JP2013164915A - 電池の製造方法及び電池の製造装置 - Google Patents

電池の製造方法及び電池の製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電解液を外装体へ供給する際、活物質層間への空気の取込みを抑制し、電解液をその飛散を抑制して活物質層に接触するように電極体に効率よく浸透させることができ、特に、大容量で高密度のリチウム二次電池の製造を効率よく行うことができる電池の製造方法やこれを用いた製造装置を提供する。
【解決手段】 正極と負極とをセパレータを介して外装体内に設置し、外装体内に電解液を注入する電池の製造方法であって、セパレータを介して正極と負極とを設置した外装体を、その内部が気密容器内空間と一体となるように気密容器に収容し、気密容器内を、電解液に含まれる少なくとも一つの溶媒の蒸気圧より低い圧力PLに減圧した後、気密容器内に、圧力PLより高い蒸気圧を有する少なくとも一つの物質を含む非水液体を導入して、該非水液体の気化により気密容器内の圧力を電解液に含まれる総ての溶媒の各々の蒸気圧以上の圧力PHにした後、外装体内に電解液を供給する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電池の製造方法及び電池の製造装置に関する。
近年、電池、特にリチウム二次電池は、携帯型電子機器やパソコン用として小型化、軽量化が求められる一方において、高機能電子機器や電気自動車、車両等の移動手段の動力源、更に、蓄電等に利用可能な大容量化、高エネルギー密度化が求められている。このようなリチウム電池は、それぞれ集電体上に形成された正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層とが、セパレータを介して対向して配置され、これらが積層され、又は捲回されて形成された電極体が、電解液に浸漬されて、外装体に収納された構造を有している。
この種の電池の製造において、高エネルギー密度、大容量の電池を得るため、負極活物質層及び正極活物質層の体積当たりの高密度化が図られ、また、外装体内において電極体の占有容積が増大されることから、外装体に電極体を配置した後、充填される電解液が、活物質層の中心部まで接触するように電極体へ浸透するのに長時間を要する。また、電解液は電極体の外縁部から中央部へ浸透していくが、このとき電極体の内部に取り込まれた空気は中央付近に集まり電解液の浸透を阻害するのみでなく、電極体の中心部に残留して電解液と活物質層との接触を阻害し、活物質のリチウムイオンの吸蔵、放出機能を阻害し、電池容量の充分な活用ができない場合もある。特に大型の電池において、このような問題が生じやすい傾向にある。
電解液の注入時間を短縮するため、電解液の注入前に外装体内の脱気を行う方法が報告されている。具体的には、電池を収納したデシケータ内を減圧し電解液を注液し、次にデシケータ内を加圧またはさらに減圧して電池内の空気の気泡を除去する工程と、電解液の注入工程とを反復する方法(特許文献1)、電池容器内の空気を、電解液に溶解可能な二酸化炭素等の気体と置換し、電解液を注入後、電解液に溶解可能な気体を除去する方法(特許文献2)、内部にフィルム外装電池を収納した真空容器内を減圧し、フィルム外装電池内に電解液を注入した後、真空容器内に気体を導入して電池要素に電解液を含浸吸収させる方法(特許文献3)、電解液の溶媒の一部を気体の状態で電池ケースに収容し、この気体を液化した後に、電解液のうち気体収容工程で収容されなかった残部の電解液を注入する方法(特許文献4)、電極構造体を収容した外包材の内側空間と外側空間とを減圧し、電解液を注入した後、外側空間の圧力を増加する方法(特許文献5)が提案されている。
しかしながら、電解液を外装体へ注入する際、外装体内を真空近傍まで減圧すると、外装体内に空気が残存するのを抑制することができるが、そのような減圧下で電解液が供給されると溶媒が急激に気化し、電解液に含まれる溶質や、また、溶媒であっても、常温で固体のエチレンカーボネート(EC)等を含む場合は、これらが析出物となって、外装体や、製造装置を汚染し、析出物が封止部分に付着して、封止品質を低下させるおそれや、電解液の組成が変化し電池の特性が変動するおそれもある。
また、特許文献2に記載される方法では、電池が高温で使用されると、電解液に溶解した二酸化炭素が溶解度低下により分離し気体として存在することにより、析出物の生成の起因となるおそれもある。
特開2004−22502 特開2007−335181 特開2009−181862 特開2010−262821 特開2011−60564
本発明の課題は、電解液を外装体へ供給する際、活物質層間への空気の取込みを抑制し、電解液をその飛散を抑制して活物質層に接触するように電極体に効率よく浸透させることができ、特に、大容量で高密度のリチウム二次電池の製造を効率よく行うことができる電池の製造方法やこれを用いた製造装置を提供することにある。
本発明者らは、電極体を収納した外装体へ電解液を注入する際、外装体をその開口を気密容器の空間に配置させ、外装体と気密容器の空間とを一体化するように設置し、気密容器内を減圧して、外装体内及びこれに収納される電極体に含まれる空気を除去した後、非水液体を気密容器内に導入し、非水液体の気化により気密容器の圧力が、電解液に含まれる溶媒の蒸気圧以上になった後、電解液を外装体へ注入することにより、電解液から溶媒の急激な気化が抑制されることの知見を得た。このため、電解液の飛散を抑制でき、空気が電極体に残留するのを抑制すると共に、非水液体の気体が電解液に混入され溶解しても、その量は僅かであり、電解液の組成に影響が及ぶことが抑制されることの知見を得た。
更に、気密容器内を減圧する際、電解液に含まれる少なくとも一つの物質の蒸気圧より低圧にすることにより、活物質間への電解液の浸透を効率よく行うことができる。また、非水液体として電解液を使用しても、溶媒の急激な気化が抑制されることから、非水液体として電解液も使用可能であることの知見を得た。これらの知見に基づき、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、正極と負極とをセパレータを介して外装体内に設置し、外装体内に電解液を注入する電池の製造方法であって、セパレータを介して正極と負極とを設置した外装体を、その内部が気密容器内空間と一体となるように気密容器に収容し、気密容器内を、電解液に含まれる少なくとも一つの溶媒の蒸気圧より低い圧力PLに減圧した後、気密容器内に、圧力PLより高い蒸気圧を有する少なくとも一つの物質を含む非水液体を導入して、該非水液体の気化により気密容器内の圧力を電解液に含まれる総ての溶媒の各々の蒸気圧以上の圧力PHにした後、外装体内に電解液を供給することを特徴とする電池の製造方法に関する。
また、本発明は、正極と負極とをセパレータを介して外装体内に設置し、外装体内に電解液を注入する電池の製造装置であって、セパレータを介して正極と負極とを設置した外装体を、その内部が気密容器内空間と一体となるように収容する気密容器と、気密容器内を、電解液に含まれる少なくとも一つの溶媒の蒸気圧より低い圧力PLに減圧する減圧ポンプと、気密容器内の圧力を測定する圧力計と、気密容器内に、圧力PLより高い蒸気圧を有する少なくとも一つの物質を含む非水液体を供給する非水液体用配管と、外装体内に電解液を供給する電解液用配管とを備えたことを特徴とする電池の製造装置に関する。
本発明の電池の製造方法やこれを用いた製造装置は、電解液を外装体へ供給する際、活物質層間への空気の取込みを抑制し、電解液をその飛散を抑制して活物質層に接触するように電極体に効率よく浸透させることができ、特に、大容量で高密度のリチウム二次電池の製造を効率よく行うことができる。
本発明の電池の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の電池の製造方法により製造される電池の一例を示す構成図である。 本発明の電池の製造装置の一例を示す構成図である。 本発明の電池の製造方法により製造される電池の中間体を示す構成図である。 本発明の電池の製造装置に用いる電池の支持部材の一例を示す斜視図である。 本発明の電池の製造装置に用いる電池の支持部材の一例を示す側面図である。 本発明の電池の製造装置の他の例を示す構成図である。 本発明の電池の製造装置の他の例を示す構成図である。
本発明の電池の製造方法は、正極と負極とをセパレータを介して外装体内に設置し、外装体内に電解液を注入する電池の製造方法であって、セパレータを介して正極と負極とを設置した外装体を、その内部が気密容器内空間と一体となるように気密容器に収容し、気密容器内を、電解液に含まれる少なくとも一つの溶媒の蒸気圧より低い圧力PLに減圧した後、気密容器内に、圧力PLより高い蒸気圧を有する少なくとも一つの物質を含む非水液体を導入して、該非水液体の気化により気密容器内の圧力を電解液に含まれる総ての溶媒の各々の蒸気圧以上の圧力PHにした後、外装体内に電解液を供給することを特徴とする。
[電極体の製造]
集電体上に正極活物質を含む正極活物質層を形成し、集電体上に負極活物質を含む負極活物質層を形成し、正極活物質層と負極活物質層をセパレータを介して対向して配置し、更にこれらを積層、捲回、又は九十九折等をして電極体を形成する。
正極活物質層に用いる正極活物質としては、特に制限されるものではなく、いずれのものであってもよい。正極活物質として、リチウム二次電池の場合、例えば、層状構造のマンガン酸リチウム(LiMnO2)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、スピネル構造を有するマンガン酸リチウムLiMn24、これらの遷移金属の一部を他の金属で置換したもの、LiFePO4、LiMnPO4等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
負極活物質層に用いる負極活物質としては、特に制限されるものではなく、いずれのものであってもよい。負極活物質として、リチウム二次電池の場合、リチウムを吸蔵、放出できる材料であり、例えば、リチウム金属、リチウム合金、炭素材料やケイ素、スズ、酸化ケイ素、酸化スズ等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
集電体としては、負極活物質層を支持し、外部端子との導通を可能とする導電性を有するものを用いることができる。その材質としては、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、又は、これらの合金等を挙げることができ、その形状としては、箔、平板状、メッシュ状を挙げることができる。
集電体上に正極活物質層、負極活物質層を形成するには、活物質とこれらを結着する結着剤とを含む活物質層用材料を用いて、ドクターブレード法、ダイコーター法等の塗工法、CVD法、スパッタリング法等によることができる。また、予め活物質層を形成した後に、蒸着、スパッタ等の方法で金属薄膜を形成して、集電体を形成する方法によることもできる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド等を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
このように活物質を含む活物質層をそれぞれ集電体に形成して正極及び負極を形成した後、適宜切断し、セパレータを介して対向配置して積層し、又は捲回し、或いは九十九折にして押圧し、電極体を形成する。電極体の形態として、円筒型、扁平捲回角型、積層角型、コイン型、扁平捲回ラミネート型、又は積層ラミネート型等を挙げることができる。
また、セパレータとしては、正極活物質層及び負極活物質層の導通を防止し、荷電体の透過を阻害せず、電解液に対して耐久性を有するものであれば、いずれも用いることができる。具体的な材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン等を採用することができる。これらは、多孔質フィルム、織物、不織布等として用いることができる。
[電解液の供給]
外装体内への電解液を供給する。
ここで使用する電解液は、正極活物質層と負極活物質層に浸透するものであり、非水系の有機溶媒に、電解質を溶解したものである。
上記電解液の溶媒は、電池の動作電位において安定であり、電池の使用環境において、電極を漬浸できるように低粘度であることが好ましい。具体的には、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類;プロピレンカーボネート誘導体;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;などの非プロトン性有機溶媒を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中、EC、PC、BC、VC、DMC、DEC、MEC、DPC等の環状又は鎖状炭酸エステルが好ましい。上記溶媒は、更に、フッ素化エーテル化合物を含んでいてもよい。
電解液に含まれる電解質としては、リチウム塩が好ましい。リチウム塩としては、具体的に、LiPF6、LiAsF6、LiAlCl4、LiClO4、LiBF4、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC49SO3、Li(CF3SO23、LiN(CF3SO22等を挙げることができる。
電解液中の電解質の濃度としては、0.01mol/L以上、3mol/L以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5mol/L以上、1.5mol/L以下である。電解質濃度がこの範囲であると、安全性の向上を図ることができ、信頼性が高く、環境負荷の軽減に寄与する電池を得ることができる。
外装体内への電解液の供給は、図1に示すように、以下の工程によることができる。
工程1
まず、上記電極体を収納した外装体を気密容器に収容する。外装体としては、上記電極体と電解液を安定して保持可能な強度を有し、これらの物質に対して電気化学的に安定で、気密性を有するものを用いることが好ましい。具体的には、例えば、ステンレス、ニッケルメッキを施した鉄、アルミニウム、アルミニウムフィルムと樹脂層を積層して形成されたラミネートフィルム等を用いることができ、ラミネートフィルムに用いる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。これらは、1層又は2層以上の構造体であってもよい。
電極体を設置した外装体を、その内部が気密容器の空間と一体となるように、開口を気密容器の空間内に配置させて、気密容器に収容する。このように外装体と気密容器内の空間を一体化することにより、外装体内の圧力を気密容器内の圧力と同等にすることができる。気密容器は、耐圧性を有するものであれば、いずれの形状、材質であってもよい。
工程2
次いで、気密容器内を、真空ポンプ等を用いて減圧し、電解液に含まれる少なくとも一つの溶媒の蒸気圧より低い圧力PLまで減圧する。気密容器内を、電解液に含まれる少なくとも一つの溶媒の蒸気圧より低い圧力PLまで減圧することにより、電解液を活物質層へ供給する工程において、電解液の活物質層への浸透を効率よく行うことができる。圧力PLは真空に近い程、電極体内の空気の残留量を減少させることができることから、好ましい。
工程3
その後、圧力PLより高い蒸気圧を有する物質を少なくとも一つ含む非水液体を導入する。気密容器内の温度条件において圧力PLより蒸気圧が高い物質を含む非水液体を導入することにより、気密容器内に導入された非水液体が気化し、気密容器内の圧力を上昇させることができる。
非水液体としては、気密容器内において、その温度条件で減圧による圧力PLより高い蒸気圧を有する物質を含めばよいが、係る物質としては、高い蒸気圧を有するもの程、気密容器内で気化が容易であることから好ましい。また、非水液体に含まれる総ての物質が、圧力PLより高い蒸気圧を有する物質であると、非水液体に含まれる総ての物質が気化し、気密容器内に固体物質が残留することがなく、好ましい。
また、気化した気体が後工程で供給される電解液に接触することから、電解液に用いられる溶媒を用いることが好ましい。後工程において、電解液に接触した非水液体の気体は電解液に溶解され、電極体への電解液の浸透を短時間で行うことができる。また、気体が電解液に溶解されても、液化したその量は微量であり、電解液の組成を異ならせて、不都合が生じるには至らない。非水溶液として、具体的には、環状炭酸エステルのPC、鎖状炭酸エステルのDEC、EMC、DMC等、カルボン酸エステルやエーテル系の溶媒等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
電解液の溶媒に対して、使用する非水液体の好適な組み合わせとして、非水液体が電解液に含まれる溶媒の蒸気圧以上の蒸気圧を有することが好ましく、例えば、電解液にDECを用いる場合、非水液体としてDEC単体の他、DMC、EMCを含むことも好ましい。
尚、常温で固体のもの、例えば、環状炭酸エステルのEC(20℃の蒸気圧が1hPa未満)は単独で非水液体に使用することはできない。
このような非水液体として、電解液に含まれる溶媒の一つ又は、その総て含む溶媒をそのまま用いることもできる。上記工程2における気密容器の減圧による圧力PLを、電解液に含まれる少なくとも一つの溶媒の気密容器の温度条件における蒸気圧より低圧にすれば、工程3において、気密容器内の圧力PLより高い蒸気圧を有する溶媒が気化し、気密容器内の圧力を上昇させることができる。
工程4
気密容器内の圧力が、非水液体の気化により電解液に含まれる総ての溶媒の各々の蒸気圧以上の圧力PHになったとき、気密容器内への非水液体の導入を停止する。気密容器及び外装体の容量と温度から、予め、非水液体の供給量を算出し、非水液体の所定量を供給することもできる。
工程5
その後、外装体内へ電解液を供給する。外装体へ供給された電解液は、外装体内の圧力が電解液に含まれる総ての溶媒の各々の蒸気圧以上であることから、電解液の溶媒の急激な気化が抑制され、電解液の飛散を抑制することができる。また、電解液の組成の変動を抑制し、外装体や気密容器等の装置の汚染を抑制することができる。
工程6
その後、気密容器内の減圧下で外装体の開口を封止し、気密容器内に空気等の気体を導入し大気圧にして外装体を取り出してもよい。また、気密容器内に外部から空気等の気体を導入して大気圧にした後、外装体を取り出し、注液工程とは別の気密容器に移して再度減圧して封止してもよい。
上記電池の製造方法により得られる電池の一例として、図2に示す積層ラミネート型二次電池を挙げることができる。この積層ラミネート型二次電池は、銅箔等の負極集電体2と負極活物質層1とが積層された負極3と、アルミニウム箔等の正極集電体5と正極活物質層4が積層された正極6とが、これらの接触を回避するポリプロピレン微多孔質膜等のセパレータ7を介して対向配置され、これらがラミネートフィルム外装体8内に収納されている。ラミネートフィルム外装体8の内部には電解液が充填され、負極集電体2に接続された負極リードタブ9及び正極集電体5に接続された正極リードタブ10がそれぞれラミネートフィルム外装体8の外部へ引き出され、電極端子とされる。
[電池の製造装置]
本発明の電池の製造装置は、上記電池の製造方法を使用した電池の製造装置である。正極と負極とをセパレータを介して外装体内に設置し、外装体内に電解液を注入する電池の製造装置であって、セパレータを介して正極と負極とを設置した外装体を、その内部が気密容器内空間と一体となるように収容する気密容器と、気密容器内を、電解液に含まれる少なくとも一つの溶媒の蒸気圧より低い圧力PLに減圧する減圧ポンプと、気密容器内の圧力を測定する圧力計と、気密容器内に、圧力PLより高い蒸気圧を有する少なくとも一つの物質を含む非水液体を供給する非水液体用配管と、外装体内に電解液を供給する電解液用配管とを備えたことを特徴とする。
本発明の電池の製造装置の一例として、図3に示すものを挙げることができる。図3に示す電池の製造装置は、気密容器225と、これにバルブ227を介して接続される真空ポンプ226と、気密容器225内の圧力を測定する圧力計228とが備えられる。この圧力計は、気密容器内外の圧力差を測定する圧力計より、気密容器内の絶対圧力を測定するものが、大気圧の影響を受けないことから、好ましい。気密容器225には、電解液配管223が接続され、電解液用ポンプ222により、電解液タンク221に収納される電解液224が電解液配管の出口(吐出口)205から供給されるようになっている。電解液配管の吐出口205は、内部に電極体202を収納し、押さえ冶具204により開口203が気密容器の空間に位置し、内部空間が気密容器の空間と一体とされるように支持されるフィルム外装体(電池ケース)201内部に位置し、供給される電解液が電池ケース内部に吐出されるようになっている。
更に、気密容器225には、非水液体配管213が接続され、非水液体用ポンプ212により、非水液体タンク211に収納される非水液体215が非水液体配管の吐出口から供給されるようになっている。非水液体配管の吐出口には、非水液体受け214が設けられ、非水液体が低沸点を有する物質を含む場合、低沸点物質の急激な気化で非水液体が飛散して気密容器内が汚染されるのを抑制している。
ここで、電池ケース201は、図4の側面図に示すように、熱溶着部502により袋状に形成されたフィルム外装体であることから、図5の斜視図及び図6の側面図に示すように、押さえ冶具204で支持されるが、金属製等の形状が定まったものである場合、必ずしも押さえ冶具で支持する必要はない。
上記製造装置の動作を以下に説明する。電池ケース201を気密容器225の内部に収納し、密閉可能な容器225の内部を真空ポンプ226で減圧する。容器内部の圧力は圧力計228で測定する。電解液に含まれる少なくとも一つの溶媒の蒸気圧よりも低く設定した圧力PLに容器内部の圧力が到達した後、減圧用バルブ227を閉じる。次に、非水液体用タンク211から非水液体用ポンプ212を用いて、非水液体215を非水液体受け214に向けて吐出する。気密容器225に導入された非水液体の気化を促進するために、非水液体受け214の底面または側面に超音波振動子を設けて、非水液体を微細な液滴とし、表面積を増加して気化の促進を図ることもできる。非水液体215の気化により気密容器225内部の圧力が、電解液に含まれる総ての溶媒の各々の蒸気圧以上のPH以上になった時点で、非水液体用ポンプ212を停止して、非水液体214の供給を止める。
次に、電解液用ポンプ222を用いて、電解液224を電池ケース201に供給する。所定量の電解液224を注入した時点で、電解液用ポンプ222を停止する。電解液224を供給している間、気密容器225内部の圧力は、減圧用バルブ227の開閉で調節する。
本発明の製造装置の他の例を、図7の構成図に示す。図7中、図3と共通する符号が示すものは、図3に示すものと同様のものを示している。図7に示す製造装置は、非水液体215を収納する非水液体タンク211を、その底面が気密容器に接続される配管引き出し部317より高位置になるように配置し、非水液体タンク211と配管引き出し部317とを非水液体配管213で接続し、非水液体配管に非水液体用ポンプに替えて非水液体用バルブ316を設け、このバルブの開閉により気密容器内の圧力と非水液体タンク内の圧力差及び重力を利用して非水液体を気密容器に供給するようになっている。非水液体配管213は、非水液体の通過に支障が生じないように内径や材質を選択する。
本発明の製造装置の他の例を、図8の構成図に示す。図8中、図3、図7と共通する符号が示すものは、図3、図7に示すものと同様のものを示している。図8に示す製造装置は、電解液用配管と非水液体用配管とを共有する共有管22が備えられ、共有管に電解液を収納する電解液タンク221又は非水液体を収納する非水液体タンクを接続して使用することができる。共有管にはポンプ21が設けられ、共有管22の出口(吐出口)29が、押さえ冶具に支持される電池ケース201の開口203上、又は液受け401上に位置するように、押さえ冶具及び液受けの移動装置(移動機構)402が設けられ、電解液を電池ケースに供給する際は、吐出口を電池ケース上に移動させ、非水液体を導入する際は、吐出口を液受け401上に移動するようになっている。また、図示はしないが、移動機構402が作動する間、共通管の吐出口を障害にならない位置に退避させる移動手段を設けることもできる。尚、移動機構402に替えて、共通管の吐出口を相対的に移動させる移動手段を設けてもよい。
この製造装置は、非水液体として、電解液の溶媒を用いる場合や、電解液そのものを非水液体として使用する場合は、好適に利用することができる。
上記製造装置を用いて電池を製造するには、圧力計からの圧力情報をもとに、シーケンサを使って、真空排気のバルブや電解液用ポンプ、非水液体用ポンプ非水液体用バルブの動作を制御することで自動化することができる。また、複数の電池ケースを気密容器内に配置し、電解液配管に電池ケース数に対応した吐出口を設けることにより、複数の電池を同時に製造して、効率よい製造を行うこともできる。また、真空ポンプ226と減圧用バルブ227は、複数の系統で構成してもよく、例えば、工程2では短時間で減圧するために大容量の真空ポンプを用い、工程6では小容量の真空ポンプを用い、気密容器の内部圧力を精密に制御することもできる。
以下に、本発明の電池の製造方法これを用いた製造装置を詳細に説明する。
[電極体の作製]
正極活物質としてマンガン酸リチウムLiMn24を用い、導電助剤を混合した。負極活物質には黒鉛を用い導電助剤を混合した。セパレータはポリプロピレン製のものを用いた。矩形に切断した正極、セパレータ、負極を積層して電極体を作製し、正極、負極、それぞれの端部を束ねて、正極端子、負極端子を超音波溶接した。作製した電極体は平面の概寸が縦9cm横18cm、体積は約80cm3であった。
作製した電極体をアルミニウムフィルムと樹脂を積層して形成されたラミネートフィルムで挟持し、三辺の熱溶着部で封止し、図4に示す電極体を収納した電池ケースを作製した。残りの一辺は封止せずに、電解液を注入する開口として残した。この電池ケースの広い両面から、平坦な押さえ冶具204で挟持し、図5に示すように、押さえ冶具で電池ケースを支持した。電池ケース上部の開口203から電池ケースに注入された電解液は、電極体上部の積層端面から、及び電極体と電池ケースの間隙を通って電極体の下側及び横側の積層端面から電極体内部に浸透した。
電解液は、溶媒としてPC/EC/DEC/EMC/DMCの混合物を用い、溶質としてLiPF6を濃度1mol/Lで溶解した。電解液の注液量は25cm3とした。溶媒に用いた各物質の単体での常温における蒸気圧は、EC:1hPa未満、PC:約4hPa、DEC:約11hPa、EMC:約11hPa、DMC:約53hPaである。
[実施例1]
電解液の溶媒にPC/EC/DEC/EMC/DMC=2/2/2/2/2(体積比)を用いた。非水液体は、電解液の溶媒と同じPC/EC/DEC/EMC/DMC=2/2/2/2/2(体積比)とした。工程2における気密容器の減圧による圧力PLを2hPa、工程4における圧力PHを55hPaとした。注液中は、真空ポンプからの配管のバルブの開閉を調節して、気密容器内の圧力を、PH+5hPa、即ち、55hPaから60hPaの間に保持した。
[電解液の注液状態の評価]
注液中の電解液の飛散の有無と、注液後に圧力PHの減圧下で電池ケースの開口を熱溶着した電池を30分平置きで保管した後、分解して、電解液の正極活物質層及び負極活物質層への浸透状態で判定した。注液中に電解液の飛散が発生した場合は注液不良と判定し、電池の分解観察は行わなかった。
浸透電極の表面にのみ電解液が存在して内部まで電解液が浸透していない領域は、乾燥空気中で分解したときの電解液の乾燥が早い。今回の検討では電極板の中央付近に、長方形の電極板外形を反映した横長形状の、周囲よりも乾燥が早い領域が観察された。このことから、浸み込みについては電極平面の中央の乾燥時間が周囲と変わらないものを良とし、乾燥時間が短いものを不良とした。
[実施例2−6、比較例1−6]
表1に示す電解液の溶媒、非水液体を用い、表2に示すPL、PHとしたこと以外は、実施例1と同様に電池を作製し、電解液の注液状態の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2013164915
Figure 2013164915
実施例1はPLが低く、PHがDMCの蒸気圧よりも高いので、良好な注液が得られた。実施例2から実施例7についても、PLが低く、PHが電解液に含まれる溶媒の蒸気圧よりも高いので、良好な注液が得られた。一方、比較例1はPHがDMCの蒸気圧よりも低いので、注液時にDMCの気化が生じて電解液が飛散した。また、比較例2は、PHがDECとEMCの蒸気圧よりも低いため、注液時に電解液が飛散した。比較例3から比較例7では、PHがDECとEMCの蒸気圧よりも高いため、注液時の電解液の飛散はないが、PLが20hPaと高いので、電池ケース内に空気が残存しているため、電極に電解液が未浸透の領域が残っていた。
本発明は、電源を必要とするあらゆる産業分野、並びに電気的エネルギーの輸送、貯蔵および供給に関する産業分野にて利用することができる。具体的には、携帯電話、ノートパソコン等のモバイル機器の電源、車両のモーター駆動用電源等に利用することができる。
1 負極活物質層
2 負極集電体
3 負極
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 正極
7 セパレータ
8 ラミネートフィルム外装体
9 負極リードタブ
10 正極リードタブ

Claims (6)

  1. 正極と負極とをセパレータを介して外装体内に設置し、外装体内に電解液を注入する電池の製造方法であって、
    セパレータを介して正極と負極とを設置した外装体を、その内部が気密容器内空間と一体となるように気密容器に収容し、
    気密容器内を、電解液に含まれる少なくとも一つの溶媒の蒸気圧より低い圧力PLに減圧した後、
    気密容器内に、圧力PLより高い蒸気圧を有する少なくとも一つの物質を含む非水液体を導入して、該非水液体の気化により気密容器内の圧力を電解液に含まれる総ての溶媒の各々の蒸気圧以上の圧力PHにした後、
    外装体内に電解液を供給することを特徴とする電池の製造方法。
  2. 非水液体に含まれる圧力PLより高い蒸気圧を有する物質が、電解液に含まれることを特徴とする請求項1に記載の電池の製造方法。
  3. 非水液体に含まれる総ての物質が、圧力PLより高い蒸気圧を有する物質であることを特徴とする請求項1又は2記載の電池の製造方法。
  4. 正極と負極とをセパレータを介して外装体内に設置し、外装体内に電解液を注入する電池の製造装置であって、
    セパレータを介して正極と負極とを設置した外装体を、その内部が気密容器内空間と一体となるように収容する気密容器と、
    気密容器内を、電解液に含まれる少なくとも一つの溶媒の蒸気圧より低い圧力PLに減圧する減圧ポンプと、気密容器内の圧力を測定する圧力計と、
    気密容器内に、圧力PLより高い蒸気圧を有する少なくとも一つの物質を含む非水液体を供給する非水液体用配管と、
    外装体内に電解液を供給する電解液用配管とを備えたことを特徴とする電池の製造装置。
  5. 非水液体用配管と電解液用配管とを共有する共有管を備えたことを特徴とする請求項4に記載の電池の製造装置。
  6. 共有管と、外装体の開口との位置を、相対的に移動させる移動装置を備えたことを特徴とする請求項5記載の電池の製造装置。
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