JP2013181226A - 焼入れ方法および焼入れ装置 - Google Patents

焼入れ方法および焼入れ装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2013181226A
JP2013181226A JP2012046510A JP2012046510A JP2013181226A JP 2013181226 A JP2013181226 A JP 2013181226A JP 2012046510 A JP2012046510 A JP 2012046510A JP 2012046510 A JP2012046510 A JP 2012046510A JP 2013181226 A JP2013181226 A JP 2013181226A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
quenching
coolant
mist
component
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012046510A
Other languages
English (en)
Inventor
Takaaki Kanazawa
孝明 金澤
Koji Inagaki
功二 稲垣
Masahiko Mitsuhayashi
雅彦 三林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2012046510A priority Critical patent/JP2013181226A/ja
Publication of JP2013181226A publication Critical patent/JP2013181226A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatments In General, Especially Conveying And Cooling (AREA)
  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Abstract

【課題】簡単な構成で、焼入れ処理対象の温度が均一な状態でマルテンサイト変態温度を超えるよう急冷して、歪や変形が生じることなく容易に且つ確実に焼入れ処理対象を焼入れすることができる方法およびその装置を提供する。
【解決手段】焼入れ装置は、所定温度に加熱された部品Wに対してミスト状の冷却剤Cを吹き付けるミスト吹き付け手段1と、部品Wとミスト吹き付け手段1を収容するチャンバ2と、部品Wの温度がマルテンサイト変態温度を超える前にチャンバ2内を減圧する減圧手段3とを備えている。部品Wの温度がマルテンサイト変態温度を超える前に、部品Wとミスト状の冷却剤Cの周囲の雰囲気の圧力を低下させることにより、冷却剤Cの沸点を低下させ、部品Wと冷却剤Cの液滴との間に発生する蒸気膜を維持し、部品Wの温度を均一化させる。
【選択図】図5

Description

本発明は、焼入れ方法および焼入れ装置に関し、さらに詳しくは、所定温度に加熱された焼入れ処理対象に対してミスト状の冷却剤を吹き付けて、前記焼入れ処理対象にマルテンサイト変態を生じさせる焼入れ方法、および、所定温度に加熱された焼入れ処理対象に対してミスト状の冷却剤を吹き付けて、前記焼入れ処理対象にマルテンサイト変態を生じさせるミスト吹き付け手段を備えた焼入れ装置に関するものである。
焼入れ処理対象を焼入れ処理するに際しては、所定温度に加熱された焼入れ処理対象を冷却剤に接触させることより急激にマルテンサイト変態温度を超える(下回る)よう冷却する。このような焼入れ処理対象を焼入れ処理するための従来の技術として、たとえば特許文献1に開示されているように、冷却剤をミスト状にして焼入れ処理対象に吹き付けることが行われている。
特許文献1には、被処理物を搬送する搬送装置の搬送経路を囲んで配置されミスト状の冷却液を供給するミスト冷却装置を備えた熱処理装置が開示されており、さらに、ミスト冷却装置は、搬送経路に沿って延在して設けられ冷却液が供給される管体と、管体に搬送経路に沿って互いに離間して設けられたノズル部とを有することが開示されている。
そして、特許文献1の0007には、「ミスト冷却装置によるミスト状の冷却液供給により、全体に一様に冷却液を供給できるため、被処理物を一様に冷却することが可能になり、温度分布等に起因して生じる被処理物の歪や変形を抑制することができる。」などと記載されている。
また、特許文献1の0014、0050には、「被処理物の冷却時に押圧装置により被処理物に対して押圧力が付与されつつ冷却されるため、被処理物の歪みや変形を充分小さく抑えることができる。」などと記載されている。
さらに、特許文献1の0053には、「被処理物の温度をより高精度に管理するために、放射温度計等の計測装置を冷却室に配置して被処理物の温度を計測し、各位置で計測した結果に基づいて、ノズル部毎にミスト状冷却液の供給量を制御することにより、被処理物をより均一に冷却して歪や変形を抑えることができる。」などと記載されている。
特開2010−38531号公報
しかしながら、焼入れ処理対象には、その形状や材質などの要因により、温度の下がり易い部分と温度の下がり難い部分とがあり、部分によって温度差が生じる。このように部分によって温度差が生じた状態の焼入れ処理対象に対して、上記の特許文献1のように、ただ単にミスト状の冷却剤を全体に一様に供給したのでは、実際に焼入れ処理対象を一様に冷却することはできず、その結果、焼入れ処理対象に歪や変形が生じるという問題があった。
そして、上記特許文献1にあっては、ミスト状の冷却剤をただ単に吹き付けても焼入れ処理対象の歪や変形を抑えることができないために、焼入れ処理対象の冷却時に押圧装置により押圧力を付与する必要があった。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、焼入れ処理対象の温度が均一な状態でマルテンサイト変態温度を超えるよう急冷して、歪や変形が生じることなく容易に且つ確実に焼入れ処理対象を焼入れすることができる方法およびその装置を提供することを目的とする。
本願請求項1の焼入れ方法に係る発明は、上記目的を達成するため、所定温度に加熱された焼入れ処理対象に対してミスト状の冷却剤を吹き付けて、前記焼入れ処理対象にマルテンサイト変態を生じさせる焼入れ方法であって、前記焼入れ処理対象の温度がマルテンサイト変態温度を超える前に雰囲気圧力を低下させることを特徴とする。
本願請求項2の焼入れ方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明において、前記焼入れ処理対象に対して相対的に回転させた状態で、前記ミスト状の冷却剤を吹き付けることを特徴とする。
本願請求項3の焼入れ方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1または2のいずれかに記載の発明において、前記ミスト状の冷却剤の滴径を0.5〜2.0mmとすることを特徴とする。
本願請求項4の焼入れ方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記焼入れ処理対象の温度を検出して、該検出された温度に応じて雰囲気圧力を制御することを特徴とする。
本願請求項5の焼入れ方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記冷却剤として、少なくとも水、油、ふっ素系不活性液のいずれかを含むことを特徴とする。
また、本願請求項6の焼入れ装置に係る発明は、上記目的を達成するため、所定温度に加熱された焼入れ処理対象に対してミスト状の冷却剤を吹き付けて、前記焼入れ処理対象にマルテンサイト変態を生じさせるミスト吹き付け手段を備えた焼入れ装置であって、前記焼入れ処理対象とミスト吹き付け手段を収容するチャンバと、前記焼入れ処理対象の温度がマルテンサイト変態温度を超える前に前記チャンバ内を減圧する減圧手段とを備えたことを特徴とする。
本願請求項7の焼入れ装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項6に記載の発明において、前記焼入れ処理対象とミスト吹き付け手段とを相対的に回転させる回転手段を備えたことを特徴とする。
本願請求項8の焼入れ装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項6または7のいずれかに記載の発明において、前記ミスト吹き付け手段は、滴径が0.5〜2.0mmの冷却剤をミスト状に吹き付けるものであることを特徴とする。
本願請求項9の焼入れ装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項6〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記焼入れ処理対象の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段により検出された前記焼入れ処理対象の温度に応じて雰囲気圧力を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。
本願請求項10の焼入れ装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項6〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記ミスト吹き付け手段が、少なくとも水、油、ふっ素系不活性液のいずれかを含む冷却剤をミスト状に吹き付けるものであることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、焼入れ処理対象の温度がマルテンサイト変態温度を超える前に雰囲気圧力を低下させることにより、冷却剤の沸点が低下してライデンフロスト現象の状態が持続されるため、その状態の間に焼入れ処理対象の温度が下がり難い部分と温度の下がり易い部分との間で熱が移動するので、焼入れ処理対象の温度が均一となり、その後、ライデンフロスト温度を下回ると焼入れ処理対象の表面とミスト状の冷却剤の液滴との間に発生していた蒸気膜がなくなり、焼入れ処理対象の表面にミスト状の冷却剤の液滴が密着して焼入れ処理対象の温度が急激にマルテンサイト変態温度を超え、焼入れされることとなる。焼入れ処理対象は、全体の温度が均一な状態で焼入れされるため、歪や変形が発生することがない。
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記焼入れ処理対象に対して相対的に回転させた状態で、前記ミスト状の冷却剤を吹き付けることにより、焼入れ処理対象全体にミスト状の冷却剤を均一に吹き付けることができる。
請求項3の発明によれば、請求項1または2のいずれかに記載の発明において、前記ミスト状の冷却剤の滴径を0.5〜2.0mmとすることにより、ライデンフロスト現象の状態を確実に持続することができ、したがって、焼入れ処理対象の温度が下がり難い部分と温度の下がり易い部分との間で熱を確実に移動させることができるので、焼入れ処理対象の温度を確実に均一にすることができる。
請求項4の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記焼入れ処理対象の温度を検出して、該検出された温度がライデンフロスト温度を下回りそうな低い場合には雰囲気圧力をより低くするように、検出された温度に応じて雰囲気圧力を制御することで、冷却剤の沸点を適切に低下させて、ライデンフロスト現象の状態を確実に持続することができ、したがって、焼入れ処理対象の温度が下がり難い部分と温度の下がり易い部分との間で熱を確実に移動させることができるので、焼入れ処理対象の温度を確実に均一にすることができる。
請求項5の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記冷却剤として、焼入れ処理対象の特性に応じて、少なくとも水、油、ふっ素系不活性液のいずれかを含むことにより、焼入れ処理対象のマルテンサイト変態温度特性に応じて、適切に焼入れ処理対象の温度がマルテンサイト変態温度を急激に超えて冷却され、焼入れされることとなる。
また、請求項6の発明によれば、焼入れ処理対象とミスト吹き付け手段を収容するチャンバと、前記焼入れ処理対象の温度がマルテンサイト変態温度を超える前に前記チャンバ内を減圧する減圧手段とを備えたことにより、チャンバ内で焼入れ処理対象の温度がマルテンサイト変態温度を超える前に減圧手段によって雰囲気圧力を低下させる。これにより冷却剤の沸点が低下してライデンフロスト現象の状態が持続されるため、その状態の間に焼入れ処理対象の温度が下がり難い部分と温度の下がり易い部分との間で熱が移動するので、焼入れ処理対象の温度が均一となる。その後、ライデンフロスト温度を下回ると焼入れ処理対象の表面とミスト状の冷却剤の液滴との間に発生していた蒸気膜がなくなり、焼入れ処理対象の表面にミスト状の冷却剤の液滴が密着して焼入れ処理対象の温度が急激にマルテンサイト変態温度を超え、焼入れされることとなる。焼入れ処理対象は、全体の温度が均一な状態で焼入れされるため、歪や変形が発生することがない。
請求項7の発明によれば、請求項6に記載の発明において、焼入れ処理対象とミスト吹き付け手段とを相対的に回転させる回転手段を備えたことにより、焼入れ処理対象に対して相対的に回転させた状態で、ミスト状の冷却剤を吹き付けることができ、したがって、焼入れ処理対象全体にミスト状の冷却剤を均一に吹き付けることができる。
請求項8の発明によれば、請求項6または7のいずれかに記載の発明において、ミスト吹き付け手段は、滴径が0.5〜2.0mmの冷却剤をミスト状に吹き付けるものであることにより、ライデンフロスト現象の状態を確実に持続させることができ、したがって、焼入れ処理対象の温度が下がり難い部分と温度の下がり易い部分との間で熱を確実に移動させることができるので、焼入れ処理対象の温度を確実に均一にすることができる。
請求項9の発明によれば、請求項6〜8のいずれか1項に記載の発明において、焼入れ処理対象の温度を検出する温度検出手段と、該温度検出手段により検出された前記焼入れ処理対象の温度に応じて雰囲気圧力を制御する制御手段とを備えていることにより、前記焼入れ処理対象の温度を検出して、該検出された温度がライデンフロスト温度を下回りそうな低い場合には雰囲気圧力をより低くするように、制御手段が検出された温度に応じて雰囲気圧力を制御することで、冷却剤の沸点を適切に低下させて、ライデンフロスト現象の状態を確実に持続することができ、したがって、焼入れ処理対象の温度が下がり難い部分と温度の下がり易い部分との間で熱を確実に移動させることができるので、焼入れ処理対象の温度を確実に均一にすることができる。
請求項10の発明によれば、請求項6〜9のいずれか1項に記載の発明において、ミスト吹き付け手段が、少なくとも水、油、ふっ素系不活性液のいずれかを含む冷却剤をミスト状に吹き付けるものであることにより、焼入れ処理対象のマルテンサイト変態温度特性に応じて冷却剤を選択して、適切に焼入れ処理対象の温度がマルテンサイト変態温度を急激に超えて冷却され、焼入れされることとなる。
部品温度と液滴寿命との関係と、ライデンフロスト現象を説明するために示した図である。 一般的な焼入れ時の部品温度の時間経過による変化を説明するために示したグラフである。 本発明において、焼入れ時の部品温度の時間経過による変化を説明するために示したグラフである。 本発明において、雰囲気圧力を低下させることにより、雰囲気圧力を低下させない場合と比較してライデンフロスト温度が低下することを説明するために示したグラフである。 本発明の焼入れ装置の実施の一形態を説明するために概念的に示した断面図である。 本発明により、部品の温度がマルテンサイト変態温度を超える前に雰囲気圧力を低下させた場合のライデンフロスト現象による温度均一化時間を説明するために示したグラフである。 図6に示した本発明と比較するために、雰囲気圧力を変化させることなく大気圧のままとした場合の、ライデンフロスト現象による温度均一化時間を説明するために示したグラフである。 本発明と一般的な雰囲気圧力を変化させない場合との、焼入れ時の時間経過によるチャンバ内の圧力変化の違いを説明するために示したグラフである。 本発明と一般的な雰囲気圧力を変化させない場合との、時間経過による温度変化から温度均一化時間の長さの違いを説明するために示したグラフである。 焼入れ処理対象としてギヤを焼入れした場合の、本発明と一般的な雰囲気圧力を変化させない場合との、歯車精度(歯溝の振れ)を測定した結果を示すグラフである。 焼入れ処理対象としてギヤを焼入れした場合の、本発明により炉内を減圧するとともに治具を回転させた場合と、図10に示したものと同様に、本発明により炉内を減圧するだけで治具を回転させない場合と、本発明と比較するために炉内を減圧することなく且つ治具を回転させない場合との、歯車精度(歯溝の振れ)を測定した結果を示すグラフである。 本発明の第2の実施の形態として、ミスト状に吹き付ける冷却剤の滴径を変化させた場合の、時間経過に対する焼入れ処理対象の表面温度変化を説明するために示したグラフである。 本発明の第3の実施の形態として、焼入れ処理対象の温度に応じて雰囲気圧力を制御する場合を説明するために示した、時間経過に対する焼入れ処理対象の温度と圧力の変化を示したグラフである。
最初に、本発明の基本的な構成を図1〜図4に基づいて説明する。上述したように、焼入れ処理対象(部品Wという)を焼入れするに際しては、所定温度に加熱された部品Wに対して、冷却剤Cをミスト状に吹き付けると、部品Wの表面温度がライデンフロスト温度以上の状態では、図1のAに示すように、部品Wの表面と冷却剤Cの液滴との間に蒸気膜が発生して、冷却剤Cの液滴が部品Wの表面から浮いた状態で留まるライデンフロスト現象が発現する。このとき、部品Wは、その表面から冷却剤Cが離れている状態であるため、急激に冷却されることはない。そして、部品Wの表面温度がライデンフロスト温度以下に低下すると、図1のBに示すように、部品Wの表面と冷却剤Cの液滴との間の蒸気膜が消失して、冷却剤Cの液滴が部品Wの表面に密着することにより部品Wを急激に冷却し(この、ライデンフロスト現象が発現して部品Wが急冷されない状態から、ライデンフロスト温度を下回って蒸気膜が消失し部品Wが急冷されることをライデンフロスト効果という)、最終的に冷却剤Cが気化して液滴がなくなる。この冷却剤Cの液滴が部品Wの表面に吹き付けられてから気化してなくなるまでにかかる時間を液滴寿命とする。このミスト状の冷却剤Cによる部品Wの温度の時間経過による一連の変化は、図2に示されている。
本発明では、ライデンフロスト現象により部品Wが急激に冷却されない、すなわち、冷却速度が遅い状態のときに、部品Wの形状などによって温度が下がり難い部分と温度の下がり易い部分との間で熱が移動して部品Wの温度が均一化され、しかもその後に、急激にマルテンサイト変態温度を超えるよう冷却されるライデンフロスト効果に着目し、図3に示すように、ライデンフロスト現象をできるだけ長時間にわたって維持することにより部品Wの温度を確実に均一化させ(温度均一化の促進)、この状態からライデンフロスト温度を下回ることにより急激にマルテンサイト変態温度を超えるよう冷却するようにしている。そして、このために、具体的には、図4に示すように、部品Wとミスト状の冷却剤Cの液滴との雰囲気の圧力を低下させることにより、冷却剤Cの沸点を低下させる、つまり、ライデンフロスト温度をマルテンサイト変態温度よりも高い範囲で低下させて、部品Wと冷却剤Cの液滴との間に発生する蒸気膜を維持するようにした。
次に、上記の基本的な構成に基づいた本発明の焼入れ装置を図5により説明する。
本発明の焼入れ装置は、概略、所定温度に加熱された部品Wに対してミスト状の冷却剤Cを吹き付けて、部品Wにマルテンサイト変態を生じさせるミスト吹き付け手段1と、部品Wとミスト吹き付け手段1を収容するチャンバ2と、部品Wの温度がマルテンサイト変態温度を超える前にチャンバ2内を減圧する減圧手段3とを備えている。
図5に示した実施の形態において、焼入れ処理する部品Wとして、例えばリングギヤやシャフトなどの軸対称部品を焼入れ処理することができる。そして、この実施の形態における部品Wは、例えばクロム鋼などの浸炭鋼により構成することができる。また、チャンバ2は、密閉可能な炉により構成されている。さらに、炉2の上方には、リングギヤなどの部品Wを所定の温度に加熱するための加熱手段として高周波誘導加熱コイル4が設けられている。
炉2の下方には、部品Wを支持するための治具5が設けられている。治具5は、部品Wを高周波誘導加熱コイル4により加熱する上昇位置と、部品Wを治具5にセットしあるいは取出し、また、所定温度に加熱された部品Wに対してミスト吹き付け手段1によりミスト状の冷却剤Cを吹き付ける下降位置との間で昇降移動するように支持されている。なお、後述するように、治具5は、軸回りに回転駆動する回転手段に接続されて、昇降移動および回転可能に支持されることができる。また、治具5に支持された部品Wがミスト吹き付け手段1のノズル10に対して相対的に回転することができればよく、治具5に対してノズル10を回転させることができるよう構成することもできる。
ミスト吹き付け手段1は、炉2の内壁面に配設されたノズル10を含んでいる。ノズル10は、液状の冷却剤Cが圧送されて、所定の滴径の冷却剤Cをミスト状に噴霧することができるよう構成されている。冷却剤Cは、焼入れする部品Wの材質やその特性に応じて適宜選択することができるが、水、油、ふっ素系不活性液のいずれか単独で、または、これらを組み合わせたものを用いることができる。
炉2には、その内部を制御可能に減圧するための減圧手段3として、減圧ポンプ30が接続されている。さらに、炉2には、例えば窒素などの不活性ガスのような所定のガスや、炉2内の減圧状態を解除すべく空気などを炉2内に制御可能に導入するため導入管6を備えている。部品Wを所定の温度に加熱する際に、導入管6を介して炉2内に不活性ガスを供給することにより、部品Wの酸化を防止することができる。
次に、本発明の焼入れ方法の具体的な実施の形態を、上述したように構成された焼入れ装置を用いる場合により、その作動とともに図6〜図11により詳細に説明する。
本発明の焼入れ方法は、概略、所定温度に加熱された部品Wに対してミスト状の冷却剤Cを吹き付けて、部品Wにマルテンサイト変態を生じさせるものであって、部品Wの温度がマルテンサイト変態温度を超える(下回る)前に、部品Wとミスト状の冷却剤Cの周囲の雰囲気の圧力を低下させるものである。
部品Wを焼入れ処理するに際して、最初に、炉2を開放して下降位置にある治具5にセットし、その後、炉2を閉塞して内部を密閉空間とする。そして、導入管6を介して炉2内に不活性ガスを導入するとともに、治具5を上昇位置に移動させて、部品Wの周囲に高周波誘導コイル4を位置させ、高周波誘導コイル4に所定の電流を所定の電圧で印加して、部品Wを所定の温度に加熱する。なお、この所定の温度は、少なくとも、マルテンサイト変態温度およびライデンフロスト温度よりも高い温度となる。
部品Wが所定の温度に加熱されると、治具5を下降位置に移動させてミスト吹き付け手段1のノズル10により液状の冷却剤Cを所定の滴径でミスト状に吹き付ける。なお、このとき、図5に矢印で示すように、治具5を回転手段によって軸回りに回転させることにより、部品Wに対して均一にミスト状の冷却剤Cを吹き付けることができる。
部品Wに対してミスト状に吹き付けられた冷却剤Cは、部品Wの表面温度がライデンフロスト温度よりも高いため、ライデンフロスト現象により部品Wの表面との間に蒸気膜が形成され、部品Wの表面から浮いた状態となる(図1のAを参照)。そのため、部品Wの温度は、マルテンサイト変態温度よりも高い温度で、徐々に低下する(冷却速度が遅い)。このとき、本発明では、図6および図8に示すように、減圧ポンプ30により炉2内を減圧する。これにより、冷却剤Cの沸点が低下し、部品Wの表面との間で蒸気膜が形成され続け、ライデンフロスト現象の発現時間が長くなる。一方、比較例では、図7および図8に示すように炉2内の圧力を変化させないため、冷却剤Cの沸点が低下することはなく、ライデンフロスト現象の発現時間を長くすることはできない。その結果、図9に示すように、部品Wの温度をマルテンサイト変態温度よりも高い温度に維持する時間は、本発明(圧力制御あり)の方が比較例(圧力制御なし)と比較して長くなる。
ここで、部品Wの温度は、その形状などによって温度が下がり難い部分と温度の下がり易い部分とが存在する。しかしながら、ライデンフロスト現象が発現している状態では、冷却速度が遅いため、温度が下がり難い部分と温度の下がり易い部分との間で温度が均一となるよう熱が移動する。すなわち、ライデンフロスト現象が発現している状態は、部品Wの温度が均一化される状態となる。そして、本発明では、このライデンフロスト現象が発現している状態の時間を維持するよう長くすることができるので、その間に部品Wの温度が下がり難い部分と温度の下がり易い部分との間で確実且つ充分に熱が移動し、部品Wの温度が確実に均一化されることとなる。
その後、部品Wの温度がライデンフロスト温度よりも下がると、冷却剤Cの液滴と部品Wの表面との間に形成されていた蒸気膜が消失し、液滴が部品Wの表面に密着して急激に部品Wの温度をマルテンサイト変態温度よりも低くなるよう冷却することとなる。
図10に示したように、部品Wの焼入れによる歪または変形量を測定するために、部品Wとしてギヤを焼入れした場合の歯溝の振れは、比較例のように圧力制御しない場合と比較して、圧力制御を行う本発明の方が大幅に少なくすることができた。
図5に矢印で示したように、治具5を回転手段によって軸回りに回転させた場合(圧力制御あり、部品回転あり)には、ミスト状の冷却剤Cを均一に吹き付けることができるので、図11に示すように、炉2内の圧力は制御しても治具5を回転させない場合(圧力制御あり、部品回転なし)よりもさらに、部品Wとしてギヤを焼入れした場合の歯溝の振れを大幅に少なくすることができた。
次に、本発明の第2の実施の形態を、図12に基づいて説明する。なお、この実施の形態の説明では、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施の形態と異なる部分についてのみ説明することとする。
この実施の形態においては、上述した実施の形態に加えて、ミスト吹き付け手段1のノズル10が、0.5〜2.0mmの滴径のミスト状の冷却剤Cを吹き付けることができるよう構成されている。
図12は、ミスト吹き付け手段1のノズル10によりミスト状に吹き付ける冷却剤Cの液滴の径を、0.3mm、0.5mm、1.0mm、2.0mm、および2.5mmと変化させた場合の、それぞれの時間経過による部品Wの温度変化を示したグラフである。
図12に示したように、冷却剤Cの液滴の径が0.3mmでは、部品Wの温度をマルテンサイト変態温度よりも低く冷却することができず、焼入れをすることができなかった。また、冷却剤Cの液滴の径が2.5mmでは、部品Wが過冷却となり、歪が大きく適切に焼入れすることができなかった。これは、冷却剤Cの液滴の径が大きすぎて部品Wの表面に充分に蒸気膜を形成することができなかったことが要因であると思われる。
一方、冷却剤Cの液滴の径を0.5mm〜2.0mmとした場合には、ライデンフロスト現象によりマルテンサイト変態温度よりも高い温度に充分に長い時間維持されるため、部品Wの温度が均一化され、その後、マルテンサイト変態温度を超えるよう急冷されるため、歪や変形が少なく適切に焼入れすることができる。
次に、本発明の第3の実施の形態を、図13に基づいて説明する。なお、この実施の形態の説明では、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施の形態と異なる部分についてのみ説明することとする。
この実施の形態においては、上述した実施の形態に加えて、焼入れ装置が部品Wの温度を検出する温度検出手段と、この温度検出手段により検出された部品Wの温度に応じて減圧ポンプ30による炉2内の減圧度を調整するよう制御する制御手段とを備えている。また、この実施の形態における焼入れ方法では、部品Wの温度を検出して、この検出された温度に応じて雰囲気の減圧を調整するよう制御する。
制御手段は、温度検出手段によって検出された部品Wの温度が、例えば、通常よりも速く温度低下すると判明した場合、減圧ポンプ30により炉2内の減圧度を通常よりも高くする(すなわち、炉2内の圧力をより低くする)よう制御する。これにより、冷却剤Cの沸点をより低下させ、部品Wの表面との間で蒸気膜が通常と同様に形成され続け、ライデンフロスト現象の発現時間を長くする、つまり、部品Wの温度を確実且つ充分に均一化させることができる。この減圧度の調整によるライデンフロスト現象の発現時間の長期化は、部品Wの組織がベイナイト変態域に入らない程度に設定される。
なお、温度検出手段は、たとえば熱電対などのように部品Wに対して接触させることによりその温度を測定するもの、あるいは、たとえば放射温度計のように非接触でその温度を測定するものを、適宜選択することができる。
1:ミスト吹き付け手段、 2:炉(チャンバ)、 3:減圧手段、 W:部品(焼入れ処理対象)、C:冷却剤

Claims (10)

  1. 所定温度に加熱された焼入れ処理対象に対してミスト状の冷却剤を吹き付けて、前記焼入れ処理対象にマルテンサイト変態を生じさせる焼入れ方法であって、
    前記焼入れ処理対象の温度がマルテンサイト変態温度を超える前に雰囲気圧力を低下させることを特徴とする焼入れ方法。
  2. 前記焼入れ処理対象に対して相対的に回転させた状態で、前記ミスト状の冷却剤を吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の焼入れ方法。
  3. 前記ミスト状の冷却剤の滴径を0.5〜2.0mmとすることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の焼入れ方法。
  4. 前記焼入れ処理対象の温度を検出して、該検出された温度に応じて雰囲気圧力を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼入れ方法。
  5. 前記冷却剤として、少なくとも水、油、ふっ素系不活性液のいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼入れ方法。
  6. 所定温度に加熱された焼入れ処理対象に対してミスト状の冷却剤を吹き付けて、前記焼入れ処理対象にマルテンサイト変態を生じさせるミスト吹き付け手段を備えた焼入れ装置であって、
    前記焼入れ処理対象とミスト吹き付け手段を収容するチャンバと、
    前記焼入れ処理対象の温度がマルテンサイト変態温度を超える前に前記チャンバ内を減圧する減圧手段と
    を備えたことを特徴とする焼入れ装置。
  7. 前記焼入れ処理対象とミスト吹き付け手段とを相対的に回転させる回転手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載の焼入れ装置。
  8. 前記ミスト吹き付け手段は、滴径が0.5〜2.0mmの冷却剤をミスト状に吹き付けるものであることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の焼入れ装置。
  9. 前記焼入れ処理対象の温度を検出する温度検出手段と、
    該温度検出手段により検出された前記焼入れ処理対象の温度に応じて雰囲気圧力を制御する制御手段と
    を備えていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の焼入れ装置。
  10. 前記ミスト吹き付け手段が、少なくとも水、油、ふっ素系不活性液のいずれかを含む冷却剤をミスト状に吹き付けるものであることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の焼入れ装置。
JP2012046510A 2012-03-02 2012-03-02 焼入れ方法および焼入れ装置 Pending JP2013181226A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012046510A JP2013181226A (ja) 2012-03-02 2012-03-02 焼入れ方法および焼入れ装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012046510A JP2013181226A (ja) 2012-03-02 2012-03-02 焼入れ方法および焼入れ装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2013181226A true JP2013181226A (ja) 2013-09-12

Family

ID=49272100

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012046510A Pending JP2013181226A (ja) 2012-03-02 2012-03-02 焼入れ方法および焼入れ装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2013181226A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109722514A (zh) * 2018-12-19 2019-05-07 中钢集团邢台机械轧辊有限公司 一种多层复合半钢辊环高温淬火热处理装置及处理方法
JP2019203184A (ja) * 2018-05-25 2019-11-28 光洋サーモシステム株式会社 熱処理装置
JP2020069490A (ja) * 2018-10-30 2020-05-07 日本製鉄株式会社 鋼片の冷却設備および鋼片の冷却方法
CN111954722A (zh) * 2018-02-06 2020-11-17 集成热处理解决方案有限责任公司 高压瞬时均匀淬火以控制零件性能
CN114729411A (zh) * 2019-10-14 2022-07-08 法孚斯坦因公司 高屈服强度钢板的快速冷却

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111954722A (zh) * 2018-02-06 2020-11-17 集成热处理解决方案有限责任公司 高压瞬时均匀淬火以控制零件性能
JP2019203184A (ja) * 2018-05-25 2019-11-28 光洋サーモシステム株式会社 熱処理装置
JP2020069490A (ja) * 2018-10-30 2020-05-07 日本製鉄株式会社 鋼片の冷却設備および鋼片の冷却方法
CN109722514A (zh) * 2018-12-19 2019-05-07 中钢集团邢台机械轧辊有限公司 一种多层复合半钢辊环高温淬火热处理装置及处理方法
CN109722514B (zh) * 2018-12-19 2020-07-17 中钢集团邢台机械轧辊有限公司 一种多层复合半钢辊环高温淬火热处理装置及处理方法
CN114729411A (zh) * 2019-10-14 2022-07-08 法孚斯坦因公司 高屈服强度钢板的快速冷却

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2013181226A (ja) 焼入れ方法および焼入れ装置
CN105586475B (zh) 淬火装置和淬火方法
JP2008303402A (ja) 高周波焼入れ装置、転がり軸受の製造方法、転がり軸受
JP2009203498A (ja) 高周波誘導加熱方法、加熱装置、及び軸受
JP2009197312A (ja) 環状部材の変形矯正方法
JP5187680B2 (ja) 構成部材をケースハードニング処理する方法および同方法を実施する処理装置
JP5446410B2 (ja) 環状ワークの熱処理方法
JP5026175B2 (ja) ワークの製造方法
WO2014069149A1 (ja) 熱処理方法および機械部品の製造方法
JP2016023346A (ja) 歯車の浸炭処理方法
JP5433932B2 (ja) 環状体の変形矯正方法
JP5179203B2 (ja) 筒形金属部材用熱処理装置
WO2014203732A1 (ja) ガス供給管および熱処理装置
JP2013221200A (ja) 転がり軸受軌道輪の製造方法
JP2008106358A (ja) 環状体の加熱変形矯正方法および焼入れ方法
JP5274762B2 (ja) 熱処理方法
JP2009203522A (ja) 転がり軸受軌道輪の製造方法
JP2000297328A (ja) 耐熱亀裂性に優れた溶接肉盛ロールの熱処理装置
KR20040106279A (ko) 가스 침탄 방법
JP6732335B2 (ja) レーザ焼入れシステム及びレーザ焼入れ方法
JP2005060760A (ja) ガス冷却による焼入れ方法
JP6837202B2 (ja) 基材加熱装置および方法および電子デバイスの製造方法
JP4322741B2 (ja) 誘導加熱による針状ころ軸受外輪の軌道面の表面焼入方法及び焼入装置
JP2009203525A (ja) 転がり軸受の製造ライン
JP2016089183A (ja) ワークの熱処理方法