JP2013188934A - 易裂性二軸延伸ナイロンフィルム、易裂性ラミネートフィルム、易裂性ラミネート包材および易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法 - Google Patents

易裂性二軸延伸ナイロンフィルム、易裂性ラミネートフィルム、易裂性ラミネート包材および易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】印刷適性に優れ、フィルムの表面に美麗な半調印刷が可能な易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の易裂性二軸延伸ナイロンフィルム3は、ナイロン6とメタキシリレンアジパミドとを原料として含む易裂性二軸延伸ナイロンフィルム3であって、当該フィルム3の少なくとも一方の面における表面エネルギーの極性成分が18mN/m以上であることを特徴とするものである。
【選択図】図1

Description

本発明は易裂性二軸延伸ナイロンフィルム、易裂性ラミネートフィルム、易裂性ラミネート包材および易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法に関する。
近年、各種食品包材、医療用包材等の包装分野においては、易開封性(易裂性)への要望がより一層高まっている。
そのため、包装袋を構成するフィルムに易裂性、特に直線カット性を付与するための検討がなされており、例えば、包装袋を構成するラミネートフィルムの表基材フィルムとして、ナイロン6(以後、Ny6ともいう)とメタキシリレンアジパミド(以後、MXD6ともいう)とのブレンド樹脂からなる易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを用いることが知られている(特許文献1参照)。
特開2007−39664号公報
しかしながら、特許文献1に記載の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムにおいては、通常の印刷を施す場合には問題にはならないものの、例えば半調印刷のようにコントラストが小さい印刷を施す場合には、インキの載りが悪く、インキムラが生じるという問題があった。
そこで、本発明は、印刷適性に優れ、表面に美麗な半調印刷が可能な易裂性二軸延伸ナイロンフィルム、易裂性ラミネートフィルム、易裂性ラミネート包材および易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような易裂性二軸延伸ナイロンフィルム、易裂性ラミネートフィルム、易裂性ラミネート包材および易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法を提供するものである。
すなわち、本発明の二軸延伸ナイロンフィルムは、ナイロン6(以後、Ny6ともいう)とメタキシリレンアジパミド(以後、MXD6ともいう)とを原料として含む易裂性二軸延伸ナイロンフィルムであって、当該フィルムの少なくとも一方の面における表面エネルギーの極性成分が18mN/m以上であることを特徴とするものである。
本発明の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムにおいては、前記原料は、40質量%以上85質量%以下のNy6、および15質量%以上60質量%以下(両者の合計は100質量%)のMXD6からなるバージン原料と、Ny6およびMXD6を溶融混練してなる熱履歴品とを含み、前記熱履歴品におけるMXD6の融点は、233℃以上238℃以下であり、前記熱履歴品の含有量は、原料全量基準で5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
本発明の易裂性ラミネートフィルムは、前記易裂性二軸延伸ナイロンフィルムのうち、少なくとも表面エネルギーの極性成分が規定された一方の面に、ラミネート基材が積層されてなることを特徴とするものである。
本発明の易裂性ラミネート包材は、前記易裂性ラミネートフィルムを用いたことを特徴とするものである。
本発明の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法は、前記易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを製造する易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法であって、前記原料をチューブ状に押し出してチューブ状の溶融樹脂を形成し、このチューブ状の溶融樹脂の外表面を水により冷却することで、原反フィルムを成形する原反フィルム製造工程と、前記原反フィルムを二軸延伸する二軸延伸工程と、前記二軸延伸工程後のフィルムに熱処理を施す熱処理工程と、前記熱処理工程後のフィルムにおける前記外表面に対応する面に対し、コロナ処理を施すコロナ処理工程と、を備えることを特徴とする方法である。
本発明によれば、印刷適性に優れ、表面に美麗な半調印刷が可能な易裂性二軸延伸ナイロンフィルム、易裂性ラミネートフィルム、易裂性ラミネート包材および易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法を提供できる。
本発明の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを製造する装置の一例を示す概略構成図である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの構成]
本実施形態の易裂性二軸延伸ナイロンフィルム(ONyフィルム)では、ナイロン6(以後、Ny6ともいう)とメタキシリレンアジパミド(以後、MXD6ともいう)との混合樹脂を原料として用いる。
Ny6とMXD6との混合樹脂からなる原料は、40質量%以上85質量%以下のNy6、および15質量%以上60質量%以下(両者の合計は100質量%)のMXD6からなるバージン原料と、Ny6およびMXD6を溶融混練してなる熱履歴品とを含み、この熱履歴品におけるMXD6の融点が233℃以上238℃以下で、かつ、熱履歴品の含有量が原料全量基準で5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
ここで、Ny6の化学式を下記式(1)に示し、MXD6の化学式を下記式(2)に示す。
前記熱履歴品とは、Ny6とMXD6の配合品で、一度押出機を通過したものをいい、本発明については、示差走査熱量計(DSC)でMXD6樹脂の融点が233℃以上、238℃以下の範囲に保持されたものを用いる。
上述のような場合、バージン原料におけるNy6とMXD6の配合割合が、Ny6が40質量%以上85質量%以下で、MXD6が15質量%以上60質量%以下であるので、直線カット性に優れている。そして、原料全体に対して、Ny6およびMXD6を溶融混練してなる熱履歴品が5質量%以上40質量%以下含まれているので、ONyフィルムを過酷な条件下で使用しても層内剥離を起こしにくい。
ここで、層内剥離とは、ONyフィルムを適当なシーラントフィルムとラミネートした後に過酷な条件で使用すると、ONyフィルム(ナイロン層)内で剥離を引き起こす現象をいう。層内剥離の機構は必ずしも明確ではないが、ONyフィルム内では、Ny6とMXD6が層状に配向しており、その界面で剥離が起こるものと考えられる。
このような層内剥離が起こると、ラミネートフィルムの強度が不安定となり、袋を構成した場合に過酷な使用条件下では破袋等の問題を生ずるおそれがある。このような過酷な使用条件は、例えば、ラミネートフィルムのラミネート強度(剥離強度)を測定する試験により再現することができる。
また、熱履歴品におけるMXD6の融点は、233℃以上238℃以下であることが好ましく、235℃以上237℃以下であることがより好ましい。熱履歴品におけるMXD6の融点が233℃未満になると、易裂性延伸フィルムの直線カット性と衝撃強度が低下する。また、熱履歴品におけるMXD6の融点が238℃を超えると、層内剥離を防止する効果が低くなる。
さらに、熱履歴品におけるNy6とMXD6の配合割合が、Ny6:MXD6=60質量%以上85質量%以下:15質量%以上40質量%以下(両者の合計は100質量%)であることが好ましい。熱履歴品におけるNy6とMXD6の配合割合が、この範囲内であると、直線カット性、衝撃強度および層内剥離防止効果により優れる。
なお、熱履歴品が製造される過程で、混練時の温度や圧力が高いと熱履歴品中のMXD6の融点はより大きく下がる。
ここで、熱履歴品におけるMXD6の融点とは、バージン原料と溶融混練される前の状態で測定された融点をいう。
本実施形態においては、当該フィルムの少なくとも一方の面における表面エネルギーの極性成分が18mN/m以上であることが必要である。前記表面エネルギーの極性成分が18mN/m未満では、得られるフィルムの印刷適性が不十分となり、半調印刷を施す場合には、インキの載りが悪く、インキムラが生じる。また、前記表面エネルギーの極性成分は、印刷適性の観点から、20mN/m以上であることがより好ましく、22mN/m以上であることが特に好ましい。
ここで、表面エネルギーの極性成分は、次のようにして求めることができる。すなわち、フィルムなどの表面エネルギーは、分散成分と極性成分とに分けることができる。そして、複数の物質(例えば、水、ホルムアミド、エチレングリコール、グリセロール)のフィルムの表面に対する接触角を測定し、この測定値から表面エネルギーの分散成分および極性成分を算出できる。
[易裂性ラミネートフィルムの構成]
本実施形態の易裂性ラミネートフィルムは、上記したONyフィルムのうち、表面エネルギーの極性成分が規定された一方の面に半調印刷処理が施され、この面にさらにラミネート基材としてポリプロピレン系シーラントフィルムや、ポリエチレン系シーラントフィルムを積層してなる。なお、ラミネート基材としては、上記シーラントフィルムのみならず、アルミニウム層やアルミニウム層を含むフィルムをさらに積層してもよい。このようなラミネート基材が積層されることで、製造効率の向上や運搬効率の向上を図ることができるとともに、フィルムとしての付加価値を付けることができる。
本実施形態の易裂性ラミネートフィルムによれば、表面エネルギーの極性成分が規定されたONy面に半調印刷が施されているため、インキの載りが良好で、インキムラのない美麗な半調印刷となっている。
[易裂性ラミネート包材の構成]
本実施形態の易裂性ラミネート包材は、前記易裂性ラミネートフィルムから構成されている。本実施形態の易裂性ラミネート包材によれば、上記した易裂性ラミネートフィルムから構成されているため、半調印刷を施した場合でもインキムラが生じず、美麗な印刷が施されたラミネート包材を得ることができる。
本実施形態の易裂性ラミネート包材におけるONyフィルムの厚さは、5μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。ここで、ONyフィルムの厚さが5μm未満では、ラミネート包材の耐衝撃性が低くなる傾向にある。一方、ONyフィルムの厚さが50μmを超えると、ラミネート包材の耐衝撃性の更なる向上効果が得られにくくなり、包材総厚が増加するばかりで好ましくない。
[易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造装置]
次に、本実施形態の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを製造する方法について図面に基づいて説明する。
先ず、本実施形態の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを製造する装置について、一例を挙げて説明する。
フィルム製造装置100は、図1に示すように、原反フィルム1を製造するための原反製造装置90と、原反フィルム1を延伸する二軸延伸装置(チューブラー延伸装置)10と、延伸後に折り畳まれた基材フィルム2(以後、単に「フィルム2」ともいう)を予熱する第一熱処理装置20(予熱炉)と、予熱されたフィルム2を上下2枚に分離する分離装置30と、分離されたフィルム2を熱処理(熱固定)する第二熱処理装置40と、フィルム2が熱固定されるときに、下流側からフィルム2に張力を加える張力制御装置50と、フィルム2が熱固定されてなる二軸延伸ナイロンフィルム3(以後、単に「フィルム3」ともいう)を巻き取る巻取装置60と、コロナ放電装置70とを備えている。
原反製造装置90は、図1に示すように、押出機91と、サーキュラーダイス92と、水冷リング93と、安定板94と、ピンチロール95とを備えている。
チューブラー延伸装置10は、チューブ状の原反フィルム1を内部空気の圧力により二軸延伸(バブル延伸)してフィルム2を製造するための装置である。このチューブラー延伸装置10は、図1に示すように、ピンチロール11と、加熱部12と、案内板13と、ピンチロール14とを備えている。
第一熱処理装置20は、扁平となったフィルム2を予備的に熱処理するための装置である。第一熱処理装置20は、図1に示すように、テンター21と、加熱炉22とを備えている。
分離装置30は、図1に示すように、ガイドロール31と、トリミング装置32と、分離ロール33A,33Bと、溝付ロール34A〜34Cとを備えている。また、トリミング装置32は、ブレード321を有している。
第二熱処理装置40は、図1に示すように、テンター41と、加熱炉42とを備えている。
張力制御装置50は、図1に示すように、ガイドロール51A,51Bと、張力ロール52とを備えている。
巻取装置60は、図1に示すように、ガイドロール61と、巻取ロール62とを備えている。
コロナ放電装置70は、図1に示すように、巻取装置60のガイドロール61を通過した後の熱固定後のフィルム3にコロナ放電処理を施すための装置である。
[易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法]
次に、このフィルム製造装置100を用いて易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを製造する各工程を詳細に説明する。
(原反フィルム製造工程)
原料であるナイロン樹脂は、図1に示すように、押出機91により溶融混練され、サーキュラーダイス92によりチューブ状に押し出される。チューブ状の溶融樹脂は、水冷リング93により冷却される。原反フィルム1は原料である溶融ナイロン樹脂が水冷リング93により急冷されることで成形される。冷却された原反フィルム1は、安定板94により折り畳まれる。折り畳まれた原反フィルム1は、ピンチロール95により、扁平なフィルムとして次の二軸延伸工程に送られる。
なお、チューブ状の溶融樹脂が水冷リング93により急冷される場合、チューブ状の溶融樹脂の外表面は水により冷却され、内表面は空気により冷却されることになる。そこで、以下のフィルムにおいては、水により冷却された面を水冷面といい、空気により冷却された面を空冷面という場合がある。
(二軸延伸工程)
原反フィルム製造工程により製造された原反フィルム1は、図1に示すように、ピンチロール11により、扁平なフィルムとして装置内部に導入される。導入された原反フィルム1は、加熱部12で赤外線により加熱することでバブル延伸される。その後、バブル延伸された後のフィルム2は、案内板13により折り畳まれる。折り畳まれたフィルム2は、ピンチロール14によりピンチされ扁平なフィルム2として次の第一熱処理工程に送られる。
この際、MD方向およびTD方向の延伸倍率がそれぞれ2.8倍以上であることが好ましい。延伸倍率が2.8倍未満である場合、衝撃強度が低下して実用性に問題が生ずる傾向にある。
(第一熱処理工程)
二軸延伸工程から送られたフィルム2は、テンター21のクリップ(図示せず)で両端部を把持されながら、このフィルム2の収縮開始温度以上であって、フィルム2の融点よりも約30℃低い温度かそれ以下の温度でこのフィルム2を予め熱処理されて次の分離工程に送られる。
この第一熱処理における熱処理温度は、120℃以上190℃以下であり、かつ、弛緩率は、15%以下であることが好ましい。
この第一熱処理工程により、フィルム2の結晶化度が増して、重なり合ったフィルム同士の滑り性が良好になる。
(分離工程)
ガイドロール31を介して送られた扁平なフィルム2は、図1に示すように、トリミング装置32のブレード321により、両端部を切開されて2枚のフィルム2A,2Bに分離される。そして、フィルム2A,2Bは、上下に離れて位置する一対の分離ロール33A、33Bにより、フィルム2A,2Bの間に空気を介在させながらこれらを分離される。この扁平なフィルム2の切開は、両端部から若干内側にブレード321を位置させることにより、一部分耳部が生じるように行ってもよく、或いは、フィルム2の折り目部分にブレード321を位置させることにより、耳部が生じないように行ってもよい。
これらのフィルム2A,2Bは、フィルムの流れ方向に順に位置する3個の溝付ロール34Aから34Cにより、再び重ねられて次の第二熱処理工程に送られる。なお、これらの溝付ロール34Aから34Cは、溝付き加工後、表面にめっき処理を施したものである。この溝を介してフィルム2A、2Bと空気との良好な接触状態が得られる。
(第二熱処理工程(熱固定工程))
重なった状態のフィルム2A、2Bは、テンター41のクリップ(図示せず)で両端部を把持されながら、フィルム2を構成する樹脂の融点以下であって、融点から約30℃低い温度以上で熱処理(熱固定)され、物性の安定した二軸延伸ナイロンフィルム3(以後、フィルム3ともいう)となり、次の巻取工程に送られる。
この第二熱処理(熱固定)における熱処理温度は、190℃以上215℃以下であり、かつ、弛緩率は、15%以下であることが好ましい。熱処理温度が前記下限未満では、フィルム収縮率が大きくなり、デラミが発生する危険性が高まる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱固定時のボーイング現象が大きくなり、フィルムの歪みが増す傾向にあり、また、密度が高くなり過ぎて、結晶化度が高くなり過ぎてフィルムの変形がし難くなる傾向にあり好ましくない。
また、加熱炉42内のフィルム2A、2Bに対しては、下流側に位置する張力制御装置50により強い張力が加えられるようになっている。
(巻取工程)
第二熱処理工程により熱固定されたフィルム3は、張力制御装置50を経て、ガイドロール61を介して2本の巻取ロール62に、フィルム3A,3Bとして巻き取られる。
(コロナ処理工程)
前記巻取工程の前後において、第二熱処理工程により熱固定されたフィルム3の水冷面(チューブ状の溶融樹脂の外表面に対応する面)に対し、コロナ放電装置70により、コロナ処理が施される。このようなコロナ処理により、表面エネルギーの極性成分を18mN/m以上とすることができ、前記本発明の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを得ることができる。
[実施形態の変形]
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状などとしても問題はない。
例えば、本実施形態では、二軸延伸方法としてチューブラー方式を採用したが、テンター方式であってもよい。さらに、延伸方法としては同時二軸延伸でも逐次二軸延伸でもよい。
また、本実施形態では、易裂性二軸延伸ナイロンフィルムのうち表面エネルギーの極性成分が規定された一方の面のみにラミネート基材を積層した易裂性ラミネートフィルムについて説明したが、ラミネート基材の積層状態はこれに限らず、易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの他方の面側にもラミネート基材を積層してもよい。
さらに、本実施形態では、易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの少なくとも一方の面における表面エネルギーの極性成分を調整する手段として、熱固定後のフィルムにコロナ放電処理を施す手段を採用したが、表面エネルギーの極性成分を本願発明範囲内に調整できるのであれば、これに限らず、フレーム処理(火炎処理)など、その他の表面処理手段を採用してもよい。
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各例における特性(表面エネルギー、半調印刷適性、直線カット性、層内剥離)は以下のような方法で評価した。
(i)表面エネルギー
協和界面科学社製の「Dropmaster 500」を使用して、二軸延伸ナイロンフィルムの水冷面(被印刷面)に対する接触角の測定とその解析を行った。具体的には、水、ホルムアミド、エチレングリコールおよびグリセロールの二軸延伸ナイロンフィルムの被印刷面に対する接触角を測定し、これらの測定値から表面エネルギー(分散成分、極性成分およびこれらの合計)を算出した。
(ii)半調印刷適性
濃い色から淡い色までを再現するために、グラビアロールの版深度を10段階で変化させたテスト用のグラビアロールを用いて、二軸延伸ナイロンフィルムの被印刷面に印刷を施した。そして、印刷のムラが発生しないかを確認評価した。
(iii)直線カット性
20cm幅のラミネートフィルムに2cm間隔で切れ目を入れて、これらの切れ目に沿ってラミネートフィルムを引裂いた後、ラミネートフィルム片の他の幅Weを測定し、元の間隔Wsとの偏差αを下記式により算出した。
α={(Ws−We)/Ws}×100
この測定を10枚のラミネートフィルム片に対して行い、その平均値のα(%)を下記の基準に基づいて判定した。
○:−30%≦α≦30%(直線カット性が良好)
×:α<−30%、または、α>30%(直線カット性が不良)
(iv)層内剥離
ラミネートフィルムから15mm幅の短冊状試験片を切り出し、その端部を手で数cmほど界面剥離を行い、二軸延伸ナイロンフィルムとシーラントフィルムとに分離した。その後、各々のフィルム片を引張り試験機(インストロン万能試験機 1123型)にセットして、300mm/minの速度でラミネート部分の剥離試験を行った(90度剥離)。剥離試験の最中に二軸延伸ナイロンフィルム内部で層内剥離が生ずると剥離強度が急激に減少するため、そのような挙動が発現したか否かで層内剥離発生の有無を判別できる。例えば、剥離試験の開始時は、剥離強度が7N/15mm幅程度であったものが、剥離試験の途中で急激に1〜2N/15mm幅程度に減少すれば、層内剥離が生じたと判断できる。
そして、二軸延伸ナイロンフィルム内部で層内剥離の挙動を示さないものを「○」と判定し、層内剥離の挙動を示したものを「×」と判定した。
[実施例1]
(原反フィルム製造工程)
Ny6ペレット70質量%と、MXD6ペレット30質量%を混合してなるバージン原料に対して、すでに一度、この配合比で溶融混合してペレット化した熱履歴品(MXD6の融点が235℃のもの)を原料全量基準(バージン原料と熱履歴品の合計量基準)で20質量%配合した。後述する他の実施例・比較例においても、Ny6とMXD6の配合比は、バージン原料と熱履歴品ともに同じである。結局、本実施例におけるNy6全体とMXD6全体の質量比は、Ny6/MXD6=70/30である。
そして、図1に示すように、このドライブレンド品を押出機91中、270℃で溶融混練した後、溶融物をサーキュラーダイス92からチューブ状のフィルムとして押出し、引き続き水(15℃)で急冷して原反フィルム1を作製した。なお、MXD6の融点は、パーキンエルマー社製示差走査熱量測定装置(DSC)を用い、昇温速度10℃/minで50℃から280℃まで昇温を行って測定した。いずれもファーストランにおけるピーク値を融点とした。なお、熱履歴品は、270℃で10分間熱処理を行ったものである。
Ny6として使用したものは、宇部興産(株)製ナイロン6〔UBEナイロン 1023FD(商品名)、相対粘度 ηr=3.6〕であり、MXD6として使用したものは、三菱ガス化学(株)製メタキシリレンジアジパミド「MXナイロン 6007(商品名)、相対粘度 ηr=2.7」である。
(二軸延伸工程)
次に、図1に示すように、この原反フィルム1を一対のピンチロール11間に挿通した後、中に気体を圧入しながら加熱部12で加熱すると共に、延伸開始点に吹き付けてバブルに膨張させ、下流側の一対のピンチロール14で引き取ることにより、チューブラー法によるMD方向およびTD方向の同時二軸延伸を行った。この延伸の際の倍率はMD方向で3.0倍、TD方向で3.2倍とした。
(第一熱処理工程および第二熱処理工程)
次に、図1に示すように、フィルム2に対し第一熱処理装置20により温度170℃にて熱処理を施し、その後、分離装置30を経た後に、第二熱処理装置40により温度210℃にて熱処理を施し、熱固定した。
(巻取工程およびコロナ処理工程)
次いで、図1に示すように、第二熱処理工程により熱固定されたフィルム3を、張力制御装置50を経て、ガイドロール61を介して2本の巻取ロール62に、フィルム3A,3Bとして巻き取った。そして、巻き取り後のフィルム3A,3Bの水冷面に対し、コロナ放電装置70によりコロナ処理を施して、易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを製造した。得られた易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの厚みは15μmであった。
得られた易裂性二軸延伸ナイロンフィルムにおける、水冷面(被印刷面)の表面エネルギーおよび半調印刷適性、並びに、直線カット性を評価または測定した。得られた結果を表1に示す。
(ラミネートフィルムの作製)
得られた易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを表基材フィルムとし、厚さ40μのアルミニウム箔、厚さ60μmCPPフィルムをシーラントフィルムとして、両者をドライラミネートすることにより易裂性ラミネートフィルムを得た。また、ドライラミネート後のラミネートフィルムは、40℃で3日間エージングを行った。
得られた易裂性ラミネートフィルムの層内剥離を評価した。また、これらの特性評価の結果を、有効性の観点から総合的に判断した。得られた結果を表1に示す。
[実施例2〜4、比較例1〜3]
表1に示す原料組成および製造条件に従って各条件を変更した以外は実施例1と同様にして、易裂性二軸延伸ナイロンフィルムおよび易裂性ラミネートフィルムを製造した。
得られた易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの、被印刷面における表面エネルギーおよび半調印刷適性、並びに、直線カット性を評価または測定した。また、得られた易裂性ラミネートフィルムの層内剥離を評価した。得られた結果を表1に示す。また、これらの特性評価の結果を、有効性の観点から総合的に判断した。得られた結果を表1に示す。
表1に示す結果からも明らかなように、易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの被印刷面における表面エネルギーの極性成分が18mN/m以上である場合(実施例1〜4)には、印刷適性に優れ、フィルムの表面に美麗な半調印刷が可能なことが確認された。
一方で、易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの被印刷面における表面エネルギーの極性成分が18mN/m未満である場合(比較例1〜3)には、半調印刷適性が不十分であった。
本発明の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを含むラミネートフィルムは、例えば、菓子包装用などの食品包材、医薬用包材、液体洗剤詰め替え用などの生活用品用包材、工業用包材の包装材料(ラミネート包材)として好適に用いることができる。
3,3A,3B…易裂性二軸延伸ナイロンフィルム

Claims (5)

  1. ナイロン6(以後、Ny6ともいう)とメタキシリレンアジパミド(以後、MXD6ともいう)とを原料として含む易裂性二軸延伸ナイロンフィルムであって、
    当該フィルムの少なくとも一方の面における表面エネルギーの極性成分が18mN/m以上である
    ことを特徴とする易裂性二軸延伸ナイロンフィルム。
  2. 請求項1に記載の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムにおいて、
    前記原料は、40質量%以上85質量%以下のNy6、および15質量%以上60質量%以下(両者の合計は100質量%)のMXD6からなるバージン原料と、
    Ny6およびMXD6を溶融混練してなる熱履歴品とを含み、
    前記熱履歴品におけるMXD6の融点は、233℃以上238℃以下であり、
    前記熱履歴品の含有量は、原料全量基準で5質量%以上40質量%以下である
    ことを特徴とする易裂性二軸延伸ナイロンフィルム。
  3. 請求項1または請求項2に記載の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムのうち、少なくとも表面エネルギーの極性成分が規定された一方の面に、ラミネート基材が積層されてなる
    ことを特徴とする易裂性ラミネートフィルム。
  4. 請求項3に記載の易裂性ラミネートフィルムを用いたことを特徴とする易裂性ラミネート包材。
  5. 請求項1または請求項2に記載の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを製造する易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法であって、
    前記原料をチューブ状に押し出してチューブ状の溶融樹脂を形成し、このチューブ状の溶融樹脂の外表面を水により冷却することで、原反フィルムを成形する原反フィルム製造工程と、
    前記原反フィルムを二軸延伸する二軸延伸工程と、
    前記二軸延伸工程後のフィルムに熱処理を施す熱処理工程と、
    前記熱処理工程後のフィルムにおける前記外表面に対応する面に対し、コロナ処理を施すコロナ処理工程と、を備える
    ことを特徴とする易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法。
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