JP2013174338A - 動力伝達装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】オイルの掻き上げ目的で駆動系ギヤを大径化せず、また、コスト及び重量を大幅に増加させずにオイルを良好に掻き上げ可能な動力伝達装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載される駆動装置1であって、モータ10からの動力を車輪に伝達する伝達軸と、伝達軸を収容したケース100と、ケース100内の上部に配置されると共にオイルを貯溜する上オイル貯溜室S3と、ケース100内の下部に配置されると共にオイルを貯溜する下オイル貯溜部と、伝達軸に取り付けられ、伝達軸の回転速度を検出するためのパルサープレート50と、を備え、回転するパルサープレート50は、下オイル貯溜部から前記上オイル貯溜室S3にオイルを掻き上げる。
【選択図】図1

Description

本発明は、動力伝達装置に関する。
ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車等の車両において、動力源として搭載されるモータの動力は、モータの出力軸であるモータ軸から、ファイナルドリブンギヤ(最終減速被駆動ギヤ)を構成するリングギヤ、デフ装置を介して車輪に入力される。リングギヤ及びデフ装置はケースに収容されると共に、ケースには各種ギヤ(リングギヤ、デフギヤ等)の噛合部や、デフ装置を構成するデフケースの軸受部等を潤滑するためのオイルも封入され、ケースの内部の下部には前記オイルが溜まってなるオイル溜まりが形成される。そして、車両が前進又は後退した場合、一般に大径で構成されるリングギヤが、オイル溜まりのオイルを掻き上げ、オイルをギヤの噛合部や軸受部等に供給し、これらを潤滑している。
また、車両の燃費を向上させるために、ケースの内部の上方にオイルを貯溜する上オイル貯溜部を形成し、この上オイル貯溜部でオイルの一部を一時的に貯溜することでするオイル溜まりの油面を下げ、リングギヤによるオイルの掻き上げに伴う撹拌抵抗を小さく技術が提案されている。なお、上オイル貯溜部のオイルは、例えば、オイル供給孔や溝(樋)を通って、ギヤの噛合部や軸受部等に供給される。
ところが、リングギヤによって、前進及び後退の一方(例えば前進)でオイルを掻き上げることができたとしても、他方(例えば後退)では難しくなってしまう。そこで、機械式又は電動式のポンプによって、オイルを汲み上げる技術が提案されている(特許文献1参照)。
特開2007−321927号公報
しかしながら、動力の一部を利用して駆動する機械式のポンプを備える構成とした場合、コスト及び重量が増加するうえに、動力の一部がポンプの駆動のために損失してしまう。また、電動式のポンプを備える構成とした場合、機械式のポンプよりも、コスト及び重量が増加してしまう。なお、オイルを良好に掻き上げ可能な大径の駆動系ギヤは、リングギヤ(ファイナルドリブンギヤ)に限られてしまい、その他のギヤでは難しく、また、その他のギヤを掻き上げ目的のために大径化することは難しい。
そこで、本発明は、オイルの掻き上げ目的で駆動系ギヤを大径化せず、また、コスト及び重量を大幅に増加させずにオイルを良好に掻き上げ可能な動力伝達装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための手段として、本発明は、車両に搭載される動力伝達装置であって、動力出力装置からの動力を車輪に伝達する伝達軸と、前記伝達軸を収容したケースと、前記ケース内の上部に配置されると共にオイルを貯溜する上オイル貯溜部と、前記ケース内の下部に配置されると共にオイルを貯溜する下オイル貯溜部と、前記伝達軸に取り付けられ、前記伝達軸の回転速度を検出するためのパルサープレートと、を備え、回転する前記パルサープレートは、前記下オイル貯溜部から前記上オイル貯溜部にオイルを掻き上げることを特徴とする動力伝達装置である。
このような構成によれば、伝達軸に取り付けられたパルサープレートが、下オイル貯溜部から上オイル貯溜部にオイルを掻き上げ、オイルの掻き上げ量を確保できる。つまり、オイルの掻き上げ目的のために駆動系ギヤを大径化する必要はない。
そして、オイルが上オイル貯溜部に掻き上げられると、下オイル貯溜部のオイル量が少なくなり、下オイル貯溜部におけるオイル溜まりの油面が低下する。これにより、駆動系ギヤによる下オイル貯溜部におけるオイル溜まりの撹拌抵抗が小さくなり、駆動力の損失が低減される。
また、パルサープレートは、駆動系ギヤやオイルの汲み上げ目的のポンプに対して軽量かつ安価であるので、動力伝達装置全体の製造コスト及び重量が大幅に増加することはない。
さらに、パルサープレートは、駆動系ギヤのように駆動トルクを伝達する部品でないので、その歯形をオイルの掻き上げに適した形状に適宜設計変更することが容易である。これに対して、駆動系ギヤ(ファイナルドリブンギヤ等)は、駆動トルクを伝達する部品であって、その歯形は強度、耐久性、振動、騒音等に大きく影響するので、歯形をオイルの掻き上げに適した形状に変更することは難しい。
さらにまた、後記する実施形態のように、パルサープレートがオイルを掻き上げ可能な大径のリングギヤと逆方向で回転するカウンタ軸(伝達軸)に取り付けられた構成とすれば、前進、後退のいずれにおいてもオイルを掻き上げ可能となる。
また、前記動力伝達装置において、前記伝達軸は、前記動力出力装置の出力軸と一体で同方向に回転する第1伝達軸と、第2伝達軸と、前記第1伝達軸と前記第2伝達軸とを接続すると共に、前記第2伝達軸を前記第1伝達軸と逆方向で回転させる第1ギヤ機構と、車輪と同方向で回転する第3伝達軸と、前記第2伝達軸と前記第3伝達軸とを接続すると共に、前記第3伝達軸を前記第2伝達軸と逆方向で回転させる第2ギヤ機構と、を備え、前記第2ギヤ機構は、前記第3伝達軸に固定されると共に、前記第3伝達軸と同方向で回転するリングギヤを備え、回転する前記リングギヤは、前記下オイル貯溜部から前記上オイル貯溜部にオイルを掻き上げ、前記パルサープレートは、前記第2伝達軸に取り付けられると共に、前記第2伝達軸と同方向で回転することが好ましい。
このような構成によれば、パルサープレート(第2伝達軸)の回転方向と、リングギヤ(ファイナルドリブンギヤ)の回転方向と、が逆になる。
これにより、車両の前進時、リングギヤで、下オイル貯溜部から上オイル貯溜部にオイルを掻き上げることができる。一方、車両の後退時、パルサープレートで、下オイル貯溜部から上オイル貯溜部にオイルを掻き上げることができる。すなわち、車両の前進時、後退時のいずれにおいても、オイルの掻き上げ量を確保できる。
また、前記動力伝達装置において、前記動力出力装置であると共に前記ケースに収容された電動機と、前記ケースに収容されると共に、前記電動機に供給する電力を制御することで前記電動機の出力を制御する制御装置と、基端部が前記制御装置に固定されると共に、先端部が前記パルサープレートに向けて延び、前記伝達軸の回転速度を検出するためのホール素子と、を備えることが好ましい。
このような構成によれば、ケースが、動力出力装置である電動機及び伝達軸に加えて制御装置を収容した構成であるので、動力伝達装置全体が一ユニット化し、その取り扱い(取り付け、取り外し等)が容易となる。
ホール素子の基端部が制御装置に固定され、ホール素子が制御装置に直接接続された構成であるので、制御装置とホール素子とを接続するハーネスが不要となる。なお、制御装置とホール素子とはパルサープレートの一径方向視(後記する実施形態では前後方向視)において重なっていることが好ましい。すなわち、制御装置とホール素子とは、第2伝達軸の軸方向において、略同位置で重なって配置されることが好ましい。
また、電動機がケースに収容された構成であるので、ケースを金属製とすれば、ケースがヒートシンク(放熱器)として機能し、モータの熱が外部に放出され易くなる。
また、前記動力伝達装置において、前記動力出力装置は電動機であって、前記上オイル貯溜部のオイルを前記電動機に供給するオイル供給路を備えることが好ましい。
このような構成によれば、上オイル貯溜部のオイルがオイル供給路を介して電動機に供給され、このオイルによって電動機を冷却できる。
また、前記動力伝達装置において、前記パルサープレートは、円板状の円板部と、前記円板部の外周縁から軸方向に延びる円筒部と、を備え、前記円筒部には、径方向に貫通する貫通孔が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、円筒部の径方向内側のオイルが、遠心力により、貫通孔を通って径方向外側に向かう。これにより、パルサープレートによるオイルの掻き上げ量を増加できる。
本発明によれば、オイルの掻き上げ目的で駆動系ギヤを大径化せず、また、コスト及び重量を大幅に増加させずにオイルを良好に掻き上げ可能な動力伝達装置を提供できる。
本実施形態に係る駆動装置の平断面図であり、図2のX3−X3線断面、図3のX4−X4線断面に対応している。 本実施形態に係る駆動装置の縦断面図であり、図1のX1−X1線断面に対応している。 本実施形態に係る駆動装置の縦断面図であり、図1のX2−X2線断面に対応している。 本実施形態に係る駆動装置の分解斜視図である。 本実施形態に係るパルサープレートの平断面図である。 本実施形態に係るパルサープレートの側面図である。 変形例に係るパルサープレート及びカウンタ軸の縦断面図である。
本発明の一実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
駆動装置1(動力伝達装置)は、ハイブリッド車(車両)であって四輪駆動可能な車両の後側に配置されており、例えば、走行開始時、後退時、加速時、前輪(図示しない)のスリップ時等にモータ10を作動させ、モータ10の動力を後輪(駆動輪、図示しない)に伝達する装置である。
車両の前側にはエンジン(図示しない)が配置されており、エンジンの動力は前輪に伝達されるようになっている。すなわち、前輪(車輪)にはエンジンの動力が伝達され、後輪(車輪)にはモータ10の動力が伝達され、エンジンとモータ10とは独立して制御されるようなっている。そして、エンジンのみが作動し前輪のみが駆動輪となる二輪通常モードと、エンジン及びモータ10が作動し前輪及び後輪が駆動輪となる四輪駆動モードと、モータ10のみが作動し後輪のみが駆動輪となる二輪EVモードとが、適宜に切り替えられるようになっている。
ただし、車両はハイブリッド車の他、電気自動車、燃料電池車でもよい。また、駆動装置1が前輪を駆動する構成でもよい。さらに、二輪駆動車でもよく、また、三輪車等でもよい。
≪駆動装置の構成≫
駆動装置1は、モータ10(電動機、動力出力装置)と、カウンタ軸21(中間軸、第2伝達軸)と、デフ装置30(差動装置、第3伝達軸)と、リングギヤ41(ファイナルドリブンギヤ)と、パルサープレート50と、PDU61(Power Drive Unit、制御装置)と、ホール素子70と、ケース100と、を備えている。
<モータ>
モータ10は、インナーロータ型であり、PDU61から電力が供給されると、正方向(前進に対応する方向)又は逆方向(後退に対応する方向)で回転し、駆動力を発生する。モータ10は、モータ10の中心軸線上であって左右方向に延びるモータ軸11(出力軸、第1伝達軸)と、モータ軸11の外周面に固定されたロータ12と、ロータ12の径方向外側に配置されたステータ13と、を備えている。
<モータ−モータ軸>
モータ軸11は、ロータ12から左右に突出しており、その突出した部分は、軸受14、軸受15を介してケース100に回転自在に支持されている。
モータ軸11は、円筒状を呈している。モータ軸11の中空部11aは、モータ軸11の左側開口に差し込まれた円筒状のオイル供給パイプ16の中空部(オイル供給路)を介して、後記する上オイル貯溜室S3と連通している。
モータ軸11のロータ12から左側に突出した部分には、径方向に延びる貫通孔11bが形成されている。そして、モータ軸11が回転すると中空部11aのオイルに遠心力が作用し、オイルが、貫通孔11bを通って、ロータ12及びステータ13の左端面に向かい、ロータ12及びステータ13を冷却するようになっている。なお、貫通孔11bは周方向に複数形成されている。
モータ軸11のロータ12から右側に突出した部分には、径方向に延びる貫通孔11cが形成されている。そして、オイルが、貫通孔11cを通って、ロータ12及びステータ13の右端面に向かい、ロータ12及びステータ13を冷却するようになっている。なお、貫通孔11cは周方向に複数形成されている。
モータ軸11のロータ12から左側に突出した部分の外周面には、ギヤ歯11dが形成されている。ギヤ歯11dは後記するギヤ24と噛合している。なお、モータ軸11に別部品のギヤが固定された構成としてもよい。
<モータ−ロータ>
ロータ12は、円柱状を呈しており、その中心軸線上には、モータ軸11が差し込まれる差込孔が形成されている。ロータ12はモータ軸11とスプライン結合しており、ロータ12及びモータ軸11は一体で回転するようになっている。ロータ12の外周縁部近傍には、回転力を生成するための磁石(図示しない)が埋設されている。
<モータ−ステータ>
ステータ13は、円筒状を呈しており、ロータ12の外側に配置されている。ステータ13の内周面側には径方向内向きで延びる複数のティース(図示しない)が形成されている。複数のティースは周方向において等間隔で配置されており、各ティースにはコイル(図示しない)が装着されている。複数のコイルは、周方向において、U相用、V相用、W相用、U相用、…のように振り分けられ、各相毎に直列で接続されている。
<カウンタ軸>
カウンタ軸21は、モータ軸11から後下方において左右方向に延びており、軸受22、軸受23を介してケース100に回転自在に支持されている。
カウンタ軸21には、ギヤ24が固定されており、ギヤ24はモータ軸11のギヤ歯11dと噛合している。ギヤ24の歯数はギヤ歯11dよりも多くなっている。これにより、モータ10の駆動力は減速されてカウンタ軸21に伝達するようになっている。つまり、カウンタ軸21の回転速度(rpm)はモータ軸11の回転速度(rpm)よりも小さくなる。
なお、カウンタ軸21とギヤ24とは、キー、スプライン等によって、周方向において固定されている。
ここで、モータ軸11(第1伝達軸)とカウンタ軸21(第2伝達軸)とを接続すると共に、カウンタ軸21をモータ軸11と逆方向で回転させる第1ギヤ機構は、モータ軸11のギヤ歯11dと、ギヤ24とを備えて構成されている。
カウンタ軸21の外周面には、ギヤ歯21aが形成されている。ギヤ歯21aは、後記するリングギヤ41と噛合している。なお、カウンタ軸21に別部品のギヤが固定された構成としてもよい。
<デフ装置、リングギヤ>
デフ装置30は、軸受31a、31aを介してケース100に回転自在に支持されたデフケース31(第3伝達軸)と、デフケース31に収容された2つのピニオンギヤ32、32と、同様に収容された2つのサイドギヤ33、33と、を備えている。
ピニオンギヤ32は、デフケース31に固定されたピニオンシャフト32aを回転中心として回転自在に設けられている。サイドギヤ33は、ピニオンギヤ32の左右にそれぞれ配置されると共に、ピニオンギヤ32に噛合している。サイドギヤ33の背面には、左側又は右側のドライブシャフト210がスプライン結合しており、サイドギヤ33は左側又は右側のドライブシャフト210と一体で回転するようになっている。そして、ハイブリッド車がカーブを走行すると、左右のサイドギヤ33、33が差動回転するようになっている。
リングギヤ41は、ギヤ24よりも大径で構成され、デフケース31のフランジ部にボルトで締結されており、デフケース31と同方向で一体に回転するようになっている。
リングギヤ41は、カウンタ軸21のギヤ歯21aと噛合している。リングギヤ41の歯数はギヤ歯21aよりも多くなっている。これにより、カウンタ軸21の駆動力は減速されてリングギヤ41に伝達するようになっている。つまり、リングギヤ41の回転速度(rpm)はカウンタ軸21の回転速度(rpm)よりも小さくなる。したがって、「モータ軸11の回転速度>カウンタ軸21の回転速度>リングギヤ41の回転速度」の関係となる。
ここで、カウンタ軸21(第2伝達軸)とデフケース31を接続すると共に、デフケース31をカウンタ軸21と逆方向で回転させる第2ギヤ機構は、カウンタ軸21のギヤ歯21aとリングギヤ41とを備えて構成されている。したがって、モータ軸11及びリングギヤ41は同方向で回転し、カウンタ軸21はモータ軸11及びリングギヤ41と逆方向で回転することになる。
<パルサープレート>
パルサープレート50は、カウンタ軸21の回転速度を検出するためのプレートであり、浅底の有底円筒状を呈している(図5、図6参照)。パルサープレート50は、底壁部を構成する円板状の円板部51と、円板部51の外周縁から軸方向左側に延び周壁部を構成する円筒部52と、を備えている。
円板部51の中心には円筒状のアダプタ53が固定されており、アダプタ53の中空部にはカウンタ軸21の左側先端が差し込まれている。アダプタ53とカウンタ軸21とは、スプライン結合、キー等によって、相対回転しないようになっている。これにより、パルサープレート50はカウンタ軸21と同方向で一体に回転するようになっている。
円筒部52の外周面には、周方向において等間隔で配列した複数の突条54が形成されている。各突条54は軸方向において円筒部52全体に延びている。周方向において隣り合う突条54の間は溝55となっている。
ただし、パルサープレート50の形状は、オイルの掻き上げ性等を考慮して適宜変更自由である。例えば、円筒部52が突条54及び溝55を備えず、周方向に複数の貫通孔が形成された構成でもよい。また、円筒部52を備えず、円板部51の外周縁から径方向内向きに延びるスリットが周方向に複数形成された構成でもよい。
<PDU>
PDU61は、ECU220(Electronic Control Unit、電子制御装置)からの指令に従って、バッテリ230からの直流電力を三相交流電力に変換し、モータ10に供給するインバータである。三相交流電力は、PDU61から、バスバー62a、アダプタ62b、バスバー62cを介して、ステータ13のコイル(図示しない)に供給されるようになっている。なお、PDU61は、U相用コイル、V相用コイル、W相用コイルに独立した系統で接続されており、各系統にバスバー62a等が設けられている。
PDU61は、左右方向(軸方向)においてパルサープレート50と重なる位置に配置されている。つまり、前後方向視において、PDU61とパルサープレート50とは重なっている。これにより、前後方向に延びるホール素子70をPDU61に直接接続し易くなっている。
PDU61は、ホール素子70を介して、パルサープレート50(カウンタ軸21)の回転速度を検出する機能を備えている。そして、PDU61は、パルサープレート50の回転速度を、ECU220に出力するようになっている。
<ホール素子>
ホール素子70は、パルサープレート50(カウンタ軸21)の回転速度を検出するための素子である。ホール素子70の基端部71は、ハーネスを介さず、PDU61に直接取り付けられている。そして、ホール素子70は、基端部71から後方に向かって延び、検出部となる先端部72は、パルサープレート50の円筒部52の近傍に配置されている。
<ケース>
ケース100は、モータ10、カウンタ軸21、デフ装置30、リングギヤ41、パルサープレート50、PDU61及びホール素子70を収容するケースである。このようにケース100が、モータ10等の駆動装置1の全機器を収容した構成であるので、駆動装置1全体が一ユニット化し、その取り扱い(取り付け、取り外し等)が容易となる。
ケース100は、金属製であって、モータ10の熱を外部に放出するヒートシンク(放熱器)としても機能している。
ケース100は、第1ケース110と、第2ケース120と、第3ケース130と、第4ケース140とを備えて構成され、これらが組み付けられることで構成されている。第1ケース110等は、例えば鋳造品で構成される。
ケース100内は、隔壁部101によって、オイルが浸入しない電子部品室S1と、オイルが存在するオイル室S2と、に区画されている。隔壁部101は、第1ケース110の隔壁部111と、第2ケース120の隔壁部121と、第3ケース130の隔壁部131とが組み合わさって構成されたものである。
<ケース−電子部品室>
電子部品室S1は、PDU61及びホール素子70を収容している。
第2ケース120の隔壁部121は、左右方向に延びており(図1参照)、その左側の中間位置に貫通孔122が形成されている(図2参照)。貫通孔122にはホール素子70が差し込まれている。
第3ケース130の隔壁部131は、平断面視でL字形を呈しており(図1参照)、前後方向に延びる部分には、3つの貫通孔132が形成されている(図3参照)。3つの貫通孔132は、PDU61とステータ13に設けられたU相用コイル、V相用コイル、W相用コイル(図示しない)とを、電気的に3系統で接続するための孔である。
<ケース−オイル室>
オイル室S2は、モータ10、カウンタ軸21、デフ装置30、リングギヤ41及びパルサープレート50を収容している。
そして、車両の停止時、オイル室S2の底部に、オイル溜まりが形成される、このオイル溜まりに、ギヤ24の下部、リングギヤ41の下部及びパルサープレート50の下部が浸るようになっている。なお、図2、図3では、車両の停止時におけるオイル溜まりの油面Hを二点鎖線で記載している。
<下オイル貯溜部>
ここで、ケース100内の下部に配置されると共にオイルを貯溜する下オイル貯溜部は、第1ケース110の下部と、第2ケース120の下部と、第3ケース130の下部と、第4ケース140の下部とを備えて構成されている。
<上オイル貯溜部>
図2、図4に示すように、第2ケース120は、隔壁部101の中間位置から後方に延びた後、上方に延びる略L字形のリブ123を備えている。そして、隔壁部121とリブ123とで囲まれる空間が、上オイル貯溜室S3となっている。
なお、前記したオイル供給パイプ16の左側開口(オイル導入口)は、上オイル貯溜室S3の底部近傍に配置されている(図3参照)。これにより、上オイル貯溜室S3のオイルは、オイル供給パイプ16を通って、モータ軸11の中空部11aに供給されるようになっている。
<後退時、オイルの掻き上げ経路>
車両の後退時におけるオイルの掻き上げ経路を説明する。
第2ケース120は、円弧状壁部124と、接線方向壁部125と、半円弧状リブ126とを備えている(図2、図4参照)。円弧状壁部124、接線方向壁部125及び半円弧状リブ126は、左右方向において、パルサープレート50と同じ位置に配置されている。
円弧状壁部124は、パルサープレート50の下方から、パルサープレート50の後半分の外形に沿いながら略1/3円弧状で延びている。接線方向壁部125は、円弧状壁部124の上端から、この上端位置におけるパルサープレート50の接線方向に沿って、前上方に延びている。半円弧状リブ126は、前記した略L字形のリブ123の先端の上方であって、接線方向壁部125の上端の内面に設けられている。
そして、車両の後退時、パルサープレート50が図2において左回転すると、パルサープレート50でオイルが掻き上げられ、掻き上げられたオイルは、円弧状壁部124の内面、接線方向壁部125の内面に沿って前上方に掛け上がった後、半円弧状リブ126で通流方向を前下向きに変え、上オイル貯溜室S3に貯溜されるようになっている(矢印A1参照)。
<前進時、オイルの掻き上げ経路>
車両の前進時におけるオイルの掻き上げ経路を説明する。
図3、図4に示すように、第3ケース130は、半円弧状壁部133と、上壁部134と、リブ135と、リブ136とを備えている。半円弧状壁部133、上壁部134、リブ135及びリブ136は、左右方向において、リングギヤ41と同じ位置に配置されている。
半円弧状壁部133は、リングギヤ41の下方から、リングギヤ41の後半分の外径に沿いながら半円弧状で延びている。上壁部134は、半円弧状壁部133の上端から、略水平方向で前方に延びている。リブ135は、側面視(左右方向視)において、第2ケース120のリブ123と重なるように配置されている。リブ136は、リブ135の先端から後方に向かってやや上り傾斜で延びている。
そして、車両の前進時、リングギヤ41が図3において左回転すると、リングギヤ41でオイルが掻き上げられ、掻き上げられたオイルは、半円弧状壁部133の内面、上壁部134の内面に沿って掛け上がった後、リブ136によって右向きに通流方向を変え、上オイル貯溜室S3に案内されるようになっている(矢印A2参照)。したがって、リブ136の上面は、右側が低くなるように傾斜していることが好ましい。
≪駆動装置の作用・効果≫
このような駆動装置1によれば次の作用・効果を得る。
車両の後退時、軽量かつ安価なパルサープレート50よってオイルを掻き上げ、上オイル貯溜室S3に案内する構成であるので、カウンタ軸21と一体で回転するギヤ24を、オイルの掻き上げ用のために大径化する必要はなく、駆動装置1の製造コスト及び重量が大幅に増加することはない。
このように、オイルが掻き上げられるとケース100の底部に形成されるオイル溜まりの油面Hが低下するので、リングギヤ41、ギヤ24等によるオイルの撹拌による駆動力の損失が低減する。車両の前進時についても同様である。
パルサープレート50は、デフケース31よりも高速で回転するカウンタ軸21に取り付けられた構成であるので、パルサープレート50をデフケース31に取り付けた構成よりも、オイルの掻き上げ量を増加できる。
一方、車両の前進時、大径のリングギヤ41によってオイルを掻き上げ、上オイル貯溜室S3に案内できる。
すなわち、車両の前進時、後退時のいずれにおいても、上オイル貯溜室S3にオイルを掻き上げることができる。
ここで、車両は、その前側に、内燃機関と、内燃機関の動力を変速する変速機(動力出力装置)と、デフ装置、変速機の出力軸とデフ装置との間に設けられたカウンタ軸と、カウンタ軸に取り付けられたパルサープレートと、を備えている。そして、モータ10の作動による車両の後退時、前輪(従動輪)の回転に伴って、パルサープレートが回転し、上オイル貯溜室にオイルを掻き上げるようになっている。一方、内燃機関及び/又はモータ10の作動による車両の前進時、前側のデフ装置を構成するデフケースに取り付けられたリングギヤによって、上オイル貯溜室にオイルを掻き上げるようになっている。
≪変形例≫
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、次のように変更できる。
図7に示すように、パルサープレート50及びカウンタ軸21を変更してもよい。
パルサープレート50の円筒部52には、径方向に貫通する貫通孔52aが形成されている。貫通孔52aは周方向において複数形成されている。これにより、円筒部52の径方向内側のオイルが、遠心力により、貫通孔52aを通って径方向外側に向かう。したがって、パルサープレート50によるオイルの掻き上げ量を増加できる。
カウンタ軸21内には、右側が開口したオイル通路21bと、オイル通路21bの左端から径方向外側に延びるオイル通路21cとが形成されている。アダプタ53内には、オイル通路21cと連通すると共に径方向において貫通したオイル通路53aが形成されている。そして、オイル室S2のオイルが、オイル通路21b、オイル通路21c、オイル通路53aを順に通って、パルサープレート50内に導かれるようになっている。次いで、このようにして導かれたオイルは、前記した貫通孔52aを通って、径方向外側に向かうようになっている。
なお、オイル通路21c及びオイル通路53aは、周方向において複数形成された構成としてもよい。
前記した実施形態では、モータ軸11が、モータ10の出力軸と第1伝達軸とを兼ねる構成を例示したが、その他に例えば、モータ10の出力軸に別部品の第1伝達軸が連結された構成でもよい。
前記した実施形態では、動力出力装置がモータ10である構成を例示したが、その他に例えば、内燃機関の変速機である構成でもよく、ガソリン車に搭載された構成でもよい。この場合、変速機は、ケース100に収容されず、ケースの外部に配置された構成となる。その他、動力出力装置が、油圧モータ、内燃機関等である構成でもよい。
また、左車輪、右車輪のそれぞれにモータを備え、左右のモータによって、左右の車輪が独立制御されるシステムに、本発明を適用してもよい。この場合、デフ装置を備えず、左車輪又は右車輪と一体で回転するドライブシャフトが第3伝達軸となる。
1 駆動装置(動力伝達装置)
10 モータ(電動機、動力出力装置)
11 モータ軸(第1伝達軸、出力軸)
11d ギヤ歯(第1ギヤ機構)
16 オイル供給パイプ(オイル供給路)
21 カウンタ軸(第2伝達軸)
21a ギヤ歯(第2ギヤ機構)
24 ギヤ(第1ギヤ機構)
30 デフ装置(差動装置)
31 デフケース(第3伝達軸)
41 リングギヤ(第2ギヤ機構)
50 パルサープレート
51 円板部
52 円筒部
61 PDU(制御装置)
70 ホール素子
71 基端部
72 先端部
100 ケース
S1 電子部品室
S2 オイル室
S3 上オイル貯溜室(上オイル貯溜部)

Claims (6)

  1. 車両に搭載される動力伝達装置であって、
    動力出力装置からの動力を車輪に伝達する伝達軸と、
    前記伝達軸を収容したケースと、
    前記ケース内の上部に配置されると共にオイルを貯溜する上オイル貯溜部と、
    前記ケース内の下部に配置されると共にオイルを貯溜する下オイル貯溜部と、
    前記伝達軸に取り付けられ、前記伝達軸の回転速度を検出するためのパルサープレートと、
    を備え、
    回転する前記パルサープレートは、前記下オイル貯溜部から前記上オイル貯溜部にオイルを掻き上げる
    ことを特徴とする動力伝達装置。
  2. 前記伝達軸は、
    前記動力出力装置の出力軸と一体で同方向に回転する第1伝達軸と、
    第2伝達軸と、
    前記第1伝達軸と前記第2伝達軸とを接続すると共に、前記第2伝達軸を前記第1伝達軸と逆方向で回転させる第1ギヤ機構と、
    車輪と同方向で回転する第3伝達軸と、
    前記第2伝達軸と前記第3伝達軸とを接続すると共に、前記第3伝達軸を前記第2伝達軸と逆方向で回転させる第2ギヤ機構と、
    を備え、
    前記第2ギヤ機構は、前記第3伝達軸に固定されると共に、前記第3伝達軸と同方向で回転するリングギヤを備え、
    回転する前記リングギヤは、前記下オイル貯溜部から前記上オイル貯溜部にオイルを掻き上げ、
    前記パルサープレートは、前記第2伝達軸に取り付けられると共に、前記第2伝達軸と同方向で回転する
    ことを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
  3. 前記動力出力装置であると共に前記ケースに収容された電動機と、
    前記ケースに収容されると共に、前記電動機に供給する電力を制御することで前記電動機の出力を制御する制御装置と、
    基端部が前記制御装置に固定されると共に、先端部が前記パルサープレートに向けて延び、前記伝達軸の回転速度を検出するためのホール素子と、
    を備える
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の動力伝達装置。
  4. 前記動力出力装置は電動機であって、
    前記上オイル貯溜部のオイルを前記電動機に供給するオイル供給路を備える
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の動力伝達装置。
  5. 前記動力出力装置であると共に前記ケースに収容された電動機と、
    前記ケースに収容されると共に、前記電動機に供給する電力を制御することで前記電動機の出力を制御する制御装置と、
    基端部が前記制御装置に固定されると共に、先端部が前記パルサープレートに向けて延び、前記伝達軸の回転速度を検出するためのホール素子と、
    を備える
    ことを特徴とする請求項4に記載の動力伝達装置。
  6. 前記パルサープレートは、円板状の円板部と、前記円板部の外周縁から軸方向に延びる円筒部と、を備え、
    前記円筒部には、径方向に貫通する貫通孔が形成されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
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