JP2020069490A - 鋼片の冷却設備および鋼片の冷却方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】工程を簡略化しつつ、鋼片に反りを発生させることなく効率的に冷却する。【解決手段】鋼片を上面および下面が開放された状態で支持する支持手段と、鋼片の上面または下面に冷却水を散布する散布手段とを備え、散布手段は、冷却水の液滴が鋼片の上面または下面に到達する前に重力または空気抵抗による減速が発生するように配置される、鋼片の冷却設備が提供される。【選択図】図1
Description
本発明は、鋼片の冷却設備および鋼片の冷却方法に関する。
分塊圧延工場では、連続鋳造工程で製造された鋳片を均熱炉で約1200℃まで加熱し、熱間圧延(分塊圧延)によって円形断面や矩形断面など所定の形状のビレット(鋼片)を製造する。ビレットは、所定の長さに切断された後、徐冷炉、またはヤードの冷却設備によって冷却される。ヤードの冷却設備は、例えば並列して配置される梁状の置台を含み、置台に載置されたビレットは自然放冷、すなわち空気の自然対流による冷却および放射冷却によって冷却される。自然放冷による冷却の所要時間は長く、例えば直径400mmのビレットを800℃から200℃まで冷却するのには約12時間かかる。
このような鋼片の冷却を効率化するための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、鋼片を表面温度が600℃以下になるまでは自然放冷し、その後、散水によって冷却する技術が記載されている。この技術は、鋼片の表面温度が600℃を超えている間に散水によって急速に冷却すると、鋼片が局所的に変態温度に達して体積膨張することによるひずみのために鋼片に反りが発生するため、鋼片が変態温度を下回るまでは自然放冷によって徐冷し、その後に散水による冷却を開始することによって反りを防止できるという知見によるものである。
しかしながら、上記の特許文献1に記載された技術では、鋼片の表面温度が600℃以下になってから散水を開始するため、鋼片の温度を測定するか、または予測する工程が必要になり、工程が煩雑化する。また、例えば600℃をまたいで温度が異なる複数の鋼片に同時に散水することが困難であるため、ヤードにおいて温度が異なる鋼片は互いに離して配置する必要が生じ、ヤードの面積利用効率が低下するのに加えて、鋼片の搬送工程が煩雑化する。
そこで、本発明は、工程を簡略化しつつ、鋼片に反りを発生させることなく効率的に冷却することが可能な、新規かつ改良された鋼片の冷却設備および鋼片の冷却方法を提供することを目的とする。
本発明のある観点によれば、鋼片を上面および下面が開放された状態で支持する支持手段と、鋼片の上面または下面に冷却水を散布する散布手段とを備え、散布手段は、冷却水の液滴が鋼片の上面または下面に到達する前に重力または空気抵抗による減速が発生するように配置される、鋼片の冷却設備が提供される。
上記の構成によって、鋼片の上面および下面の両方で自然放冷を発生させ、また鋼片の表面温度が高い間は冷却水による冷却が進まないようにすることによって、鋼片に反りを発生させることなく効率的に冷却することができる。
上記の構成によって、鋼片の上面および下面の両方で自然放冷を発生させ、また鋼片の表面温度が高い間は冷却水による冷却が進まないようにすることによって、鋼片に反りを発生させることなく効率的に冷却することができる。
上記の鋼片の冷却設備において、散布手段は、冷却水の液滴が鋼片の上面または下面に到達する前に液滴速度が7m/s以下になり、かつ冷却水の水量密度が5L/min・m2以下になるように配置されてもよい。
これによって、鋼片の表面温度が600℃未満になるまで冷却水による冷却が進まないようにすることができる。
これによって、鋼片の表面温度が600℃未満になるまで冷却水による冷却が進まないようにすることができる。
上記の鋼片の冷却設備において、支持手段は、水槽上に架設された置台であってもよい。これによって、置台の基礎が熱によって劣化することを防止できる。
上記の鋼片の冷却設備において、散布手段は、鋼片よりも上方で上向きに配置されるノズルを含んでもよい。この場合、冷却水の液滴には重力および空気抵抗による減速が発生する。
上記の鋼片の冷却設備において、散布手段は、鋼片よりも上方で、かつ鋼片の上面から離隔して下向きに配置されるノズルを含んでもよい。この場合、冷却水の液滴には空気抵抗による減速が発生する。
上記の鋼片の冷却設備において、散布手段は、鋼片よりも下方で上向きに配置されるノズルを含んでもよい。この場合、冷却水の液滴には主に重力による減速が発生する。
本発明の別の観点によれば、鋼片を上面および下面が開放された状態で支持する工程と、鋼片の上面および下面に冷却水を散布する工程とを含み、冷却水は、冷却水の液滴が鋼片の上面または下面に到達する前に重力または空気抵抗による減速が発生するように散布される、鋼片の冷却方法が提供される。
上記で説明したように、本発明によれば、工程を簡略化しつつ、鋼片に反りを発生させることなく効率的に冷却することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るビレットの冷却設備の平面図であり、図2は図1のII−II線断面図である。図1および図2を参照すると、冷却設備1は、置台2と、スプリンクラー3a、3bとを含む。図1に示されるように、並列して配置される梁状の置台2は、ビレットBを支持する支持手段の例である。ビレットBは、置台2に直交する方向を長手方向にして、少なくとも2つの置台2にまたがって、上下方向に積層されることなく載置される。これによって、ビレットBの上面が開放され、下面も置台2との接触部分を除いて開放されるため、ビレットBの表面において自然放冷、すなわち空気の自然対流による冷却および放射冷却が発生する。図2に示されるように、置台2は、水槽4上に架設されている。これによって、置台2の基礎が熱によって劣化することを防止できる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るビレットの冷却設備の平面図であり、図2は図1のII−II線断面図である。図1および図2を参照すると、冷却設備1は、置台2と、スプリンクラー3a、3bとを含む。図1に示されるように、並列して配置される梁状の置台2は、ビレットBを支持する支持手段の例である。ビレットBは、置台2に直交する方向を長手方向にして、少なくとも2つの置台2にまたがって、上下方向に積層されることなく載置される。これによって、ビレットBの上面が開放され、下面も置台2との接触部分を除いて開放されるため、ビレットBの表面において自然放冷、すなわち空気の自然対流による冷却および放射冷却が発生する。図2に示されるように、置台2は、水槽4上に架設されている。これによって、置台2の基礎が熱によって劣化することを防止できる。
スプリンクラー3a、3bは、ビレットBの上面に冷却水を散布する散布手段の例である。図2に示されるように、スプリンクラー3a、3bは、ビレットBの上方で上向きに配置されるノズルを有する。ここで、本明細書でいう「上向き」は、鉛直方向上向きだけを意味するのではなく、スプリンクラー3a、3bのように鉛直方向上向きの成分と水平方向成分とを含む斜め方向に向けられている場合を含む。鉛直方向については、スプリンクラー3a、3bは上向きである。図1に示されるように、水平方向については、スプリンクラー3a、3bは所定の角度範囲で首振りをすることによってビレットBの配置領域全体に冷却水Wを散布する。
上記のようにスプリンクラー3a、3bが上向きに配置されることによって、スプリンクラー3a、3bのノズルから噴射された冷却水Wの液滴には重力による減速が発生する。また、冷却水Wの液滴には空気抵抗による減速も発生する。図2に示されるように、スプリンクラー3a、3bはビレットBの上面よりも上に配置されるため、冷却水Wの液滴は上向きに噴射された後、重力によって減速し、放物線の頂点(最大吹き上げ高さ)を経てスプリンクラー3a、3bと同じ高さまで落下し、さらに落下してビレットBの上面に到達する。この間の空気抵抗による減速のため、ビレットBの上面における冷却水Wの液滴速度は、スプリンクラー3a、3bのノズルから噴射された時よりも大きく減速されている。
本実施形態では、ビレットBが上下方向に積層されることなく置台2に載置され、ビレットBの上面および下面が開放されることによって、ビレットBの上面および下面の両方で自然放冷が発生する。従って、本実施形態では、例えばビレットBを平板上の台に載置した場合、または上下方向に積層して載置した場合とは異なり、上面と下面との間で自然放冷による冷却速度に差が生じにくく、それゆえ冷却時のビレットBの反りが抑制される。加えて、本実施形態では、スプリンクラー3a、3bから散布された冷却水Wの液滴に重力による減速、および空気抵抗による減速が発生することによって、ビレットBの表面温度が高い間は冷却水Wによる冷却が進まないようにすることができる。この点について以下でさらに説明する。
冷却水Wの液滴が、比較的低い液滴速度でビレットBの表面に近づいた場合、ビレットBの表面温度が高い間は、冷却水Wの液滴が膜沸騰状態になり、ビレットBの表面は膜沸騰で発生した蒸気膜によって覆われる。このとき、液滴は慣性力によって一旦偏平に広がった後、潰れることなく、表面張力によって元の形に戻り、その勢いでビレットBの表面から跳ね上がる。冷却水Wの液滴がこのような挙動を示している間、液滴とビレットBの表面との間の蒸気膜を介した熱交換量は小さく、比較的低い水量密度で冷却水Wが散布される限りにおいて、冷却水WのビレットBに対する冷却能はほとんど発揮されない。例えば、ビレットBの表面温度が600℃未満になるまで冷却水Wが上記のような挙動を示すようにするためには、後述する実施例で示されるように、冷却水Wの液滴速度を7m/s以下、水量密度を5L/min・m2以下にすればよい。
例えば、ビレットBに近い位置で、ビレットBの上面に対向して下向きに配置されるスプリンクラーで上記のような低い液滴速度を実現するためには、スプリンクラーの圧力をかなり低くしなくてはならない。例えば、通常用いられる0.3MPaの圧力でスプリンクラーのノズルから冷却水を噴射した場合、噴射時の液滴速度は約25m/sになる。理論上、噴射時の液滴速度を7m/s以下にするためにはスプリンクラーの圧力を0.04MPa未満の圧力でスプリンクラー3a、3bのノズルから冷却水Wを噴射する必要があるが、このような低圧では配管における圧力損失のために正確な圧力の制御が難しく、また各ノズルの高さの差によって背圧の変動が発生し、ノズルごとに流量が変わるため、安定的な冷却水Wの散布が困難である。本実施形態では、重力および空気抵抗による減速を利用することによって、安定的に冷却水Wを散布しながら、ビレットBの上面では上記のような低い液滴速度を実現することができる。
一方、上記の場合において、ビレットBの表面温度が低くなると、冷却水Wの液滴が膜沸騰状態になったときの蒸気発生量が徐々に低下し、液滴が蒸気膜を介さずにビレットBの表面に接触するようになる。これによって、自然放冷に加えて冷却水Wとの熱交換によってもビレットBが冷却されるようになる。上記の例のように、ビレットBの表面温度が600℃未満になった後に冷却水Wの冷却能が発揮されるようにすることによって、ビレットBの変態温度付近での急速な冷却によるビレットBの反りを防止できるのに加えて、反りが発生しなくなった温度領域では冷却水Wの冷却能を発揮させ、自然放冷と冷却水Wによる冷却とを併用した効率的な冷却が可能である。
以上で説明したように、本実施形態では、ビレットBの温度を測定、または予測することなく、ビレットBの表面温度が高い間(具体的には600℃以上である間)は冷却水Wによる冷却が進まないようにすることができ、これによってビレットBに反りを発生させることなく効率的に冷却することができる。ビレットBの表面温度にかかわらず冷却水Wをスプリンクラー散布できるため、温度によってビレットBのヤードにおける配置に制約が生じることがない。また、本実施形態では、スプリンクラー3a、3bを水平方向ではビレットBに重複しない位置に配置できるため、ヤード内でビレットBを搬送するクレーンのためのクリアランスをビレットBの上方に確保することが容易である。また、スプリンクラー3a、3bのノズルは斜め上向きに冷却水Wを噴射するため冷却水Wが拡散しやすく、少ない数のスプリンクラー3a、3bで広範囲のビレットBに冷却水Wを散布することができる。
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係るビレットの冷却設備の立面図である。図3を参照すると、冷却設備11は、置台2と、スプリンクラー13a、13bとを含む。置台2および水槽4は、上記の第1の実施形態と同様に構成される。スプリンクラー13a、13bは、第1の実施形態とは異なり、ビレットBよりも上方で、かつビレットBの上面から離隔して下向きに配置されるノズルを有する。ここで、本明細書でいう「下向き」は、図3に示されたスプリンクラー13a、13bの向きのように鉛直方向下向きだけを意味するのではなく、鉛直方向下向きの成分と水平方向成分とを含む斜め方向に向けられている場合を含む。本実施形態では、スプリンクラー13a、13bがビレットBの上面から離隔して配置されることによって、冷却水Wの液滴がビレットBの上面に向かって落下するときに空気抵抗による減速が発生し、液滴が終端速度(重力と空気抵抗とが平衡して一定速度で落下し続ける速度)、または終端速度に近い速度でビレットBの上面に到達する。例えば、後述するように、冷却水Wの液滴の終端速度を7m/s以下にするためには、液滴の直径を3.5mm以下にすればよい。
図3は、本発明の第2の実施形態に係るビレットの冷却設備の立面図である。図3を参照すると、冷却設備11は、置台2と、スプリンクラー13a、13bとを含む。置台2および水槽4は、上記の第1の実施形態と同様に構成される。スプリンクラー13a、13bは、第1の実施形態とは異なり、ビレットBよりも上方で、かつビレットBの上面から離隔して下向きに配置されるノズルを有する。ここで、本明細書でいう「下向き」は、図3に示されたスプリンクラー13a、13bの向きのように鉛直方向下向きだけを意味するのではなく、鉛直方向下向きの成分と水平方向成分とを含む斜め方向に向けられている場合を含む。本実施形態では、スプリンクラー13a、13bがビレットBの上面から離隔して配置されることによって、冷却水Wの液滴がビレットBの上面に向かって落下するときに空気抵抗による減速が発生し、液滴が終端速度(重力と空気抵抗とが平衡して一定速度で落下し続ける速度)、または終端速度に近い速度でビレットBの上面に到達する。例えば、後述するように、冷却水Wの液滴の終端速度を7m/s以下にするためには、液滴の直径を3.5mm以下にすればよい。
これによって、本実施形態では、上記の第1の実施形態と同様にビレットBの上面および下面の両方で自然放冷が発生するのに加えて、ビレットBの表面温度が高い間(具体的には600℃以上である間)は冷却水Wによる冷却が進まないようにすることができ、従ってビレットBに反りを発生させることなく効率的に冷却することができる。また、本実施形態では、スプリンクラー13a、13bがビレットBの上方で、かつビレットBの上面から離隔して配置される。ヤード内でビレットBを搬送するクレーンのためのクリアランスをビレットBの上方に確保し、さらにその上方にスプリンクラー13a、13bを配置することによって、冷却水Wの液滴が終端速度に達するための十分な落下距離をも確保することができる。
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態に係るビレットの冷却設備の平面図であり、図5は図4のV−V線断面図である。図3および図4を参照すると、冷却設備21は、置台2と、スプリンクラー23a〜23dとを含む。置台2、および図示しない水槽は、上記の第1の実施形態と同様に構成される。スプリンクラー23a〜23dは、第1の実施形態とは異なり、ビレットBよりも下方で上向きに配置されるノズルを有する。ここでも、「上向き」は、鉛直方向上向きだけを意味するのではなく、図5に示されたスプリンクラー23a〜23dのように鉛直方向上向きの成分と水平方向成分とを含む斜め方向に向けられている場合を含む。このようにスプリンクラー23a〜23dが上向きに配置されることによって、スプリンクラー23a〜23dのノズルから噴射された冷却水Wの液滴には主に重力による減速が発生し、噴射時の液滴速度よりも小さい速度でビレットBの上面に到達する。例えば、後述するように、ビレットBの下面に到達するときの冷却水Wの液滴速度を7m/s以下にするためには、スプリンクラー23a〜23dのノズルから噴射された冷却水Wの液滴の放物線の頂点(最大吹き上げ高さ)のビレットBの下面を基準にした高さが2.0m以下であればよい。
図4は、本発明の第3の実施形態に係るビレットの冷却設備の平面図であり、図5は図4のV−V線断面図である。図3および図4を参照すると、冷却設備21は、置台2と、スプリンクラー23a〜23dとを含む。置台2、および図示しない水槽は、上記の第1の実施形態と同様に構成される。スプリンクラー23a〜23dは、第1の実施形態とは異なり、ビレットBよりも下方で上向きに配置されるノズルを有する。ここでも、「上向き」は、鉛直方向上向きだけを意味するのではなく、図5に示されたスプリンクラー23a〜23dのように鉛直方向上向きの成分と水平方向成分とを含む斜め方向に向けられている場合を含む。このようにスプリンクラー23a〜23dが上向きに配置されることによって、スプリンクラー23a〜23dのノズルから噴射された冷却水Wの液滴には主に重力による減速が発生し、噴射時の液滴速度よりも小さい速度でビレットBの上面に到達する。例えば、後述するように、ビレットBの下面に到達するときの冷却水Wの液滴速度を7m/s以下にするためには、スプリンクラー23a〜23dのノズルから噴射された冷却水Wの液滴の放物線の頂点(最大吹き上げ高さ)のビレットBの下面を基準にした高さが2.0m以下であればよい。
これによって、本実施形態では、上記の第1の実施形態と同様にビレットBの上面および下面の両方で自然放冷が発生するのに加えて、ビレットBの表面温度が高い間(具体的には600℃以上である間)は冷却水Wによる冷却が進まないようにすることができ、従ってビレットBに反りを発生させることなく効率的に冷却することができる。また、本実施形態では、スプリンクラー23a〜23dがビレットBの下方に配置されるため、ヤード内でビレットBを搬送するクレーンとスプリンクラー23a〜23dとが干渉することがなく、スプリンクラー23a〜23dの配置の自由度が高い。
続いて、本発明の実施例について説明する。まず、図6および図7を参照して、本発明において冷却水を散布することによってビレットの冷却が効率化されていることを示す実施例について説明する。本実施例では、図1に示されたような本発明の第1の実施形態に係る冷却設備1を用いて、180mm角の矩形断面、長さ5mのビレットBを冷却した。置台2の間隔は1.5mであり、スプリンクラー3a、3bは図1に示されるように180度の範囲で首振りをし、これによってビレットBには水量密度0.75L/min・m2で冷却水Wが散布された。ビレットBは分塊圧延後、表面温度が約800℃の状態で置台2に載置され、自然放冷、および冷却水Wの散水によって冷却された。ビレットBの表面に取り付けられた熱電対を用いて、自然放冷のみによって冷却した比較例、および自然放冷に加えてスプリンクラー3a、3bから散布される冷却水Wによって冷却した実施例のそれぞれで、温度を時系列で測定した。
図6は、比較例および実施例における温度の時系列測定結果を示すグラフである。図6を参照すると、ビレットBの表面温度が約500℃付近から実施例での冷却が比較例よりも早く進み、次工程への搬送が可能になる200℃までの冷却の所要時間では、実施例が比較例の約60%であり、冷却水Wが散水されたことによる冷却が効率化されたことがわかる。図7は、図6に示した測定結果を三次元差分モデル計算で合わせ込んだ冷却挙動の解析結果を示すグラフである。図7では、冷却水Wによる冷却能(熱流束(W/m2))が、ビレットBの表面温度との関係で示されている。この解析結果を参照すると、本実施例では、ビレットBの冷却前の表面温度が600℃未満になるまで冷却水Wの冷却能がほとんど発揮されず、その後表面温度が低下するに従って冷却水Wの冷却能がより大きく発揮されていることがわかる。この結果、実施例では、冷却水Wによる冷却を行ってもビレットBに反りは発生しなかった。
次に、図8を参照して、本発明において冷却水を散布することによって冷却時のビレットの反りが抑制されていることを示す実施例について説明する。図8は、上記の実施例と同様の条件で直径250mmの円形断面、長さ5mのビレットBを冷却した場合に、ビレットBの上面における冷却水Wの液滴速度および水量密度と、冷却後のビレットBの反りの有無との関係を示すグラフである。図示された例では、液滴速度が5m/s、水量密度が0.85L/min・m2および1.65L/min・m2の2つの例、ならびに液滴速度が7m/s、水量密度が5L/min・m2の例で、ビレットBに顕著な反りは発生せず、次工程への搬送に支障がなかった。一方、液滴速度が5m/sでも、水量密度が7L/min・m2の例では、ビレットBに顕著な反りが発生し、次工程への搬送にあたって矯正が必要であった。また、液滴速度が9m/sの例では、水量密度が0.85L/min・m2でも同様に顕著な反りが発生した。この結果から、冷却設備1では、ビレットBの上面における冷却水Wの液滴速度が7m/s以下、水量密度が5L/min・m2以下になるように、スプリンクラー3a、3bの位置、および冷却水Wの噴射圧力を設定した場合に、ビレットBに顕著な反りを生じさせることなく、冷却水Wの冷却能を利用した効率的な冷却が可能であることがわかる。
上記のような冷却水Wの液滴速度および水量密度の条件は、以下のように説明される。まず、液滴速度が7m/sを超えると、冷却水Wの液滴がビレットBの表面で膜沸騰状態になったときに、慣性力によって液滴が偏平に大きく広がるため、蒸気膜を介した液滴とビレットBの表面との間の熱交換量が無視できない量になる結果、自然放冷のみの場合よりも急速に冷却が進み、ビレットBに反りが発生すると考えられる。あるいは、液滴速度が大きいと、慣性力によって偏平に広がった液滴が潰れ、ビレットBの表面近くに留まる結果、自然放冷のみの場合よりも急速に冷却が進み、ビレットBに反りが発生すると考えられる。一方、水量密度が5L/min・m2を超えると、冷却水Wの個々の液滴はビレットBの表面に間接的にしか衝突しないとしても、液滴の数が多くなる結果、蒸気膜を介した液滴とビレットBの表面との間の熱交換量の合計が無視できない量になる結果、自然放冷のみの場合よりも急速に冷却が進み、ビレットBに反りが発生すると考えられる。
上述した第1〜第3の実施形態に係る冷却設備1、11、21は、上述したような冷却水Wの液滴速度および水量密度が実現されるように調整される。
具体的には、例えば第1の実施形態に係る冷却設備1では、ビレットBの上面における冷却水Wの液滴速度が7m/s以下になるように、スプリンクラー3a、3bの圧力、ビレットBとスプリンクラー3a、3bとの距離、およびスプリンクラー3a、3bのノズルが冷却水Wを噴射する角度を調節することが好ましい。既に述べたように、第1の実施形態ではスプリンクラー3a、3bのノズルから上向きに噴射された冷却水Wの液滴に重力および空気抵抗による減速が発生するため、例えば通常用いられる0.3MPaの圧力でスプリンクラー3a、3bのノズルから冷却水Wを噴射し、噴射時の液滴速度が約25m/sになるような場合でも、スプリンクラー3a、3bの高さや角度を適切に調節することによって、ビレットBの上面において液滴速度を7m/s以下にすることができる。また、第1の実施形態に係る冷却設備1では、ビレットBの上面における水量密度が5L/min・m2になるように、スプリンクラー3a、3bへの供給水量、スプリンクラー3a、3bの放射角度、およびスプリンクラー3a、3bの首振り角度を調節することが好ましい。
また、第2の実施形態に係る冷却設備11でも同様に、ビレットBの上面における冷却水Wの液滴速度が7m/s以下になるように、ビレットBの上面とスプリンクラー13a、13bとの距離、およびスプリンクラー13a、13bのノズルが噴射する冷却水Wの液滴の径を調節することが好ましい。ここで、第2の実施形態では、冷却水Wの液滴に空気抵抗による減速が発生し、液滴が終端速度、または終端速度に近い速度で落下することによって液滴速度が7m/s以下になる。スプリンクラー13a、13bがビレットBの上面から十分に離隔して配置されている場合、理論的には、ストークスの法則より冷却水Wの液滴の終端速度は液滴の径に依存すると考えられる。より現実的には、実際の降雨の雨滴粒径分布が高精度で自動観測されたレーザー雨滴計のデータ(山田ら、「新しいタイプのレーザー雨滴計の開発とこれを用いた降雨の雨滴粒径分布の観測」、土木学会論文集 No.539/II-35,15-30,1996.5の図-19)を参照すれば、液滴の終端速度を7m/s以下にするためには、液滴の径を3.5mm以下にすればよい。また、第2の実施形態に係る冷却設備11では、ビレットBの上面における水量密度が5L/min・m2になるように、スプリンクラー13a、13bへの供給水量、およびスプリンクラー13a、13bの放射角度を調節することが好ましい。
また、第3の実施形態に係る冷却設備21でも同様に、ビレットBの下面における冷却水Wの液滴速度が7m/s以下になるように、スプリンクラー23a〜23dの圧力、およびビレットBの下面とスプリンクラー23a〜23dとの距離を調節することが好ましい。ここで、第3の実施形態では、冷却水Wの液滴に主に重力による減速が発生することによって液滴速度が7m/s以下になる。この点を考慮した場合、ビレットBの下面における液滴速度を7m/s以下にするためには、スプリンクラー23a〜23dのノズルから噴射された冷却水Wの液滴が、ビレットBがない自由空間で描く放物線の頂点(最大吹き上げ高さ)のビレットBの下面を基準にした高さが2.0m以下となるような噴射速度で吹き上げるようにすればよい。また、第3の実施形態に係る冷却設備21では、ビレットBの下面における水量密度が5L/min・m2になるように、スプリンクラー23a〜23dへの供給水量、およびスプリンクラー23a〜23dの放射角度を調節することが好ましい。
なお、上記の第1および第2の実施形態ではビレットBの上面が冷却水Wによって冷却され、第3の実施形態ではビレットBの下面が冷却水Wによって冷却されたが、ビレットBの上面および下面の両方を冷却水Wによって冷却してもよい。その場合、例えば、第1の実施形態または第2の実施形態と、第3の実施形態とを組み合わせて実施してもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1…冷却設備、2…置台、3a、3b…スプリンクラー、4…水槽、11…冷却設備、13a、13b…スプリンクラー、21…冷却設備、23a、23b、23c、23d…スプリンクラー、B…ビレット、W…冷却水。
Claims (7)
- 鋼片を上面および下面が開放された状態で支持する支持手段と、
前記鋼片の上面または下面に冷却水を散布する散布手段と
を備え、
前記散布手段は、前記冷却水の液滴が前記鋼片の上面または下面に到達する前に重力または空気抵抗による減速が発生するように配置される、鋼片の冷却設備。 - 前記散布手段は、前記冷却水の液滴が前記鋼片の上面または下面に到達する前に液滴速度が7m/s以下になり、かつ前記冷却水の水量密度が5L/min・m2以下になるように配置される、請求項1に記載の鋼片の冷却設備。
- 前記支持手段は、水槽上に架設された置台である、請求項1または請求項2に記載の鋼片の冷却設備。
- 前記散布手段は、前記鋼片よりも上方で上向きに配置されるノズルを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鋼片の冷却設備。
- 前記散布手段は、前記鋼片よりも上方で、かつ前記鋼片の上面から離隔して下向きに配置されるノズルを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鋼片の冷却設備。
- 前記散布手段は、前記鋼片よりも下方で上向きに配置されるノズルを含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鋼片の冷却設備。
- 鋼片を上面および下面が開放された状態で支持する工程と、
前記鋼片の上面および下面に冷却水を散布する工程と
を含み、
前記冷却水は、前記冷却水の液滴が前記鋼片の上面または下面に到達する前に重力または空気抵抗による減速が発生するように散布される、鋼片の冷却方法。
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