JP2013163654A - オキセタン環を有するイソシアヌレート化合物 - Google Patents

オキセタン環を有するイソシアヌレート化合物 Download PDF

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琢磨 武田
Takeshi Kumano
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Abstract

【課題】熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の原料として用途が期待される新規なイソシアヌレート化合物の提供。
【解決手段】下記の化学式で示されるオキセタン環を有するイソシアヌレート化合物。
Figure 2013163654

(式中、Rは、メチル基またはエチル基を表わし、Xは、メチル基、アリル基またはオキセタニルメチル基を表わし、Yは、メチル基、アリル基またはオキセタニルメチル基を表わす。)
【選択図】なし

Description

本発明は、オキセタン環を有する新規なイソシアヌレート化合物に関するものである。
イソシアヌレート化合物を熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の原料として用いた場合には、同化合物が有するリジッドなトリアジン骨格が、重合体の分子中に取り込まれることにより、樹脂の機械的強度、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性、耐候性(耐光性)、難燃性、電気的特性等を改善することができる。そのため、目的や用途に応じて数多くの種類のイソシアヌレート化合物が開発・検討され、また実用に供されている。
一方、オキセタン環を有する化合物(オキセタン化合物)が、近年注目を集めている。オキセタン化合物は、飽和の4員環であって酸素原子を1つ含む環状エーテル構造を有しており、同様な3員環であるエポキシ化合物に比べて、開環重合性に優れている。
本発明に類似する物質として、例えば特許文献1には、化学式(III)で示されるオキセタン化合物が開示されている。
Figure 2013163654
特開2001−163882号公報
本発明は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の原料として用途が期待される新規なイソシアヌレート化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、化学式(I)または化学式(II)で示されるオキセタン環を有するイソシアヌレート化合物を合成し得ることを認め、本発明を完成するに至ったものである。
Figure 2013163654
Figure 2013163654
本発明のオキセタン環を有するイソシアヌレート化合物を、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の原料として用いた場合には、同化合物の有するリジッドなトリアジン骨格が、重合体の分子中に取り込まれることにより、樹脂の機械的強度、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性、耐候性(耐光性)、難燃性、電気的特性等の改善効果が期待される。
また、エポキシ化合物(樹脂)やシリコン化合物(樹脂)による改質や、それらとの併用により、前記の改善効果を高めることも期待される。
例えば、特開2002−341101号公報には(引用により本明細書に含む)、「(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、および(D)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する化合物、を必須成分として含有することを特徴とする光学材料用組成物」が記載されている(請求項1)。
そして、(A)成分として、トリアリルイソシアヌレートが例示され(段落0034)、(D)成分として、モノアリルジベンジルイソシアヌレートやモノアリルジグリシジルイソシアヌレートが例示されており(段落0089)、これらのイソシアヌレート化合物の代わりに、またはこれらと併用して、本発明のオキセタン環と共にアリル基を有するイソシアヌレート化合物の利用が期待される。
また、この公報には、当該光学材料用組成物に、熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂(エポキシ化合物)として、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートやジアリルモノグリシジルイソシアヌレートを添加し得る点が記載されている(段落0107〜0108)が、これらの代わりに、またはこれらと併用して、本発明のオキセタン環を有するイソシアヌレート化合物の利用が期待される。
本発明のオキセタン環を有するイソシアヌレート化合物およびその重合物は、発光ダイオード、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録媒体用基板、フィルター等の光学部品等の材料、具体的には、半導体素子/集積回路(IC他)、個別半導体(ダイオード、トランジスタ、サーミスタなど)、LED(LEDランプ、チップLED、受光素子、光半導体用レンズなど)、センサー(温度センサー、光センサー、磁気センサー)、受動部品(高周波デバイス、抵抗器、コンデンサなど)、機構部品(コネクター、スイッチ、リレーなど)、自動車部品(回路系、制御系、センサー類、ランプシールなど)、接着剤(光学部品、光学ディスク、ピックアップレンズなど)、光学用フィルムの表面部コーティング剤等に使用される樹脂の原料としての利用が期待される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、前記の化学式(I)または化学式(II)で示されるオキセタン環を有するイソシアヌレート化合物(以下、単にイソシアヌレート化合物と云うことがある)である。
化学式(I)で示されるイソシアヌレート化合物は、
1,3−ジメチル−5−(3−メチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレート、
1,3−ジメチル−5−(3−エチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレート、
1,3−ジアリル−5−(3−メチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレート、
1,3−ジアリル−5−(3−エチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレートおよび
1,3,5−トリス(3−エチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレートを包含する。
化学式(II)で示されるイソシアヌレート化合物は、
1−メチル−3,5−ビス(3−メチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレート、
1−メチル−3,5−ビス(3−エチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレート、
1−アリル−3,5−ビス(3−メチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレートおよび
1−アリル−3,5−ビス(3−エチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレートを包含する。
本発明のイソシアヌレート化合物は、それらの前駆体となるメチルイソシアヌレート化合物、アリルイソシアヌレート化合物またはイソシアヌル酸と、3−ハロメチル−3−メチルオキセタンまたは3−ハロメチル−3−エチルオキセタンとを、適宜の反応溶媒の存在下において、また適宜の反応温度および反応時間にて、反応させることにより合成することができる。
なお、この反応に先立って、予め塩基(塩基性物質)により、前駆体が有するアミノ基を脱プロトン化しておくことが好ましい。
前記の3−ハロメチル−3−メチルオキセタンと3−ハロメチル−3−エチルオキセタンとしては、何れも、メチル基に置換したハロゲン原子が塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であるオキセタンであればよいが、反応性が優れている点において、各々同ハロゲン原子がヨウ素原子である3−ヨードメチル−3−メチルオキセタンと3−エチル−3−ヨードメチルオキセタンを好ましく使用することができる。
前記の塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウムが挙げられるが、水素化ナトリウムを好ましく使用することができる。
前記の反応溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒や、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が挙げられる。
また、反応温度および反応時間は、使用する原料、反応溶媒や反応スケール等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは各々0℃〜室温および5〜24時間である。
以下、実施例に示した合成試験により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、合成試験において使用した原料のイソシアヌレート化合物は、以下のとおりである。
・1,3−ジアリルイソシアヌレート(実施例1)
四国化成工業製の製品を使用した。
・イソシアヌル酸(実施例2)
四国化成工業製の製品を使用した。
・1−メチルイソシアヌレート(実施例3)
「J.Am.Chem.Soc.,
75, 3617(1953).」に記載の方法に従って合成した。
・1−アリルイソシアヌレート(実施例4)
四国化成工業製の製品を使用した。
また、他の主原料は以下のとおりである。
・3−ヨードメチル−3−メチルオキセタン
3−メチル−3−オキセタンメタノールを原料として、「Tetrahedron, 58(35), 7049(2002).」に記載の方法に準拠して合成した。
3−メチル−3−オキセタンメタノールについては、和光純薬工業製の試薬を使用した。
・3−エチル−3−ヨードメチルオキセタン
3−エチル−3−オキセタンメタノールを原料として、「Tetrahedron, 58(35), 7049(2002).」に記載の方法に準拠して合成した。
3−エチル−3−オキセタンメタノールについては、東京化成工業製の試薬を使用した。
[実施例1]
<1,3−ジアリル−5−(3−メチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレートの合成>
50mLフラスコに、1,3−ジアリルイソシアヌレート0.42g(2.0mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド2mLを投入して反応液を調製した。
この反応液を氷冷し、水素化ナトリウム(60wt%)0.09g(2.2mmol)を添加して、1時間攪拌した。
次いで、この反応液に、3−ヨードメチル−3−メチルオキセタン0.64g(3.0mmol)を添加し、室温まで昇温して24時間攪拌した。
この反応液を再び氷冷して水を10mL添加し、クロロホルム20mLと混合・振盪し静置した後、有機層(以下、抽出液と云う)を分離した。このクロロホルム抽出操作を更に2回行い、これらの抽出液を混合して、硫酸ナトリウムで乾燥した。
続いて、揮発分を溜去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/3、v/v)による精製操作により、無色液体0.42g(収率71%)を得た。
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR(DMSO) δ:5.88-5.78(m,2H), 5.16(dd,4H),
4.52(d,2H), 4.36(d,4H), 4.03(d,2H), 3.94(s,2H), 1.26(s,3H).

また、この液体のIRスペクトルデータは、図1に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(IV)で示される標題のイソシアヌレート化合物であるものと同定した。
Figure 2013163654
[実施例2]
<1,3,5−トリス(3−エチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレートの合成>
50mLフラスコに、イソシアヌル酸0.13g(1.0mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド2mLを投入して反応液を調製した。
この反応液を氷冷し、水素化ナトリウム(60wt%)0.13g(3.3mmol)を添加して、1時間攪拌した。
次いで、この反応液に、3−エチル−3−ヨードメチルオキセタン1.02g(4.5mmol)を添加し、室温まで昇温して24時間攪拌した。
この反応液を再び氷冷して水を10mL添加し、クロロホルム20mLと混合・振盪し静置した後、有機層(以下、抽出液と云う)を分離した。このクロロホルム抽出操作を更に2回行い、これらの抽出液を混合して、硫酸ナトリウムで乾燥した。
続いて、揮発分を溜去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/1、v/v)による精製操作により、無色液体0.18g(収率43%)を得た。
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR(DMSO) δ:4.65(d,6H), 4.33(d,6H), 4.00(s,6H),
1.32(t,9H), 0.92(t,9H).

また、この液体のIRスペクトルデータは、図2に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた液体は、化学式(V)で示される標題のイソシアヌレート化合物であるものと同定した。
Figure 2013163654
[実施例3]
<1−メチル−3,5−ビス(3−メチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレートの合成>
50mLフラスコに、1−メチルイソシアヌレート0.33g(2.0mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド8mLを投入して反応液を調製した。
この反応液を氷冷し、水素化ナトリウム(60wt%)0.18g(4.4mmol)を添加して、1時間攪拌した。
次いで、この反応液に、3−ヨードメチル−3−メチルオキセタン1.27g(6.0mmol)を添加し、室温まで昇温して15時間攪拌した。
この反応液を再び氷冷して水を20mL添加し、クロロホルム20mLと混合・振盪し静置した後、有機層(以下、抽出液と云う)を分離した。このクロロホルム抽出操作を更に2回行い、これらの抽出液を混合して、硫酸ナトリウムで乾燥した。
続いて、揮発分を溜去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/1、v/v)による精製操作により、無色固体0.60g(収率97%)を得た。
得られた固体の融点およびH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・融点:93.5-102.3℃
1H-NMR(DMSO) δ:4.67(d,4H), 4.39(d,4H),
4.07(s,4H), 3.41(s,3H), 1.37(s,6H).

また、この固体のIRスペクトルデータは、図3に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた固体は、化学式(VI)で示される標題のイソシアヌレート化合物であるものと同定した。
Figure 2013163654
[実施例4]
<1−アリル−3,5−ビス(3−エチルオキセタン−3−イルメチル)イソシアヌレートの合成>
50mLフラスコに、1−アリルイソシアヌレート0.17g(1.0mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド4mLを投入して反応液を調製した。
この反応液を氷冷し、水素化ナトリウム(60wt%)0.09g(2.2mmol)を添加して、1時間攪拌した。
次いで、この反応液に、3−エチル−3−ヨードメチルオキセタン0.68g(3.0mmol)を添加し、室温まで昇温して24時間攪拌した。
この反応液を再び氷冷して水を10mL添加し、クロロホルム20mLと混合・振盪し静置した後、有機層(以下、抽出液と云う)を分離した。このクロロホルム抽出操作を更に2回行い、これらの抽出液を混合して、硫酸ナトリウムで乾燥した。
続いて、揮発分を溜去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/1、v/v)による精製操作により、無色液体0.22g(収率60%)を得た。
得られた液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR(DMSO) δ:5.89-5.79(m,1H), 5.15(dd,2H), 4.46(d,4H),
4.38(d,2H), 4.12(d,4H), 3.90(s,4H), 1.67(q,4H), 0.94(t,6H).

また、この液体のIRスペクトルデータは、図4に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた生成物は、化学式(VII)で示される標題のイソシアヌレート化合物であるものと同定した。
Figure 2013163654
実施例1で得られた液体のIRスペクトルチャートである。 実施例2で得られた液体のIRスペクトルチャートである。 実施例3で得られた固体のIRスペクトルチャートである。 実施例4で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
本発明によれば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の原料としての用途が期待されるイソシアヌレート化合物を提供することができる。

Claims (1)

  1. 化学式(I)または化学式(II)で示されるオキセタン環を有するイソシアヌレート化合物。
    Figure 2013163654
    Figure 2013163654
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