤量を減らした場合、成形された電極活物質層にクラックが生じたり、電極活物質層自体が剥離する等の問題点があった。
そこで、これらの問題を解決するために、微粒子化した電極活物質を凝集体とすることにより比表面積を減少させ、結着剤量の低減を図る技術が提案されている(特許文献3)。
一般に、電極活物質の1次粒子を凝集させた凝集体の体積密度を向上させる方法としては、1次粒子の粒度分布を広くする方法があるが、この場合、低電子伝導性やリチウムイオンの低挿入脱離速度を解決する目的で1次粒子を微粒子化すると、粒度分布が狭くなり、結果として、凝集体の体積密度が低下するという問題点がある。
リチウムイオン電池の正極の高容量化や高速充放電特性の改善を考えた場合、電極活物質の1次粒子を数百nm以下にまで微細化・高比表面積化することで、電極活物質粒子内を移動する電子やリチウムイオンの移動距離を十分短くし、かつリチウムイオンの挿入脱離反応を生じさせる電極活物質の表面を増大させる必要がある。ところが、この様にした場合、凝集体の体積密度の低下が顕著になってしまい、その結果、電極活物質の1次粒子を覆っている炭素質被膜が不均一になり、電池容量の低下を招く。そこで、電極活物質の1次粒子を微細化しつつ、この1次粒子を凝集した凝集体の体積密度を向上させる更なる改良が求められていた。
そこで、電極活物質の1次粒子の粒径に着目した凝集体からなる正極材料として、LiFePO粒子の凝集状態を変えて細孔の少ない正極材料とすることにより、電極中の電極活物質の密度を高くした技術が提案されている(特許文献4)。
この技術によれば、1次焼成で得られた塊状のLiFePOを5μm以下に粉砕することで、1次粒子により形成された空間のないLiFePO粒子を得、このLiFePO粒子に樹脂等の炭素前駆体を混合し、造粒して凝集体とし、この凝集体を2次焼成することにより、LiFePO粒子と炭素とを複合した凝集体からなる正極材料を得ており、この正極材料を用いることで、電極中への正極材料の高充填を果たしている。
また、数百nmの大きさの微細な電極活物質の1次粒子を凝集させた正極材料としては、1次粒径が50nm以上かつ500nm以下のオリビン構造を有するリチウムリン酸化合物からなる凝集体の正極材料が提案されている(特許文献5)。
この凝集体は、予め表面に炭素質被膜が形成された電極活物質の1次粒子、あるいは電極活物質の1次粒子及び炭素原材料を、溶媒中に分散させ、得られたスラリーを高温雰囲気下に噴霧することにより得られる。
この技術によれば、凝集体を構成する電極活物質の1次粒子間の細孔径を、この1次粒子の平均粒子径の0.1倍以上かつ0.9倍以下に制御することにより、結着剤が1次粒子間へ侵入するのを防止して電子伝導性の低下を抑制し、よって、高電池容量と負荷特性の両立を実現している。
さらに、炭素質被膜が形成され粒子径が100nm以上かつ500nm以下の多孔質リチウム酸化物ナノ粒子と導電性繊維からなる多孔質リチウム酸化物マイクロ粒子を正極材料とした技術が提案されている(特許文献6)。
この多孔質リチウム酸化物ナノ粒子は、電極活物質前駆体を造粒・焼成することにより、炭素を介した10〜100nmのナノ結晶の多孔質体とし、さらに、このナノ結晶の多孔質体と炭素材等の導電剤とを造粒することにより、大きな比表面積と高導電性を実現した多孔質リチウム酸化物マイクロ粒子を得ている。この多孔質リチウム酸化物マイクロ粒子は高出力用途に適応している。
この技術によれば、微細化された電極活物質の1次粒子の比表面積を保ちつつ凝集体化することが可能である。
特開2001−15111号公報 特許第4190912号公報 特許第3047827号公報 特開2006−32241号公報 特開2009−152188号公報 特開2009−158489号公報
ところで、特許文献4記載の技術では、1次焼成における焼成温度を700〜900℃としているので、電極活物質粒子の粒子成長を抑制することができず、1次焼成後の電極活物質にはμmの大きさの電極活物質の1次粒子が含まれることとなる。このμmの大きさの1次粒子は、単に大きいだけではなく中実な粒子であることが多く、したがって、凝集体に占める電極活物質の1次粒子の体積割合が大きくなり、見かけ上凝集体の体積密度が高くなる。このようなμmの大きさの電極活物質の1次粒子をリチウムイオン電池の正極材料に用いた場合、容量が低く、高速充放電特性に劣ったものとなり、電極活物質の1次粒子を微細化しつつ炭素質被膜を均一化することができないという問題点があった。
特許文献5記載の技術では、電極活物質の1次粒子を被覆する炭素質被膜が不均一になることから、電極活物質の電子伝導性が劣る虞があり、さらに、予め表面に炭素質被膜が形成されているので、1次粒子間の結合が弱くなるという問題点があった。また、各粒子の接触が点接触になり易いので、電子伝導性に劣る虞があるという問題点があった。
このように、電極活物質の1次粒子間が頸部状に結合されず、点接触になり易いことから、結着剤が電極活物質の1次粒子間に浸透し易くなり、したがって、電子伝導性の改善が不十分なものになっている。
特許文献6記載の技術では、体積密度の低い多孔質リチウム酸化物ナノ粒子を用いているので、多孔質リチウム酸化物マイクロ粒子の体積密度が低くなることは避けられず、さらに、表面を覆っている炭素質被膜の膜厚が不均一になってしまう虞があるという問題点があった。
また、多孔質リチウム酸化物マイクロ粒子は、単に炭素材料が加えられているのみであるから、結果として、多孔質リチウム酸化物ナノ粒子の表面に炭素粒子が単に吸着しているのみとなる。したがって、電極活物質の1次粒子の表面に形成された炭素質被膜の膜厚が均一にならないという問題点があった。この炭素質被膜の膜厚の不均一は、電子伝導性及びリチウムイオンの挿入脱離反応を十分に得ることができず、電池容量が低下する一因となる。
このように、特許文献6記載の技術は、微細化された電極活物質の1次粒子を高比表面積に保ちつつ2次粒子化する技術としては有効であるが、炭素質被膜の膜厚を均一化することができず、電子伝導性が不十分なものとなり、電池容量が低下する一因となる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、電極活物質の電子伝導性を向上させることにより、電池容量を向上させることができ、しかも、高速充放電特性に優れたリチウムイオン電池用正極材料及びリチウムイオン電池用正極並びにリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、炭素質被膜にて被覆されている電極活物質の1次粒子と、この電極活物質の1次粒子を凝集した2次粒子を炭素質被膜にて被覆した炭素質被覆2次粒子とを混合して混合物とし、この混合物をさらに凝集させて凝集体とし、さらに、この凝集体が、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下の体積密度を有する多孔性の凝集体を含有することにより、炭素質被膜中における電子伝導性及びリチウムイオンの挿入脱離反応を十分に得ることができ、このリチウムイオン電池用正極材料をリチウムイオン電池の正極に用いたときの正極の内部抵抗が低下し、その結果、電池容量が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のリチウムイオン電池用正極材料は、電極活物質の1次粒子と前記電極活物質の1次粒子が凝集した2次粒子との混合物がさらに凝集した凝集体であり、前記1次粒子及び前記2次粒子は炭素質被膜にて被覆されており、前記凝集体は、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下の体積密度を有する多孔性の凝集体を含有してなることを特徴とする。
このリチウムイオン電池用正極材料では、前記1次粒子の表面が炭素質被膜にて被覆され、かつ前記1次粒子と前記2次粒子とは炭素質被膜を介して結合されていることが好ましい。
前記凝集体は、表面が炭素質被膜にて被覆された前記1次粒子が凝集してなる中実の2次粒子を含有してなることが好ましい。
水銀圧入法により測定した累積細孔径分布の50%における数平均細孔径(D50)は10nm以上かつ300nm以下であることが好ましい。
前記凝集体の外周部における前記炭素質被膜の平均膜厚A及び該凝集体の中心部における前記炭素質被膜の平均膜厚Bは、下記式(1)
0.7≦B/A≦1.3 ……(1)
を満たすことが好ましい。
本発明のリチウムイオン電池用正極は、本発明のリチウムイオン電池用正極材料を正極層に含有してなることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン電池は、本発明のリチウムイオン電池用正極を備えてなることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン電池用正極材料によれば、電極活物質の1次粒子と、この電極活物質の1次粒子が凝集した2次粒子との混合物を、さらに凝集して凝集体とし、これら1次粒子及び2次粒子を炭素質被膜にて被覆したので、表面積を大きくすることでリチウムイオンの挿入脱離反応を十分に得ることができ、かつ電極活物質の1次粒子の内部を拡散するリチウムイオンの移動距離、及びこの1次粒子の内部を移動する電子の移動距離を短縮することができる。
また、この凝集体を、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下の体積密度を有する多孔性の凝集体を含有することとしたので、炭素質被膜を形成する際の有機物の加熱分解時に発生する有機物分解ガスが凝集体内から逃げ難くなり、電極活物質の1次粒子の表面近傍における有機物分解ガスの濃度を高めることができ、その結果、電極活物質の1次粒子の表面を覆う炭素質被膜の膜厚を均一にすることができる。
本発明のリチウムイオン電池用正極によれば、本発明のリチウムイオン電池用正極材料を正極層に含有したので、正極の内部抵抗を低下させることができ、電池容量を向上させることができる。
本発明のリチウムイオン電池によれば、本発明のリチウムイオン電池用正極を備えたので、正極の内部抵抗を低下させることができ、電池容量を向上させることができ、しかも、高速充放電特性に優れたものとなる。
本発明の一実施形態のリチウムイオン電池用正極材料に含まれる多孔性の凝集体を示す模式図である。 本発明の実施例1の凝集体を示す透過型電子顕微鏡(TEM)像である。 本発明の実施例1、3、5、8及び比較例1それぞれの充放電特性を示す図である。 本発明の実施例5、6、7及び比較例1、3それぞれの充放電特性を示す図である。
本発明のリチウムイオン電池用正極材料及びリチウムイオン電池用正極並びにリチウムイオン電池を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[リチウムイオン電池用正極材料]
本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料は、電極活物質の1次粒子と前記電極活物質の1次粒子が凝集した2次粒子との混合物がさらに凝集した凝集体であり、前記1次粒子及び前記2次粒子は炭素質被膜にて被覆されており、前記凝集体は、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下の体積密度を有する多孔性の凝集体を含有した正極材料である。
図1は、本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料に含まれる多孔性の凝集体を示す模式図であり、このリチウムイオン電池用正極材料1は、電極活物質の1次粒子2と、この電極活物質の1次粒子2が凝集した2次粒子3との混合物が、さらに凝集した凝集体であり、1次粒子2及び2次粒子3は膜厚が均一な炭素質被膜4にて被覆されている。
これら1次粒子2の間、2次粒子3の間、1次粒子2と2次粒子3との間は、それぞれ炭素質被膜の一部が頸部状化した頸部状結合部5により結合されるとともに、これらの間の隙間は細孔6となっている。
そして、これら1次粒子2の間、2次粒子3の間、1次粒子2と2次粒子3との間を頸部状結合部5により結合することで、これらの粒子同士の接触部分が断面積の小さい頸部状となって強固に接続された状態の多孔性の凝集体となっている。
これにより、これらの粒子間にリチウムイオンの拡散浸透が可能な細孔6が形成され、かつ炭素質被膜4が電子伝導を阻害しない程度の密度を有するので、頸部状結合部5があっても、リチウムイオンは電極活物質の表面に到達することができ、リチウムイオンの挿入脱離反応を効率的に行うことができる。また、各粒子間が頸部状結合部5により結合されているので、電子伝導が容易である。よって、電池容量を向上させることができる。また、各粒子間を頸部状結合部5により結合することにより、結着剤浸入による粒子間への影響を防止し、電子電導性を保つことができる。
この多孔性の凝集体の体積密度は、水銀ポロシメーターを用いて測定することができ、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下が好ましく、より好ましくは55体積%以上かつ75体積%以下である。ここで、中実な凝集体とは、空隙が全く存在しない凝集体のことであり、この中実な凝集体の密度は電極活物質の理論密度に等しいものとする。
この多孔性の凝集体の体積密度を、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下とした理由は、この範囲が炭素質被膜を形成する際の有機物の加熱分解時に発生する有機物分解ガスが凝集体内から逃げ難くなる範囲であり、この多孔性の凝集体の体積密度を、中実の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下としたことにより、電極活物質の1次粒子2の表面近傍における有機物分解ガスの濃度を高めることができ、電極活物質の1次粒子の表面を覆う炭素質被膜の膜厚を均一にすることができる。
本実施形態の凝集体は、上記の多孔性の凝集体の他、表面が炭素質被膜にて被覆された1次粒子が凝集してなる中実の2次粒子を含有してもよい。
このように、中実の2次粒子を含有することにより、凝集体全体の体積密度を向上させることができ、炭素質被膜を均一化することができる。
中実の2次粒子を構成する1次粒子間には空隙が存在するが、この空隙とは、粒子間の空気以外のものが含まれない空間のことであり、電極活物質の1次粒子間の炭素質被膜の細孔6は含めないものとする。
本実施形態の凝集体、すなわち上記の多孔性の凝集体及び中実の2次粒子を含む凝集体全体の平均粒子径は、0.5μm以上かつ100μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上かつ20μm以下である。
ここで、凝集体の平均粒子径を上記の範囲とした理由は、平均粒子径が0.5μm未満では、凝集体が細かすぎるために舞い易くなり、電極塗工用ペーストを作製する際に取り扱いが困難になるからであり、一方、平均粒子径が100μmを超えると、電池用電極を作製した際に、乾燥後の電極の膜厚を超える大きさの凝集体が存在する可能性が高くなり、したがって、電極の膜厚の均一性を保持することができなくなるからである。
本実施形態の凝集体は、水銀圧入法により測定した累積細孔径分布の50%における数平均細孔径(D50)(以下、単に「平均細孔径」と称する場合もある)が10nm以上かつ300nm以下であることが好ましい。
ここで、数平均細孔径(D50)が10nm未満では、電解液の浸透が阻害される虞があるので好ましくなく、また、300nmを超えると、凝集体の体積密度が低下するので好ましくない。
上記の凝集体は、正極形成時に溶媒、結着剤、導電助剤等と混合され、集電体上に塗布、乾燥後、プレスにより圧縮されるが、この圧縮の際に凝集体も圧力を受けて凝縮したり、歪みが生じたりする。ここで、凝集体の数平均細孔径(D50)が10nm以上かつ300nm以下であれば、凝集体の細孔内部に結着剤の浸入をある程度防止することができ、結着剤を集電体と電極材料との接着に効果的に用いることができ、電極の電極活物質層が剥離したり、クラックが入ったり等の不具合を防止することができる。また、凝集体の細孔内部に浸入した結着剤が細孔内壁を覆うことにより、凝縮や歪みによって電極活物質の1次粒子、または2次粒子同士の炭素による結合に亀裂が生じた場合であっても、粒子同士を強固に接着し、電極活物質間の電子電導性が損なわれるのを防止することができる。
なお、数平均細孔径(D50)が10nm未満では、電解液の浸透が阻害される虞があるので好ましくなく、また、300nmを超えると、凝集体の体積密度が低下するので好ましくない。
この凝集体の比表面積は、BET法で測定した値が5m/g以上かつ50m/g以下の範囲であれば、この凝集体中の電極活物質の表面積が増大するので好ましい。
ここで、比表面積が5m/g未満では、凝集体中の電極活物質の表面積が少なすぎるうえに、この電極活物質の粒径も大きすぎてしまい、リチウムイオンの拡散距離が長くなりすぎるので好ましくなく、一方、凝集体の比表面積が50m/gを超えると、電極活物質の1次粒子の粒径が小さくなりすぎてしまい、上述した分散液の凝集度合いを制御することが難しくなるので好ましくない。
本実施形態の凝集体の主成分である電極活物質としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム及びLiPO(但し、AはCo、Mn、Ni、Fe、Cu、Crの群から選択される1種または2種以上、DはMg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、希土類元素の群から選択される1種または2種以上、0<x<2、0<y<1.5、0≦z<1.5)の群から選択される1種を主成分とすることが好ましい。
ここで、Aについては、Co、Mn、Ni、Feが、Dについては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Alが、高い放電電位、豊富な資源量、安全性などの点から好ましい。
ここで、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
この電極活物質の1次粒子の平均粒子径は0.03μm以上かつ0.5μm以下が好ましい。
ここで、1次粒子の平均粒子径の範囲を上記の範囲とした理由は、この範囲が、電極活物質を分散媒中に分散させた分散液における凝集度合いを制御しやすく、かつ、リチウムイオンの挿入脱離反応が行われる電極活物質の表面積及び粒子内部へリチウムイオンが拡散する拡散距離を制御することが容易だからである。
平均粒子径が0.03μm未満では、分散液の凝集度合いを制御することが難しく、得られた凝集体の粒度分布の幅が狭くなってしまい、凝集体の体積密度を向上させることが難しくなるので好ましくなく、また、0.5μmを超えると、電極活物質の表面積が減少する上、リチウムイオンの拡散距離が長くなりすぎてしまい、特に高速で充放電させたときの電池容量が低下してしまうので好ましくない。
この電極活物質の2次粒子の平均粒子径は0.05μm以上かつ0.7μm以下が、分散液の粒度分布の幅や、2次粒子間に生じる凝集体の細孔径を適度に保つことができるので好ましい。
ここで、平均粒子径が0.05μm未満では、分散液の粒度分布の幅が狭くなってしまうので好ましくなく、また、0.7μmを超えると、凝集体の細孔径が300nmを超えてしまう虞があるので好ましくない。
この電極活物質では、リチウムイオン電池の電極材料として用いる際にリチウムイオンの脱挿入に関わる反応を電極活物質表面全体で均一に行うために、電極活物質の表面の80%以上、好ましくは90%以上を炭素質被膜にて被覆されていることが好ましい。
炭素質被膜の被覆率は、透過電子顕微鏡(TEM)、エネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いて測定することができる。ここで、炭素質被膜の被覆率が80%未満では、炭素質被膜の被覆効果が不十分となり、リチウムイオンの脱挿入反応が電極活物質表面にて行なわれる際に、炭素質被膜が形成されていない箇所においてリチウムイオンの脱挿入に関わる反応抵抗が高くなり、放電末期の電圧降下が顕著になるので、好ましくない。
この炭素質被膜中の炭素量は、電極活物質100質量部に対して0.6質量部以上かつ10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量部以上かつ2.5質量部以下である。
ここで、炭素質被膜中の炭素量を上記の範囲に限定した理由は、炭素量が0.6質量部未満では、炭素質被膜の被覆率が80%を下回ってしまい、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となるからである。一方、炭素量が10質量部を超えると、電極活物質に対して炭素質被膜の量が多くなり、よって、炭素を必要な導電性を得る量以上に含むこととなり、凝集体としたときの炭素の質量及び体積密度が低下し、その結果、電極密度が低くなり、単位体積あたりのリチウムイオン電池の電池容量が低下するからである。
前記凝集体の外周部における前記炭素質被膜の平均膜厚A及び該凝集体の中心部における前記炭素質被膜の平均膜厚Bは、下記式(1)
0.7≦B/A≦1.3 ……(1)
を満たすことが好ましい。
この凝集体では、その外周部における炭素質被膜の平均膜厚Aと、中心部における炭素質被膜の平均膜厚Bの関係が、上記式(1)を満たすことにより、炭素質被膜の厚みムラを減らし、リチウムイオンの挿入脱離反応の生じ易さや、炭素被膜の電子伝導性のムラを減らすことができる。よって、正極の内部抵抗を減少させることができ、その結果、電池容量を向上させることができる。
この正極材料のタップ密度は、1.0g/cm以上が好ましい。ここで、タップ密度が1.0g/cm未満では、凝集体を分散媒中に分散させて電極スラリーを作製する際に、凝集体内部の空隙及び凝集体の間隙に保持される溶媒量が多くなりすぎてしまうために、電極スラリー中の固形分の濃度が低下し、したがって、電極スラリーを塗布して得られた塗膜の乾燥に要する時間が長くなるので好ましくない。
[正極材料の製造方法]
本実施形態の正極材料の製造方法は、電極活物質粒子を分散媒中に分散させて電極活物質分散液とし、この電極活物質分散液に炭素前駆体となる有機化合物を添加し、得られたスラリー中の電極活物質の粒度分布における累積体積百分率が90%のときの粒子径(D90)と累積体積百分率が10%のときの粒子径(D10)との比(D90/D10)が5以上かつ30以下となるように調整し、このスラリーを造粒・乾燥することにより、本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料、すなわち電極活物質の1次粒子と該電極活物質の1次粒子が凝集した2次粒子との混合物がさらに凝集した凝集体であり、1次粒子及び2次粒子が炭素質被膜にて被覆され、この凝集体の体積密度は、それを中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下である正極材料を得る方法である。
電極活物質としては、上記の正極材料にて記載したのと同様、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム及びLiPO(但し、AはCo、Mn、Ni、Fe、Cu、Crの群から選択される1種または2種以上、DはMg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、希土類元素の群から選択される1種または2種以上、0<x<2、0<y<1.5、0≦z<1.5)の群から選択される1種を主成分とすることが好ましい。
ここで、Aについては、Co、Mn、Ni、Feが、Dについては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Alが、高い放電電位、豊富な資源量、安全性などの点から好ましい。
ここで、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
LiPOにて表される化合物としては、固相法、液相法、気相法等の従来の方法により製造したものを用いることができる。
この化合物としては、例えば、酢酸リチウム(LiCHCOO)、塩化リチウム(LiCl)等のリチウム塩、あるいは水酸化リチウム(LiOH)からなる群から選択されたLi源と、塩化鉄(II)(FeCl)、酢酸鉄(II)(Fe(CHCOO))、硫酸鉄(II)(FeSO)等の2価の鉄塩と、リン酸(HPO)、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)等のリン酸化合物と、水とを混合して得られるスラリー状の混合物を、耐圧密閉容器を用いて水熱合成し、得られた沈殿物を水洗してケーキ状の前駆体物質を生成し、このケーキ状の前駆体物質を焼成して得られた化合物を好適に用いることができる。
また、有機化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、マルトース、スクロース、ラクトース、グリコーゲン、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナン、キチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、アガロース、ポリエーテル、多価アルコール類が挙げられる。
電極活物質と有機化合物との配合比は、有機化合物の全量を炭素量に換算したとき、電極活物質100質量部に対して0.6質量部以上かつ10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量部以上かつ2.5質量部以下である。
ここで、有機化合物の炭素量換算の配合比が0.6質量部未満では、炭素質被膜の被覆率が80%を下回ることとなり、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となる。一方、有機化合物の炭素量換算の配合比が10質量部を超えると、相対的に電極活物質の配合比が低くなり、電池を形成した場合に電池の容量が低くなるとともに、炭素質被膜の過剰な担持により電極活物質が嵩高くなり、したがって、電極密度が低くなり、単位体積あたりのリチウムイオン電池の電池容量の低下が無視できなくなる。
これら電極活物質と有機化合物とを、水に溶解あるいは分散させて、均一なスラリーを調製する。この溶解あるいは分散の際には、分散剤を加えてもよく、炭素源である有機化合物に分散剤としての機能を持たせてもよい。
電極活物質と有機化合物とを水に溶解あるいは分散させる方法としては、電極活物質が分散し、有機化合物が溶解または分散する方法であれば、特に限定しないが、例えば、ボールミル、サンドミル等の分散装置を用いる方法が好ましい。
この分散の際に、スラリーの分散条件、例えば、分散装置に用いられるジルコニアビーズ等の分散媒体、スラリー中の電極活物質及び有機化合物の濃度、分散時間等を調整することにより、電極活物質の比(D90/D10)を5以上かつ30以下となるように調整することができる。
次いで、このスラリーを高温雰囲気中、例えば70℃以上かつ250℃以下の大気中に噴霧し、乾燥させる。
この噴霧の際の液滴の平均粒径は、0.05μm以上かつ100μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上かつ20μm以下である。
噴霧の際の液滴の平均粒径を上記の範囲とすることで、平均粒子径が0.5μm以上かつ100μm以下、好ましくは1μm以上かつ20μm以下の乾燥物が得られる。
次いで、この乾燥物を、非酸化性雰囲気下、500℃以上かつ1000℃以下、好ましくは600℃以上かつ900℃以下の範囲内の温度にて0.1時間以上かつ40時間以下焼成する。
この非酸化性雰囲気としては、窒素(N)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましく、より酸化を抑えたい場合には水素(H)等の還元性ガスを含む還元性雰囲気が好ましい。また、焼成時に非酸化性雰囲気中に蒸発した有機分を除去する目的で、酸素(O)等の支燃性及び可燃性ガスを不活性雰囲気中に導入することとしてもよい。
また、焼成温度を500℃以上かつ1000℃以下とした理由は、焼成温度が500℃未満では、乾燥物に含まれる有機化合物の分解・反応が不十分で、この有機化合物の炭化が不充分なものとなり、その結果、得られた凝集体中に高抵抗の有機物分解物が生成することとなるからであり、一方、焼成温度が1000℃を超えると、電極活物質中のLiが蒸発して電極活物質に組成のズレが生じるだけでなく、電極活物質の粒成長が促進し、その結果、高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となるからである。
ここで、乾燥物を焼成する際の条件、例えば、昇温速度、最高保持温度、保持時間等を適宜調整することにより、得られる凝集体の粒度分布を制御することが可能である。
以上により、本実施形態の正極材料、すなわち電極活物質の1次粒子と該電極活物質の1次粒子が凝集した2次粒子との混合物がさらに凝集した凝集体であり、1次粒子及び2次粒子が炭素質被膜にて被覆され、この凝集体の体積密度は、それを中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下である正極材料が得られる。
[リチウムイオン電池用正極]
本実施形態のリチウムイオン電池用正極は、本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料を正極層に含有している。
この正極層は、本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料と結着剤との混合物をアルミニウム等の金属箔上に塗布し、乾燥してシート状としたもので、本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料を含有したことにより、正極の内部抵抗が低下し、電池容量も向上している。
[リチウムイオン電池]
本実施形態のリチウムイオン電池は、本実施形態のリチウムイオン電池用正極を備えている。
このリチウムイオン電池は、本実施形態のリチウムイオン電池用正極と、黒鉛系炭素材料を用いた負極と、これら正極及び負極を仕切る多孔質ポリプロピレン等からなるセパレータと、リチウムイオン伝導性を有する電解液とにより構成されており、本実施形態のリチウムイオン電池用正極を用いることにより、正極の内部抵抗が低下し、電池容量も向上し、しかも、高速充放電特性に優れたものとなっている。
以上説明したように、本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料によれば、電極活物質の1次粒子と、この電極活物質の1次粒子が凝集した2次粒子との混合物を、さらに凝集して凝集体とし、これら1次粒子及び2次粒子を炭素質被膜にて被覆したので、凝集体の表面積を大きくとることができ、リチウムイオンの挿入脱離反応を十分に得ることができる。その結果、電極活物質の1次粒子の内部を拡散するリチウムイオンの移動距離、及びこの1次粒子の内部を移動する電子の移動距離を短縮することができる。
また、この凝集体を、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下の体積密度を有する多孔性の凝集体を含有することとしたので、炭素質被膜を形成する際の有機物の加熱分解時に発生する有機物分解ガスが凝集体内から逃げ難くなり、したがって、電極活物質の1次粒子の表面近傍における有機物分解ガスの濃度を高めることができ、その結果、電極活物質の1次粒子の表面を覆う炭素質被膜の膜厚を均一にすることができる。
本実施形態のリチウムイオン電池用正極によれば、本実施形態のリチウムイオン電池用正極材料を正極層に含有したので、正極の内部抵抗を低下させることができ、電池容量を向上させることができる。
本実施形態のリチウムイオン電池によれば、本実施形態のリチウムイオン電池用正極を備えたので、正極の内部抵抗を低下させることができ、電池容量を向上させることができ、しかも、高速充放電特性に優れている。
以下、実施例1〜11及び比較例1〜4により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
例えば、本実施例では、電極材料自体の挙動をデータに反映させるため、負極に金属Liを用いたが、炭素材料、Li合金、LiTi12等の負極材料を用いてもかまわない。また電解液とセパレータの代わりに固体電解質を用いても良い。
「実施例1」
(正極材料の作製)
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCHCOO)、2molの硫酸鉄(II)(FeSO)、2molのリン酸(HPO)を混合し、原料スラリーを調製した。
次いで、この原料スラリーにエチレングリコールを、水以外の原料100質量部に対して3質量部となるように添加し、さらに全体量が4L(リットル)になるように水を添加し、スラリー状の混合物を調整した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、120℃にて1時間、水熱合成を行った。次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質を得た。
このケーキ状の電極活物質から若干量の試料を採取し、この試料を70℃にて2時間真空乾燥させた粉体をX線回折装置を用いて同定したところ、単相のLiFePOが生成していることが確認された。また、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて試料を観察したところ、1次粒子の平均粒子径が70nmの微細な板状粒子が生成していることが確認された。ここで、1次粒子の平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)像の視野内から無作為に選んだ10個の1次粒子の長軸方向の長さを測定し、これらの長さを平均した平均値のことである。
次いで、この電極活物質150g(固形分換算)と、有機化合物としてポリビニルアルコール20gを水200gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、媒体粒子として直径5mmのジルコニアボール500gをボールミルに投入し、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が7となるように、ボールミルの撹拌時間を調整し、分散処理を行った。
次いで、得られたスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し乾燥して、乾燥物を得た。次いで、得られた乾燥物を窒素(N)ガスからなる不活性雰囲気下、700℃にて1時間焼成し、実施例1のリチウムイオン電池用正極材料(A1)を得た。
得られた正極材料(A1)を構成する凝集体を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、凝集体は、平均粒子径6μmの球状の多孔性の凝集体であった。
また、この凝集体を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したところ、平均粒子径100nmの1次粒子同士が炭素質被膜による頸部状結合部を介して結合して平均粒子径200nmの2次粒子となり、この2次粒子同士が凝集して凝集体を構成していることが確認された。この凝集体の透過型電子顕微鏡(TEM)像を図2に示す。
ここで2次粒子の平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)像の視野内で無作為に選んだ10個の2次粒子の長軸方向の長さを測定し、この操作を5視野にて行った場合の、50個の2次粒子の長軸方向の長さの平均値のことである。
(正極材料の評価)
この正極材料の体積密度、凝集体内部の数平均細孔径(平均細孔径)D50、炭素質被膜の平均膜厚の比(中心部炭素質被膜の厚み/外周部炭素質被膜の厚み)、比表面積それぞれの評価を行った。
評価方法は下記のとおりである。
(1)正極材料の体積密度
水銀ポロシメーターを用いて測定した。
(2)凝集体内部の平均細孔径(D50)
水銀ポロシメーターを用いて測定した。
(3)炭素質被膜の平均膜厚の比
凝集体の炭素質被膜を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、凝集体の中心部における炭素質被膜の厚みと、外周部における炭素質被膜の厚みを、それぞれ5点測定して、それぞれの平均値を算出し、これらの平均値を基に炭素質被膜の平均膜厚の比(中心部炭素質被膜の厚み/外周部炭素質被膜の厚み)を算出した。
(4)比表面積
比表面積計 BelsorpII(日本ベル社製)を用いて正極材料の比表面積(m/ g)を測定した。
これらの評価結果を表1に示す。
(リチウムイオン電池の作製)
上記の正極材料(A1)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)とを、質量比が90:5:5となるように混合し、さらに溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を加えて流動性を付与し、スラリーを作製した。
次いで、このスラリーを厚み15μmのアルミニウム(Al)箔上に塗布し、乾燥した。その後、600kgf/cmの圧力にて加圧し、実施例1のリチウムイオン電池の正極を作製した。
このリチウムイオン電池の正極に対し、負極としてリチウム金属を配置し、これら正極と負極の間に多孔質ポリプロピレンからなるセパレーターを配置し、電池用部材とした。
一方、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを1:1(質量比)にて混合し、さらに1MのLiPF溶液を加えて、リチウムイオン伝導性を有する電解質溶液を作製した。
次いで、上記の電池用部材を上記の電解質溶液に浸漬し、実施例1のリチウムイオン電池を作製した。
(リチウムイオン電池の評価)
このリチウムイオン電池の放電容量、充放電特性及び内部抵抗それぞれの評価を行った。
評価方法は下記のとおりである。
(1)放電容量
上記のリチウムイオン電池の充放電試験を、室温(25℃)にて、カットオフ電圧2−4.5V、充放電レート0,1C、1Cの定電流にて実施した。それぞれの充放電レートでの初期放電容量を表2に示す。
(2)充放電特性
室温(25℃)にて、カットオフ電圧2−4.2V、充放電レート1Cの定電流(1時間充電の後、1時間放電)下にて実施した。充放電特性を図3に示す。
(3)内部抵抗
上記の充放電特性においては、放電末期に認められる電圧降下が、正極材料の表面の炭素質被膜のムラの大きさ、すなわち内部抵抗の高低を示している。そこで、電圧降下が顕著に認められる試料を、内部抵抗が高い試料と判断した。
ここでは、電圧降下が認められないか、電圧降下が小さい試料を「○」、電圧降下が顕著に認められる試料を「×」と評価した。
これらの評価結果を表2に示す。
「実施例2」
スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が15となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した外は、実施例1に準じて、実施例2の正極材料(A2)を得た。得られた正極材料(A2)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径120nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A2)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(A2)を用い、実施例1に準じて実施例2のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
「実施例3」
エチレングリコールの添加量を、水以外の原料100質量部に対して1質量部とした他は、実施例1に準じて、1次粒子の平均粒子径が130nmの電極活物質粒子を得た。
次いで、この電極活物質粒子を用い、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が8となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて実施例3の正極材料(A3)を得た。得られた正極材料(A3)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径150nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A3)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(A3)を用い、実施例1に準じて実施例3のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図3に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
「実施例4」
スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が16となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて実施例4の正極材料(A4)を得た。得られた正極材料(A4)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径180nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A4)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(A4)を用い、実施例1に準じて実施例4のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
「実施例5」
エチレングリコールを無添加とした他は、実施例1に準じて、1次粒子の平均粒子径が210nmの電極活物質粒子を得た。
次いで、この電極活物質粒子を用い、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が7となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて実施例5の正極材料(A5)を得た。得られた正極材料(A5)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径230nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A5)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(A5)を用い、実施例1に準じて実施例5のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図3及び図4に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
「実施例6」
エチレングリコールを無添加とし、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が15となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて実施例6の正極材料(A6)を得た。得られた正極材料(A6)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径260nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A5)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(A6)を用い、実施例1に準じて実施例6のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図4に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
「実施例7」
エチレングリコールを無添加とし、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が25となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて実施例7の正極材料(A7)を得た。得られた正極材料(A7)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径390nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A7)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(A7)を用い、実施例1に準じて実施例7のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図4に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
「実施例8」
水熱合成の条件を170℃にて1時間とし、エチレングリコールを無添加とした他は、実施例1に準じて実施例8の正極材料(A8)を得た。得られた正極材料(A8)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径340nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A8)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(A8)を用い、実施例1に準じて実施例8のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図3に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
「実施例9」
水熱合成の条件を170℃にて1時間とし、エチレングリコールを無添加とし、さらに、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が14となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて実施例9の正極材料(A9)を得た。得られた正極材料(A9)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径540nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A9)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(A9)を用い、実施例1に準じて実施例9のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
「実施例10」
鉄源となる硫酸鉄(II)(FeSO)の代わりに、マンガン源として硫酸マンガン(II)(MnSO)を用い、実施例1に準じて平均粒子径が50nmの単相のLiMnPOからなるケーキ状の電極活物質を得た。
次いで、この電極活物質142.5g(固形分換算)と、炭化剤としてポリビニルアルコール50gを水500gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、炭化触媒として酢酸リチウム、クエン酸鉄およびリン酸を、リン酸鉄リチウム換算で7.5gと、媒体粒子として直径5mmのジルコニアボール500gをボールミルに投入し、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が7となるように、ボールミルの撹拌時間を調整し、分散処理を行った。
次いで、得られたスラリーを実施例1に準じて処理し、実施例10のリチウムイオン電池用正極材料(A10)を得た。得られた正極材料(A10)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径65nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A10)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(A10)を用い、実施例1に準じて実施例10のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
「実施例11」
鉄源となる硫酸鉄(II)(FeSO)の代わりに、マンガン源として硫酸マンガン(II)(MnSO)を用い、実施例1に準じて平均粒子径が50nmの単相のLiMnPOからなるケーキ状の電極活物質を得た。
次いで、この電極活物質142.5g(固形分換算)と、炭化剤としてポリビニルアルコール50gを水500gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、炭化触媒として酢酸リチウム、クエン酸鉄およびリン酸を、リン酸鉄リチウム換算で7.5gと、媒体粒子として直径5mmのジルコニアボール500gをボールミルに投入し、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が27となるように、ボールミルの撹拌時間を調整し、分散処理を行った。
次いで、得られたスラリーを実施例1に準じて処理し、実施例11のリチウムイオン電池用正極材料(A11)を得た。得られた正極材料(A11)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径100nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(A11)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(A11)を用い、実施例1に準じて実施例11のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
「比較例1」
エチレングリコールを無添加とし、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が3となるように、ボールミルの撹拌時間を調整した他は、実施例1に準じて比較例1の正極材料(B1)を得た。得られた正極材料(B1)は、平均粒子径6μmの凝集体であり、平均粒子径230nmの1次粒子同士が炭素を介して結合しており、炭素によって結合された2次粒子はほぼ存在していないことが確認された。
この正極材料(B1)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(B1)を用い、実施例1に準じて比較例1のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図3及び図4に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
「比較例2」
水熱合成の条件を230℃にて1時間とし、エチレングリコールを無添加とした他は、実施例1に準じて比較例2の正極材料(B2)を得た。得られた正極材料(B2)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径920nmの2次粒子同士が炭素を介して結合していることが確認された。
この正極材料(B2)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(B2)を用い、実施例1に準じて比較例2のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
「比較例3」
実施例1に準じて作製された正極材料(A1)150g(固形分換算)と、水200gと、媒体粒子として直径5mmのジルコニアボール500gをボールミルに投入し、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が3以下になるまで粉砕し、炭素質被覆された電極活物質粒子からなるスラリーを得た。
このスラリーから若干量の試料を採取し、この試料を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したところ、炭素質被膜により表面を被覆された平均粒子径が230nmの微細な板状粒子が主成分であり、炭素により結合された2次粒子は、ほぼ存在していないことが確認された。
次いで、このスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し乾燥して、乾燥物を得た。次いで、得られた乾燥物を窒素(N)ガスからなる不活性雰囲気下、700℃にて30分間焼成し、比較例3のリチウムイオン電池用正極材料(B3)を得た。
得られた正極材料(B3)は、平均粒子径6μmの凝集体であり、炭素質被膜により表面を被覆された平均粒子径が230nmの1次粒子が凝集しており、1次粒子間には炭素による結合は認められなかった。
この正極材料(B3)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(B3)を用い、実施例1に準じて比較例3のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。充放電特性を図4に、評価結果を表2に、それぞれ示す。
「比較例4」
鉄源となる硫酸鉄(II)(FeSO)の代わりに、マンガン源として硫酸マンガン(II)(MnSO)を用い、実施例1に準じて平均粒子径が50nmの単相のLiMnPOからなるケーキ状の電極活物質を得た。
次いで、この電極活物質142.5g(固形分換算)と、炭化剤としてポリビニルアルコール50gを水500gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、炭化触媒として酢酸リチウム、クエン酸鉄およびリン酸を、リン酸鉄リチウム換算で7.5gと、媒体粒子として直径5mmのジルコニアボール500gをボールミルに投入し、スラリー中の電極活物質粒子の粒度分布のD90/D10が3となるように、ボールミルの撹拌時間を調整し、分散処理を行った。
次いで、得られたスラリーを実施例1に準じて処理し、比較例4のリチウムイオン電池用正極材料(B4)を得た。得られた正極材料(B4)は、平均粒子径6μmの球状の凝集体であり、平均粒子径52nmの1次粒子同士が炭素を介して結合しており、炭素によって結合された2次粒子はほぼ存在していないことが確認された。
この正極材料(B4)の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。
上記の正極材料(B4)を用い、実施例1に準じて比較例4のリチウムイオン電池を作製した。
このリチウムイオン電池の評価を実施例1に準じて行った。評価結果を表2に示す。
以上の評価結果によれば、実施例1〜11は、比較例1〜4と比べて、正極の内部抵抗が低下しており、電池容量も向上しており、しかも、高速充放電特性に優れていることが分かった。
本発明の正極材料は、電極活物質の1次粒子と電極活物質の1次粒子が凝集した2次粒子との混合物がさらに凝集した凝集体であり、1次粒子及び2次粒子は炭素質被膜にて被覆されており、この凝集体は、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下の体積密度を有する多孔性の凝集体を含有したことにより、表面積を大きくすることでリチウムイオンの挿入脱離反応を十分に得ることができ、かつ電極活物質の1次粒子の内部を拡散するリチウムイオンの移動距離、及びこの1次粒子の内部を移動する電子の移動距離を短縮することができるものであるから、リチウムイオン電池のさらなる放電特性の向上が可能なのはもちろんのこと、より小型化、軽量化、高容量化が期待される次世代の二次電池に対しても適用することが可能であり、次世代の二次電池の場合、その効果は非常に大きなものである。
1 リチウムイオン電池用正極材料
2 電極活物質の1次粒子
3 2次粒子
4 炭素質被膜
5 頸部状結合部
6 細孔

Claims (7)

  1. 電極活物質の1次粒子と前記電極活物質の1次粒子が凝集した2次粒子との混合物がさらに凝集した凝集体であり、
    前記1次粒子及び前記2次粒子は炭素質被膜にて被覆されており、
    前記凝集体は、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%以上かつ80体積%以下の体積密度を有する多孔性の凝集体を含有してなることを特徴とするリチウムイオン電池用正極材料。
  2. 前記1次粒子の表面が炭素質被膜にて被覆され、かつ前記1次粒子と前記2次粒子とは炭素質被膜を介して結合されていることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン電池用正極材料。
  3. 前記凝集体は、表面が炭素質被膜にて被覆された前記1次粒子が凝集してなる中実の2次粒子を含有してなることを特徴とする請求項1または2記載のリチウムイオン電池用正極材料。
  4. 水銀圧入法により測定した累積細孔径分布の50%における数平均細孔径(D50)は10nm以上かつ300nm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のリチウムイオン電池用正極材料。
  5. 前記凝集体の外周部における前記炭素質被膜の平均膜厚A及び該凝集体の中心部における前記炭素質被膜の平均膜厚Bは、下記式(1)
    0.7≦B/A≦1.3 ……(1)
    を満たすことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のリチウムイオン電池用正極材料。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項記載のリチウムイオン電池用正極材料を正極層に含有してなることを特徴とするリチウムイオン電池用正極。
  7. 請求項6記載のリチウムイオン電池用正極を備えてなることを特徴とするリチウムイオン電池。
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