本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す概略構成図である。図1において、ディーゼルエンジン1の吸気通路2には可変ノズル型のターボチャージャ3の吸気コンプレッサが備えられ、吸入空気は吸気コンプレッサによって過給され、インタークーラ4で冷却され、吸気絞り弁5を通過した後、コレクタ6を経て、各気筒の燃焼室内へ流入する。燃料は、コモンレール式燃料噴射装置により、すなわち、高圧燃料ポンプ7により高圧化されてコモンレール8に送られ、各気筒の燃料噴射弁9から燃焼室内へ直接噴射される。燃焼室内に流入した空気と噴射された燃料はここで圧縮着火により燃焼し、排気は排気通路10へ流出する。
排気通路10へ流出した排気の一部は、EGRガスとして、EGR通路11によりEGR弁12を介して吸気側に還流される。排気の残りは、可変ノズル型のターボチャージャ3の排気タービンを通り、排気タービンを駆動する。
エンジンコントロールユニット21には、アクセルセンサ22からのアクセル開度(アクセルペダルの踏込量のこと)、クランク角センサ23からのエンジン回転速度の各信号が入力されている。そしてコントロールユニット21では、エンジン負荷(アクセル開度など)及びエンジン回転速度に基づいて、メイン噴射の燃料噴射時期及び燃料噴射量を算出し、これらに対応する開弁指令信号を燃料噴射弁9に出力する。また、エンジンコントロールユニット21では、目標EGR率と目標吸入空気量とが得られるようにEGR制御と過給圧制御を協調して行う。なお、エンジンコントロールユニット21は中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成されている。
排気通路10の排気タービン下流には、排気中のパティキュレートを捕集するフィルタ(DPF)13を配置してある。フィルタ13のパティキュレート堆積量が所定値(閾値)に達すると、エンジンコントロールユニット21ではメイン噴射直後の膨張行程あるいは排気行程でポスト噴射を行うことにより、フィルタ13の再生処理を行い、フィルタ13に堆積しているパティキュレートを燃焼除去し、フィルタ13を再生する。すなわち、目標となる再生温度が得られるようにエンジンの負荷と回転速度と(運転条件)に応じてポスト噴射量とポスト噴射時期とを予め定めており、そのときのエンジンの負荷と回転速度とに応じたポスト噴射量とポスト噴射時期とが得られるようにポスト噴射を行う。
フィルタ13に堆積しているパティキュレートの全てが燃焼除去される完全再生を行わせるには再生処理時にフィルタ13の許容温度を超えない範囲で少しでもパティキュレートの燃焼温度を高めてやることが必要となる。このため本実施形態ではフィルタ13の上流に酸化触媒(貴金属)14を配置してある。この酸化触媒14によりフィルタ13の再生処理のためのポスト噴射によって流入する排気成分(HC、CO)を燃焼させて排気の温度を高めフィルタ13内のパティキュレートの燃焼を促進させる。なお、フィルタ13を構成する担体に酸化触媒をコーティングしてもよい。このときには、パティキュレートが燃焼する際の酸化反応を促進してその分フィルタ41のベッド温度を実質的に上昇させ、フィルタ13内のパティキュレートの燃焼を促進させることとなる。
なお、触媒は酸化触媒に限られない。酸化機能を備える触媒(例えば三元触媒)であれば、酸化触媒に代えることができる。
さて、フィルタ13の再生処理のためポスト噴射を行っているが、燃料噴射弁9の経時劣化に伴う燃料噴射特性の変化やクランク角センサ23の経時劣化に伴うクランク角信号のずれ等により実際のポスト噴射時期(以下「実ポスト噴射時期」ともいう。)が基本ポスト噴射時期からずれ、あるいは実際のポスト噴射量(以下「実ポスト噴射量」ともいう。)が基本ポスト噴射量からずれると、実際の触媒14上流の排気温度(触媒14上流の排気温度を以下単に「排気温度」という。)が触媒14上流の目標排気温度(以下単に「目標排気温度」という。)から外れ、あるいは実際の触媒温度が目標触媒温度から外れてしまう。こうした燃料噴射弁9、クランク角センサ23の経時劣化によって目標触媒温度が得られないとフィルタ13の再生温度を確保できないことが起こり得る。また、燃料噴射弁9、クランク角センサ23の経時劣化によって実ポスト噴射量が基本ポスト噴射量を超えたのでは燃料過多となって燃費が悪化するし、実ポスト噴射時期が基本ポスト噴射時期より遅角したのではオイル希釈割合が悪化する。
このため、エンジンの負荷と回転速度とが一定の条件において実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより外れ、あるいは実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseより外れた場合に排気温度、触媒温度、オイル希釈割合がどうなるかを実験し、その結果をまとめたのが図2である。すなわち、図2の上段、中段は、
〈1〉実ポスト噴射量が基本ポスト噴射量と一致する場合(実線参照)、
〈2〉実ポスト噴射量が基本ポスト噴射量より多い場合(破線参照)、
〈3〉実ポスト噴射量が基本ポスト噴射量より少ない場合(一点鎖線参照)
に、実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより外れたとき、排気温度、触媒温度がどのように変化するかの特性を重ねて示している。また、図2の下段にポスト噴射時期に対するオイル希釈割合の特性を示している。
ここで、本実施形態では排気温度及び触媒温度に各目標値を設定しており、これら排気温度の目標値(目標排気温度)と触媒温度の目標値(目標触媒温度)とが得られるように基本ポスト噴射量QPbaseと基本ポスト噴射時期ITPbaseとをエンジンの負荷と回転速度に応じて設定している。
以下では、目標排気温度が650℃、目標触媒温度が680℃である場合で説明する。なお、目標排気温度と目標触媒温度との関係はこれに限定されるものでなく、エンジン1やフィルタ13や酸化触媒14の仕様が異なれば、目標排気温度と目標触媒温度の組合せは変わり得る。目標排気温度より目標触媒温度のほうが高くなることは変わらないが、例えば、目標排気温度を550℃、目標触媒温度を600℃とする場合、目標排気温度を600℃、目標触媒温度を650℃とする場合等が考えられる。
図2においてまず、実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致する場合(実線参照)に、実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseと一致するとき、実際の排気温度(以下「実排気温度」ともいう。)Texhが目標排気温度(650℃)と一致し、かつ実際の触媒温度(以下「実触媒温度」ともいう。)Tcatが目標触媒温度(680℃)と一致している。
一方、実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致する場合(実線参照)に、実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより早まる、例えばA1点になると、実排気温度Texhは目標排気温度(650℃)より高くかつ実触媒温度Tcatは目標触媒温度(680℃)より低くなる。これは、A1点では実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより進角することで、燃焼室内で燃焼してしまうポスト噴射量の割合が増して実排気温度Texhが目標排気温度(650℃)より上昇し、かつ実ポスト噴射時期ITPrの基本ポスト噴射時期ITPbaseからの進角により燃焼室内で燃焼しないまま排気通路10に出て排気通路10で後燃えするポスト噴射量の割合が減り、これによって実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)より低下するためである。
この逆に、実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致する場合(実線参照)に、実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより遅れる、例えばC1点になると、実排気温度Texhは目標排気温度(650℃)より低くかつ実触媒温度Tcatは目標触媒温度(680℃)より高くなる。これは、C1点では実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより遅角することで、燃焼室内で燃焼してしまうポスト噴射量の割合が減って実排気温度Texhが目標排気温度(650℃)より低下し、かつ実ポスト噴射時期ITPrの基本ポスト噴射時期ITPbaseからの遅角により燃焼室内で燃焼しないまま排気通路10に出て排気通路10で後燃えするポスト噴射量の割合が増え、これによって実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)より上昇するためである。
次に、実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseより多くなると、特性は実線より破線へと変化する。この場合、変化は基本ポスト噴射時期ITPbaseより進角側で排気温度に大きく現れ、基本ポスト噴射時期ITPbaseより遅角側で触媒温度に大きく現れている。すなわち、排気温度については、基本ポスト噴射時期ITPbaseより遅角側では実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致している場合の特性(実線)と変わらないが、基本ポスト噴射時期ITPbaseより進角側において実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致している場合の特性(実線)よりも高くなっている。また、触媒温度については基本ポスト噴射時期ITPbaseより進角側では実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致している場合の特性(実線)と変わらないが、基本ポスト噴射時期ITPbaseより遅角側において実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致している場合の特性(実線)よりも高くなっている。このため例えば基本ポスト噴射時期ITPbaseより実ポスト噴射時期ITPrが少しだけ進角側にあるD1点では実触媒温度は目標触媒温度(680℃)に一致しているものの、実排気温度が目標排気温度(650℃)より高くなっている。
次に、実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseより少なくなると、特性は実線より一点鎖線へと変化する。この場合も、変化は基本ポスト噴射時期ITPbaseより進角側で排気温度に大きく現れ、基本ポスト噴射時期ITPbaseより遅角側で触媒温度に大きく現れている。すなわち、排気温度については、基本ポスト噴射時期ITPbaseより遅角側では実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致している場合の特性(実線)と変わらないが、基本ポスト噴射時期ITPbaseより進角側において実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致している場合の特性(実線)よりも低くなっている。また、触媒温度については基本ポスト噴射時期ITPbaseより進角側で実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致している場合の特性(実線)と変わらないが、基本ポスト噴射時期ITPbaseより遅角側で実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致している場合の特性(実線)よりも低くなっている。このため例えば基本ポスト噴射時期ITPbaseより実ポスト噴射時期ITPrが進角側にあるB1点では実排気温度Texhが目標排気温度(650℃)より低くなっている。また、基本ポスト噴射時期ITPbaseより実ポスト噴射時期ITPrが遅角側にあるB1’点では実触媒温度Tcatが目標排気温度(680℃)より低くなっている。
オイル希釈割合については、上記〈1〉〜〈3〉のいずれの場合も同じ傾向を示すため、図2の下段に1つの特性で示している。すなわち、実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseと一致する場合に実際のオイル希釈割合が所定値にあるとすると、実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより進角側にある場合に実際のオイル希釈割合が所定値よりも小さくなり、この逆に実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより遅角側にある場合に実際のオイル希釈割合が所定値よりも大きくなっている。
ここで、「オイル希釈」とは、ポスト噴射により燃料噴射弁9から噴かれた燃料がシリンダ壁に衝突して壁流となり、シリンダ壁に形成された壁流燃料がピストンリングとシリンダ壁の間をすり抜けてクランク室内に入り、クランク室内のオイルに混入していく現象のことである。図2の下段に示したようにポスト噴射時期が進角側にあるほどオイル希釈割合が小さくなるのは、ポスト噴射時期が進角側にあるほどピストン位置が上死点位置に近づいて燃料噴射弁9から噴かれた燃料が衝突するシリンダ壁面積が小さくなるためである。この逆に、ポスト噴射時期が遅角側にあるほどピストン位置が上死点位置より遠ざかり、燃料噴射弁9から噴かれた燃料が衝突するシリンダ壁面積が大きくなるため、オイル希釈割合が大きくなる。オイル希釈割合が大きくなるほど燃費が悪くなる。
本発明は、実ポスト噴射時期ITPrの基本ポスト噴射時期ITPbaseからのずれによって、あるいは実ポスト噴射量QPrの基本ポスト噴射量QPbaseからのずれによって、図2に示したように特に実触媒温度Tcatが変化する特性を利用し、基本ポスト噴射時期ITPbaseや基本ポスト噴射量QPbaseを補正することにより、実排気温度Texhと実触媒温度Tcatとを各目標値へと戻すものである。すなわち、燃料噴射弁9、クランク角センサ23等の経時劣化に起因して、実際のポスト噴射量QPrや実際のポスト噴射時期ITPrが各基本値QPbase、ITPbaseから外れることがあっても、ポスト噴射を最適条件で実行し、フィルタ13の再生温度を確保して、燃費悪化、オイル希釈を防止するようにしている。
次に、本発明におけるフィルタ13の再生処理方法を説明する。
ここでは、実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致していることを前提として、実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseよりずれている場合をまず扱い、その後に実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseよりずれている場合に言及するものとする。
図3は実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致していることを前提として、
〔1〕実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseと一致している 場合(一点鎖線参照)、
〔2〕実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより進角側にあ る場合(破線参照)、
〔3〕実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより遅角側にあ る場合(実線参照)
のフィルタ13の再生処理開始後の実触媒温度の変化を重ねて示している。図3より実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより進角側にある場合(例えば図2に示した上記A1点にある場合)には、触媒温度の上昇の程度(この触媒温度の上昇の程度を、以下「触媒昇温速度」という。)が、実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseと一致しているときの触媒昇温速度(この触媒昇温速度を、以下「基本触媒昇温速度」という。)より小さくなり、この反対に実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより遅角側にある場合(例えば図2に示した上記C1点の場合)に、触媒昇温速度が基本触媒昇温速度より大きくなっている。このことは、実ポスト噴射時期ITPrの基本ポスト噴射時ITPbaseからのずれが触媒昇温速度VTupの変化に現れることを意味している。
そこで、実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致していることを前提として、実ポスト噴射時期ITPrを基本ポスト噴射時期ITPbaseより進角側や遅角側にずらせた場合に、実際の触媒昇温速度(以下「実触媒昇温速度」ともいう。)VTupがどのように変化するのかを実験し、その実験データをまとめたところ、図4の下段に示したように、ポスト噴射時期と触媒昇温速度の関係を示す特性が得られた。なお、図4の上段には実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致している場合におけるポスト噴射時期に対する触媒温度の特性(図3中段の実線の特性と同じ)を合わせて示している。
この図4の下段に示す特性によれば、実際の触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0より小さい場合に実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseよりも進角側にあると、この逆に実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0より大きい場合に実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseよりも進角側にあると判定することができる。この判定結果より、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0より小さい場合には、実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseよりも進角側にあるのであるから、基本ポスト噴射時期ITPbaseを遅角側に補正することによって実ポスト噴射時期ITPrを目標ポスト噴射時期へと戻す必要がある。また、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0より大きい場合には、実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseよりも遅角側にあるのであるから、基本ポスト噴射時期ITPbaseを進角側に補正することによって実ポスト噴射時期ITPrを目標ポスト噴射時期へと戻す必要がある。
この場合、
ITPm=ITPbase+ITPh …(1)
ただし、ITPm :目標ポスト噴射時期[degATDC]
ITPbase:基本ポスト噴射時期[degATDC]
ITPh :ポスト噴射時期補正量[deg]
の式により、つまり基本ポスト噴射時期ITPbaseにポスト噴射時期補正量ITPhを加算することによって目標ポスト噴射時期ITPmを算出するものとする。ここで、ITPbase、ITPmの単位は圧縮上死点を基点として遅角側に計測する値であるので、ポスト噴射時期補正量ITPhが正の値であるとき遅角補正量となり、この反対にポスト噴射時期補正量ITPhが負の値のとき進角補正量となる。
さて、上記(1)式のポスト噴射時期補正量ITPhは、次のように与えるものとする。すなわち、図4の下段に示す特性は漸増する特性であるので直線で近似すれば、このときのポスト噴射時期補正量ITPhを図5に示す特性で与えることができる。図5を具体的に説明すると、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0と一致する場合には基本ポスト噴射時期ITPbaseを補正する必要がないので、ポスト噴射時期補正量ITPhはゼロである。次に、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0より小さい場合には基本ポスト噴射時期ITPbaseを遅角補正する必要があるために、ポスト噴射時期補正量ITPhとして正の値を与える。この反対に、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0より大きい場合には基本ポスト噴射時期ITPbaseを進角補正する必要があるために、ポスト噴射時期補正量ITPhとして負の値を与える。実際のポスト噴射時期補正量ITPhの値は、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0と一致していないと判定したタイミングにおけるポスト噴射で実際の触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0と一致するように適合により設定する。
このようにして設定したポスト噴射時期補正量ITPhで基本ポスト噴射時期ITPbaseを補正した値を上記(1)式のように目標ポスト噴射時期ITPmとして算出し、その目標ポスト噴射時期ITPmを用い、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0と一致していないと判定したタイミングにおいてポスト噴射を行えば、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0と一致し、従って目標排気温度(650℃)と目標触媒温度(680℃)とが得られるはずである。
ただし、これは実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseと一致していることを前提としている場合の話である。言い替えると、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0と一致していないと判定したタイミングにおいて、ポスト噴射時期補正量ITPhで基本ポスト噴射時期ITPbaseを補正した値を目標ポスト噴射時期ITPmとして算出し、その目標ポスト噴射時期ITPmを用いてポスト噴射を行った後に、実際の触媒温度を検出した場合にその検出した実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)と一致しないとすれば(あるいは実際の触媒温度を検出した場合にその検出した実触媒温度Tcatに基づいて算出される実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0と一致しないとすれば)、それは実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseから外れていることを意味している。
そこで、ポスト噴射時期補正を行ってのポスト噴射の後に、再び温度センサ25により実触媒温度Tcatを検出し、その検出した実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)と一致しているか否かを判定し、実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)と一致していない場合には、基本ポスト噴射量QPbaseの補正を行う。すなわち、実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)より高い場合には、実ポスト噴射時期ITPrは目標ポスト噴射時期ITPmに一致しているけれども実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseより増大側にずれていると判断し、基本ポスト噴射量QPbaseを減量補正した値を目標ポスト噴射量QPmとする。一方、実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)より低い場合には、実ポスト噴射時期ITPrは目標ポスト噴射時期ITPmに一致しているけれども実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseより減少側にずれていると判断し、基本ポスト噴射量QPbaseを増量補正した値を目標ポスト噴射量QPmとする。
あるいはポスト噴射時期補正を行ってのポスト噴射の後に、再び温度センサ25により実際の触媒温度Tcatを検出し、その検出した実触媒温度Tcatに基づいて算出される実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0と一致しているか否かを判定し、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0と一致していない場合には、基本ポスト噴射量QPbaseの補正を行う。すなわち、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0より大きい場合には、実ポスト噴射時期ITPrは目標ポスト噴射時期ITPmに一致しているけれども実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseより増大側にずれていると判断し、基本ポスト噴射量QPbaseを減量補正した値を目標ポスト噴射量QPmとする。一方、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0より小さい場合には、実ポスト噴射時期は目標ポスト噴射時期に一致しているけれども実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseより減少側にずれていると判断し、基本ポスト噴射量QPbaseを増量補正した値を目標ポスト噴射量QPmとする。
以上をまとめると、本発明では、フィルタ13の再生処理開始時にまず実触媒昇温速度VTupを求めて基本触媒昇温温度VTup0と比較し、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温温度VTup0よりずれているときには基本ポスト噴射時期ITPbaseの補正を行い、その補正後のポスト噴射時期(=目標ポスト噴射時期)を用いてポスト噴射を行うことで、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温温度VTup0と一致するようにする。このポスト噴射の後に再び実触媒温度Tcatを検出し、その検出した実触媒温度Tcatと目標触媒温度(680℃)を比較し実触媒温度がTcatが目標触媒温度(680℃)よりずれている場合には今度は基本ポスト噴射量QPbaseの補正を行うことで、実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)と一致するようにする。このようにして実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)と一致するようにしたとき、実排気温度Texhと実触媒温度Tcatとが共に目標値に到達していることになる。このように、本発明は基本ポスト噴射時期の補正と基本ポスト噴射量の補正とをこの順に2段階で行うことで、実排気温度Texhと実触媒温度Tcatとを共に目標値に到達させることができる。このとき、温度上昇特性に優れかつオイル希釈の少ないポイント(図2のハッチング部)に収束させ易い、基本ポスト噴射時期の変更による修正を先に行い、基本ポスト噴射時期の修正だけでは修正が不十分な場合に基本ポスト噴射量の変更をも行うようにしたので、速やかに当該ポイントへ収束させることができ、また確実に当該ポイントに収束させることができる。
上記の触媒温度Tcatとしては、本実施形態では酸化触媒14の出口温度を採用するものとし、酸化触媒14の出口温度を温度センサ25により検出している。ただし、これに限られるものでなく、酸化触媒14出口より下流側であればいずれの位置(例えばフィルタ13位置)の温度を触媒温度Tcatとして採用してもかまわない。さらに述べると、本実施形態ではフィルタ13の再生処理のためのポスト噴射によって酸化触媒14がHC、COの供給を受け、これらHC(未燃成分)とCO(不完全燃焼ガス)を酸化触媒14により燃焼(酸化)させることで上昇した高温のガスを下流のフィルタ13に流し、この高温のガスでフィルタ13内のパティキュレートを燃焼させるのであるが、パティキュレートが燃焼してもフィルタ13の温度は触媒温度Tcatから離れて急上昇するものでなく、フィルタ温度は触媒温度Tcatとほぼ変わらないものとする。
エンジンコントロールユニット21で行われるこのフィルタ13の再生処理をフローチャートに基づいて説明する。
図6、図7、図8のフローチャートはフィルタ13の再生処理を行うためのもので、一定周期で繰り返し実行する。具体的には、実行するタイミングは各気筒毎に圧縮上死点位置になったタイミングである。ただし、ポスト噴射を実行するタイミングはこのタイミングではなく、算出した目標ポスト噴射時期となったときである。フローを正確に書こうとすると複雑になるのでそうすることはせず、タイミングの相違する操作が混在することになっている。
図6においてステップ1では、エンジンの負荷、回転速度、温度センサ25により検出される触媒温度(実触媒温度)Tcat、差圧センサ26により検出されるフィルタ13の圧力損失ΔPを読み込む。
ステップ2では、フィルタ13のパティキュレート堆積量(PM堆積量)を算出(予測)する。ここで、パティキュレート堆積量は、フィルタの圧力損失ΔPと排気流量とから予測するようにしても良いし、エンジンの運転状態に応じた単位時間当たりのパティキュレートの堆積量を算出すると共に、このパティキュレートの堆積量を積算することにより予測しても良い。ここに挙げたパティキュレート堆積量を予測する方法は特開2004−197722号公報に記載されているので、ここではその説明を省略する。
ステップ3、4、5は、ポスト噴射時期補正フラグ、ポスト噴射量補正フラグ、フィルタ再生フラグをみる。ここではポスト噴射時期補正フラグ=0、ポスト噴射量補正フラグ=0、フィルタ再生フラグ=0であったとすると、このときステップ6に進み、パティキュレート堆積量と所定値PM1を比較する。パティキュレート堆積量が所定値PM1以下であるときはフィルタ13の再生時期になっていないので、そのまま処理を終了する。
パティキュレート堆積量が所定値PM1を超えると、フィルタ13の再生時期になったと判断し、フィルタ13の再生処理を行わせるためステップ7に進んでフィルタ再生フラグ=1とする。
このフィルタ再生フラグ=1により、次回にはステップ5よりステップ8、9、10、11に進む。
ステップ8ではエンジンの負荷と回転速度から図9を内容とするマップを検索することにより基本ポスト噴射量QPbaseを、図10を内容とするマップを検索することにより基本ポスト噴射時期ITPbase[degATDC]をそれぞれ求め、これら求めた基本ポスト噴射量QPbase、基本ポスト噴射時期ITPbaseを目標ポスト噴射量QPm、目標ポスト噴射時期ITPm[degATDC]に移し、これら目標ポスト噴射量QPmと目標ポスト噴射時期ITPmとを用いステップ9でポスト噴射を行う。図9に示したように基本ポスト噴射量QPbaseをエンジンの負荷と回転速度に応じた可変値としているのは、負荷と回転速度が相違しても排気温度を目標排気温度(650℃)にかつ触媒温度を目標触媒温度(680℃)に保つためである。すなわち、エンジン回転速度一定の条件で低負荷ほど基本ポスト噴射量QPbaseを多くしているのは、低負荷で排気温度や触媒温度を上げるにはポスト噴射量を多く必要とするためである。また、図10に示したようにエンジン回転速度一定の条件で基本ポスト噴射時期ITPbaseを低負荷ほど進角している理由は、燃焼室内温度が低下する低負荷で進角させて燃焼室内での着火性を高めるためである。
ステップ10では、堆積したパティキュレートが一気に燃えて触媒温度が急上昇しフィルタ13が溶損しないように排気中の酸素濃度を所定濃度以下に抑制すべく、排気の空気過剰率λが1.3程度となるように制御する。基本的には、吸気絞り弁5の開度を小さくすることによって目標吸入空気量を減量する。ここで、目標吸入空気量は、図11に示したように、通常時(フィルタ13の再生処理を行わないとき)に所望のエンジントルクが得られるようにエンジンの負荷と回転速度に応じて予め定められている。図11において、2本の実線が目標吸入空気量一定の線で、2本ある実線のうち右側にあるほうが目標吸入空気量が大きくなっている。この場合において、フィルタの再生処理時に吸気絞り弁5の開度を小さくした後の吸入空気量は破線で示したように右上方にずれることになる。
ステップ11ではポスト噴射時期補正フラグ=1とする。このポスト噴射時期補正フラグ=1より次回にはステップ3より図8のステップ12〜32に進み、基本ポスト噴射時期を補正し、その補正後のポスト噴射時期を用いてポスト噴射を行う。すなわち、ステップ12ではまず、ステップ12に進んできたのが初めてか否かを判定する。ステップ12に進んできたのが初めてであるときにはステップ13に進みタイマを起動する。このタイマはポスト噴射を開始したタイミング(つまりフィルタ13の再生処理開始タイミング)からの経過時間を計測するためのものである。
ステップ14ではT1取得済みフラグ(エンジン始動時にゼロに初期設定)をみる。ここではT1取得済みフラグ=0であるとして説明すると、ステップ14よりステップ15に進み、タイマ値と所定値tm1を比較する。所定値tm1は例えば図3に示したように、再生処理の開始タイミングより所定時間が経過して実触媒温度Tcatが立ち上がり始める当たりの値に定めている。タイマを起動した当初はタイマ値は所定値tm1未満であるので、ステップ17に進み図6ステップ8で算出済みの目標ポスト噴射量QPmと目標ポスト噴射時期ITPmとを維持し、ステップ18においてこの維持される目標ポスト噴射量QPmと目標ポスト噴射時期ITPmとを用いてポスト噴射を実行する。
次回にはステップ12、14、15よりステップ17、18と進み、ステップ17、18の操作を繰り返すと、やがてステップ15でタイマ値が所定値tm1以上となる。このときには、ステップ16に進んで温度センサ25により検出される実触媒温度Tcatを温度T1に移す。タイマ値が所定値tm1に到達するまでステップ17、18でのポスト噴射の実行を繰り返すと実触媒温度Tcatが立ち上がってくるが、温度T1は図3に示したように実触媒温度Tcatが立ち上がってくる当たりの触媒温度のサンプリング値である。これで温度T1を得たので、T1取得済みフラグ=1とした後、ステップ17、18の操作を行う。
T1取得済みフラグ=1より次回にはステップ14よりステップ19に進み、タイマ値と所定値tm2を比較する。所定値tm2は所定値tm1より例えば10秒から30秒程度が経過した時間である。タイマ値が所定値tm2に到達するまではステップ17、18の操作を繰り返す。この操作でさらに実触媒温度Tcatが上昇して行く。
やがて、タイマ値が所定値tm2以上になるとステップ19よりステップ20に進み、温度センサ25により検出される実触媒温度Tcatを温度T2に移し、ステップ21で実触媒昇温速度VTupを次の式により算出する。
VTup=T2−T1 …(2)
ここで、温度T2は図3に示したように、上昇している途中の実触媒温度Tcatのサンプリング値であり、(2)式右辺は所定時間(tm2−tm1)当たりの触媒温度Tcatの変化量(T2−T1)を表している。すなわち、(2)式は所定時間(tm2−tm1)当たりの実触媒温度Tcatの変化量を実触媒昇温速度VTupとするものである。
ステップ22ではこの実触媒昇温速度VTupと基本触媒昇温速度VTup0とを比較する。ここで、基本触媒昇温速度VTup0は図3に示したように、実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseと一致している場合における、所定時間(tm2−tm1)当たりの実触媒温度Tcatの変化量である。図3のように、実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより遅角側にある場合における実触媒昇温速度VTupは基本触媒昇温速度VTup0より大きくなり、この反対に実ポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseより進角側にある場合における実触媒昇温速度VTupは基本触媒昇温速度VTup0より小さくなる。
実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0と一致する場合には、燃料噴射弁9の経時劣化に伴う燃料噴射特性の変化やクランク角センサ23の経時劣化に伴うクランク角信号のずれ等が生じていない、つまり基本ポスト噴射時期、基本ポスト噴射量とも補正する必要がないと判断し、ステップ23に進んでフィルタ13の圧力損失ΔPと再生終了判定値Pre−DPFを比較する。フィルタ13の圧力損失ΔPが再生終了判定値Pre−DPFを超えている間はステップ24、25の操作を繰り返す。基本ポスト噴射時期、基本ポスト噴射量とも補正する必要がない状態ではフィルタ13の再生が最適に行われることから、フィルタ13に堆積しているパティキュレートの燃焼により、フィルタ13の圧力損失ΔPが小さくなってゆく。やがて、再生終了判定値Pre−DPF以下になったら、フィルタ13の再生終了時期になったと判定し、フィルタ13の再生処理を終了するためステップ23からステップ26、27に進む。次回のフィルタの再生処理に備えるためステップ26ではポスト噴射を中止し、ステップ27ではポスト噴射時期補正フラグ=0、フィルタ再生フラグ=0、T1取得済みフラグ=0とする。
フィルタ13の再生終了時期の判定はこれに限らず、後述するようにフィルタ13の再生を開始したタイミングからの時間を計測し、この計測時間が所定の時間に到達したときフィルタ13の再生終了時期となったと判定させてもかまわない。
上記のポスト噴射時期補正フラグ=0、フィルタ再生フラグ=0により次回には図6においてステップ1、2、3、4、5、6と流れ、ステップ6で再びパティキュレート堆積量と所定値PM1とを比較することになる。
一方、ステップ22で実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0と一致しない場合にはステップ28に進み、実触媒昇温速度VTupから上記の図5を内容とするテーブルを検索することによりポスト噴射時期補正量ITPh[deg]を算出し、ステップ29において、図6ステップ8で算出済みの目標ポスト噴射時期にこのポスト噴射時期補正量ITPhを加算した値を改めて目標ポスト噴射時期ITPmとすることにより、目標ポスト噴射時期ITPmの補正を行う。
ステップ30では図6ステップ8で算出済みの目標ポスト噴射量QPmをそのまま維持し、ステップ31において、ポスト噴射時期補正量ITPhの分だけ補正された目標ポスト噴射時期ITPmとこの維持される目標ポスト噴射量QPmとを用いてポスト噴射を行う。
図5に示したように、ポスト噴射時期補正量ITPh[deg]は、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0より小さい場合に正の値、この反対に実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0より大きい場合に負の値である。目標ポスト噴射時期ITPmの単位は圧縮上死点を基点として遅角側に計測する値であるから、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0より小さい場合に基本ポスト噴射時期ITPbaseが遅角側に補正され、この遅角補正によって実触媒昇温速度VTupが大きくなって基本触媒昇温速度VTup0へと近づいてゆく。この逆に、実触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0より大きい場合に基本ポスト噴射時期ITPbaseが進角側に補正され、この進角補正によって実触媒昇温速度VTupが大きくなって基本触媒昇温速度VTup0へと近づいてゆく。
これで基本ポスト噴射時期ITPbaseの補正を終了するので、次には目標ポスト噴射量の補正を行わせるため、ステップ32でポスト噴射時期補正フラグ=0かつポスト噴射量補正フラグ=1とする。
このポスト噴射量補正フラグ=1により、次回には図6のステップ3より図7に進む。
図7においてステップ33では、フィルタ13の圧力損失ΔPを再生終了判定値Pre−DPFと比較する。再生終了判定値Pre−DPFは排気流量が大きくなるほど大きくなる値で定めている。排気流量は、エンジンの負荷と回転速度をパラメータとするマップにして定めておき、このマップを検索することにより排気流量を求めればよい。
フィルタ13の再生処理に入った当初はフィルタ13の圧力損失ΔPが再生終了判定値Pre−DPFより大きいので、ステップ34以降に進む。
ステップ34〜39は基本ポスト噴射時期ITPbaseを補正した後に、温度センサ25により検出される実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)と一致しない場合に、温度センサ25により検出される実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)に到達するように前記補正した後の基本ポスト噴射時期(=目標ポスト噴射時期ITPm)を維持しつつ基本ポスト噴射量QPbaseを補正する部分である。ただし、ここでは目標触媒温度(680℃)を中心にして許容幅をもたせた目標触媒温度上限値Tcat1と目標触媒温度下限値Tcat2とを設けており、実触媒温度Tcatがこれら目標触媒温度上限値Tcat1と目標触媒温度下限値Tcat2との間に収まるように基本ポスト噴射量QPbaseを補正するようにしている。もちろん、許容幅を設けず、実実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)付近で振れるように基本ポスト噴射量QPbaseを補正することとしてもかまわない。
具体的にはステップ34、35で実触媒温度Tcatと目標触媒温度(680℃)の上限値Tcat1、下限値Tcat2とを比較する。ここで、目標触媒温度上限値Tcat1としては目標触媒温度(680℃)に許容値(例えば20℃)を加算した値を、また目標触媒温度下限値Tcat2としては目標触媒温度(680℃)から許容値(例えば20℃)を減算した値を用いる。実触媒温度Tcatが目標触媒温度上限値Tcat1(=700℃)を超えている場合には、燃料噴射弁9の経時劣化に伴う燃料噴射特性の変化やクランク角センサ23の経時劣化に伴うクランク角信号のずれ等に起因して実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseより大きくなっていると判断し、ステップ34よりステップ36に進み、図6ステップ8で算出済みの目標ポスト噴射量QPmを減量補正する。例えば、図6ステップ8で算出済みの目標ポスト噴射量QPmから所定値ΔQP1を差し引いた値を改めて目標ポスト噴射量QPmとする、つまり次式により目標ポスト噴射量QPmを算出する。
QPm←QPm−ΔQP1 …(3)
ステップ39では図8ステップ29で補正済みの目標ポスト噴射時期ITPmを維持し、ステップ40において、この維持される目標ポスト噴射時期ITPmと、ステップ36で減量補正された後の目標ポスト噴射量QPmとを用いてポスト噴射を行う。このポスト噴射で実触媒温度Tcatが目標触媒温度上限値Tcat1以下に収まらなければステップ36、39、40の操作を繰り返すことでやがて実触媒温度Tcatが目標触媒温度上限値Tcat1以下となる。
一方、実触媒温度が目標触媒温度下限値Tcat2(=660℃)を下回っている場合には、燃料噴射弁9の経時劣化に伴う燃料噴射特性の変化やクランク角センサ23の経時劣化に伴うクランク角信号のずれ等に起因して実ポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseより小さくなっていると判断し、ステップ34、35よりステップ37に進み、図6ステップ8で算出済みの目標ポスト噴射量QPmを増量補正する。例えば、図6ステップ8で算出済みの目標ポスト噴射量QPmに所定値ΔQP2を加算した値を改めて目標ポスト噴射量QPmとする、つまり次式により目標ポスト噴射量QPmを算出する。
QPm←QPm+ΔQP2 …(4)
ステップ39では図8ステップ29で補正済みの目標ポスト噴射時期ITPmを維持し、ステップ40において、この維持される目標ポスト噴射時期ITPmと、ステップ37で増量補正された後の目標ポスト噴射量QPmとを用いてポスト噴射を行う。このポスト噴射で実触媒温度Tcatが目標触媒温度下限値Tcat2以上とならなければステップ37、39、40の操作を繰り返すことでやがて実触媒温度Tcatが目標触媒温度下限値Tcat2以上となる。
上記ステップ36、39、40の操作の繰り返しあるいはこれらステップ37、39、40の操作の繰り返しで、実触媒温度Tcatは目標触媒温度上限値Tcat1以下かつ目標触媒温度下限値Tcat2以上の範囲に収まることとなる。実触媒温度Tcatが目標触媒温度上限値Tcat1以下かつ目標触媒温度下限値Tcat2以上の範囲に収まった後には目標ポスト噴射量のこれ以上の補正は必要ないので、ステップ34、35よりステップ38、39に進み、前回の目標ポスト噴射量QPmと前回の目標ポスト噴射時期ITPmとを維持し、ステップ40において、これら維持される目標ポスト噴射量QPmと目標ポスト噴射時期ITPmとを用いてポスト噴射を行う。ここでのポスト噴射の実行によって実排気温度Texhが目標排気温度(650℃)と一致しかつ実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)と一致している状態が保たれることから、フィルタ13の再生が最適に行われる。フィルタ13に堆積しているパティキュレートの燃焼により、フィルタ13の圧力損失ΔPが小さくなってゆき再生終了判定値Pre−DPF以下になったら、フィルタ13の再生終了時期になったと判定し、フィルタ13の再生処理を終了するためステップ33からステップ41、42に進む。次回のフィルタの再生処理に備えるためステップ41ではポスト噴射とポスト噴射補正(目標ポスト噴射時期の補正及び目標ポスト噴射量の補正)とを中止し、ステップ42ではポスト噴射量補正フラグ=0、フィルタ再生フラグ=0、T1取得済みフラグ=0とする。
フィルタ13の再生終了時期の判定はこれに限らず、フィルタ13の再生を開始したタイミングからの時間を計測し、この計測時間が所定の時間に到達したときフィルタ13の再生終了時期となったと判定させてもかまわない。
上記のポスト噴射量補正フラグ=0、フィルタ再生フラグ=0により次回には図6においてステップ1、2、3、4、5、6と流れ、ステップ6で再びパティキュレート堆積量と所定値PM1とを比較することになる。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態(請求項1、6に記載の発明)によれば、燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁9と、排気中のパティキュレートを捕集するフィルタ13と、このフィルタ13の上流にフィルタ13と別体で設けられ排気中の未燃成分または一酸化炭素を燃焼させる触媒14とを備え、フィルタ13の再生時期になった場合に燃料噴射弁9を用いたメイン噴射直後の膨張行程または排気行程で燃料噴射弁9を用いたポスト噴射を行ってフィルタ13の再生処理を行わせるようにした排気浄化装置において、温度センサ25(触媒温度検出手段)を備え、エンジンの負荷と回転速度(運転条件)に応じてポスト噴射の基本ポスト噴射量QPbaseと基本ポスト噴射時期ITPbaseとを算出し(図6のステップ8参照)、ポスト噴射を行ってのフィルタ13の再生処理開始後に温度センサ25により検出される触媒温度Tcatに基づいて触媒昇温速度VTupを算出し(図8のステップ16、20、21参照)、この算出された触媒昇温速度VTupが基本触媒昇温速度VTup0と一致するようにポスト噴射の基本ポスト噴射時期ITPbaseを補正する(図6のステップ8、図8のステップ28、29参照)ので、燃料噴射弁9、クランク角センサ23の経時劣化により、実際のポスト噴射量QPrは基本ポスト噴射量QPbaseと一致しているものの、実際のポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseからずれていることがあっても、フィルタ13の再生処理時に触媒14上流の目標排気温度(650℃)と目標触媒温度(280℃)の両方が得られることから、フィルタ13の再生処理時に燃費やオイル希釈割合を悪化させることがなく、かつ触媒14の酸化能力を活かして再生処理時のフィルタ14の良好な再生温度を確保することができる。
また、燃料噴射弁9、クランク角センサ23の経時劣化が生じても、触媒14上流の目標排気温度(650℃)と目標触媒温度(280℃)の2つが得られるようにするには通常、排気温度を検出する温度センサと触媒温度を検出する温度センサの2つが必要であるが、本実施形態(請求項1、6に記載の発明)によれば、触媒温度Tcatを検出する温度センサ25を備えるのみでよく触媒14上流の排気温度Texhを検出する温度センサは不要となっていることから、触媒14上流の排気温度Texhを検出する温度センサと触媒温度Tcatを検出する温度センサの2つを必要とする場合に比べてコストダウンを達成できる。
本実施形態(請求項1、6に記載の発明)によれば、基本ポスト噴射時期ITPbaseを補正した後に、温度センサ25により検出される実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)と一致しない場合に、温度センサ25により検出される実触媒温度Tcatが目標触媒温度(680℃)に到達するように前記補正した後の基本ポスト噴射時期(=目標ポスト噴射時期ITPm)を維持しつつ基本ポスト噴射量QPbaseを補正するので(図6のステップ8、図7のステップ34〜39参照)、実際のポスト噴射時期ITPrが基本ポスト噴射時期ITPbaseからずれ、かつ実際のポスト噴射量QPrが基本ポスト噴射量QPbaseからずれていることがあっても、フィルタ13の再生処理時に触媒14上流の目標排気温度(650℃)と目標触媒温度(280℃)の両方が得られることから、フィルタ13の再生処理時に燃費やオイル希釈割合を悪化させることがなく、かつ触媒14の酸化能力を活かして再生処理時のフィルタの良好な再生温度を確保することができる。
請求項1の算出手段の機能は図6のステップ8により、触媒昇温速度算出手段の機能は図8のステップ16、20、21により、基本ポスト噴射時期補正手段の機能は図7のステップ34〜39によりそれぞれ果たされている。
請求項6の算出処理手順は図6のステップ8により、触媒昇温速度算出処理手順は図8のステップ16、20、21により、基本ポスト噴射時期補正処理手順は図7のステップ34〜39によりそれぞれ果たされている。