以下に、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物、及びこれを用いたポリウレタンフォームの製造方法について、詳細に説明することとする。
先ず、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物においては、少なくとも、発泡に二酸化炭素が用いられると共に、ポリオール成分として、所定のフェノール樹脂系ポリオールとアクリル系ポリオールとが、用いられている。
そして、その中で、本発明においてポリオール成分の一つとして用いられる、上記のフェノール樹脂系ポリオールは、ノボラック型のフェノール樹脂に、2種のアルキレンオキサイド、即ちエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを、共に付加させることによって、得られるものである。なお、このようなフェノール樹脂系ポリオールの調製に使用されるノボラック型フェノール樹脂としては、有利には、低粘度化の観点から、遊離フェノール類を1〜50質量%、好ましくは3〜35質量%、より好ましくは5〜30質量%の割合で含有するものが、採用されることとなる。これは、遊離フェノール類の含有割合が1質量%未満では、有効な低粘度化を図ることが困難であって、目的とするポリウレタンフォーム用発泡性組成物を使用に供することができない恐れがあるからであり、逆に50質量%を超えるようになると、ポリウレタンフォームが柔らかくなりすぎて、成形性の悪化を招く傾向があるからである。
そして、このようなノボラック型フェノール樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを、フェノール類の1モルに対して、アルデヒド類を0.3〜1.0モルの割合で配合し、次いで酸触媒を加えて所定の反応条件(温度や時間)で反応させた後、必要に応じて減圧脱水処理を施すことにより、ノボラック型フェノール樹脂の初期縮合物として、有利に製造されることとなる。ここで、初期縮合物とは、分子量が比較的に低いフェノール樹脂であって、1分子中に、2〜10程度のフェノール骨格を有する縮合物や未反応フェノール類の混合物である。なお、かかるノボラック型フェノール樹脂(初期縮合物)の製造方法は、上記方法に何等限定されるものではなく、生成するノボラック型フェノール樹脂中に上記の遊離フェノール類の所定割合が存在するようにして、適宜に反応条件や反応環境(例えば、常圧、減圧、加圧、不活性ガスの共存の有無、段階的又は逐次的反応等)を設定して、製造することができる。更には、上記反応終了後の縮合物に対して、必要に応じて、別途フェノール類を加える等して、遊離フェノール類の含有割合を上記のように調整することも可能である。
なお、上記ノボラック型フェノール樹脂の製造に際して用いられるフェノール類としては、特に限定されるものではなく、一般に、フェノールが採用されるが、必要に応じて、例えば、クレゾール、エチルフェノール、キシレノール、p−t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、p−フェニルフェノール等のアルキルフェノールのうちの1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることも、又はそのようなアルキルフェノールのうちの1種以上とフェノールとを併用することもできる。更には、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール等のハロゲン化フェノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、フロログリシノール等の多価フェノール、ビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]、ビスフェノールF(4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン)等のビスフェノール、レゾルシノール、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール系化合物の精製残渣、α−ナフトール、β−ナフトール、β−ヒドロキシアントラセンのうちの1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることも、又はそれらのうちの1種以上と、フェノールやアルキルフェノールとを併用することもできる。
一方、上記フェノール類と反応せしめられるアルデヒド類としては、特に限定されるものではなく、一般にホルマリン、パラホルムアルデヒドのうちの何れか一方若しくは両方が用いられるが、必要に応じて、その他のホルムアルデヒド類(例えば、トリオキサン、テトラオキサン、ポリオキシメチレン等)、グリオキサール等を単独で、或いは併用することができる。
また、ノボラック型フェノール樹脂の製造に使用される酸触媒としては、シュウ酸が好適であるが、その他にも、有機スルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸等)、有機カルボン酸(例えば、酢酸等)の二価金属(例えば、マグネシウム、亜鉛、鉛等)塩、二価金属の塩化物、二価金属の酸化物、無機酸(例えば、塩酸、硫酸等)等を単独で用いてもよく、勿論、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、本発明において、ポリオール成分の一つとして用いられるフェノール樹脂系ポリオールは、上述のようにして製造されたノボラック型フェノール樹脂に、塩基性触媒の存在下で、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドからなる2種のアルキレンオキサイドを付加反応させることによって得られるものであり、これによって、有利には、遊離フェノール類を含む、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基の部位に上記2種のアルキレンオキサイドが付加されて、フェノール性水酸基がアルコール性水酸基へ変換されたフェノール樹脂系ポリオールとなる。このように、2種のアルキレンオキサイドの付加によって、フェノール樹脂が改質され、ポリオール成分の親水性が更に向上されることとなり、その結果として、上記フェノール樹脂系ポリオールは、二酸化炭素を発泡剤とする発泡法において用いられるポリオールとして好適であるのみならず、後述するポリイソシアネート成分との混合性にも優れたものとなる。
ここで、上記フェノール樹脂系ポリオールの製造に用いられる2種のアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドであり、その使用割合としては、得られるフォームの特性に応じて、適宜に選定されることとなるが、特に、本発明にあっては、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドの割合が、モル比で、100/0〜40/60となるように選定されることとなる。そのようなモル比を採用し、また、後述するアクリル系ポリオールを併用することによって、本発明に係るポリウレタンフォーム用発泡性組成物にあっては、得られるポリウレタンフォームの低温下での優れた接着性が効果的に発現され得ると共に、その寸法安定性も優れたものとなるのである。なお、それら2種のアルキレンオキサイドの配合量は、一般に、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基に対して、1〜20倍当量となる範囲において、適宜に選択されることとなる。
なお、上記フェノール樹脂系ポリオールは、2種のアルキレンオキサイドの配合量等を適宜に選定することにより、その水酸基価が、有利には、100〜600mgKOH/gとなるように、好ましくは130〜450mgKOH/gとなるように、より好ましくは160〜450mgKOH/gとなるように構成される。この水酸基価が低くなりすぎると、それを用いて得られるフォームが柔らかくなりすぎて、成形性が悪くなり、目的とするポリウレタンフォームが得られない傾向があるからであり、逆に水酸基価が高くなりすぎると、粘度が十分に低くならず、ポリイソシアネート成分との混合性が悪くなる傾向があるからである。また、この水酸基価に対応して、フェノール樹脂系ポリオールの粘度も変動することとなるが、本発明において用いられるフェノール樹脂系ポリオールの粘度は、500〜30000mPa・s/25℃の範囲とされる。
そして、上記フェノール樹脂系ポリオールの製造に用いられる、換言すれば上記ノボラック型フェノール樹脂と特定の2種のアルキレンオキサイドとの付加反応に用いられる、塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ性触媒を好適に採用することができ、これらのうちの少なくとも1種が適宜に選択されて、用いられることとなるが、勿論、これらに限定されるものではないことは、言うまでもないところである。
一方、本発明において、上述の如きフェノール樹脂系ポリオールと共に、ポリオール成分の他の一つの必須成分として用いられるアクリル系ポリオールとは、(メタ)アクリル共重合体に水酸基が導入された構造を呈するものである。そのようなアクリル系ポリオールは、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートを単独重合させることにより、又は水酸基含有(メタ)アクリレートと他の重合性モノマーとを共重合させることにより、製造することが可能である。
ここで、アクリル系ポリオールを製造する際に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることが出来る。また、それら水酸基含有(メタ)アクリレートと共重合せしめられる重合性モノマーとしては、(1)アルキル(メタ)アクリレート、(2)その他の(メタ)アクリレート、(3)スチレン系モノマー、及び(4)他のビニル系モノマー等が挙げられ、例えば、以下に示すモノマーの中から一種又は二種以上の物が適宜に選択されて、使用されることとなる。
前記(1)アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、前記(2)その他の(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
さらに、前記(3)スチレン系モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン及びオクチルスチレン等のアルキルスチレン;フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン及びヨードスチレン等のハロゲン化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等を挙げることが出来る。
また、前記(4)他のビニル系モノマーとしては、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル及びアクリロニトリル;ブタジエン、イソプレン及びクロロプレン等の共役ジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン等が挙げられる。
本発明の発泡用組成物に用いられるアクリル系ポリオールは、溶液重合法等の通常の重合方法に従って製造することが可能である。例えば、上述の如きモノマーを、有機溶剤に溶解又は分散させ、この溶液又は分散液を窒素ガス等の不活性ガスで置換された反応器内に入れ、かかる反応器内にてモノマーを反応(重合)させることにより、製造することが可能である。なお、ここで使用される有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類を挙げることが出来る。
上記重合反応は、重合開始剤の存在下で加熱することにより行われる。重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等を挙げることが出来る。この重合開始剤は、原料モノマーの合計量100質量部に対して、一般に0.01〜10質量部の割合において使用される。重合反応温度は、一般に50〜90℃、重合反応時間は、一般に2〜20時間、好ましくは4〜12時間である。このような重合条件下で製造されたアクリル系ポリオールは、本発明において、有機溶剤から分離して使用可能であることは勿論、有機溶剤に溶解又は分散させた状態でも使用可能である。
以上のようにして製造され得るアクリル系ポリオールであれば、何れのものも使用可能であるが、本発明においては、特に、水酸基価が110〜140mgKOH/gであるアクリル系ポリオールが有利に用いられる。このような所定の水酸基価を有するアクリル系ポリオールを使用することにより、得られるポリウレタンフォームの低温下での接着性がより有利に向上する。
また、本発明においては、上述の如きアクリル系ポリオールが、前記した所定のフェノール樹脂系ポリオールと共に、ポリオール成分として、用いられることとなるのであるが、それらアクリル系ポリオールとフェノール樹脂系ポリオールとは、アクリル系ポリオールにあってはポリオール成分全体の5質量%以上、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜30質量%の割合において、また、フェノール樹脂系ポリオールにあってはポリオール成分全体の20質量%以上、好ましくは35質量%以上の割合において、それぞれ用いられることにより、本発明の効果をより有利に享受することが可能である。
なお、本発明にあっては、ポリオール成分として、上述したフェノール樹脂系ポリオールとアクリル系ポリオールとが組み合わされて、用いられるものであるが、それらポリオール化合物の併用による優れた作用・効果に悪影響をもたらさない限りにおいて、他の公知のポリオール化合物を同時に用いることも可能である。特に、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物においては、得られるポリウレタンフォームの低温における接着性をより向上せしめる上において、芳香族ジアミン系ポリオールが、上述の如きフェノール樹脂系ポリオール及びアクリル系ポリオールと共に、有利に用いられる。
ここで、芳香族ジアミン系ポリオールとは、芳香族ジアミンに対して、公知の手法に従って、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等の所定のアルキレンオキサイドを付加させることによって、得られるものである。換言すれば、かかる芳香族ジアミン系ポリオールは、芳香族ジアミンを開始剤として、これに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド又はそれらの混合物等のアルキレンオキサイドを開環付加せしめてなる、末端水酸基の多官能ポリエーテルポリオール化合物である。
そのような芳香族ジアミン系ポリオールを与える、開始剤としての芳香族ジアミンには、公知の各種の芳香族ジアミン化合物を用いることが出来、具体的には、トリレンジアミンと総称される、フェニレンジアミンの各種のメチル置換体の他、そのアミノ基に対して、メチル、エチル、アセチル、ベンゾイル等の置換基が導入されてなる誘導体や、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等を、例示することが出来る。また、それらの中でも、得られるポリウレタンフォームの特性を高める上において、トリレンジアミンが好ましく用いられることとなる。
上述の如き芳香族ジアミンにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等の所定のアルキレンオキサイドを付加させて得られる芳香族ジアミン系ポリオールとしては、各種のものが市販されており、例えば、トリレンジアミン系ポリオールとして、サンニックスHA−501、同HM−550、同HM−551(以上、何れも、三洋化成工業株式会社製品)等の商品を例示することが出来、本発明にあっては、それら市販品の中から、適宜に選択して使用することも可能である。なお、この芳香族ジアミン系ポリオールの水酸基価は、有利には200〜600mgKOH/g、また粘度は、有利には500〜3000mPa・s/25℃の範囲内とされる。
このように、本発明にあっては、かくの如き芳香族ジアミン系ポリオールが、前記した所定のフェノール樹脂系ポリオール及びアクリル系ポリオールと共に、ポリオール化合物として、有利に用いられることとなるのであるが、そのような芳香族ジアミン系ポリオールは、ポリオール成分全体の20質量%以上、好ましくは35質量%以上の割合において、用いられることにより、本発明の効果をより有利に享受することが可能である。
また、本発明のポリウレタンフォーム用発泡性組成物においては、芳香族ジアミン系ポリオール以外にも、脂肪族ポリエーテルポリオール、脂肪族アミン系ポリエーテルポリオール、芳香族ポリエーテルポリオール等の、公知のポリエーテルポリオール等も、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、用いることが可能である。
ところで、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、少なくとも、上述の如き所定のフェノール樹脂系ポリオールとアクリル系ポリオールとが、ポリオール成分として含有せしめられると共に、更に、発泡剤として、二酸化炭素及び/又はその形成源が、導入せしめられるのである。
ここで、上記の二酸化炭素又はその形成源は、(1)発泡剤源である水を添加せしめることによって、或いは、(2)亜臨界状態若しくは超臨界状態の二酸化炭素を添加せしめることによって、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物中に導入せしめられるが、かかる(1)、(2)のうちの何れか一方であっても、或いは、両方を組み合わせてもよい。なお、亜臨界状態の二酸化炭素とは、圧力が臨界圧力以上で、温度が臨界温度未満である液体状態の二酸化炭素、圧力が臨界圧力未満で温度が臨界温度以上である液体状態の二酸化炭素、或いは温度及び圧力が臨界点未満であるが、これに近い状態の二酸化炭素を指し、また、超臨界状態の二酸化炭素とは、圧力、温度が共に臨界圧力、臨界温度以上の臨界点を超えた流体状態の二酸化炭素をいう。
特に、上記(1)の水発泡の場合には、発泡剤源である水が、後述するポリイソシアネート成分との反応により、フォームの形成に利用される炭酸ガスを生成する役割を果たすと共に、フェノール樹脂系ポリオールの粘度低下にも僅かながら寄与する。かかる水発泡のための水の配合量は、所望のフォーム密度となるように適宜に設定され得るが、通常、フェノール樹脂系ポリオール及びアクリル系ポリオールを含むポリオール成分の100質量部に対して、0.3〜10質量部、好ましくは2〜8質量部、より好ましくは4〜6質量部の範囲で、適宜に設定され得る。なお、水の配合量が、フェノール樹脂系ポリオール及びアクリル系ポリオールを含むポリオール成分の100質量部に対して、0.3質量部未満では、炭酸ガスの発生量が十分ではなく、逆に10質量部を超えるようになると、密度の極端な低下によるフォームの脆弱化が惹起される恐れがある。
一方、亜臨界状態若しくは超臨界状態の二酸化炭素を混合せしめる場合にも、その添加量は、所望のフォーム密度となるように適宜に設定され得るものであり、通常、フェノール樹脂系ポリオール及びアクリル系ポリオールを含むポリオール成分の100質量部に対して、0.3〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部の範囲で、適宜に設定され得る。
また、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、フェノール樹脂系ポリオール及びアクリル系ポリオールを含むポリオール成分と反応して、ポリウレタンを生成するポリイソシアネート成分が、用いられる。このポリイソシアネート成分は、分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機系イソシアネート化合物であり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートの他、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることができる。これらのポリイソシアネート成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。一般的には、反応性や経済性、取扱性等の観点から、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)が好適に用いられる。
かかるポリイソシアネート成分と、上記フェノール樹脂系ポリオール及びアクリル系ポリオールを含むポリオール成分との配合割合は、フォームの種類(例えば、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート)によって変更されることとなるが、一般に、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基(NCO)とポリオール成分(各ポリオールの合計)の水酸基(OH)との比率を示すNCO/OHインデックス(当量比)が、0.9〜2.5程度の範囲となるように、適宜に設定される。
また、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、通常、フェノール樹脂系ポリオール及びアクリル系ポリオールや、二酸化炭素(水発泡法の場合には、発泡剤源である水)、ポリイソシアネート成分以外にも、通常、触媒や整泡剤が配合されることとなる。
具体的には、水を発泡剤源として用いる際に、ポリイソシアネート成分と水との反応によって生成する炭酸ガスを早期に発生せしめることが要求される場合には、それらポリイソシアネート成分と水との反応を促進する作用を有するアミン系泡化触媒が、有利に用いられる。そのようなアミン系泡化触媒としては、例えば、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N′−トリメチルアミノエチルエタノールアミン等を挙げることができ、これらは、単独で用いてもよく、或いは2種以上を併用することもできる。また、その配合量としては、通常、フェノール樹脂系ポリオール及びアクリル系ポリオールを含むポリオール成分の100質量部に対して、1〜30質量部程度が、好適である。
また一方、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応を促進させるためには、樹脂化触媒が有利に用いられる。この樹脂化触媒は、フォームの種類に応じて適宜に選択されて用いられるのであり、例えば、ウレタン化触媒、イソシアヌレート化触媒が単独で用いられたり、或いは、これらが併用される。ウレタン化触媒としては、例えば、第三級アミン、ジブチル錫ジラウレート、エチルモルホリン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、オクチル酸ビスマス(2−エチルヘキシル酸ビスマス)、ネオデカン酸ビスマス、ネオドデカン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等の脂肪酸ビスマス塩、ナフテン酸鉛等を挙げることができる一方、イソシアヌレート化触媒としては、例えば、ヒドロキシアルキル第四級アンモニウム塩、オクチル酸カリウム、酢酸ナトリウム等の脂肪酸アルカリ金属塩、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン等を挙げることができる。これらの樹脂化触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、樹脂化触媒の配合量は、一般に、ポリオール成分の100質量部に対して、0.1〜15質量部程度が、望ましい。
また、上記整泡剤は、ポリウレタンフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものであって、ここでは、シリコーンや非イオン系界面活性剤が好適に採用される。具体例として、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等を挙げることができ、これらのうちの1種が単独で或いは2種以上が組み合わされて用いられる。なお、整泡剤の配合量は、所期のフォーム特性や、使用する整泡剤の種類等に応じて適宜決定され得るが、好ましくは、ポリオール成分の100質量部に対して、0.1〜10質量部程度の割合とされる。
加えて、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、更に必要に応じて、難燃剤や起泡剤の他、例えば、尿素、メラミン等のホルムアルデヒド捕捉剤や、気泡微細化剤、可塑剤、補強基材等の、従来から知られている各種助剤を、適宜に選択して配合することもできる。
なお、上記難燃剤としては、環境への負荷が少なく、発泡性組成物の減粘剤としても機能するトリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリエチルフォスフェート等のリン酸エステルが有利に用いられる。このリン酸エステルを配合する場合、その配合量は、所期のフォーム特性や難燃剤の種類等に応じて適宜決定され得るが、好ましくは、ポリオール成分の100質量部に対して、10〜60質量部の範囲で選択され、その範囲の中でも、特に、10〜40質量部程度が好適である。また、上記リン酸エステル以外にも、難燃剤として、水酸化アルミニウム等が好適に使用され得る。
また、上記起泡剤は、水を発泡剤源として用いる際に、炭酸ガスが発生するまでの発泡と硬化の時間的なずれを、起泡剤の有する石鹸機能による泡立ち(高起泡性と泡安定性)で補うために用いられるものであって、特に、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物を吹き付け方式の発泡法(吹き付け発泡法)で発泡・硬化させる場合に有用である。かかる起泡剤としては、石鹸の成分として知られる脂肪酸アルカリ金属塩、特に、炭素数が12〜18であるラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩を例示することができる。これらの中でも、水発泡法においては、脂肪酸カリウム塩が、特に好適に用いられる。
さらに、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物においては、上述の如く、オゾン層の保全の観点から、二酸化炭素が発泡剤として採用されるのであるが、かかる二酸化炭素を主たる発泡剤として採用する限りにおいて、必要に応じて、過酸化水素水や、ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、テトラフルオロエタン(HFC-134a)等に代表されるハイドロフルオロカーボンや、ペンタン、シクロペンタン等に代表される低沸点脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、イソプロピルクロライド等に代表されるハロゲン系炭化水素を、二酸化炭素による発泡作用を補助するための発泡助剤として、添加することも可能である。
そして、上述せる如きフェノール樹脂系ポリオール、アクリル系ポリオールや発泡剤等を用いて、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物を製造するに際しては、従来のポリウレタンフォーム用発泡性組成物と同様な製造手法が、採用され得る。
例えば、水発泡法を採用する場合、即ち、発泡剤として水とポリイソシアネートとの反応により発生する二酸化炭素を用いる場合には、先ず、ポリオール成分としての前記フェノール樹脂系ポリオールやアクリル系ポリオールに対して、発泡剤源としての水、必要に応じて、泡化触媒、樹脂化触媒、整泡剤、難燃剤、起泡剤、その他各種助剤が配合されて、ポリオール配合液(プレミックス液)が調製される。次いで、この調製されたポリオール配合液とポリイソシアネート成分とが、低圧高速撹拌混合機を用いて高速撹拌混合されることにより、或いは、高圧衝突混合機(例えば、現場スプレー発泡機)を用いて高圧衝突混合されることにより、液状のポリウレタンフォーム用発泡性組成物が製造され得る。なお、本発明においては、水発泡法に適した低粘性を有する上記フェノール樹脂系ポリオールやアクリル系ポリオールが用いられているところから、ポリイソシアネート成分との混合が有利に実施され、均質な発泡性組成物が製造され得るのである。
一方、発泡剤として、亜臨界状態若しくは超臨界状態の二酸化炭素を用いる場合には、先ず、ポリオール成分としての前記フェノール樹脂系ポリオールやアクリル系ポリオールに対して、必要に応じて、泡化触媒、樹脂化触媒、整泡剤、難燃剤、起泡剤、その他各種助剤が配合されて、ポリオール配合液(プレミックス液)が調製される。そして、この調製されたポリオール配合液がポリイソシアネート成分と混合せしめられる直前に、好ましくはポリオール配合液に対して、所定の圧力と温度の下、亜臨界状態若しくは超臨界状態の二酸化炭素が添加、混合された後、ポリイソシアネート成分が更に添加混合されることにより、液状のポリウレタンフォーム用発泡性組成物が製造され得るのである。
そして、このようにして製造されたポリウレタンフォーム用発泡性組成物は、例えば、面材上に塗布して板状に発泡、硬化を行うラミネート連続発泡法、電気冷蔵庫等の断熱性能が要求される空間部内や軽量・高強度ボードのハニカム構造内に注入充填して発泡、硬化を行う注入発泡法、現場発泡機のスプレーガンヘッドから被着体へ吹き付けて発泡、硬化させるスプレー発泡法等によって、発泡、硬化せしめられ、目的とするポリウレタンフォームが形成されることとなる。
このように、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物にあっては、ポリオール成分として、所定のフェノール樹脂系ポリオールとアクリル系ポリオールとを含むものであるところから、例えば雰囲気温度が0℃以下である低温環境下において、上述の如き発泡法に従って発泡及び硬化せしめた場合であっても、得られるポリウレタンフォームは、優れた寸法安定性を有しつつ、優れた接着性を発現することとなるのである。なお、本発明のポリウレタンフォーム用発泡性組成物を用いてポリウレタンフォームを製造する際は、雰囲気温度が0℃以下の環境下において、好ましくは雰囲気温度が−5℃以下の環境下において、実施することが可能である。
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示す「%」及び「部」は、何れも質量基準である。
先ず、以下の如くして、ノボラック型フェノール樹脂を調製し、そしてその得られたノボラック型フェノール樹脂に所定量のエチレンオキサイド(及びプロピレンオキサイド)を付加させて、目的とするフェノール樹脂系ポリオールI〜IVを準備した。また、トリレンジアミン系ポリオールについても、以下のようにして、トリレンジアミンにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加して、準備した。
〈ノボラック型フェノール樹脂の調製〉
撹拌装置を備えた反応容器内に、フェノール9400部、92%パラホルムアルデヒド1630部、酸触媒としてシュウ酸19部を仕込んだ後、撹拌混合しながら、100℃の温度で、5時間、反応させた。その後、減圧下で水分を溜去することにより、目的とするノボラック型フェノール樹脂を得た。
〈フェノール樹脂系ポリオールの調製〉
撹拌装置を備えた耐圧反応容器内に、上記ノボラック型フェノール樹脂の4000部を、アルカリ触媒としての水酸化カリウムの200部と共に、仕込んだ後、撹拌混合しながら、150℃の温度下で、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)を下記表1に示される配合量となるように加えて、ノボラック型フェノール樹脂に付加させた。その後、水酸化カリウム(触媒)を酢酸で中和して、目的とするフェノール樹脂系ポリオールを4種類、準備した(フェノール樹脂系ポリオールI〜IV)。
〈トリレンジアミン系ポリオールの調製〉
撹拌装置を備えた耐圧反応容器内に、トリレンジアミンの1000部と、反応触媒としての水酸化カリウムの20部を仕込み、撹拌混合しながら、115℃の温度下で、加圧下に、エチレンオキサイド1700部及びプロピレンオキサイド2200部を加えて、これらをトリレンジアミンに付加させた。その後、水酸化カリウム(触媒)を酢酸で中和することにより、目的とするトリレンジアミン系ポリオールを得た。
−実施例1〜8、比較例1〜3−
先ず、ポリオール化合物として、上記で準備したフェノール樹脂系ポリオール、トリレンジアミン系ポリオール、アクリル系ポリオール(商品名:ARUFON UH2041、水酸基価:120mgKOH/g、東亞合成株式会社製)を用い、また、シリコーン整泡剤(商品名:SH−193、東レ・ダウコーニング株式会社製)、触媒A(商品名:TOYOCAT−TT、東ソー株式会社製)、触媒B(商品名:カオライザーNo.26、花王株式会社製)、触媒C(商品名:カオライザーNo.31、花王株式会社製)、水、難燃剤(トリスクロロプロピルホスフェート)及び起泡剤(リシノール酸カリウム)を用いて、下記表2に示される配合割合において、それぞれの成分を混合せしめて、各種のポリオール配合液を調製した。
次いで、上述のようにして得られた各種のポリオール配合液と、ポリイソシアネート成分として、クルードMDI(商品名:ルプラネートM−11S、BASF INOAC ポリウレタン社製)とを、体積比1:1で用い、現場スプレー発泡機(商品名:FF−1600、ガスマー社製)を用いて撹拌混合せしめて、発泡原液とし、これを、雰囲気温度が10℃、5℃、0℃、−5℃、−10℃の各環境下において、被着体であるコンクリート板の表面に吹き付けて、発泡、硬化させることにより、硬質ポリウレタンフォームの被覆層を有するコンクリート板を作製した。
そして、かくして得られた硬質ポリウレタンフォームについて、その密度、接着性、及び寸法安定性の測定を行い、得られた結果を、それぞれ、下記表3に示した。
なお、かかる特性評価に際して、「フォーム密度」の測定は、JIS K 7222に準拠して見掛けコア密度を測定した。また、フォームの接着性(剥離性)の評価に係る、各温度雰囲気下での接着性については、それぞれの温度下において、発泡原液の吹付けから3分経過後に、コンクリート板からはみ出したフォーム端部を、コンクリート板に沿ってカッターナイフで切断し、コンクリート板とフォームとの接着面付近を目視で観察して、フォームの剥離の有無を確認した。なお、評価結果における「○」は、コンクリート板からのフォームの剥離が認められず、接着性に問題がないことを示し、また、「×」は、コンクリート板からのフォームの剥離が認められ、接着性に難点があることを意味している。更に、「寸法安定性」は、得られたポリウレタンフォームを150mm×150mm×30mmの形状に切り出し、50℃の雰囲気下で24時間、静置し、その厚みの変化を測定して、寸法変化率(%)[=(切出後の寸法−静置後の寸法)×100/切出後の寸法]を求め、評価した。
かかる表3の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜8において得られたポリウレタンフォームにあっては、何れも、優れた寸法安定性を維持しつつ、低温下での接着性が著しく向上せしめられていることが認められるのである。
これに対して、所定のフェノール樹脂系ポリオールを単独で用いた場合(比較例1)、アクリル系ポリオールを併用することなくフェノール樹脂系ポリオールとトリレンジアミン系ポリオールを用いた場合(比較例2)、及び、本発明の範囲外であるフェノール樹脂系ポリオールとアクリル系ポリオールとを用いた場合(比較例3)にあっては、低温下での接着性において充分でなく、また、比較例1においては寸法安定性を損なうことが認められるのである。