JP2013189874A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】圧力センサの異常時におけるフェイルセーフ制御を適切に実行することのできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】この装置は、第2演算処理装置による第2判定処理で正常判定される圧力センサが1つ以下のときに出力制限処理を実行する。第2演算処理装置による第2判定処理により1つの圧力センサ(51[♯1]又は51[♯4])のみが正常判定されるときに、同センサと第1演算処理装置のみに接続される圧力センサ(51[♯2],51[♯3])とが第1演算処理装置による第1判定処理で正常判定されるときには(実行モードC)、第2判定処理で正常判定された圧力センサの検出値に基づく燃料噴射に関する処理を実行し、第1判定処理で圧力センサ圧力センサ(51[♯2],51[♯3])が共に異常判定されるとき(実行モードB)と比較して出力制限処理による機関出力の制限の度合いを小さくする。
【選択図】図7

Description

本発明は、圧力センサにより検出した燃料圧力に基づいて機関運転制御を実行する内燃機関の制御装置に関するものである。
内燃機関には、昇圧された状態の燃料が供給される供給通路や同供給通路に接続された燃料噴射弁などにより構成される燃料供給系が取り付けられている。また内燃機関には、燃料供給系の内部の燃料圧力を検出するための圧力センサが取り付けられている。そして、この圧力センサにより検出される燃料圧力を含む機関運転状態に基づいて燃料噴射にかかる制御(噴射量制御や噴射圧制御)が実行される。これにより、そのときどきの機関運転状態に応じたかたちで燃料噴射弁から噴射される燃料の量(燃料噴射量)や燃料供給系内の燃料圧力(燃料噴射圧)が調節されるようになる。
ここで、上記圧力センサに異常が生じると、燃料噴射量や燃料噴射圧の調節精度の低下を招くおそれがある。そのため圧力センサの異常時に、そのフェイルセーフ制御として、内燃機関の出力を制限する処理(出力制限処理)を実行する装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また近年、燃料供給系内の燃料圧力を検出するための圧力センサを内燃機関の気筒毎に設けるとともに、それら圧力センサにより検出された燃料圧力を噴射量制御や噴射圧制御に用いる装置なども提案されている。
特開2008−128307号公報
ここで、燃料供給系に複数の圧力センサが取り付けられた装置では、単にいずれかの圧力センサに異常が生じたときに出力制限処理を実行するようにすると、同出力制限処理が不要に実行されるおそれがある。すなわち、このとき異常の生じていない正常な圧力センサにより検出された燃料圧力に基づいて噴射量制御や噴射圧制御を精度良く実行することが可能であるのにも関わらず出力制限処理が不要に実行されるといった状況になるおそれがある。こうした状況は、内燃機関の出力特性の不要な低下を招くこととなるため好ましくない。
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧力センサの異常時におけるフェイルセーフ制御を適切に実行することのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の装置は、燃料供給系内の燃料圧力を検出する複数の圧力センサと、それら圧力センサの異常の有無を判定する第1判定処理を実行する第1演算処理装置と、前記複数の圧力センサの一部であり且つ2つ以上の圧力センサが接続されてそれら圧力センサの検出値に基づく燃料噴射に関する制御処理およびそれら圧力センサの異常の有無を判定する第2判定処理を実行する第2演算処理装置と、を備え、前記第2判定処理において正常判定される圧力センサが1つ以下であるときに機関出力を制限する出力制限処理を実行する内燃機関の制御装置であって、前記第2判定処理により1つの圧力センサのみが正常判定されるときに、前記正常判定された圧力センサと前記第1演算処理装置のみに接続される圧力センサの1つとが前記第1判定処理において正常判定されるときには、前記第2判定処理により正常判定された圧力センサの検出値に基づき前記制御処理を実行するとともに、前記第1判定処理において前記第1演算処理装置のみに接続される圧力センサの全てが異常判定されるときと比較して前記出力制限処理による機関出力の制限の度合いを小さくすることをその要旨とする。
上記装置では基本的に、第2演算処理装置による第2判定処理において、同一の燃料供給系内の燃料圧力を検出する複数の圧力センサが監視されるとともにそれら圧力センサのうちの2つ以上が正常判定されることをもってそれら正常判定された圧力センサの検出値が信頼性の高い値である判断される。そして、第2判定処理によって正常判定される圧力センサが1つ以下になると、圧力センサの検出値の信頼性が低下しているとして、フェイルセーフ制御としての出力制限処理が実行される。
上記装置では、第2演算処理装置に接続された圧力センサのうちの1つのみが第2判定処理において正常判定される状況、すなわち第2判定処理を通じて圧力センサの検出値の信頼性が低下していると判断される状況になると、第1演算処理装置における第1判定処理の判定結果が参照される。そして、第2判定処理により正常判定された圧力センサと各演算処理装置のうちの第1演算処理装置のみに接続されている圧力センサとが第1判定処理において正常判定されていることが確認される場合には、上記第2判定処理において正常判定された圧力センサの検出値が信頼性の高い値であると判断されて同検出値に基づく燃料噴射に関する制御処理が実行される。これにより、第2演算処理装置によって制御処理が高い精度で実行されるようになる。
しかも、このときには上記制御処理が精度良く実行されるためにフェイルセーフ制御の実行に対する要求、具体的には機関出力の制限に対する要求が小さいと云える。そのため上記装置では、第1判定処理において各演算処理装置のうちの第1演算処理装置のみに接続されている圧力センサの全てが異常判定されるとき、すなわち機関出力の制限に対する要求が高いときと比較して出力制限処理による機関出力の制限の度合いが小さく設定される。これにより、機関出力が不要に低減されることが抑えられて、内燃機関の出力性能の不要な低下を抑えることができる。
上記装置によれば、第2演算処理装置の第2判定処理によって圧力センサの検出値の信頼性低下が判定される場合であっても、第1演算処理装置による第1判定処理を通じて同圧力センサの検出値の信頼性が高いことが確認される場合には、同検出値に基づいて燃料噴射に関する制御処理を実行するとともに機関出力の制限の度合いを小さく抑えることができる。したがって、圧力センサの異常時におけるフェイルセーフ制御を適切に実行することができる。
なお請求項1に記載の装置は、請求項2によるように、内燃機関が3つ以上の気筒を有し、圧力センサが内燃機関の気筒毎に1つずつ設けられ、第1演算処理装置は前記圧力センサの全てが接続されるとともにそれらセンサの検出値に基づく噴射量制御に関する処理を実行し、第2演算処理装置は前記圧力センサのうちの2つが接続されるとともにそれらセンサの検出値に基づく噴射圧制御に関する処理を前記制御処理として実行する装置に適用することができる。
請求項3に記載の装置は、請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置において、当該装置は、前記出力制限処理による機関出力の制限を禁止することにより、前記機関出力の制限の度合いを小さくすることをその要旨とする。こうした装置によれば、内燃機関の出力性能の不要な低下を好適に抑えることができる。
請求項4に記載の装置は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、当該装置は、前記第2判定処理において正常判定される圧力センサが無いときには、前記第2判定処理において1つのみの圧力センサが正常判定されるときと比較して、前記出力制限処理における機関出力の制限の度合いを大きくすることをその要旨とする。
第2演算処理装置に接続されている圧力センサの全てが第2判定処理において異常判定されるときには、これら圧力センサの検出値、言い換えれば燃料供給系内の燃料圧力に見合う態様で前記制御処理を実行することができない。そのため、第2判定処理においていずれかの圧力センサが正常判定される場合と比較して、制御処理の実行精度の低下を招き易く、機関出力の制限に対する要求が大きいと云える。上記装置によれば、第2判定処理において全ての圧力センサが異常判定される場合に機関出力の制限の度合いを大きくすることができるため、フェイルセーフ制御による効果を確実に得ることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、当該装置は、前記第1判定処理による判定結果と前記第2判定処理による判定結果とが一致しないときに、前記第1演算処理装置および前記第2演算処理装置を内蔵する電子制御ユニットの異常であると判定することをその要旨とする。
圧力センサ(詳しくは、そのセンサ本体や配線)に異常が生じると、第1演算処理装置と第2演算処理装置とにそれぞれ異常な信号が入力されるために、第1判定処理および第2判定処理において共に同圧力センサが異常判定されるといったように、それら判定処理の判定結果が一致する。これに対して、第1演算処理装置および第2演算処理装置を内蔵する電子制御ユニットに異常が生じると、圧力センサから第1演算処理装置と第2演算処理装置とにそれぞれほぼ同一の信号が入力された場合であっても、第1判定処理の判定結果と第2判定処理の判定結果とが一致しない場合がある。上記装置によれば、第1判定処理による判定結果と第2判定処理による判定結果とが一致しないことをもって、電子制御ユニットに異常が生じていることを判定することができる。
本発明を具体化した一実施形態にかかる内燃機関の制御装置の概略構成を示す略図。 燃料噴射弁の断面構造を示す断面図。 基本時間波形の一例を示すタイムチャート。 電子制御ユニットと各燃料噴射弁との接続態様を示す略図。 異常状態判定処理の実行手順を示すフローチャート。 実行モード選択処理の実行手順を示すフローチャート。 実行モードと噴射圧制御の実行態様と出力制限処理の実行態様との関係を示す表。
以下、本発明を具体化した一実施形態にかかる内燃機関の制御装置について説明する。
図1に示すように、内燃機関10の気筒11には吸気通路12が接続されている。内燃機関10の気筒11内には吸気通路12を介して空気が吸入される。なお、この内燃機関10としては複数(本実施形態では4つ[♯1〜♯4])の気筒11を有するディーゼル機関が採用されている。内燃機関10には、気筒11(♯1〜♯4)毎に、同気筒11内に燃料を直接噴射する直噴タイプの燃料噴射弁20が取り付けられている。この燃料噴射弁20の開弁駆動によって噴射された燃料は内燃機関10の気筒11内において圧縮加熱された吸入空気に触れて着火および燃焼する。そして内燃機関10では、気筒11内における燃料の燃焼に伴い発生するエネルギによってピストン13が押し下げられて機関出力軸としてのクランクシャフト14が強制回転するようになる。内燃機関10の気筒11において燃焼した燃焼ガスは排気として内燃機関10の排気通路15に排出される。
各燃料噴射弁20は分岐通路31aを介してコモンレール34に各別に接続されている。コモンレール34は供給通路31bを介して燃料タンク32に接続されている。この供給通路31bには、燃料を圧送する燃料ポンプ33が設けられている。本実施形態では、燃料ポンプ33による圧送によって昇圧された燃料がコモンレール34に蓄えられるとともに各燃料噴射弁20の内部に供給される。なお本実施形態では、各燃料噴射弁20、分岐通路31a、供給通路31bおよびコモンレール34が燃料供給系として機能する。
また、各燃料噴射弁20にはリターン通路35が接続されている。リターン通路35はそれぞれ燃料タンク32に接続されている。このリターン通路35を介して燃料噴射弁20の内部の燃料の一部が燃料タンク32に戻される。
以下、燃料噴射弁20の内部構造について説明する。
図2に示すように、燃料噴射弁20のハウジング21の内部にはニードル弁22が設けられている。このニードル弁22はハウジング21内において往復移動(同図の上下方向に移動)することの可能な状態で設けられている。ハウジング21の内部には上記ニードル弁22を噴射孔23側(同図の下方側)に常時付勢するスプリング24が設けられている。またハウジング21の内部には、上記ニードル弁22を間に挟んで一方側(同図の下方側)の位置にノズル室25が形成されるとともに、他方側(同図の上方側)の位置に圧力室26が形成されている。
ノズル室25には、その内部とハウジング21の外部とを連通する噴射孔23が形成されるとともに、導入通路27を介して上記分岐通路31a(コモンレール34)から燃料が供給されている。圧力室26には連通路28を介して上記ノズル室25および分岐通路31a(コモンレール34)が接続されている。また圧力室26は排出路30を介してリターン通路35(燃料タンク32)に接続されている。
上記燃料噴射弁20としては電気駆動式のものが採用されている。詳しくは、燃料噴射弁20のハウジング21の内部に駆動信号の入力によって伸縮する圧電素子(例えばピエゾ素子)が積層された圧電アクチュエータ29が設けられている。この圧電アクチュエータ29には弁体29aが取り付けられている。この弁体29aは圧力室26の内部に設けられている。そして、圧電アクチュエータ29の作動による弁体29aの移動を通じて、連通路28(ノズル室25)と排出路30(リターン通路35)とのうちの一方が選択的に圧力室26に連通されるようになっている。
この燃料噴射弁20では、圧電アクチュエータ29に閉弁信号が入力されると、圧電アクチュエータ29が収縮して弁体29aが移動することによって、連通路28と圧力室26とが連通された状態になるとともに、リターン通路35と圧力室26との連通が遮断された状態になる。これにより、圧力室26内の燃料のリターン通路35(燃料タンク32)への排出が禁止された状態でノズル室25と圧力室26とが連通されるようになる。その結果、ノズル室25と圧力室26との圧力差がごく小さくなって、ニードル弁22がスプリング24の付勢力によって噴射孔23を塞ぐ位置に移動するために、このとき燃料噴射弁20は燃料が噴射されない状態(閉弁状態)になる。
一方、圧電アクチュエータ29に開弁信号が入力されると、圧電アクチュエータ29が伸長して弁体29aが移動することによって、連通路28と圧力室26との連通が遮断された状態になるとともに、リターン通路35と圧力室26とが連通された状態になる。これにより、ノズル室25から圧力室26への燃料の流出が禁止された状態で圧力室26内の燃料の一部がリターン通路35を介して燃料タンク32に戻されるようになる。その結果、圧力室26内の燃料の圧力が低下して同圧力室26とノズル室25との圧力差が大きくなって、同圧力差によってニードル弁22がスプリング24の付勢力に抗して移動して噴射孔23から離れるために、このとき燃料噴射弁20は燃料が噴射される状態(開弁状態)になる。
燃料噴射弁20には、上記導入通路27の内部の燃料圧力PQを検出するための圧力センサ51が一体に取り付けられている。そのため、例えばコモンレール34(図1参照)内の燃料圧力などの燃料噴射弁20から離れた位置の燃料圧力が検出される装置と比較して、燃料噴射弁20の噴射孔23に近い部位の燃料圧力を検出することができ、燃料噴射弁20の開弁に伴う同燃料噴射弁20の内部の燃料圧力の変化を精度良く検出することができる。この圧力センサ51は、燃料圧力に応じた信号を出力するセンサ本体51Aと同センサ本体51Aの検出値を記憶するメモリ51Bとにより構成されて、各燃料噴射弁20に一つずつ、すなわち内燃機関10の気筒11毎に設けられている。以下、配設された気筒11を特定する必要のある場合には、気筒11[♯1]に設けられたものを圧力センサ51[♯1]、気筒11[♯2]に設けられたものを圧力センサ51[♯2]、気筒11[♯3]に設けられたものを圧力センサ51[♯3]、気筒11[♯4]に設けられたものを圧力センサ51[♯4]とそれぞれ記載する。
図1に示すように、内燃機関10には、その周辺機器として、運転状態を検出するための各種センサが設けられている。それらセンサとしては、上記圧力センサ51の他、例えば吸気通路12を通過する空気の量(通路空気量GA)を検出するための吸気量センサ52や、クランクシャフト14の回転速度(機関回転速度NE)を検出するためのクランクセンサ53が設けられている。その他、アクセル操作部材(例えばアクセルペダル)の操作量(アクセル操作量ACC)を検出するためのアクセルセンサ54なども設けられている。
また内燃機関10の周辺機器としては、演算処理装置を備えて構成された電子制御ユニット40なども設けられている。この電子制御ユニット40は各種センサの出力信号を取り込むとともにそれら出力信号に基づき各種の演算を行い、その演算結果をもとに燃料噴射弁20の作動制御(噴射量制御)や燃料ポンプ33の作動制御(噴射圧制御)などの内燃機関10の運転にかかる各種制御を実行する。なお電子制御ユニット40は、第1演算処理装置41および第2演算処理装置42といった二つの演算処理装置を備えている。これら第1演算処理装置41および第2演算処理装置42の機能については後に詳述する。
本実施形態では噴射量制御が次のように実行される。すなわち先ず、通路空気量GAや機関回転速度NE、アクセル操作量ACCなどの機関運転状態に基づいて、噴射パターンが選択されるとともに同噴射パターンの各噴射についての各種制御目標値が算出される。本実施形態では、メイン噴射やパイロット噴射、アフター噴射などを組み合わせた複数の噴射パターンが予め設定されており、噴射量制御の実行に際してはそれら噴射パターンのうちの一つが選択される。また各種の制御目標値としては、メイン噴射やパイロット噴射、アフター噴射といった各噴射の燃料噴射量についての目標値(目標噴射量)や、メイン噴射の噴射時期についての目標値(目標噴射時期)、メイン噴射とパイロット噴射の間隔(パイロットインターバル)、メイン噴射とアフター噴射との間隔(アフターインターバル)が算出される。本実施形態では、上記機関運転状態と同運転状態に適した各制御目標値との関係や、上記機関運転状態と同運転状態に適した噴射パターンとの関係が実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて電子制御ユニット40の第2演算処理装置42にそれぞれ記憶されている。そして、第2演算処理装置42はそのときどきの機関運転状態に基づいて上記関係から各種の制御目標値や噴射パターンを各別に設定する。
そして、燃料噴射弁20の開弁期間についての制御目標値(目標噴射期間TAU)が、上記目標噴射量、および燃料圧力PQに基づきモデル式から設定される。本実施形態では、コモンレール34、各分岐通路31a、各燃料噴射弁20等からなる燃料供給系をモデル化した物理モデルが構築されており、同物理モデルを通じて上記目標噴射期間TAUが算出される。詳しくは、目標噴射量、燃料圧力PQ、後述する学習補正項などを変数とするモデル式が定められて第2演算処理装置42に予め記憶されており、同モデル式を通じて目標噴射期間TAUが算出される。
そして、目標噴射時期および目標噴射期間TAUに応じたかたちで電子制御ユニット40から駆動信号が出力され、この駆動信号の入力に基づき各燃料噴射弁20が各別に開弁駆動される。これにより、そのときどきの機関運転状態に適した噴射パターンで同機関運転状態に見合う量の燃料が各燃料噴射弁20から噴射されて内燃機関10の各気筒11内に供給されるようになるため、機関運転状態に見合う回転トルクがクランクシャフト14に付与されるようになる。
本実施形態では、圧力センサ51により検出される燃料圧力PQに基づいて各噴射(パイロット噴射、メイン噴射、アフター噴射)についての目標噴射期間TAUを学習する処理(学習処理)が実行される。
この学習処理では先ず、目標噴射量、目標噴射時期、燃料圧力PQなどといった各種算出パラメータに基づいて燃料噴射率についての基本時間波形が算出される。本実施形態では、それら算出パラメータにより定まる機関運転領域と同運転領域に適した基本時間波形との関係が実験やシミュレーションの結果に基づき予め求められて電子制御ユニット40の第1演算処理装置41に記憶されている。そして、第1演算処理装置41は各種算出パラメータに基づいて上記関係から基本時間波形を算出する。
図3に、上記基本時間波形の一例を示す。同図3に実線で示すように、基本時間波形としては、燃料噴射弁20の開弁動作が開始される時期(開弁動作開始時期To)、開弁開始後における燃料噴射率の上昇速度(噴射率上昇速度Vo)、閉弁動作が開始される時期(閉弁動作開始時期Tc)、閉弁開始後における燃料噴射率の低下速度Vc、燃料噴射率の最大値(最大燃料噴射率Rm)により規定される台形の波形が設定される。
その一方で、圧力センサ51により検出される燃料圧力PQに基づいて、実際の燃料噴射率の時間波形(検出時間波形)が形成される。具体的には先ず、燃料圧力PQの推移に基づいて燃料噴射弁20の開弁動作開始時期Tor、噴射率上昇速度Vor、閉弁動作開始時期Tcr、噴射率低下速度Vcr、および最大噴射率Tmrがそれぞれ特定される。燃料噴射弁20の内部(詳しくは、ノズル室25)の燃料圧力は、同燃料噴射弁20が開弁駆動されるとリフト量の増加に伴って低下し、その後において閉弁駆動されるとリフト量の減少に伴って上昇するようになる。本実施形態では、そうした燃料噴射弁20内部の燃料圧力(詳しくは、燃料圧力PQ)の推移をもとに、上記開弁動作開始時期Tor、噴射率上昇速度Vor、閉弁動作開始時期Tcr、噴射率低下速度Vcr、および最大噴射率Rmrが精度よく特定される。そして、図3中に一点鎖線で示すように、それら特定した値によって実際の燃料噴射率の時間波形(検出時間波形)が形成される。
学習処理では、内燃機関10の運転中において上記検出時間波形と前記基本時間波形とが比較されるとともにそれら波形の各パラメータの差が逐次算出される。各パラメータの差としては、具体的には、開弁動作開始時期の差ΔTog(=To−Tor)、噴射率上昇速度の差ΔVog(=Vo−Vor)、閉弁動作開始時期の差ΔTcg(=Tc−Tcr)、噴射率低下速度の差ΔVcg(=Vc−Vcr)、および最大噴射率ΔRmg(=Rm−Rmr)が算出される。そして、これら差ΔTog,ΔVog,ΔTcg,ΔVcg,ΔRmgは、燃料噴射弁20の経時的な変化に起因する動作特性のばらつきを補償するための学習補正項として第1演算処理装置41に記憶される。
本実施形態では、これら学習補正項(ΔTog,ΔVog,ΔTcg,ΔVcg,ΔRmg)がそれぞれ、前述したモデル式に基づいて目標噴射期間TAUを算出するための算出パラメータとして用いられる。このようにして目標噴射期間TAUを算出することにより、燃料噴射弁20の経時的な変化による動作特性ばらつきの影響分が補償されるようになる。なお、燃料圧力PQに基づいて学習補正項を算出する処理は、内燃機関10の気筒11(♯1〜♯4)毎にそれぞれ対応する圧力センサ51の出力信号に基づき実行される。
また本実施形態では噴射圧制御が次のように実行される。すなわち先ず、通路空気量GAおよび機関回転速度NEに基づいてコモンレール34内の燃料圧力についての制御目標値(目標燃料圧力)が算出されるとともに、実際の燃料圧力が目標燃料圧力になるように燃料ポンプ33の作動量(燃料圧送量または燃料戻し量)が調節される。こうした燃料ポンプ33の作動量の調節を通じて、コモンレール34内の燃料圧力、換言すれば、燃料噴射弁20の燃料噴射圧が機関運転状態に応じた圧力に調節されるようになる。
図4に示すように、第1演算処理装置41には、内燃機関10の気筒11毎に設けられた圧力センサ51[♯1],51[♯2],51[♯3],51[♯4]の全てが接続されている。この第1演算処理装置41は、噴射量制御に関する演算処理として、前記学習処理を実行する。また第1演算処理装置41は、同装置41に接続された各圧力センサ51[♯1]〜51[♯4]の異常の有無を判定する第1判定処理を実行する。この第1判定処理では、各圧力センサ51[♯1]〜51[♯4]について各別に以下の[条件]が満たされるか否かが判断される。
[条件]圧力センサ51の検出値が異常な値になっていないこと。具体的には、圧力センサ51の検出値が所定範囲内の値にであること。
そして[条件]が満たされる場合には判定対象の圧力センサ51が正常であると判定される一方、同[条件]が満たされない場合には判定対象の圧力センサ51が異常であると判定される。この第1判定処理では詳しくは、上記[条件]が満たされなくなると先ず仮異常判定がなされ、その後において同[条件]が満たされた状態が所定時間(例えば、数秒)継続された場合に異常判定が確定される。
さらに第1演算処理装置41は、各圧力センサ51のいずれかが異常判定されたときに、異常判定された圧力センサ51の検出値に基づく学習処理の実行を停止させる。なお、異常判定された圧力センサ51の検出値が用いられない学習処理、すなわち正常判定されている圧力センサ51の検出値のみに基づき実行される学習処理についてはその実行が継続される。
第2演算処理装置42には、内燃機関10の気筒11毎に設けられた圧力センサ51のうちの2つ(詳しくは、圧力センサ51[♯1],51[♯4])が接続されている。本実施形態の装置は、図4中に白抜きの矢印で示すように、電子制御ユニット40の第1演算処理装置41と第2演算処理装置42とが信号線路によって接続されており、それら第1演算処理装置41および第2演算処理装置42の間におけるデータ転送が可能な構造になっている。
第2演算処理装置42は、目標噴射期間TAUの算出に際して第1演算処理装置41から学習補正項を読み込む演算処理や、学習補正項および機関運転状態に基づいてモデル式から目標噴射期間TAUを算出する演算処理を実行する。
また第2演算処理装置42は、機関運転状態に基づき目標燃料圧力を算出する演算処理や、目標燃料圧力と実際の燃料圧力PQ(詳しくは、同装置42に接続された2つの圧力センサ51[♯1],51[♯4]により検出される燃料圧力PQの高圧側の値)とを一致させるように燃料ポンプ33の作動量を調節する演算処理などといった噴射圧制御に関する処理を実行する。本実施形態では、この噴射圧制御に関する処理が、燃料噴射に関する制御処理として機能する。
さらに第2演算処理装置42は、同装置42に接続された2つの圧力センサ51[♯1],51[♯4]の異常の有無を判定する第2判定処理を実行する。この第2判定処理では、それら2つの圧力センサ51[♯1],51[♯4]について各別に前記[条件]が満たされるか否かが判断される。そして、[条件]が満たされる場合には判定対象の圧力センサ51が正常であると判定される一方、[条件]が満たされない場合には判定対象の圧力センサ51が異常であると判定される。
また第2演算処理装置42は、2つの圧力センサ51[♯1],51[♯4]の一方でも異常判定されたときに機関出力を制限する出力制限処理を実行する。本実施形態では、第2判定処理において同一の燃料供給系内の燃料圧力を検出する2つの圧力センサ51[♯1],51[♯4]の検出値が監視されるとともにそれら圧力センサ51[♯1],51[♯4]が共に正常判定されることをもって各圧力センサ51[♯1],51[♯4]の検出値が信頼性の高い値であると判断される。そして、第2判定処理によって正常判定される圧力センサ51が1つあるいは「0」になると、圧力センサ51の検出値の信頼性が低下しているとして、フェイルセーフ制御としての出力制限処理が実行される。この出力制限処理は具体的には、噴射量制御での目標噴射量の算出に用いるアクセル操作量ACCに上限値を設定することによって燃料噴射量(詳しくは目標噴射量)を少量に抑えて機関出力を制限するといったように実行される。
ここで本実施形態の装置では、燃料供給系に4つの圧力センサ51[♯1]〜51[♯4]が取り付けられている。そのため、第2演算処理装置42による第2判定処理において、同装置42に接続されている2つの圧力センサ51[♯1],51[♯4]のうちの一方のみに異常が生じたときに出力制限処理を実行するようにすると、同出力制限処理が不要に実行されるおそれがある。すなわち、このとき異常の生じていない正常な圧力センサ51により検出された燃料圧力PQに基づいて噴射量制御や噴射圧制御を精度良く実行することが可能であるのにも関わらず出力制限処理が不要に実行されるといった状況になるおそれがある。こうした状況は、内燃機関10の出力特性の不要な低下を招くこととなるため好ましくない。
本実施形態では、第2演算処理装置42に接続された圧力センサ51[♯1],51[♯4]のうちの1つのみが第2判定処理において正常判定される状況、すなわち第2判定処理を通じて圧力センサ51の検出値の信頼性が低下していると判断される状況になると、第1演算処理装置41における第1判定処理の判定結果が第2演算処理装置42に読み込まれて参照される。そして、第1判定処理の判定結果が上記第2判定処理で正常判定された圧力センサ51と他の圧力センサ51(詳しくは、第1演算処理装置41のみに接続された圧力センサ51[♯2],51[♯3])のうちの1つとが正常判定されたとの内容であるときには、第2判定処理で正常判定された圧力センサ51の検出値の信頼性が高いと判断される。この場合には、第2判定処理によって正常判定された圧力センサ51の検出値に基づいて噴射圧制御に関する演算処理が第2演算処理装置42により実行される。これにより噴射圧制御が高い精度で実行されるようになる。
しかも、このときには噴射圧制御が精度良く実行されるためにフェイルセーフ制御の実行に対する要求、具体的には機関出力の制限に対する要求が小さいと云える。本実施形態の装置では、このとき出力制限処理による機関出力の制限が禁止されて、その制限が実行されない。そのため、機関出力が不要に低減されることが抑えられて、内燃機関10の出力性能の不要な低下が抑えられるようになる。
本実施形態によれば、第2判定処理によって圧力センサ51の検出値の信頼性低下が判定される場合であっても、第1判定処理を通じて同圧力センサ51の検出値の信頼性が高いことが確認される場合には、同圧力センサ51の検出値に基づいて噴射圧制御を実行するとともに出力制限処理による機関出力の制限の度合いを小さく抑えることができる。
なお、第2判定処理により1つの圧力センサ51のみが正常判定される状況において、第1判定処理の判定結果が第1演算処理装置41のみに接続される2つの圧力センサ51[♯2],51[♯3]が共に異常判定されたとの内容であるときには、噴射圧制御や出力制限処理が以下のように実行される。
このとき第2判定処理において正常判定された圧力センサ51の検出値の信頼性が低いと判断されるものの、同検出値に基づく噴射圧制御が第2演算処理装置42により実行される。ただし、そうした噴射圧制御の実行に合わせて出力制限処理による機関出力の制限が実行される。これにより、各演算処理装置41,42のうちの第1演算処理装置41のみに接続される2つの圧力センサ51[♯2],51[♯3]のいずれかが正常判定されたとき、すなわち機関出力の制限に対する要求が低いときと比較して出力制限処理による機関出力の制限の度合いを大きくすることができる。
また本実施形態の装置では、第2演算処理装置42による第2判定処理において正常判定される圧力センサ51が無いときには、同第2判定処理において1つのみの圧力センサ51が正常判定されるときと比較して、出力制限処理における機関出力の制限の度合いが大きくされる。第2演算処理装置42に接続されている圧力センサ51[♯1],51[♯4]が共に第2判定処理において異常判定されるときには、これら圧力センサ51[♯1],51[♯4]の検出値、言い換えれば燃料供給系内の燃料圧力に見合う態様で噴射圧制御を実行することができない。そのため、第2判定処理においていずれかの圧力センサ51が正常判定される場合と比較して、噴射圧制御の実行精度の低下を招き易く、機関出力の制限に対する要求が大きいと云える。本実施形態の装置によれば、第2判定処理において2つの圧力センサ51[♯1],51[♯4]が共に異常判定される場合に機関出力の制限の度合いを大きくすることができるため、フェイルセーフ制御による効果を確実に得ることができる。
このように本実施形態の装置によれば、圧力センサ51の異常時におけるフェイルセーフ制御を適切に実行することができる。
また本実施形態の装置では、第1演算処理装置41による第1判定処理の判定結果と第2演算処理装置42による第2判定処理の判定結果とが一致しないときに、第1演算処理装置41および第2演算処理装置42を内蔵する電子制御ユニット40の異常であると判定される。
第1演算処理装置41および第2演算処理装置42の両方に接続された圧力センサ51[♯1],51[♯4](詳しくは、そのセンサ本体51Aやメモリ51B、配線)に異常が生じると、それら装置41,42にそれぞれ異常な信号が入力されるため、第1判定処理および第2判定処理において共に異常判定される。すなわち、この場合には第1判定処理の判定結果と第2判定処理の判定結果とが一致するようになる。これに対して、各圧力センサ51[♯1],51[♯4]から各演算処理装置41,42にそれぞれほぼ同一の信号が入力された場合であっても、例えばそれら演算処理装置41,42のうちの一方のみが正常に機能しなくなるなど、電子制御ユニット40に異常が生じると、第1判定処理の判定結果と第2判定処理の判定結果とが一致しない場合がある。本実施形態によれば、第1判定処理による判定結果と第2判定処理による判定結果とが一致しないことをもって、電子制御ユニット40に異常が生じていることを判定することができる。
以下、出力制限処理による機関出力の制限態様について詳細に説明する。
図5に各圧力センサ51[♯1]〜51[♯4]の異常発生状態を判定する処理(異常状態判定処理)の実行手順を示す。なお同図のフローチャートに示される一連の処理は異常状態判定処理の実行手順を概念的に示したものであり、実際の処理は所定周期毎の割り込み処理として第1演算処理装置41により実行される。
図5に示すように、この処理では先ず、第1演算処理装置41に接続されている4つの圧力センサ51[♯1]〜51[♯4]のうちのいずれかが異常判定されているか否かが判断される(ステップS10)。そして、それら圧力センサ51[♯1]〜51[♯4]のいずれかが異常判定されている場合には(ステップS10:YES)、出力制限処理の実行モードを選択する処理(実行モード選択処理)が実行される(ステップS20)。
図6に実行モード選択処理の実行手順を示し、図7に実行モードと噴射圧制御の実行態様と出力制限処理の実行態様との関係を示す。
図6に示すように、実行モード選択処理では、圧力センサ51[♯1],51[♯4]が共に異常判定される場合には(ステップS201:YES、ステップS202:YES、且つステップS203:NO)、実行モードAが選択される(ステップS204)。
この場合、第2演算処理装置42は、第1演算処理装置41の第1判定処理によって実行モードAが選択されていることを受けて、噴射量制御と噴射圧制御とを次のように実行する。
すなわち図7に示すように、第1演算処理装置41において実行モードAが選択されている場合には、出力制限処理によって所定操作量LIML(例えば、全開操作量を100%とした場合における10%)がアクセル操作量ACCの上限値として設定される。そして、この上限値により制限されたアクセル操作量ACCに基づいて噴射量制御が実行される。
また、各圧力センサ51[♯1],51[♯4]により検出される燃料圧力PQを用いることなく、目標燃料圧力と実際の燃料圧力とが常に一致しているとの仮定のもとで噴射圧制御が実行される。具体的には、各圧力センサ51[♯1],51[♯4]が異常判定されていない場合であれば目標噴射圧力と燃料圧力PQとを一致させるべく燃料ポンプ33の駆動が制御される状況において、同燃料圧力PQに代えて目標燃料圧力が用いられる。
圧力センサ51[♯1],51[♯4]の一方のみが異常判定され(図6のステップS201〜ステップS203の全てが「YES」)、且つ圧力センサ51[♯2],51[♯3]が共に異常判定される場合には(ステップS205:YES)、実行モードBが選択される(ステップS207)。
第2演算処理装置42による第2判定処理において圧力センサ51[♯1],51[♯4]の一方のみが異常判定されている状況で第1演算処理装置41において実行モードBが選択されている場合には、図7に示すように、出力制限処理によって所定操作量LIMS(ただし、LIMS>LIML)がアクセル操作量ACCの上限値として設定される。この所定操作量LIMSとしては具体的には、異常判定されたときに大きい操作量(例えば、全開操作量を100%とした場合における70%)が設定され、その後の所定時間(例えば数分)をかけて比較的小さい操作量(例えば、同25%)まで徐々に小さくなる値が設定される。そして、この上限値により制限されたアクセル操作量ACCに基づいて噴射量制御が実行される。また、各圧力センサ51[♯1],51[♯4]のうちの正常判定されたものにより検出される燃料圧力PQに基づいて噴射圧制御が実行される。
圧力センサ51[♯1],51[♯4]の一方のみが異常判定され(図6のステップS201〜ステップS203の全てが「YES」)、且つ圧力センサ51[♯2],51[♯3]のうちの少なくとも一方が正常判定されている場合には(ステップS205:NO)、実行モードCが選択される(ステップS207)。また、第1演算処理装置41に接続されている4つの圧力センサのうちの圧力センサ51[♯1]のみが異常判定されている場合や圧力センサ51[♯4]のみが異常判定されている場合にも(ステップS201:NO、ステップS208:YES、且つステップS209:YES)、実行モードCが選択される(ステップS207)。
第2演算処理装置42による第2判定処理において圧力センサ51[♯1],51[♯4]の一方のみが異常判定されている状況で第1演算処理装置41において実行モードCが選択されている場合には、図7に示すように、出力制限処理による機関出力の制限が禁止されてその制限が実行されない。具体的には、アクセル操作量ACCの上限値による制限を実行することなく噴射量制御が実行される。また、各圧力センサ51[♯1],51[♯4]のうちの正常判定されたものにより検出される燃料圧力PQに基づいて噴射圧制御が実行される。
第1演算処理装置41に接続されている4つの圧力センサのうちの圧力センサ51[♯2]のみ、あるいは圧力センサ51[♯3]のみが異常判定されている場合には(ステップS201:NO、且つステップS208:NO)、実行モードA〜Cのいずれも選択されない(ステップS207の処理がジャンプされる)。また、第1演算処理装置41に接続されている4つの圧力センサのうちの2つの圧力センサ51[♯2],51[♯3]のみが異常判定されている場合にも(ステップS201:YES、且つステップS202:NO)、実行モードA〜Cのいずれも選択されない(ステップS203〜S206の処理がジャンプされる)。この場合には、圧力センサ51[♯1],51[♯4]に基づく噴射圧制御と、アクセル操作量ACCを上限値によって制限しない実行態様での噴射量制御とが実行される。
なお本実施形態の装置では、図7に示すように、圧力センサ51[♯1],51[♯4]の一方のみが正常判定される場合であっても他方が仮異常判定されている場合には、圧力センサ51[♯2],51[♯3]の判定結果によることなく、実行モードCが選択される。この場合には、仮異常判定が異常判定および正常判定の何れに確定するかによって、圧力センサ51[♯1],51[♯4]が共に正常判定される状況になったり圧力センサ51[♯1],51[♯4]の一方のみが正常判定される状況になったりする不安定な期間であるとして、出力制限処理の仮の実行モードとして実行モードCが選択される。そして、この場合には出力制限処理による機関出力の制限が禁止されてその制限が実行されない一方、各圧力センサ51[♯1],51[♯4]のうちの正常判定されたものにより検出される燃料圧力PQに基づいて噴射圧制御が実行される。
また本実施形態の装置では、圧力センサ51[♯1],51[♯4]の一方が異常判定されるとともに他方が仮異常判定される場合や圧力センサ51[♯1],51[♯4]が共に仮異常判定される場合には、圧力センサ51[♯2],51[♯3]の判定結果によることなく、出力制限処理の実行モードとして実行モードDが選択される。この場合には、出力制限処理によって所定操作量LIMSがアクセル操作量ACCの上限値として設定される。そして、この上限値により制限されたアクセル操作量ACCに基づいて噴射量制御が実行される。また、各圧力センサ51[♯1],51[♯4]により検出される燃料圧力PQを用いることなく、目標燃料圧力と実際の燃料圧力とが常に一致しているとの仮定のもとで噴射圧制御が実行される。
そして異常状態判定処理(図5)では、実行モード選択処理が実行された後(ステップS20)、車室内に設けられた警告灯が点灯される(ステップS30)。
なお、第1演算処理装置41に接続されている4つの圧力センサ51[♯1]〜51[♯4]の全てが正常判定されている場合には(ステップS10:NO)、ステップS20,S30の処理がジャンプされる。
その後、第2演算処理装置42による第2判定処理の判定結果が読み込まれるとともに、同判定結果と第1演算処理装置41による第1判定処理の判定結果とが一致しているか否かが判断される(ステップS40)。そして、それら判定結果が一致している場合には(ステップS40:YES)、そのまま(ステップS50の処理がジャンプされて)本処理は一旦終了される。一方、それら判定結果が一致していない場合には(ステップS40:NO)、電子制御ユニット40に異常が生じていると判定された後(ステップS50)、本処理は一旦終了される。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)第2判定処理において圧力センサ51[♯1],51[♯4]のうちの1つのみが正常判定されたときに、第1判定処理の判定結果が第2判定処理において正常判定された圧力センサ51と第1演算処理装置41のみに接続された圧力センサ51[♯2],51[♯3]のうちの1つとが正常判定されたとの内容であるときには、第2判定処理によって正常判定された圧力センサ51の検出値に基づく噴射圧制御を実行するようにした。しかも、このとき出力制限処理による機関出力の制限を禁止するようにした。そのため、第2判定処理によって圧力センサ51の検出値の信頼性低下が判定される場合であっても、第1判定処理を通じて同圧力センサ51の検出値の信頼性が高いことが確認される場合には、同圧力センサ51の検出値に基づいて噴射圧制御を実行するとともに出力制限処理による機関出力の制限の度合いを小さく抑えることができる。したがって、圧力センサ51の異常時におけるフェイルセーフ制御を適切に実行することができる。
(2)第2演算処理装置42による第2判定処理において正常判定される圧力センサ51が無いときに、同第2判定処理において1つのみの圧力センサ51が正常判定されるときと比較して出力制限処理における機関出力の制限の度合いを大きくするようにしたために、フェイルセーフ制御による効果を確実に得ることができる。
(3)第1演算処理装置41による第1判定処理の判定結果と第2演算処理装置42による第2判定処理の判定結果とが一致しないことをもって、第1演算処理装置41および第2演算処理装置42を内蔵する電子制御ユニット40の異常であると判定することができる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・第1演算処理装置41による第1判定処理においていずれかの圧力センサ51が異常判定されたときに、警告灯を点灯させることに代えて、車室内に設けられた画像表示装置に異常発生を警告する内容を表示させるようにしたり、電子制御ユニット40に異常判定された履歴を残すようにしたりしてもよい。
・第1演算処理装置41による第1判定処理においていずれかの圧力センサ51が異常判定されたときに警告灯を点灯させる処理(図5のステップS30の処理)を省略してもよい。
・圧力センサ51の異常の有無を判定するための条件は、前記[条件]に限らず、例えば目標燃料圧力と燃料圧力PQとの差が所定値より大きい状態が所定期間にわたり継続されていることといった条件を設定するなど、任意に変更することができる。
・上記実施形態では、機関出力を制限するためにアクセル操作量ACCの上限値を設定するようにしたが、例えばアクセル操作量ACCを減量補正した値を噴射量制御に用いるようにしたり、燃料噴射量を減量補正したり、燃料噴射量に上限値を設定したりするなど、機関出力を制限するための手法は任意に変更可能である。
・電子制御ユニット40の異常を判定する処理(図5のステップS40,S50の処理)を省略してもよい。
・第2判定処理において圧力センサ51[♯1],51[♯4]の一方のみが異常判定されている状況で第1演算処理装置41において実行モードCが選択されている場合に、実行モードAの選択時や実行モードBの選択時と比較して機関出力の制限の度合いが小さくなる実行態様で、出力制限処理による機関出力の制限を実行するようにしてもよい。実行モードCの選択時には、実行モードAや実行モードBの選択時と比較して、噴射圧制御が精度良く実行されるためにフェイルセーフ制御の実行に対する要求、具体的には機関出力の制限に対する要求が小さい。上記装置によれば、そうした実行モードCの選択時において出力制限処理による機関出力の制限の度合いを小さくすることができるため、機関出力が不要に低減されること、ひいては内燃機関10の出力性能の不要な低下を抑えることができる。
・第2演算処理装置42に2つ以上の圧力センサ51が接続されるとともに、第2演算処理装置42より多い数の圧力センサ51が第1演算処理装置41に接続されるのであれば、それら第1演算処理装置41や第2演算処理装置42に接続される圧力センサの数は任意に変更することができる。
・上記実施形態にかかる装置は、第1演算処理装置41および第2演算処理装置42によって燃料圧力PQに基づく燃料噴射に関する演算処理が実行される装置であれば、その構成を適宜変更したうえで適用することができる。そうした装置としては、例えば第1演算処理装置によって噴射圧制御に関する演算処理を実行するとともに第2演算処理装置によって噴射量制御に関する演算処理を実行する装置を挙げることができる。その他、各演算処理装置によって互いに異なる噴射圧制御に関する演算処理を実行する装置や、各演算処理装置によって互いに異なる噴射量制御に関する演算処理を実行する装置などを挙げることもできる。
・燃料噴射弁20の内部(詳しくは、ノズル室25内)の燃料圧力の指標となる圧力、言い換えれば同燃料圧力の変化に伴って変化する燃料圧力を適正に検出することができるのであれば、圧力センサ51を燃料噴射弁20に直接取り付けることに限らず、同圧力センサ51の取り付け態様は任意に変更することができる。具体的には、圧力センサ51を燃料供給通路におけるコモンレール34と燃料噴射弁20との間の部位(分岐通路31a)に取り付けたりしてもよい。
・圧電アクチュエータ29により駆動されるタイプの燃料噴射弁20に代えて、例えばソレノイドコイルなどを備えた電磁アクチュエータによって駆動されるタイプの燃料噴射弁を採用することもできる。
・4つの気筒を有する内燃機関に限らず、3つの気筒を有する内燃機関、あるいは5つ以上の気筒を有する内燃機関にも、本発明は適用することができる。
・本発明は、ディーゼル機関に限らず、ガソリン燃料を用いるガソリン機関や天然ガス燃料を用いる天然ガス機関にも適用することができる。
10…内燃機関、11…気筒、12…吸気通路、13…ピストン、14…クランクシャフト、15…排気通路、20…燃料噴射弁、21…ハウジング、22…ニードル弁、23…噴射孔、24…スプリング、25…ノズル室、26…圧力室、27…導入通路、28…連通路、29…圧電アクチュエータ、29a…弁体、30…排出路、31a…分岐通路、31b…供給通路、32…燃料タンク、33…燃料ポンプ、34…コモンレール、35…リターン通路、40…電子制御ユニット、41…第1演算処理装置、42…第2演算処理装置、51…圧力センサ、51A…センサ本体、51B…メモリ、52…吸気量センサ、53…クランクセンサ、54…アクセルセンサ。

Claims (5)

  1. 燃料供給系内の燃料圧力を検出する複数の圧力センサと、それら圧力センサの異常の有無を判定する第1判定処理を実行する第1演算処理装置と、前記複数の圧力センサの一部であり且つ2つ以上の圧力センサが接続されてそれら圧力センサの検出値に基づく燃料噴射に関する制御処理およびそれら圧力センサの異常の有無を判定する第2判定処理を実行する第2演算処理装置と、を備え、前記第2判定処理において正常判定される圧力センサが1つ以下であるときに機関出力を制限する出力制限処理を実行する内燃機関の制御装置であって、
    前記第2判定処理により1つの圧力センサのみが正常判定されるときに、前記正常判定された圧力センサと前記第1演算処理装置のみに接続される圧力センサの1つとが前記第1判定処理において正常判定されるときには、前記第2判定処理により正常判定された圧力センサの検出値に基づき前記制御処理を実行するとともに、前記第1判定処理において前記第1演算処理装置のみに接続される圧力センサの全てが異常判定されるときと比較して前記出力制限処理による機関出力の制限の度合いを小さくする
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記内燃機関は3つ以上の気筒を有し、
    前記圧力センサは前記内燃機関の気筒毎に1つずつ設けられ、
    前記第1演算処理装置は前記圧力センサの全てが接続されるとともにそれらセンサの検出値に基づく噴射量制御に関する処理を実行し、
    前記第2演算処理装置は前記圧力センサのうちの2つが接続されるとともにそれらセンサの検出値に基づく噴射圧制御に関する処理を前記制御処理として実行する
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置において、
    当該装置は、前記出力制限処理による機関出力の制限を禁止することにより、前記機関出力の制限の度合いを小さくする
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
    当該装置は、前記第2判定処理において正常判定される圧力センサが無いときには、前記第2判定処理において1つのみの圧力センサが正常判定されるときと比較して、前記出力制限処理における機関出力の制限の度合いを大きくする
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
    当該装置は、前記第1判定処理による判定結果と前記第2判定処理による判定結果とが一致しないときに、前記第1演算処理装置および前記第2演算処理装置を内蔵する電子制御ユニットの異常であると判定する
    ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
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