JP2013188650A - 水処理システム及び水処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機廃水を再生利用するためのトータルコストを低減することのできる水処理システム及び水処理方法を提供する。
【解決手段】嫌気微生物の働きによって、廃水中の有機汚濁分を分解する嫌気リアクタ10と、嫌気リアクタの後段に配される、水の散水により空気中の酸素を溶解させることによって酸素を供給し、内部に微生物を付着させるための充填物を充填した散水型好気リアクタ12と、嫌気リアクタの後段に配される、固液分離のための分離膜を生物反応槽内に有した膜分離活性汚泥リアクタ13とを備え、嫌気リアクタで処理された処理水のうち、再生水の需要量分を膜分離活性汚泥リアクタで処理し、残り分を散水型好気リアクタで処理する水処理システムである。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機廃水を再生利用する下廃水の水処理システム及び水処理方法に関する。
水資源の不足している地域を中心として、水洗用水、散水用水、修景用水、親水用水、工業用水、農業用水として、下水、農業集落排水、工場排水等の有機廃水の処理水の再利用が行われている。有機廃水の浄化手段としては、活性汚泥を利用した標準活性汚泥法を代表として、微生物を使った浄化手段が多く普及している。また、通常の活性汚泥処理だけでなく、砂ろ過、凝集、オゾン、膜分離等の後処理により、更なる処理を行っている。
活性汚泥による生物反応槽の固液分離を膜により行う膜分離活性汚泥法は、省スペースで維持管理が容易なこと、利用用途によっては更なる後処理が必要となる場合があるものの、再利用できるレベルの高度な処理水を得られることから、近年、普及が進みつつある。
特開2005−246283号公報 特開2007−307530号公報
ところで、膜分離活性汚泥法では、膜面の洗浄と生物が利用する酸素の供給のために水中に空気を曝気する必要がある。有機廃水では汚泥濃度が高いため酸素の溶解効率が低くなることから、通常の活性汚泥法と比べると、多量の(例えば、数倍の)空気供給が必要となる。そのため、標準活性汚泥法と比較して、ランニングコストが増える。
また、1枚当たりの膜が処理できる水量は決まっているため、膜の設置数で処理量が規定される。そのため、特に流量変動の大きい下水処理への適用において、全量を膜分離活性汚泥法で処理しようとすると、イニシャルコストが高くなる。
本願発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、有機廃水を再生利用するためのトータルコストを低減することのできる水処理システム及び水処理方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の実施の形態によれば、嫌気微生物の働きによって、廃水中の有機汚濁分を分解する嫌気リアクタと、前記嫌気リアクタの後段に配される、水の散水により空気中の酸素を溶解させることによって酸素を供給し、内部に微生物を付着させるための充填物を充填した散水型好気リアクタと、前記嫌気リアクタの後段に配される、固液分離のための分離膜を生物反応槽内に有した膜分離活性汚泥リアクタとを備え、前記嫌気リアクタで処理された処理水のうち、再生水の需要量分を膜分離活性汚泥リアクタで処理し、残り分を散水型好気リアクタで処理する水処理システムが提供される。
提供される。
第1の実施形態の水処理システムの構成を示す図。 第1の実施の形態の水処理システムが再生水の需要量を把握する方法を説明する図。 第2の実施の形態の水処理システムの構成を示す図。 第3の実施の形態の水処理システムの構成を示す図。 第4の実施の形態の水処理システムの構成を示す図。 第5の実施の形態の水処理システムの構成を示す図。 第6の実施の形態の水処理システムの構成を示す図。
(第一の実施形態)
図1は、第1の実施形態の水処理システムの構成を示す図である。
水処理システム1は、嫌気リアクタ10、流量分配器11、散水型好気リアクタ12、膜分離活性汚泥リアクタ(MBR: Membrane Bio-Reactor)13を備える。
下水、有機廃水等の原水は、最初沈澱池15に導入される。原水中の浮遊性成分は最初沈澱池15において、沈降分離され初沈汚泥として汚泥処理(不図示)される。最初沈澱池15での上澄み液である最初沈澱池越流水は、原水ポンプ16によって、嫌気リアクタ10に供給される。
嫌気リアクタ10では、原水中の有機物成分がメタン生成菌、酸生成菌等の嫌気性微生物によりガス化されて水中から除去され、あるいは低分子化される。嫌気リアクタ10で発生したメタンガスを含むバイオガスは嫌気リアクタ10の上部から抜き出され、ガス処理後、エネルギー源として、回収される。また、嫌気リアクタ10で発生した余剰汚泥は汚泥処理(不図示)される。
嫌気リアクタ10で処理された処理水は、流量分配器11において、散水型好気リアクタ12送り用処理水とMBR13送り用処理水とに分配される。流量の分配方法は、計量枡を用いて分配する方式でも良く、電動バルブの開度を調整する方式でも良く、処理水を送り出すポンプの回転数を制御して調整する方式であっても良い。
散水型好気リアクタ12は、低ランニングコスト型の水処理方法の一つである。散水型好気リアクタ12は、水中への空気供給を必要とせず、水を散水させ、その散水時に水と空気の気液接触により、酸素を水中に溶解させ、リアクタ内部に生息する好気性の微生物により汚濁物質を分解する。
散水型好気リアクタ12は、上部が開放されている。処理水が散水型好気リアクタ12の上部から散水される際に大気中の酸素が処理水中に溶解する。散水型好気リアクタ12の内部には、処理水中の有機物を分解する好気微生物を付着させるための、ろ材20が充填されている。ろ材20としては、数mm〜数cmの大きさの砕石、スラグ、円筒状、球状、角状の形状のプラスチック担体など、微生物が付着するもので、かつある程度の空隙を有するものであればどのようなものでもよい。
散水時ならびに、充填材を伝って処理水が落下する際に、この充填材に付着した微生物は、気液接触により水中に溶解する酸素を利用して、処理水中の有機性の汚濁成分を分解する。汚濁成分が除去された処理水は、散水型好気リアクタ12の下部から排出され、消毒後、河川に放流される。一方で、散水型好気リアクタ12で発生した余剰汚泥は汚泥処理(不図示)される。
MBR13は、前段部が無酸素状態の無酸素槽13aで、後段部が酸素が水中に溶解した好気状態の好気槽13bからなる。好気槽13bの内部には、浸漬膜13cが設置されている。MBR処理水は、処理水ポンプ21によって吸引ろ過され、必要な後処理が行われた後、再生水として利用される。MBR13は、固液分離を膜で行うことにより、生物反応槽内の汚泥濃度(微生物濃度)を高く保つことができる。このため、系内に多くの微生物を保持できることから、省スペースで水処理を行うことができる。
MBR13の好気槽13bでは、通常、原水中の窒素成分(アンモニア)が硝化菌の働きにより、硝酸性窒素に酸化される。この際に、pHが低下する。水質基準の遵守、並びに微生物の活性維持のためにはpHを中性付近とする必要がある。そこで、pH(アルカリ度)低下対策及び廃水中の脱窒素のために汚泥返送ポンプ23で無酸素槽13aに硝酸性窒素を含む液を循環する。微生物を含む汚泥は、汚泥返送ポンプ23によって無酸素槽13aに循環され、一部は余剰汚泥として、系外に排出され、処理・処分される。
このようにMBR13は、脱窒菌による脱窒を行うことにより硝酸性窒素を水中から除去し、pH(アルカリ度)の回復を行うようにして、高い窒素除去率を達成することができる。また、微生物の生物反応槽内での滞留時間(SRT:汚泥滞留時間)を長く保てることによって、汚泥の自己分解が進むことから、通常の活性汚泥法に比べ、余剰汚泥の発生量も少ない。
続いて、水処理システム1の運転方法について説明する。
上述のように、嫌気リアクタ10からの処理水は、流量分配器11によって分配されて散水型好気リアクタ12とMBR13とに供給される。この際の処理量比は、MBR13の再生水の需要量により決定される。
図2は、第1の実施の形態の水処理システム1が再生水の需要量を把握する方法を説明する図である。
水処理システム1には、情報処理を担当する再生水需要量予測システム50が設けられている。再生水需要量予測システム50は、複数の需要家a,b,c・・・の所有する情報処理端末とネットワーク、通信回線などで接続されている。ここで、需要家とは、例えば、再生水を利用する工場、公園やビルを管理する会社、自治体などである。
需要家a,b,c・・・は必要とする再生水の量を日単位あるいは時間単位で情報処理端末から入力する。再生水需要量予測システム50は、各需要家から要求された再生水の量に基づいて水処理システム1に求められる再生水の需要量を算出する。再生水の需要量算出においては、種々の解析手法、統計手法、予測手法などを使用する。
水処理システム1は、MBR13から排出する処理水の量が算出した需要量となるように運転される。即ち、MBR13から吸引ろ過して排出される処理水の量が需要量に見合った量となるように処理水ポンプ21を運転する。そして、排出した処理水の量に見合った量だけ流量分配器11がMBR13に処理水を送り出す。従って、嫌気リアクタ10で処理された処理水の内、再生水の需要量がMBR13で処理され、残りが散水型好気リアクタ12で処理される。なお、この運転条件に合わせて、ブロワ22による好気槽13bへの空気供給量、汚泥返送ポンプ23の運転条件が変更される。
なお、再生水の需要量はオンライン予測するものでなくとも、需要家との再生水需要量の契約等に基づいて、オフラインで決定するものであってもよい。
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態の水処理システム1では、前段に嫌気リアクタ10を配し、後段に散水型好気リアクタ12とMBR13とを配する。このようにMBR13と散水型好気リアクタ12とを組み合わせて使用することでコストを低減することができる。
散水型好気リアクタ12は、処理水質は膜分離活性汚泥法に劣るものの、ランニングコストの面からは非常に安価である。また、余剰汚泥の発生量も通常、廃水処理で利用される標準活性汚泥法の10%程度と非常に少なく、汚泥処分コストが小さいという利点も有する。
都市下水を処理対象とした処理水質の例では、
膜分離活性汚泥法⇒BOD<3[mg/L]、SS<1[mg/L]、T−N<10[mg/L]
嫌気リアクタ+散水型好気リアクタ⇒BOD<15[mg/L]、SS<15[mg/L]、T−N<25[mg/L]
都市下水を処理対象としたランニングコストの例では、
膜分離活性汚泥法⇒ 0.5〜1.0kwh/m3下水
嫌気リアクタ+散水型好気リアクタ⇒ 0.1〜0.25kwh/m3下水
そこで、需要家からの情報に基づいて、再生水の需要量を予測し、再生水の需要量分だけMBR13で処理し、残り分は低コスト方式である散水型好気リアクタ12で処理した後で公共水域に放流する。これによって、処理施設全体の運転コストを低減することができる。
また、MBR13に原水を直接供給するのではなく、嫌気リアクタ10で処理後の処理水をMBR13に導入することによって、MBR13の流入有機物負荷が低減するため、例えば、MBR13のブロワ22に供給する電力を低減することができるためランニングコストの低減にもつながる。
更に、嫌気リアクタ10での処理によって、バイオガスからのエネルギー回収を行うことができ、このエネルギーを活用することでコストを低減することができる。
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施の形態の水処理システム1の構成を示す図である。第2の実施の形態の水処理システム1では、公共水域に放流される散水型好気リアクタ12の処理水の有機物濃度が放流基準を満たすように構成されている。第1の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付してその詳細の説明は省略する。
散水型好気リアクタ12の出側には、処理水の水質を測定するUV(紫外線吸光度)計27が設けられている。また、MBR13の処理水ポンプ21の後段にはバッファ用の処理水槽25が設けられている。そして、処理水槽25内の処理水の一部がMBR処理水放流ポンプ26によって抜き出され、UV計27の前段でMBR13の処理水と混合されるように構成されている。
UV計27は、処理水中の有機物濃度(COD)をオンラインで連続して測定する。さらに測定精度は低いが有機物濃度(BOD)を連続測定できる機器でもある。UV計27の測定値が大きいほど処理水中の有機物濃度が高い、即ち処理水としては水質が悪化していることを表している。UV計27の計測信号Aは、流量演算コントローラ51に送られる。流量演算コントローラ51は、計測信号Aに応じて、散水型好気リアクタ12への流入量、MBR13への流入量、MBR処理水放流ポンプ26の吸引量を算出する。そして、これらの算出した量で運転されるように各種ポンプなどをコントロールする。
例えば、散水型好気リアクタ12とMBR13に流入する処理水の流量は、制御信号Bによって流量分配器11の流量分配比を変えることで制御する。流量分配器11が計量枡である場合は、計量枡内の稼働堰の高さを調整することによって制御する。MBR処理水放流ポンプ26で取り出す処理水の量は、制御信号Cによってポンプの回転数を制御することによって調整する。
次に、流量演算コントローラ51で実行する流量演算の例を説明する。
UV計27の測定値(UVpv)が所定の目標値(UVsv)よりも小さい場合は、水質が基準内にあるため、通常状態であるとして散水型好気リアクタ12とMBR13の流入量(Q)と流出量(q)とを次の関係が成立するように制御する。
UVpv<UVsvの時、
q1=Q0−Q1
q2=Q1
q3=0
ここで、Q0:全流入量(m3/h)、Q1:再生水需要量(m3/h)、q1:散水型好気リアクタ流入量、q2:MBR流入量、q3:MBR処理水ポンプ流量である。
UV計の測定値(UVpv)が所定の値(UVsv)を超えた場合は、散水型好気リアクタ12の処理水をそのまま河川に放流することはできない。そこで、MBR処理水放流ポンプを作動させ、散水型好気リアクタ12とMBR13との流入量(Q)と流出量(q)とを次の関係が成立するように制御する。
UVpv≧UVsvの時、
q1=Q0−Q1−k(UVpv−UVsv)
q2=Q1+k(UVpv−UVsv)
q3=k(UVpv−UVsv)
ここで、k>0:比例定数、UVsv:UV目標値、UVpv:UV計測定値である。
この制御方法では、UV計の測定値(UVpv)が所定の値(UVsv)を超えた場合は、超えた値に対応してMBR処理水ポンプ流量(q3)を制御する。この結果、散水型好気リアクタ12の処理水は、高度な処理水質であるMBR処理水により希釈されて、処理水質が改善される。一方、MBR13で処理され需要家に供給される処理水が不足する。そこで、処理水ポンプ21がMBR13から抜き出す量を通常よりもq3だけ増加し、それに対応して流量分配器11の流量分配比を変えて、MBR13に流入する処理水の流量(q2)を増加させる。
なお、流量分配器11の流量分配比を変えることで、散水型好気リアクタ12に流入する処理水の量が減少するが、結果として散水型好気リアクタ12の処理する負荷が低減することにより散水型好気リアクタの処理水質が改善する。従って、公共水域に放流する水質の悪化リスクをより低減することが可能となる。
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態の水処理システム1では、公共水域に放流する処理水の悪化リスクの低減とイニシャルコスト、メンテナンスコストの低減を図ることができる。
UV計27の計測値は処理水の有機物濃度(COD、BOD)と相関があるため、UV値を管理して制御することによって、処理水のCOD、BOD値を一定値以下とすることができる。なお、UV計27は、比較的安価、メンテナンス容易、かつ連続測定可能であるため、機器の設置コスト、ランニングコストを下げることができる。
流量分配器11として計量枡を用いると、ポンプ、電動バルブなどの機器が必要ないため、機器の設置コスト、ランニングコストを下げることができる。
処理水質を測定するセンサは、UV計に限らず、BOD計、COD計、SS計、濁度計、pH計のいずれを用いても良い。
流量演算コントローラ51が演算する処理量の決定式は、上述の式に限らず、処理水質の悪化時に、UV計27の計測値と目標値の偏差に応じて、通常運転時よりも、MBRの処理量を増やし、公共水域に放流する水の水質を改善する方向に向かうものであれば、どのようなものであってもよい。またその制御方式も、特定の制御方式に限定されない。例えば、サンプリング制御、P(比例)制御、PI(比例、積分)制御を用いても良い。
流量分配器11による流量の調整方法は計量枡の堰高さによるものでなくとも、電動バルブの開度調整によるものであってもよいし、嫌気処理水をポンプによって、送液する構成とし、ポンプの回転数制御によって調整するものであってもよい。
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施の形態の水処理システム1の構成を示す図である。第3の実施の形態の水処理システム1では、MBR13の無酸素槽13aの脱窒状態が所定の状態に維持されるように構成されている。第1の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付してその詳細の説明は省略する。
MBR13の無酸素槽13aにORP(酸化還元電位)計が設けられている。また、流量分配器11とMBR13とを接続する配管には遮断弁29が設置されている。さらに、嫌気リアクタ10をバイパスして、MBR13に原水を流入させる配管を有し、その配管に嫌気リアクタバイパス弁30が設けられている。
ORP計28は、無酸素槽13aの酸化還元電位(単位:mV)を測定する。測定した酸化還元電位が正(+)の電位であれば無酸素槽13aは酸化状態にあることを示している。測定した酸化還元電位が負(−)の電位であれば無酸素槽13aは還元状態にあることを示している。
無酸素槽13aでは、脱窒菌が硝酸性窒素を窒素ガスに変換する還元反応が行なわれている。MBR13の無酸素槽13aに配置されたORP計28によって、無酸素槽13aの脱窒状態を監視することができる。ORP計28の測定値は、概ね−50mV〜−150mVであることが脱窒には好ましい。
ところで、無酸素槽13aの脱窒状態が悪化する場合がある。特に嫌気リアクタ10の有機物除去率が高い場合、脱窒に必要な有機物が不足し、窒素除去率が低下する。そこで無酸素槽13aの硝酸性窒素濃度が高くなったときに、嫌気リアクタ10をバイパスして、MBR13に原水を流入させることによって、無酸素槽13a内の脱窒菌が硝酸性窒素を窒素ガスに変換する際に必要な有機物を直接MBRに導入する。
ORPを−50mV〜−150mVとなるように管理する方法として次のような制御方法を採用する。無酸素槽13aのORPが−100mV以上となった場合に、嫌気リアクタバイパス弁30を開き、直接原水の一部をMBR13に導入する。このとき導入する原水の量は、これまで流量分配器11から受け入れていた量とする。そして、遮断弁29を閉じて、嫌気リアクタ10からの処理水をすべて散水型好気リアクタ12に振り向ける。その後、ORPが−150mV以下になった場合に、嫌気リアクタバイパス弁30を閉じて、遮断弁29を開き、嫌気リアクタ処理水の所定量をMBR13に導入する。これによって、安定的に良好な窒素除去率を達成することができる。
(第3の実施の形態の効果)
第3の実施の形態によれば、無酸素槽13aのORPを−50mV〜−150mVとなるように管理することができるため、MBR13において、良好な窒素除去率を達成することが可能となる。
なお、脱窒状態の監視は、ORP計28で行うものでなくとも、無酸素槽13a内に硝酸性窒素を測定するセンサ(硝酸計)を設置し、硝酸濃度が高い場合に、嫌気リアクタバイパス弁30を開くものであってもよい。
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施の形態の水処理システム1の構成を示す図である。第4の実施の形態の水処理システム1では、MBR13の無酸素槽13aの脱窒状態が所定の状態に維持されるように構成されている。第3の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付してその詳細の説明は省略する。
MBR13の無酸素槽13aにORP(酸化還元電位)計28が設けられている。また最初沈澱池15で固液分離した汚泥をMBR13に導入する配管が配置されている。その配管には、最初沈澱池汚泥導入弁31が設けられている。
無酸素槽13aでは、脱窒菌が硝酸性窒素を窒素ガスに変換する。MBR13の無酸素槽13aに配置されたORP計28によって、無酸素槽13aの脱窒状態を監視することができる。ORP計28の測定値は、概ね−50mV〜−150mVであることが脱窒には好ましい。
ORPを−50mV〜−150mVとなるように管理する方法として次のような制御方法を採用する。無酸素槽13aのORPが−100mV以上となった場合に、最初沈澱池汚泥導入弁31を開いて最初沈澱池15の汚泥をMBR13に導入する。このとき、嫌気リアクタ10からの処理水は流量分配器11から分配されてMBR13に供給される。
ORPが−150mV以下になった場合に、最初沈澱池汚泥導入弁31を閉じて、汚泥の導入を停止する。
(第4の実施の形態の効果)
第4の実施の形態によれば、無酸素槽13aのORPを−50mV〜−150mVとなるように管理することができるため、MBR13において、良好な窒素除去率を達成することが可能となる。
また、汚泥処理量の削減が見込めるため、汚泥処理コストの低減が見込める。
(第4の実施の形態のバリエーション)
脱窒状態の監視は、ORP計で行うものでなくとも、無酸素槽13a内に硝酸性窒素を測定するセンサ(硝酸計)を設置し、行うものであってもよい。
原水の固液分離は、最初沈澱池による重力沈澱法に限らず、加圧浮上法、遠心分離法、凝集沈澱法などいずれであってもよく、その固体分をMBRに供給してもよい。
固液分離した固体分を脱窒状態にかかわらず、常時、MBRに導入する構成であってもよい。初沈汚泥は、有機分の比率が高いため、滞留時間が長く汚泥濃度を高濃度に保つことができるMBR内部で徐々に分解される。これにより、最終処分する汚泥発生量を低減することができる(汚泥処分コスト低減)。
(第5の実施形態)
図6は、第5の実施の形態の水処理システム1の構成を示す図である。第5の実施の形態の水処理システム1では、MBR13の無酸素槽13aの脱窒状態が所定の状態に維持されるように構成されている。第4の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付してその詳細の説明は省略する。
第5の実施の形態では、第4の実施の形態で示した構成に加え、嫌気リアクタ10と散水型好気リアクタ12とで発生した余剰汚泥をMBR13に導入する配管が配置されている。さらにそれぞれの配管には、汚泥導入弁32、33が設けられている。
嫌気リアクタ10、散水型好気リアクタ12で発生した余剰汚泥は、配管を介して、MBR13に導入される。それぞれのリアクタ10、12から発生する余剰汚泥量は非常に少ないため、多くとも日1回程度の頻度で、MBR13に投入する。MBR13の汚泥濃度が運転管理値(通常、8000〜15000[mg/L]の範囲で設定される。)を超えた場合に、MBR13の返送汚泥ラインの弁34を開いて余剰汚泥として引き抜く。
(第5の実施の形態の効果)
第5の実施の形態によれば、第4の実施の形態の効果に加え、嫌気リアクタ10ならびに散水型好気リアクタ12から汚泥を排出し、汚泥処理施設へ送泥するための配管、ポンプなどの機器が不要となり、MBR13からの余剰汚泥ラインのみで済むことからイニシャルコストの低減につながる。
(第6の実施形態)
図7は、第6の実施の形態の水処理システム1の構成を示す図である。第6の実施の形態の水処理システム1では、需要家に再処理水を供給するMBR13の処理水の水質悪化を防止するように構成されている。第1の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付してその詳細の説明は省略する。
MBR13の処理水ポンプ21の後段には処理水のアンモニア濃度を測定するアンモニア濃度計35が設けられている。また、散水型好気リアクタ12の出側には、バッファ用の処理水槽36が設けられている。そして、処理水槽36内の処理水の一部が散水型好気処理水返送ポンプ37によって抜き出され、MBR13の前段部に送られるように構成されている。
アンモニア濃度計35は、処理水中のアンモニア濃度を測定する。MBR13の空気量が不足すると、汚泥物の負荷が高くなるため酸素量不足によって、硝化菌の活性が低下する。その結果、処理水中のアンモニア濃度が高くなる。このような現象が発生した場合は、MBR13に流入する水を散水型好気リアクタ処理水12で希釈して、流入負荷を下げることにより、改善が見込める。
アンモニア濃度計35の計測信号Eは、流量演算コントローラ51に送られる。流量演算コントローラ51は、計測信号Eに応じて、散水型好気リアクタ12への流入量、MBR13への流入量、散水型好気処理水返送ポンプ37の吸引量を算出する。そして、これらの算出した量で運転されるように各種ポンプなどをコントロールする。
例えば、散水型好気リアクタ12とMBR13に流入する処理水の流量は、制御信号Fによって流量分配器11の流量分配比を変えることで制御する。散水型好気処理水返送ポンプ37で取り出す処理水の量は、制御信号Gによってポンプの回転数を制御することによって調整する。
次に、流量演算コントローラ51で実行する流量演算の例を説明する。
アンモニア濃度計35の測定値(NH4pv)が所定の目標値(NH4sv)よりも小さい場合は、水質が基準内にあるため、通常状態であるとして散水型好気リアクタ12とMBR13との流入量(Q)と流出量(q)とを次の関係が成立するように制御する。
NH4pv<NH4svの時、
q1=Q0−Q1
q2=Q1
q3=0
ここで、Q0:全流入量(m3/h)、Q1:再生水需要量(m3/h)、q1:散水型好気リアクタ流入量、q2:MBR流入量、q3:散水型好気処理水返送ポンプ流量である。
アンモニア濃度計35の測定値(NH4pv)が所定の目標値(NH4sv)を超えた場合は、MBR13の処理水をそのまま需要家に供給することはできない。そこで、散水型好気処理水返送ポンプ37を作動させ、散水型好気リアクタ12とMBR13との流入量(Q)と流出量(q)とを次の関係が成立するように制御する。
NH4pv≧NH4svの時、
q1=Q0−Q1+k(NH4pv−NH4sv)
q2=Q1−k(NH4pv−NH4sv)+q3
q3=k(NH4pv−NH4sv)
ここで、k>0:比例定数、NH4sv:NH4目標値、NH4pv:NH4計測定値である。
この制御方法では、アンモニア濃度計35の測定値(NH4pv)が所定の目標値(NH4sv)を超えた場合は、超えた値に対応して散水型好気処理水返送ポンプ流量(q3)を制御する。この結果、MBR13は、散水型好気リアクタ12の処理水により流入負荷が下げられて、処理が改善される。一方、MBR13で処理され需要家に供給される処理水が過剰となる。そこで、それに対応して流量分配器11の流量分配比を変えて、MBR13に流入する処理水の流量を(q3)減少させる。
(第6の実施の形態の効果)
第6の実施の形態の水処理システム1では、MBRの処理水量=再生水の需要量の関係を崩すことなく、需要家に供給する再生水の水質改善を図ることができる。
流量演算コントローラ51が演算する処理量の決定式は、上述の式に限らず、アンモニア濃度計35の計測値と目標値の偏差に応じて、通常運転時よりも、MBRの処理量を減じて、散水型好気リアクタ処理水をMBRの前段部に返送し、再生水の需要量分を賄うものであれば、どのようなものであってもよい。またその制御方式も、特定の制御方式に限定されない。例えば、サンプリング制御、P(比例)制御、PI(比例、積分)制御を用いても良い。
なお、第6の実施の形態は、単独で実施できるのみならず、第1および第2の実施の形態と組み合わせて実行することができる。
なお、第5の実施の形態で示した、嫌気リアクタ10ならびに散水型好気リアクタ12から汚泥を排出し、MBR13に導入する構成は、第4の実施の形態と組み合わせるだけでなく、上述の全ての形態とも組み合わせることができる。
また、上述の各実施の形態では、嫌気リアクタの後段を膜分離活性汚泥法と散水型好気リアクタとしたが、散水型好気リアクタ部分に関しては、膜分離活性汚泥法よりも処理量あたりの運転コストが低減できる方式(例えば、標準活性汚泥法、好気性ろ床法、OD法、接触曝気法等)であれば、どのような方式であってもよい。
尚、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
1…水処理システム、10…嫌気リアクタ、11…流量分配器、12…散水型好気リアクタ、13…膜分離活性汚泥リアクタ、13a…無酸素槽、13b…好気槽、13c…浸漬膜、15…最初沈澱池、16…原水ポンプ、20…ろ材、21…処理水ポンプ、22…ブロワ、23…汚泥返送ポンプ、25…処理水槽、26…MBR処理水放流ポンプ、29…遮断弁、30…嫌気リアクタバイパス弁、31…最初沈澱池汚泥導入弁、32.33…汚泥導入弁、34…弁、36…処理水槽、37…散水型好気処理水返送ポンプ、50…再生水需要量予測システム。

Claims (11)

  1. 嫌気微生物の働きによって、廃水中の有機汚濁分を分解する嫌気リアクタと、
    前記嫌気リアクタの後段に配される、水の散水により空気中の酸素を溶解させることによって酸素を供給し、内部に微生物を付着させるための充填物を充填した散水型好気リアクタと、
    前記嫌気リアクタの後段に配される、固液分離のための分離膜を生物反応槽内に有した膜分離活性汚泥リアクタと
    を備え、
    前記嫌気リアクタで処理された処理水のうち、再生水の需要量分を膜分離活性汚泥リアクタで処理し、残り分を散水型好気リアクタで処理することを特徴とする水処理システム。
  2. 再生水の需要家毎に取得した再生水の必要量に関する情報に基づいて所定期間における再生水需要量を演算する演算器を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
  3. 散水型好気リアクタの処理水の濁度、BOD、COD、UV、pHのうち少なくとも一つの水質を測定するセンサと、
    測定した水質が運転管理値の範囲を超過した場合に、膜分離活性汚泥リアクタの処理水の一部で前記散水型好気リアクタの処理水を希釈して前記水質を運転管理値の範囲内に制御するとともに、前記膜分離活性汚泥リアクタの処理水量を増加させる第1の制御装置とを更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の水処理システム。
  4. 散水型好気リアクタの処理水の一部を膜分離活性汚泥リアクタの前段に流入させる流路と、
    膜分離活性汚泥リアクタの処理水のアンモニア濃度を測定する第2のセンサと、
    測定したアンモニア濃度が目標値を超過した場合に、前記流路を介して散水型好気リアクタの処理水の一部を膜分離活性汚泥リアクタの前段に流入させるとともに、散水型好気リアクタで処理する水量を増加させる第2の制御装置とを更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の水処理システム。
  5. 膜分離活性汚泥リアクタは、無酸素槽と好気槽とを有し、
    嫌気リアクタをバイパスして、原水を前記膜分離活性汚泥リアクタに導入する流路と、
    無酸素槽内の処理水の硝酸性窒素濃度を測定するセンサと、
    測定結果で前記硝酸性窒素濃度が高くなった場合に、嫌気リアクタをバイパスして、膜分離活性汚泥リアクタに直接原水を導入するように流路を切り替える切替え装置と
    を更に備えたことを特徴とする請求項1または2記載の水処理システム。
  6. 嫌気リアクタの前段に配される原水中の浮遊成分を固液分離するための固液分離槽で分離された固形分を膜分離活性汚泥法の無酸素槽に導入する流路を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の水処理システム。
  7. 嫌気リアクタと散水型好気リアクタの少なくとも一つで生じた余剰汚泥を膜分離活性汚泥槽の無酸素槽に導入する流路を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の水処理システム。
  8. 散水型好気リアクタは、膜分離活性汚泥法よりも低コスト型の好気性微生物を使って処理することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の水処理システム。
  9. 嫌気微生物の働きによって、廃水中の有機汚濁分を分解する嫌気リアクタを配し、
    水の散水により空気中の酸素を溶解させることによって酸素を供給し、リアクタ内部に微生物を付着させるための充填物を充填させた散水型好気リアクタを前記嫌気リアクタの後段に配し、
    固液分離のための分離膜を生物反応槽内に有した膜分離活性汚泥リアクタを前記嫌気リアクタの後段に配し、
    前記嫌気リアクタで処理された処理水のうち、再生水の需要量分を膜分離活性汚泥リアクタで処理し、残り分を散水型好気リアクタで処理すること
    を特徴とする水処理方法。
  10. 散水型好気リアクタの処理水の濁度、BOD、COD、UV、pHのいずれか一つ以上の水質を測定し、
    測定した水質が運転管理値の範囲を超過した場合に、膜分離活性汚泥リアクタの処理水の一部で前記散水型好気リアクタの処理水を希釈して前記水質を運転管理値の範囲内に制御し、
    前記膜分離活性汚泥リアクタの処理水量を増加させることを特徴とする請求項9に記載の水処理方法。
  11. 散水型好気リアクタの処理水の一部を膜分離活性汚泥リアクタの前段に流入させる流路を設け、
    膜分離活性汚泥リアクタの処理水のアンモニア濃度を測定し、
    測定したアンモニア濃度が目標値を超過した場合に、前記流路を介して散水型好気リアクタの処理水の一部を膜分離活性汚泥リアクタの前段に流入させ、
    散水型好気リアクタで処理する水量を増加させることを特徴とする請求項9に記載の水処理方法。
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