以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1〜図7を参照して、本発明の一実施形態による冷却装置100の構成について説明する。本実施形態による冷却装置100は、たとえば、飲料ディスペンサやカップ式自動販売機などに搭載され、コールド飲料用の濃縮シロップおよび濃縮シロップを希釈する希釈水を予め冷却するための冷却ユニットとして用いられる。
本実施形態による冷却装置100は、図1に示すように、二酸化炭素冷媒(CO2)を用いて所定の冷凍サイクルを形成可能な冷却ユニット70と、貯留した冷却水により濃縮シロップおよび希釈水を冷却するための冷却水槽80とを備えている。
冷却ユニット70は、圧縮機10、ガスクーラ(放熱器)20、内部熱交換器30、電子膨張弁40および蒸発器50と、これらの機能部品を接続する冷媒配管5a〜5dとを含んでいる。圧縮機10から吐出された冷媒は、矢印Pの向きに沿って、ガスクーラ20、内部熱交換器30、電子膨張弁40、蒸発器50および内部熱交換器30の順に流れて再び圧縮機10に帰還されるというサイクルを繰り返す。また、冷却装置100は、冷却ユニット70および冷却水槽80の動作制御を行うための制御部60を冷却装置本体内に備えている。
冷却水槽80は、図2に示すように、冷却水を貯留する水槽本体81を備えている。冷却水が満たされた水槽本体81内には、蒸発器50が浸漬されている。ここで、蒸発器50は、1本の蒸発パイプ51がコイル状に巻回されることにより形成されている。そして、コイル状(筒状)に形成された蒸発パイプ51の内側には、冷却水を攪拌する攪拌機(アジテータ)82が配置されている。また、水槽本体81内には、蒸発パイプ51に加えてシロップ冷却パイプ83および希釈水冷却パイプ84がそれぞれ配置されている。シロップ冷却パイプ83には、シロップ容器(図示せず)から供給された濃縮シロップが流通される。また、希釈水冷却パイプ84には、水リザーバ(図示せず)から供給された希釈水(飲料水)が流通される。
また、図2に示すように、水槽本体81内には、水温を検出する水温センサ91が配置されている。また、コイル状の蒸発パイプ51の外側面に対向する位置には、電極式のアイスバンクセンサ92が配置されている。水温センサ91およびアイスバンクセンサ92は、制御部60(図3参照)に電気的に接続されている。
上記のような構成を有する冷却装置100(図1参照)の動作としては、まず、冷却ユニット70(図1参照)が運転されて蒸発パイプ51が氷点よりも低い温度まで冷却されることにより、蒸発パイプ51の周囲に氷が着氷してアイスバンク(氷塊)が生成される。そして、アイスバンクの蓄熱を利用して水槽本体81に貯留された水が冷却されて略0℃に維持される。また、攪拌機82によって冷却水が攪拌されて水槽本体81内の冷却水全体が均一な温度(略0℃)に維持されて、シロップ冷却パイプ83を流通する濃縮シロップおよび希釈水冷却パイプ84を流通する希釈水が冷却されるように構成されている。
また、アイスバンクセンサ92は、図2において矢印Q方向に成長したアイスバンクの一部が電極間に到達したか否か(アイスバンクの量が所定の一定量になったか否か)を、水と氷との電気伝導度(電気抵抗)の違いに基づいて検出するものである。このアイスバンクセンサ92により、アイスバンクの量が所定の一定量になったことが検出された場合には、冷却運転を停止し、氷が溶けてアイスバンクの量が所定の一定量未満になったこと(電極間に水が存在する状態になったこと)が検出されると、冷却運転を再開するというように、冷却運転と冷却運転の停止(待機状態)とが繰り返されるように構成されている。これにより、蒸発パイプ51の周囲に着氷したアイスバンク(氷塊)の量が常に一定量に保持されている。
また、図1および図2に示すように、冷却水槽80の近傍には、周囲温度センサ71が設けられている。周囲温度センサ71は、制御部60(図1参照)に接続されており、冷却水槽80の近傍の周囲温度(空気温度)Taを検出する機能を有している。
また、図1に示すように、冷却ユニット70を構成する圧縮機10は、冷凍サイクルにおける低圧側から吸入された冷媒を圧縮して高圧側に吐出する役割を有している。ガスクーラ(放熱器)20は、圧縮機10から吐出された高温高圧の冷媒が流通されることにより、過熱ガス状態の冷媒と外部空気との熱交換を行う機能を有する。また、冷却ユニット70は、ガスクーラ20に送風する送風機21を備えており、ガスクーラ20内のガス冷媒は、送風機21により送風される空気によって冷却される。内部熱交換器30は、ガスクーラ20により冷却装置本体内の周囲温度(空気温度)Taに近い温度まで冷却された冷媒と、蒸発器50(蒸発パイプ51)から圧縮機10に戻される低温低圧の冷媒との間の熱交換を行う機能を有している。
電子膨張弁40は、内部熱交換器30で冷却された冷媒を絞り膨張(減圧)させて蒸発器50(蒸発パイプ51)に供給する役割を有している。ここで、電子膨張弁40は、パルス制御により駆動されるステッピングモータ40aの駆動力を利用して弁機構を開閉駆動するように構成されている。
電子膨張弁40により絞り膨張された冷媒は、気相および液相からなる二相状態を維持したまま冷媒配管5cを介して蒸発パイプ51に流入される。また、蒸発パイプ51は、電子膨張弁40から供給された二相状態の冷媒を蒸発させる機能を有している。冷媒は、蒸発パイプ51の入口部51aから出口部51bに向かうにしたがって所定の蒸発潜熱を得ながら蒸発し、この際、水槽本体81内の水から熱が奪われて水槽本体81内に貯留された水が冷却される。また、水の冷却がさらに進むと蒸発パイプ51の周囲には氷が着氷する。なお、蒸発パイプ51で蒸発した後の冷媒は、図1に示すように、出口部51bを出て冷媒配管5dを流通するとともに内部熱交換器30で高圧側の冷媒から所定量の熱を受け取り圧縮機10に戻される。
ここで、本実施形態においては、図2に示すように、蒸発パイプ51の出口部51b近傍に1つの冷媒温度センサ72が取り付けられている。なお、蒸発パイプ51の出口部51bとは、蒸発パイプ51の水から出た直後の部分を意味し、この出口部51b近傍に、冷媒温度センサ72が1つ取り付けられている。この冷媒温度センサ72は、制御部60に接続されており、蒸発パイプ51の出口側(下流側)における冷媒温度(出口冷媒温度)Teを検出する機能を有している。この冷媒温度センサ72により検出された蒸発パイプ51の出口冷媒温度Teに基づいてステッピングモータ40aがパルス制御されて電子膨張弁40の開度が調整されることにより、蒸発パイプ51の出口部51bにおいて冷媒の過熱度が略0度になるように構成されている。なお、冷媒温度センサ72は、本発明の「冷媒温度検出部」の一例であり、出口冷媒温度Teは、本発明の「蒸発器の下流側の冷媒温度」の一例である。
また、本実施形態による冷却装置100では、蒸発器50(蒸発パイプ51)の熱交換器仕様、電子膨張弁40の開度(流量特性)および冷却ユニット70への冷媒封入量などに基づいて、出口冷媒温度Teの変化率(時間変化率)から蒸発器50の出口における過熱度が把握可能であるように構成されている。したがって、本実施形態では、蒸発器50の入口における冷媒温度を検出しなくても、出口冷媒温度Teの変化率から過熱度が把握可能である。なお、この電子膨張弁40の開度制御に関しては、後に詳細に説明する。
また、冷却装置100の制御的な構成としては、図3に示すように、CPUからなる制御部60に加えて、ROM61およびRAM62が設けられている。制御部60は、周囲温度センサ71、冷媒温度センサ72、水槽本体81(図2参照)の水温センサ91およびアイスバンクセンサ92からの入力信号に基づいて所定の判断を行い、冷却ユニット70(図1参照)を構成する圧縮機10、送風機21、電子膨張弁40、および、冷却水槽80(図2参照)の攪拌機82(図2参照)などの各種機能部品を適切に駆動する制御を行うように構成されている。
また、ROM61には、制御部60が実行する制御プログラムに加えて、後述する第1開度制御テーブル101(図5参照)および第2開度制御テーブル102(図6参照)などが格納されている。RAM62は、制御プログラムが実行される際に用いられる制御上のパラメータ(周囲温度Ta、出口冷媒温度Teおよび電子膨張弁40の開度(パルス数)などの履歴)を一時的に保存する作業用メモリとして用いられる。
ここで、本実施形態では、冷却運転時には制御部60(図3参照)の指令に基づいて以下のような電子膨張弁40の開度制御が行われるように構成されている。
具体的には、図4には、蒸発パイプ51の周囲にアイスバンク(氷塊)のない状態から所定量のアイスバンクを形成する冷却運転時(プルダウン運転時)の開度制御パターンの一例が示されている。本実施形態のプルダウン運転では、運転開始時の電子膨張弁40の開度は全開の状態であるとする。そして、時間t0において貯留水の冷却運転が開始された場合、まず、Δt1時間が経過した時間t1において、周囲温度センサ71(図1参照)により検出された運転開始時の周囲温度Taに基づいて、電子膨張弁40の開度を全開から初期開度V1に変更する。
そして、時間t1以降では、蒸発パイプ51の出口冷媒温度Teの変化率Xに基づいて、電子膨張弁40の開度を調整する制御を開始する。ここで、変化率Xは、現在の出口冷媒温度Te(Te1)と、Δt2時間後に取得された出口冷媒温度Te(Te2)との差分をΔt2時間で除した値(X=(Te2−Te1)/Δt2)として算出される。すなわち、時間経過とともに出口冷媒温度Teが温度低下方向に推移する場合、変化率Xはマイナス値(負の値)で算出され、時間経過とともに出口冷媒温度Teが温度上昇方向に推移する場合、変化率Xはプラス値(正の値)で算出される。
本実施形態では、出口冷媒温度Teの変化率Xの大きさに基づいて、電子膨張弁40の開度の制御が行われる。すなわち、変化率X(グラフの傾き)が温度低下方向(マイナス値)でかつ変化率Xの絶対値がα以上である場合(以下、X≦−αで表す)には、電子膨張弁40の開度を徐々に減少させていく第1開度制御を開始する。また、変化率X(グラフの傾き)が温度上昇方向(プラス値)でかつ変化率Xの絶対値がβ以上である場合(以下、X≧+βで表す)には、第1開度制御が開始されているか否かに関係なく、電子膨張弁40の開度を増加させる第2開度制御を、その都度、単発的に行う。なお、変化率Xがマイナス値の場合の絶対値としてのαは、本発明の「第1しきい値」の一例であり、変化率Xがプラス値の場合の絶対値としてのβは、本発明の「第2しきい値」の一例である。
図4においては、運転開始(時間t0)とともに出口冷媒温度Teは低下し始める。また、時間t1において電子膨張弁40の開度を全開から初期開度V1に変更した後も、出口冷媒温度Teが低下するとともに水槽本体81内の水温も低下する。次第に、蒸発パイプ51の表面近傍の水が薄氷となって蒸発パイプ51に着氷し始める。この時、出口冷媒温度Teの低下(蒸発温度の低下)とともに初期開度V1では十分に蒸発し切らない冷媒が蒸発パイプ51に流れ過ぎる状況が生じ始める。また、蒸発パイプ51に着氷した氷は水と比較して熱抵抗が非常に大きいので蒸発パイプ51の伝熱特性が低下して管内の冷媒の蒸発量(冷媒と水(氷)との熱交換量)も低下する。そして、出口冷媒温度Teの変化率XがX≦−αとなった時点(時間t2)で、電子膨張弁40の開度を減少させる第1開度制御が開始されることにより、電子膨張弁40の開度が初期開度V1から所定量だけ減少されて(絞られて)開度V2(V1>V2)に変更される。これにより、冷媒が流れ過ぎていた状態が次第に緩和されて(冷媒流量が減らされて)過熱度が得られる方向に蒸発パイプ51の状態が戻される。なお、時間t2以降も変化率Xが算出され、Δt3時間(Δt3>Δt2)毎に後述する第1開度制御テーブル101(図5参照)に基づいて第1開度制御が継続され、電子膨張弁40の開度が開度V2からさらに開度V3および開度V4(V2>V3>V4)へと徐々に減少される。
これにより、出口冷媒温度Teの変化は、温度上昇方向(グラフ右上がりの状態)に転じ始めるとともに、次第に温度上昇方向の変化が顕著となり、蒸発パイプ51における過熱度が所定量を超えた状態にまで進む。そして、出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βとなった時点(時間t3)で、後述する第2開度制御テーブル102(図6参照)に基づいて、電子膨張弁40の開度を増加させる第2開度制御(時間t3において一度だけ)が実行されることにより、それまで継続されていた第1開度制御は中止されて電子膨張弁40の開度が開度V4から比較的多い所定量だけ増加されて開度V5(V4<V5)に変更される。すなわち、図4においては、開度V3と開度V4との差分(絶対値)よりも、開度V4と開度V5との差分(絶対値)が大きくなるように構成されている。これにより、電子膨張弁40の開度を増加させる際には、冷媒流量が大きく増やされるので、出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βの状態(過熱度が所定量を超えた状態)が直ちに緩和されて出口冷媒温度Teの変化は温度低下方向(グラフ右下がりの状態)に転じる。
そして、氷の成長に伴う蒸発パイプ51の温度低下とともに、蒸発の不十分な冷媒が蒸発パイプ51に流れ過ぎる状況が再び生じる。ここで、変化率Xの算出は継続されているので、出口冷媒温度Teの変化率Xが再びX≦−αとなった時点(時間t4)で、電子膨張弁40の開度を徐々に減少させていく第1開度制御が新たに開始(再開)される。これにより、電子膨張弁40の開度が開度V5から所定量だけ減少されて(絞られて)開度V6(V5>V6)に変更される。また、時間t4以降時間tfまでは、第1開度制御として、Δt3時間毎に第1開度制御テーブル101(図5参照)に基づいて、電子膨張弁40の開度が開度V6から開度V7、開度V8、開度V9…(V6>V7>V8>V9)へと徐々に減少される。そして、時間tfにおいて、成長したアイスバンクがアイスバンクセンサ92(図2参照)の電極間に到達したことがアイスバンクセンサ92により検出されることによって、プルダウン運転が停止される。本実施形態では、このようにして、電子膨張弁40の開度の調整(減少および増加)を行いながら出口冷媒温度Teを制御して、蒸発パイプ51での冷媒の過熱度が略0度になるように制御している。なお、図4には、本実施形態では検出していない蒸発パイプ51の入口側の冷媒温度(入口冷媒温度)の推移の推定値を2点鎖線で示している。
上記のように、図4に示したプルダウン運転時の開度制御の例では、時間t2で温度低下方向での変化率XがX≦−αとなり蒸発パイプ51(図2参照)内を冷媒が流れ過ぎていた状態が把握されたので、制御部60(図3参照)により、時間t2で直ちに第1開度制御が開始されて開度V2へと開度が減少され、さらに第1開度制御が継続されてΔt3時間の周期で開度V3および開度V4へと徐々に開度が減少されている。しかしながら、開度V4では反対に絞り過ぎであった(冷媒流量が少な過ぎた)ため、温度上昇方向での変化率XがX≧+βとなり、蒸発パイプ51内の過熱度が所定量を超えた状態であることが把握されたので、制御部60により第2開度制御を実行して開度V4から開度V5へと開度を一旦増加させて過剰な過熱度の状態を回避している。そして、開度V5が維持された状態では時間t4で温度低下方向での変化率Xが再びX≦−αとなり、蒸発パイプ51内を冷媒が流れ過ぎる状態が把握されたので、時間t4で第1開度制御を新たに開始して開度V6へと開度が減少されている。その後も第1開度制御を継続して、適正な過熱度が維持されながらΔt3時間の周期で開度が減少される(開度V6、開度V7、開度V8、開度V9…)とともに出口冷媒温度Teを徐々に低下させて蒸発パイプ51の温度を低下させていき、運転終了までの間、蒸発パイプ51全体にわたって略均一な温度を維持するような開度制御が実施されている。この結果、蒸発パイプ51の温度低下とともに形成されるアイスバンクは、蒸発パイプ51に片寄って着氷されることが抑制される。
ここで、第1開度制御テーブル101および第2開度制御テーブル102について詳細に説明する。
まず、図5に示した第1開度制御テーブル101について説明する。この第1開度制御テーブル101を用いて第1開度制御を開始するための条件(適用開始条件G1)としては、出口冷媒温度Teの変化率XがX≦−αとなったことが条件となっている。第1開度制御テーブル101には、電子膨張弁40の現在(制御時)の開度(パルス数)に応じて減少される開度の減少率(%)が個々に設定されている。具体的には、6つの開度(パルス数Ps)範囲(Ps≧301、201≦Ps≦300、121≦Ps≦200、81≦Ps≦120、61≦Ps≦80、Ps≦60)に区分された各々の状態おいて、A欄においては、減少率(%)は、−a1(%)、−a2(%)、−a3(%)、−a4(%)、−a5(%)および−a6(%)の6段階に設定されている。ここで、A欄内を縦方向に見た場合、a1が最も大きい値(減少率)であり、a6が最も小さい値(減少率)である。すなわち、現在の開度が相対的に小さい場合には減少率も相対的に小さく、現在の開度が相対的に大きい場合には減少率も相対的に大きくなるように設定されている。言い換えると、電子膨張弁40の開度が減少される場合、現在(制御時)の開度が小さくなるほど減少率(減少量)が小さくなるように構成されている。
なお、第1開度制御において開度を減少させる際の具体的な動作としては、たとえば、現在の開度が90パルスであるとすると、第1開度制御テーブル101のA欄に基づいて、開度減少量=90パルス×(a4)/100と算出される。したがって、ステッピングモータ40a(図1参照)は、90パルス×(a4)/100だけ電子膨張弁40を絞る(閉じる)方向に駆動される。また、第1開度制御テーブル101には、A欄に加えて、B欄およびC欄が設けられており、第1開度制御を行う際の状況に応じて各欄のいずれかが適用される。
具体的には、運転開始後に、出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βである遷移条件G2を1回も満たしていない場合において、変化率XがX≦−αとなった際に電子膨張弁40の開度を減少させる第1開度制御を開始する場合には、開度に応じて−a1(%)〜−a6(%)で設定されているA欄の数値が適用される。図4においては、時間t2〜時間t3まで継続される第1開度制御にこのA欄の内容が適用される。また、出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βである遷移条件G2を1回満たして、かつ、現在の変化率XがX≦−αとなった際に第1開度制御を開始する場合には、開度に応じて−b1(%)〜−b6(%)で設定されているB欄の数値が適用される。図4においては、時間t4〜時間tf(運転終了)まで継続される第1開度制御にこのB欄の内容が適用される。同様に、出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βである状態を2回満たして、かつ、現在の変化率XがX≦−αとなった際に第1開度制御を開始する場合には、開度に応じて−c1(%)〜−c6(%)で設定されているC欄の数値が適用される。ここで、B欄(C欄)内を縦方向に見た場合、b1(c1)が各欄中最も大きい値(減少率)であり、b6(c6)が各欄中最も小さい値(減少率)である。
また、電子膨張弁40の開度を減少させる第1開度制御に関しては、上記した遷移条件G2を1回も満たさない(遷移条件G2を満たした回数が0回の)状態で第1開度制御を開始する場合(A欄)と、遷移条件G2を1回満たした状態で第1開度制御を開始する場合(B欄)と、遷移条件G2を2回満たした状態で第1開度制御を開始する場合(C欄)とでは、遷移条件G2を満たした回数が増加するにしたがって開度減少率(減少量)はより小さくなるように設定されている。すなわち、A〜C欄を横方向に見た場合においては、a1(a2〜a6)>b1(b2〜b6)>c1(c2〜c6)の関係を有している。
次に、図6に示した第2開度制御テーブル102について説明する。この第2開度制御テーブル102には、電子膨張弁40の現在(制御時)の開度(パルス数)に応じて増加される開度の増加率(%)が個々に設定されている。具体的には、D欄においては、増加率(%)は、開度に応じて、+d1(%)、+d2(%)、+d3(%)、+d4(%)、+d5(%)および+d6(%)の6段階に設定されている。ここで、D欄内を縦方向に見た場合、d1が最も大きい値(増加率)であり、d6が最も小さい値(増加率)である。すなわち、現在の開度が相対的に小さい場合には増加率も相対的に小さく、現在の開度が相対的に大きい場合には増加率も相対的に大きくなるように設定されている。なお、開度を増加させる際の具体的な動作としては、たとえば、現在の開度が70パルスであるとすると、第2開度制御テーブル102のD欄に基づいて、開度増加量=70パルス×(d5)/100と算出される。したがって、ステッピングモータ40a(図1参照)は、70パルス×(d5)/100だけ電子膨張弁40を開く方向に駆動される。
また、出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βである遷移条件G2(図4における時間t3の状態)を1回満たした場合に電子膨張弁40の開度を増加させる第2開度制御を行う場合には、開度に応じて+d1(%)〜+d6(%)で設定されているD欄の数値が適用される。また、出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βである遷移条件G2を2回満たして電子膨張弁40の開度を増加させる第2開度制御を行う場合には、開度に応じて+e1(%)〜+e6(%)で設定されているE欄の数値が適用される。同様に、出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βである遷移条件G2を3回満たして電子膨張弁40の開度を増加させる第2開度制御を行う場合には、開度に応じて+f1(%)〜+f6(%)で設定されているF欄の数値が適用される。ここで、E欄(F欄)内を縦方向に見た場合、e1(f1)が各欄中最も大きい値(増加率)であり、e6(f6)が各欄中最も小さい値(増加率)である。
また、上記した遷移条件G2を満たす回数が増加するにしたがって、開度増加率(増加量)はより小さくなるように設定されている。すなわち、D〜F欄を横方向に見た場合においては、d1(d2〜d6)>e1(e2〜e6)>f1(f2〜f6)の関係を有している。
また、上記電子膨張弁40の開度の変更制御を、図4に示したプルダウン運転時のみならず、待機状態においてアイスバンクが融解してその量が減少した場合に冷却運転が再開されるサイクル運転時(図7参照)にも用いることができる。
図7に示した本実施形態によるサイクル運転では、時間t0で冷却運転が開始される。そして、時間t1において、運転開始時の周囲温度Taに基づいて、電子膨張弁40が初期開度V1に変更される。その後、このサイクル運転では、出口冷媒温度Teの変化率XがX≦−αとなった時間t2で、第1開度制御テーブル101のA欄(図5参照)に基づいて電子膨張弁40の開度を徐々に減少させていく第1開度制御が開始されることにより、電子膨張弁40の開度が初期開度V1から開度V2(V1>V2)に変更される。さらに、Δt3時間後に、A欄に基づき電子膨張弁40の開度が開度V2から開度V3(V2>V3)に減少される。
そして、今度は、開度V3では絞り過ぎであったため出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βとなった時間t3で、第2開度制御テーブル102のD欄(図6参照)に基づいて電子膨張弁40の開度を増加させる第2開度制御が一度だけ実行されることにより、電子膨張弁40の開度が開度V3から開度V4(V3<V4)に変更される。そして、開度V4が維持された状態で、変化率Xが再びX≦−αとなった時間t4で、第1開度制御テーブル101のB欄(図5参照)に基づいて電子膨張弁40の開度を減少させる第1開度制御が新たに開始されることにより、電子膨張弁40の開度が開度V4から開度V5(V4>V5)に変更される。また、時間t4以降は、第1開度制御テーブル101のB欄に基づいて電子膨張弁40の開度を開度V5から開度V6、開度V7、開度V8…へとΔt3時間毎に徐々に減少させている。これにより、適正な過熱度を維持しながら出口冷媒温度Teを徐々に低下させて蒸発パイプ51の温度を低下させる。運転終了までの間、アイスバンクの不足分が補われる。そして、時間tfにおいて成長したアイスバンクがアイスバンクセンサ92(図2参照)に到達しアイスバンクセンサ92がオフ状態に切り換えられることによって、冷却運転が停止される。これにより、サイクル運転は終了する。
このように、図7に示したサイクル運転時の開度制御の例では、初期開度V1では開度が大きくて(絞り量が不足して)冷媒が過剰に流れており、時間t2で変化率XがX≦−αとなったことが把握されたので、制御部60(図3参照)により開度V2へと開度を減少させる第1開度制御が開始されて開度V2へと減少されるとともに、第1開度制御が継続されてΔt3時間後にさらに開度V3へと減少されている。しかしながら、開度V3では絞り過ぎであった(冷媒流量が少な過ぎた)ため変化率XがX≧+βとなり、蒸発パイプ51の過熱度が所定量を超えた状態であることが把握されたので、時間t3で第2開度制御が実行されて直ちに開度V4へと開度が増加されている。その後、再び、時間t4で変化率XがX≦−αとなったことが把握されたので、開度V5へと開度を減少させる第1開度制御が新たに開始されるとともに、さらに第1開度制御が継続されて、Δt3時間毎に、開度V6、開度V7、開度V8…へと減少されている。このようにして過剰な過熱度の状態からより適正な過熱度(略0度)が得られる方向に蒸発器50の状態を戻しつつ、徐々に開度を減少させて、運転終了までの間、蒸発パイプ51全体にわたって略均一な温度を維持するような開度制御が実施されている。この結果、不足分を補うためのアイスバンクの形成(サイクル運転)であっても、蒸発パイプ51に片寄って着氷されることが抑制される。
次に、図1〜図6および図8を参照して、本実施形態による冷却装置100によって冷却水の冷却運転(サイクル運転およびプルダウン運転)が行われる際の制御部60の開度制御処理フローについて説明する。
図8に示すように、まず、ステップS1では、制御部60(図3参照)により、運転開始要求があるか否かが判断されるとともに、運転開始要求があると判断されるまでこの処理が繰り返される。この運転開始要求は、図2に示されるようにアイスバンクがアイスバンクセンサ92の電極間にまで達していないことがアイスバンクセンサ92により検出されたことに基づいて「あり」と判断される。
ステップS1において運転開始要求ありと判断された場合、ステップS2において、図8に示すように、蒸発器50(図1参照)近傍の周囲温度(空気温度)Taが制御部60により取得される。すなわち、周囲温度センサ71(図1参照)により取得された現在(冷却運転開始時)の周囲温度Taが取得される。そして、取得した周囲温度Taに基づいて電子膨張弁40の初期開度V1が制御部60により決定される。なお、制御部60は、運転開始要求ありと判断した場合、図8に示した開度制御処理と並行して、圧縮機10(図1参照)およびガスクーラ20用の送風機21(図1参照)を起動する。
その後、ステップS3では、運転開始からΔt1時間が経過したか否かが判断されるとともに、Δt1時間が経過するまでこの判断が繰り返される。ステップS3においてΔt1時間が経過したと判断された場合には、ステップS4において、電子膨張弁40の開度が全開の状態から初期開度V1に変更される制御が行われる。すなわち、冷却運転停止状態(待機状態)では、電子膨張弁40の開度は全開に設定されており、その状態から運転が開始されると、全開の状態がΔt1時間だけ継続された後の時間t1において、初期開度V1に変更される。
そして、図8に示すように、ステップS5では、制御部60により、蒸発パイプ51の出口冷媒温度Te(Te1)が取得される。そして、ステップS6では、Δt2時間が経過したか否かが判断されるとともに、Δt2時間が経過するまでこの判断が繰り返される。ステップS6においてΔt2時間が経過したと判断された場合、ステップS7では、制御部60により、蒸発パイプ51の出口冷媒温度Te(Te2)が再度取得される。
そして、ステップS8では、出口冷媒温度Teの変化率Xが演算される。すなわち、制御部60により変化率X=((Te2−Te1)/Δt2)が算出される。
そして、ステップS9では、変化率XがX≦−αであるか否か(出口冷媒温度Teの急激な温度低下が発生したか否か)が判断される。そして、X≦−αであると判断された場合(「Yes」判定の場合)には、ステップS10において、電子膨張弁40の開度を所定量だけ減少させる。すなわち、ROM61(図3参照)に記憶された第1開度制御テーブル101(図5参照)を用いて、開度の減少率(減少量)が決定されて開度の変更制御が開始される。なお、ステップS10の処理を初めて行う(初めて第1開度制御が開始される)場合は、第1開度制御テーブル101のA欄の内容が適用される。
その後、ステップS11において、制御部60(図3参照)により、運転停止要求があるか否かが判断される。この運転停止要求は、アイスバンクが成長して電極間の水が氷結したことにより、アイスバンクセンサ92(図2参照)がオフ状態になったことに基づいて「あり」と判断される。ステップS11において、運転停止要求がありと判断されない場合は、ステップS12に進む。また、ステップS11において、運転停止要求があると判断された場合は、電子膨張弁40の開度制御が終了されるとともに、冷却運転が停止される。この場合、電子膨張弁40は、開度が全開の状態に変更されるとともに、圧縮機10および送風機21の駆動も停止される。
ステップS11が「No」判定の場合には、ステップS12において、制御部60により、蒸発パイプ51の出口冷媒温度Te(Te1)が取得される。そして、ステップS13では、Δt2時間が経過したか否かが判断されるとともに、Δt2時間が経過するまでこの判断が繰り返される。ステップS13においてΔt2時間が経過したと判断された場合、ステップS14では、制御部60により、蒸発パイプ51の出口冷媒温度Te(Te2)が再度取得される。
そして、ステップS15では、出口冷媒温度Teの変化率Xが演算される。すなわち、制御部60により変化率X=((Te2−Te1)/Δt2)が算出される。
そして、ステップS16では、変化率XがX≧+βであるか否か(出口冷媒温度Teの急激な温度上昇が発生したか否か)が判断される。そして、X≧+βであると判断された場合(「Yes」判定の場合)には、ステップS17において、電子膨張弁40の開度を比較的多い所定量だけ増加させる第2開度制御が実行される。すなわち、ROM61(図3参照)に記憶された第2開度制御テーブル102(図6参照)を用いて、開度の増加率(増加量)が決定されて開度が変更される。なお、ステップS17の処理を初めて行う(初めて第2開度制御が実行される)場合には、第2開度制御テーブル102のD欄の内容が適用される。
また、ステップS16において、X≧+βでないと判断された場合(「No」判定の場合)には、ステップS18において、Δt3時間が経過したか否かが判断される。Δt3時間が経過していない場合(「No」判定の場合)には、ステップS12に戻り、以降同様の処理を繰り返す。
また、ステップS16が「No」判定で、かつ、ステップS18において、Δt3時間が経過したと判断された場合(「Yes」判定の場合)には、ステップS10に移行して電子膨張弁40の開度を所定量だけ減少させる。すなわち、第1開度制御は継続された状態であり、第1開度制御テーブル101(図5参照)を用いて、開度の減少率(減少量)が決定されて開度の変更がもう一度実行される。そして、再び、ステップS11〜S18の処理が繰り返され、この間、ステップS16が「Yes」判定となるまで第1開度制御は継続される。なお、第1開度制御において、第1開度制御テーブル101内のA欄、B欄およびC欄のいずれが適用されるかは、ステップS16における「Yes」判定を受けてステップS17を割り込み実行した回数(遷移条件G2を満たした回数)に応じて決定される。
また、ステップS18の「No」判定に基づきステップS12〜S18の処理が繰り返される間に、出口冷媒温度Teが急激に上昇(X≧+β)してステップS16において「Yes」判定となった場合は、Δt3時間の経過を待つことなく直ちにステップS17の処理が割り込み実行される。すなわち、それまで継続されていた第1開度制御は中止されて第2開度制御が単発的に(一度だけ)実行される。
また、上述のステップS9において、変化率XがX≦−αでない(出口冷媒温度Teの急激な温度低下が発生していない)と判断された場合にも、ステップS19において、変化率XがX≧+βであるか否か(出口冷媒温度Teの急激な温度上昇が発生したか否か)が判断される。そして、X≧+βであると判断された場合(「Yes」判定の場合)には、上記したステップS17へと処理が移行される。また、ステップS19において、X≧+βでない(この場合、変化率Xは、−α<X<+βである)と判断された場合(「No」判定の場合)には、ステップS5に移行し、以降同様の処理を繰り返す。
なお、ステップS9およびステップS19が共に「No」判定である(変化率Xは、−α<X<+βである状態)ことによって、ステップS5〜S9およびS19の処理を繰り返す場合、電子膨張弁40の開度は、最後に開度制御が行われた際の開度が維持されることになる。すなわち、本制御フロー(冷却運転)が開始されてステップS9が初めて「Yes」判定になるまでの間、開度が初期開度V1に維持される状態(図4における時間t1〜t2までの運転状態)がこの処理ループに該当する。また、ステップS17において電子膨張弁40の開度を増加させた(第2開度制御の割り込み実行)後、その後のステップS9およびステップS19が共に「No」判定である(変化率Xが−α<X<+βである)運転状態(図4における時間t3〜t4までの第2開度制御後の開度が維持される運転状態)もこの処理ループに該当する。この場合、出口冷媒温度Teの変化率Xの推移に応じてステップS9において「Yes」判定が下された際(図4における時間t4)に、第1開度制御が新たに開始される。
また、ステップS17が実行された後、ステップS20において、制御部60(図3参照)により、運転停止要求があるか否かが判断される。ステップS20において、運転停止要求がありと判断されない場合は、ステップS5に戻り、以降同様の処理を繰り返す。
また、ステップS20において、運転停止要求があると判断された場合は、電子膨張弁40の開度制御が終了されるとともに、冷却運転が停止される。冷却装置100では、上記のような電子膨張弁40の開度制御により冷却ユニット70が運転されるとともに冷却水槽80においてアイスバンクが形成される。
本実施形態では、上記のように、蒸発器50の出口冷媒温度Teを検出する冷媒温度センサ72を設けるとともに、制御部60を、冷媒温度センサ72により検出された蒸発器50(蒸発パイプ51)の下流側の出口冷媒温度Teの変化率Xに基づいて、電子膨張弁40の開度を制御するように構成している。これにより、1つの冷媒温度センサ72により検出された蒸発パイプ51の下流側の出口冷媒温度Teを用いて冷媒温度の変化率Xを演算することができるので、2つの冷媒温度検出部を用いる場合に比べて、冷媒温度センサ72の検出値(絶対値)のばらつきの影響を小さくすることができる。これにより、出口冷媒温度Teの変化率に基づき把握される過熱度が、実際の過熱度から大きくずれるのを抑制することができるので、蒸発パイプ51が均一に冷却されているか否かを正確に判断することができる。その結果、蒸発パイプ51全体にわたって略均一な温度を維持するような開度制御を行うことができるので、蒸発パイプ51に片寄って着氷されるのを抑制することができる。また、出口冷媒温度Teの変化率Xを演算するための冷媒の温度は、1つの冷媒温度センサ72により検出された蒸発パイプ51の下流側の検出値を用いればよいので、2つの冷媒温度検出部を設ける必要がない。これにより、制御部60を含めた冷却ユニット70の装置構成を簡素化することができる。
また、本実施形態では、蒸発器50は、冷却水槽80内に配置され、蒸発パイプ51の周囲にアイスバンク(氷塊)を形成して冷却水槽80内の水を冷却するように構成されている。そして、制御部60により、冷媒温度センサ72により検出された蒸発パイプ51の出口冷媒温度Teの変化率Xに基づいて、過熱度が略0度になるように電子膨張弁40の開度を制御するように構成する。これにより、冷却水槽80内の水を蒸発パイプ51(蒸発器50)の周囲に形成したアイスバンク(氷塊)により冷却する構成において、蒸発パイプ51の下流側の出口冷媒温度Teの変化率Xに基づいて、蒸発パイプ51の入口部51aから出口部51bまでの冷媒温度が略等しい(過熱度が略0度の)状態になるように電子膨張弁40の開度制御を行うことができるので、蒸発パイプ51の入口部51a側と出口部51b側とでの着氷状態に片寄りが生じることを抑制することができる。
また、本実施形態では、制御部60により、蒸発パイプ51の出口冷媒温度Teの変化率XがX≦−αである場合に、電子膨張弁40の開度を減少させる第1開度制御と、蒸発パイプ51の出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βである場合に、電子膨張弁40の開度を増加させる第2開度制御とを行うように構成する。これにより、蒸発パイプ51の出口冷媒温度Teの変化率XがX≦−αである場合には、蒸発パイプ51が均一に冷却されているものの冷媒が適正な流量を上回って蒸発パイプ51内を流れていると判断して、電子膨張弁40の開度を減少させる第1開度制御を行うことにより、冷媒の蒸発パイプ51への流れ過ぎを抑制し、かつ、圧縮機10への液戻りを抑制することができる。また、蒸発パイプ51の出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βである場合には、冷媒の蒸発パイプ51への流れ過ぎは生じていないものの蒸発パイプ51が均一に冷却されていない(過熱度が大き過ぎる)と判断して、電子膨張弁40の開度を増加させる第2開度制御を行うことにより、蒸発パイプ51全体が均一に冷却される方向(片寄った氷が形成されるのを抑制する方向)に制御することができる。また、この第1開度制御と第2開度制御とを組み合わせることにより、蒸発パイプ51内の冷媒流量を適切な範囲に制御するとともに圧縮機10への液戻りを抑制しながら、蒸発パイプ51に片寄った氷が形成されることを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、制御部60により、第1開度制御を行う際の電子膨張弁40の開度が小さくなるほど、電子膨張弁40の開度の減少率を小さく(減少量を少なく)するように構成する。これにより、電子膨張弁40が絞られて開度が閉じた状態に近づくほど、1回の開度減少量(電子膨張弁40の絞り量)をより少なく設定することができる。すなわち、電子膨張弁40の開度が相対的に小さい範囲(電子膨張弁40の絞りがきつい状態)においては第1開度制御における1回の開度減少量がより少なく抑えられるので、過度な絞りに起因して出口冷媒温度Teが急激に上昇する(過熱度が急激に大きくなる)ことを回避することができる。
また、本実施形態では、制御部60により、第1開度制御を行う際に、電子膨張弁40の開度を所定の時間間隔(Δt3)で徐々に減少するように構成する。これにより、第1開度制御において、電子膨張弁40の開度が急激に小さくなる(急激に絞られる)のを抑制することができるので、急激な絞りに起因して蒸発パイプ51の出口冷媒温度Teが急激に上昇する(過熱度が急激に大きくなる)ことを回避することができる。
また、本実施形態では、制御部60により、第1開度制御を行う際に、蒸発パイプ51の出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βになったことに基づいて第2開度制御が行われた回数が増加するほど、電子膨張弁40の開度の減少量を少なくするように構成する。つまり、第1開度制御テーブル101(図5参照)においては、遷移条件G2を満たさない状態から満たす回数(変化率XがX≧+βになった回数)が増加するほど、第1開度制御を行う際の減少率(減少量)の参照先がA欄からB欄、B欄からC欄へと移動しながら開度減少率(減少量)がより小さくなるように設定されている。ここで、第1開度制御により複数回開度を減少させた後、第2開度制御により1回開度を増加させる制御が繰り返されるような場合(図9(後述)参照)には、第2開度制御を行った回数(蒸発パイプ51の出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βになった回数)が増加するほど、第1開度制御による開度減少制御がより進行して開度が小さくなっているので、この場合に、電子膨張弁40の開度減少量を少なくすることにより、電子膨張弁40の開度が小さくなった状態において第1開度制御における1回の開度減少量をより少なくすることができる。これによっても、過度な絞りに起因する蒸発パイプ51の出口冷媒温度Teの急激な上昇を回避することができる。
また、本実施形態では、制御部60により、第2開度制御において、第1開度制御時の1回の減少率(減少量)の絶対値よりも大きい増加率(増加量)で電子膨張弁40の開度を増加させるように構成する。これにより、出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βの状態(過熱度が所定値を超えて得られた状態)を直ちに緩和することができる。すなわち、蒸発器50において電子膨張弁40の絞り過ぎに起因して出口冷媒温度Teが不均一となる状態(蒸発パイプ51の入口部51aと出口部51bとで出口冷媒温度Teが顕著に異なる状態)を迅速に解消することができるので、蒸発器50の過熱度が大きくなることに起因して蒸発パイプ51に片寄った氷が形成されるのを有効に抑制することができる。
また、本実施形態では、冷媒に二酸化炭素を用いている。これにより、フロン系冷媒と異なりオゾン層を破壊せず、かつ、低温室効果ガスとして地球環境に対する影響が少ない冷却装置100を提供することができる。
(第1変形例)
次に、図5、図6および図9を参照して、上記実施形態の第1変形例について説明する。この第1変形例では、上記実施形態において例示したプルダウン運転(図4参照)の場合と異なる運転状態のもとでプルダウン運転が行われた場合の制御パターンについて説明する。すなわち、図9に示した第1変形例によるプルダウン運転の場合、運転開始後、変化率Xに基づいて電子膨張弁40の開度を減少させる第1開度制御と、変化率Xに基づいて電子膨張弁40の開度を増加させる第2開度制御とを交互に2回繰り返し、その後、第1開度制御に基づいて開度を減少させている。
図9に示した第1変形例によるプルダウン運転では、時間t0での運転開始後、時間t1で電子膨張弁40の開度が初期開度V1に変更される。そして、出口冷媒温度Teの変化率XがX≦−αとなった時間t2で、第1開度制御テーブル101のA欄(図5参照)に基づいて電子膨張弁40の開度を開度V2に減少する第1開度制御が開始され、その後、第1開度制御の継続とともにΔt3時間毎にA欄に基づき2回分開度が減少されて開度V3まで絞られる。ここで、開度V3では絞り過ぎであった(変化率XがX≧+βとなった)ため、時間t3で、第2開度制御テーブル102のD欄(図6参照)に基づいて、一旦、電子膨張弁40の開度を開度V4に増加する第2開度制御が行われる(割り込み実行される)。しかしながら、この開度V4で運転を継続した結果、再び、出口冷媒温度Teの変化率XがX≦−αとなったため、時間t4で、電子膨張弁40の開度を開度V5に減少する第1開度制御が第1開度制御テーブル101のB欄(図5参照)に基づいて新たに開始されるとともに、さらに第1開度制御が継続されて、Δt3時間後に、1回分、開度が減少されて開度V6まで絞られる。
ここで、開度V6では再び絞り過ぎであった(変化率XがX≧+βとなった)ため、時間t5で、第2開度制御テーブル102のE欄(図6参照)に基づき、一旦、電子膨張弁40の開度を開度V7に増加する第2開度制御が行われる(割り込み実行される)。この開度V7で運転を継続した結果、再び、出口冷媒温度Teの変化率XがX≦−αとなったため、時間t6で、電子膨張弁40の開度を開度V8に減少する第1開度制御が第1開度制御テーブル101のC欄(図5参照)に基づいて新たに開始され、その後は、出口冷媒温度Teの温度上昇傾向には至らず、蒸発パイプ51での冷媒の過熱度が略0度になるように開度制御が行われる。すなわち、第1開度制御テーブル101のC欄に基づいて、電子膨張弁40の開度が開度V8から徐々に減少される第1開度制御が時間t6以降継続されて、時間tfまで冷却運転が継続される。そして、時間tfにおいて、成長したアイスバンクがアイスバンクセンサ92の電極間に到達したため冷却運転が停止されてプルダウン運転が終了されている。
(第2変形例)
次に、図5および図10を参照して、上記実施形態の第2変形例について説明する。この第2変形例では、上記実施形態および第1変形例において例示したプルダウン運転(図4および図9参照)の場合と異なる運転状態のもとでプルダウン運転が行われた場合の制御パターンについて説明する。
図10に示した第2変形例によるプルダウン運転では、時間t0で冷却運転が開始される。そして、時間t1において、運転開始時の周囲温度Taに基づいて、電子膨張弁40の開度が初期開度V1に変更される。そして、出口冷媒温度Teの変化率XがX≦−αとなった時間t2で、第1開度制御テーブル101のA欄(図5参照)に基づき電子膨張弁40の開度が初期開度V1から開度V2(V1>V2)に減少される第1開度制御が開始される。なお、このプルダウン運転では、開度V2が適切な大きさ(絞り量)であるため、その後の出口冷媒温度Teの温度上昇傾向には至らず、温度低下方向の変化率を継続する出口冷媒温度Teは、変化率Xが−α<X<0である状態が維持される。すなわち、第1開度制御テーブル101のA欄のみに基づいて、蒸発パイプ51での冷媒の過熱度が略0度になるように電子膨張弁40の開度が開度V2から徐々に減少される第1開度制御が時間t2以降継続されて時間tfまで冷却運転が継続される。時間tfにおいて、成長したアイスバンクがアイスバンクセンサ92の電極間に到達したため冷却運転が停止されてプルダウン運転が終了されている。
このように、図10に示した第2変形例によるプルダウン運転時の開度制御の例では、時間t2において電子膨張弁40の開度を減少させる第1開度制御が1回だけ開始されて運転終了まで継続されている。このような場合でも、冷媒が流れ過ぎていた状態からより適正な過熱度(略0度)が得られる方向に蒸発器50の状態が戻されて、運転終了までの間、蒸発パイプ51全体に亘って略均一な温度を維持するような開度制御が実施される。この結果、形成されるアイスバンクは、蒸発パイプ51に片寄って着氷されることが抑制される。
(第3変形例)
次に、図5、図6および図11を参照して、上記実施形態の第3変形例について説明する。この第3変形例では、上記実施形態において例示したサイクル運転(図7参照)の場合と異なる運転状態のもとでサイクル運転が行われた場合の制御パターンについて説明する。
図11に示した第3変形例によるサイクル運転では、時間t0で冷却運転が開始される。そして、時間t1において、運転開始時の周囲温度Taに基づいて、電子膨張弁40が初期開度V1に変更される。その後、このサイクル運転では、出口冷媒温度Teの変化率XがX≧+βとなった時間t2で、第2開度制御テーブル102のD欄(図6参照)に基づき電子膨張弁40の開度が初期開度V1から開度V2(V1<V2)に増加される第2開度制御がまず行われる。しかしながら、開度V2では開き過ぎ(冷媒が流れ過ぎる状態)であったため、出口冷媒温度Teの変化率XがX≦−αとなった時間t3では、第1開度制御テーブル101のB欄(図5参照)に基づいて電子膨張弁40の開度を開度V2から開度V3(V2>V3)に減少させる第1開度制御が初めて開始される。また、時間t3以降は、第1開度制御テーブル101のB欄に基づいて、蒸発パイプ51での冷媒の過熱度が略0度になるように開度制御が継続的に行われる。すなわち、電子膨張弁40の開度が開度V3から徐々に減少される第1開度制御が継続されて時間tfまで冷却運転が継続される。時間tfにおいて、アイスバンクの不足分が完全に補われたので、冷却運転が停止されてサイクル運転が終了されている。
このように、図11に示した第3変形例によるサイクル運転時の開度制御の例では、初期開度V1では絞り過ぎの状態であったため、まず、第2開度制御テーブル102に基づいて電子膨張弁40の開度を増加させる第2開度制御が実行され、その後、第1開度制御テーブル101に基づいて電子膨張弁40の開度を減少させる第1開度制御が初めて実行され運転終了まで継続されている。このようにしても、運転終了までの間、蒸発パイプ51全体に亘って略均一な温度を維持するような開度制御が実施されるので、形成されるアイスバンクは、蒸発パイプ51に片寄って着氷されることが抑制される。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、コールド飲料を供給/販売する飲料ディスペンサやカップ式自動販売機などに搭載される冷却装置100に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、飲料ディスペンサやカップ式自動販売機以外の、アイスバンクの蓄熱を利用して冷却水を供給可能な他の機器に組み込まれるような冷却装置に本発明を適用してもよいし、単体で設置される冷却装置に本発明を適用してもよい。
また、上記実施形態では、第1開度制御テーブル101および第2開度制御テーブル102を用いて本発明の開度制御における変化率Xに基づく開度の増減値を決定した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1開度制御テーブル101および第2開度制御テーブル102を用いずに演算により変化率Xに基づく開度の増減値を決定してもよい。
また、上記実施形態では、第1開度制御を行うための第1開度制御テーブル101、および第2開度制御を行うための第2開度制御テーブル102においては、それぞれ、減少または増加される開度の減少率(%)が電子膨張弁40の現在の開度(パルス数)に応じて6段階に設定された例について示したが、本発明はこれに限られない。減少または増加される開度の減少率(%)は、電子膨張弁40の現在の開度に応じて6段階以外の範囲に区分されて設定されていてもよい。
また、上記実施形態では、第1開度制御テーブル101および第2開度制御テーブル102において、それぞれ、開度の減少率(%)および開度の増加率(%)を用いて開度を減少および増加する量を決定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1開度制御テーブル101および第2開度制御テーブル102において、開度の減少率(%)および開度の増加率(%)に代えて、開度を減少するパルス数および開度を増加するパルス数を用いて開度を減少および増加する量を決定するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、冷媒温度センサ72を蒸発パイプ51の出口部51b近傍に取り付けて蒸発器50の出口冷媒温度Teを検出する例について示したが、本発明はこれに限られない。蒸発器50の出口部51bと内部熱交換器30との間の冷媒配管5dの部分(蒸発器50の下流側の部分)であれば、冷媒温度センサ72を出口部51bからやや離れた位置に取り付けてもよい。但し、冷媒温度センサ72を蒸発パイプ51の出口部51b近傍に取り付ける方が蒸発パイプ51の出口部51bの温度をより正確に検出することができるので好ましい。
また、上記実施形態では、冷却ユニット70に内部熱交換器30を設けた例について示したが、本発明はこれに限られない。内部熱交換器30が設けられていない冷却ユニットを備えた冷却装置に本発明を適用してもよい。
また、上記実施形態では、1段式の圧縮機10を用いて冷却ユニット70を構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。多段式の圧縮機が搭載された冷却装置に本発明を適用してもよい。また、圧縮機は、レシプロ式圧縮機、ロータリ式圧縮機、スクロール式圧縮機およびスクリュ式圧縮機などのいずれであってもよい。また、圧縮機は、容量制御方式であっても一定速型でもかまわない。
また、上記実施形態では、二酸化炭素冷媒を用いて冷却ユニット70を動作させる例について示したが、本発明はこれに限られない。二酸化炭素冷媒以外の他の自然冷媒を使用してもよいし、オゾン層破壊係数がゼロの代替フロン冷媒を使用してもよい。この場合、使用する冷媒に応じて、第1開度制御テーブル101および第2開度制御テーブル102に規定された電子膨張弁40の開度の増減率(増減量)は、適宜変更される。
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部60の開度制御処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部60の開度制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。