JP2013182632A - 記録装置、記録方法 - Google Patents

記録装置、記録方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2013182632A
JP2013182632A JP2012044517A JP2012044517A JP2013182632A JP 2013182632 A JP2013182632 A JP 2013182632A JP 2012044517 A JP2012044517 A JP 2012044517A JP 2012044517 A JP2012044517 A JP 2012044517A JP 2013182632 A JP2013182632 A JP 2013182632A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
recording
servo
reference surface
spiral
ats
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012044517A
Other languages
English (en)
Inventor
Takashi Nagatomo
孝志 永友
Hideki Ando
秀樹 安藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sony Corp filed Critical Sony Corp
Priority to JP2012044517A priority Critical patent/JP2013182632A/ja
Publication of JP2013182632A publication Critical patent/JP2013182632A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Optical Recording Or Reproduction (AREA)
  • Optical Head (AREA)

Abstract

【課題】ATS(隣接トラックサーボ)による記録を前提とし、且つ記録レート向上のため二重以上のスパイラルの同時記録を行う場合において、全てのスパイラルについて記録の中断を伴わずにベリファイを可能とする。
【解決手段】同じ対物レンズを介して照射される記録用ビームとサーボ用ビームを1組としたとき、全ての組のサーボ用ビームにより、それぞれ別の組の記録用ビームによる記録トラックに重複なくトラッキングサーボをかけた状態で、各記録用ビームによる実データの記録を実行する。これにより、同時記録される全スパイラルについて、それぞれのスパイラルに必ず1つのサーボ用ビームがトレースしている状態を得ることができ、結果、同時記録される全スパイラルについて記録を中断することなくベリファイを行うことができる。
【選択図】図6

Description

本技術は、記録用ビームとサーボ用ビームとを記録媒体に照射して上記記録用ビームによる記録を行う記録装置とその方法とに関する。
特開2011−123978号公報
光の照射により信号の記録又は再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスク記録媒体(以下、単に光ディスクとも表記)が広く普及している。
従来より、光ディスクについては、その情報記録密度の向上を図ることで大記録容量化が達成されてきた。具体的には、ピット列又はマーク列としてのトラックの形成ピッチを詰める、つまりは半径方向における記録密度を向上させる手法、及びピット又はマークのサイズ縮小化により線方向(半径方向に直交する方向)の記録密度を向上させる手法が採られてきた。
一方で、大記録容量化を図るにあたっては、記録層(記録面)の数を増加させるという手法も有効であり、現状においても2層ディスクや3層以上の多層ディスクが提案・実用化されている。
但し、現状におい普及している記録可能型の多層ディスクについては、単層ディスクの場合と同様に位置案内子(例えばウォブリンググルーブなど)が形成された記録層を積層したものとされている。
このような位置案内子付きの記録層を多数有する多層ディスクを形成する際には、各記録層の積層ごとにスタンパを用いたパターン転写工程を行う必要がある。このため、通常の単層ディスクや2層ディスクの場合と比較すると工程の増加によるコストアップを招く。
また、パターン転写工程に失敗することを考慮すると、単層や2層ディスクとの比較で歩留まりも悪化し、この点でのコストアップも問題となる。
そこで、本出願人は、記録層を3以上有する多層記録媒体として、図35に示すような多層記録媒体100を提案している。
図35に示すように、多層記録媒体100には、上層側から順にカバー層101、複数の記録層Lが形成された記録層形成領域102(ここでは記録層の積層数がL1〜L5の5としている)、接着層103、反射膜104、及び基板105が形成されている。
なお、ここで言う「上層側」とは、多層記録媒体100に対する記録又は再生を行う記録/再生装置側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指すものである。
記録層形成領域102内において、各記録層Lは、半透明記録膜で構成され、これら半透明記録膜の各々の間にそれぞれ中間層が挿入されている。そして、注目すべきは、それぞれの記録層L(半透明記録膜)には、図のようにグルーブやピット列等の形成に伴う位置案内子が形成されていないという点である。すなわち、各記録層Lは平面状に形成されているものである。
記録層形成領域102の下層側には、所要の接着材料で構成された接着層(中間層)103を介して反射膜104が形成されている。
該反射膜104には、記録/再生位置を案内するための位置案内子が形成される。なお反射膜に位置案内子が形成されているというのは、位置案内子が形成されている界面上に反射膜が形成されるという意味である。
具体的に、この場合は図中の基板105の一方の面側に対して位置案内子が形成されることで、図のような凹凸の断面形状が与えられ、基板105の該凹凸断面形状が与えられた面上に対し反射膜104が成膜されることで、該反射膜104に位置案内子が形成されたものとなっている。基板105は、上記位置案内子としての凹凸断面形状を与えるためのスタンパを用いた射出成形などによって生成される。
ここで、現状の記録可能型ディスクで行われているように、上記位置案内子の形成により、多層記録媒体100の記録面内方向に平行な方向における絶対位置を表す情報(絶対位置情報:半径位置情報、及び回転角度情報)を記録することができる。例えばこの絶対位置情報は、上記位置案内子がグルーブで形成される場合には当該グルーブの蛇行(ウォブル)周期の変調により記録することができ、また上記位置案内子がピット列で形成される場合には、ピットの長さや形成間隔の変調により記録を行うことができる。
なお、上記のように各記録層Lにおいては位置案内子が形成されておらず、各記録層Lにおける記録位置の制御は、以下で説明するように位置案内子が形成された反射膜104からの反射光に基づき行われることになる。
この意味で、位置案内子が形成された反射膜104(反射面)のことを「基準面Ref」と表記する。
上記のような多層記録媒体100によれば、各記録層Lの形成ごとに必要とされていた位置案内子の形成工程を不要とでき、多層記録媒体を低コストに実現できる。
ここで、上記構造による多層記録媒体100についての具体的な記録手法について説明しておく。
多層記録媒体100に対しては、記録層Lを対象として照射されるべき記録層用レーザ光を照射する。
そして、該記録層用レーザ光についての記録時における位置制御の実現のため、多層記録媒体100に対しては、基準面Refにおける位置案内子に基づく位置制御を行うためのレーザ光(以下、サーボ用レーザ光と表記する)も併せて照射することになる。
具体的に、これら記録層用レーザ光とサーボ用レーザ光とは、図35に示すように共通の対物レンズ(対物レンズ110)を介して多層記録媒体100に対して照射するものとされている。
記録層Lを対象としたマークの記録時には、図のようにサーボ用レーザ光を反射膜104の反射面(基準面Ref)に合焦させるように照射して、その反射光に基づき得られるトラッキングエラー信号に従って対物レンズ110の位置制御を行う(つまりトラッキングサーボをかける)。
これにより、同じ対物レンズ110を介して照射される記録層用レーザ光のトラッキング方向における位置を連動して制御することができる。
一方、再生時における位置制御は、以下のようにして実現できる。
再生時においては、記録層Lにマーク列(つまり記録済みトラック)が形成されているので、該マーク列を対象として記録層用レーザ光単体でトラッキングサーボをかけることができる。すなわち、再生時におけるトラッキングサーボは、記録層用レーザ光の反射光に基づき得られるトラッキングエラー信号に従って対物レンズ110の位置制御を行うことで実現できる。
ここで、上記のような位置制御手法が採られる場合において、サーボ用レーザ光として記録層用レーザ光と同波長帯の光を用いてしまうと、サーボ用レーザ光の反射光を得るべき基準面Refについて、記録層用レーザ光についての反射率を高めざるを得なくなってしまう。すなわち、その分迷光成分が増大して再生性能を著しく悪化させてしまう虞がある。
このため、サーボ用レーザ光と記録層用レーザ光とはそれぞれ波長帯の異なる光を用いるものとし、基準面Refを形成する反射膜104として波長選択性を有する反射膜を用いる。
具体例として、記録層用レーザ光の波長はBDの場合と同様の405nm程度、サーボ用レーザ光の波長はDVDの場合と同様の650nm程度とされる。そして、反射膜104としては、サーボ用レーザ光と同波長帯の光を選択的に反射し、それ以外の波長による光は透過又は吸収する波長選択性反射膜を用いる。
このような構成により、基準面Refから記録層用レーザ光の不要な反射光成分が生じてしまうことを防止でき、良好なS/N(信号対雑音比)を確保できる。
ところで、記録層Lにグルーブ等の位置案内子の形成されていない多層記録媒体100では、記録時における記録開始位置へのシークは、基準面Refに記録されたアドレス情報を利用して行うことになる。
具体的に、記録層Lに対する記録時には、ライトコマンドに基づいて基準面Ref上の記録開始アドレスが特定され、先ずはサーボ用レーザ光により、該基準面Ref上の記録開始アドレスにシークする。そして、該シークの完了に応じて、記録用レーザ光による記録を開始する。これにより、記録層L上における、上記記録開始アドレスに対応する位置からデータの記録を開始することができる。
また、多層記録媒体100の記録層Lに記録した情報の再生についても、先ずは基準面Ref上のアドレスを利用したシークを行うことになる。具体的には、リードコマンドに基づき特定された基準面Ref上の再生開始アドレスをターゲットとして、サーボ用レーザ光によるシーク動作を行う。
そして、このような基準面Refのアドレスに基づくシークを行った上で、対物レンズ110についてのトラッキングサーボ制御を、サーボ用レーザ光の反射光に基づくサーボ制御から記録層用レーザ光の反射光に基づくサーボ制御に切り替えを行う。これにより、記録層用レーザ光のビームスポットを記録層L上の再生開始位置近傍のトラックに追従させることができる。
その上で、記録層Lに記録されているアドレス情報を読むことで、所定の再生開始位置に移動することができ、該再生開始位置からのデータ再生を開始することができる。
以上では、記録層Lに位置案内子が形成されない多層記録媒体100について記録/再生を行うための動作概要について説明したが、多層記録媒体100について記録/再生を行うにあたっては、実際には、以下で説明するような記録層用レーザ光とサーボ用レーザ光との間のスポット位置ずれに起因した情報記録位置のずれが生じることを考慮すべきものとなる。
ここで、先に説明したような位置制御手法を採る場合は、多層記録媒体100の偏芯や光学ピックアップのスライド機構のガタ等に起因して生じる対物レンズ110のレンズシフトにより、トラッキング方向における情報記録位置のずれが生じる。
ここで言うスライド機構のガタに伴うレンズシフトとは、スライドサーボ制御中において、当該スライド機構におけるメカ機構的なガタの発生に起因して光学ピックアップの位置が急激(瞬間的に)に変位したことに伴って、トラッキングサーボ制御中の対物レンズ110の位置がその変位の吸収ためにシフトされることを意味する。
図36は、対物レンズ110のレンズシフトに伴い情報記録位置のずれが生じる原理について説明するための図である。
図36において、図36Aは多層記録媒体100の偏芯やスライド機構のガタが無く対物レンズ110のレンズシフトが生じていない理想的な状態を、また図36Bは紙面左方向(例えば外周方向であるとする)のレンズシフトが生じた場合(+方向の偏芯と称する)、図36Bは紙面右方向(例えば内周方向であるとする)のレンズシフトが生じた場合(−方向の偏芯と称する)をそれぞれ示している。
なお、この図36では図示の都合から基準面Refが記録層Lの上層側に形成された場合を例示しているが、先の図35と同様に基準面Refが記録層Lの下層側に形成される場合にも同様の原理で情報記録位置のずれが生じるものである。
先ず、図中の中心軸cは、光学系を設計する上で設定された中心軸であり、図36Aに示す理想状態においては、対物レンズ110の中心は当該中心軸cに一致している。
これに対し、図36Bに示すような+方向のレンズシフトが生じた場合は、対物レンズ110の中心が光学系の中心軸cに対して+方向にシフトする。
このとき、サーボ用レーザ光(図中の柄付きの光線)に関しては、対物レンズ110に対して平行光により入射するので、上記のような対物レンズ110の中心軸cからのシフトが生じても、その焦点位置のトラッキング方向における位置に変化は生じない。
これに対し、記録層用レーザ光(図中の白抜きの光線)は、基準面Refとは異なる深さ位置に形成された記録層Lに合焦させるために、対物レンズ110に対して非平行光により入射されるので、上記のような+方向への対物レンズ110のシフトに対しては、図のように、記録層用レーザ光の焦点位置(情報記録位置)が、レンズシフト量に応じた分だけ+方向に変化してしまうこととなる(図中、ずれ量+d)。
また、図36Cに示すような−方向のレンズシフトが生じた場合には、記録層用レーザ光による情報記録位置は、図のようにレンズシフト量に応じた分だけ−方向に変化することとなる(図中ずれ量−d)。
このようにして、先の図35にて説明した多層記録媒体100についての記録/再生装置の構成、すなわち、

・記録層用レーザ光とサーボ用レーザ光とを共通の対物レンズ110を介して照射する
・記録層用レーザ光の焦点位置とサーボ用レーザ光の焦点位置とが異なる
・対物レンズ110のトラッキングサーボ制御をサーボ用レーザ光の焦点位置が基準面Refに形成された位置案内子に追従させるようにして行う

という構成においては、ディスクの偏芯やスライド機構のガタ等に起因して、記録層用レーザ光による情報記録位置がトラッキング方向にずれてしまうという問題が生じる。
このとき、偏芯の大きさ等やトラックピッチ(案内溝の形成間隔)の設定によっては、隣接する案内溝同士で情報記録位置が重なってしまうこともある。このようであると、正しく記録信号を再生することはできなくなる。
なお、上記では情報記録位置のずれの要因として対物レンズ110のレンズシフトを主なものとして説明したが、情報記録位置のずれは、ディスクチルトによっても同様に生じるものである。
上記のような情報記録位置ずれの問題を回避するための1つの対策としては、情報記録位置の変動以上にトラックピッチを広げておくということを挙げることができる。
しかしながらこの手法は、トラックピッチの拡大により記録容量の低下を招いてしまう点が問題となる。
また、他の手法として、ディスクを着脱不能なシステムとする手法も挙げることができる。
ここで、偏芯の原因としては、ディスク内径とスピンドルモータへのクランプ径との誤差が挙げられる。加工上、両者の誤差を完全にゼロにすることは不可能であるので偏芯は不可避である。また、仮に両者の誤差をゼロにできたとしても、ディスクの基準面における記録信号中心と装置側のスピンドル軸中心とが同一になるとは限らないので、この面でもやはり偏芯が生じる。そこで、ディスクの着脱を不能としたシステムにすれば、偏芯による影響が同じとなるので、記録位置が重なる問題を回避できる。そしてこのことで、トラックピッチを詰めることができ、その分、記録容量の増大を図ることができる。
しかしながら、当然、この手法ではディスクの交換が一切できないので、例えばディスク不良時にディスクだけを交換するといったことができなくなる。さらには、或る装置で記録したデータを別の装置で読み出すといったこともできない。つまりこれらの点で、利便性が損なわれる結果となる。
そこで、これらの問題を回避するための有効な手法として、いわゆるATS(Adjacent Track Servo:隣接トラックサーボ)を採用することが考えられている。ATSは、元々はハードディスクドライブにおけるセルフサーボトラックライタ(SSTW)として検討されていたものである。
図37は、ATSについて説明するための図である。
図のようにATSでは、記録用スポットSwrと隣接トラックサーボ用スポットSatsとを記録層L上に形成するようにされる。これらスポットSwrとスポットSatsは、それぞれその元となる光線を共通の対物レンズを介して記録媒体に照射することで形成される。このとき、スポット間の距離は所定長で固定である。
ATSでは、記録用スポットSwrを先行スポット(つまり記録の進行方向が内周→外周である場合には外周側)とし、隣接トラックサーボ用スポットSatsを後行スポットとして、記録用スポットSwrによって形成したマーク列を対象として、隣接トラックサーボ用スポットSatsによりトラッキングサーボをかける。つまりは、記録用スポットSwrが形成した1本前のトラックに、隣接トラックサーボ用スポットSatsが追従するように対物レンズのトラッキングサーボ制御を行うというものである。
このようなATSによれば、トラックピッチは各スポットS間の距離で一定とできるので、偏芯等の影響によりトラックが重なってしまうという問題は生じないものとできる。すなわち、前述のように偏芯等に起因する情報記録位置のずれを考慮してトラックピッチを余分に広げたり、或いはディスクを着脱不能とするシステムとするといった必要は無いものとできる。
ところで、記録媒体に対する記録を行うにあたっては、記録レートを向上させるため、二重以上のスパイラルを同時記録するということが考えられる。
ここで、上記のようなATSによる記録を行うことを前提とした場合において、二重スパイラルによる同時記録を実現するための手法の例を図38を参照して説明する。
先ず前提として、ATSにより二重スパイラルを同時記録するとしたときは、図のように記録用スポットSwr、隣接トラックサーボ用スポットSatsをそれぞれ2つずつ要するものとなり、従って記録層Lには計4つのビームを照射することになる。
二重のスパイラルのうち、一方のスパイラルの記録を担当する記録用スポットSwrについては第1記録用スポットSwr♯1、他方のスパイラルの記録を担当する記録用スポットSwrは第2記録用スポットSwr♯0とする。また、第1記録用スポットSwr♯1についてのトラッキング位置制御に用いる隣接トラックサーボ用スポットSatsについては第1隣接トラックサーボ用スポットSats♯1、第2記録用スポットSwr♯0についてのトラッキング位置制御に用いる隣接トラックサーボ用スポットSatsについては第2隣接トラックサーボ用スポットSats♯0とする。
この図38に示す手法では、記録層Lにおいてプリ記録スパイラルが予め形成されていることが前提とされる。具体的に、該プリ記録スパイラルとしては、記録層Lに設定されたトラックピッチをTPとしたとき、3×TP分のピッチによるスパイラルを形成しておく。
なお、このプリ記録スパイラルは、ドライブ装置が前述の基準面Refを利用したサーボ制御を行いつつ記録用のレーザ光を記録層Lに対して照射して記録することもできるが、その場合は前述のスポット位置ずれの発生によって正確なスパイラルを描くことができない可能性が高い。そこで、該プリ記録スパイラルとしては、高精度なライターを用いるなどして予め製造側で記録しておくことになる。
この図38の例では、隣接トラックサーボ用スポットSats♯1によりプリ記録スパイラルに対してトラッキングサーボをかけ、記録用スポットSwr♯1による記録を開始する。
そして、該記録用スポットSwr♯1によって記録されたトラック(第1のスパイラルとする)に対して、隣接トラックサーボ用スポットSats♯0がトラッキングサーボをかけて、記録用スポットSwr♯0により記録を行う。これにより、第1のスパイラルと並走する第2のスパイラルが同時に形成されていくことになる。
例えば上記のような手法により、ATSを前提とした二重スパイラルの同時記録を実現できる。
しかしながら、上記の手法では、第1のスパイラルについては、第2隣接トラックサーボ用スポットSats♯0がこれをトレースしているので、そのベリファイは記録を中断せずに行うことができるが、第2のスパイラル側については、これをトレースするビームが存在しないので、記録を中断せずにベリファイを行うことができない。
本技術は上記問題点に鑑み為されたもので、その課題は、ATSによる記録を前提とし、且つ記録レート向上のため二重以上のスパイラルの同時記録を行う場合において、全てのスパイラルについて記録の中断を伴わずにベリファイを可能とすることにある。
上記課題の解決のため、本技術では記録装置として以下の構成を提案する。
すなわち、本技術の記録装置は、記録用ビームとサーボ用ビームとが入射される対物レンズを複数有し、各上記対物レンズにより上記記録用ビームと上記サーボ用ビームとを記録媒体に照射する光照射部を備える。
また、上記光照射部における各上記対物レンズによって照射される上記記録用ビームをそれぞれ独立に変調して上記記録媒体に対する記録を実行する記録部を備える。
また、各上記対物レンズにより照射される上記サーボ用ビームの反射光をそれぞれ受光した結果に基づき、その受光したサーボ用ビームを照射した上記対物レンズについてのトラッキング制御をそれぞれ行うトラッキング制御部を備える。
また、同じ上記対物レンズを介して照射される上記記録用ビームとサーボ用ビームを1組としたとき、全ての組のサーボ用ビームにより、それぞれ別の組の記録用ビームによる記録トラックに重複なくトラッキングサーボがかけられた状態で、各上記記録用ビームによる実データの記録が実行されるように上記記録部を制御する記録制御部を備えるものである。
上記構成によれば、複数の記録用ビームを用いて実データを同時記録する際に、全ての組のサーボ用ビームにより、それぞれ別の組の記録用ビームによる記録トラックに重複なくトラッキングサーボがかけられた状態を得ることができる。すなわち、同時記録される全スパイラルについて、それぞれのスパイラルに必ず1つのサーボ用ビームがトレースしている状態を得ることができる。
この結果、同時記録される全スパイラルについて、記録を中断することなくベリファイを行うことができる。
上記本技術によれば、二重以上のスパイラルの同時記録による記録レートの向上を実現しつつ、全スパイラルについて記録を中断することなくベリファイを行うことができる。
実施の形態の記録媒体の断面構造を示した図である。 基準面に形成された位置案内子を利用した位置制御手法についての説明図である。 ATS単体とした場合に生じる問題点についての説明図である。 ATS+の概念について説明するための図である。 二重スパイラルの同時記録を実現するための構成の概要を示した図である。 本実施の形態で実現する記録手法についての説明図である。 互いにATSをかけ合う状態を得るための具体的な書き出し手法についての説明図である。 同じく、上記書き出し手法についての説明図である。 同じく、上記書き出し手法についての説明図である。 同じく、上記書き出し手法についての説明図である。 同じく、上記書き出し手法についての説明図である。 同じく、上記書き出し手法についての説明図である。 同じく、上記書き出し手法についての説明図である。 同じく、上記書き出し手法についての説明図である。 実施の形態の記録媒体が有する基準面の表面を一部拡大して示した図(平面図)である。 基準面全体におけるピットの具体的形成手法について説明図である。 基準面に対する具体的なアドレス情報の記録の例を示した図である。 記録媒体の回転に伴い基準面上を基準面用レーザ光のスポットが移動する様子と、その際に得られるSUM信号、SUM微分信号、及びP/P信号の波形との関係を模式的に示した図である。 SUM微分信号から生成されるクロックと、該クロックに基づき生成される各selector信号の波形と、基準面に形成された各ピット列(の一部)との関係を模式化して示した図である。 任意ピッチによるスパイラル移動実現のための具体的な手法についての説明図である。 単純スパイラル記録では再生レート倍増効果を得ることができない点につき説明するための図である。 4つの再生用レーザ光を用いた同時再生により再生レートをさらに向上させるための具体的な手法についての説明図である。 先行スポットがスパイラルセットの手前側のスパイラルに載る位置を目標としてシーク動作を行った場合の様子を示した図である。 再生ビームの全てが対象とするスパイラルセットにおけるそれぞれのスパイラルに載る位置を目標としてシーク動作を行った際の様子を示した図である。 実施の形態の記録再生装置が備える主に光学系の構成についての説明図である。 実施の形態の記録再生装置の記録再生系のブロック図である。 実施の形態の記録再生装置の信号処理系及びサーボ系のブロック図である。 実施の形態としての記録手法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。 同じく、実施の形態としての記録手法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。 実施の形態としての再生手法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。 1つの光ピックアップにより本技術の記録手法を実現するための手法についての説明図である。 3重のスパイラルを同時記録する場合における各記録トラックのトレース状態の例を示した図である。 先行ビームを基準として、再生対象のスパイラルセットの1本手前のトラックを目標位置としてシークを行った場合の様子を示した図である。 変形例としてのシーク手法についての説明図である。 記録層に位置案内子が形成されない多層記録媒体についての説明図である。 対物レンズのレンズシフトに伴い情報記録位置のずれが生じる原理について説明するための図である。 ATSについて説明するための図である。 ATSによる記録を行う場合において二重スパイラルを同時記録する従来手法についての説明図である。
以下、本技術に係る実施の形態について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。

<1.実施の形態の記録媒体について>
<2.位置制御手法について>
<3.実施の形態の記録手法>
<4.任意ピッチスパイラル移動制御について>
<5.実施の形態の再生手法>
<6.実施の形態の記録再生装置の構成>
<7.処理手順>
<8.変形例>
<1.実施の形態の記録媒体について>

図1は、実施の形態の記録媒体としての多層記録媒体1の断面構造を示している。
この図1に示されるように、多層記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、複数の記録層3が形成された記録層形成領域5、接着層6、反射膜7、及び基板8が形成されている。
ここで、本明細書において「上層側」とは、後述する記録装置(記録再生装置10)側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指す。
多層記録媒体1において、カバー層2は、例えば樹脂で構成され、その下層側に形成された記録層形成領域5の保護層として機能する。
記録層形成領域5は、図のように複数の記録層3と、それらの間に挿入された中間層4とを有して構成される。換言すれば、この場合の記録層形成領域5は、記録層3→中間層4→記録層3→中間層4・・・→記録層3の繰り替えし積層が行われて形成されたものとなっている。
記録層3は、半透明記録膜で構成される。中間層4は、例えば熱可塑性樹脂や紫外線硬化樹脂など樹脂材料で構成される。
この図では図示の都合上、記録層形成領域5内には5つの記録層3が形成されるものとしているが、これはあくまで一例であって、記録層数は「5」以外とすることができる。
ここで、記録層形成領域5において、それぞれの記録層3には、図からも明らかなようにグルーブやピット列等の形成に伴う位置案内子が形成されていない。すなわち、各記録層3は平面状に形成されているものである。
このような記録層形成領域5の作成にあたっては、現状の多層ディスクの製造で必要とされる記録層ごとの位置案内子の形成工程を不要とでき、結果、多層記録媒体1の製造コスト、量産コストを効果的に削減できる。
記録層形成領域5の下層側には、所要の接着材料で構成された接着層(中間層)6を介して、反射膜7が形成されている。
該反射膜7には、記録/再生位置を案内するための位置案内子が形成される。なお前述したように、反射膜に位置案内子が形成されているというのは、位置案内子が形成されている界面上に反射膜が形成されるという意味である。
具体的に、この場合は、図中の基板8の一方の面側に対して位置案内子が形成されることで、図のような凹凸の断面形状が与えられ、基板8の該凹凸断面形状が与えられた面上に対し反射膜7が成膜されることで、該反射膜7に位置案内子が形成されたものとなっている。
なお、基板8は、例えばポリカーボネートなどの樹脂で構成される。該基板8は、例えば上記位置案内子としての凹凸断面形状を与えるためのスタンパを用いた射出成形などによって生成することができる。
ここで、現状の記録可能型光ディスクで行われているように、上記位置案内子の形成により、多層記録媒体1の記録面内方向に平行な方向における絶対位置を表すアドレス情報(絶対位置情報:半径位置情報、及び回転角度情報)を記録することができる。例えばこの絶対位置情報は、上記位置案内子がグルーブで形成される場合には当該グルーブの蛇行(ウォブル)周期の変調により記録することができ、また上記位置案内子がピット列で形成される場合には、ピットの長さや形成間隔の変調等により記録を行うことができる。
なお後述もするように、本例では、位置案内子はピット列により形成されるものとなる。
なお、上記のように記録層3に対しては位置案内子が形成されておらず、記録層3上の記録位置の制御は、以下で説明するように位置案内子が形成された反射膜7からの反射光に基づき行われることになる。
この意味で、以下、位置案内子が形成された反射膜7(反射面)のことを、「基準面Ref」と表記する。
<2.位置制御手法について>

図2は、基準面Refに形成された位置案内子を利用した位置制御手法についての説明図である。
先ず、本実施の形態では、記録層3に対する記録時のトラッキングサーボ制御について、隣接トラックサーボ(ATS:Adjacent Track Servo)に基づくサーボ手法を採用する。この場合、記録層3を対象として照射する記録層用レーザ光としては、図のように、記録/第1再生用レーザ光と、ATS/第2再生用レーザ光とを照射するようにされる。
なお確認のため述べておくと、ATSとは、先の図37においても説明したように、記録用スポットSwrによって形成したマーク列(スパイラル)を対象として、隣接トラックサーボ用スポットSatsによりトラッキングサーボをかけることで、スパイラルのピッチが一定に保たれるようにする手法を意味するものである。
本例では、記録時に照射した2つの記録層用レーザ光は、再生時において再生用のレーザ光としても兼用する。この意味で、記録時に記録用レーザ光として照射する(つまり光源を同一とする)記録層用レーザ光については、上記のように記録/第1再生用レーザ光と表記し、記録時に隣接トラックサーボ用レーザ光(以下、単にATS光とも表記)として照射する記録層用レーザ光についてはATS/第2再生用レーザ光と表記している。
またこの場合、基準面Refの位置案内子に基づくサーボ制御の実現のため、基準面用レーザ光(図35のサーボ用レーザ光に相当)も照射する。
該基準面用レーザ光と上記記録/第1再生用レーザ光及びATS/第2再生用レーザ光とは、図のように共通の対物レンズ(後述する対物レンズ20)を介して多層記録媒体1に照射する。
なお、本例では、二重スパイラルを同時記録する関係から、基準面用レーザ光と上記記録/第1再生用レーザ光及びATS/第2再生用レーザ光との組を2つの対物レンズを介してそれぞれ照射することになるが、これについては後述する。
先の説明からも理解されるように、多層記録媒体1上では、プリアドレスは基準面Refにしか付すことができないので、記録層3上の所要のアドレスから記録を開始するとしたときは、先ず、基準面Refに記録されたアドレス情報に基づくシークを行うことになる。すなわち、基準面用レーザ光により、ライトコマンドに基づき特定される基準面Ref上の記録開始アドレスにシークを行うものである。
ここで、ATSによる記録を実現するためには、記録層3において、ATSをかけるための既記録トラックが形成されている必要がある。
この既記録トラックとして、先の図38で説明したようなプリ記録スパイラルを予め形成しておくことが考えられるが、このようなプリ記録スパイラルを記録層3ごとに予め記録しておくことは多層記録媒体1の製造コストの面で好ましくない。
この点を考慮すると、記録層3にはプリ記録トラックが形成されていないことが前提となるが、この前提の下では、既記録のスパイラルに続けて追記を行う場合以外、すなわち未記録の領域に初めて記録を開始するという場合には、上記の基準面Refを用いたシークの後、記録層3に対してATSをかけるためのガイド用のトラック(以下、ATSガイド用トラック、或いは単にガイド用トラックと称する)を形成することになる。
なお、該ガイド用トラックの形成は、本実施の形態としての記録手法に係るものとなるため、この点については後述する。
このATSガイド用トラックが形成されれば、それに対してATS/第2再生用レーザ光によるトラッキングサーボをかけることで、記録用スポットSwrが形成したトラックに対して隣接トラックサーボ用スポットSatsを追従させるという、ATSを開始することができる。
また、再生時における位置制御は、以下のようにして実現できる。
再生時においては、記録層3にマーク列が形成されているので、該マーク列を対象としてATS/第2再生用レーザ光単体でトラッキングサーボをかけることができる。
具体的に、記録層3の所定領域に記録された情報の再生時には、先ずは記録時と同様に基準面用レーザ光により基準面Refのアドレス情報に基づくシークを行う。そして、該シークが完了した位置で、対物レンズについてのトラッキングサーボ制御を基準面用レーザ光のみに基づくサーボ制御からATS/第2再生用レーザ光に基づくサーボ制御に切り替える。その後は、記録層3に記録されたアドレス情報を参照して、再生開始位置にシーク(補正シーク)することができる。
ここで、上記のように位置制御にあたり記録層用レーザ光とは別途の基準面用レーザ光を用いる手法において、基準面用レーザ光として記録層用レーザ光と同波長帯の光を用いてしまうと、基準面用レーザ光の反射光を得るべき基準面Refについて、記録層用レーザ光についての反射率を高めざるを得なくなってしまう。すなわち、その分迷光成分が増大して再生性能を著しく悪化させてしまう虞がある。
このため、基準面用レーザ光と記録層用レーザ光とはそれぞれ波長帯の異なる光を用いるものとし、基準面Refを形成する反射膜7として波長選択性を有する反射膜を用いる。
具体的に本例の場合、記録層用レーザ光(記録/第1再生用レーザ光及びATS/第2再生用レーザ光)の波長はBDの場合と同様の405nm程度、基準面用レーザ光の波長はDVD(Digital Versatile Disc)の場合と同様の650nm程度とされる。そして、反射膜7としては、基準面用レーザ光と同波長帯の光を選択的に反射し、それ以外の波長による光は透過又は吸収する波長選択性反射膜を用いる。
このような構成により、基準面Refから記録層用レーザ光の不要な反射光成分が生じてしまうことを防止でき、良好なS/N(信号対雑音比)を確保できる。
ここで、先に述べたように、ATSによれば、記録層3のトラックピッチを一定とできるので、トラックの交差等が生じて記録情報を再生不能となる事態の発生を防止することができる。
しかしながら、これはATSが理想的に機能した場合であって、実際のシステムでは、隣接トラックサーボ用スポットSatsによるトラッキングサーボ系においてトラッキングエラーの取れ残りが生じることに起因して、図3に示すように、トラッキングエラー成分が時間経過と共に(つまり周回を重ねるごとに)増大し、結果、トラッキングサーボを安定して行うことが困難となってしまう。
そこで、本実施の形態では、記録用レーザ光についての位置制御手法として、いわゆるATS+(ATSプラス)の手法を採用する。
図4は、ATS+の概念について説明するための図である。
この図4に示すように、ATS+では、先ず、基準面用レーザ光(図中では基準面サーボ用レーザ光と表記)のトラッキングエラー信号にトラッキングサーボ制御のためのフィルタ処理を施す基準面側サーボフィルタと、当該基準面側サーボフィルタの出力に基づき対物レンズをトラッキング方向に変位可能に保持するアクチュエータを駆動するためのトラッキングドライバとが設けられる。
つまりATS+では、基準面用レーザ光のトラッキングエラー信号に基づき対物レンズのトラッキングサーボ制御を行うトラッキングサーボループ(基準面側サーボ制御系とする)が形成されていることになる。
その上で、ATS+では、このような基準面側サーボ制御系と共に、ATSによるサーボ制御系が構成されるようにしている。具体的には、ATS/第2再生用レーザ光(図中ではATS光と表記)についてのトラッキングエラー信号にトラッキングサーボ制御のためのフィルタ処理を施すATS側サーボフィルタと、当該ATS側サーボフィルタにより生成されたトラッキングサーボ信号を、上記基準面側のトラッキングサーボループに対して与える加算部とを設けるようにしている。
これは、ATS側サーボフィルタによるトラッキングサーボ信号を、上記基準面側サーボ制御系の目標値(制御目標値)として与えるように構成していると換言できるものである。或いは、基準面側サーボ制御系としてのトラッキングサーボループをマイナーループとして、ATS側サーボフィルタによるトラッキングサーボ信号を当該マイナーループの目標値として入力していると表現することもできる。
このような構成とした場合、ATS制御系のトラッキング誤差は、主に、対物レンズのレンズシフトやチルト等によって生じるスポット位置ずれ(先の図36を参照)に起因して生じることになる。
そして、このようなATS側のトラッキング誤差情報が、基準面側サーボ制御系の制御目標値として与えられることで、ATS/第2再生用レーザ光のスポットSatsが、記録層3上のトラックに追従するように対物レンズが駆動されることになる。
このことからも理解されるように、ATS+としても、ATS単体とする場合と同様に、記録層3上のトラックが隣接トラックに対して重なったり交差するといった事態の発生を防止できるものとなる。
ここで、上記説明からも理解されるように、基準面側サーボフィルタを含む基準面側サーボ制御系は、主に、通常の外乱成分(つまり上記のようなレンズシフト等に伴うスポット位置ずれの要因となるディスク偏芯成分等よりも高い周波数の外乱成分)に追従する機能を担わせるべきとなる。
この意味で、基準面側サーボ制御系の制御帯域は、通常のサーボ制御とする場合と同等の制御帯域に設定する。具体的に本例の場合、基準面側サーボ制御系の制御帯域は10kHz程度に設定する。
一方、ATS側サーボフィルタを含むATS制御系については、上記通常の外乱成分への追従はさせるべきではないので、その制御帯域は、少なくとも上記基準面側サーボ制御系の制御帯域よりも低い周波数帯域に設定する。具体的に本例の場合、ATS制御系の制御帯域(ATS側サーボフィルタのカットオフ周波数)としては1kHz程度に設定している。
上記のように基準面側サーボ制御系としてのトラッキングサーボループ(マイナーループ)に対してATS制御系の制御信号を付与するようにしたATS+によれば、従来のATS単体とした場合に生じていた、先の図3に示したような発散状態を防止することができる。すなわち、記録トラックの重なりや交差の発生を防止することのできるトラッキングサーボ制御を、従来のATS単体とする場合よりも安定的なものとして実現することができる。
<3.実施の形態の記録手法>

続いて、図5〜図14を参照して、実施の形態としての記録手法について説明する。
先ず、本実施の形態では、記録レートの向上を図るべく、記録層3に対して二重のスパイラルを同時記録するものとしている。
図5は、このような二重スパイラルの同時記録を実現するための構成の概要を示している。
図示するように、本実施の形態では、それぞれが記録再生ヘッドとして機能する2つの光ピックアップOP#0、OP#1を設ける。これら光ピックアップOP♯0、OP♯1は、それぞれ、前述の基準面用レーザ光、記録/第1再生用レーザ光、ATS/第2再生用レーザ光を多層記録媒体1に対して照射するように構成されている。
図5A、図5Bではそれぞれ多層記録媒体1の断面方向、平面方向における光ピックアップOP#0,OP#1の配置状態を示しているが、図のように本例では、光ピックアップOP#0,OP#1は、多層記録媒体1の中心に対して180°異なる回転角度位置に配置するものとしている(対向配置)。
ここで、以下の記録手法についての説明においては、光ピックアップOP♯1が照射する記録/第1再生用レーザ光のビームスポットのことを、第1記録用スポットSwr♯1と表記する。
また、光ピックアップOP♯1が照射するATS/第2再生用レーザ光のビームスポットのことを、第1ATSスポットSats♯1と表記する。
また、光ピックアップOP♯0が照射する記録/第1再生用レーザ光のビームスポットについては第2記録用スポットSwr♯0と表記し、光ピックアップOP♯0が照射するATS/第2再生用レーザ光のビームスポットについては第2ATSスポットSats♯0と表記する。
図6は、本実施の形態で実現する記録手法についての説明図である。
先ず前述のように、本例では、記録層3に対する記録は、ATSに基づくトラッキング制御下にて行う(本例の場合はATS+)。
そして、このようなトラッキング制御が行われる下で、2本のスパイラルを同時記録するものである。
ここで、先の図38にて説明した従来手法では、ATS制御を前提として二重スパイラルを同時記録することはできたが、同時記録される2本のスパイラルについて、双方のベリファイを記録を中断することなく実現することができないものであった。
本実施の形態は、ATSに基づく記録を前提とし、且つ記録レート向上のため二重以上のスパイラルの同時記録を行う場合において、全てのスパイラルについて記録の中断を伴わずにベリファイを可能とすることをその課題とするものである。
上記課題の解決のため、本実施の形態では、図6に示されるように、第1記録用スポットSwr♯1によって記録された第1スパイラル(図中、黒色線)を対象として第2ATSスポットSats♯0によるトラッキングサーボがかけられ、且つ第2記録用スポットSwr♯0によって記録された第2スパイラル(図中、灰色線)を対象として第1ATSスポットSats♯1によるトラッキングサーボがかけられた状態で、第1記録用スポットSwr♯1と第2記録用スポットSwr♯0とによるユーザデータの記録を実行する。
これによれば、♯1側と♯0側とで、互いに他方の側が記録したスパイラルに対してトラッキングサーボをかけ合う(以下、ATSをかけ合うとも言う)状態が得られる。このことで、第1スパイラルと第2スパイラルのピッチを一定に保ち続けることができる。
また、上記のように互いにATSをかけ合う状態では、両記録用スポットSwrでユーザデータを記録中において、第1記録用スポットSwr♯1で書いたユーザデータについては第2ATSスポットSats♯0がこれをトレースし、第2記録用スポットSwr♯0で書いたユーザデータについては第1ATSスポットSats♯1がこれをトレースしていることになる。つまりこの結果、同時記録される第1,第2スパイラルの全てについて、記録を中断することなくベリファイを行うことができる。
ここで、先に述べたように本実施の形態では、多層記録媒体1の記録層3にプリ記録スパイラルが形成されていないことを前提としている。
これに伴い、ATSによる記録を開始するにあたっては、書き出し動作として、先に触れたATSガイド用トラックの形成を行うことになる。
このガイド用トラックは、多層記録媒体1が回転駆動される下で、基準面用レーザ光によるトラッキングサーボ、つまり基準面Refの位置案内子に基づくトラッキングサーボによって対物レンズのトラッキング位置の制御を行いつつ、記録用スポットSwrで記録することになる。
具体的に、ガイド用トラックは、一方の光ピックアップOPが記録する。
一方の光ピックアップOP側がガイド用トラックを形成することで、該ガイド用トラックを対象として、他方の光ピックアップOPのATSスポットSatsによるトラッキングサーボをかけることができる。つまりこれにより、該他方の側の光ピックアップOPについては、ATSがかかった状態とすることができる。
このように一方の光ピックアップOPによって記録したトラック(スパイラル)にATSがかかれば、他方の光ピックアップOPが記録用スポットSwrによる記録を開始することで、この記録されるトラックは一方の光ピックアップOP側が記録しているガイド用トラックに対し一定のピッチを保つことができる。
上記のように一方の光ピックアップOPによってガイド用トラックを形成することで、他方の光ピックアップOPが該ガイド用トラックにATSをかけて、ガイド用トラックに対して一定間隔を保持するトラック(第2スパイラル)を形成していくことができる。
この状態から、前述のような互いにATSをかけ合う状態に遷移させるためには、一方の光ピックアップOP側が、他方の光ピックアップOPが形成する第2スパイラル側にトラッキングサーボの引き込みができればよい。このトラッキングサーボの引き込みができれば、他方の光ピックアップOPにより記録される第2スパイラルに対して一方の光ピックアップOPのATSスポットSatsを追従させることができ、その後は、一方の光ピックアップOPによる記録トラック(第1スパイラル)が第2スパイラルに対し一定間隔を保持するように形成されていくことになる。すなわち、一定ピッチによるダブルスパイラル(第1スパイラルと第2スパイラルとのスパイラルセット)を一定のピッチで形成していくことができる。なお且つ、第1スパイラルには他方の光ピックアップOP側のATSスポットSatsが追従し、第2スパイラルには一方の光ピックアップOP側のATSスポットSatsが追従する状態が得られるので、これらのATSスポットSatsの反射光を利用して記録進行中におけるベリファイが可能となる。
但し、ここで注意すべきは、ガイド用トラックは基準面サーボ制御下で形成されるため、先の図36で説明したようなスポット位置ずれの影響を受けるという点である。すなわち、このような基準面サーボ制御下で形成されるガイド用トラックは、スレッドのガタ等の発生に起因して、トラックの交差が生じてしまう虞がある。
また、同時に記録した1組のスパイラルセットについては、再生レート向上のため2つのビームを用いて同時に再生することが考えられるが、この点を考慮すると、ユーザデータの記録開始位置や記録最小単位の境界位置(角度)は2つのスパイラル間で揃っていることが望ましいものとなる。
本実施の形態では、これらの点も考慮に入れ、互いにATSをかけ合う状態を得るための具体的な書き出し手法として、以下の図7〜図14にて説明するような手法を提案する。
先ずは、本実施の形態における、記録に関する前提条件について説明しておく。
先ず、本実施の形態において、記録の最小単位はRUB(Recording Unit Block)であるとする。このRUBは、32セクタで構成される。
また、本実施の形態において、記録層3のアドレスはセクタごとに付されているとする。以下、記録層3のアドレスはPSN(Physical Sector Number)とも表記する。
また、記録層3のアドレスは、第1スパイラル、第2スパイラルに交互に割り振られるものとする。すなわち、例えばPSN_0〜PSN_5までが存在しているとすると、第1スパイラル上にはPSN_0→PSN_2→PSN_4が連続配置され、第2スパイラル上にはPSN_1→PSN_3→PSN_5が連続配置され、PSN_0とPSN_1の組、PSN_2とPSN_3の組、PSN_4とPSN_5の組がそれぞれ隣接して配置される関係となる。
このようなアドレス配置は、再生時に2つのビームを用いてスパイラルセットを読むことで連続データが得られるようにすることを考慮してのものである。
上記の前提を踏まえた上で、先ず書き出し時には、図7に示すように、一方の光ピックアップOPにより、基準面サーボ制御下、疎ピッチで記録を開始する(<1>)。これは、前述のガイド用トラックの形成開始に相当するものである。
具体的には、一方の光ピックアップOPにおいて、基準面用レーザ光による対物レンズのトラッキングサーボ制御を実行しつつ、記録用スポットSwrによりデータ記録を開始する。
このとき、スポット位置ずれに伴う記録トラックの交差等の防止のため、ガイド用トラックのピッチは記録層3に設定されるトラックピッチTPよりも十分に大とする(疎ピッチ)。
なお、上記のようにガイド用トラックは、基準面Refに形成されるトラック(位置案内子)に基準面用レーザ光によりトラッキングサーボをかけつつ記録されるので、該ガイド用トラックのピッチは、基準面Refのトラックピッチに依存するものとなる。ガイド用トラックのピッチをスポット位置ずれを考慮して疎とするために行うべき具体的な手法の例については後に改めて説明する。
このとき、ガイド用トラック上には、ユーザデータの記録は行わない。ガイド用トラックには、ダミーデータの記録を行う。但し、ダミーデータの記録時にはアドレス情報(前述したPSN)の付加は行うものとする。
この図7を始めとして以降の図8〜図14で示される小黒丸は、RUBの境界を表すものである。
ここで、本例においては、ガイド用トラックの記録を行う光ピックアップOPが、図のように光ピックアップOP♯1であるものとする。すなわち、該光ピックアップOP♯1が第1スパイラルの記録を担い、光学ピックアップOP♯0が第2スパイラルの記録を担うものである。
上記<1>により一方の光ピックアップOP側でガイド用トラックの記録を開始した後は、図8に示すように、一方の光ピックアップOP(♯1)が記録した最新周回トラック上に対して、他方の光ピックアップOP(♯0)のATSスポットSatsによるトラッキングサーボ(以下、Tサーボとも略称する)をかける。つまり本例の場合は、先の図4にて説明したATS+としてのTサーボがかかられるようにするものである。
ここで、前述のようにガイド用トラックは基準面サーボ制御下で記録されるので、該ガイド用トラックを記録している間は、基準面Refのアドレス情報(少なくとも半径位置情報)を得ることができる。この基準面Refのアドレス情報を参照することで、ガイド用トラックの最新周回位置(半径位置)を特定することができ、この特定された半径位置(基準面アドレス)を目標アドレスとして光ピックアップOP♯0側がシークを行うことで、該光ピックアップOP♯0により形成される第2ATSスポットSatsをガイド用トラックの最新周回位置近傍に位置させることができる。
ガイド用トラックへのトラッキングサーボの引き込みを行うにあたっては、上記の基準面シークの完了に応じて、光ピックアップOP♯0において、対物レンズについてのトラッキングサーボ制御状態(基準面用レーザ光の反射光に基づくトラッキングサーボ制御状態)を解除する。
このように基準面サーボをオフして第2ATSスポットSats♯0の反射光に基づき生成されるトラッキングエラー信号をモニタすると、ディスク偏芯等の影響で該第2ATSスポットSatsをガイド用トラックが横切ることに応じた振幅が得られる。このように振幅が得られたタイミングを捉えてトラッキングサーボの引き込みを行うことで、ガイド用トラックの最新周回トラック或いはその近傍のトラックに対してトラッキングサーボをかけることができる。
このように第2ATSスポットSats♯0によるトラッキングサーボがかかれば、ガイド用トラック上のアドレス情報を読むことで最新周回トラックであるか否かの判定ができる。最終周回トラックでなければトラックジャンプを行って最新周回トラックに移動する。
例えばこのような手法により、ガイド用トラックの最新周回トラックに対してATS+としてのTサーボがかけられた状態を得ることができる。
なお、ATS+のトラッキングサーボ引き込みは、対物レンズのトラッキングサーボ制御を、図4に示した基準面側サーボフィルタとATS側サーボフィルタとの合成出力に基づくサーボ制御に切り替えることで行われるものである。
ここで、例えば上記のような第2ATSスポットSats♯0によるガイド用トラックへのサーボ引き込みを行うことを前提とした場合、ガイド用トラックの記録が仮に1周未満(本例のように対向配置の場合は半周未満)しか行われていないとすると、第2ATSスポットSats♯0がガイド用トラックを発見できず、トラッキングサーボの引き込みを行うことができない虞がある。
このため、ガイド用トラックの記録は、少なくとも1周以上(対向配置の場合は半周以上)行う。具体的に本例では、予め定められた所定の周回数分行うものとする。ガイド用トラックが多くの本数記録されていれば、その分、第2ATSスポットSats♯0に対してガイド用トラックの何れかが横切る可能性を大とできる。よって、ガイド用トラックについては、これを十分な周回数(予め定められた所定の周回数)分記録してから<2>の動作に移ることで、第2ATSスポットSats♯0をより確実にガイド用トラックに引き込むことができる。
第2ATSスポットSats♯0によりトラッキングサーボをかける処理の実行前にガイド用トラックをどの程度の本数分記録するかは、実際に実験を行った結果等に基づき定めればよい。
上記のように、光ピックアップOP♯1側が記録したガイド用トラックの最新周回トラックにトラッキングサーボがかけられた状態が得られれば、この状態にて第2記録用スポットSwr♯0による記録を開始することで、前述のように、該ガイド用トラック(第1スパイラル)に対して一定ピッチとなる第2スパイラルを形成していくことができる。
但し、本例では、前述の前提を考慮し、第2スパイラルの記録は、図9のように第1スパイラル側とRUB境界を揃えるようにして開始する(<3>)。
具体的に、先の<2>によって第2ATSスポットSats♯0がガイド用トラックをトレースしているので、該第2ATSスポットSats♯0の再生信号に基づきガイド用トラック上のRUB境界を知ることができる。このように検出されるガイド用トラックのRUB境界タイミングに応じて、第2記録用スポットSwr♯0による記録を開始する。
これにより、以降は、図10に示されるように第1スパイラルと第2スパイラルとの間でRUB境界を揃えることができる。
ここで、<3>のタイミングで開始する第2スパイラルの記録についても、ダミーデータの記録となる。この第2スパイラル側のダミーデータの記録についても、アドレス情報の付加を伴うものとなる。
上記<3>により、第2スパイラルの記録を開始した後は、図11に示されるように、他方の光ピックアップOP(OP♯0)側の記録開始角度と同角度に至った後、一方の光ピックアップOP(OP♯1)の記録用スポットSwr(Swr♯1)を他方の光ピックアップOP(OP♯0)の記録トラック側に幅寄せする(<4>)。
ここで、先に述べたように、基準面Refには、アドレス情報として絶対位置情報(半径位置情報及び回転角度情報)が記録されている。上記<4>の動作の実現にあたっては、先ず前提として、先の<3>により第2スパイラルの記録を開始したときの基準面Refのアドレス(少なくとも回転角度情報)を取得しておくことになる。なお確認のため述べておくと、本例ではATS+を行うため、記録中においても基準面用レーザ光により基準面Ref上のアドレス情報を読むことができる。
そして、光ピックアップOP♯1側の基準面用レーザ光の反射光を受光して検出される基準面Refのアドレス情報を参照し、該検出される基準面アドレスから特定される回転角度が、<3>で取得しておいた第2スパイラルの記録開始位置の回転角度と一致した以降に、幅寄せを開始する。
確認のため述べておくと、光ピックアップOP♯1側は先の<1>より基準面サーボ状態を継続しているので、上記のように基準面アドレスを読むことができる。
ここで、上記「幅寄せ」は、光ピックアップOP♯1側において、例えば基準面用レーザ光の反射光に基づき行われるトラッキングサーボ制御に係るサーボループに対してオフセットを与えるなどして、対物レンズを記録進行半径方向(半径方向において記録が進行する方向)とは逆側に強制的に移動させることで実現できる。
但し、スポット位置ずれを考慮してガイド用トラックのピッチを大としていると、第1ATSスポットSats♯1を第2スパイラルに至るまで幅寄せするには、その移動量が基準面Ref上のトラックピッチの半分以上となる場合が考えられ、その場合には基準面Refのトラッキングサーボが外れてしまうことになる。
そこで本例では、幅寄せを安定的に行うことができるように基準面Ref上の構造を工夫するものとしているが、これについては後に改めて説明する。
ここで、第2スパイラルの記録開始角度に至った以降に幅寄せを開始するものとしているのは、該記録開始角度に至る前に幅寄せを開始すると、第2スパイラルとのトラックの交差が生じてしまう虞があり、それを確実に防止するためである。
上記<4>により開始した幅寄せにより、一方の光ピックアップOP(OP♯1)のATSスポットSats(Sats♯1)が他方の光ピックアップOP(OP♯0)の記録トラックの近傍に至ったら、図12に示すように、Tサーボ引き込みを実行する(<5>)。
すなわち、光ピックアップOP♯1側において、第1ATSスポットSats♯1の反射光を受光して得られるトラッキングエラー信号の振幅をモニタし、該振幅が、トラッキングサーボの引き込みが可能なものとして予め定められた所定の態様(例えばゼロクロスなど)で得られたことに応じて、対物レンズについてのトラッキングサーボ制御を、それまでの基準面用レーザ光単体に基づくサーボ制御から、先に説明したATS+としてのサーボ制御に切り替える。
これにより以降、光ピックアップOP♯1側についてもATS+制御状態に移行することになる。
すなわち以降は、一定のピッチとされた第1スパイラルと第2スパイラルとのスパイラルセットを、一定のピッチで形成していくことができ、且つ、互いが記録したデータを互いに記録を中断することなくベリファイ可能な状態とすることができる。
上記<7>のTサーボ引き込みが完了し、互いにATSをかけ合う状態が得られた後は、その開始位置を揃えるように双方の光ピックアップOPがユーザデータの記録を開始する(図13を参照)。
つまり、<7>のTサーボの引き込みの完了後、先ずは何れか一方の光ピックアップOPがユーザデータの記録を開始する。
そして、他方の光ピックアップOP側は、自らのATSスポットSatsによって検出されるアドレス情報(つまり一方のOP側が記録しているトラックのアドレス情報)を参照して、上記一方の光ピックアップOPによるユーザデータの記録開始位置(ユーザデータ記録開始アドレスの先頭部)に至ったタイミングに応じて、ユーザデータの記録を開始する。
但し、このようにユーザデータの記録を開始した位置が、書き始め位置から十分な距離に満たない位置であると、先に説明したスポット位置ずれに起因して、再生時にこのユーザデータ記録開始位置にアクセス不能となってしまう虞がある。
その理由については、本出願人の特許出願である下記参考文献1にも詳述されているが、具体的には概ね以下のようなものである。
先ず、スポット位置ずれは、主にディスク偏芯に伴うレンズシフトに起因して生じるものとなるが、記録を行った後、その記録箇所を再生する間には、ディスクの付け替えが介在することもあり、その場合は偏芯の発生態様が記録時と再生時との間で異なることがあり、記録時のスポット位置ずれ方向と再生時のスポット位置ずれ方向とが逆方向となることもあり得る。
このように記録時のスポット位置ずれ方向と再生時のスポット位置ずれ方向とが逆方向となると、再生時に基準面Ref上で特定されるユーザデータの記録開始位置にシークを行ったとしても、記録層用レーザ光のスポットが、トラックが形成されていない領域に位置してしまうケースが生じる虞があり、その場合は記録層3上のトラックにトラッキングサーボ引き込みを行うことができず、記録層3上のユーザデータ記録開始位置に到達できない可能性がある。

・参考文献1・・・特願2010−248433
この点を考慮し、本実施の形態では、図13中の<6>と示すように、書き始めから十分な距離に至ってから、一方の光ピックアップOP(本例ではOP♯1としている)によるユーザデータの記録を開始するものとしている。
ここで、上記参考文献1から明らかなように、少なくとも再生時の基準面シークを行ったときの記録層用レーザ光のスポットがトラックの非形成領域に位置してしまうことの防止を図る上では、ユーザデータの記録を開始すべき書き始めからの距離Xは、少なくとも記録時と再生時との間での最大スポットずれ量D_maxとすればよい。
この点より本例では、書き始めからの距離Xが少なくとも該最大スポットずれ量D_max以上となった以降において、光ピックアップOP♯1によるユーザデータの記録を開始するものとする。
なお図中の<7>と示すように、光ピックアップOP♯1側がユーザデータの記録を開始した時点では、他方の光ピックアップOP♯0側はダミーデータの記録を継続している。以下のようにユーザデータの記録開始位置を揃えるためである。
上記もしたように、一方の光ピックアップOP(OP♯1)がユーザデータの記録を開始した後は、図14の<8>と示すように、他方の光ピックアップOP(OP♯0)側は一方の光ピックアップOP側のユーザデータ記録開始位置に至ったタイミングでユーザデータの記録を開始する。
これにより、第1スパイラルと第2スパイラルとでユーザデータの記録開始位置を揃えることができる。換言すれば、再生時に2つのビームを用いてこれら第1スパイラル・第2スパイラルのスパイラルセットを読むことで、連続データが得られるようにできる。
ここで、前述のように本実施の形態では、第1スパイラルと第2スパイラルとにアドレスが交互に割り振られることを前提としている。つまり、連続する一連の記録データは、RUB単位で、第1、第2スパイラルに交互に配置されるように記録が行われるべきものである。
このような記録の実現のため、本実施の形態では、記録すべき一連のユーザデータをRUB単位で第1スパイラル用記録データ、第2スパイラル用記録データに適宜分割する。
そして、このような分割により得られた第1スパイラル用記録データについては第1記録用スポットSwr♯1により記録し、第2スパイラル用記録データについては第2記録用スポットSwr♯0により記録する。これにより、ユーザデータはRUB単位で第1、第2スパイラルに交互に配置されるように記録される。
なお、前述のように第1スパイラルと第2スパイラルは記録開始位置が揃えられるので、光ピックアップOPを対向配置する本例の場合は、第1スパイラル用記録データの進捗と第2スパイラル用記録データの進捗には略半周分のタイムラグが生じる。換言すれば、第2スパイラル側は記録データを少なくとも略半周分蓄積した上で記録を行うことになる。
<4.任意ピッチスパイラル移動制御について>

ここで、上記のような実施の形態としての書き出し手法を実現するにあたっては、前述のガイド用トラックの形成時に基準面Refのトラックピッチに依存しない移動制御が実現され、また前述の「幅寄せ」の際には、基準面Refのトラッキングサーボ制御状態を維持しつつの対物レンズの強制移動を実現できることが望ましいものとなる。
例えばこれらの点を考慮し、本例では、基準面用レーザ光による基準面Ref上のトラッキングサーボ制御状態を維持したままで、任意ピッチによるスパイラル状の移動(以下、任意ピッチスパイラル移動制御、或いは可変トラックピッチ制御とも称する)が可能となるようにすべく、基準面Refの構造として、例えば下記参考文献2,参考文献3に開示されているような構造を適用する。

・参考文献2:特開2010−225237号公報
・参考文献3:特開2011−198425号公報
以下、任意ピッチスパイラル移動制御を可能とするための基準面Refの構造と、該基準面Refの構造に基づく具体的なスパイラル移動制御の手法とについて、図15〜図20を参照して説明しておく。
図15は、実施の形態の多層記録媒体1が有する基準面Refの表面を一部拡大して示した図(平面図)である。
先ず、図15においては、紙面の左側から右側に向かう方向をピット列の形成方向、つまりはトラックの形成方向としている。サーボ用レーザ光のビームスポットは、多層記録媒体1の回転に伴い、紙面の左側から右側に移動するものとする。
また、ピット列の形成方向と直交する方向(紙面の縦方向)は、多層記録媒体1の半径方向である。
また図15において、図中の白丸で示すA〜Fは、ピットの形成可能位置を表す。すなわち、基準面Refにおいて、ピットは、当該ピットの形成可能位置においてのみ形成されるものであって、ピットの形成可能位置以外にはピットは形成されない。
また、図中のA〜Fの符号の別はピット列の別(半径方向において配列されるピット列の別)を表し、これらA〜Fの符号に付される数字はピット列上におけるピットの形成可能位置の別を表す。
ここで、図中の黒太線で表す間隔(光学限界のトラック幅)は、基準面Refの光学条件から定まる最小トラックピッチ(光学的限界値によるトラックピッチ)を表している。このことからも理解されるように、この場合の基準面Refにおいては、A〜Fの計6本のピット列が、半径方向において、光学的限界値を超えたピッチで配列されていることになる。
但し、単に光学的限界値を超えたピッチでこれら複数のピット列を配列したのみでは、ピット列形成方向においてピットの形成位置が重なってしまう虞があり、つまりはピット列形成方向におけるピットの間隔が光学限界を超えてしまう虞がある。
また、後の説明から明らかなように、任意ピッチスパイラル移動制御の実現のためには、A〜Fの各ピット列についてのトラッキング誤差信号を、それぞれ個別に得ることが可能とされている必要がある。
つまりこの点においても、各ピット列の配列には工夫が施される必要がある。
これらの点を考慮し、この場合の基準面Refにおいては、A〜Fの各ピット列について以下のような条件を課す。
すなわち、

1)A〜Fの各ピット列において、ピットの形成可能位置の間隔を所定の第1の間隔に制限する。
2)このようにピットの形成可能位置の間隔が制限されたA〜Fの各ピット列を、それぞれのピットの形成可能位置がピット列形成方向において所定の第2の間隔ずつずれたものとなるようにして配列する(つまり上記第2の間隔で各ピット列の位相をずらす)。

というものである。
ここで、半径方向に配列されるA〜Fのピット列におけるそれぞれのピットの形成可能位置のピット列形成方向における間隔(上記第2の間隔)をnとおく。このとき、上記2)の条件が満たされるようにA〜Fの各ピット列が配列されることで、ピット列A−B、ピット列B−C、ピット列C−D、ピット列D−E、ピット列E−F、及びピット列F−Aの各ピット形成可能位置間の間隔は、図示するように全てnとなる。
また、A〜Fの各ピット列におけるピット形成可能位置の間隔(上記第1の間隔)は、この場合はA〜Fまでの計6つのピット列位相を実現するものとしているので、6nとなる。
このことからも理解されるように、この場合の基準面Refでは、それぞれが異なるピット列位相を有するA〜Fの複数のピット列は、それぞれ、その基本周期は上記6nとされた上で、それぞれの位相が上記nだけずらされて形成されることになる。
これにより、後述する任意ピッチによるスパイラル移動の実現手法において、A〜Fの各ピット列についてのトラッキング誤差信号をそれぞれ個別に得ることが可能とされる。
また同時に、本例の場合のようにA〜Fの各ピット列を基準面Refの光学的限界値を超えたピッチで半径方向に配列する場合において、ピット列形成方向におけるピットの間隔が光学限界を超えてしまうことの防止が図られる。
ここで、前述もしたように本例の場合、基準面Refにおける光学条件はDVDの場合と同様の波長λ=650nm程度、NA=0.65程度とされている。このことに対応し、この場合における各ピット形成可能位置の区間長は、DVDにおける最短マークと同じ3T分の区間長とし、またピット列形成方向におけるA〜Fの各ピット形成可能位置のエッジ間の間隔も、同様の3T分の長さに設定している。
この結果、上記1)2)の条件が満たされるものとなっている。
続いて、基準面Ref全体におけるピットの形成態様について理解するために、図16を参照してより具体的なピット列の形成手法について説明する。
なお図16では、基準面Refに形成されるピット列の一部(7本分)を模式的に示している。図中において、黒丸はピット形成可能位置を表す。
この図16を参照して分かるように、この場合の基準面Refにおいては、ピット列をスパイラル状に形成するものとしている。
そして、ピット列の1周ごとに、ピット列位相が上記第2の間隔(「n」)の分だけずらされるようにしてピット形成可能位置を定めることで、半径方向に配列されるピット列に関して、先に挙げた1)及び2)の条件が満たされるようにしている。
例えば、図16に示す例では、ピット列の1周目ではピット列Aとしてのピット列位相が得られるようにピット形成可能位置が定められており、図中の1周開始位置(所定の角度位置)を基準としたピット列の2周目には、ピット列Bとしてのピット列位相が得られるようにピット形成可能位置が定められている。以降も同様に、3周目にはピット列Cとしてのピット列位相が得られるようにピット形成可能位置が定められ、4周目にはピット列D、5周目にはピット列E、6周目にはピット列F、7周目には再びピット列Aといったように、ピット列の1周ごとに、ピット列位相が第2の間隔nの分だけずらされるように、ピット列の各周におけるピット形成可能位置が定められている。
図17は、基準面Refに対する具体的なアドレス情報の記録の例を示している。
なお、以下、図20までの説明においては、便宜上、トラッキングエラー信号(個々のトラッキングエラー信号)としてはプッシュプル信号に基づく信号を生成することを前提とする。
後述もするが、実際の構成では、トラッキングエラー信号としてSUM信号(和信号)に基づく信号を生成することもできる。
図17において、先ず図17Aは、それぞれ異なるピット列位相を有するようにされた各ピット列(A〜F)のピット形成可能位置の関係を模式化して示している。なお図17Aにおいては「*」マークによりピット形成可能位置を表している。
ここで、後述もするように、本例では、これらA〜Fのピット列のうちから1つのピット列を選択し、該選択した1つのピット列を対象としてトラッキングサーボをかけるようにされている。
但し、このとき問題となるのは、A〜Fの各ピット列は半径方向において光学限界を超えたピッチで配列されているという点である。すなわち、この場合において基準面用レーザ光のビームスポットがトラック上を移動(走査)して得られるトラッキングエラー信号(プッシュプル信号)としては、A〜Fの全てのピットを反映したものとなってしまうので、該トラッキングエラー信号に基づきトラッキングサーボをかけたとしても、選択した1つのピット列を追従することはできない。
このため、本例では、選択したピット列におけるピット形成可能位置のタイミングにおけるトラッキングエラー信号をサンプルし、該サンプルしたトラッキングエラー信号の値に基づいて(いわば間欠的に)トラッキングサーボをかけるということをその基本概念とする。
そして、これと同様に、アドレス情報を読む場合にも、選択したピット列に記録される情報のみが選択的に読み出されるように、該選択したピット列のピット形成可能位置のタイミングにおける和信号(sum信号)をサンプルし、その値に基づいてアドレス情報を検出するという手法を採る。
このような情報検出の手法に対応するため、本例では、ピット形成可能位置におけるピットの形成有無により、チャネルビット(記録符号)の「0」「1」を表現するフォーマットを採用するものとしている。すなわち、1つのピット形成可能位置が、1チャネルビット分の情報を担うものである。
その上で、このようなチャネルビットの複数個による「0」「1」のデータパターンにより、データビットの1ビットを表現するものとしている。
具体的に本例では、図17Bに示されるように、チャネルビット4つ分でデータビットの「0」「1」を表現するものとし、例えば4チャネルビットのパターン「1011」がデータビット「0」、4チャネルビットのパターン「1101」がデータビット「1」を表すものとしている。
このとき重要であるのは、チャネルビット「0」が連続しないという点である。つまり、チャネルビット「0」が連続してしまうということは、上述のようにトラッキングエラー信号を間欠的に用いてサーボを行うということを基本としたときに、エラー信号が得られない期間が連続してしまうということ意味するので、これに伴い、トラッキングサーボの精度を確保することが非常に困難となってしまうためである。
このため本例では、例えば上記のようなデータビットの定義により、チャネルビット「0」が連続しないという条件が満たされるようにしている。すなわち上記のようなデータビットの定義により、トラッキングサーボの精度低下が最小限に抑えられるようにしているものである。
図17Cは、シンクパターンの一例を示している。
例えばシンクパターンについては、図示するように12チャネルビットで表現するものとし、前半の8ビットを上記データビットの定義に当てはまらないチャネルビットパターン「11111111」とし、その後の4チャネルビットのパターンでシンクの別(種類)を表すものとしている。具体的に、上記8ビットに続く4チャネルビットのパターンが「1011」であればSync1、「1101」であればSync2としている。
基準面Refにおいては、アドレス情報が、上記のようなシンクの後に続けて記録されているものとする。
ここで前述もしたように、基準面Refのアドレス情報としては、ディスク上の絶対位置情報(半径位置の情報、及び回転角度情報)を少なくとも記録する。
なお確認のために述べておくと、本例では従来限界の1トラック幅内にA〜Fの複数本のピット列を配列するものとしているが、アドレス情報の記録は、各ピット列の半径位置が個別に表されるように(各ピット列の識別が可能となるように)、ピット列ごとに個別の情報が割り振られるようにして行う。すなわち、従来限界の1トラック幅内に配列されるA〜Fの各ピット列に対し同じアドレス情報を記録するものではない。
なお、図17の説明からも理解されるように、基準面Refに対しては、ピットがポジション記録されていることになる。ポジション記録とは、ピット(或いはマーク)の形成部分をチャネルデータ「1」、それ以外の部分をチャネルデータ「0」とする記録手法を指すものである。
ところで、先の図16に示したように、本例の場合、基準面Refにおけるピット列は、1本のスパイラル状で形成された上で、ピット列の1周ごとに、ピット列の位相がA→B→C→D→E→F→A・・・の順に切り替わるように、すなわちピット列の1周ごとにピット列位相が第2の間隔nの分だけずらされるように、ピット列の各周におけるピット形成可能位置が定められた構造とされている。
このことによれば、例えばA〜Fのうち或る1本のピット列を対象としてトラッキングサーボをかけることができれば、基準面Refの光学的限界値の1/6のピッチによるスパイラル移動が実現されるものとなる。
或いは、基準面Refにおける各ピット列は、図16に示すような1本のスパイラルではなく、A〜Fの6重のスパイラル状に形成したり、或いは同心円状に形成するといったことも可能である。
但し、上記の何れの構造を採った場合も、単に或る1本のピット列を対象としてトラッキングサーボをかけたのみでは、任意ピッチによるスパイラル移動を実現することはできない。
本実施の形態では、基準面Refのピット列の形成条件として上述の1)及び2)の条件を課すことによって、光学的限界値を超えたピッチで配列された各ピット列の個々を対象としてトラッキングサーボをかけ分けることができるようにしている。その上で、トラッキングエラー信号に時間経過と共に上昇するオフセットを与えて、A〜Fの各ピット列を順次渡っていくことにより、任意ピッチによるスパイラル移動が実現されるようにする。
ここで、任意ピッチによるスパイラル移動を実現するためには、サーボ対象とするピット列を、ピット列A→ピット列B→ピット列C・・・などのように順次外周側に隣接するピット列に切り替えていくことが必要となる。
このようにサーボ対象とするピット列を順次切り替えていくという動作を実現するためには、A〜Fの各位相によるピット列についてのトラッキング誤差信号が、それぞれ個別に得られるようにすることが必要となる。A〜Fの各ピット列に対するトラッキング誤差信号を区別できなければ、そもそもサーボ対象とするピット列を切り換えるということはできないためである。
図18は、多層記録媒体1の回転に伴い基準面Ref上を基準面用レーザ光のスポットが移動する様子と、その際に得られるSUM信号、SUM微分信号、及びP/P信号(プッシュプル信号)の波形との関係を模式的に示している。
なお、SUM微分信号は、基準面用レーザ光の反射光に基づき得られるSUM信号を微分して得られる信号である。
ここで、この図18では説明の便宜上、図中の各ピット形成可能位置の全てにピットが形成されているものとしている。
図示するように、多層記録媒体1の回転に伴い基準面用レーザ光のビームスポットが移動することに伴っては、SUM信号は、A〜Fの各ピットのピット列形成方向における配置間隔に応じた周期でその信号レベルがピークを迎えることになる。つまりこのSUM信号は、A〜Fの各ピットのピット列形成方向における間隔(形成周期)を表していることになる。
ここで、この図の例ではビームスポットがピット列A上に沿って移動するものとしているので、SUM信号は、ピット列形成方向におけるピットAの形成位置の通過時にピーク値が最大となり、またピットB〜ピットDの各形成位置にかけて徐々にピーク値が減少していく傾向となる。そしてその後、ピットEの形成位置→ピットFの形成位置の順でピーク値は上昇傾向に転じ、再びピットAの形成位置に至ることでピーク値が最大となる。すなわち、ピット列形成方向における上記ピットE、Fの形成位置においては、内周側に隣接するピット列E、Fにおけるピットの影響を受けるので、SUM信号のピーク値はピットE、Fの形成位置ごとで順に上昇することになる。
また、SUM微分信号、及びトラッキング誤差信号としてのP/P信号としては、それぞれ図示するような波形が得られる。
ここで注目すべきは、トラッキング誤差信号としてのP/P信号は、所定の間隔nずつ離間されたA〜Fの各ピット形成可能位置ごとに、ビームスポットとピット列との相対的な位置関係を表すようにして得られるという点である。
また、SUM微分信号は、各ピット列A〜Fのピット形成位置(厳密にはピット形成可能位置である)のピット列形成方向における間隔を表すものとなる。
従ってこのSUM微分信号に基づき、ピット列形成方向における各ピット列A〜Fのピット形成可能位置の間隔を表すクロックCLKを得ることができる。
具体的に、この場合のクロックCLKは、各ピットのセンター位置(ピークポジション)に相当する位置(タイミング)を立ち上がり位置(タイミング)とする信号となる。
図19は、クロックCLKと、該クロックCLKに基づき生成される各selector信号の波形と、基準面Refに形成された各ピット列(の一部)との関係を模式化して示している。
この図に示すように、クロックCLKとしては、各ピット(ピット形成可能位置)のピークポジションに対応したタイミングで立ち上がり、且つ各立ち上がり位置間の中間点が立ち下がり位置とされた信号となる。
このようなクロックCLKは、SUM微分信号から生成されるタイミング信号(SUM微分信号のゼロクロスタイミングを表す)を入力信号(基準信号)としたPLL(Phase Locked Loop)処理で生成できる。
そして、このようにピットA〜Fの形成間隔に応じた周期を有するクロックCLKから、A〜Fの個々のピット形成可能位置のタイミングを表す6種のselector信号を生成する。具体的にこれらselector信号としては、それぞれクロックCLKを1/6に分周して生成されたものとなっており、且つそれぞれの位相が1/6周期ずつずらされたものとなっている。換言すれば、これら各selector信号は、それぞれの立ち上がりタイミングが1/6周期ずつずれたものとなるように、クロックCLKをそれぞれのタイミングで1/6に分周して生成されるものである。
これらselector信号は、それぞれ、A〜Fの対応するピット列のピット形成可能位置のタイミングを表す信号となる。本例では、これらselector信号を生成した上で、任意のselector信号を選択し、該選択したselector信号が表す期間内におけるP/P信号に従ってトラッキングサーボ制御を行うことで、A〜Fのピット列のうちの任意のピット列上に基準面用レーザ光のビームスポットをトレースさせる。つまりこのようにすることで、A〜Fの各ピット列のうちから、サーボ対象とするピット列を任意に選択できるものである。
このようにして、A〜Fの対応するピット列のピット形成可能位置のタイミングを表す各selector信号を生成し、これらのうち任意のselector信号を選択し、該選択したselector信号が表す期間内のトラッキング誤差信号(P/P信号)に基づいてトラッキングサーボ制御を行うことで、A〜Fのうちの任意のピット列を対象としたトラッキングサーボを実現できる。つまり、上記selector信号の選択により、サーボ対象とするピット列についてのトラッキング誤差信号の切り換えを行うことができ、これによってサーボ対象とするピット列の切り換えが実現されるものである。
図20は、任意ピッチによるスパイラル移動実現のための具体的な手法についての説明図として、トラッキングエラー信号TE-svに対して与えるオフセットと、基準面Refにおけるビームスポットの移動軌跡との関係を示している。
なお、ここで言うトラッキングエラー信号TE-svは、先に説明したselector信号に基づきP/P信号をサンプルホールドして得られる信号を意味する。すなわち、サーボ対象とするピット列についてのP/P信号(トラッキング誤差信号)を表すものである。
この図20では、オフセットの付与によって、ビームスポットがピット列A→ピット列Bを渡っていく様子を例示している。
先ず、任意ピッチによるスパイラル移動を実現するにあたりサーボ対象のピット列を順次切り替えていくという手法を採る場合、その切り換え位置(タイミング)を予め定めておくことになる。この図の例では、このようなサーボ対象ピット列の切り換え位置を、隣接関係にあるピット列との間の中間点となる位置(半径方向における)に設定するものとしている。
ここで、或るスパイラルピッチを実現しようとしたとき、そのスパイラルピッチの実現のためにビームスポットをディスク上のどの位置を通過させていけばよいかは、基準面Refのフォーマットから予め計算により求めておくことができる。つまりこのことからも理解されるように、上記のようにビームスポットが隣接ピット列との間の中間点に至る位置は、予め計算によって求めておくことができるものである。
このように、予め計算などにより求められた上記中間点としての位置(どのアドレスブロックの何クロック目)に至ったことに応じて、サーボ対象とするピット列をそれまで対象としていたピット列の外側に隣接するピット列に順次切り換えていくことになる。
一方で、ビームスポットを半径方向に移動させるためには、トラッキングエラー信号TE-svに対し、図示するような鋸歯状波によるオフセットを与える。このオフセットの傾きの設定により、スパイラルピッチを任意のピッチに設定できる。
ここで、任意のスパイラルピッチの実現のために与えるオフセットは、上述のようにビームスポットが隣接ピット列との間の中間点に至るタイミングで順次サーボ対象ピット列の切り換えを行う関係から、上記中間点ごとに極性が変化する波形となる。つまり、上記中間点となる位置にビームスポットを移動させるために必要なオフセット量は、例えばピット列Aを対象としたサーボ時には「+α」、隣接するピット列Bを対象としたサーボ時には「−α」となるので、上記中間点に至るタイミングとしてのサーボ対象ピット列の切り換えタイミングにおいては、上記オフセットの極性を反転させる必要がある。この点から、この場合において与えるべきオフセットの波形は、上記のように鋸歯状波による波形となるものである。
確認のために述べておくと、このようなオフセットの波形としても、実現しようとするスパイラルピッチの情報と、基準面Refのフォーマットの情報とに基づき予め計算などにより求めておくことができる。
このように、予め定められた鋸歯状波によるオフセットをトラッキングエラー信号TE-svに対して与えつつ、ビームスポットが上記中間点としての予め定められた隣接ピット列との間の所定位置に至るタイミングごとにトラッキングサーボの対象とするピット列をそれまで対象としていたピット列の外側に隣接するピット列に切り換える。
このことで、任意ピッチによるスパイラル移動を実現することができる。
なお、上記説明では、トラッキングサーボの対象とするピット列についてのトラッキングエラー信号TE-svを、P/P信号に基づき生成するものとしたが、例えば先の参考文献にも開示されているように、トラッキングエラー信号TE-svは、トラッキング誤差の検出対象としたいピット列に対して位相差が等しい2つのピット列のそれぞれについてのSUM信号の差分を計算して求めることもできる。
また、ピット列の位相は6相に限定されるべきものではない。
<5.実施の形態の再生手法>

先に説明した実施の形態の記録手法によれば、第1記録用スポットSwr♯1と第2記録用スポットSwr♯0とを用いた同時記録により、ユーザデータを2倍の記録レートにより記録することができる。
再生時には、このような同時記録によって第1スパイラルと第2スパイラルとに記録されたデータを2ビームを用いて同時再生することにより、再生レートの向上を図る。
ここで、確認のため述べておくと、仮に、記録時に1ビームのみを用いた1本のスパイラルの記録(単純スパイラル記録)を行ったとすると、再生時に2ビームを用いた同時再生を行ったとしても再生レートの向上を図ることができない。
図21は、この点につき説明するための図であるが、単純スパイラル記録を行った場合、2ビームを用いた同時再生を行ったとしても、図21Aに示すように最初の1周については同時再生が実現されるものの、1周分の再生を終了した以降は、一方のビームが他方のビームによる再生済み部分をなぞることとなってしまい、再生レート(再生データ転送速度)の倍増効果が得られなくなってしまう。
この意味で、2ビームを用いて再生レートの向上を図る意味では、記録時に少なくとも2つのスパイラルが同時記録されていることを要するものとなる。
再生レート倍増効果を得るための条件、すなわち複数ビームで同時記録したデータについて複数ビームを用いた同時再生を連続的に(複数周回にわたって)実現するための条件は、以下に示す通りである。
すなわち、同時記録されるスパイラル数をS[本]、スポット間隔をP[トラック]としたとき、

S/GCD(S,P)

が偶数となるという条件である。但し、GCD(a,b)はaとbの最大公約数を意味する。
ここで、本実施の形態では、それぞれが記録層用レーザ光を2つ照射するピックアップOPを2つ備えているので、計4つの再生用レーザ光を同時照射することができる。これら4つの再生用レーザ光を用いれば、再生レートをさらに倍向上させることが可能となる。
図22は、4つの再生用レーザ光を用いた同時再生により再生レートをさらに向上させるための具体的な手法についての説明図である。
ここで、それぞれの光ピックアップOPにおいて、記録/第1再生用レーザ光とATS/第2再生用レーザ光の組は、それぞれ共通の対物レンズを介して照射される。換言すれば、♯0の再生ビームの組、♯1の再生ビームの組は、それぞれ独立して位置制御が可能な状態にある。
このように独立して位置制御が可能な♯0の再生ビームの組、♯1の再生ビームの組が存在する場合は、これらの組について、互いが互いの再生区間を追い越すように再生を実行することで、一方の再生ビームの組が他方の再生ビームの組による再生区間を重複して読み出さないようにすることができる。つまり重複が無い分、再生レートの向上が図られるものである。
また、再生レートの向上効果を最大限得るためには、♯0の再生ビームの組の合計の再生区間長と♯0の再生ビームの組の合計の再生区間長とが、均等とされることを要する。これらの区間長に差があるということは、片側の組のみで再生を行っている時間が存在するということになるので、結果として再生レートの向上効果が低下してしまうためである。
上記の点に鑑み、本実施の形態では、♯0の再生ビームの組による読出区間長と♯1の再生ビームの組とによる読出区間長とを均等に割り振るものとし、かつ各組が他方の読出区間を追い越すように再生動作が実行されるようにする。
図22Aは、♯0の組と♯1の組の読出区間の割り振りの例を示している。
ここで、説明上、以下の2つの用語を定義する。
・読出全長・・・リードコマンド等で指示された読み出し区間の全長
・連続読出区間・・・♯0の組、♯1の組がそれぞれ連続して読み出しを行う区間
またここでは図示の都合上、図中の1本の矢印の長さが1RUBの長さを表しているものとする。
またこの場合、連続読出区間長は2RUBとされているとする。
図22Aに示す例は、読出全長が10RUB分の長さとされた場合の割り振り例を示している。
図示するようにこの場合は、「アドレスAD♯1_1」〜「アドレスAD♯0_1−1」までの1RUBの区間、「アドレスAD♯1_2」〜「アドレスAD♯0_2−1」までの2RUB(=連続読出区間長)の区間、及び「アドレスAD♯1_3」〜「アドレスAD♯0_3−1」までの2RUBの区間が♯1の組側の読出区間として割り振られる。
一方で、♯0側の読出区間は、「アドレスAD♯0_1」〜「アドレスAD♯1_2−1」までの2RUBの区間、「アドレスAD♯0_2」〜「アドレスAD♯1_3−1」までの2RUBの区間、及び「アドレスAD♯0_3」からの1RUBの区間となる。
このような割り振りにより、♯0の再生ビームの組による読出区間長と♯1の再生ビームの組とによる読出区間長とが均等とされ、かつ各組が他方の読出区間を追い越すように再生動作が実行されるようにできる。
♯0の再生ビームの組による読出区間長と♯1の再生ビームの組とによる読出区間長とを均等とし、かつ各組が他方の読出区間を追い越すように再生動作が実行されるようにするための割り振り手法を一般化すると、例えば次のようになる。
先ずは、

読出全長÷連続再生区間長

を計算する。
この計算の結果、余りが出る場合と出ない場合、及び商が奇数である場合と偶数である場合とで場合分けを行う。
具体的に、上記計算の結果余りが出ないとされた場合において、商が偶数のときは、単純に連続読出区間長の間隔で♯0、♯1の読出区間を交互に区切る。
一方、商が奇数のときは、「連続読出区間長÷2」の間隔と連続読出区間長の間隔とを併用して、♯0と♯1の読出区間を交互に区切る。図22Aに示した例は、このケースに該当する。
また、上記の計算の結果余りが出たとされた場合において、商が偶数のときは、「余り÷2」の間隔と連続読出区間長の間隔とを併用して♯0、♯1の読出区間を交互に区切る。
一方、商が奇数のときは、「余り÷2+連続読出区間長÷2」の間隔と連続読出区間長の間隔とを併用して♯0、♯1の読出区間を交互に区切る。
例えばこのような手法によって♯0側と♯1側の読出区間を区切ることで、♯0の再生ビームの組による読出区間長と♯1の再生ビームの組による読出区間長とが均等とされ、かつ各組が他方の読出区間を追い越すように再生動作が実行されるようにできる。
すなわち、4つの再生用ビームを用いてさらに略倍の再生レートが実現されるようにできる。
図22B、図22Cは、4つの再生用ビームを用いる場合で図22Aの割り振りを行った場合に読出全長の再生に要する時間(図22B)と、1つの光ピックアップOP(2つの再生用ビーム)のみを用いた場合に読出全長の再生に要する時間(図22C)と対比して示している。
図22Bに示すように、図22Aに示した割り振りを行った場合、♯1側は「アドレスAD♯1_1」〜「アドレスAD♯0_1−1」までの1RUB分(本例では連続読出区間長÷2分)の読出を行った後、シークを行って「アドレスAD♯1_2」〜「アドレスAD♯0_2−1」までの連続読出区間長分の読出を行う。そして該読出の完了後、再びシークを行って「アドレスAD♯1_3」〜「アドレスAD♯0_3−1」までの連続読出区間長分の読出を行う。
また、♯0側は、「アドレスAD♯0_1」〜「アドレスAD♯1_2−1」までの連続読出区間長分の読出を行った後、シークを行って「アドレスAD♯0_2」〜「アドレスAD♯1_3−1」までの連続読出区間長分の読出を行う。そして該読出の完了後、再びシークを行って「アドレスAD♯0_3」からの1RUB分の読出を行う。
図22Bと図22Cとを対比して分かるように、上記により説明した本実施の形態の再生手法によれば、1つの光ピックアップOPで2ビーム再生を行う場合との比較で、再生に要する時間は略1/2に低減され、再生レートを略2倍向上できる。
ここで、先の図5からも理解されるように、本例では2つの光ピックアップOPを用いて上記のような分割再生を行うものとなる。このように分割再生を別々の光ピックアップOPを用いて行うものとすれば、広範な追い越しが可能となるため、その分連続読出区間を長く設定することが可能となる。これにより、追い越しのためのシーク回数を削減でき、再生レートのさらなる向上が図られる。
ところで、本実施の形態のように2本のスパイラルを1セットとしてそれらの記録データを2ビームで同時再生するといった場合において、再生対象とするスパイラルセットにアクセスするとしたときは、単純には、対象とする2本のスパイラルのうちの手前側のスパイラルを目標としてシーク動作を行うことが考えられる。
図23は、このようにスパイラルセットの手前側のスパイラルを目標としてシークを行った際の様子を示している。
具体的にこの場合は、先行スポットを形成する記録/第1再生用レーザ光のビームスポットがスパイラルセットの手前側のスパイラルに載る位置を目標としてシーク動作を行った場合を例示している。
このようなシークを行ってしまうと、図のように、再生開始時の1周目は記録/第1再生用レーザ光が対象スパイラルの片側を読むことができるが、ATS/第2再生用レーザ光は対象スパイラルの何れにも載っておらず、該第2再生用レーザ光側で1周分の無駄読み(図中点線)が生じてしまう。
さらに、再生終了側では、第1再生用レーザ光側が読出を行うべき部分を全て読み出した時点で、第2再生用レーザ光側はさらに1周分の読み出しを実行しなければならない。つまり最後の1周区間では、第1再生用レーザ光側に1周分の無駄読み(点線)が生じてしまうものである。
これらの無駄読みの防止を図るべく、本実施の形態では、図24に示されるように、再生ビームの全てが対象とするスパイラルセットにおけるそれぞれのスパイラルに載る位置を目標としてシーク動作を行う。すなわち、2つの再生ビームの各1つが再生対象とするデータが記録されたスパイラルセットにおける対応する各1つのスパイラル上にそれぞれ載る位置を目標としてシーク動作が行われるようにするものである。
これによれば、図23に示したような無駄読み部分が生じないようにできる。
ここで、後述するように本実施の形態では、再生時における記録層3上でのトラッキング位置制御は、後行スポットを形成するATS/第2再生用レーザ光の反射光に基づき行うものとしている(図25〜図27を参照)。このような構成とすることで、記録層3上のシーク動作については、単純に、対象とするスパイラルセットの手前側のスパイラルを目標としてシーク動作を行うことで、再生ビームの全てが対象とするスパイラルセットにおけるそれぞれのスパイラルに載る位置を目標としたシーク動作が実現されるようにしている。
<6.実施の形態の記録再生装置の構成>

続いて、図25〜図27を参照して、実施の形態に係る記録再生装置10の構成について説明する。
図25は、記録再生装置10が備える主に光学系の構成についての説明図であり、具体的には、記録再生装置10が備える光ピックアップOP#0,OP#1の一方のみを示している(特に区別する必要がない場合、「光ピックアップOP」と表記する)。他方も同様の構成と考えればよい。
先ず、記録再生装置10に装填された多層記録媒体1は、当該記録再生装置10における所定位置においてそのセンターホールがクランプされるようにセットされ、図中のスピンドルモータ30による回転駆動が可能な状態とされる。
光ピックアップOPは、スピンドルモータ30により回転駆動される多層記録媒体1に対して、カバー層2側からレーザ光を照射するように配置される。
光ピックアップOP内には、記録層用レーザ光の光源である記録層用レーザ11-1、11-2とが設けられる。
また、基準面Refに形成された位置案内子を利用した位置制御及び基準面アドレスの読出を行うための光である基準面用レーザ光の光源である基準面用レーザ24が設けられる。
また、光ピックアップOPには、記録層用レーザ光と基準面用レーザ光との多層記録媒体1への出力端となる対物レンズ20が設けられる。さらに、記録層用レーザ光の多層記録媒体1からの反射光を受光するための記録層用受光部23と、基準面用レーザ光の多層記録媒体1からの反射光を受光するための基準面用受光部29とが設けられる。
そして、光ピックアップOPにおいては、記録層用レーザ光を対物レンズ20に導くと共に、該対物レンズ20に入射した多層記録媒体1からの反射光を記録層用受光部23(23-1、23-2)に導くための光学系が形成される。
記録層用レーザ11-1、11-2は、レーザ駆動信号Dr1,Dr2により発光駆動される。
記録層用レーザ11-1は、記録/第1再生用レーザ光の光源であり、記録層用レーザ11-2は、ATS/第2再生用レーザ光の光源である。
なお、「記録層用レーザ光」は、「記録/第1再生用レーザ光」と「ATS/第2再生用レーザ光」の総称とする。
記録層用レーザ11-1、11-2より出射された2系統の記録層用レーザ光は、図のようにコリメートレンズ12を介して平行光となるように変換された後、偏光ビームスプリッタ13に入射する。
偏光ビームスプリッタ13は、このように光源側から入射した記録層用レーザ光については透過するように構成されている。
なお、記録層用レーザ11-1、11-2より出射された2系統の記録層用レーザ光は、不図示のビームスプリッタ等により、図中のフロントモニタFr1、Fr2にそれぞれ分岐して導かれる。
これらフロントモニタFr1、Fr2はAPC(Auto Power Control)で必要とされるパワーモニタ用のフォトディテクタである。
偏光ビームスプリッタ13を透過した記録層用レーザ光は、固定レンズ14、可動レンズ15、及びレンズ駆動部16を有して構成されるフォーカス機構に入射する。このフォーカス機構は、記録層用レーザ光についての合焦位置の調整のために設けられたものであり、これらの記録層用レーザ11-1、11-2に近い側が固定レンズ14とされ、遠い側に可動レンズ15が配置され、レンズ駆動部16によって可動レンズ15側がレーザ光軸に平行な方向に駆動されるように構成されている。
上記フォーカス機構を形成する固定レンズ14及び可動レンズ15を介した記録層用レーザ光は、ミラー17にて反射された後、1/4波長板18を介してダイクロイックプリズム19に入射する。
ダイクロイックプリズム19は、その選択反射面が、記録層用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されている。従って上記のように入射した記録層用レーザ光は、ダイクロイックプリズム19にて反射される。
ダイクロイックプリズム19で反射された記録層用レーザ光は、図示するように対物レンズ20を介して多層記録媒体1(所要の記録層3)に対して照射(合焦)される。
対物レンズ20に対しては、該対物レンズ20をフォーカス方向(多層記録媒体1に対して接離する方向)、及びトラッキング方向(上記フォーカス方向に直交する方向:ディスク半径方向)に変位可能に保持する2軸アクチュエータ21が設けられる。
2軸アクチュエータ21には、フォーカスコイル、トラッキングコイルが備えられ、それぞれに駆動信号(後述するドライブ信号FD-sv、TD)が与えられることで、対物レンズ20をフォーカス方向、トラッキング方向にそれぞれ変位させる。
ここで、上記のように多層記録媒体1に対し記録層用レーザ光が照射されることに応じては、該多層記録媒体1(記録再生対象とする記録層3)より記録層用レーザ光の反射光が得られる。
このように得られた記録層用レーザ光の反射光は、対物レンズ20を介してダイクロイックプリズム19に導かれ、該ダイクロイックプリズム19にて反射される。
ダイクロイックプリズム19で反射された記録層用レーザ光の反射光は、1/4波長板18→ミラー17→フォーカス機構(可動レンズ15→固定レンズ14)を介した後、偏光ビームスプリッタ13に入射する。
このように偏光ビームスプリッタ13に入射する記録層用レーザ光の反射光は、往路と復路とで1/4波長板18を2回通過することで、往路光との比較でその偏光方向が90度回転していることになる。この結果、上記のように入射した記録層用レーザ光の反射光は、偏光ビームスプリッタ13にて反射される。
偏光ビームスプリッタ13にて反射された記録層用レーザ光の反射光は、集光レンズ22を介して記録層用受光部23の受光面上に集光する。具体的に、記録層用受光部23としては、図のように2系統の記録層用レーザ光に対応して、記録層用受光部23-1、23-2が設けられており、記録/第1再生用レーザ光の反射光は記録層用受光部23-1の受光面に集光し、ATS/第2再生用レーザ光の反射光は記録層用受光部23-2の受光面に集光するようにされている。
記録層用受光部23-1、23-2でそれぞれ受光して得られる受光信号のことを、以下、受光信号DT-r1、DT-r2と表記する。
また、光ピックアップOP内には、基準面用レーザ24より出射された基準面用レーザ光を対物レンズ20に導き且つ、該対物レンズ20に入射した多層記録媒体1からの基準面用レーザ光の反射光を基準面用受光部29に導くための光学系が形成される。
基準面用レーザ24は、レーザ駆動信号DrRにより発光駆動される。
図示するように、基準面用レーザ24より出射された基準面用レーザ光は、コリメートレンズ25を介して平行光となるように変換された後、偏光ビームスプリッタ26に入射する。偏光ビームスプリッタ26は、このように基準面用レーザ24側から入射した基準面用レーザ光(往路光)は透過するように構成される。
偏光ビームスプリッタ26を透過した基準面用レーザ光は、1/4波長板27を介してダイクロイックプリズム19に入射する。
先に述べたように、ダイクロイックプリズム19は記録層用レーザ光と同波長帯の光は反射しそれ以外の波長による光は透過するように構成されているため、基準面用レーザ光はダイクロイックプリズム19を透過し、対物レンズ20を介して多層記録媒体1(基準面Ref)に照射される。
また、このように多層記録媒体1に基準面用レーザ光が照射されたことに応じて得られる基準面用レーザ光の反射光(基準面Refからの反射光)は、対物レンズ20を介した後ダイクロイックプリズム19を透過し、1/4波長板27を介して偏光ビームスプリッタ26に入射する。
このように多層記録媒体1側から入射した基準面用レーザ光の反射光は往路と復路とで1/4波長板27を2回通過しているためその偏光方向が往路光との比較で90度回転しおり、従って基準面用レーザ光の反射光は偏光ビームスプリッタ26にて反射される。
偏光ビームスプリッタ26にて反射された基準面用レーザ光の反射光は、集光レンズ28を介して基準面用受光部29の受光面上に集光する。
ここで、基準面用受光部29が基準面用レーザ光の反射光を受光して得られる受光信号については、受光信号DT-svと表記する。
ここで、先の図1に示したように多層記録媒体1は、記録層形成領域5の下層側に対して基準面Refが設けられるので、記録時には、このように記録層形成領域5の下層側に設けられた基準面Refに対して基準面用レーザ光が合焦するように対物レンズ20のフォーカスサーボ制御が行われる。その上で、記録層用レーザ光については、記録層用レーザ光の反射光に基づくフォーカスサーボ制御によって先のフォーカス機構(レンズ駆動部16)を駆動することで、記録層用レーザ光が基準面Refよりも上層側に形成された記録層3に合焦するように、対物レンズ20に入射する記録層用レーザ光のコリメーション状態が調整されることになる。
また、再生時における記録層用レーザ光のトラッキングサーボ制御については、該記録層用レーザ光のスポットを、再生対象とする記録層3に形成されたマーク列に追従させるようにして行う。すなわち、再生時における記録層用レーザ光についてのトラッキングサーボ制御は、当該記録層用レーザ光の反射光に基づき対物レンズ20の位置を制御することで実現できる。後の説明から明らかとなるように、本例の場合、記録層用レーザ光についてのトラッキングサーボ制御は、ATS/第2再生用レーザ光側の反射光に基づき行われる。
なお、再生時のフォーカスサーボ制御は、記録時と同様でよい。
図26は、実施の形態の記録再生装置10の内部構成(主に記録再生処理系)を示している。
なお図26において、光ピックアップOP(OP#0,OP#1)の内部構成については、図25に示した構成のうち、記録層用レーザ11-1、11-2、基準面用レーザ24、記録層用受光部23-1、23-2、及び基準面用受光部29のみを示している。
先ず図26において、光ピックアップOP#0に対応して信号処理部51#0,52#0,53#0が設けられている。
信号処理部51#0は、光ピックアップOP#0の記録層用レーザ11-1に対してレーザ駆動信号Dr1を与えて記録/第1再生用レーザ光の出力を実行させる。またその反射光検出信号である受光信号DT-r1を記録層用受光部23-1から入力し、処理を行う。
信号処理部52#0は、光ピックアップOP#0の記録層用レーザ11-2に対してレーザ駆動信号Dr2を与えてATS/第2再生用レーザ光の出力を実行させる。またその反射光検出信号である受光信号DT-r2を記録層用受光部23-2から入力し、処理を行う。
信号処理部53#0は、光ピックアップOP#0の基準面用レーザ24に対してレーザ駆動信号DrRを与えて基準面用レーザ光の出力を実行させる。またその反射光検出信号である受光信号DT-svを基準面用受光部29から入力し、処理を行う。
同様に、光ピックアップOP#1に対応して信号処理部51#1,52#1,53#1が設けられる。
信号処理部51#1は、光ピックアップOP#1の記録層用レーザ11-1に対してレーザ駆動信号Dr1を与えて記録/第1再生用レーザ光の出力を実行させる。またその反射光検出信号である受光信号DT-r1を記録層用受光部23-1から入力し、処理を行う。
信号処理部52#1は、光ピックアップOP#1の記録層用レーザ11-2に対してレーザ駆動信号Dr2を与えてATS/第2再生用レーザ光の出力を実行させる。またその反射光検出信号である受光信号DT-r2を記録層用受光部23-2から入力し、処理を行う。
信号処理部53#1は、光ピックアップOP#1の基準面用レーザ24に対してレーザ駆動信号DrRを与えて基準面用レーザ光の出力を実行させる。またその反射光検出信号である受光信号DT-svを基準面用受光部29から入力し、処理を行う。
記録処理部31は、例えばホスト機器等から入力される記録データ(ユーザデータ)について、インターリーブ、エラー訂正符号の付加、記録用エンコード等を行い、RUB形式の記録変調符号(記録データ)を生成する。
具体的に記録処理部31は、入力される記録データに対してエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化処理を施すなどして、記録層3を対象として実際に記録されるべき例えば「0」「1」の2値データ列である記録変調符号列を得る。
このとき、記録処理部31は、後述するコントローラ44からの指示に応じて記録データに対するアドレス情報(記録層アドレス)の付加処理も行う。
そして本例の場合、記録処理部31は、記録データをRUB単位で第1スパイラル用記録データ、第2スパイラル用記録データに分割する処理も行う。該分割により得られた第1スパイラル用記録データは記録データRDT♯1として信号処理部51♯1に与えられる。また、第2スパイラル用記録データは記録データRDT♯0として信号処理部51♯0に対して与えられる。
なお、記録層アドレスを付す順は、前述のように第1スパイラルと第2スパイラルとで交互となるようにする。
また、記録処理部31は、コントローラ44からの指示に応じ、先の図7〜図14にて説明した書き出し時に対応してダミーデータの出力も行う。
再生時には、光ピックアップOP#0側では、信号処理部51#0、52#0でデータ再生処理が行われ、光ピックアップOP#1側では、信号処理部51#1、52#1でデータ再生処理が行われる。
前述のように本例では♯0側と♯1側とでそれぞれ2ビームを用いた同時再生を実行するので、信号処理部51#0、52#0、信号処理部51#1、52#1からは、それぞれ再生データPBD#0-1,PBD#0-2,PBD#1-1,PBD#1-2の4系統が得られ、これらが再生処理部35に供給されることになる。
再生処理部35は、これらの各信号処理部51#0、52#0、51#1、52#1からの再生データPBD#0-1,PBD#0-2,PBD#1-1,PBD#1-2をそれぞれ入力し、各再生データをPSN順に並べ直して元の一連の再生データを生成する。そして一連の再生データを図示しないホスト機器等に送信出力する。
光ピックアップOP#0側についてのサーボ制御系として、記録層用サーボ回路36#0、基準面移動制御・アドレス検出部39#0、及びFサーボ回路(Fはフォーカスの意、以下同様)45♯0が設けられる。
記録層用サーボ回路36#0には、信号処理部52#0からトラッキングエラー信号TE-r、フォーカスエラー信号FE-rが供給される。記録層用サーボ回路36#0はこれらのエラー信号に基づいて後述するようにサーボ制御のための動作を行う。
また、Fサーボ回路45♯0には信号処理部53#0により生成されたフォーカスエラー信号FE-svが供給され、Fサーボ回路45#0は、該フォーカスエラー信号FE-svに基づいて光ピックアップOP#0側の基準面用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御のための動作を行う。
また、基準面移動制御・アドレス検出部39#0には、光ピックアップOP♯0側におけるATS/第2再生用レーザ光の反射光検出信号である受光信号DT-r2が光ピックアップOP♯0側の記録層用受光部23-2から入力される。
基準面移動制御・アドレス検出部39♯0は、上記受光信号DT-r2に基づき、後述するように基準面Ref上における基準面用レーザ光のスポット位置の移動制御、及び基準面Refに記録されたアドレス情報(基準面アドレス)の検出を行う。
また、光ピックアップOP#1側についてのサーボ制御系として、記録層用サーボ回路36#1、基準面移動制御・アドレス検出部39#1、及びFサーボ回路45♯1が設けられる。
記録層用サーボ回路36#1には、信号処理部52#1からトラッキングエラー信号TE-r、フォーカスエラー信号FE-rが供給される。記録層用サーボ回路36#1はこれらのエラー信号に基づいて後述するようにサーボ制御のための動作を行う。
また、Fサーボ回路45♯1には信号処理部53#1により生成されたフォーカスエラー信号FE-svが供給され、Fサーボ回路45#1は、該フォーカスエラー信号FE-svに基づいて光ピックアップOP#1側の基準面用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御のための動作を行う。
基準面移動制御・アドレス検出部39#1には、光ピックアップOP♯1側におけるATS/第2再生用レーザ光の反射光検出信号である受光信号DT-r2が光ピックアップOP♯1側の記録層用受光部23-2から入力される。
基準面移動制御・アドレス検出部39♯1は、上記受光信号DT-r2に基づき、後述するように基準面Ref上における基準面用レーザ光のスポット位置の移動制御、及び基準面アドレスの検出を行う。
コントローラ44は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ(記憶装置)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、記録再生装置10の全体制御を行う。このため各部へ制御信号CNTを出力する。
例えばコントローラ44は、図示しないホスト機器からのライトコマンド、リードコマンドに応じて、記録動作、再生動作、アクセス(シーク)動作、及びそれらのためのサーボ実行制御を行うことになる。
また、ホスト機器からの指示以外に、例えば多層記録媒体1における管理情報の読出や更新など、必要に応じて再生動作、記録動作、アクセス(シーク)動作、及びそれらのためのサーボ実行制御を行う。
なお、コントローラ44が行う具体的な処理の内容については後に改めて説明する。
図27により、光ピックアップOP#1に対応する信号処理部51#1,52#1,53#1の詳細と、サーボ系について説明する。
なお光ピックアップOP#0に対応する信号処理部51#0,52#0,53#0は、基本的には信号処理部51#1,52#1,53#1と同様である。また光ピックアップOP#0のサーボ系の動作も、光ピックアップOP#1と同様である。そこで図27では、光ピックアップOP#1側のみで図示及び説明を行う。
まず信号処理部51#1,52#1,53#1の構成を述べる。
信号処理部51#1は、記録/第1再生用レーザ光を出射する記録層用レーザ11-1、及び記録/第1再生用レーザ光の反射光を受光する記録層用受光部23-1に対応する信号処理を行う。
信号処理部51#1には、記録データ処理部65、レーザドライバ66、信号生成部67、再生データ処理部68が設けられる。
記録データ処理部65は、記録時には、図26に示した記録処理部31から供給される記録データRDT#1に応じて、記録データに応じた変調波形としてのレーザ駆動波形を生成する。このレーザ駆動波形に応じてレーザドライバ66が記録層用レーザ11-1にレーザ駆動信号Dr1を与えてレーザ発光駆動する。つまり記録層3へのマーク列形成のための記録パワーでのレーザ変調発光を実行させる。
また記録データ処理部65は、再生時には、コントローラ44の制御に基づいて、レーザ連続発光制御を行う。記録データ処理部65のレーザ発光制御により、レーザドライバ66が記録層用レーザ11-1にレーザ駆動信号Dr1を与えて、再生パワーでのレーザ連続発光を実行させる。
信号生成部67は、記録層用受光部23-1からの受光信号DT-r1を入力する。そして信号生成部67は、受光信号DT-r1に基づき、RF信号(再生信号)を生成する。
再生データ処理部68では、RF信号について2値化処理、デコード処理、エラー訂正処理、デインターリーブ等を行って、再生データPBD#1-1を得る。再生データPBD#1-1は図26に示した再生処理部35に供給される。
また再生データ処理部68は再生データに付加されている記録層アドレスを復号する。記録層アドレスはコントローラ44に対して供給される。
以上は、光ピックアップOP#1側の信号処理部51#1の構成及び動作であるが、光ピックアップOP#0側の信号処理部51#0の構成及び動作は、上記により説明したものと同様である。
信号処理部52#1は、ATS/第2再生用レーザ光を出射する記録層用レーザ11-2、及びATS/第2再生用レーザ光の反射光を受光する記録層用受光部23-2に対応する信号処理を行う。
信号処理部52#1には、レーザ発光制御部69、レーザドライバ70、信号生成部71、再生データ処理部72が設けられる。
レーザ発光制御部69は、記録時及び再生時に、コントローラ44の制御に基づいて、レーザ発光制御を行う。レーザ発光制御部69のレーザ発光制御により、レーザドライバ70が記録層用レーザ11-2にレーザ駆動信号Dr2を与えて、再生パワーでのレーザ連続発光を実行させる。これまでの説明から理解されるように、ATS/第2再生用レーザ光は、記録時にはATS用のレーザ光となり、再生時はサーボ及び再生用のレーザ光として機能するものである。
信号生成部71は、記録層用受光部23-2からの受光信号DT-r2を入力する。そして信号生成部71は、受光信号DT-r2に基づき、RF信号(再生信号)、フォーカスエラー信号FE-r、トラッキングエラー信号TE-rを生成する。
記録時及び再生時において、フォーカスエラー信号FE-r、トラッキングエラー信号TE-rは記録層用サーボ回路36#1に供給される。
またトラッキングエラー信号TE-rは、トラッキングサーボの引き込み判定のため、コントローラ44に対しても供給される。
再生データ処理部72では、RF信号について2値化処理、デコード処理、エラー訂正処理、デインターリーブ等を行って、再生データPBD#1-2を得る。再生時において、再生データPBD#1-2は図26に示した再生処理部35に供給される。
また再生データ処理部72は再生データに付加されている記録層アドレスを復号する。記録層アドレスはコントローラ44に供給される。
以上は、光ピックアップOP#1側の信号処理部52#1の構成及び動作であるが、光ピックアップOP#0側の信号処理部52#0の構成及び動作は上記により説明したものと同様である。
信号処理部53#1は、基準面用レーザ24、及び基準面用受光部29に対応する信号処理を行う。
信号処理部53#1には、レーザ発光制御部61、レーザドライバ62、及びFエラー信号生成部63が設けられる。
レーザ発光制御部61は、記録時及び再生時(再生時は主に基準面シーク時)に、コントローラ44の制御に基づいて、レーザ発光制御を行う。レーザ発光制御部61のレーザ発光制御により、レーザドライバ62が基準面用レーザ24にレーザ駆動信号DrRを与えて、再生パワーでのレーザ連続発光を実行させる。
基準面用レーザ光は、ATS+を採用する本例の場合、記録時にはATSサーボ系に注入するエラー信号生成や基準面アドレス検出のためのレーザ光となり、再生時はシーク動作や基準面アドレス検出用のレーザ光となる。
信号生成部63は、基準面用受光部29からの受光信号DT-svを入力する。そして信号生成部63は、受光信号DT-svに基づき、フォーカスエラー信号FE-svを生成する。すなわち、基準面Ref(反射膜7)に対する基準面用レーザ光のフォーカス誤差を表すフォーカスエラー信号FE-svを生成する。
フォーカスエラー信号FE-svはFサーボ回路45#1に供給される。
基準面移動制御・アドレス検出部39♯1は、受光信号DT-sv、及びコントローラ44の制御に基づき、基準面Ref上における基準面用レーザ光のスポット位置の移動制御、及び基準面Refに記録された基準面アドレスの検出を行う。
後述もするように基準面移動制御・アドレス検出部39♯1によってはトラッキングサーボ信号TS-svが生成されるが、該トラッキングサーボ信号TS-svは加算部46とセレクタSLとに対して供給される。
また基準面移動制御・アドレス検出部39♯1によって検出された基準面アドレス(アドレス情報ADR)は、コントローラ44に対して供給される。
以上は、光ピックアップOP#1側の信号処理部53#1の構成及び動作であるが、光ピックアップOP#0側の信号処理部53#0の構成及び動作も基本的に同様である。
続いてサーボ系の構成及び動作を説明する。
図27において、記録再生装置10には光ピックアップOP#1についてのフォーカス/トラッキングを行うための構成として、記録層用サーボ回路36#1、フォーカスドライバ40、基準面移動制御・アドレス検出部39♯1、Fサーボ回路45♯1、2軸ドライバ41、スライド駆動部42、スライドドライバ43、加算部46、及びセレクタSLが設けられている。
フォーカスエラー信号FE-rは、記録/再生対象とされた記録層3に対する記録層用レーザ光のフォーカス誤差を表す信号となる。またトラッキングエラー信号TE-rは、記録層3に形成されたトラックに対する記録層用レーザ光のスポット位置の半径方向における位置誤差を表す信号となる。
記録層用サーボ回路36#1は、フォーカスエラー信号FE-r、トラッキングエラー信号TE-rに対するサーボ演算処理を行ってフォーカスサーボ信号FS-r、トラッキングサーボ信号TS-rを生成する。
ここで、前述のように本実施の形態では、記録層3に対する記録時のトラッキングサーボ制御としては、ATS+によるサーボ制御を行うものとされている。
先の図4で説明したように、ATS+では、ATS側サーボフィルタを含むATS制御系の制御帯域(つまり記録層用サーボ回路36♯1が備えるトラッキングサーボフィルタのカットオフ周波数)としては、通常のサーボ制御とする場合よりも低い周波数に設定されるべきものとなる。前述のように、本例では例えば1kHz程度に設定すべきものとされる。
一方で、再生時に行われるべき、記録層3のトラック(スパイラル)に記録層用レーザ光を追従させるためのトラッキングサーボ制御については、外乱成分への追従を可能とすべく、通常のサーボ制御とする場合と同等の制御帯域(例えば10kHz程度)が設定されるべきものとなる。
このことから、記録層用サーボ回路36♯1は、トラッキングエラー信号TE-rに上記サーボ演算処理を施すためのトラッキングサーボフィルタについて、そのカットオフ周波数を切り替え可能に構成されている。
該カットオフ周波数の切り替えは、コントローラ44の制御に基づき行われることになる。
トラッキングサーボ信号TS-rは、後述する加算部46と、セレクタSLとに対して供給される。
また、フォーカスサーボ信号FS-rは、図のようにフォーカスドライバ40に供給される。フォーカスドライバ40は、フォーカスサーボ信号FS-rに基づくフォーカスドライブ信号FD-rを生成し、該フォーカスドライブ信号FD-rに基づきレンズ駆動部16を駆動する。
これにより、記録層用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御(記録/第1再生用レーザ光とATS/第2再生用レーザ光とを対象とする記録層3に合焦させるフォーカスサーボ制御)が実現される。
また、記録層用サーボ回路36♯1は、スライド駆動部42による光ピックアップOP♯1のスライド移動についての制御を行うことが可能に構成される。
スライド駆動部42は、光ピックアップOP♯1全体をトラッキング方向にスライド駆動可能に保持する。
記録層用サーボ回路36♯1は、再生時においては、トラッキングエラー信号TE-rの低域成分を抽出してスライドエラー信号を生成し、該スライドエラー信号に基づくスライドサーボ信号を生成する。そして、該スライドサーボ信号をスライドドライバ43に与えてスライド駆動部42を駆動させることで、光ピックアップOP♯1のスライドサーボ制御を実現する。
また、記録層用サーボ回路36♯1は、コントローラ44からの制御に応じて生成した制御信号をスライドドライバ43に与えることで、スライド駆動部42による光ピックアップOP♯1の所要のスライド移動を実現させる。
また、記録層用サーボ回路36♯1は、コントローラ44の制御に応じ、トラッキングサーボをオフとしてATS/第2再生用レーザ光のスポット(ひいては記録/第1再生用レーザ光のスポット)を他のトラックにジャンプさせるトラックジャンプ動作の実行制御も行う。
また、基準面Ref側のサーボ系に関して、Fサーボ回路45♯1は、Fエラー信号生成部63より供給されるフォーカスエラー信号FE-svに対するサーボ演算処理を行ってフォーカスサーボ信号FS-svを生成する。
Fサーボ回路45♯1が生成したフォーカスサーボ信号FS-svは、2軸ドライバ41に供給される。
2軸ドライバ41は、フォーカスサーボ信号FS-svに基づくフォーカスドライブ信号FDを生成し、該フォーカスドライブ信号FDに基づき2軸アクチュエータ21のフォーカスコイルを駆動する。これにより、基準面用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御(基準面用レーザ光を基準面Refに合焦させるフォーカスサーボ制御)が実現される。
基準面移動制御・アドレス検出部39♯1は、受光信号DT-svに基づき、基準面移動制御(基準面Ref上における基準面用レーザ光のスポット位置についての移動制御)、及び基準面アドレス(ADR)の検出を行う。
具体的に、上記基準面移動制御としては、基準面Ref上のシーク動作(基準面用レーザ光についてのシーク動作)制御や、先に説明した任意ピッチスパイラル移動制御を行う。
先の説明からも理解されるように、任意ピッチスパイラル移動制御では、受光信号DT-svに基づくP/P信号、selector信号、クロックCLKの生成や、それらに基づくトラッキングエラー信号TE-svの生成を行う。また、トラッキングエラー信号TE-svに対する鋸歯状波状オフセットの付与も行う。
なお、任意ピッチスパイラル移動制御を実現するための具体的な構成については先の参考文献2や参考文献3に開示されたものと同様の構成を採ればよく、ここでの図示による説明は省略する。
また、上記シーク動作制御としては、コントローラ44からの制御に基づき、スライドドライバ43に制御信号を与えて光ピックアップOP♯1のスライド移動を実行させたり、トラッキングサーボをオフとして基準面用レーザ光のスポットを他のトラック(この場合はピット列となる)にジャンプさせるトラックジャンプ動作を実現するための制御等を行う。
基準面移動制御・アドレス検出部39♯1は、トラッキングエラー信号TE-svに対するサーボ演算処理を施すことで、基準面用レーザ光のビームスポットを基準面Ref上の所定のピット列(A〜Fの何れか)に追従させるためのトラッキングサーボ信号TS-svを生成する。
なお、先の図4の説明からも理解されるように、基準面移動制御・アドレス検出部39♯1が有するトラッキングサーボフィルタのカットオフ周波数は、外乱等への追従を可能とすべく通常のサーボ制御時と同等の周波数(この場合は10kHz程度)に設定される。
なお、基準面アドレスの検出については、先の図17にて説明した手法により行えばよい。
基準面アドレスの検出のための構成については参考文献2や参考文献3に開示されたものと同様の構成を採ればよく、ここでの図示による説明は省略する。
前述もしたように基準面移動制御・アドレス検出部39♯1で検出された基準面アドレス(ADR)はコントローラ44に供給される。
また、基準面移動制御・アドレス検出部39♯1で生成されたトラッキングサーボ信号TS-svは加算部46とセレクタSLとに供給される。
ここで、セレクタSLには、記録層用サーボ回路36♯1による出力信号と基準面移動制御・アドレス検出部39♯1による出力信号とが入力される。さらにセレクタSLには、加算部46が記録層用サーボ回路36♯1からのトラッキングサーボ信号TS-rと基準面移動制御・アドレス検出部39♯1からのトラッキングサーボ信号TS-svとを加算して得られる、ATS+を実現するためのトラッキングサーボ信号TS-ats+も入力される。
セレクタSLは、コントローラ44からの制御に基づき、これら3系統の入力信号のうち1つを選択出力する。
セレクタSLによる出力信号は、2軸ドライバ41に供給される。
2軸ドライバ41は、セレクタSLによる出力信号に基づくトラッキングドライブ信号TDを生成し、該トラッキングドライブ信号TDに基づき、2軸アクチュエータ21のトラッキングコイルを駆動する。
ここで、これまでの説明からも理解されるように、多層記録媒体1に対する記録/再生を行う際に対応して行われる位置制御の態様としては、以下の4つに大別できる。

・基準面シーク時
→スライド移動制御や基準面Ref上でのトラックジャンプ(ピット列ジャンプ)制御
・記録時(記録中:但しATSガイド用トラックの記録は除く)
→ATS+
・記録層シーク(基準面シーク後に記録層用レーザ光を用いて行うシーク)時
→少なくとも記録層3上でのトラックジャンプ制御
・再生時(再生中)
→トラッキングサーボ信号TS-r単体によるトラッキングサーボ制御(記録層用レーザ光を記録層3上のトラックに追従させるサーボ制御)
セレクタSLは、これら4つの各態様に応じて、2軸ドライバ41への出力信号を切り替えるために設けられたものとなる。
具体的に、セレクタSLは、記録時には、コントローラ44からの制御に基づき、ATS+が実行されるべく加算部46からの入力信号(トラッキングサーボ信号TS-ats+)を選択するようにされる。
また再生時には、コントローラ44からの制御に基づき、記録層用サーボ回路36♯1からの入力信号(トラッキングサーボ信号TS-r)を選択するようにされる。
また基準面シーク時には、コントローラ44からの制御に基づき、基準面移動制御・アドレス検出部39♯1からの入力信号(トラックジャンプ信号等となる)を選択するようにされる。
さらに、記録層シーク時には、コントローラ44からの指示に基づき記録層用サーボ回路36♯1からの入力信号(トラックジャンプ信号等となる)を選択するようにされる。
このような切り替え制御が行われることで、上記の基準面シーク時、記録時、記録層シーク時、再生時の各場合に対応した態様による位置制御が実現される。
コントローラ44は、上記により説明したサーボ系の動作を、以下のようにして制御する。
例えばコントローラ44は、基準面移動制御・アドレス検出部39♯1より入力される基準面アドレス(ADR)に基づいて基準面移動制御・アドレス検出部39♯1に対する指示を行って、基準面用レーザ光のスポット位置を所定の基準面アドレスに移動させるシーク動作制御(基準面シーク動作制御)を行う。
またコントローラ44は、再生データ処理部72より入力される記録層アドレスに基づいて記録層用サーボ回路36♯1に対する指示を行って、ATS/第2再生用レーザ光のスポット位置を所定の記録層アドレスに移動させるシーク動作制御(記録層シーク動作制御)を行う。
なお先の説明からも理解されるように、コントローラ44は、上記基準面シーク動作制御時には、セレクタSLに基準面移動制御・アドレス検出部39♯1からの入力信号を選択させ、上記記録層シーク動作制御時には、セレクタSLに記録層用サーボ回路36♯1からの入力信号を選択させる。
またコントローラ44は、記録時に対応しては、ATS+によるトラッキングサーボ制御が実行されるべく、セレクタSLに加算部41からのトラッキングサーボ信号TS-ats+を選択させる。
またコントローラ44は、再生時に対応しては、トラッキングサーボ信号TS-r単体によるトラッキングサーボ制御が実行されるべく、セレクタSLに記録層用サーボ回路36♯1からの入力信号を選択させる。
このとき、コントローラ44は、記録時と再生時とで記録層用サーボ回路36♯1によるサーボ制御帯域の切り替えが行われるように、当該記録層用サーボ回路36♯1に対する切り替え指示も行う。
ここで、記録層3に対する記録開始時において、先の図7〜図10等に示したようなガイド用トラックの形成が必要とされた場合は、基準面シークが行われた後に、該ガイド用トラックを形成してからATS+をかけることになる。
このように基準面シーク後にガイド用トラックの形成が必要とされる場合、コントローラ44は、基準面シークの完了に応じ、基準面移動制御・アドレス検出部39♯1、記録処理部31(図26)に対する指示を行って、所定のピッチによるスパイラルの記録(ダミーデータの記録)を開始させる。
なお、ガイド用トラックの形成を含む本実施の形態としての記録手法実現のために行われるべき具体的な処理の手順については後に改めて説明する。
また、記録開始にあたりガイド用トラックの形成が不要とされる場合(つまり既存のスパイラルの続き部分を記録する場合)、コントローラ44は、基準面シークの完了に応じて、ATS+へのサーボ切り替えが行われるべく、セレクタSLに対し、それまでのトラッキングサーボ信号TS-svの選択状態からトラッキングサーボ信号TS-ats+の選択状態に切り替えが行われるように指示を行う。そしてこの切り替えに応じてトラッキングサーボの引き込みが行われた後、必要に応じ、記録層用サーボ回路36♯1に指示を行って記録層シーク動作を実行させ、所定の記録開始位置(続き位置)からの記録が開始されるようにする。
また、再生開始時には、コントローラ44は、基準面シークの完了に応じて、トラッキングサーボ信号TS-r単体によるサーボ制御への切り替えが行われるべく、セレクタSLに対し、それまでのトラッキングサーボ信号TS-svの選択状態から、トラッキングサーボ信号TS-rの選択状態に切り替えが行われるように指示を行う。そしてこの切り替えに応じてトラッキングサーボの引き込みが行われた後、必要に応じ、記録層用サーボ回路36♯1に指示を行って記録層シーク動作を実行させ、所定の再生開始位置からの再生が開始されるようにする。
なお、本例の場合において再生開始時に対応して行われるべき具体的な処理の手順については後に改めて説明する。
ここで、上記により説明したサーボ系の構成及び動作についても、光ピックアップOP♯0側と基本的に同様となる。
なお、これまでの説明からも理解されるように、記録時には、光ピックアップ♯0側、光ピックアップOP♯1側で共にATSスポットSats(ATS/第2再生用レーザ光)が他方の記録スパイラルをトレースするので、その反射光を利用してベリファイを行うことができる。
このベリファイは、信号処理部52♯0、52♯1の双方の信号生成部71が記録時に生成するRF信号を用いて行うことができる。
<7.処理手順>

図28及び図29は、上述した実施の形態としての記録手法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なおこれら図28及び図29に示す処理手順は、先の図26や図27に示したコントローラ44が例えば内蔵するROM等のメモリに記憶されたプログラムに従って実行するものである。
図28において、先ずステップS101では、ライトコマンドの入力を待機する。すなわち、例えば先に述べたホスト機器等からのライトコマンドの入力を待機するものである。
ステップS101において、ライトコマンドの入力があったとされた場合は、ステップS102に進み、一方の光ピックアップOP側を記録開始位置にシークさせる。
すなわち、本例においては、光ピックアップOP♯1に対応して設けられた基準面移動制御・アドレス検出部39♯1に対する制御を行って、ライトコマンドに基づき特定される基準面Ref上の記録開始アドレスを目標アドレスとした基準面シークを実行させる。
ステップS102による基準面シークが完了した後は、ステップS103において、一方の光ピックアップOP側で疎ピッチによるダミーデータの記録を開始させる。すなわち、ステップS102による基準面シークの完了後、基準面サーボ状態(前述した任意ピッチスパイラル移動制御状態)下で、光ピックアップOP♯1側の記録用スポットSwr♯1(記録/第1再生用レーザ光)によるダミーデータ記録が開始されるように、基準面移動制御・アドレス検出部39♯1及び記録処理部31に対する制御を行う。
先の<1>の説明からも理解されるように、このときのスパイラルピッチ(トラックピッチ)は、スポット位置ずれに伴うトラックの交差等の防止のため記録層3に設定されるトラックピッチTPよりも十分に大とするように設定する。該ピッチの設定は、基準面移動制御・アドレス検出部39♯1によってトラッキングエラー信号TE-svに与えられる前述の鋸歯状波オフセットの傾きを指示することで実現できる。
ステップS103により疎ピッチによるダミーデータ記録(前述のガイド用トラックの記録に相当)を開始させた後は、ステップS104において、所定周回数分の記録が完了するまで待機する。
先の説明から理解されるように、ガイド用トラックは、他方の光ピックアップOP側がATS+の引き込みを行うために記録されるものであり、他方の光ピックアップOP側が該ガイド用トラックを容易に発見できることが望ましい。このためステップS103で開始したガイド用トラックの記録は、前述もしたように、予め定められた所定の周回数分行うものとされる。
ステップS104において、ガイド用トラックの記録が予め定められた所定の周回数分完了した場合は、ステップS105において、他方の光ピックアップOP側について、そのATSスポットSatsを一方の光ピックアップOPの最新周回トラック近傍に移動させる処理を行う。
ここで、上記のようにガイド用トラックは基準面サーボ制御下で記録されるので、該ガイド用トラックを記録している間は、基準面アドレス(ADR:少なくとも半径位置情報)を得ることができる。この基準面アドレスを参照することで、コントローラ44がガイド用トラックの最新周回位置(半径位置)を特定することができ、この特定された半径位置(基準面アドレス)を目標アドレスとして光ピックアップOP♯0側にシークを行わせる。具体的には、基準面移動制御・アドレス検出部39♯0に対する制御を行って、上記特定された基準面アドレスを目標アドレスとした基準面シークを実行させる。
このことで、光ピックアップOP♯0により形成される第2ATSスポットSats♯0をガイド用トラックの最新周回位置近傍に位置させることができる。
ステップS105による移動処理を実行した後は、ステップS106において、最新周回トラック上にTサーボ(Tはトラッキングの略)がかけられるようにする。すなわち、該最新周回トラックを対象として、光ピックアップOP♯0側の第2ATSスポットSats♯0によるトラッキングサーボがかけられるようにする。
ここで、ガイド用トラックの最新周回トラックに第2ATSスポットSats♯0によるトラッキングサーボがかけられた状態とするための具体的な手法としては、例えば先に例示したように、基準面シークの完了に応じて、光ピックアップOP♯0において、対物レンズ20についてのトラッキングサーボ制御状態(サーボ用レーザ光の反射光に基づくトラッキングサーボ制御状態)を解除した上でトラッキングエラー信号TE-rの振幅をモニタし、ディスク偏芯等の影響で第2ATSスポットSats♯0をガイド用トラックが横切ることに応じた振幅変化を検出して、トラッキングサーボの引き込みを行うという手法を挙げることができる。
この場合、コントローラ44は、ステップS105で実行させた基準面シークの完了に応じ、信号処理部52♯0内の信号生成部71から入力されるトラッキングエラー信号TE-rの振幅についてモニタを開始する。そして、該モニタの結果、トラッキングエラー信号TE-rの振幅がトラッキングサーボの引き込みが可能であるとみなすことのできる所定の態様で得られた(例えばゼロクロスなど)と判別されるに至ったことに応じて、セレクタSLに対し、トラッキングエラー信号TS-ats+を選択させる。
これにより、光ピックアップOP♯0側をATS+制御状態とすることができる。
なお前述のように、上記引き込みが最新周回トラックに対して行われなかったとされた場合は、最新周回トラックへのトラックジャンプが行われるようにする。
ステップS106にて最新周回トラックへのTサーボがかけられるようにした後は、ステップS107において、最新周回トラック上のRUB境界に至るまで待機する。
すなわち、ATS/第2再生用レーザ光の反射光に基づき信号処理部52#0内の再生データ処理部72から得られる記録層アドレス(同期信号)を参照して、ガイド用トラックの最新周回上のRUB境界に至ったか否かの判別を、該判別により肯定結果が得られるまで行う。
ステップS107にて最新周回トラック上のRUB境界に至ったとされた場合は、ステップS108において、他方の光ピックアップOP側でダミーデータの記録を開始させる。
すなわち、光ピックアップOP♯0側にて記録/第1再生用レーザ光によるダミーデータ記録が開始されるように、記録処理部31に対する制御を行う。
ステップS108により他方の光ピックアップOP側のダミーデータ記録を開始させた後は、ステップS109において、他方の光ピックアップOP側の記録開始角度(Dw_st)を記憶する。すなわち、ステップS108によるダミーデータ記録を開始した角度(回転角度)を記録開始角度Dw_stとして記憶する。
ここで、ダミーデータの記録開始角度の情報は、ATS+による制御下、基準面移動制御・アドレス検出部39♯0にて検出される基準面アドレス(前述のように半径位置情報と回転角度情報とを含む)から特定できる。
ステップS109による処理を実行した後は、図29に示すステップS110に処理を進める。
図29において、ステップS110では、一方の光ピックアップOP側が記録開始角度Dw_stと同角度に至るまで待機する。すなわち、基準面移動制御・アドレス検出部39♯1にて検出される基準面アドレスから特定される回転角度が、記録開始角度Dw_stと同角度となるまで待機する。
ステップS110において記録開始角度Dw_stと同角度に至ったとされた場合は、ステップS111において、一方の光ピックアップOP側で幅寄せを開始させる。
すなわち、光ピックアップOP♯1側の対物レンズ20を強制的に第2スパイラル側に移動させるべく(換言すれば、基準面サーボにより描かれるスパイラルのピッチを狭めるべく)、基準面移動制御・アドレス検出部39♯1に対し、トラッキングエラー信号TE-svに与えられる鋸歯状波オフセットの傾きを変化させるように指示を行う。
上記ステップS111により幅寄せを開始させた後は、ステップS112において、一方の光ピックアップOP側のトラッキングエラー信号TEのモニタを開始する。すなわち、信号処理部52♯1内の信号生成部71より得られるトラッキングエラー信号TE-rのモニタを開始する。
続くステップS113では、Tサーボ引き込み可能範囲に至るまで待機する。すなわち、ステップS112でモニタを開始したトラッキングエラー信号TE-rの振幅が、トラッキングサーボの引き込み範囲内に入ったとみなすことのできる所定の態様で得られた(例えば振幅値が所定値以上となった等)か否かの判別を、該判別により肯定結果が得られるまで行う。
ステップS113にてTサーボ引き込み可能範囲に至ったとされた場合は、ステップS114において、他方の光ピックアップOP側の記録トラックへのTサーボ引き込みを実行させる。すなわち、光ピックアップOP♯1に対応して設けられたセレクタSLに対し、トラッキングエラー信号TS-ats+を選択させるように切替制御を行う。
これにより、光ピックアップOP♯1側についても、ATS+制御状態とすることができる。すなわち以降は、一定のピッチとされた第1スパイラルと第2スパイラルとのスパイラルセットを、一定のピッチで形成していくことができ、且つ、互いが記録したデータを互いに記録を中断することなくベリファイ可能な状態を得ることができる。
ステップS114により一方の光ピックアップOP側についてのTサーボ引き込みを実行させた後は、ステップS115において、一方の光ピックアップOP側に関するユーザデータ記録開始条件が成立するまで待機する。
先の<6>により説明したように、本例の場合、一方の光ピックアップOP側のユーザデータ記録開始条件は、該一方の光ピックアップOP側の書き始めからの距離Xが、最大スポットずれ量D_max以上となることである。前述のように、再生時の基準面シークを行ったときの記録層用レーザ光のスポットがトラックの非形成領域に位置してしまうことを防止するためである。
一方の光ピックアップOP側についての書き始めからの距離Xは、先のステップS102でシーク目標とした基準面アドレスとステップS114でATS+の引き込みを行った以降に基準面移動制御・アドレス検出部39♯1で検出される基準面アドレスとから適宜計算できる。
ステップS115において、一方の光ピックアップOP側の書き始めからの距離Xが予め定められた最大スポットずれ量D_max以上となり、上記記録開始条件が成立したとされた場合は、ステップS116において、一方の光ピックアップOP側のユーザデータ記録を開始させる。すなわち、記録処理部31に対する制御を行って、光ピックアップOP♯1側の記録/第1再生用レーザ光によるユーザデータ記録を開始させる。
なお先に述べたように、ユーザデータは、記録処理部31によりRUB単位で第1スパイラル用記録データと第2スパイラル用記録データとに分割されるものである。上記ステップS116では、第1スパイラル用記録データについての記録が開始されるものであり、第2スパイラル用記録データについては後のステップS119でその記録が開始されるまで記録処理部31にて蓄積されることとなる。
ステップS116による記録開始処理を実行した後は、ステップS117において、一方の光ピックアップOP側のユーザデータ記録開始位置(Uw_st)を記憶する。すなわち、ステップS116で記録を開始した際に付した記録層アドレスの情報を記憶する。
そして、続くステップS118では、他方の光ピックアップOP側がユーザデータ記録開始位置Uw_stに至るまで待機する。すなわち、信号処理部52♯0内の再生データ処理部72にて検出される第1スパイラル上に付された記録層アドレスに基づき、光ピックアップOP♯0側のスポット位置がユーザデータ記録開始位置Uw_stに至ったか否かを判別し、該判別により肯定結果が得られるまで待機する。
ステップS118において、ユーザデータ記録開始位置Uw_stに至ったとされた場合は、ステップS119において、他方の光ピックアップOP側によるユーザデータの記録を開始させる。すなわち、記録処理部31に対する制御を行って、光ピックアップOP♯0側の記録/第1再生用レーザ光による第2スパイラル用記録データの記録を開始させる。
これにより、第1スパイラルと第2スパイラルとでユーザデータの記録開始位置を揃えることができ、結果、再生時に2つのビームを用いてこれら第1スパイラル・第2スパイラルのスパイラルセットを読むことで連続データが得られるようにできる。
上記ステップS119の処理の実行後、図28及び図29に示す一連の処理は終了となる。
図30は、前述した実施の形態としての再生手法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なお、この図30に示す処理手順としても、先の図26や図27に示したコントローラ44が例えば内蔵するROM等のメモリに記憶されたプログラムに従って実行するものである。
図30において、ステップS201では、リードコマンドの入力を待機する。すなわち、例えば前述したホスト機器等からのライトコマンドの入力を待機するものである。
ステップS201においてリードコマンドの入力があったとされた場合は、ステップS202に進み、読出全長÷連続読出区間長(CLR)を計算する。つまり、上記リードコマンドにより指示された読出区間の全長を、事前に設定された連続読出区間長CLRにより除算する。
続くステップS203では、ステップS202による計算結果が割り切れたか否かを判別する。
ステップS203において、ステップS202による計算結果が割り切れたとして肯定結果が得られた場合は、ステップS204に進む。
ステップS204においては、ステップS202で算出された商が奇数であるか否かを判別する。
ステップS204において、商が奇数ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS205に進み、連続読出区間長CLRの間隔で♯0、♯1の読出区間を交互に区切る。換言すれば、この場合は連続読出区間長CLRごとに♯0側、♯1側の読出区間が交互に設定されるものとなる。
またステップS204において、商が奇数であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS206に進み、連続読出区間長CLR÷2の間隔と連続読出区間長CLRの間隔とを併用して♯0、♯1の読出区間が交互配置となるように各読出区間を区切る。なお、先の図22Aの例では「連続読出区間長CLR÷2」の区間を読出区間全体における先頭部と終端部とに配置するものとしたが、♯0、♯1の読出区間を交互に配置するとの条件が満たされれば、これらの配置は先頭部と終端部とに限定されるべきものではない。
また、先のステップS203において、ステップS202による計算結果が割り切れないとして肯定結果が得られた場合は、ステップS207に進み、商が奇数であるか否かを判別する。
ステップS207において、商が奇数ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS208に進み、余り÷2の間隔と連続読出区間長CLRの間隔とを併用して♯0、♯1の読出区間が交互配置となるように各読出区間を区切る。なおこの場合において、「余り÷2」の区間長による♯0、♯1の読出区間については、先のステップS206における「連続読出区間長CLR÷2」の区間と同様、それらの配置位置は読出区間全体における先頭部と終端部とに限定されるべきものではない。
またステップS208において、商が奇数であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS209に進み、余り÷2+連続読出区間長CLR÷2の間隔と連続読出区間長CLRの間隔とを併用して♯0、♯1の読出区間が交互配置となるように各読出区間を区切る。
なお、この場合においても、上記「余り÷2+連続読出区間長CLR÷2」の区間の配置位置については、読出区間全体における先頭部と終端部とに限定されるべきものではない。
上記によるステップS205、S206、S208、S209の何れかの処理を実行した後は、ステップS210に進み、♯0、♯1がそれぞれ対応する読出区間を読み出すように制御を行う。
すなわち、ステップS205、S206、S208、S209の何れかの処理により光ピックアップOP♯0側で読み出しを行うべきとして設定された読出区間(♯0側読出区間とする)と、光ピックアップOP♯1側で読み出しを行うべきとして設定された読出区間(♯1側読出区間とする)とに関して、♯0側読出区間が光ピックアップOP♯0側の2ビームで読み出され、♯1側読出区間が光ピックアップOP♯1側の2ビームで読み出しが行われるように、♯0側、♯1側のそれぞれについての基準面シーク動作制御やトラッキングサーボの切り替え制御(基準面用レーザ光の反射光に基づくものからトラッキングサーボ信号TS-r単体に基づくものへの切り替え)、及び記録層シーク動作制御を行う。
ここで、先の説明からも理解されるように、本実施の形態では、該ステップS210にて行われるシーク動作に関して、読出対象とするスパイラルセットの手前側スパイラルを目標としたシーク動作を実行することで、読出対象とするスパイラルセットの各スパイラルに再生用のビームがそれぞれ載る位置にアクセスを行うことができ、結果、先の図23に示したような無駄読みの防止が図られる。
上記ステップS210の処理の実行後、この図に示す一連の処理は終了となる。
<8.変形例>

以上、本技術に係る実施の形態について説明したが、本技術はこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、記録用スポットSwrとATSスポットSatsとを形成するための2ビームをそれぞれ別々の光ピックアップOPにより照射する構成を例示したが、本技術に係る記録手法の実現にあたっては、記録用スポットSwrとATSスポットSatsとを形成するための2ビームをそれぞれ別々の光ピックアップOPにより照射する必要性はない。
図31は、1つの光ピックアップOP’により本技術の記録手法を実現するための手法についての説明図である。
先ず前提として、この場合の光ピックアップOP’には、対物レンズ20として対物レンズ20♯0と対物レンズ20♯1の2つが搭載され、これらの対物レンズ20によって記録/第1再生用レーザ光とATS/第2再生用レーザ光との組をそれぞれ照射することにより、記録層3上に記録用スポットSwrとATSスポットSatsの組が2つ形成されるようにする。
対物レンズ20♯0と対物レンズ20♯1は、それぞれ独立してその位置制御が可能に構成される。
この場合は、先ずは図31Aの<T1>と示すように、例えば♯1側が疎ピッチで記録(ダミーデータ記録)を開始する。そして、該疎ピッチによる記録が所定周回数分(♯0側での発見が容易となる程度の周回数分)行われた後、図中<T2>と示すように、♯0側が♯1側の最新周回トラックにトラッキングサーボをかけるようにする。
そしてその後、<T3>と示すように、♯1側とRUB境界を揃えて♯0が記録(ダミーデータ記録)を開始する。
このとき、図中の<T4><T5>の光ピックアップOP’の状態を参照して分かるように、この場合も♯0側は♯1側の記録トラックをトレースするものとなり、♯1側の記録データのベリファイが可能な状態となることが分かる。
そして、<T3>のダミーデータ記録を開始した後は、図31B中の<T6>と示すように、♯0側の記録開始角度と同角度に至った後に、♯1側の幅寄せを開始し、その後、<T7>と示すように、引き込み範囲内となったら♯1側が♯0側の記録トラックに対してTサーボ引き込みを実行する。
この結果、♯0側と♯1側とで互いにATSをかけ合う状態が実現される。
このように本技術に係る記録手法の実現にあたっては、記録用スポットSwrとATSスポットSatsとを形成するための2ビームをそれぞれ別々の光ピックアップOPにより照射する必要性はない。
具体的には、それぞれ独立してその位置制御が可能とされた2以上の対物レンズにより、記録用スポットSwrとATSスポットSatsを形成するためのビームをそれぞれ照射するようにされていればよい。
また、これまでの説明では、同時形成するスパイラル数を2とし、記録レートを2倍に向上する場合を例示したが、本技術において、同時形成するスパイラル数は3以上とすることもできる。
図32は、3重のスパイラルを同時記録する場合における各記録トラックのトレース状態の例を示した図である。
先ず、3重スパイラルを同時記録する場合は、記録用スポットSwrとATSスポットSatsの組を3組用いる。これらを図のように第1記録用スポットSwr♯1、第1ATSスポットSats♯1の組、第2記録用スポットSwr♯0、第2ATSスポットSats♯0の組、第3記録用スポットSwr♯2、第3ATSスポットSats♯2の組とおく。
3重スパイラルを同時記録するとした場合は、図のように、第1記録用スポットSwr♯1による記録トラックを第2ATSスポットSats♯0がトレースし、第2記録用スポットSwr♯0による記録トラックを第3ATSスポットSats♯2がトレースし、第3記録用スポットSwr♯2による記録トラックを第1ATSスポットSats♯1がトレースするように、各ATSスポットSatsについてのトラッキングサーボをかけつつ、第1記録用スポットSwr♯1、第2記録用スポットSwr♯0、及び第3記録用スポットSwr♯2によるユーザデータの記録が行われるようにする。
換言すれば、♯1、♯0、♯2の全ての組のATSスポットSatsにより、それぞれ別の組の記録用スポットSwrによる記録トラックに重複なくトラッキングサーボがかけられた状態で、各記録用スポットSwrによるユーザデータの記録が実行されるようにするものである。
これにより、一定ピッチを有する3重スパイラルが一定ピッチによって形成されていくようにでき、且つ、形成される全てのスパイラルについて記録を中断せずにベリファイが可能な状態を得ることができる。
ここで、図32に示す状態を得るための書き出し手法は、具体的には以下のようになる。
すなわち先ず、♯1の組が疎ピッチでガイド用トラックを形成する。
そして、♯0の組が、♯1の組が記録したガイド用トラックの最新周回トラックにTサーボをかけ、記録を開始する。
次いで、♯2の組が、♯0の組による記録トラックの最新周回トラックにTサーボをかけ、記録を開始する。
ここまでで、♯0の組及び♯2の組はATS制御状態となる。
その後、♯1の組が、♯2の組による記録トラックの側に幅寄せを行う。そして、♯2の組による記録トラックに対する引き込み可能範囲に至ったら、♯1の組がTサーボ引き込みを行う。
これにより、図32に示したような記録状態、すなわち♯1、♯0、♯2の全ての組のATSスポットSatsにより、それぞれ別の組の記録用スポットSwrによる記録トラックに重複なくトラッキングサーボがかけられた状態を得ることができる。
また、同時記録スパイラル数を3からさらに増加させて4以上とする場合は、ガイド用トラックの記録を担当するピックアップOP(対物レンズ)が幅寄せを開始するまでの間に、増加した分のビームの組が順次、その直前にATSをかけて記録を開始した組による記録トラックにATSをかけて記録を開始するようにすればよい。
具体的に、4重以上のスパイラルを同時記録するとした場合は、該4重以上のスパイラルを形成するために照射する4組以上の記録/第1再生用レーザ光とATS/第2再生用レーザ光の組について、それらの組の1つを第1の組、他の組を第2の組、さらに他の組を第mの組としたとき、以下のような手順を踏めばよい。
先ず、第1の組により、疎ピッチによるガイド用トラックの記録を開始する。
その後第2の組により、上記ガイド用トラックの最新周回トラックにATS/第2再生用レーザ光によるトラッキングサーボをかけ、その後に記録/第1再生用レーザ光による記録を開始する。
そして、上記第1、第2、第mの組以外の組については、順次、そのATS/第2再生用レーザ光により、直前に既記録トラックの最新周回トラックにトラッキングサーボをかけて記録を開始した組による記録トラックの最新周回トラックに対してトラッキングサーボをかけ、その後に記録/第1再生用レーザ光による記録を開始していく。
上記第1、第2、第m以外の組の全てが記録を開始した後は、上記第mの組により、その直前に既記録トラックの最新周回トラックにトラッキングサーボをかけて記録を開始した組の記録トラックの最新周回トラックに対してATS/第2再生用レーザ光によるトラッキングサーボをかけ、その後に記録/第1再生用レーザ光による記録を開始する。
そして、この第mの組による記録の開始の後、上記第1の組の対物レンズ20を記録進行半径方向とは逆側に移動させる(すなわちガイド用トラックのピッチを狭める)ことで該第1の組のビームスポットを上記第mの組による記録トラック側に幅寄せさせた後、この第mの組の記録トラックを対象として、第1の組のATS/第2再生用レーザ光によるトラッキングサーボの引き込みを実行する。
このような手順を踏むことで、4重以上のスパイラルを記録する場合において、全ての組のサーボ用ビームによりそれぞれ別の組の記録用ビームによる記録トラックに重複なくトラッキングサーボがかけられた状態を得ることができる。換言すれば、同時記録される全スパイラルについて、それぞれのスパイラルに必ず1つのサーボ用ビームがトレースしている状態を得ることができる。
なお、仮に、第1の組、第2の組、第3の組、第4の組(第mの組に相当)を用いて4重スパイラルを形成するとした場合において、第4の組が第3の組の最新記録トラックに対しトラッキングサーボをかける前に第1の組が第2の組の記録開始位置まで至ってしまうと、その以降は、第3の組の最新記録トラックの外側(記録進行半径方向側)に他の記録トラックが形成されてしまう状態が生じ得る。その場合には、第4の組が確実に第3の組の最新記録トラックに対してトラッキングサーボをかけることが困難となってしまう虞がある。そこで、第1の組が第2の組の記録開始位置まで至ってしまう前に、第2の組〜第mの組の全てが、直前に既記録トラックの最新周回トラックにトラッキングサーボをかけて記録を開始した組による記録トラックの最新周回トラックに対してトラッキングサーボをかけ終わるようにすることが望ましいものとなる。
ここで、3重以上のスパイラルを同時記録する場合としても、先に説明した2重スパイラル同時記録の場合と同様、その記録後に複数ビームを用いた連続再生が可能となるようにすべく、記録データを一定長ごと(例えばRUBごと)に分割し、該分割により得られたそれぞれの分割データをそれぞれの記録用ビームにより記録層3上の隣接した位置に記録されるようにする。
また、3重以上のスパイラルが同時記録される場合は、同時記録されたスパイラル本数と同数のビームを用いて同時再生を行う。
このように同時記録スパイラル本数と同数のビームを用いて3重以上のスパイラルについて同時再生を行う場合としても、再生開始位置へのアクセスについては、全ての再生ビームの各1つが再生対象とするデータが記録されたスパイラルセットにおける対応する各1つのスパイラル上にそれぞれ載る位置を目標としてシーク動作が行われるようにし、無駄読み部分の発生の防止を図る。
また、これまでの説明では、スパイラルのピッチが光学限界を超えないことを前提としたが、高密度記録化を図るためにスパイラルのピッチを光学限界(光学的カットオフ)を超えて設定するということもできる。
但しこの場合は、対象とするスパイラルセット上のデータのみを読み出したのでは記録データを適正に再生することができないため、例えば下記参考文献4〜7に記載されるようなクロストークキャンセル処理を併用することが考えられる。具体的には、再生対象とするトラックに隣接するトラックの読出信号を用いて、再生対象とする読出信号からクロストーク成分を除去することで、適正なデータ再生を実現するというものである。

・参考文献4:特許第3225611号明細書
・参考文献5:特許第2601174号明細書
・参考文献6:特許第4184585号明細書
・参考文献7:特開2008−108325号公報
このようなクロストークキャンセル処理の実行を前提とした場合には、先の図24に示したような再生時のシークを行ってしまうと、再生に必要な全ての読出信号を効率良く読み出すことができないため、シーク目標を変更すべきである。
図33は、先行ビームである記録/第1再生用レーザ光を基準として、再生対象のスパイラルセットの1本手前のトラックを目標位置としてシークを行った場合の様子を示している。なおこの図33、及び後述する図34においては、黒太線が再生対象とするスパイラルセットを、グレーの太線が再生対象とするスパイラルセットのデータを再生する際にさらに読み出しが必要とされるトラックを表している。
この図の例では、先行ビームとしての記録/第1再生用レーザ光が再生対象のスパイラルセットの1本手前のトラック上に位置しているので、再生開始側では、後行ビームであるATS/第2再生用レーザ光側に1周分の無駄読み部分(図中破線)が生じてしまう。また、再生終了側では、先行ビームである記録/第1再生用レーザ光側に1周分の無駄読み部分(同じく破線)が生じるものとなってしまう。再生終了側ではATS/第2再生用レーザ光が再生対象のスパイラルセットの1本後ろ側のトラックの読み出しを担当することになるためである。
そこで、図34に示すように、クロストークキャンセル処理を前提とした場合に読み出しが必要とされるトラックのうち最も手前側に位置するトラック上に後行ビームのスポットが載る位置を目標としてシークを行う。
これによれば、図33に示したような無駄読みが生じないようにできる。
なお、前述のように実施の形態の記録再生装置10では、後行ビームであるATS/第2再生用レーザ光の反射光に基づき対物レンズ20の位置制御が実行されるようにしているので、この場合は、単純に読み出しが必要とされるトラックのうち最も手前側に位置するトラックを目標としてシークを行うことで、無駄読みの防止が図られるようにできる。
また、これまでの説明では、1つの記録層3への複数スパイラルの同時記録について言及したが、複数スパイラルの記録は、複数の記録層3に対して同時に行うこともできる。
例えば、2つの異なる記録層3に対してダブルスパイラル同時記録を同時に実行すれば、記録レートは4倍に向上することができる。
またこれまでの説明では、書き出し時に形成するガイド用トラックのピッチに関して、スポット位置ずれの発生(トラックの交差等)を考慮した比較的大きなピッチを設定する場合を例示したが、例えばスポット位置ずれを考慮しなくてよい場合には、ガイド用トラックのピッチは少なくとも記録層3に設定されるトラックピッチTP×2以上とすればよい。
このようにTP×2以上とすれば、♯0側が第1スパイラルに引き込みを行って第2スパイラルを書き始めた後において、該第2スパイラルと第1スパイラルとのピッチが記録層3に設定されるトラックピッチTP以下となってしまうことを防止でき、後の読出が不能となってしまうことを防止できる。
なお3重以上のスパイラル記録を考慮すると、ガイド用トラックのピッチは、少なくともTP×同時記録スパイラル本数以上とすればよいと定義できる。
また、先の図28におけるステップS106の説明では、ガイド用トラックの最新周回トラックに対し♯0側がトラッキングサーボをかけるための具体的手法の一例を示したが、該最新周回トラックに対しトラッキングサーボをかけるための手法としては、先に例示した手法に限定されるべきものではない。
例えば他の手法としては以下を挙げることができる。
すなわち先ず、♯1側によるガイド用トラックの記録開始後、♯0側が、該ガイド用トラックの最新周回トラックよりも手前側となる位置を目標として基準面シークを行う。そして、該基準面シークの完了後、♯0側を上記最新周回トラック側に幅寄せしていき、第2ATSスポットSats♯0が上記最新周回トラックの引き込み範囲内に至ったごとに応じ、トラッキングサーボ引き込みを行うというものである。
なお、ここまでで説明した最新周回トラックにトラッキングサーボをかけるための手法は、3重以上のスパイラル記録を行う場合において、直前に既記録トラックの最新周回トラックにトラッキングサーボをかけて記録を開始した組による記録トラックの最新周回トラックに対して、新たにトラッキングサーボをかける際の手法としても適用できるものである。
またこれまでの説明では、本技術に係る記録手法に関して、ユーザデータについての記録のみを言及したが、例えばユーザデータの記録を実行した後等に実行されるべき管理情報の記録に関しても、本技術は好適に適用できるものである。ここで、これらユーザデータや管理情報(データ)を総称して、「実データ」と表記する。
また、これまでの説明では、記録方向が内周→外周とされる場合を前提としたが、記録方向は外周→内周であってもよい。
また、本技術は以下に示す構成を採ることもできる。
(1)
記録用ビームとサーボ用ビームとが入射される対物レンズを複数有し、各上記対物レンズにより上記記録用ビームと上記サーボ用ビームとを記録媒体に照射する光照射部と、
上記光照射部における各上記対物レンズによって照射される上記記録用ビームをそれぞれ独立に変調して上記記録媒体に対する記録を実行する記録部と、
各上記対物レンズにより照射される上記サーボ用ビームの反射光をそれぞれ受光した結果に基づき、その受光したサーボ用ビームを照射した上記対物レンズについてのトラッキング制御をそれぞれ行うトラッキング制御部と、
同じ上記対物レンズを介して照射される上記記録用ビームとサーボ用ビームを1組としたとき、全ての組のサーボ用ビームにより、それぞれ別の組の記録用ビームによる記録トラックに重複なくトラッキングサーボがかけられた状態で、各上記記録用ビームによる実データの記録が実行されるように上記記録部を制御する記録制御部と
を備える記録装置。
(2)
上記記録部は、
入力データを一定長ごとに分割し、
上記記録制御部は、
上記分割により得られたそれぞれの分割データが上記複数の記録用ビームによってそれぞれ上記記録媒体上の隣接した位置に記録されるように上記記録部を制御する
上記(1)に記載の記録装置。
(3)
上記光照射部は、
上記対物レンズを2つ有し、上記記録用ビームと上記サーボ用ビームとをそれぞれ2つずつ上記記録媒体に対して照射する
上記(2)に記載の記録装置。
(4)
上記光照射部は、
上記対物レンズをそれぞれ搭載する第1の光ピックアップと第2の光ピックアップとを備え、これら第1の光ピックアップと第2の光ピックアップとが対向配置されている
上記(3)に記載の記録装置。
1 多層記録媒体、2 カバー層、3 記録層、4 中間層、5 記録層形成領域、6 接着層、7 反射膜、8 基板、10 記録再生装置、11-1,11-2 記録層用レーザ、12,25 コリメートレンズ、13,26 偏光ビームスプリッタ、14 固定レンズ、15 可動レンズ、16 レンズ駆動部、17 ミラー、18,27 1/4波長板、19 ダイクロイックプリズム、20 対物レンズ、21 2軸アクチュエータ、22,28 集光レンズ、23 記録層用受光部、24 基準面用レーザ、29 基準面用受光部、30 スピンドルモータ(SPM)、31 記録処理部、35 再生処理部、36 記録層用サーボ回路、39 基準面移動制御・アドレス検出部、44 コントローラ、46 加算部、SL セレクタ、OP 光ピックアップ

Claims (5)

  1. 記録用ビームとサーボ用ビームとが入射される対物レンズを複数有し、各上記対物レンズにより上記記録用ビームと上記サーボ用ビームとを記録媒体に照射する光照射部と、
    上記光照射部における各上記対物レンズによって照射される上記記録用ビームをそれぞれ独立に変調して上記記録媒体に対する記録を実行する記録部と、
    各上記対物レンズにより照射される上記サーボ用ビームの反射光をそれぞれ受光した結果に基づき、その受光したサーボ用ビームを照射した上記対物レンズについてのトラッキング制御をそれぞれ行うトラッキング制御部と、
    同じ上記対物レンズを介して照射される上記記録用ビームとサーボ用ビームを1組としたとき、全ての組のサーボ用ビームにより、それぞれ別の組の記録用ビームによる記録トラックに重複なくトラッキングサーボがかけられた状態で、各上記記録用ビームによる実データの記録が実行されるように上記記録部を制御する記録制御部と
    を備える記録装置。
  2. 上記記録部は、
    入力データを一定長ごとに分割し、
    上記記録制御部は、
    上記分割により得られたそれぞれの分割データが上記複数の記録用ビームによってそれぞれ上記記録媒体上の隣接した位置に記録されるように上記記録部を制御する
    請求項1に記載の記録装置。
  3. 上記光照射部は、
    上記対物レンズを2つ有し、上記記録用ビームと上記サーボ用ビームとをそれぞれ2つずつ上記記録媒体に対して照射する
    請求項2に記載の記録装置。
  4. 上記光照射部は、
    上記対物レンズをそれぞれ搭載する第1の光ピックアップと第2の光ピックアップとを備え、これら第1の光ピックアップと第2の光ピックアップとが対向配置されている
    請求項3に記載の記録装置。
  5. 記録用ビームとサーボ用ビームとが入射される対物レンズを複数有し、各上記対物レンズにより上記記録用ビームと上記サーボ用ビームとを記録媒体に照射する光照射部と、上記光照射部における各上記対物レンズによって照射される上記記録用ビームをそれぞれ独立に変調して上記記録媒体に対する記録を実行する記録部と、各上記対物レンズにより照射される上記サーボ用ビームの反射光をそれぞれ受光した結果に基づき、その受光したサーボ用ビームを照射した上記対物レンズについてのトラッキング制御をそれぞれ行うトラッキング制御部とを備えた記録装置における記録方法であって、
    同じ上記対物レンズを介して照射される上記記録用ビームとサーボ用ビームを1組としたとき、全ての組のサーボ用ビームにより、それぞれ別の組の記録用ビームによる記録トラックに重複なくトラッキングサーボをかけた状態で、各上記記録用ビームによる実データの記録を実行する
    記録方法。
JP2012044517A 2012-02-29 2012-02-29 記録装置、記録方法 Pending JP2013182632A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012044517A JP2013182632A (ja) 2012-02-29 2012-02-29 記録装置、記録方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012044517A JP2013182632A (ja) 2012-02-29 2012-02-29 記録装置、記録方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2013182632A true JP2013182632A (ja) 2013-09-12

Family

ID=49273196

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012044517A Pending JP2013182632A (ja) 2012-02-29 2012-02-29 記録装置、記録方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2013182632A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2012063326A1 (ja) 情報記録媒体、情報再生装置及び情報記録装置
JP2010244672A (ja) ディスク状記録媒体、光スポット位置制御装置、光スポット位置制御方法
JP2013182633A (ja) 記録装置、記録方法、再生装置、再生方法
JP2012104187A (ja) 記録装置
JP2010003357A (ja) 多層光ディスク、多層光ディスク記録装置および多層光ディスク再生装置
JP2012094219A (ja) 光記録媒体、記録装置
JP4162886B2 (ja) 光ディスク記録方法、光ディスク記録装置及び光ディスク再生装置
JP2012099198A (ja) 記録装置、記録方法
JP4540730B2 (ja) 光ディスク記録媒体
JP2011198427A (ja) 記録装置、記録方法
US9177590B2 (en) Recording apparatus, recording method, reproducing apparatus, and reproducing method
JP2012243347A (ja) 記録装置、サーボ制御方法
JP2011258272A (ja) 記録装置、記録方法
JP2012104188A (ja) スポット位置制御装置、スポット位置制御方法
JP2013182632A (ja) 記録装置、記録方法
JP2011258281A (ja) 記録装置、記録方法
JP5949046B2 (ja) 記録装置、記録方法
JP2013016227A (ja) 記録装置、記録方法
US8619521B2 (en) Disc drive and tracking servo pull-in method
JP2011198425A (ja) 光学ドライブ装置、スポット位置ずれ補正方法
JP2013182631A (ja) 記録装置、記録方法、再生装置、再生方法
JP2013164885A (ja) 記録装置、記録方法
JP2013171604A (ja) メディアドライブ装置、アクセス方法
JP2012094207A (ja) 記録装置、スポット位置制御方法
JP2013254544A (ja) 位置制御装置、位置制御方法