JP2013170450A - 排気浄化装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】排気浄化装置に関し、制御性と浄化性能とをともに向上させる。
【解決手段】車両20のエンジンルーム11内の排気通路18上に設けられ、触媒貴金属が非担持とされたフィルター9bと、エンジン10の出力制御に係る主噴射後に燃焼ポスト噴射を実施する燃料噴射弁13とを備える。また、燃焼ポスト噴射の燃料が排気通路18に流出せずに筒内で燃焼する最も遅い燃料噴射時刻を最遅時刻ALIMとして演算する演算手段2を備える。さらに、フィルター9bの再生時に燃料噴射弁13を制御し、演算手段2で演算された最遅時刻ALIM以前のタイミングで燃焼ポスト噴射を終了させる第一制御手段3aを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジンの排気通路に設けられた排気浄化装置に関する。
従来、エンジンの排気浄化システムに適用される装置の一つとして、DPF(Diesel Particulate Filter)と呼ばれるフィルターが広く使用されている。このフィルターは、エンジンの排気中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter;以下PMと呼ぶ)を除去するための浄化装置である。PMとは、炭素からなる黒煙(すす)の周囲に燃え残った燃料や潤滑油の成分,硫黄化合物等が付着したものであり、フィルター上にはこれらのPMに見合った大きさの多数の細孔が形成されている。このような多孔構造により、PMがフィルターの表面や細孔内部に捕集され、排気が浄化される。
一方、フィルターに堆積したPMは、細孔を目詰まりさせて排気圧を増大させる原因となりうる。そこで、一般的なフィルターを搭載した車両においては、捕集されたPMをフィルター上で焼却することでフィルターの濾過機能を回復させる再生制御が実施される。再生制御では、エンジンの運転状態の制御により排気温度を上昇させる操作がなされ、フィルター上でPMが焼却される。なお、フィルター上でのPMの酸化反応を促進することを目的として、酸化触媒をフィルターに担持させたもの(触媒付きDPF)も開発されている。
ところで、再生制御では、排気通路内に設置された温度センサーの検出値に基づいて排気温度がフィードバック制御される。例えば、温度センサーの検出値が目標温度に達していないときには、排気温度の上昇量が増加するように燃料噴射量が増量補正され、あるいは燃料噴射のタイミングが遅角化される。また、温度センサーの検出値が目標温度にほぼ一致したときには、その時点での排気温度を維持するように、燃料噴射量やそのタイミングが制御される。
しかし、フィルターの熱容量が比較的大きいことから、フィルター温度の変化は排気温度の変化に遅れて応答する傾向がある。また、エンジンの燃焼室から排出された排気の温度は、排気通路の下流側に流れるほど低下し、フィルターに到達した排気の温度が充分に高温でない場合もある。そのため、エンジンからフィルターまでの距離が大きいほど、フィルター温度の制御速度や制御精度を向上させにくい。
そこで、フィルターをエンジンの近傍に設けて、フィルター温度の制御性を向上させることが検討されている。例えば、エンジンのエキゾーストマニホールドやターボチャージャーの直下流にフィルターを接続し、これをエンジンルーム内に配置する(特許文献1参照)。このようなフィルターの配置により、エンジンのシリンダーやターボチャージャーから排出される高温の排気をフィルターに供給することができ、迅速にフィルター温度を上昇させることができる。
特開2011−52561号公報
しかしながら、エンジンから発せられる熱によってエンジンルーム内が高温であることから、フィルター温度が過度に上昇したような場合に、その温度を低下させることが難しいという課題がある。つまり、フィルターをエンジンの近傍に設けることで、昇温しやすく降温しにくい温度特性がフィルターに与えられる。したがって、PMの燃焼反応の進行時におけるフィルター温度の恒常性を保つことが難しくなる。特に、酸化触媒をフィルターに担持させた触媒付きDPFを用いた場合には、フィルターでの発熱量が過大となり、フィルター温度の制御安定性が低下しやすい。
一方、フィルター温度が降温しやすくなるように、フィルターをエンジンから離れた排気通路の下流端に設ければ、PMの燃焼反応の進行時におけるフィルター温度の制御安定性は改善されるものの、フィルター温度の制御速度や制御精度が低下する。
また、フィルターに担持させる酸化触媒を減少させることによって、フィルターでの発熱を抑制し、フィルター温度の制御安定性を改善することも考えられる。しかし、フィルター上の酸化触媒には、エンジンのシリンダーから排気通路へスリップした未燃燃料成分を焼却するという役割も期待されている。したがって、酸化触媒の担持量を減少させるほど、フィルターに流入した未燃燃料成分に対する酸化能が低下し、排気浄化性能を向上させることができない。
上述の通り、従来のフィルターには、制御性と排気浄化性能とをともに向上させることが難しいという課題がある。本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、制御性と浄化性能とをともに向上させることができる排気浄化装置を提供することである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
(1)ここで開示する排気浄化システム(排気浄化装置)は、車両のエンジンルーム内の排気通路上に設けられ、触媒貴金属が非担持とされたフィルターと、エンジンの出力制御に係る主噴射後に燃焼ポスト噴射を実施する燃料噴射弁とを備える。また、前記燃焼ポスト噴射の燃料が前記排気通路に流出せずに筒内で燃焼する最も遅い燃料噴射時刻を最遅時刻として演算する演算手段と、前記フィルターの再生時に前記燃料噴射弁を制御して、前記演算手段で演算された前記最遅時刻以前のタイミングで前記燃焼ポスト噴射を終了させる第一制御手段とを備える。
ここでいう「主噴射」とは、エンジンの出力制御に係る噴射であり、いわゆるプレ噴射やメイン噴射,アフター噴射等はこれに含まれる。一方、「燃焼ポスト噴射」とは、エンジンの出力にほぼ影響を与えることなく燃焼しきる噴射であり、主噴射の完了時から所定のインターバル時間を空けて噴射されるものである。この燃焼ポスト噴射は、排気温度を制御するために実施される。
また、ここでいう「最遅時刻」とは、エンジンの熱的特性に基づいて演算される時刻であり、燃焼ポスト噴射で噴射された燃料がその燃焼サイクルで排気中にスリップする前に燃焼しうる熱的状態が保たれている最も遅い時刻(その熱的状態が保たれている状態から、保たれていない状態へと移行する時刻)を意味する。したがって、燃焼ポスト噴射の噴射終了時刻は、エンジンの運転状態に応じて変化しうる。
また、ここでいう「フィルターの再生時」には、フィルターを昇温させているときや、フィルターに捕集された物質を燃焼させているときが含まれる。なお、「フィルター」とは、排気中の粒子状物質を濾過,吸着,吸蔵する機能と、粒子状物質を燃焼させる機能とを併せ持つ濾過装置であり、例えばDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)がこれに含まれる。
(2)また、前記第一制御手段が、前記フィルターを昇温させる昇温制御時における前記燃焼ポスト噴射の終了タイミングよりも、前記フィルターの捕集物質(前記フィルター上に捕集された粒子状物質)を燃焼させる燃焼制御時における前記燃焼ポスト噴射の終了タイミングを進角方向に制御することが好ましい。
例えば、フィルターの昇温制御時には、燃焼ポスト噴射の終了時刻を最遅時刻に一致させるとともに、燃焼制御時には、燃焼ポスト噴射の終了時刻を最遅時刻よりもさらに進角方向に制御する。
(3)また、前記フィルターに流入する直前の排気温度である入口温度を検出する温度センサーを備えることが好ましい。この場合、前記第一制御手段が、前記温度センサーで検出された前記入口温度が高いほど、前記燃焼ポスト噴射の終了タイミングを進角方向に制御することが好ましい。
(4)また、前記フィルターの再生時に前記燃料噴射弁を制御し、前記燃焼ポスト噴射における単位時間あたりの燃料噴射量を調節する第二制御手段を備えることが好ましい。
(5)また、前記第二制御手段が、前記フィルターを昇温させる昇温制御時における単位時間あたりの燃料噴射量よりも、前記フィルターの捕集物質を燃焼させる燃焼制御時における単位時間あたりの燃料噴射量を減少方向に制御することが好ましい。
(6)また、前記フィルターに流入する直前の排気酸素濃度である入口酸素濃度を検出する濃度センサーを備えることが好ましい。この場合、前記第二制御手段が、前記濃度センサーで検出された入口酸素濃度が低いほど、前記燃焼ポスト噴射における単位時間あたりの燃料噴射量を減少させることが好ましい。
(7)また、前記演算手段が、前記エンジンの筒内温度又は熱発生率に基づいて、前記最遅時刻を演算することが好ましい。
例えば、前記演算手段が、主噴射の終了後でシリンダーでの熱発生率が所定値以上である最も遅い時刻(熱発生率が所定値以上の状態から、所定値未満の状態へと移行する時刻)を演算することが好ましい。あるいは、前記演算手段が、主噴射の終了後でシリンダーの筒内温度(ガス温度)が所定温度以上である最も遅い時刻(筒内温度が所定温度以上の状態から、所定温度未満の状態へと移行する時刻)を演算することが好ましい。
なお、前記燃焼ポスト噴射のタイミングの範囲は、膨張行程内とすることが好ましい。例えば、前記燃焼ポスト噴射の終了のタイミングを、180[°ATDC]よりも進角させることが好ましい。このような範囲設定により、所定の筒内温度又は熱発生率を確保しやすくすることができる。
また、前記燃焼ポスト噴射の開始のタイミングは、少なくとも主噴射の完了時から所定のインターバル時間を空けたタイミングであるが、このタイミングが早すぎるとエンジンの出力に影響を与えやすくなる。したがって、前記主噴射が圧縮行程内で終了したような場合であって、その圧縮行程内で前記燃焼ポスト噴射を開始できる程度の時間的な余裕があったとしても、前記燃料ポスト噴射の開始のタイミングを0[°ATDC]よりも遅角させることが好ましい。このような範囲設定により、エンジンの出力に与える影響を減少させることができる。
開示の排気浄化システム(排気浄化装置)では、最遅時刻以前のタイミングで燃焼ポスト噴射を終了させることで、燃焼ポスト噴射の燃料のスリップを防止することができ、排気浄化性能を向上させることができる。
また、フィルターがエンジンルーム内に設けられているため、迅速にフィルター温度を上昇させることができ、フィルター再生時の燃焼ポスト噴射量を削減することができる。一方、フィルターに貴金属触媒が担持されていないため、フィルター再生時の過昇温を防止することができ、フィルター温度の制御安定性及び制御精度を向上させることができる。また、酸化触媒による過昇温が生じないことから、ポスト燃料噴射量の変化勾配を増大させることができる。
したがって、ポスト燃料噴射量の噴射時間を短縮することができ、噴射終了時刻を容易に最遅時刻よりも早めることができる。
一実施形態に係る排気浄化システム(排気浄化装置)の構成を模式的に示す図である。 本排気浄化装置で実施される制御に関するグラフである。(a),(d)は燃料噴射率の経時変化を示し、(b)は熱発生率の経時変化を示し、(c)は筒内温度の経時変化を示す。 本排気浄化装置で実施される再生制御の内容を説明するためのフローチャートである。(a)は制御全体の流れを説明するための図であり、(b)は再生制御のメインフローである。 本排気浄化装置で実施される昇温制御の内容を示すフローチャートである。 本排気浄化装置で実施される焼却制御の内容を示すフローチャートである。 本排気浄化装置で実施される確認制御の内容を示すフローチャートである。
図面を参照して車両に適用された排気浄化システム(排気浄化装置)について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
[1.装置構成]
本実施形態の排気浄化システム(排気浄化装置)は、車両20に搭載されたディーゼルエンジン10の排気を浄化するものとして適用される。図1では、このエンジン10に設けられた複数のシリンダー14(気筒)のうちの一つを示す。シリンダー14内を往復摺動するピストン12は、コネクティングロッドを介してクランクシャフト19に接続される。
シリンダー14の上部には、燃料噴射用のインジェクター13(燃料噴射弁)が設けられる。インジェクター13の先端部はシリンダー14の燃焼室14aに向けて設けられ、各シリンダー14内に直接的に燃料を噴射する。ピストン12の頂面には、燃焼室となる図示しないキャビティが形成され、インジェクター13から噴射される燃料の噴射方向がキャビティ内に向かう方向に設定される。また、インジェクター13の基端部側には燃料配管(デリバリーパイプ)が接続され、図示しないフィードポンプで加圧された燃料がインジェクター13に供給される。
インジェクター13からの燃料噴射量及び燃料噴射のタイミングは、後述するエンジン制御装置1で制御される。例えば、エンジン制御装置1からインジェクター13に制御パルス信号(噴射信号)が伝達されると、その制御パルス信号の大きさ(駆動パルス幅)に対応する期間だけ、インジェクター13の噴射口が開放される。これにより、燃料噴射量は制御パルス信号の大きさに応じた量となり、噴射タイミングは制御パルス信号が伝達された時刻に対応したものとなる。
シリンダー14の天井面には吸気ポート及び排気ポートが設けられるとともに、これらの各ポートを開閉するための吸気弁及び排気弁が設けられる。吸気ポートにはインテークマニホールド15(インマニ)が接続され、排気ポートにはエキゾーストマニホールド16(エキマニ)が接続されるとともに、その下流側に排気通路18が接続される。シリンダー14の燃焼室14aにはインマニ15を介して吸気が導入され、燃焼後の排気はエキマニ16及び排気通路18を介して外部へと排出される。
エキマニ16の直下流側には、排気圧を利用してシリンダー14内に空気を過給するためのターボチャージャー17が接続され、さらにその下流側に触媒装置9が設けられる。ターボチャージャー17及び触媒装置9は、車両20のエンジンルーム11内の排気通路18上に介装される。
触媒装置9は、二種類の担体をケーシング内に内蔵した、いわゆる「2ベッド構造」の排気浄化装置である。図1に示すように、触媒装置9のケーシングは、内径の異なる二つの中空円筒を筒軸に沿って連結した形状をなしている。小径の中空円筒の内部には酸化触媒9aが内蔵され、大径の中空円筒の部分にはフィルター9bが内蔵される。また、小径側の円筒は排気通路18の上流側に接続され、大径側の円筒は排気通路18の下流側に接続される。
これらの酸化触媒9a及びフィルター9bは、例えば円柱状や角柱状といった柱状に形成され、ケーシングの内周面に対して図示しないサポート材を介して固定される。本実施形態では、酸化触媒9a及びフィルター9bがともに円柱状であって、円柱の軸方向(図1の上側から下側へ向かう方向)に排気を流通させるように形成されている場合について説明する。以下、円柱の軸方向のことを排気の流通方向とも呼ぶ。
酸化触媒9aは、排気中の成分に対する酸化能を持った触媒(DOC;Diesel Oxidation Catalyst)であり、金属やセラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒物質を担持させたものである。酸化触媒9aで酸化される排気中の成分としては、一酸化窒素(NO)や炭化水素等が挙げられる。例えば、一酸化窒素が酸化触媒9aで酸化されると二酸化窒素(NO2)が生成される。
フィルター9bは、排気中のPMを捕集する機能と、捕集したPMを燃焼(酸化)させて除去する機能とを併せ持つ多孔質体(例えば、炭化ケイ素製やコージェライト製のセラミックフィルター)であり、例えばDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)である。このフィルター9bは、いわゆる貴金属レスタイプであり、触媒貴金属が担持されていない。また、フィルター9bの内部の空間は、多孔質の壁体によって排気の流通方向に沿って複数の流路に分割されている。各流路の壁体には、PMの微粒子に見合った大きさの多数の細孔が形成され、各流路の入口側及び出口側の何れか一方は目封じされる。
フィルター9bの端面における各流路の配置形状は、例えば三角格子状や四角格子状(碁盤目状)であり、隣接する流路同士の目封じの方向が一致しないようにそれぞれの目封じの位置が設定される。したがって、上流側の端面からフィルター9b内に流入した排気は、流路の壁体内部を少なくとも一回は通過してから、下流側の端面が開放された流路へと流出する。このように、排気が壁体内部を通過する際に、排気中に含まれるPMが壁体内や壁体表面に捕集され、排気が浄化(濾過)される。
また、フィルター9bに捕集されたPMは、フィルター9bの温度が所定の燃焼開始温度以上になると、排気中のNO2等を酸化剤として焼却される。以下、排気温度を上昇させることでフィルター9bの温度を燃焼開始温度以上にしてPMを強制的に燃焼させる制御のことを、再生制御と呼ぶ。本実施形態では、エンジン制御装置1が再生制御を実施する。なお、PMの燃焼開始温度は、おおむね500〜700[℃]である。
上記の酸化触媒9a及びフィルター9bは、図1に示すように、排気の流通方向に隙間を空けてケーシング内に固定される。また、この隙間の部分には、フィルター9bに流入する直前の排気温度を検出する上流温度センサー6と、排気の酸素濃度Cを検出する酸素濃度センサー8とが設けられる。さらに、フィルター9bの直下流側には、フィルター9bから流出した直後の排気温度を検出する下流温度センサー7が設けられる。
以下、上流温度センサー6で検出された排気温度のことを入口温度TINと呼び、下流温度センサー7で検出された排気温度のことを出口温度TOUTと呼ぶ。これらのセンサー6〜8で検出された酸素濃度C,入口温度TIN,出口温度TOUTの情報は、エンジン制御装置1に伝達される。入口温度TINは、フィルター9bに流入する直前の排気温度であり、出口温度TOUTは、フィルター9bから流出した直後の排気温度である。また、酸素濃度Cは、フィルター9bに流入する直前の排気酸素濃度である。
エンジン10のクランクシャフト19の近傍には、エンジン回転速度Neを検出する回転速度センサー21が設けられる。また、車両20の任意の位置には、車速Vを検出する車速センサー22と、アクセルペダルの踏み込み操作量に対応するアクセル開度APSを検出するアクセル開度センサー23とが設けられる。これらのセンサー21〜23で検出されるエンジン回転速度Ne,車速V,アクセル開度APSの情報はエンジン10の運転状態を推定するために用いられるものであり、随時エンジン制御装置1に伝達される。
[2.制御構成]
[2−1.概要]
エンジン制御装置1は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車両20に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。
また、エンジン制御装置1の信号入力側には、上流温度センサー6,下流温度センサー7,酸素濃度センサー8,回転速度センサー21,車速センサー22,アクセル開度センサー23が接続される。一方、制御信号出力側にはエンジン10が接続され、エンジン10の各シリンダーに供給される空気量,燃料噴射量,各シリンダーの点火時期等が制御される。エンジン制御装置1で実施される制御のうち、フィルター9bの再生制御について説明する。
図3(a)に示すように、フィルター9bの再生制御は、昇温制御,焼却制御,確認制御の三段階の制御フェーズから構成される。昇温制御は、PMを焼却するためにフィルター9bの温度(以下、単にフィルター温度とも称する)を燃焼開始温度以上まで昇温させる準備段階の制御である。一方、焼却制御は昇温制御に引き続き実施される制御であり、この制御でPMが焼却,除去される。焼却制御時には、フィルター温度が燃焼開始温度付近に維持されるとともに、PMを継続的に燃焼させるべく、排気中の酸素濃度が適量となるように制御される。
また、確認制御は焼却制御の後に実施される制御であり、この制御でPMの燃え残りがないかどうかが確認される。確認制御では、昇温制御時よりもPMが燃焼しやすい状態となるように、フィルター温度がさらに昇温される。昇温制御,焼却制御,確認制御のそれぞれの開始条件や終了条件は種々考えられる。本実施形態の昇温制御の開始条件(すなわち、再生制御の開始条件)は「フィルター9bのPM堆積量が所定量以上」になったこととされる。
焼却制御の開始条件は「入口温度TINが目標温度T0以上」であり、かつ「入口温度TINと出口温度TOUTとの温度差ΔTが所定値T1以上」であることとされる。前者の条件は、フィルター温度がPMを燃焼させるための準備を整えたか否かを判断するための条件であり、目標温度T0とは、PMの燃焼開始温度に対応する温度である。
また、後者の条件は、フィルター9bの内部で実際にPMの燃焼反応が開始されているか否かを判断するための条件であり、温度差ΔTとは、出口温度TOUTから入口温度TINを減じたものである(ΔT=TOUT-TIN)。PMが燃焼していないときには、入口温度TINと出口温度TOUTとがほぼ同一の温度となり、あるいはフィルター9bでの放熱により出口温度TOUTが入口温度TINよりもやや低温となる。一方、PMが燃焼し始めると、フィルター9bの発熱により出口温度TOUTが入口温度TINよりも高温になり、温度差ΔTが増大する。このように、PMが燃焼し始めたことを判断するための閾値が所定値T1である。
確認制御の開始条件は「温度差ΔTが所定値T2以下」であることとされ、確認制御の終了条件(すなわち、再生制御の終了条件)は「確認制御の開始時刻から所定時間の経過後に、入口温度TINが確認目標温度T3以上」であり、かつ「温度差ΔTが所定値T2以下」であることとされる。確認目標温度T3とは、昇温制御時の温度目標値である目標温度T0よりも高い温度であって、焼却制御での燃え残りのPMを確実に燃焼させるための温度目標値である。また、所定値T2は、PMの燃焼反応が停止したことを判断するための閾値である。
[2−2.燃焼ポスト噴射]
本実施形態の再生制御では、上記の昇温制御,焼却制御,確認制御の全てにおいて、燃焼ポスト噴射が実施される。燃焼ポスト噴射とは、エンジン10の出力トルクに影響を与えないように、噴射された燃料のほぼ全てがシリンダー14内で燃焼するタイミングで、主噴射の後に燃料を噴射することである。つまり、燃焼ポスト噴射で噴射された燃料は、排気通路18にほとんど流出することがなく、おもに排気温度を調節するために消費される。
ここでいう主噴射とはエンジン10の出力制御に係る燃料噴射であり、いわゆるプレ噴射やメイン噴射,アフター噴射等はこれに含まれるものとする。主噴射のタイミングは、エンジン10の特性や運転領域,制御手法等によってさまざまであり、ピストン12が圧縮上死点(TDC)に達する時刻よりも前に主噴射が実施される場合もあれば、その時刻よりも後に主噴射が実施される場合もある。
一方、燃焼ポスト噴射は、エンジン10の出力にほぼ影響を与えない噴射であり、主噴射が終了した時点から所定のインターバル時間を空けて噴射されるものとする。本実施形態の燃焼ポスト噴射のタイミングの範囲は、少なくとも膨張行程(0〜180[°ATDC])内とする。すなわち、燃焼ポスト噴射の開始のタイミングが、少なくとも0[°ATDC]以降に設定されるとともに、終了のタイミングが少なくとも180[°ATDC]以前に設定される。
図2(a)に示すように、例えば時刻A0でメイン噴射が開始され、その後時刻A2〜A3間にアフター噴射が実施されたとすると、燃焼ポスト噴射は、アフター噴射が終了する時刻A3よりも後に、インターバル時間INTを空けて開始されるものとする。
一方、燃焼ポスト噴射の全ての燃料をシリンダー14内で燃焼させるには、図2(b)に示すように、少なくとも主噴射の熱発生率が所定率(例えば0)となる時刻ALIMまでに、燃焼ポスト噴射を完了させることが好ましいといえる。例えば、メイン噴射が開始された時刻A0からやや遅れた時刻A1に熱発生率が上昇し始めたとすると、この時刻A1以降で熱発生率が0になる前に燃焼ポスト噴射を完了させる。
したがって、燃焼ポスト噴射は、主噴射による熱発生率が所定率未満となる時刻ALIMよりも前に終了するものとする。なお、主噴射の熱発生率だけでなく、主噴射よりも以前に噴射されるパイロット噴射や燃焼ポスト噴射を含んだ全燃料による熱発生率を考慮して、その全燃料が燃焼しうる最も遅い時刻を上記の時刻ALIMとしてもよい。以下、上記の時刻ALIMのことを、燃焼ポスト噴射の最遅時刻ALIMと呼ぶ。
燃焼ポスト噴射の終了タイミングを設定するための別の手法としては、エンジン10のシリンダー14内の筒内温度に基づく手法が考えられる。つまり、熱発生量の代わりに筒内のガス温度を用いて最遅時刻ALIMを求めるものである。例えば、図2(c)に示すように、筒内温度が所定筒内温度TCYL以下となる時刻を最遅時刻ALIMとしてもよい。
燃焼ポスト噴射の開始時刻をASTAとし、終了時刻をAENDとすると、開始時刻ASTAは少なくとも主噴射の終了時刻A3よりも後に設定され、終了時刻AENDは少なくとも最遅時刻ALIM以前に設定される。エンジン制御装置1は、このような範囲内で燃焼ポスト噴射を実行し、フィルター9bの再生制御を実施する。また、具体的な燃焼ポスト噴射の開始時刻ASTAや終了時刻AEND,単位時間あたりの燃料噴射量(燃料噴射率)は、エンジン10の運転状態や排気の状態に応じて制御される。なお、エンジン10の運転状態は、エンジン回転速度Ne,車速V,アクセル開度APS等に基づいて推定される。
再生制御を実施するための具体的な手段として、エンジン制御装置1には、演算部2及び制御部3が設けられる。図1中に示すこれらの演算部2,制御部3の各要素は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
[2−3.構成要素]
演算部2(演算手段)は、再生制御に関する演算を実施するものである。この演算部2には、堆積量演算部2aと、最遅時刻演算部2bとが設けられる。
堆積量演算部2aは、フィルター9bへのPM堆積量を演算するものである。PM堆積量は、再生制御の開始及び終了の判定に用いられるパラメーターであり、例えばエンジン10の運転状態から推定されるPM排出量の積算値として演算される。また、再生制御が実施されているときには、再生制御の継続時間から推定されるPM燃焼量がPM堆積量から減算される。ここで演算されたPM堆積量の情報は、制御部3に伝達される。
最遅時刻演算部2bは、燃焼ポスト噴射の最遅時刻ALIMを演算するものである。ここでは、エンジン10の運転状態に基づき、燃焼ポスト噴射を実施しうる最も遅い時刻が最遅時刻ALIMとして演算される。例えば、エンジン回転速度Neとインジェクター13から噴射される主噴射の燃料量とに基づいて、その燃焼サイクルでの熱発生率が演算されるとともに、熱発生率が所定値以下となる時刻が最遅時刻ALIMとして推定演算される。最遅時刻ALIMは、再生制御時における燃焼ポスト噴射の遅角限界に相当する時刻であり、この最遅時刻ALIMを超えるような燃焼ポスト噴射は実施されない。ここで演算された最遅時刻ALIMの情報は、制御部3に伝達される。
制御部3(制御手段)は、フィルター9bの再生制御(昇温制御,焼却制御,確認制御)の開始条件や終了条件を判定するとともに、演算部2で演算された最遅時刻ALIMに基づき、インジェクター13を制御して再生制御時の燃焼ポスト噴射を制御するものである。この制御部3には、噴射タイミング制御部3aと、燃料噴射率制御部3bとが設けられる。
噴射タイミング制御部3a(第一制御手段)は、再生制御時における燃焼ポスト噴射のタイミングを制御するものである。ここでは、演算部2で演算された最遅時刻ALIM以前のタイミングで燃焼ポスト噴射が終了するように、噴射タイミングが制御される。具体的には、再生制御のフェーズに応じて異なる三種類の制御を実施する。
まず、昇温制御時には、最遅時刻ALIMよりも所定時間Xだけ以前の時刻を燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDとして設定する。つまり、燃焼ポスト噴射の終了タイミングが最遅時刻ALIMよりも所定時間Xの時間幅だけ早められる。所定時間Xの値が小さいほど(燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDが最遅時刻ALIMに近く、燃焼ポスト噴射が長引くほど)排気温度が上昇しやすくなり、昇温制御時におけるフィルター温度の昇温速度が上昇する。したがって、迅速にフィルター9bの温度を高めるには、所定時間Xの値を小さく設定することが好ましい。なお、所定時間Xの値がとりうる範囲は、X≧0である。
また、焼却制御時には、最遅時刻ALIMよりも所定時間X+Yだけ以前の時刻を燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDとして設定する。この場合、昇温制御時よりもさらに終了タイミングが進角化される。所定時間Yの値が大きいほど(燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDが最遅時刻ALIMから遠く、燃焼ポスト噴射が早く終了するほど)排気温度が上昇しにくくなり、燃焼制御時におけるフィルター温度の恒温性が向上する。したがって、フィルター9bの温度を一定の範囲内に維持するには、所定時間Yの値を大きく設定することが好ましい。なお、所定時間Yの値がとりうる範囲は、Y>0である。
一方、その後の確認制御時には、最遅時刻ALIMよりも所定時間X+Y-Zだけ以前の時刻を燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDとして設定する。この場合、焼却制御時よりも終了タイミングが遅角化される。所定時間Zの値が大きいほど、排気温度が上昇しやすくなり、確認制御時におけるフィルター温度の昇温速度が上昇する。したがって、燃焼制御時よりもフィルター9bの温度を高めてPMの燃え残りを確認するには、所定時間Zの値を大きく設定することが好ましい。なお、所定時間Zの値がとりうる範囲は、Z≧0である。
上記の所定時間X,Y,Zの値は、予め設定された固定値としてもよいし、入口温度TINやエンジン10の運転状態等に応じて設定される値としてもよい。
図3(d)は、再生制御時における燃焼ポスト噴射の単位時間あたりの噴射量と噴射タイミングとをグラフ化したものである。図3中の実線,破線,一点鎖線がそれぞれ昇温制御,焼却制御,確認制御のときの燃焼ポスト噴射特性を示す。再生制御に含まれる三種類の制御のうち、最も燃料の噴射タイミングが進角方向に制御されるのは焼却制御であり、最も遅角方向に制御されるのは昇温制御である。これは、噴射タイミングが最遅時刻ALIMに近いほど(遅くまで燃料噴射を継続するほど)排気温度が上昇しやすくなるからである。
燃料噴射率制御部3b(第二制御手段)は、再生制御時における燃焼ポスト噴射の燃料噴射率B(単位時間あたりの燃料噴射量、又は単位クランク角あたりの燃料噴射量)を制御するものである。ここでは、再生制御のフェーズ毎に異なる手法で燃料噴射率Bが制御される。
まず、昇温制御時には、排気の状態(排気温度や排気流量等)に基づいて燃料噴射率Bが設定される。例えば、入口温度TINや入口温度TINとPMの燃焼開始温度との差に基づいて、一回の燃焼ポスト噴射で噴射される総噴射量が演算され、これを一回の燃焼ポスト噴射の継続時間で除した値が燃料噴射率Bとして演算される。総噴射量を一定としたとき、燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDが進角化されているほど(上記の所定時間Xが大きいほど)燃焼ポスト噴射の継続時間が短くなり、燃料噴射率Bの値が増大する。つまり、燃料噴射率制御部3bは、燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDに応じて燃料噴射率Bを増減させる。
一方、焼却制御時には、燃料噴射率Bが昇温制御時よりも減少するように制御される。ここでは、フィルター9bに流入する排気中の酸素量がPMを焼却するのに充分な量になるように、フィルター9bの上流側での酸素濃度Cに基づく燃料噴射率Bの制御が実施される。
例えば、酸素濃度Cが所定濃度C1未満であるときには燃料噴射率Bが減少方向に制御され、酸素濃度Cが所定濃度C1以上であるときには燃料噴射率Bが増加方向に制御される。これにより、フィルター9bに流入する排気の酸素濃度Cがほぼ所定濃度C1近傍に維持される。
なお、所定濃度C1は、フィルター9bに堆積したPMを燃焼させるために必要な酸素量に対応する濃度であり、予め設定された固定値としてもよいし、堆積量演算部2aで演算されたPM堆積量に基づいて設定される値としてもよい。昇温制御から焼却制御への移行時には、燃料噴射率Bが減少し、一回の燃焼ポスト噴射で噴射される総噴射量も減少する。
また、その後の確認制御時には、焼却制御時と同様に、酸素濃度Cが所定濃度C1の近傍に維持されるような燃料噴射率Bが制御される。ただし、確認制御では燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDがやや遅角方向に制御されるため、燃料噴射率Bの値は焼却制御時よりも若干減少する。
図2(d)に示すように、再生制御に含まれる三種類の制御のうち、燃料噴射率Bが最も大きいのは昇温制御時であり、焼却制御及び確認制御時には燃料噴射率Bが削減される。これらの制御時にはすでにフィルター温度が充分に高まっており、熱損失分を補充するだけでPMの燃焼反応を進行させることが可能だからである。
[3.フローチャート]
[3−1.メインフロー]
エンジン制御装置1で実行されるフィルター9bの再生制御のメインフローを図3(b)に例示する。このフローチャートに示される一連の制御は、予め設定された所定周期(例えば、数十[ms]サイクル)で繰り返し実施される。
ステップA10では、フィルター9bへのPM堆積量を演算するための各種情報がエンジン制御装置1に読み込まれる。続くステップA20では、堆積量演算部2aにおいて、エンジン10の運転状態に基づいてPM排出量が演算されるとともに、その積算値であるPM堆積量が演算される。
また、ステップA30では、再生制御の開始条件が成立したか否かが判定される。例えば、制御部3においてPM堆積量が所定量以上であるか否かが判定される。ここで開始条件が成立した場合には、ステップA40へ進んで再生制御が開始され、図4に示す昇温制御のフローが実施される。一方、開始条件が成立しない場合にはそのまま今回の演算周期での判定が終了する。この場合、次の演算周期では本フローがステップA10から繰り返される。
[3−2.昇温制御]
エンジン制御装置1で実行される昇温制御のフローチャートを図4に例示する。
ステップB10では、昇温制御を実施するための各種情報がエンジン制御装置1に読み込まれる。続くステップB20では、フィルター9bの出口温度TOUTから入口温度TINを減じた温度差ΔTが演算される。
この温度差ΔTは、フィルター9bでのPMの酸化反応の有無を判断するための指標となる。また、ステップB30では、制御部3において、フィルター9bの入口温度TINが目標温度T0以上であるか否かが判定される。このステップでは、フィルター9bがPMを燃焼させる温度に達しているか否かが判断される。ここでTIN≧T0のときにはステップB40へ進み、TIN<T0のときにはステップB50へ進む。
ステップB40では、制御部3において、フィルター9bの入口温度TINと出口温度TOUTとの温度差ΔTが所定値T1以上であるか否かが判定される。このステップでは、フィルター9bでPMが燃焼を開始しているか否かが判断される。ここで、ΔT≧T1のときには焼却制御の開始条件が成立するため、昇温制御を終了し、図5に示す焼却制御へと移行する。一方、ΔT<T1のときには、焼却制御の開始条件が成立しないため、引き続きステップB50へ進んで昇温制御を継続する。
ステップB50では、最遅時刻演算部2bにおいて、燃焼ポスト噴射の最遅時刻ALIMが演算される。最遅時刻ALIMは、その時点でのエンジン10の運転状態に応じて、例えばエンジン回転速度Neや主噴射の燃料噴射量に基づいて演算される。また、ステップB60では、噴射タイミング制御部3aにおいて、最遅時刻ALIMから所定時間Xを減じた時刻が燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDに設定される。
ステップB70では、燃料噴射率制御部3bにおいて、燃焼ポスト噴射の燃料噴射率Bが設定される。燃料噴射率Bは、例えば一回の燃焼ポスト噴射で噴射される総噴射量を燃焼ポスト噴射の継続時間で除算した値に設定される。その後、ステップB80では、制御部3において燃焼ポスト噴射が実施され、今回の演算周期での制御が終了する。燃焼ポスト噴射の開始時刻ASTAは、例えば一回の燃焼ポスト噴射の継続時間と終了時刻AENDとから算出され、一回の燃焼ポスト噴射の継続時間は、例えば一回の燃焼ポスト噴射で噴射される総噴射量と燃料噴射率Bとから算出される。なお、次の演算周期では、本フローがステップB10から繰り返される。昇温制御は、焼却制御の開始条件が成立するまで継続される。
[3−3.焼却制御]
エンジン制御装置1で実行される焼却制御のフローチャートを図5に例示する。
ステップC10では、焼却制御を実施するための各種情報がエンジン制御装置1に入力される。続くステップC20では、フィルター9bの出口温度TOUTから入口温度TINを減じた温度差ΔTが演算される。
また、ステップC30では、最遅時刻演算部2bにおいて、燃焼ポスト噴射の最遅時刻ALIMが演算される。最遅時刻ALIMは、その時点でのエンジン10の運転状態に応じて、例えばエンジン回転速度Neや主噴射の燃料噴射量に基づいて演算される。続くステップC40では、噴射タイミング制御部3aにおいて、燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDが昇温制御時よりもさらに進角化される。ここでは、図2(d)に示すように、最遅時刻ALIMから所定時間X+Yを減じた時刻が燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDに設定される。
ステップC50では、酸素濃度Cが所定濃度C1以上であるか否かが判定される。このステップでは、フィルター9bに堆積したPMを燃焼させるために必要な酸素量が、フィルター9bに流入する排気中に確保されているか否かが判断される。ここでC≦C1のときにはステップC60へ進み、燃焼ポスト噴射の燃料噴射率Bが減量方向に制御される。また、C>C1のときにはステップC70へ進み、燃料噴射率Bが増量方向に制御される。これにより、フィルター9bに流入する排気の酸素濃度Cがほぼ所定濃度C1近傍に維持される。
その後、ステップC80では、上記の燃料噴射率B及び終了時刻AENDに基づいて燃焼ポスト噴射が実施され、今回の演算周期での制御が終了する。なお、燃焼ポスト噴射の開始時刻ASTAは、例えば一回の燃焼ポスト噴射の継続時間と終了時刻AENDとから算出され、一回の燃焼ポスト噴射の継続時間は、例えば一回の燃焼ポスト噴射で噴射される総噴射量と燃料噴射率Bとから算出される。
ステップC90では、温度差ΔTが所定値T2以下であるか否かが判定される。このステップでは、確認制御の開始条件が成立するか否かが判断される。ここでΔT≦T2のときには、確認制御の開始条件が成立し、PMの燃焼がある程度収まりつつあると考えられるため、焼却制御を終了して図6に示す確認制御へと移行する。一方、ΔT>T2のときには確認制御の開始条件が成立しないため、そのまま今回の演算周期での制御が終了する。なお、次の演算周期では、本フローがステップC10から繰り返される。焼却制御は、確認制御の開始条件が成立するまで継続される。
[3−4.確認制御]
エンジン制御装置1で実行される確認制御のフローチャートを図6に例示する。
ステップD10では、確認制御を実施するための各種情報がエンジン制御装置1に読み込まれる。続くステップD20〜D30では、焼却制御のステップC20〜C30と同様に、温度差ΔT及び最遅時刻ALIMが演算される。また、ステップD40では、噴射タイミング制御部3aにおいて、燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDが焼却制御時よりも遅角化される。ここでは、最遅時刻ALIMから所定時間X+Y-Zを減じた時刻が燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDに設定される。
ステップD50〜D70では、焼却制御のステップC50〜C70と同様に燃料噴射率Bが制御され、フィルター9bに流入する排気の酸素濃度Cが所定濃度C1近傍に維持される。その後のステップD80では、上記の燃料噴射率B及び終了時刻AENDに基づいて燃焼ポスト噴射が実施される。
ステップD90では、確認制御を開始した時点から所定時間が経過したか否かが判定される。ここで所定時間がまだ経過していない場合には、そのまま今回の演算周期の制御を終了する。この場合、次回の演算周期では、本フローがステップD10から繰り返される。一方、すでに所定時間が経過している場合には、ステップD100へ進む。これにより、少なくとも所定時間の間は、確認制御が継続される。
ステップD100では、制御部3において、フィルター9bの入口温度TINが確認目標温度T3以上であるか否かが判定される。つまりここでは、フィルター温度が昇温制御時よりもさらに高くPMが燃えやすい状態となっているか否かが判定される。ここでTIN<T3のときには、そのまま今回の演算周期の制御を終了する。なお、次の演算周期では、本フローがステップD10から繰り返される。一方、TIN≧T3のときにはステップD110に進む。
ステップD110では、温度差ΔTが所定値T2以下であるか否かが判定される。ここで、ΔT≦T2のときには、入口温度TINの上昇に対して出口温度TOUTがそのまま追従するように変化したことになり、フィルター9bでのPM燃焼が発生していないと判断される。つまり、燃え残りのPMが全て燃焼したと判断され、ステップD120に進んで再生制御が終了する。なお、次の演算周期では、図3(b)のメインフローが実行される。
また、ステップD110でΔT>T2のときには、出口温度TOUTが入口温度TINよりも所定値T2以上は高温であるといえる。したがって、燃え残りのPMが燃焼していると判断され、そのまま今回の演算周期の制御を終了する。なお、次の演算周期では、本フローがステップD10から繰り返される。
[4.作用,効果]
上記の排気浄化システム(排気浄化装置)によれば、以下のような作用,効果が得られる。
(1)上記の排気浄化システムでは、フィルター9bの再生制御時の燃焼ポスト噴射が、最遅時刻ALIM以前のタイミングで終了するように制御される。この最遅時刻ALIMは、図2(a)や図2(c)に示すように、エンジン10の熱的特性に基づいて演算された時刻であり、燃焼ポスト噴射の全燃料がシリンダー14内で燃焼しうる最も遅い時刻である。したがって、未燃燃料成分のスリップを防止しながら、排気温度の昇温効率を向上させることができ、排気浄化性能を向上させることができる。
(2)また、上記の排気浄化システムでは、フィルター9bを内蔵した触媒装置9がエンジンルーム11内に設けられている。これにより、高温の排気を触媒装置9に供給することができるとともに、エンジン10の輻射熱,対流熱を利用して触媒装置9の昇温及び保温を図ることができる。つまり、迅速にフィルター温度を上昇させることができ、フィルター9bの昇温制御時の燃料噴射量を削減することができる。
なお、燃料噴射量を減少させることで、昇温制御時の燃焼ポスト噴射の継続時間を短縮することが可能であり、最遅時刻ALIMを遅角限界とした噴射タイミングの設定を容易に実現することができるというメリットもある。また、昇温制御時の燃料噴射量が減少するため、車両20の燃費や排気性能(排ガス性能)を向上させることができ、エンジン10のオイルダイリューションを低減することも可能である。
さらに、触媒装置9の保温性が向上し、フィルター9bの外周部からの放熱量が減少することから、フィルター9b内部での熱分布を均質化することができる。さらに、エンジン10から近い位置に触媒装置9が設けられるため、フィルター温度の制御速度や制御応答性,制御精度等を向上させることができる。
(3)また、上記の排気浄化システムでは、フィルター9bに貴金属触媒が担持されていないため、フィルター9bの焼却制御時の過昇温を防止することができ、フィルター温度の制御安定性及び制御精度を向上させることができる。また、フィルター9bでのPMの燃焼反応が過剰に促進されるおそれがないため、燃焼ポスト噴射の燃料噴射率Bの変化勾配を大きく設定したとしても、フィルター温度が急増しにくい。つまり、燃焼ポスト噴射の開始時刻ASTAからの燃料噴射率Bの立ち上がり角度を増大させることができ、燃焼ポスト噴射の継続時間を短縮することができる。
(4)また、上記の排気浄化システムで昇温制御時に設定される燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDは、AEND=ALIM-Xである。一方、焼却制御時に設定される終了時刻AENDは、AEND=ALIM-(X+Y)である。つまり、入口温度TINが目標温度T0に達していない昇温制御時の終了時刻AENDは、入口温度TINが目標温度T0以上になった後の焼却制御時の終了時刻AENDよりも遅角側に設定されている。
これは、燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDが最遅時刻ALIMに近いほど(遅角側に設定されるほど)後燃えの傾向が強まり、排気温度が上昇しやすくなるためである。本実施形態では焼却制御の開始時のフィルター温度が充分に高温であることから、焼却制御中の昇温量が小さくて済む。そこで、上記の排気浄化システムでは、焼却制御中の終了時刻AENDをさらに進角化しているのである。
このように、焼却制御時の燃焼ポスト噴射の終了タイミングよりも、昇温制御時の終了タイミングを遅角化することで、フィルター9bの昇温性を高めることができる。同様に、昇温制御時の燃焼ポスト噴射の終了タイミングよりも、焼却制御時の終了タイミングを進角化することで、フィルター9bの恒温性をさらに向上させることができる。
(5)さらに、入口温度TINが比較的高温であるときの進角量を、入口温度TINが比較的低温であるときの進角量よりも増大させることで、排気温度の上昇勾配を適切に制御することができ、フィルター温度を所定の目標温度に収束しやすくすることができる。これにより、再生制御時間を短縮することができる。また、過昇温の可能性をさらに低減することができる。
(6)また、上記の排気浄化システムでは、燃焼ポスト噴射の噴射タイミングだけでなく、燃料噴射率Bを同時に制御している。例えば、燃料噴射率制御部3bは、一回の燃料ポスト噴射で噴射される所定の総噴射量を確保すべく、燃焼ポスト噴射の終了時刻AENDに応じて燃料噴射率Bを増減補正している。このような補正により、燃料ポスト噴射の終了時刻AENDを進角,又は遅角方向に制御した場合であっても、トータルの燃料噴射量を変動させることなく燃焼ポスト噴射を実施することができる。
(7)また、上記の排気浄化システムで昇温制御時に設定される燃料噴射率Bは、一回の燃焼ポスト噴射で噴射される総噴射量を確保するための噴射率である。一方、焼却制御時に設定される燃料噴射率Bは、フィルター9bに流入する排気中の酸素量が充分に確保される噴射量であって、昇温制御時に設定される燃料噴射率Bよりも小さい値である。
このように、焼却制御時の燃料噴射率Bを昇温制御時の燃料噴射率Bよりも減少方向に制御することで、PMの酸反応性を高めつつ車両20の燃費や排気性能(排ガス性能)を向上させることができる。また、エンジン10のオイルダイリューションをさらに低減することができる。
(8)また、上記の排気浄化システムでは、焼却制御から確認制御にかけての燃焼ポスト噴射の燃料噴射率Bが酸素濃度Cに基づいて制御される。例えば、図5のステップC50〜C80や図6のステップD50〜D80に示すように、酸素濃度Cが所定濃度C1以下のときには燃料噴射率Bが減少方向に制御され、所定濃度C1を超えるときには燃料噴射率Bが増加方向に制御される。これにより、フィルター9bに流入する排気中の酸素濃度をほぼ一定の所定濃度C1に維持することができ、PMの酸化反応速度の急変を抑制することができる。つまり、フィルター9bでのPMの燃焼反応を確実に安定化させることができ、過昇温や燃え残りの発生を抑制することができる。
(9)また、上記の排気浄化システムでは、最遅時刻ALIMがエンジン10の筒内温度や熱発生率に基づいて演算されるため、燃焼ポスト噴射の燃料が排気通路18に流出しない最も遅い時刻を精度よく演算することができる。これにより、未燃燃料成分が触媒装置9の下流側にスリップすることを防止することができる。
(10)また、上記の排気浄化システムでは、燃焼ポスト噴射を実施するタイミングが膨張行程内となっているため、主噴射の実施時刻や完了時刻にかかわらず、エンジン10の出力に対して影響を与えにくくしつつ、燃料を燃焼させるための筒内温度や熱発生率を確保することができる。
例えば、前記燃焼ポスト噴射の終了のタイミングを、180[°ATDC]よりも進角させることで、所定の筒内温度又は熱発生率を確保しやすくすることができる。また、前記燃料ポスト噴射の開始のタイミングを0[°ATDC]よりも遅角させることで、エンジンの出力に与える影響を減少させることができる。
[5.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上述の実施形態では、フィルター9bの上流側と下流側とのそれぞれに、上流温度センサー6及び酸素濃度センサー8と下流温度センサー7とが設けられた車両20の制御について説明したが、センサー類の具体的な配置構成や、センサー情報を用いた具体的な再生制御の実施方法についてはこれに限定されない。また、再生制御の開始条件や終了条件についても同様であり、公知のさまざまな制御手法を適用することが可能である。
また、上述の実施形態では、図2(a)〜(d)に示すように、燃焼ポスト噴射のタイミング、すなわち「時刻」を制御するものを例示したが、「時刻」の代わりに「クランク角」を用いて制御してもよい。これらのパラメーターは、エンジン回転速度Neの情報を用いて相互に変換することが可能である。
また、上述の実施形態では、酸化触媒9aとフィルター9bとを内蔵した2ベッド構造の触媒装置9が説明されているが、フィルター9bの再生制御を実施するうえで酸化触媒9aは必須の要素ではなく、適宜省略することができる。なお、フィルター9bの再生制御を実施する際に、エンジン10から排出される排気が酸化触媒9aをバイパスしてフィルター9bの直上流に供給されるように、排気通路18の構造を変形してもよい。
また、上述の実施形態ではディーゼルエンジン10のインジェクター13を制御するものを示したが、本発明の適用対象はこれに限定されない。少なくとも、エンジンの出力制御に係る主噴射の後に燃焼ポスト噴射を実施可能なインジェクター13を備えたエンジンであれば、ガソリンエンジンやその他の形式のエンジンに適用することができる。
1 エンジン制御装置
2 演算部(演算手段)
2a 堆積量演算部
2b 最遅時刻演算部
3 制御部(制御手段)
3a 噴射タイミング制御部(第一制御手段)
3b 燃料噴射率制御部(第二制御手段)
6 上流温度センサー
7 下流温度センサー
8 酸素濃度センサー
9 触媒装置
9a 酸化触媒
9b フィルター
13 インジェクター

Claims (7)

  1. 車両のエンジンルーム内の排気通路上に設けられ、触媒貴金属が非担持とされたフィルターと、
    エンジンの出力制御に係る主噴射後に燃焼ポスト噴射を実施する燃料噴射弁と、
    前記燃焼ポスト噴射の燃料が前記排気通路に流出せずに筒内で燃焼する最も遅い燃料噴射時刻を最遅時刻として演算する演算手段と、
    前記フィルターの再生時に前記燃料噴射弁を制御して、前記演算手段で演算された前記最遅時刻以前のタイミングで前記燃焼ポスト噴射を終了させる第一制御手段と、を備えた
    ことを特徴とする、排気浄化装置。
  2. 前記第一制御手段が、前記フィルターを昇温させる昇温制御時における前記燃焼ポスト噴射の終了タイミングよりも、前記フィルターの捕集物質を燃焼させる燃焼制御時における前記燃焼ポスト噴射の終了タイミングを進角方向に制御する
    ことを特徴とする、請求項1記載の排気浄化装置。
  3. 前記フィルターに流入する直前の排気温度である入口温度を検出する温度センサーを備え、
    前記第一制御手段が、前記温度センサーで検出された前記入口温度が高いほど、前記燃焼ポスト噴射の終了タイミングを進角方向に制御する
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載の排気浄化装置。
  4. 前記フィルターの再生時に前記燃料噴射弁を制御し、前記燃焼ポスト噴射における単位時間あたりの燃料噴射量を調節する第二制御手段を備えた
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の排気浄化装置。
  5. 前記第二制御手段が、前記フィルターを昇温させる昇温制御時における単位時間あたりの燃料噴射量よりも、前記フィルターの捕集物質を燃焼させる燃焼制御時における単位時間あたりの燃料噴射量を減少方向に制御する
    ことを特徴とする、請求項4記載の排気浄化装置。
  6. 前記フィルターに流入する直前の排気酸素濃度である入口酸素濃度を検出する濃度センサーを備え、
    前記第二制御手段が、前記濃度センサーで検出された入口酸素濃度が低いほど、前記燃焼ポスト噴射における単位時間あたりの燃料噴射量を減少させる
    ことを特徴とする、請求項4又は5記載の排気浄化装置。
  7. 前記演算手段が、前記エンジンの筒内温度又は熱発生率に基づいて、前記最遅時刻を演算する
    ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の排気浄化装置。
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