以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、コンテナ用冷凍装置(10)は、図示しないコンテナの庫内を冷却するものであり、冷媒回路(20)を備えている。そして、上記コンテナ用冷凍装置(10)は、コンテナ本体の1つの開口面を閉塞する蓋体を兼用している。
上記冷媒回路(20)は、主回路(21)とデフロスト用のホットガスバイパス路(22)と冷媒過冷却用の過冷却バイパス路(23)とを備えている。
上記主回路(21)は、圧縮機(30)と凝縮器(31)と膨張機構である電動式の主膨張弁(32)と蒸発器(33)とが順に冷媒配管(34)によって直列に接続されて構成されている。そして、上記圧縮機(30)は、図示しないが、回転数がインバータによって制御され、回転数が多段階に制御されて運転容量が可変に構成されている。また、上記凝縮器(31)には、庫外ファン(35)が設けられる一方、蒸発器(33)には、庫内ファン(36)が設けられている。該庫内ファン(36)は、蒸発器(33)で冷却された冷却空気を庫内に供給するように構成されている。
上記圧縮機(30)の吐出側には、油分離器(40)が設けられ、該油分離器(40)と凝縮器(31)との間に吐出圧力調整弁(38)が設けられている。また、上記凝縮器(31)と主膨張弁(32)との間には、レシーバ(41)と電気機器用の冷却器(42)とドライヤ(43)とプレート熱交換器(44)とが順に設けられている。上記油分離器(40)の油戻し管(40a)は、過冷却バイパス路(23)に接続されている。上記冷却器(42)は、インバータのパワー素子などの電気機器を冷却するように構成され、例えば、プリント基板の背面等に設けられ、凝縮器(31)を流れた高圧液冷媒によって電気機器を冷却している。上記ドライヤ(43)は、凝縮器(31)を流れた液冷媒から水分を除去するように構成されている。
上記プレート熱交換器(44)は、凝縮器(31)を流れた液冷媒を過冷却するものであり、1次側通路(45)と2次側通路(46)とを備えている。そして、上記1次側通路(45)が主回路(21)に接続され、上記2次側通路(46)が過冷却バイパス路(23)に接続されている。該過冷却バイパス路(23)の流入端は、冷却器(42)とドライヤ(43)との間の冷媒配管(34)に接続され、上記過冷却バイパス路(23)の流出端は、圧縮機(30)における中間圧力状態の圧縮室に接続されている。
さらに、上記過冷却バイパス路(23)の流入側には、第1開閉弁(47)と膨張機構である電動式の過冷却膨張弁(48)が設けられている。上記第1開閉弁(47)に対応して、主回路(21)には、過冷却バイパス路(23)の分岐部とドライヤ(43)との間に第2開閉弁(49)が設けられている。
そして、上記プレート熱交換器(44)は、主回路(21)から過冷却バイパス路(23)に分岐され且つ過冷却膨張弁(48)で減圧された冷媒と主回路(21)を流れる冷媒とが熱交換して主回路(21)を流れる冷媒を過冷却するように構成されている。
上記ホットガスバイパス路(22)は、共通路(50)と、該共通路(50)から分岐された第1バイパス路(51)及び第2バイパス路(52)とを備えている。上記共通路(50)は、流入端が油分離器(40)と吐出圧力調整弁(38)との間に接続され、第3開閉弁(53)が設けられている。上記第1バイパス路(51)と第2バイパス路(52)の流出端は、主膨張弁(32)と蒸発器(33)との間に接続され、上記第2バイパス路(52)には、蒸発器(33)の下部に配置されたドレンパンを加熱するためのドレンパンヒータ(54)設けられている。
上記ホットガスバイパス路(22)は、蒸発器(33)がフロストした際のデフロスト運転時に、圧縮機(30)から吐出された高温高圧のガス冷媒を蒸発器(33)に供給するように構成されている。上記第2バイパス路(52)には、デフロスト運転時にドレンパンを加熱するように構成されている。
次に、上記冷媒回路(20)に設けられたセンサ類について説明する。
上記圧縮機(30)の吐出側と吸入側とには、該圧縮機(30)の吐出ガス圧力を検出する高圧圧力センサ(60)と高圧圧力スイッチ(61)とが設けられると共に、圧縮機(30)の吸入ガス圧力を検出する低圧圧力センサ(62)が設けられている。上記圧縮機(30)の吐出側と吸入側とには、冷媒温度を検出する吐出温度センサ(63)と吸入温度センサ(64)とが設けられている。
上記プレート熱交換器(44)の2次側通路(46)の流入側と流出側とには、冷媒温度を検出する流入温度センサ(65)と流出温度センサ(66)とが設けられている。
上記蒸発器(33)の流入側と流出側とには、冷媒温度を検出する流入温度センサ(67)と流出温度センサ(68)とが設けられている。
上記凝縮器には、凝縮器の吸込温度である外気温度を検出する外気温度センサ(69)が設けられている。また、上記蒸発器の空気吸込側と吹出側とには、吸込空気温度を検出する吸込温度センサ(70)と、吹出空気温度を検出する吹出温度センサ(71)とが設けられている。
また、上記コンテナ用冷凍装置(10)には、冷媒回路(20)を制御して冷却運転を制御するコントローラ(80)が設けられている。該コントローラ(80)には、高圧圧力センサ(60)等の信号が入力されると共に、冷却運転を制御するための制御基板と、上記圧縮機(30)のインバータを制御するためのインバータ制御基板等が設けられている。
上記コントローラ(80)は、冷却運転動作中の運転状態を判断する運転状態判断部(81)と、圧縮機(30)の回転数を制御する圧縮機制御部(82)と、主膨張弁(32)の開度を制御する主膨張弁制御部(83)と、過冷却膨張弁(48)の開度を制御する過冷却膨張弁制御部(84)とを備えている。
上記運転状態判断部(81)は、冷却運転動作中の運転状態を判断する。本実施形態では、運転状態として、4つの状態(起動、中間湿り、プルダウン、安定)を判断する。なお、本実施形態では、冷却運転において、運転開始から所定時間が経過するまでは起動運転が行われ、該起動運転終了後に本運転が実行される。起動運転実行中は、運転状態は起動状態となる。また、本運転の運転状態としては、通常状態と中間湿り状態とがあり、通常状態はさらにプルダウン状態(高負荷状態)と安定状態(低負荷状態)とに分けられている。以下、運転状態判断部(81)による各運転状態の判断動作について詳述する。
具体的には、図2に示すように、運転状態判断部(81)は、まず、ステップS1において、起動状態か否かを判定する。本実施形態では、運転状態判断部(81)は、圧縮機(30)の起動から10分以内、又は設定温度の変更による運転の変更(例えば、冷蔵モードから冷凍モードへの変更)から10分以内の場合に、ステップS2に進み、運転状態が起動状態であると判断する。運転状態判断部(81)は、ステップS2において運転状態が起動状態であると判断すると、判断を終了してステップS1に戻る。
上記ステップS1において上述の条件を満たさない場合、ステップS3に進み、運転状態判断部(81)は、プレート熱交換器(44)の2次側通路(46)の流出側の中間圧の冷媒が湿る所定の条件を満たす中間湿り状態か否かを判断する。本実施形態では、運転状態判断部(81)は、圧縮機(30)の吐出冷媒の過熱度が10℃未満且つプレート熱交換器(44)の2次側通路(46)の流出側の冷媒過熱度(以下、単に「中間過熱度(中間SH)」と称する。)が3℃未満である場合に、プレート熱交換器(44)の2次側通路(46)の流出側の中間圧の冷媒が湿る所定の条件を満たすと判断してステップS4に進み、運転状態が中間湿り状態であると判断する。上記運転状態判断部(81)は、ステップS4において運転状態が中間湿り状態であると判断すると、判断を終了してステップS1に戻る。
なお、本実施形態では、上記圧縮機(30)の吐出冷媒の過熱度は、吐出温度センサ(63)の検出値から高圧圧力センサ(60)が検出した高圧圧力に相当する飽和温度を減じることによって算出される。また、上記中間過熱度(中間SH)は、プレート熱交換器(44)の2次側通路(46)の流出側の冷媒温度から流入側の冷媒温度を減じた値であり、流出温度センサ(66)の検出値から流入温度センサ(65)の検出値を減じることによって算出される。
上記ステップS3において上述の条件を満たさない場合、ステップS5に進み、運転状態判断部(81)は、蒸発器(33)の冷却負荷が所定値以上であるプルダウン状態であるか否かを判断する。本実施形態では、運転状態判断部(81)は、庫内温度が設定温度範囲内でない(アウトレンジ)、又は庫内温度が設定温度範囲内になって(インレンジ)から20分以内、又はサーモONから10分以内、又はデフロスト運転終了から10分以内の場合に、蒸発器(33)の冷却負荷が所定値以上であると判断してステップS6に進み、運転状態がプルダウン状態であると判断する。運転状態判断部(81)は、ステップS6において運転状態がプルダウン状態であると判断すると、判断を終了してステップS1に戻る。
上記ステップS5において上述の条件を満たさない場合、運転状態判断部(81)は、蒸発器(33)の冷却負荷が所定値未満であると判断してステップS7に進み、運転状態判断部(81)は、運転状態が安定状態であると判断する。運転状態判断部(81)は、ステップS7において運転状態が安定状態であると判断すると、判断を終了してステップS1に戻る。
上記圧縮機制御部(82)は、庫内温度が一定となるように圧縮機(30)の回転数を制御する。本実施形態では、設定温度が−10.0℃以下の冷凍モードでは吸込温度センサ(70)の検出値を庫内温度とし、設定温度が−9.9℃以上の冷蔵モードでは吹出温度センサ(71)の検出値を庫内温度とする。
上記主膨張弁制御部(83)は、圧縮機(30)の吸入冷媒の過熱度(以下、単に「過熱度(SH)」と称する。)が所定の目標範囲内となるように主膨張弁(32)の開度を制御するように構成されている。なお、本実施形態では、上記圧縮機(30)の吸入冷媒の過熱度は、吸入温度センサ(64)の検出値から低圧圧力センサ(62)が検出した低圧圧力に相当する飽和温度を減じることによって算出される。また、上記過熱度(SH)の所定の目標範囲は、上記運転状態判断部(81)によって判断される運転状態に応じて変更されることとしてもよい。
上記過冷却膨張弁制御部(84)は、上記中間過熱度(中間SH)が所定の目標範囲内となるように過冷却膨張弁(48)の開度を制御するように構成されている。具体的には、上記過冷却膨張弁制御部(84)は、開度制御部(84a)と、目標範囲変更部(84b)と、制御速度変更部(84c)と、制御量変更部(84d)とを備えている。
上記開度制御部(84a)は、中間過熱度(中間SH)が所定の目標範囲内(L1≦中間SH≦H1)となるように過冷却膨張弁(48)の開度をフィードバック制御するように構成されている。
具体的には、図3に示すように、上記過冷却膨張弁制御部(84)の開度制御部(84a)は、ステップS11において、中間過熱度(中間SH)と所定の目標範囲の下限値L1との大小を比較し、「中間SH<L1」である状態が所定時間T1以上継続しているか否かを判定する。「中間SH<L1」である状態が所定時間T1以上継続している場合、過冷却膨張弁(48)の開度をP1だけ減少させる(ステップS12)。一方、「中間SH<L1」である状態が所定時間T1以上継続していない場合、中間過熱度(中間SH)と所定の目標範囲の上限値H1との大小を比較し、「中間SH>H1」である状態が所定時間T2以上継続しているか否かを判断する(ステップS13)。「中間SH>H1」である状態が所定時間T2以上継続している場合、過冷却膨張弁(48)の開度をP2だけ増大させる(ステップS14)。一方、「中間SH>H1」である状態が所定時間T2以上継続していない場合、過冷却膨張弁(48)の開度を維持する(ステップS15)。
上記開度制御部(84a)は、以上のS11〜S15のステップが繰り返されることにより、中間過熱度(中間SH)が所定範囲内(L1≦中間SH≦H1)となるように過冷却膨張弁(48)の開度を制御するように構成されている。
上記目標範囲変更部(84b)は、上記開度制御部(84a)によるフィードバック制御における中間過熱度(中間SH)の所定の目標範囲を上記運転状態判断部(81)によって判断される運転状態に応じて変更するように構成されている。
具体的には、図4に示すように、上記目標範囲変更部(84b)は、上記開度制御部(84a)によるフィードバック制御における中間過熱度(中間SH)の所定の目標範囲を、起動状態の場合には5℃以上15℃以下の範囲、プルダウン状態の場合には0℃以上10℃以下の範囲、中間湿り状態の場合には10℃以上15℃以下の範囲、安定状態の場合には3℃以上13℃の範囲に変更する。
運転開始直後の起動状態では、各制御機器の動作が安定せず、主回路(21)における冷媒の挙動が安定していないため、中間過熱度(中間SH)が安定しない。そのため、上記目標範囲変更部(84b)は、中間過熱度(中間SH)の目標範囲を比較的高い範囲に変更して過冷却膨張弁(48)を閉じ気味に制御する。これにより、2次側通路(46)を通過後の冷媒の湿りが防止され、圧縮機(30)の中間圧力状態の圧縮室に湿り気味の冷媒が導入されることによる液圧縮を回避することができる。なお、起動状態の中間過熱度(中間SH)の目標範囲の下限値が後述する中間湿り状態の目標範囲の下限値よりも低く設定されているのは、起動状態(起動運転)において、2次側通路(46)を通過後の冷媒の湿りを防止しつつ、液冷媒を過冷却できる程度に過冷却バイパス路(23)の冷媒流量を確保するためである。以上のように起動状態の中間過熱度(中間SH)の目標範囲を変更することにより、蒸発器(33)における冷却能力の増大を図りつつ冷媒の湿りも防止することができる。
また、上記目標範囲変更部(84b)は、起動運転(起動状態)終了後の本運転における運転状態が通常状態(プルダウン状態、安定状態)でなく中間湿り状態である場合には、中間過熱度(中間SH)の目標範囲を通常状態の際よりも高い範囲に変更する。これにより、過冷却膨張弁(48)の開度が減少し、中間過熱度(中間SH)が増大して該冷媒の湿り状態が回避されると共に過冷却バイパス路(23)の冷媒流量が減少する。よって、圧縮機(30)の中間圧力状態の圧縮室に湿り気味の冷媒が導入されて液圧縮してしまうことを抑制することができる。
ところで、本運転において、運転状態が通常状態であって蒸発器(33)の冷却負荷が所定値以上であるプルダウン状態である場合には必要となる蒸発器(33)の冷却能力が大きい。一方、運転状態が通常状態であって蒸発器(33)の冷却負荷が所定値未満である安定状態である場合には、蒸発器(33)で必要とされる冷却能力がプルダウン状態である場合に比べて各段に小さい。そのため、運転状態がプルダウン状態である場合と安定状態である場合とで中間過熱度(中間SH)が同程度になるように過冷却膨張弁(48)の開度を制御することとすると、プルダウン状態である場合に蒸発器(33)の冷却能力が不足する虞や、安定状態である場合に蒸発器(33)の冷却能力が過大になる虞がある。
そこで、上記目標範囲変更部(84b)は、起動運転(起動状態)の終了後の本運転において、運転状態がプルダウン状態である場合と安定状態である場合とで、開度制御部(84a)の中間過熱度(中間SH)の目標範囲を変更することとしている。具体的には、例えば、運転状態がプルダウン状態から安定状態に変わると、目標範囲変更部(84b)が中間過熱度(中間SH)の目標範囲をプルダウン状態に比べて高い範囲に変更する。これにより、過冷却膨張弁(48)の開度が減少して、プレート熱交換器(44)の2次側通路(46)に流入する冷媒流量が減少する。そのため、主回路(21)の液冷媒の冷却量が低減されて、不必要に蒸発器(33)の冷却能力が増大することを防止することができる。一方、運転状態が安定状態からプルダウン状態に変わると、目標範囲変更部(84b)が中間過熱度(中間SH)の目標範囲を安定状態に比べて低い範囲に変更する。これにより、過冷却膨張弁(48)の開度が増大して、プレート熱交換器(44)の2次側通路(46)に流入する冷媒流量が増加する。そのため、主回路(21)の液冷媒の冷却量が増大して、蒸発器(33)の冷却能力を増大させることができ、高い冷却能力で庫内を冷却することができる。このように目標範囲変更部(84b)によって中間過熱度(中間SH)の目標範囲を変更することにより、蒸発器(33)の冷却負荷に応じて、蒸発器(33)の冷却能力を調整することができる。従って、エネルギー効率を向上させることができる。
上記制御速度変更部(84c)は、上記開度制御部(84a)によるフィードバック制御における制御速度を上記運転状態判断部(81)によって判断される運転状態に応じて変更するように構成されている。
具体的には、図4に示すように、上記制御速度変更部(84c)は、上記開度制御部(84a)によるフィードバック制御(図3参照)のステップS11における判断時間(所定時間T1)及びステップS13における判断時間(所定時間T2)を変更することによって制御速度を変更する。より具体的には、各判断時間を短くすることで制御速度が増大する一方、各判断時間を長くすることで制御速度が低減される。上記制御速度変更部(84c)は、上記開度制御部(84a)の制御(図3参照)のステップS11における判断時間(所定時間T1)を、起動状態の場合には5秒、プルダウン状態の場合には60秒、中間湿り状態の場合には20秒、安定状態の場合には240秒に変更する一方、ステップS13における判断時間(所定時間T2)を、起動状態の場合には5秒、プルダウン状態の場合には60秒、中間湿り状態の場合には20秒、安定状態の場合には180秒に変更する。
上述のように、運転開始直後の起動状態では、各制御機器の動作が安定せず、主回路(21)における冷媒の挙動が安定していないため、中間過熱度(中間SH)が変化する速度が速い。そのため、上記開度制御部(84a)によるフィードバック制御の上記判断時間が長い、つまり制御速度が遅いと、中間過熱度(中間SH)が所定の目標範囲から大幅に外れてしまう虞がある。そこで、上記制御速度変更部(84c)は、運転開始直後の起動状態では、開度制御部(84a)の所定時間T1及び所定時間T2のそれぞれを最も短い判断時間である5秒に変更して制御速度を最も高い速度に変更する。これにより、中間過熱度(中間SH)の変化に対して、過冷却膨張弁(48)の開度制御が敏感に追従するため、中間過熱度(中間SH)を素早く所定の目標範囲内に収束させることができる。
また、上記制御速度変更部(84c)は、起動運転(起動状態)終了後の本運転における運転状態が通常状態(プルダウン状態、安定状態)でなく中間湿り状態である場合には、開度制御部(84a)の所定時間T1及び所定時間T2のそれぞれを通常状態の際よりも短い20秒に変更して制御速度を通常状態の際よりも高い速度に変更する。これにより、中間過熱度(中間SH)が早く増大して該冷媒の湿り状態が早く回避されると共に過冷却バイパス路(23)の冷媒流量が早く減少する。よって、圧縮機(30)の中間圧力状態の圧縮室に湿り気味の冷媒が導入されて液圧縮してしまうことを抑制することができる。
ところで、本運転において、運転状態がプルダウン状態である場合には、各制御機器の動作が安定せず、主回路(21)における冷媒の挙動が安定していないため、中間過熱度(中間SH)も変動し易い。一方、運転状態が安定状態である場合には、各制御機器の動作が安定しているため、主回路(21)における冷媒の挙動が安定している。そのため、運転状態がプルダウン状態である場合と安定状態である場合とで開度制御部(84a)によるフィードバック制御の速度が同程度になるように過冷却膨張弁(48)の開度を制御することとすると、プルダウン状態である場合には、中間過熱度(中間SH)の変化に対して開度制御部(84a)による過冷却膨張弁(48)の開度制御が遅れて、中間過熱度(中間SH)が目標範囲から大きく外れて、主回路(21)の液冷媒を過冷却できなくなったり、湿った冷媒が圧縮機(30)に導入されてしまったりする虞がある。一方、運転状態が安定状態である場合には、中間過熱度(中間SH)の僅かな変化に対して過冷却膨張弁(48)の開度制御が過敏に追従してしまい、蒸発器(33)の冷却能力を変動させて、主回路(21)における冷媒の挙動が安定しなくなる虞がある。
そこで、上記制御速度変更部(84c)は、運転状態がプルダウン状態である場合と安定状態である場合とで、開度制御部(84a)によるフィードバック制御の速度を変更することとしている。具体的には、例えば、運転状態がプルダウン状態から安定状態になると、開度制御部(84a)の所定時間T1が60秒から240秒に変更されると共に所定時間T2が60秒から180秒に変更されて制御速度が低減される。これにより、中間過熱度(中間SH)の僅かな変化に対して過冷却膨張弁(48)の開度制御が過敏に追従しなくなるため、主回路(21)における冷媒の挙動を安定した状態に維持することができる。一方、運転状態が安定状態からプルダウン状態になると、開度制御部(84a)の所定時間T1が240秒から60秒に変更されると共に所定時間T2が180秒から60秒に変更されて制御速度が増大する。これにより、中間過熱度(中間SH)の僅かな変化に対して過冷却膨張弁(48)の開度制御が敏感に追従するようになるため、中間過熱度(中間SH)が目標範囲から大きく外れることを防止することができる。よって、主回路(21)の液冷媒の過冷却を確保することができると共に、過冷却バイパス路(23)の冷媒の湿りを防止して圧縮機(30)の損傷を防止することができる。
上記制御量変更部(84d)は、上記開度制御部(84a)によるフィードバック制御における制御量を上記運転状態判断部(81)によって判断される運転状態に応じて変更するように構成されている。
具体的には、上記制御量変更部(84d)は、図5及び図6に示すように、起動状態から安定状態に移行するまでの「安定前段階」では、図3のステップS12、S14における開度変更量P1及びP2をそれぞれ5plsに変更し、安定状態に至ってから再び起動状態となるまでの「安定後段階」では、図3のステップS12、S14における開度変更量P1及びP2をそれぞれ1plsに変更する。つまり、起動状態から安定状態に至るまでの間は、制御量を大きくして早く安定状態になるように制御する。一方、一旦安定状態に至ると、制御量を小さくして、過冷却膨張弁(48)の開度変更が中間過熱度(中間SH)の変動に対して過敏に追従して安定状態が損なわれないように制御する。
また、上記コントローラ(80)は、冷却運転動作中に圧縮機(30)の吐出冷媒の温度が過剰に上昇して所定値(許容上限値、例えば110℃、115℃)以上となった場合に圧縮機(30)及び圧縮機油の損傷を抑制するための保護制御を行う保護制御部(85)を備えている。該保護制御部(85)は、開始条件判定部(85a)と、必要能力判定部(85b)と、湿り判定部(85c)と、強制開度増大部(85d)とを備えている。
上記開始条件判定部(85a)は、保護制御の開始条件が満たされているか否かを判定する。具体的には、開始条件判定部(85a)は、吐出温度センサ(63)から吐出冷媒の温度が入力されて該吐出冷媒の温度が所定値(許容上限値)以上である場合に、保護制御の開始条件が満たされていると判定し、吐出冷媒の温度が上記所定値未満である場合には開始条件が満たされていないと判定する。
上記必要能力判定部(85b)は、蒸発器(33)で必要とされる冷却能力が大きい高能力必要状態であるか否かを判定する。本実施形態では、必要能力判定部(85b)は、上記運転状態判断部(81)による運転状態判断がプルダウン状態である場合、又は圧縮機(30)の回転周波数が200Hz以上の場合に必要能力が大きい高能力必要状態であると判定する一方、上記運転状態判断部(81)による運転状態判断がプルダウン状態ではなく且つ圧縮機(30)の回転周波数が200Hz未満の場合に上記高能力必要状態でないと判定する。
上記湿り判定部(85c)は、圧縮機(30)に吸入される冷媒が過剰湿り状態(所定の湿り状態)ではないか否かを判定する。本実施形態では、湿り判定部(85c)は、圧縮機(30)の吸入冷媒の過熱度が1℃以上且つ圧縮機(30)の吐出冷媒の過熱度が30℃以上である場合に上記過剰湿り状態でないと判定する一方、圧縮機(30)の吸入冷媒の過熱度が1℃未満である場合、又は圧縮機(30)の吐出冷媒の過熱度が30℃未満である場合に上記過剰湿り状態であると判定する。
上記強制開度増大部(85d)は、主膨張弁増大部(85f)と、過冷却弁増大部(85g)とを備えている。主膨張弁増大部(85f)は、上記主膨張弁制御部(83)に代わって主膨張弁(32)の開度を所定量だけ強制的に増大する。過冷却弁増大部(85g)は、上記過冷却膨張弁制御部(84)に代わって過冷却膨張弁(48)の開度を所定量だけ強制的に増大する。
−運転動作−
次に、上記コンテナ用冷凍装置(10)の冷却運転動作について説明する。
先ず、通常の冷却運転時には、第3開閉弁(53)が閉じられ、第1開閉弁(47)及び第2開閉弁(49)が開いている。この状態において、主回路(21)では、圧縮機(30)から吐出された冷媒は、凝縮器(31)で凝縮した後、主膨張弁(32)で減圧し、蒸発器(33)で蒸発した後、圧縮機(30)に戻る。この冷媒循環を繰り返す。そして、上記蒸発器(33)で庫内空気を冷却し、庫内ファン(36)によって冷却空気が庫内に供給される。
一方、このとき、上記過冷却バイパス路(23)では、凝縮器(31)で凝縮された高圧液冷媒の一部が分岐して流入し、過冷却膨張弁(48)で減圧された後、プレート熱交換器(44)の2次側通路(46)に流入して1次側通路(45)を流れる液冷媒を過冷却する。そして、該1次側通路(45)で過冷却された液冷媒は、蒸発器(33)に流れる一方、2次側通路(46)を流れる冷媒は、圧縮機(30)の中間圧力状態の圧縮室に流れる。この過冷却バイパス路(23)により、液冷媒が過冷却状態となって蒸発器(33)における冷却能力が向上すると共に、2次側通路(46)の冷媒が圧縮機(30)の中間圧力状態の圧縮室に流れることにより、冷媒循環量が向上する。
なお、上記主膨張弁(32)は、上記主膨張弁制御部(83)によって過熱度(SH)が所定の目標範囲内となるように開度が制御される。
一方、上記過冷却膨張弁(48)は、上述のように、上記過冷却膨張弁制御部(84)の開度制御部(84a)によって中間過熱度(中間SH)が所定の目標範囲内(L1≦中間SH≦H1)となるように開度がフィードバック制御される。また、該フィードバック制御の際、上記過冷却膨張弁制御部(84)の目標範囲変更部(84b)により、上記中間過熱度(中間SH)の所定の目標範囲が上記運転状態判断部(81)によって判断される運転状態に応じて変更される。さらに、上記フィードバック制御の際、上記過冷却膨張弁制御部(84)の制御速度変更部(84c)により、上記開度制御部(84a)の制御速度が上記運転状態判断部(81)によって判断される運転状態に応じて変更される。また、上記フィードバック制御の際、上記過冷却膨張弁制御部(84)の制御量変更部(84d)により、上記開度制御部(84a)の制御量が上記運転状態判断部(81)によって判断される運転状態に応じて変更される。
また、上記蒸発器(33)がフロストすると、デフロスト運転を行い、第3開閉弁(53)を開くと共に、主膨張弁(32)及び吐出圧力調整弁(38)を閉じる。そして、このデフロスト運転時には、圧縮機(30)から吐出された高温の冷媒ガスを蒸発器(33)に供給し、蒸発器(33)のフロストを除去する。
さらに、上記吐出温度センサ(63)によって検出される圧縮機(30)の吐出冷媒の温度が所定値(許容上限値)以上となると、保護制御部(85)が保護制御を行う。
<保護制御動作>
図7に示すように、まず、保護制御部(85)の開始条件判定部(85a)が保護制御の開始条件が満たされているか否かを判定する(ステップS21)。そして、保護制御の開始条件が満たされている場合、必要能力判定部(85b)が蒸発器(33)で必要とされる冷却能力が大きい高能力必要状態であるか否かを判定する(ステップS22)。高能力必要状態であると判定されると、湿り判定部(85c)が圧縮機(30)に吸入される冷媒が過剰湿り状態(所定の湿り状態)でないか否かを判定する(ステップS23)。過剰湿り状態でないと判定されると、強制開度増大部(85d)の主膨張弁増大部(85f)が、上記主膨張弁制御部(83)に代わって主膨張弁(32)の開度を所定量だけ強制的に増大する(ステップS24)。一方、ステップS22において高能力必要状態でないと判定された場合、及びステップS23において過剰湿り状態であると判定された場合、強制開度増大部(85d)の過冷却弁増大部(85g)が、上記過冷却膨張弁制御部(84)に代わって過冷却膨張弁(48)の開度を所定量だけ強制的に増大する。(ステップS25)。
つまり、保護制御部(85)は、吐出冷媒の温度が所定値(許容上限値)以上であり、高能力必要状態で且つ吸入冷媒が過剰湿り状態でない場合には、主膨張弁(32)の開度を強制的に増大させて吸入冷媒の過熱度を低下させて吐出冷媒の温度を低下させる。一方、保護制御部(85)は、吐出冷媒の温度が所定値(許容上限値)以上であり、高能力必要状態でない場合、及び高能力必要状態であって吸入冷媒が過剰湿り状態である場合には、過冷却膨張弁(48)の開度を強制的に増大させて圧縮機(30)の中間圧力状態の圧縮室にインジェクションされる冷媒の過熱度(中間SH)を低下させて吐出冷媒の温度を低下させる。
−実施形態の効果−
上記コンテナ用冷凍装置(10)によれば、圧縮機(30)の吐出冷媒の温度が所定の許容上限値になると、高能力必要状態で且つ吸入冷媒が過剰湿り状態(所定の湿り状態)でない場合には主膨張弁(32)の開度を強制的に増大させる一方、高能力必要状態ではない場合、及び高能力必要状態であっても吸入冷媒が過剰湿り状態である場合には過冷却膨張弁(48)の開度を強制的に増大させる保護制御部(85)を備えている。従って、高能力必要状態でない場合には、主膨張弁(32)ではなく過冷却膨張弁(48)の開度を増大することにより、冷却能力を不必要に増大させてしまうことなく圧縮機(30)の吐出冷媒の温度を低下させることができる。また、高能力必要状態であっても吸入冷媒が過剰湿り状態である場合には、主膨張弁(32)ではなく過冷却膨張弁(48)の開度を増大することにより、吸入冷媒の湿りを促進してしまうことなく、圧縮機(30)の吐出冷媒の温度を低下させることができる。また、高能力必要状態で且つ吸入冷媒が過剰湿り状態でない場合には、主膨張弁(32)の開度を増大させて主回路(21)における冷媒循環量を増大させて蒸発器(33)での冷却能力を増大させつつ圧縮機(30)の吐出冷媒の温度を低下させることができる。従って、上記コンテナ用冷凍装置(10)によれば、効率低下を抑制しつつ圧縮機(30)の吐出冷媒の過剰な温度上昇による圧縮機(30)及び冷凍機油の損傷を抑制することができる。
また、上記コンテナ用冷凍装置(10)によれば、保護制御部(85)が、圧縮機(30)の吸入冷媒の過熱度と吐出冷媒の過熱度とを検知して、少なくとも一方が各々の基準値(本実施形態では、吸入冷媒の過熱度が1℃、吐出冷媒の過熱度が30℃)よりも小さくなった場合に上記過剰湿り状態であると判定するように構成されている。これにより、上記過剰湿り状態を精度よく判定することができるため、保護制御部(85)による保護制御をより精度よく行うことができる。
〈その他の実施形態〉
上記実施形態では、過冷却膨張弁制御部(84)は、中間過熱度(中間SH)が所定の目標範囲内となるように過冷却膨張弁(48)の開度を制御すると共に、上記所定の目標範囲が運転状態に応じて変更されるように構成されていた。しかし、過冷却膨張弁制御部(84)は、中間過熱度(中間SH)が一定の目標範囲内となるように過冷却膨張弁(48)の開度を制御するように構成されていても勿論よい。このような場合であっても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、上記実施形態では、圧縮機(30)として、回転数がインバータによって制御され、回転数が多段階に制御されて運転容量が可変に構成されたインバータ圧縮機を用いていたが、圧縮機(30)は回転数が一定速で運転容量が固定の定速圧縮機を用いてもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。