以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る排気浄化システムを説明する。
図1に示すように、ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)10の各気筒には、図示しないコモンレールに畜圧された高圧燃料を各気筒内に直接噴射する筒内インジェクタ11がそれぞれ設けられている。各筒内インジェクタ11の燃料噴射量や燃料噴射タイミングは、制御部としての電子制御ユニット(以下、ECUという)50から入力される指示信号に応じてコントロールされる。例えば、ECU50は、各筒内インジェクタ11に、パイロット噴射、プレ噴射、メイン噴射、アフタ噴射、ポスト噴射を実施させることができる。そして、ポスト噴射と他の噴射を組み合わせた燃料の多段噴射、すなわちポスト噴射を含むマルチ噴射を行うことにより、排気中の未燃燃料濃度を上昇させることができる。後述するように、排気中の未燃燃料は、還元触媒の一例で或るNOx吸蔵還元型触媒32の昇温に用いることができるため、筒内インジェクタ11とECU50の組は、昇温制御手段の一例である。
エンジン10の吸気マニホールド10Aには新気を導入する吸気通路12が接続され、排気マニホールド10Bには排気を外部に導出する排気通路13が接続されている。吸気通路12には、吸気上流側から順にエアクリーナ14、吸入空気量センサ(以下、MAFセンサという)40、可変容量型過給機20のコンプレッサ20A、インタークーラ15、吸気スロットルバルブ16等が設けられている。排気通路13には、排気上流側から順に可変容量型過給機20のタービン20B、排気後処理装置30等が設けられている。なお、図1中において、符号41はエンジン回転数センサ、符号42はアクセル開度センサ、符号46はブースト圧センサ、符号47は冷却水温度センサ、符号48Aは外気温度センサ、符号48Bは吸気温度センサ、符号49は燃料温度センサをそれぞれ示している。
EGR装置21は、排気マニホールド10Bと吸気マニホールド10Aとを接続するEGR通路22と、EGRガスを冷却するEGRクーラ23と、EGR量を調整するEGRバルブ24とを備えている。
排気後処理装置30は、ケース30A内に排気上流側から順に酸化触媒31、NOx吸蔵還元型触媒32、パティキュレートフィルタ(以下、単にフィルタという)33を配置して構成されている。また、酸化触媒31よりも上流側の排気通路13には、ECU50から入力される指示信号に応じて、排気通路13内に未燃燃料(主にHC)を噴射する排気管噴射装置34が設けられている。この排気管噴射装置34の燃料噴射量や燃料噴射タイミングもまたECU50から入力される指示信号に応じてコントロールされる。排気管噴射装置34による燃料噴射により、排気中の未燃燃料濃度が上昇する。この未燃燃料もまた、NOx吸蔵還元型触媒32の昇温に用いることができるため、排気管噴射装置34とECU50の組も昇温制御手段の一例である。
酸化触媒31は、例えば、ハニカム構造体等のセラミック製担体表面に酸化触媒成分を担持して形成されている。酸化触媒31は、排気管噴射装置34又は筒内インジェクタ11のポスト噴射によって未燃燃料が供給されると、これを酸化して排気温度を上昇させる。
NOx吸蔵還元型触媒32は、例えば、ハニカム構造体等のセラミック製担体表面にアルカリ金属等を担持して形成されている。このNOx吸蔵還元型触媒32は、排気空燃比がリーン状態のときに排気中のNOxを吸蔵すると共に、排気空燃比がリッチ状態のときに排気中に含まれる還元剤(HC等)で吸蔵したNOxを還元浄化する。
フィルタ33は、例えば、多孔質性の隔壁で区画された多数のセルを排気の流れ方向に沿って配置し、これらセルの上流側と下流側とを交互に目封止して形成されている。フィルタ33は、排気中のPM(粒子状物質)を隔壁の細孔や表面に捕集すると共に、PM堆積推定量が所定量に達すると、これを燃焼除去するいわゆるフィルタ再生が実行される。フィルタ再生は、排気管噴射又はポスト噴射によって上流側の酸化触媒31に未燃燃料を供給し、フィルタ33に流入する排気温度をPM燃焼温度まで昇温することで行われる。
第1排気温度センサ43は、酸化触媒31よりも上流側に設けられており、酸化触媒31に流入する排気温度を検出する。第1排気温度センサ43は、排気通路13を流れる排気の温度を検出する排気温度検出部の一例である。第2排気温度センサ44は、NOx吸蔵還元型触媒32とフィルタ33との間に設けられており、フィルタ33に流入する排気温度を検出する。
NOx/ラムダセンサ45は、フィルタ33よりも下流側に設けられており、NOx吸蔵還元型触媒32を通過した排気のNOx値及びラムダ値(以下、空気過剰率ともいう)を検出する。このNOx/ラムダセンサ45には、加熱部の一例であるヒータ45aが設けられており、検出動作に適する動作温度範囲まで加熱される。すなわち、NOx/ラムダセンサ45は、ヒータ45aによって加熱された状態でNOx値や空気過剰率を検出する。このNOx/ラムダセンサ45は、加熱部付の検出素子の一例である。
また、NOx/ラムダセンサ45は、センサの温度が検出動作に適する動作温度範囲の下限閾値未満の場合やセンサ自体に何らかの異常がある場合には、NOxセンサ異常フラグ(図3(B),(C)参照)をオン(=1)にする。このNOxセンサ異常フラグは、ECU50(触媒昇温制御部51)に出力される。
ECU50は、エンジン10等の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備えて構成されている。これら各種制御を行うため、ECU50にはセンサ類40〜49のセンサ値が入力される。また、ECU50は、触媒昇温制御部51と、フィルタ再生制御部55と、SOxパージ制御部60と、NOxパージ制御部70と、MAF追従制御部80と、噴射量学習補正部90と、触媒温度推定部100と、MAF補正係数演算部95を一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、一体のハードウェアであるECU50に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
[触媒昇温制御]
触媒昇温制御部51は、NOx吸蔵還元型触媒32の温度(以下、触媒温度ともいう)が低く、NOxパージ等を実施できない場合に、触媒の昇温制御を行う。図2に示すように、触媒昇温制御部51は、冷間始動判定部52と、噴射制御部53と、タイマ54とを備える。
冷間始動判定部52は、エンジン10の始動後に、エンジン10が冷間始動されたか否かを判定する。この冷間始動判定部52には、冷却水温度センサ47、外気温度センサ48A及び、燃料温度センサ49からの検出信号が入力されており、冷却水温度、外気温度、燃料温度を認識する。冷間始動判定部52は、エンジン10の始動直後と見なせる所定の判定期間内に冷間始動判定処理を行う。この判定処理では、冷却水温度と外気温度の差、冷却水温度と燃料温度の差、外気温度と燃料温度の差を求め、これらの各温度差が予め設定した閾値以下である場合に、冷間始動であると判定する。冷間始動判定部52による判定結果は、噴射制御部53に出力される。
冷間始動直後は、NOx/ラムダセンサ45の温度が低く、水の蒸発量が少ない。このため、NOx/ラムダセンサ45の内部に水が浸入してしまうと、浸入した水は長期間に亘って留まる。従って、冷間始動からしばらくの期間は、NOx/ラムダセンサ45を保護する観点からヒータ45aへの通電が禁止され、非加熱状態とされる。また、第1排気温度センサ31で検出される排気温度も所定の温度閾値(温度閾値THR1,図3(A)参照)未満である。
噴射制御部53には、冷間始動判定部52からの判定信号に加え、第1排気温度センサ43からの検出信号、触媒温度推定部100からの推定触媒温度(詳しくは、NOx吸蔵還元型触媒32の推定触媒温度)、NOx/ラムダセンサ45からの検出信号やNOxセンサ異常フラグが入力されている。また、噴射制御部53は、NOx/ラムダセンサ45が備えるヒータ45aへの通電を制御する。
噴射制御部53は、冷間始動判定部52によって冷間始動であると判定された場合、第1排気温度センサ43からの検出信号に基づいて排気温度を監視する。そして、排気温度が所定の温度閾値(温度閾値THR1)未満であることから、ヒータ45aへの通電が禁止される。
また、噴射制御部53は、リッチ不許可フラグFpro_Fをオン(Fpro_F=1)にセットして、SOxパージ制御部60やNOxパージ制御部70によるリッチ制御を禁止する。すなわち、SOxパージ制御部60やNOxパージ制御部70は、リッチ不許可フラグFpro_Fがオンの場合、SOxパージの要求の有無を示すSOxパージフラグFSP、NOxパージの要求の有無を示すNOxパージフラグFNPがオン(FSP=1,FNP=1)であっても、SOxパージ制御やNOxパージ制御を実施しない。
一方で、噴射制御部53は、NOxセンサ異常フラグがオンになっていても、NOx吸蔵還元型触媒32を昇温させるための燃料噴射制御を実施する。本実施形態において噴射制御部53は、NOx吸蔵還元型触媒32を昇温させるべく、筒内インジェクタ11にポスト噴射を含むマルチ噴射を実施させる。ポスト噴射を含むマルチ噴射が行われることで、排気通路13の排気に含まれる未燃燃料の濃度が増加され、未燃燃料の酸化によって酸化触媒31が発熱し、排気温度が上昇する。そして、酸化触媒31から排出される排気や排気中の未燃燃料の酸化によって、NOx吸蔵還元型触媒32が速やかに昇温される。
噴射制御部53は、第1排気温度センサ43で検出される排気温度が温度閾値THR1に到達した場合、すなわちNOx/ラムダセンサ45に浸入していた水が蒸発し、ヒータ45aに通電しても支障がないと見なせる温度に到達した場合に、ヒータ45aへの通電を指示する指示信号を出力する。この指示信号に応じてヒータ45aへの通電が実施される。
なお、温度閾値THR1については、例えば、冷却水温度センサ47、外気温度センサ48A及び、燃料温度センサ49からの各検出信号を入力信号とするMAPとし、実験等によって予め取得してECU50内に格納しておけばよい。
また、噴射制御部53は、(1)第1排気温度センサ43で検出される排気温度が温度閾値THR2以上に上昇し、(2)NOx吸蔵還元型触媒32の推定触媒温度が温度閾値TH3以上に上昇したこと、或いは、(3)燃料噴射制御の開始から所定の噴射制御期間が経過したことを条件に、燃料噴射制御(ポスト噴射を含むマルチ噴射)を終了する。
燃料噴射制御を終了させた後、噴射制御部53は、リッチ制御の開始条件が成立したことを条件に、リッチ制御を実施させる。例えば、噴射制御部53は、(1)リッチ開始要求がなされており、(2)前回リッチ終了からの経過時間が所定の経過時間閾値以上であり、(3)低温リッチ禁止フラグなどのリッチ禁止フラグがオフであることを条件に、リッチ制御を実施させる。
タイマ54は、先に行われたポスト噴射を含むマルチ噴射から次に行われるポスト噴射を含むマルチ噴射までの間に一定時間を確保すべく、所定のインターバル期間を計時する。そして、インターバル期間の経時中は、噴射禁止フラグFRST_TMがオン(FRST_TM=1)になり、噴射制御部53に入力される。噴射制御部53は、噴射禁止フラグFRST_TMがオンである期間に亘って燃料噴射制御を実施しない。
次に図3を参照し、触媒昇温制御部51による触媒昇温制御並びにNOxパージ制御部70によるリッチ制御の具体例について説明する。まず図3(A),(B)を参照し、NOx/ラムダセンサ45が正常である場合の制御について説明する。
図3(A)において、縦軸のTM1〜TM6は、排気温度又は推定触媒温度である。THR1は、ヒータ45aへの通電開始を判定するための温度閾値である。THR2は、燃料噴射制御の停止を判定する際に参照される排気温度の閾値であり、THR3は、同じく燃料噴射制御の停止を判定する際に参照される推定触媒温度の閾値である。THR4は、リッチ制御の開始を判定する際に参照される触媒温度の閾値である。なお、この具体例では、THR1とTHR2が同じ値に定められ、THR3とTHR4が同じ値に定められている。
時刻t1でエンジン10が始動されると、冷間始動判定部52は、エンジン10が冷間始動されたか否かを判定する。例えば、冷却水温度と外気温度の差、冷却水温度と燃料温度の差、外気温度と燃料温度の差を求め、これらの各温度差が予め設定した閾値以下である場合に、冷間始動されたと判定する。
この具体例では、冷間始動と判定され、その旨を示す判定信号が噴射制御部53に出力されたものとする。冷間始動されたことから、図3(A)に示すように、時刻t1では、排気温度Temp_EXGAS及び触媒推定温度Temp_LNTの何れも、温度閾値THR1〜3よりも低い温度TM1になっている。
また、図3(B)に示すように、時刻t1では、触媒推定温度Temp_LNTが温度閾値THR4よりも低いことから低温リッチ禁止フラグがオンになっている。また、排気温度Temp_EXGASが温度閾値THR1よりも低いことから、NOx/ラムダセンサ45のヒータ45aへの通電状況(加熱有無)を示すNOxセンサヒータフラグがオフになっている。加えて、NOx/ラムダセンサ45の温度が検出動作に適する動作温度範囲の下限閾値未満であることから、NOxセンサの異常を示すNOxセンサ異常フラグがオンになっている。
噴射制御部53は、NOxセンサ異常フラグがオンになっているが、時刻t1から燃料噴射制御(ポスト噴射を含むマルチ噴射)を開始させる。これにより、図3(A)に示すように、排気温度Temp_EXGAS及び触媒推定温度Temp_LNTが、エンジン10のアイドリングだけで昇温される場合よりも高い速度で昇温される。
時刻t2でリッチ開始要求(例えばNOxパージフラグFNP=1)がなされているが、時刻t2では低温リッチ禁止フラグがオンであることから、リッチ制御の開始条件は不成立となり、リッチ制御は実施されない(リッチ不許可フラグFpro_F=1)。
時刻t3において、排気温度Temp_EXGASが温度閾値THR1(温度TM4)に達したことから、噴射制御部53は、NOx/ラムダセンサ45が備えるヒータ45aへの通電を開始させる。これにより、NOx/ラムダセンサ45が加熱される。NOx/ラムダセンサ45は自己診断を行っており、動作温度まで加熱された状態で異常がなければ、NOxセンサ異常フラグをオフにセットする。図3(B)の例では、時刻t4でNOxセンサ異常フラグがオフにセットされている。
噴射制御部53は、燃料噴射制御を開始した後、この制御の終了条件を監視している。時刻t6では、(1)排気温度Temp_EXGASが温度閾値THR2よりも高い温度TM6まで上昇しており、(2)触媒温度推定部100が推定する触媒温度Temp_LNTが温度閾値THR3(温度TM5)に達したことから、噴射制御部53は燃料噴射制御を終了する。燃料噴射制御の終了に伴い、タイマ54は噴射禁止フラグFRST_TMを時刻t6からt7に亘ってオン(FRST_TM=1)にする。さらに、噴射制御部53は、触媒温度Temp_LNTが温度閾値THR4(温度TM5)に達したことから、低温リッチ禁止フラグをオフにする。
噴射制御部53は、リッチ制御の実施許可条件が成立したか否かについても監視している。そして、時刻t6では、(1)リッチ開始要求がなされており、(2)前回リッチ終了からの経過時間が所定の経過時間閾値以上であり、(3)低温リッチ禁止フラグ及び他のリッチ禁止フラグがオフであることから、噴射制御部53はリッチ制御の実施を許可する。例えば、噴射制御部53は、リッチ不許可フラグをオフ(Fpro_F=0)に設定することで、リッチ制御の実施を許可する。これにより、NOxパージ制御部70によるNOxパージ制御が時刻t8までの期間に亘って実施される。
次に図3(A),(C)を参照し、NOx/ラムダセンサ45に異常が生じている場合の触媒昇温制御並びにリッチ制御について説明する。なお、先に説明した制御と共通の内容については説明を省略して要点を説明する。
時刻t1でエンジン10が始動されると、冷間始動判定部52は、エンジン10が冷間始動されたか否かを判定する。冷間始動されたことから、低温リッチ禁止フラグがオンとされ、NOxセンサヒータフラグがオフとされ、NOxセンサ異常フラグがオンとされる。
噴射制御部53は、NOxセンサ異常フラグがオンになっているが、時刻t1から燃料噴射制御(ポスト噴射を含むマルチ噴射)を開始させ、排気温度Temp_EXGAS及び触媒推定温度Temp_LNTを早期に上昇させる。
時刻t3において、排気温度Temp_EXGASが温度閾値THR1(温度TM4)に達したことから、噴射制御部53は、ヒータ45aへの通電を開始させる。これにより、NOx/ラムダセンサ45が加熱される。
図3(C)の例でも、NOx/ラムダセンサ45は自己診断を行っている。この例では、動作温度まで加熱されているが、NOx/ラムダセンサ45に異常があることから、NOxセンサ異常フラグはオンのまま維持される。
時刻t6では、(1)排気温度Temp_EXGASが温度閾値THR2よりも高い温度TM6まで上昇しており、(2)触媒温度推定部100が推定する触媒温度Temp_LNTが温度閾値THR3(温度TM5)に達したことから、噴射制御部53は燃料噴射制御を終了する。また、噴射制御部53は、触媒温度Temp_LNTが温度閾値THR4(温度TM5)に達したことから、低温リッチ禁止フラグをオフにする。
ここで、図3(C)の例では、NOxセンサ異常フラグがオンであることから、リッチ禁止フラグもオンになる。このため、噴射制御部53はリッチ制御の実施を不許可にする。例えば、噴射制御部53は、リッチ不許可フラグをオン(Fpro_F=1)のまま維持することで、リッチ制御の実施を不許可にする。これにより、リッチ開始要求があっても、NOxパージ制御部70によるNOxパージ制御は実施されない。
以上説明したように、本実施形態によれば、NOx/ラムダセンサ45のヒータ45aに通電できない触媒低温状態であっても、ポスト噴射を含むマルチ噴射(多段噴射)による触媒昇温処理を開始させているので、NOx吸蔵還元型触媒32を早期に昇温させることができ、NOxパージやSOxパージといった触媒再生処理の要求があっても、速やかに対応することができる。
なお、上述の例では燃料噴射を、ポスト噴射を含むマルチ噴射で行っているが、これに限定されるものではない。例えば、排気管噴射装置34による排気管噴射で行ってもよい。
[フィルタ再生制御]
フィルタ再生制御部55は、車両の走行距離、あるいは図示しない差圧センサで検出されるフィルタ前後差圧からフィルタ33のPM堆積量を推定すると共に、このPM堆積推定量が所定の上限閾値を超えると再生フラグFDPFをオンにする(図4の時刻t1参照)。再生フラグFDPFがオンにされると、排気管噴射装置34に排気管噴射を実行させる指示信号が送信されるか、あるいは、各筒内インジェクタ11にポスト噴射を実行させる指示信号が送信されて、排気温度をPM燃焼温度(例えば、約550℃)まで昇温させる。この再生フラグFDPFは、PM堆積推定量が燃焼除去を示す所定の下限閾値(判定閾値)まで低下するとオフにされる(図4の時刻t2参照)。
フィルタ再生をポスト噴射で実施する場合の噴射量指示値(以下、フィルタ再生ポスト噴射量指示値QDPF_Post_Trgtという)は、触媒発熱量推定のために、詳細を後述する触媒温度推定部100にも送信される。
なお、再生フラグFDPFをオフにする判定閾値は、例えば、フィルタ再生開始(FDPF=1)からの上限経過時間や上限累積噴射量を基準にしてもよい。
[SOxパージ制御]
SOxパージ制御部60は、排気をリッチ状態にして排気温度を硫黄離脱温度(例えば、約600℃)まで上昇させて、NOx吸蔵還元型触媒32をSOx被毒から回復させる制御(以下、この制御をSOxパージ制御という)を実行する。
図4は、本実施形態のSOxパージ制御のタイミングチャートを示している。図4に示すように、SOxパージ制御を開始するSOxパージフラグFSPは、再生フラグFDPFのオフと同時にオンにされる(図4の時刻t2参照)。これにより、フィルタ33の再生によって排気温度を上昇させた状態からSOxパージ制御に効率よく移行することが可能となり、燃料消費量を効果的に低減することができる。
本実施形態において、SOxパージ制御によるリッチ化は、空気系制御によって空気過剰率を定常運転時(例えば、約1.5)から理論空燃比相当値(約1.0)よりもリーン側の第1目標空気過剰率(例えば、約1.3)まで低下させるSOxパージリーン制御と、噴射系制御によって空気過剰率を第1目標空気過剰率からリッチ側の第2目標空気過剰率(例えば、約0.9)まで低下させるSOxパージリッチ制御とを併用することで実現される。以下、SOxパージリーン制御及び、SOxパージリッチ制御の詳細について説明する。
[SOxパージリーン制御の空気系制御]
図5は、SOxパージリーン制御時のMAF目標値MAFSPL_Trgtの設定処理を示すブロック図である。第1目標空気過剰率設定マップ61は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Q(エンジン10の燃料噴射量)に基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したSOxパージリーン制御時の空気過剰率目標値λSPL_Trgt(第1目標空気過剰率)が予め実験等に基づいて設定されている。
まず、第1目標空気過剰率設定マップ61から、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてSOxパージリーン制御時の空気過剰率目標値λSPL_Trgtが読み取られて、MAF目標値演算部62に入力される。さらに、MAF目標値演算部62では、以下の数式(1)に基づいてSOxパージリーン制御時のMAF目標値MAFSPL_Trgtが演算される。
MAFSPL_Trgt=λSPL_Trgt×Qfnl_corrd×RoFuel×AFRsto/Maf_corr・・・(1)
数式(1)において、Qfnl_corrdは後述する学習補正された燃料噴射量(ポスト噴射を除く)、RoFuelは燃料比重、AFRstoは理論空燃比、Maf_corrは後述するMAF補正係数をそれぞれ示している。
MAF目標値演算部62によって演算されたMAF目標値MAFSPL_Trgtは、SOxパージフラグFSPがオン(図4の時刻t2参照)になるとランプ処理部63に入力される。ランプ処理部63は、各ランプ係数マップ63A,Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてランプ係数を読み取ると共に、このランプ係数を付加したMAF目標ランプ値MAFSPL_Trgt_Rampをバルブ制御部64に入力する。
バルブ制御部64は、MAFセンサ40から入力される実MAF値MAFActがMAF目標ランプ値MAFSPL_Trgt_Rampとなるように、吸気スロットルバルブ16を閉側に絞ると共に、EGRバルブ24を開側に開くフィードバック制御を実行する。
このように、本実施形態では、第1目標空気過剰率設定マップ61から読み取られる空気過剰率目標値λSPL_Trgtと、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量とに基づいてMAF目標値MAFSPL_Trgtを設定し、このMAF目標値MAFSPL_Trgtに基づいて空気系動作をフィードバック制御するようになっている。これにより、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けることなく、或いは、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けた場合も当該ラムダセンサのセンサ値を用いることなく、排気をSOxパージリーン制御に必要な所望の空気過剰率まで効果的に低下させることが可能になる。
また、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量として学習補正後の燃料噴射量Qfnl_corrdを用いることで、MAF目標値MAFSPL_Trgtをフィードフォワード制御で設定することが可能となり、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化、個体差等の影響を効果的に排除することができる。
また、MAF目標値MAFSPL_Trgtにエンジン10の運転状態に応じて設定されるランプ係数を付加することで、吸入空気量の急激な変化によるエンジン10の失火やトルク変動によるドライバビリティーの悪化等を効果的に防止することができる。
[SOxパージリッチ制御の燃料噴射量設定]
図6は、SOxパージリッチ制御における排気管噴射又はポスト噴射の目標噴射量QSPR_Trgt(単位時間あたりの噴射量)の設定処理を示すブロック図である。第2目標空気過剰率設定マップ65は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したSOxパージリッチ制御時の空気過剰率目標値λSPR_Trgt(第2目標空気過剰率)が予め実験等に基づいて設定されている。
まず、第2目標空気過剰率設定マップ65から、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてSOxパージリッチ制御時の空気過剰率目標値λSPR_Trgtが読み取られて、噴射量目標値演算部66に入力される。さらに、噴射量目標値演算部66では、以下の数式(2)に基づいてSOxパージリッチ制御時の目標噴射量指示値QSPR_Trgtが演算される。
QSPR_Trgt=MAFSPL_Trgt×Maf_corr/(λSPR_Trgt×RoFuel×AFRsto)−Qfnl_corrd・・・(2)
数式(2)において、MAFSPL_TrgtはSOxパージリーン時のMAF目標値であって、前述のMAF目標値演算部62から入力される。また、Qfnl_corrdは後述する学習補正されたMAF追従制御適用前の燃料噴射量(ポスト噴射を除く)、RoFuelは燃料比重、AFRstoは理論空燃比、Maf_corrは後述するMAF補正係数をそれぞれ示している。
噴射量目標値演算部66によって演算された目標噴射量指示値QSPR_Trgtは、後述するSOxパージリッチフラグFSPRがオンになると、排気管噴射装置34又は、各筒内インジェクタ11に噴射指示信号として送信される(以下、筒内インジェクタ11に送信されるポスト噴射の噴射量指示値をSOxパージリッチ・ポスト噴射量指示値QSPR_Post_Trgtという)。SOxパージリッチ・ポスト噴射量指示値QSPR_Post_Trgtは、触媒発熱量推定のために、詳細を後述する触媒温度推定部100にも送信される。
このように、本実施形態では、第2目標空気過剰率設定マップ65から読み取られる空気過剰率目標値λSPR_Trgtと、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量とに基づいて目標噴射量指示値QSPR_Trgtを設定するようになっている。これにより、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けることなく、或いは、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けた場合も当該ラムダセンサのセンサ値を用いることなく、排気をSOxパージリッチ制御に必要な所望の空気過剰率まで効果的に低下させることが可能になる。
また、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量として学習補正後の燃料噴射量Qfnl_corrdを用いることで、目標噴射量指示値QSPR_Trgtをフィードフォワード制御で設定することが可能となり、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化等の影響を効果的に排除することができる。
[SOxパージ制御の触媒温度調整制御]
SOxパージ制御中にNOx吸蔵還元型触媒32に流入する排気温度(以下、触媒温度ともいう)は、図4の時刻t2〜t4に示すように、排気管噴射又はポスト噴射を実行するSOxパージリッチフラグFSPRのオン・オフ(リッチ・リーン)を交互に切り替えることで制御される。SOxパージリッチフラグFSPRがオン(FSPR=1)にされると、排気管噴射又はポスト噴射によって触媒温度は上昇する(以下、この期間を噴射期間TF_INJという)。一方、SOxパージリッチフラグFSPRがオフにされると、排気管噴射又はポスト噴射の停止によって触媒温度は低下する(以下、この期間をインターバルTF_INTという)。
本実施形態において、噴射期間TF_INJは、予め実験等により作成した噴射期間設定マップ(不図示)からエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに対応する値を読み取ることで設定される。この噴射時間設定マップには、予め実験等によって求めた排気の空気過剰率を第2目標空気過剰率まで確実に低下させるのに必要となる噴射期間が、エンジン10の運転状態に応じて設定されている。
インターバルTF_INTは、触媒温度が最も高くなるSOxパージリッチフラグFSPRがオンからオフに切り替えられた際に、フィードバック制御によって設定される。具体的には、SOxパージリッチフラグFSPRがオフされた際の目標触媒温度と推定触媒温度との偏差ΔTに比例して入力信号を変化させる比例制御と、偏差ΔTの時間積分値に比例して入力信号を変化させる積分制御と、偏差ΔTの時間微分値に比例して入力信号を変化させる微分制御とで構成されるPID制御によって処理される。目標触媒温度は、NOx吸蔵還元型触媒32からSOxを離脱可能な温度で設定され、推定触媒温度は、詳細を後述する参照温度選択部108(図13参照)によって適宜選択される酸化触媒温度又は、NOx触媒温度の何れかで設定されるようになっている。
図7の時刻t1に示すように、フィルタ再生の終了(FDPF=0)によってSOxパージフラグFSPがオンされると、SOxパージリッチフラグFSPRもオンにされ、さらに前回のSOxパージ制御時にフィードバック計算されたインターバルTF_INTも一旦リセットされる。すなわち、フィルタ再生直後の初回は、噴射期間設定マップで設定した噴射期間TF_INJ_1に応じて排気管噴射又はポスト噴射が実行される(図7の時刻t1〜t2参照)。このように、SOxパージリーン制御を行うことなくSOxパージリッチ制御からSOxパージ制御を開始するので、フィルタ再生で上昇した排気温度を低下させることなく、速やかにSOxパージ制御に移行され、燃料消費量を低減することができる。
次いで、噴射期間TF_INJ_1の経過によってSOxパージリッチフラグFSPRがオフになると、PID制御によって設定されたインターバルTF_INT_1が経過するまで、SOxパージリッチフラグFSPRはオフとされる(図7の時刻t2〜t3参照)。さらに、インターバルTF_INT_1の経過によってSOxパージリッチフラグFSPRがオンにされると、再び噴射期間TF_INJ_2に応じた排気管噴射又はポスト噴射が実行される(図7の時刻t3〜t4参照)。その後、これらSOxパージリッチフラグFSPRのオン・オフの切り替えは、後述するSOxパージ制御の終了判定によってSOxパージフラグFSPがオフ(図7の時刻tn参照)にされるまで繰り返し実行される。
このように、本実施形態では、触媒温度を上昇させると共に空気過剰率を第2目標空気過剰率まで低下させる噴射期間TF_INJをエンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップから設定すると共に、触媒温度を降下させるインターバルTF_INTをPID制御によって処理するようになっている。これにより、SOxパージ制御中の触媒温度をパージに必要な所望の温度範囲に効果的に維持しつつ、空気過剰率を目標過剰率まで確実に低下させることが可能になる。
[SOxパージ制御の終了判定]
SOxパージ制御は、(1)SOxパージフラグFSPのオンから排気管噴射又はポスト噴射の噴射量を累積し、この累積噴射量が所定の上限閾値量に達した場合、(2)SOxパージ制御の開始から計時した経過時間が所定の上限閾値時間に達した場合、(3)エンジン10の運転状態やNOx/ラムダセンサ45のセンサ値等を入力信号として含む所定のモデル式に基づいて演算されるNOx吸蔵還元型触媒32のSOx吸着量がSOx除去成功を示す所定の閾値まで低下した場合の何れかの条件が成立すると、SOxパージフラグFSPをオフにして終了される(図4の時刻t4、図7の時刻tn参照)。
このように、本実施形態では、SOxパージ制御の終了条件に累積噴射量及び、経過時間の上限を設けたことで、SOxパージが排気温度の低下等によって進捗しなかった場合に、燃料消費量が過剰になることを効果的に防止することができる。
[NOxパージ制御]
NOxパージ制御部70は、排気をリッチ雰囲気にしてNOx吸蔵還元型触媒32に吸蔵されているNOxを還元浄化により無害化して放出することで、NOx吸蔵還元型触媒32のNOx吸蔵能力を回復させる制御(以下、この制御をNOxパージ制御という)を実行する。
NOxパージ制御を開始するNOxパージフラグFNPは、エンジン10の運転状態から単位時間当たりのNOx排出量を推定し、これを累積計算した推定累積値ΣNOxが所定の閾値を超えるとオンにされる(図8の時刻t1参照)。あるいは、エンジン10の運転状態から推定される触媒上流側のNOx排出量と、NOx/ラムダセンサ45で検出される触媒下流側のNOx量とからNOx吸蔵還元型触媒32によるNOx浄化率を演算し、このNOx浄化率が所定の判定閾値よりも低くなった場合に、NOxパージフラグFNPはオンにされる。
本実施形態において、NOxパージ制御によるリッチ化は、空気系制御によって空気過剰率を定常運転時(例えば、約1.5)から理論空燃比相当値(約1.0)よりもリーン側の第3目標空気過剰率(例えば、約1.3)まで低下させるNOxパージリーン制御と、噴射系制御によって空気過剰率を第3目標空気過剰率からリッチ側の第4目標空気過剰率(例えば、約0.9)まで低下させるNOxパージリッチ制御とを併用することで実現される。以下、NOxパージリーン制御及び、NOxパージリッチ制御の詳細について説明する。
[NOxパージリーン制御のMAF目標値設定]
図9は、NOxパージリーン制御時のMAF目標値MAFNPL_Trgtの設定処理を示すブロック図である。第3目標空気過剰率設定マップ71は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したNOxパージリーン制御時の空気過剰率目標値λNPL_Trgt(第3目標空気過剰率)が予め実験等に基づいて設定されている。
まず、第3目標空気過剰率設定マップ71から、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてNOxパージリーン制御時の空気過剰率目標値λNPL_Trgtが読み取られて、MAF目標値演算部72に入力される。さらに、MAF目標値演算部72では、以下の数式(3)に基づいてNOxパージリーン制御時のMAF目標値MAFNPL_Trgtが演算される。
MAFNPL_Trgt=λNPL_Trgt×Qfnl_corrd×RoFuel×AFRsto/Maf_corr・・・(3)
数式(3)において、Qfnl_corrdは後述する学習補正された燃料噴射量(ポスト噴射を除く)、RoFuelは燃料比重、AFRstoは理論空燃比、Maf_corrは後述するMAF補正係数をそれぞれ示している。
MAF目標値演算部72によって演算されたMAF目標値MAFNPL_Trgtは、NOxパージフラグFNPがオン(図8の時刻t1参照)になるとランプ処理部73に入力される。ランプ処理部73は、各ランプ係数マップ73A,Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてランプ係数を読み取ると共に、このランプ係数を付加したMAF目標ランプ値MAFNPL_Trgt_Rampをバルブ制御部74に入力する。
バルブ制御部74は、MAFセンサ40から入力される実MAF値MAFActがMAF目標ランプ値MAFNPL_Trgt_Rampとなるように、吸気スロットルバルブ16を閉側に絞ると共に、EGRバルブ24を開側に開くフィードバック制御を実行する。
このように、本実施形態では、第3目標空気過剰率設定マップ71から読み取られる空気過剰率目標値λNPL_Trgtと、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量とに基づいてMAF目標値MAFNPL_Trgtを設定し、このMAF目標値MAFNPL_Trgtに基づいて空気系動作をフィードバック制御するようになっている。これにより、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けることなく、或いは、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けた場合も当該ラムダセンサのセンサ値を用いることなく、排気をNOxパージリーン制御に必要な所望の空気過剰率まで効果的に低下させることが可能になる。
また、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量として学習補正後の燃料噴射量Qfnl_corrdを用いることで、MAF目標値MAFNPL_Trgtをフィードフォワード制御で設定することが可能となり、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化等の影響を効果的に排除することができる。
また、MAF目標値MAFNPL_Trgtにエンジン10の運転状態に応じて設定されるランプ係数を付加することで、吸入空気量の急激な変化によるエンジン10の失火やトルク変動によるドライバビリティーの悪化等を効果的に防止することができる。
[NOxパージリッチ制御の燃料噴射量設定]
図10は、NOxパージリッチ制御における排気管噴射又はポスト噴射の目標噴射量QNPR_Trgt(単位時間当たりの噴射量)の設定処理を示すブロック図である。第4目標空気過剰率設定マップ75は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したNOxパージリッチ制御時の空気過剰率目標値λNPR_Trgt(第4目標空気過剰率)が予め実験等に基づいて設定されている。
まず、第4目標空気過剰率設定マップ75から、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号としてNOxパージリッチ制御時の空気過剰率目標値λNPR_Trgtが読み取られて噴射量目標値演算部76に入力される。さらに、噴射量目標値演算部76では、以下の数式(4)に基づいてNOxパージリッチ制御時の目標噴射量指示値QNPR_Trgtが演算される。
QNPR_Trgt=MAFNPL_Trgt×Maf_corr/(λNPR_Trgt×RoFuel×AFRsto)−Qfnl_corrd・・・(4)
数式(4)において、MAFNPL_TrgtはNOxパージリーンMAF目標値であって、前述のMAF目標値演算部72から入力される。また、Qfnl_corrdは後述する学習補正されたMAF追従制御適用前の燃料噴射量(ポスト噴射を除く)、RoFuelは燃料比重、AFRstoは理論空燃比、Maf_corrは後述するMAF補正係数をそれぞれ示している。
噴射量目標値演算部76によって演算される目標噴射量指示値QNPR_Trgtは、図8の時刻t1に示すように、NOxパージフラグFNPがオンになると、排気管噴射装置34又は各筒内インジェクタ11に噴射指示信号として送信される(以下、特に筒内インジェクタ11に送信されるポスト噴射の噴射量指示値をNOxパージリッチ・ポスト噴射量指示値QNPR_Post_Trgtという)。NOxパージリッチ・ポスト噴射量指示値QNPR_Post_Trgtは、触媒発熱量推定のために、詳細を後述する触媒温度推定部100にも送信される。
このように、本実施形態では、第4目標空気過剰率設定マップ75から読み取られる空気過剰率目標値λNPR_Trgtと、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量とに基づいて目標噴射量QNPR_Trgtを設定するようになっている。これにより、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けることなく、或いは、NOx吸蔵還元型触媒32の上流側にラムダセンサを設けた場合も当該ラムダセンサのセンサ値を用いることなく、排気をNOxパージリッチ制御に必要な所望の空気過剰率まで効果的に低下させることが可能になる。
また、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量として学習補正後の燃料噴射量Qfnl_corrdを用いることで、目標噴射量QNPR_Trgtをフィードフォワード制御で設定することが可能となり、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化等の影響を効果的に排除することができる。
[NOxパージ制御の空気系制御禁止]
ECU50は、エンジン10の運転状態が低負荷側の領域では、MAFセンサ40のセンサ値に基づいて吸気スロットルバルブ16やEGRバルブ24の開度をフィードバック制御している。一方、エンジン10の運転状態が高負荷側の領域では、ECU50はブースト圧センサ46のセンサ値に基づいて可変容量型過給機20による過給圧をフィードバック制御している(以下、この領域をブースト圧FB制御領域という)。
このようなブースト圧FB制御領域では、吸気スロットルバルブ16やEGRバルブ24の制御が可変容量型過給機20の制御と干渉してしまう現象が生じる。このため、上述の数式(3)で設定されるMAF目標値MAFNPL_Trgtに基づいて空気系をフィードバック制御するNOxパージリーン制御を実行しても、吸入空気量をMAF目標値MAFNPL_Trgtに維持できない課題がある。その結果、ポスト噴射や排気管噴射を実行するNOxパージリッチ制御を開始しても、空気過剰率をNOxパージに必要な第4目標空気過剰率(空気過剰率目標値λNPR_Trgt)まで低下させられない可能性がある。
このような現象を回避すべく、本実施形態のNOxパージ制御部70は、ブースト圧FB制御領域では、吸気スロットルバルブ16やEGRバルブ24の開度を調整するNOxパージリーン制御を禁止し、排気管噴射又はポスト噴射のみで空気過剰率を第4目標空気過剰率(空気過剰率目標値λNPR_Trgt)まで低下させる。これにより、ブースト圧FB制御領域においても、NOxパージを確実に行うことが可能になる。なお、この場合、上述の数式(4)のMAF目標値MAFNPL_Trgtには、エンジン10の運転状態に基づいて設定されるMAF目標値を適用すればよい。
[NOxパージ制御の終了判定]
NOxパージ制御は、(1)NOxパージフラグFNPのオンから排気管噴射又はポスト噴射の噴射量を累積し、この累積噴射量が所定の上限閾値量に達した場合、(2)NOxパージ制御の開始から計時した経過時間が所定の上限閾値時間に達した場合、(3)エンジン10の運転状態やNOx/ラムダセンサ45のセンサ値等を入力信号として含む所定のモデル式に基づいて演算されるNOx吸蔵還元型触媒32のNOx吸蔵量がNOx除去成功を示す所定の閾値まで低下した場合の何れかの条件が成立すると、NOxパージフラグFNPをオフにして終了される(図8の時刻t2参照)。
このように、本実施形態では、NOxパージ制御の終了条件に累積噴射量及び、経過時間の上限を設けたことで、NOxパージが排気温度の低下等によって成功しなかった場合に燃料消費量が過剰になることを確実に防止することができる。
[MAF追従制御]
MAF追従制御部80は、(1)通常運転のリーン状態からSOxパージ制御又はNOxパージ制御によるリッチ状態への切り替え期間及び、(2)SOxパージ制御又はNOxパージ制御によるリッチ状態から通常運転のリーン状態への切り替え期間に、各筒内インジェクタ11の燃料噴射タイミング及び燃料噴射量をMAF変化に応じて補正するMAF追従制御を実行する。
[噴射量学習補正]
図11に示すように、噴射量学習補正部90は、学習補正係数演算部91と、噴射量補正部92とを有する。
学習補正係数演算部91は、エンジン10のリーン運転時にNOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λActと、推定ラムダ値λEstとの誤差Δλに基づいて燃料噴射量の学習補正係数FCorrを演算する。排気がリーン状態のときは、排気中のHC濃度が非常に低いので、酸化触媒31でHCの酸化反応による排気ラムダ値の変化は無視できるほど小さい。このため、酸化触媒31を通過して下流側のNOx/ラムダセンサ45で検出される排気中の実ラムダ値λActと、エンジン10から排出された排気中の推定ラムダ値λEstとは一致すると考えられる。このため、これら実ラムダ値λActと推定ラムダ値λEstとに誤差Δλが生じた場合は、各筒内インジェクタ11に対する指示噴射量と実噴射量との差によるものと仮定することができる。以下、この誤差Δλを用いた学習補正係数演算部91による学習補正係数の演算処理を図12のフローに基づいて説明する。
ステップS300では、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて、エンジン10がリーン運転状態にあるか否かが判定される。リーン運転状態にあれば、学習補正係数の演算を開始すべく、ステップS310に進む。
ステップS310では、推定ラムダ値λEstからNOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λActを減算した誤差Δλに、学習値ゲインK1及び補正感度係数K2を乗じることで、学習値FCorrAdptが演算される(FCorrAdpt=(λEst−λAct)×K1×K2)。推定ラムダ値λEstは、エンジン回転数Neやアクセル開度Qに応じたエンジン10の運転状態から推定演算される。また、補正感度係数K2は、図11に示す補正感度係数マップ91AからNOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λActを入力信号として読み取られる。
ステップS320では、学習値FCorrAdptの絶対値|FCorrAdpt|が所定の補正限界値Aの範囲内にあるか否かが判定される。絶対値|FCorrAdpt|が補正限界値Aを超えている場合、本制御はリターンされて今回の学習を中止する。
ステップS330では、学習禁止フラグFPro_Sがオフか否かが判定される。学習禁止フラグFPro_Sとしては、例えば、エンジン10の過渡運転時、SOxパージ制御時(FSP=1)、NOxパージ制御時(FNP=1)等が該当する。これらの条件が成立する状態では、実ラムダ値λActの変化によって誤差Δλが大きくなり、正確な学習を行えないためである。エンジン10が過渡運転状態にあるか否かは、例えば、NOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λActの時間変化量に基づいて、当該時間変化量が所定の閾値よりも大きい場合に過渡運転状態と判定すればよい。
ステップS340では、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照される学習値マップ91B(図11参照)が、ステップS310で演算された学習値FCorrAdptに更新される。より詳しくは、この学習値マップ91B上には、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに応じて区画された複数の学習領域が設定されている。これら学習領域は、好ましくは、使用頻度が多い領域ほどその範囲が狭く設定され、使用頻度が少ない領域ほどその範囲が広く設定されている。これにより、使用頻度が多い領域では学習精度が向上され、使用頻度が少ない領域では未学習を効果的に防止することが可能になる。
ステップS350では、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号として学習値マップ91Bから読み取った学習値に「1」を加算することで、学習補正係数FCorrが演算される(FCorr=1+FCorrAdpt)。この学習補正係数FCorrは、図11に示す噴射量補正部92に入力される。
噴射量補正部92は、パイロット噴射QPilot、プレ噴射QPre、メイン噴射QMain、アフタ噴射QAfter、ポスト噴射QPostの各基本噴射量に学習補正係数FCorrを乗算することで、これら燃料噴射量の補正を実行する。
このように、推定ラムダ値λEstと実ラムダ値λActとの誤差Δλに応じた学習値で各筒内インジェクタ11に燃料噴射量を補正することで、各筒内インジェクタ11の経年劣化や特性変化、個体差等のバラツキを効果的に排除することが可能になる。
[触媒温度推定]
図13は、触媒温度推定部100による酸化触媒温度及び、NOx触媒温度の推定処理を示すブロック図である。触媒温度推定部100は、排気に含まれる未燃燃料の量と酸化触媒31やNOx吸蔵還元型触媒32の発熱量に基づいて触媒温度を推定する。
リーン時HCマップ101Aは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、リーン運転時にエンジン10から排出されるHC量(以下、リーン時HC排出量という)が予め実験等により設定されている。フィルタ再生フラグFDPF、SOxパージフラグFSP、NOxパージフラグFNPの何れもがオフ(FDPF=0,FSP=0,FNP=0)の場合は、リーン時HCマップ101Aからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたリーン時HC排出量が各発熱量推定部106A,106Bに送信されるようになっている。
リーン時COマップ101Bは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、リーン運転時にエンジン10から排出されるCO量(以下、リーン時CO排出量という)が予め実験等により設定されている。フィルタ再生フラグFDPF、SOxパージフラグFSP、NOxパージフラグFNPの何れもがオフ(FDPF=0,FSP=0,FNP=0)の場合は、リーン時COマップ101Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたリーン時CO排出量が各発熱量推定部106A,106Bに送信されるようになっている。
フィルタ再生時HCマップ102Aは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、フィルタ再生制御を実施した際にエンジン10から排出されるHC量(以下、フィルタ再生時HC排出量という)が予め実験等により設定されている。フィルタ再生フラグFDPFがオン(FDPF=1)の場合は、フィルタ再生時HCマップ102Aからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたフィルタ再生時HC排出量に、エンジン10の運転状態に応じた所定の補正係数が乗じられて、各発熱量推定部106A,106Bに送信されるようになっている。
フィルタ再生時COマップ102Bは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、フィルタ再生制御を実施した際にエンジン10から排出されるCO量(以下、フィルタ再生時CO排出量という)が予め実験等により設定されている。フィルタ再生フラグFDPFがオン(FDPF=1)の場合は、フィルタ再生時COマップ102Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたフィルタ再生時CO排出量に、エンジン10の運転状態に応じた所定の補正係数が乗じられて、各発熱量推定部106A,106Bに送信されるようになっている。
NOxパージ時HCマップ103Aは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、NOxパージ制御を実施した際にエンジン10から排出されるHC量(以下、NOxパージ時HC排出量という)が予め実験等により設定されている。NOxパージフラグFNPがオン(FNP=1)の場合は、NOxパージ時HCマップ103Aからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたNOxパージ時HC排出量に、エンジン10の運転状態に応じた所定の補正係数が乗じられて、各発熱量推定部106A,106Bに送信されるようになっている。
NOxパージ時COマップ103Bは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、NOxパージ制御を実施した際にエンジン10から排出されるCO量(以下、NOxパージ時CO排出量という)が予め実験等により設定されている。NOxパージフラグFNPがオン(FNP=1)の場合は、NOxパージ時COマップ103Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたNOxパージ時CO排出量に、エンジン10の運転状態に応じた所定の補正係数が乗じられて、各発熱量推定部106A,106Bに送信されるようになっている。
SOxパージ時HCマップ104Aは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、SOxパージ制御を実施した際にエンジン10から排出されるHC量(以下、SOxパージ時HC排出量という)が予め実験等により設定されている。SOxパージフラグFSPがオン(FSP=1)の場合は、SOxパージ時HCマップ104Aからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたSOxパージ時HC排出量に、所定の補正係数が乗じられて、各発熱量推定部106A,106Bに送信されるようになっている。
SOxパージ時COマップ104Bは、エンジン10の運転状態に基づいて参照されるマップであって、SOxパージ制御を実施した際にエンジン10から排出されるCO量(以下、SOxパージ時CO排出量という)が予め実験等により設定されている。SOxパージフラグFSPがオン(FSP=1)の場合は、SOxパージ時COマップ104Bからエンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて読み取られたSOxパージ時CO排出量に、所定の補正係数が乗じられて、各発熱量推定部106A,106Bに送信されるようになっている。
ポスト噴射量指示値補正部105は、SOxパージリッチ制御、NOxパージリッチ制御又は、フィルタ再生制御がポスト噴射によって実施される場合に、触媒発熱量推定に用いるポスト噴射量指示値を上述の学習補正係数演算部91から入力される学習補正係数によって補正するポスト噴射量指示値補正を実施する。
より詳しくは、SOxパージリッチフラグFSPRがオンとなり、且つ、SOxパージリッチ制御がポスト噴射で実施される場合は、噴射量目標値演算部66(SOxパージ制御部60)から入力されるSOxパージリッチ・ポスト噴射量指示値QSPR_Post_Trgtに学習補正係数FCorrを乗じた補正後のポスト噴射量指示値QSPR_Post_Corr(=QSPR_Post_Trgt×FCorr)が各発熱量推定部106A,106Bに送信されるようになっている。
また、NOxパージリッチフラグFNPRがオンとなり、且つ、NOxパージリッチ制御がポスト噴射で実施される場合は、噴射量目標値演算部76(NOxパージ制御部70)から入力されるNOxパージリッチ・ポスト噴射量指示値QNPR_Post_Trgtに学習補正係数FCorrを乗じた補正後のポスト噴射量指示値QNPR_Post_Corr(=QNPR_Post_Trgt×FCorr)が各発熱量推定部106A,106Bに送信されるようになっている。
また、フィルタ再生フラグFDPFがオンとなり、且つ、フィルタ再生制御がポスト噴射で実施される場合は、フィルタ再生制御部51から入力されるフィルタ再生ポスト噴射量指示値QDPF_Post_Trgtに学習補正係数FCorrを乗じた補正後のポスト噴射量指示値QDPF_Post_Corr(=QDPF_Post_Trgt×FCorr)が各発熱量推定部106A,106Bに送信されるようになっている。
酸化触媒発熱量推定部106Aは、SOxパージフラグFSP、NOxパージフラグFNP、フィルタ再生フラグFDPFのオン/オフに応じて各マップ101A〜104Bから入力されるHC・CO排出量及び、排気管噴射/ポスト噴射の選択に応じてポスト噴射量指示値補正部105から入力される補正後のポスト噴射量指示値等に基づいて、酸化触媒31内部でのHC・CO発熱量(以下、酸化触媒HC・CO発熱量という)を推定する。酸化触媒HC・CO発熱量は、例えば、HC・CO排出量や補正後のポスト噴射量指示値を入力値として含むモデル式やマップに基づいて推定演算する。
NOx触媒発熱量推定部106Bは、SOxパージフラグFSP、NOxパージフラグFNP、フィルタ再生フラグFDPFのオン/オフに応じて各マップ101A〜104Bから入力されるHC・CO排出量及び、排気管噴射/ポスト噴射の選択に応じてポスト噴射量指示値補正部105から入力される補正後のポスト噴射量指示値等に基づいて、NOx吸蔵還元型触媒32内部のHC・CO発熱量(以下、NOx触媒HC・CO発熱量という)を推定する。NOx触媒HC・CO発熱量は、例えば、HC・CO排出量や補正後のポスト噴射量指示値を入力値として含むモデル式やマップに基づいて推定演算する。
酸化触媒温度推定部107Aは、第1排気温度センサ43によって検出される酸化触媒入口温度、酸化触媒発熱量推定部106Aから入力される酸化触媒HC・CO発熱量、MAFセンサ40のセンサ値、外気温度センサ48A又は吸気温度センサ48Bのセンサ値から推定される外気への放熱量等を入力値として含むモデル式やマップに基づいて、酸化触媒31の触媒温度を推定演算する。
NOx触媒温度推定部107Bは、酸化触媒温度推定部107Aから入力される酸化触媒温度(以下、NOx触媒入口温度ともいう)、NOx触媒発熱量推定部106Bから入力されるNOx触媒HC・CO発熱量、外気温度センサ48A又は吸気温度センサ48Bのセンサ値から推定される外気への放熱量等を入力値として含むモデル式やマップに基づいて、NOx吸蔵還元型触媒32の触媒温度を推定演算する。
以上詳述したように、本実施形態では、SOxパージ制御、NOxパージ制御、フィルタ再生制御がポスト噴射で実施される場合は、各触媒31,32の発熱量推定演算に学習補正値が反映された補正後のポスト噴射量指示値を用いるように構成されている。これにより、筒内インジェクタ11の経年劣化等の影響を考慮した触媒発熱量を高精度に演算することが可能となり、各触媒31,32の温度推定精度を確実に向上することができる。
また、HC・CO排出量がそれぞれ異なる通常のリーン運転時、フィルタ再生時、SOxパージ時、NOxパージ時等の各運転状態に応じてHC・COマップ101A〜104B等を適宜切り替えることで、これら運転状態に応じた触媒内部におけるHC・CO発熱量を精度よく演算することが可能となり、各触媒31,32の温度推定精度を効果的に向上することができる。
[FB制御参照温度選択]
図13に示す参照温度選択部108は、上述したフィルタ再生やSOxパージの温度フィードバック制御に用いる参照温度を選択する。
酸化触媒31とNOx吸蔵還元型触媒32とを備える排気浄化システムにおいては、触媒の発熱特性等に応じて各触媒31,32におけるHC・CO発熱量が異なってくる。このため、温度フィードバック制御の参照温度としては、発熱量が多い方の触媒温度を選択することが制御性を向上するうえで好ましい。
参照温度選択部108は、酸化触媒温度及び、NOx触媒温度のうち、そのときのエンジン10の運転状態から推定される発熱量が多い方の触媒温度を一つ選択して、フィルタ再生制御部55、SOxパージ制御部60、NOxパージ制御部70に温度フィードバック制御の参照温度として送信するように構成されている。
より詳しくは、排気中の酸素濃度が比較的高く、酸化触媒31のHC・CO発熱量が増加するフィルタ再生時は、酸化触媒温度推定部107Aから入力される酸化触媒温度が温度フィードバック制御の参照温度として選択される。一方、排気中の酸素濃度の低下によりNOx吸蔵還元型触媒32におけるHC・CO発熱量が増加するSOxパージリッチ制御やNOxパージリッチ制御時は、NOx触媒温度推定部107Bから入力されるNOx触媒温度が温度フィードバック制御の参照温度として選択されるようになっている。
このように、本実施形態では、HC・CO発熱量が多くなる方の触媒温度を温度フィードバック制御の参照温度として選択することで、制御性を効果的に向上することが可能になる。
なお、参照温度選択部108は、触媒昇温制御部51に対してNOx吸蔵還元型触媒32の推定触媒温度を出力している。
[MAF補正係数]
MAF補正係数演算部95は、SOxパージ制御時のMAF目標値MAFSPL_Trgtや目標噴射量QSPR_Trgtの設定に用いられるMAF補正係数Maf_corrを演算する。
本実施形態において、各筒内インジェクタ11の燃料噴射量は、NOx/ラムダセンサ45で検出される実ラムダ値λActと推定ラムダ値λEstとの誤差Δλに基づいて補正される。しかしながら、ラムダは空気と燃料の比であるため、誤差Δλの要因が必ずしも各筒内インジェクタ11に対する指示噴射量と実噴射量との差の影響のみとは限らない。すなわち、ラムダの誤差Δλには、各筒内インジェクタ11のみならずMAFセンサ40の誤差も影響している可能性がある。
図14は、MAF補正係数演算部95によるMAF補正係数Maf_corrの設定処理を示すブロック図である。補正係数設定マップ96は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qに基づいて参照されるマップであって、これらエンジン回転数Neとアクセル開度Qとに対応したMAFセンサ40のセンサ特性を示すMAF補正係数Maf_corrが予め実験等に基づいて設定されている。
MAF補正係数演算部95は、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Qを入力信号として補正係数設定マップ96からMAF補正係数Maf_corrを読み取ると共に、このMAF補正係数Maf_corrをMAF目標値演算部62,72及び噴射量目標値演算部66,76に送信する。これにより、SOxパージ制御時のMAF目標値MAFSPL_Trgtや目標噴射量指示値QSPR_Trgt、NOxパージ制御時のMAF目標値MAFNPL_Trgtや目標噴射量指示値QNPR_Trgtの設定に、MAFセンサ40のセンサ特性を効果的に反映することが可能になる。
[その他]
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
例えば、本発明の適用対象になる還元触媒は、NOx吸蔵還元型触媒32に限られない。選択還元触媒(SCR触媒)など、所定の動作温度に昇温されて排気に含まれるNOxを還元浄化するものであれば、他の種類の触媒であってもよい。
また、加熱部付の検出素子に関してもNOx/ラムダセンサ45に限られない。ヒータ等の加熱部を備えており、加熱部によって加熱された状態で対象を検出する検出素子であればよい。例えば、排気に含まれるPM(粒子状物質)を検出するPMセンサであってもよい。