(第1実施形態)
図1に、本実施形態におけるハイブリッド車両に搭載されるシステム全体の概略構成を示す。本実施形態のハイブリッド車両は、エンジン10と、モータジェネレータ(MG)11とを備えている。
エンジン10は、車両走行用の駆動力とモータジェネレータ11の発電用の駆動力を出力する。エンジン10は、ガソリンエンジンもしくはディーゼルエンジンである。
モータジェネレータ11は、車両走行用モータや発電機として機能するものであり、電力の供給を受けて回転駆動して車両走行用の駆動力を出力したり、エンジン10等を動力源として発電してバッテリ41を充電したりすることが可能である。モータジェネレータ11は、例えば、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型のものである。
モータジェネレータ11は、MG用インバータ42により作り出された三相交流が印加されることにより制御される。MG用インバータ42は、電源回路40に接続されており、電源回路40にはバッテリ41が接続されている。バッテリ41は、モータジェネレータ11等から電力供給されたり(充電)、モータジェネレータ11等に電力供給したりする(放電)。
エンジン10とモータジェネレータ11とは同軸結合されており、モータジェネレータ11は、無段階の変速比を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切換える無段変速機12と連結されている。無段変速機12の出力軸は、ディファレンシャル13、車軸14を介して、車輪15に連結されている。なお、エンジン10とモータジェネレータ11の間にクラッチが介在されていても良い。
本実施形態のハイブリッド車両は、走行モードとして、「モータ走行モード」と、「エンジン走行モード」と、「モータアシスト走行モード」と、「走行発電モード」等を有する。「モータ走行モード」は、モータジェネレータの動力のみで走行する。「エンジン走行モード」は、エンジンの動力のみで走行する。「モータアシスト走行モード」は、エンジンの動力をモータジェネレータによりアシストしながら走行する。「走行発電モード」は、エンジンの動力の一部をモータジェネレータの発電動力としながら走行する。
本実施形態のハイブリッド車両は、暖房装置としてヒータコア20とヒートポンプシステム30とを備えている。
ヒータコア20は、エンジン冷却水から熱を取り出して暖房熱を車室内に供給する暖房装置であり、車両用空調装置の空調ケース23内に収容され、エンジン冷却水と車室内に向かう送風空気とを熱交換する熱交換器である。空調ケース23内には車室内に向けて空気を送風する送風機24が収容されている。
エンジン10のシリンダブロックやシリンダヘッドの内部にはウォータジャケットが形成されており、このウォータジャケットに冷却水が循環供給されることで、エンジン10の冷却が行われる。ウォータジャケットには冷却水配管等からなる冷却水循環経路21が接続されており、その循環経路21には、冷却水を循環させるための電動ポンプ22が設けられている。そして、電動ポンプ22の吐出量が変更されることにより、循環経路21を循環する冷却水の流量が調整される。
循環経路21は、エンジン10の出口側においてヒータコア20(熱交換部)に向けて延び、ヒータコア20を経由して再びエンジン10に戻るようにして設けられている。送風機24から送風された空気は、ヒータコア20を通過することで、冷却水との熱交換により加熱されて温風となり、温風が吹出口から車室内に吹き出される。このような構成において、電動ポンプ22の吐出量及び送風機24の送風量が制御されることにより、冷却水からヒータコア20を介して車室内へ供給される熱量が制御される。
ヒートポンプシステム30は、電力を用いて暖房熱を車室内に供給する電気暖房装置である。このヒートポンプシステム30は、電動コンプレッサ31と、コンプレッサ用インバータ32と、室内熱交換器37(熱交換部)と、室外熱交換器34と、膨張弁36と、アキュムレータ33と、これらを接続する冷媒配管等からなる冷媒循環経路39と、ヒートポンプ制御装置38とを備えている。
電動コンプレッサ31は、冷媒を圧縮して加熱して室内熱交換器37に向けて吐出する。電動コンプレッサ31は、コンプレッサ用インバータ32から供給される電力により駆動する。コンプレッサ用インバータ32はヒートポンプ制御装置38によって制御される。
室内熱交換器37は、車両用空調装置の空調ケース23内に配置され、電動コンプレッサ31吐出後の冷媒と車室内に向かう送風空気とを熱交換する熱交換器である。送風機24から送風された空気は、室内熱交換器37を通過することで、冷媒との熱交換により加熱されて温風となり、温風が吹出口から車室内に吹き出される。このとき、冷媒は空気との熱交換により冷却される。そして、室内熱交換器37通過後の冷媒は膨張弁36により減圧され、室外熱交換器34に流入する。
室外熱交換器34は、車室外に配置され、冷媒と外気とを熱交換する熱交換器である。室外熱交換器34には、ファン35によって外気が送風される。減圧後の冷媒は、室外熱交換器34で外気との熱交換により加熱される。この加熱された冷媒は、アキュムレータ33を経由して電動コンプレッサ31に流入する。
このような構成において、電動コンプレッサ31の駆動状態が制御されることにより、ヒートポンプシステム30から室内熱交換器37を介して車室内へ供給される熱量が制御される。
本実施形態のハイブリッド車両は、車両制御装置51、エンジン制御装置52、MG(モータジェネレータ)制御装置53および空調制御装置54等の制御手段を備えている。これらの制御装置51〜54は、CPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで各種制御を実施する。
エンジン制御装置52は、各種センサから入力される検出信号に基づいて、エンジン10の運転状態を制御する。各種センサとしては、車両の速度を検出する車速センサ61、エンジン10の回転速度を検出する回転速度センサ62、吸入空気量や吸気管負圧といったエンジン10の負荷を検出するエンジン負荷センサ63、ウォータジャケット内の冷却水の温度を検出する水温センサ64等が挙げられる。エンジン制御装置52は、具体的には、燃料噴射弁による燃料噴射制御、点火装置による点火時期制御、吸気側及び排気側のバルブ駆動機構によるバルブタイミング制御、スロットルバルブによる吸気量制御を実施する。
MG制御装置53は、車両制御装置51の指令に基づいて、モータジェネレータ11の駆動状態を制御する。また、MG制御装置53は、例えば、電流センサで計測したバッテリ41の出力電流の計測値と予め定められたバッテリの最大容量とに基づいてバッテリ充電状態(SOC:State Of Charge)を算出する。具体的には、電流センサの計測値を積算し、バッテリの最大容量に対する比としてSOCを計算する。そして、算出したSOCを車両制御装置51に出力する。したがって、本実施形態では、このMG制御装置53がバッテリ充電状態を検出するバッテリ充電状態検出手段に相当する。
空調制御装置54は、各種センサや各種スイッチから入力される信号に基づいて、電動ポンプ22、送風機24およびヒートポンプ制御装置38等を制御する。各種センサや各種スイッチとしては、エアコンのオン/オフが切り替え操作されるA/Cスイッチ71、運転者が車室内温度の目標値(目標温度)を設定するための温度設定スイッチ72、車室内温度を検出する車室内温度センサ73、外気温を検出する外気温センサ74、ヒータコア20または室内熱交換器37からエアコン吹き出し口を介して車室内へ送られる空調風の温度(吹出口温度)を検出する吹出口温度センサ75等が挙げられる。
車両制御装置51は、車両の走行およびエネルギーを管理するために、エンジン制御装置52へ目標エンジントルク指令と目標エンジン回転数指令を出力し、MG制御装置53へ目標MGトルク指令と目標MG回転数指令を出力し、図示しない変速機制御装置へ変速段指令を出力し、図示しないブレーキ制御装置へ回生ブレーキとの協調制御指令を出力し、空調制御装置54へ電気暖房装置30の供給暖房熱量とヒータコア20の供給暖房熱量を指示する。
車両制御装置51の制御処理は走行制御処理とエネルギー管理処理に区分される。このうち走行制御処理では、運転者のアクセルペダル操作や車両各コンポーネントやシステムの状態、エネルギー管理処理からの指令に応じて、運転者の加減速要求を満たしつつエンジン10が高効率な動作点で運転されるように走行に関わる指令である目標エンジントルク指令、目標エンジン回転数指令、目標MGトルク指令、目標MG回転数指令、変速段指令、回生ブレーキとの協調制御指令を算出する。一方、エネルギー管理処理では、電力を貯めるバッテリ41での電力出し入れと熱を貯める冷却水での熱出し入れを考慮して、両者のストレージ状態が適切になるよう、電気暖房装置30の供給暖房熱量とヒータコア20の供給暖房熱量を決定し、空調制御装置54へ指示するとともに、走行制御処理への指示も行うことで、エンジン10の運転状態およびモータジェネレータ11の駆動状態(発電量)を制御する。
車両制御装置51は、空調制御装置54から暖房の作動(ON)、停止(OFF)に関する情報が入力される。
次に、エネルギー管理処理の内容について説明する。エネルギー管理処理はバッテリ41と冷却水での電力と熱のストレージ状態を適切になるよう管理するものである。これを実現するに当たりバッテリではSOC、冷却水では冷却水温度を管理する。
まず、目標SOC範囲と目標冷却水温度範囲とが予め設定されている(初期設定)。すなわち、目標SOCと目標冷却水温度それぞれの上限値、下限値が予め設定されている。
ただし、暖房ON時とOFF時では、目標SOC範囲が異なるように設定される。この目標SOC範囲の設定処理を説明する。図2Aに目標SOC範囲の設定処理のフローチャートを示す。また、図2B(a)に暖房OFF時に用いる目標SOC範囲の決定用マップを示し、図2B(b)に暖房ON時に用いる目標SOC範囲の決定用マップを示す。
なお、図2A中のステップS1が暖房作動判定手段に相当し、ステップS2、S3がバッテリ41の目標充電状態設定手段に相当する。このように、本実施形態の車両制御装置51は、これらの機能実現手段を備えている。
図2Aに示すように、ステップS1では、暖房が作動設定されているか否かが判定される。暖房が作動設定されていない(暖房OFF)と判定した場合、ステップS3に進み、冷却水温度に関係なく共通の目標SOCの上限値、下限値に設定される。例えば、図2B(a)に示すように、暖房OFF時では、冷却水温度によらず目標SOCの上限値、下限値は、それぞれ、70%、50%に設定される。このように、目標SOCの上限値は、100%よりも低い所定値とされる。これは、SOCは直接計測されるものではなく、算出されるものなので誤差が生じるため、この誤差を考慮して上限値が設定されるからである。また、SOCが100%でなくても100%に近い高い状態だと、バッテリ41の劣化が進み易くなるからである。
一方、ステップS1で、暖房が作動設定されている(暖房ON)と判定した場合、ステップS2に進み、冷却水温度に応じて異なる目標SOCの上限値、下限値が設定される。例えば、図2B(b)に示すように、暖房ON時では、冷却水温度が所定温度(例えば60℃)よりも低く、ヒータコア20から十分な熱量が取れないような比較的低い温度範囲のときでは、ヒートポンプシステム30、すなわち、電気暖房装置30での消費電力分を確保するため、冷却水温度が所定温度(例えば60℃)よりも高いときに設定される目標SOCの上限値および下限値よりも高くなるように、目標SOCの上限値および下限値が設定される。
具体的には、冷却水温度が第1の所定温度以上、例えば、60℃以上の範囲では暖房OFF時と同じ上限値、下限値、例えば、70%、50%に設定される。冷却水温度が第1の所定温度よりも低い第2の所定温度以下、例えば、50℃以下の範囲では暖房OFF時よりも高い上限値、下限値、例えば、75%、55%に設定される。冷却水温度が第1、第2の所定温度の範囲では、冷却水温度が第1の所定温度のときの上限値、下限値に対して、冷却水温度が低くなるにつれて徐々に増加するように、上限値、下限値が設定される。
このように、暖房ON時の目標SOCの上限値は、100%に近づきすぎない範囲であれば、暖房OFF時の目標SOCの上限値よりも多少高く設定することは可能である。
一方、目標冷却水温度は、上限値は暖房ON/OFFによらず一定の温度、例えば100℃に設定されるが、下限値は暖房ON時とOFF時で異なる温度に設定される。暖房OFF時にはエンジン暖機終了と判定される温度、例えば40℃に設定されるのに対し、暖房ON時にはヒータコア20から暖房熱供給可能と判断される温度、例えば、35〜50℃のいずれかに予め設定される(初期設定)。
この温度は、電気暖房装置30の暖房能力に依存する。すなわち、供給できる暖房熱量が小さい電気暖房装置30の場合、大きな暖房熱量をヒータコア20から供給する必要があり、そのためには冷却水温度を高く保つ必要があるため、例えば50℃に設定される。一方、供給できる暖房熱量が大きい電気暖房装置30の場合、ヒータコア20から供給する熱量は小さくて済むため、エンジン暖機終了段階では既に十分な暖房熱量をヒータコア20から供給できることもあり、このときには暖房ON時であってもOFF時の下限値と同じ温度やそれよりも低い温度、例えば、40℃や35℃に設定される。
次に、空調制御装置54へ指示する電気暖房装置30の供給暖房熱量とヒータコア20の供給暖房熱量の決定処理について説明する。冷却水から取り出した熱により暖房熱を供給するヒータコア20と、バッテリ41からの電力で暖房熱を供給する電気暖房装置30という二種類の暖房手段の熱配分が決定される。このとき、次のように、所定時間後の冷却水温度とSOCとが所定の関係を有するように、ヒータコア20と電気暖房装置30の両者から供給する暖房熱量が決定される。
この決定処理は、暖房ON時であって、冷却水温度が所定温度より低い場合のみ、繰り返し実施される。冷却水温度が所定温度より低い場合とは、ヒータコア20のみでの暖房では暖房熱が不足する場合を意味し、所定温度とは、ヒータコア20のみで必要な暖房熱を十分に取り続けられる温度であり、例えば60℃である。また、この決定処理は、冷却水温度が暖房開始可能温度よりも高い場合に実施される。暖房開始可能温度は、ヒータコア20と電気暖房装置30の併用によって暖房を開始できる冷却水温度であり、上述の通り、電気暖房装置30の暖房能力によって変動する温度である。
なお、この決定処理によって、電気暖房装置30の駆動状態が決定される、すなわち、電気暖房装置30を作動させることが決定される。したがって、この決定処理が、暖房が作動設定されている場合であって、冷却水温度が所定温度よりも低いときに、電気暖房装置30を作動させることを決定する決定手段に相当し、車両制御装置51がこの決定手段を備えていると言える。
まず、目標SOC−冷却水温度関数(以後目標関数という)が予め設定されている。図3に目標関数の一例を示す。この目標関数は、図3に示すように、SOCと冷却水温度の2つの座標軸で張られる座標上に表される。具体的には、この目標関数は、目標SOC範囲の中央値と目標冷却水温度の下限値を通って、予め定められた所定の勾配a1の直線に対して、SOCの上下限値に到達したらSOC一定とするというものである。
このとき用いる目標SOC範囲は、その時点での冷却水温度に対する上限値と下限値の間であり、目標SOC範囲の中央値は、例えば、冷却水温度が45℃のとき65%であり、冷却水温度が55℃のとき62.5%である。このように、その時点での冷却水温度によって、用いる目標SOC範囲およびその中央値は異なる。目標SOC範囲の中央値を通る線とする理由は、SOCがゆとりを持って目標SOC範囲内に位置するようにするためである。
目標冷却水温度の下限値は、上述の通り、車両に搭載される電気暖房装置30の暖房能力によって予め設定されており、例えば40℃である。目標冷却水温度の中央値ではなく下限値を通る線とする理由は、冷却水の温度を上げるためには燃料を消費する上に、温度が上がりすぎると、放熱ロスが生じるため、暖房に必要な最小温度に到達すれば良いからである。
所定の勾配a1とは、暖房OFF時に、走行停止を含む比較的低負荷な運転として予め設定されている走行パターンで走行している際に、後述する第1燃費最適線上で燃料消費量を少なくするようにエンジン動作点を選択した場合の冷却水温度とSOCの関係を座標軸上に表したときの近似直線の勾配であり、実験的に定まるものである。低負荷な運転としている理由は、本発明の制御を必要とする60℃以下の範囲に冷却水が保持される条件を設定するためである。なお、エンジンの軸出力における車両走行用の駆動力と発電用の駆動力の配分によって冷却水温度とSOCの勾配は変化するが、走行パターンを規定している上に暖房をOFFしているため、実験結果から計算される勾配のばらつきは小さな範囲に収まる。例えば、この範囲における平均値を算出するなどにより勾配を算出する。
したがって、所定の勾配a1の直線上のいずれかにSOCと冷却水温度の動作点が位置する場合、第1燃費最適線上のエンジン動作点を選択してエンジン10を作動させれば、エンジンによる発電や冷却水加熱により生じるSOCと冷却水温度の変化は、この所定の勾配a1の直線に沿って変動する。このため、ヒータコアと電気暖房装置の供給暖房熱量を設定する際に、SOCと冷却水温度がこの直線に載るようにすれば、第1燃費最適線上で燃料消費量が少なくなる動作点でエンジンを運転することで、SOCと冷却水温度をこの直線上に維持することができる。
また、現在のSOCと冷却水温度で表される動作点から、いずれ目標関数上に動作点が載るようにヒータコア20と電気暖房装置30の供給暖房熱量を決定する際に用いる予測期間が予め設定されている。これは、何秒後にSOCと冷却水温度の動作点を目標関数上に載せるように制御するかというものであり、40秒〜120秒ぐらいの範囲で設定される。図4に予測期間とSOCとの関係の一例を示す。
例えば、図4に示すように、SOCが70%よりも低い範囲では第1の期間として100秒に設定され、SOCが75%よりも高い範囲では第1の期間よりも短い第2の期間として40秒に設定され、SOCが70%から75%までの範囲では、SOCが高くなるにつれて、100秒から40秒まで徐々に減少するように設定される。
このように、SOCが目標SOCの上限値よりも低い場合、予測期間として、長く設定された第1の期間が用いられ、SOCが目標SOCの上限値よりも高い場合、予測期間として、第1の期間よりも短く設定された第2の期間が用いられる。第1の期間を長く設定するのは、ヒータコア20と電気暖房装置30の供給暖房熱量の配分が激しく変化して、快適性を損なうという問題が生じるのを防止するためである。第2の期間を第1の期間よりも短く設定するのは、SOCが目標SOCより高いと、SOCを早急に下げる必要があるからである。
次に予測総暖房熱量を算出する。これは予測期間中に供給すべき暖房熱量であり、その時点での要求暖房熱量が予測期間中継続する場合の値である。このとき、ヒータコアモデル、電気暖房モデルを用いて、ヒータコア20と電気暖房装置30のそれぞれについての供給暖房熱量を算出する。ヒータコアモデルおよび電気暖房モデルは、入力値から出力値を導き出す関係式であり、実験等によって導き出されるものである。なお、関係式の代わりに、入力値と出力値との間の一定の関係を示すマップを用いても良い。
ヒータコアモデルとしては、例えば、消費暖房熱量と期間を入力すると、その期間終了後の冷却水温度変化量を出力する冷却水温度予測モデルと、冷却水温度変化量と期間を入力するとその期間中に設定すべきヒータコア暖房熱量を出力する冷却水消費熱量予測モデルの二通りを有する。一方、電気暖房装置モデルとしては、消費暖房熱量と期間を入力すると、その期間終了後のバッテリSOC変化量を出力するSOC予測モデルと、SOC変化量と期間を入力するとその期間中に設定すべき電気暖房熱量を出力する電気暖房熱量予測モデルの二通りを有する。
そして、予測期間中の両暖房熱量が一定値に保たれるものとして予測総暖房熱量を実現した場合の組み合わせの中で最も目標関数に近い動作点となるものを選ぶ。すなわち、ヒータコア20のみで全ての熱量を取った場合の冷却水温度を冷却水温度予測モデルで、電気暖房装置30のみで熱量を取った場合のSOCをSOC予測モデルで計算し、両者を結んだ線と目標関数の交点がある場合には、それを選択し、交点がない場合にはそれに最も近い点を目標動作点とする。
ここで、図5、6にSOCおよび冷却水温度の目標動作点の選択方法の具体例を示す。
例えば、図5に示すように、現在の動作点P1を基準として、ヒータコア20で全熱量を取った後の冷却水温度を計算することにより、ヒータコア20で全熱量を取った時の予測期間後の動作点P2を求める。現在の動作点P1を基準として、電気暖房装置30で全熱量を取った後のSOCを計算することにより、電気暖房装置30で全熱量を取った時の予測期間後の動作点P3を求める。そして、動作点P2と動作点P3を結んだ直線と目標関数の交点を選択すべき目標動作点P4とする。この目標動作点P4と現在の動作点P1とにおける冷却水温度、SOCの差分ΔT1、ΔSOC1が、それぞれ、ヒータコア20で供給する暖房熱量にあたる温度変化量、電気暖房装置30で供給する暖房熱量にあたるSOC変化量である。
また、図6に示すように、図5と同様に、ヒータコア20で全熱量を取った時の予測期間後の動作点P2を求め、電気暖房装置30で全熱量を取った時の予測期間後の動作点P3を求める。そして、動作点P2と動作点P3を結んだ直線と目標関数の交点が無いので、目標関数に最も近い動作点P2を目標動作点P4とする。このときの目標動作点P4は、現在動作点P1と算出した動作点P2、P3を結ぶ領域から選択される動作点のうち目標関数に最も近い動作点である。この目標動作点P4と現在の動作点P1とにおける冷却水温度の差分ΔT2が、ヒータコア20で供給する熱量にあたる温度変化量である。なお、ここでの説明では、すべての暖房熱量をヒータコア20で供給する場合を含めて説明したが、電気暖房装置30としてのヒートポンプシステムは、暖機処置が必要であるため、電気暖房装置30の完全停止を避けて、ごく少量の熱量を電気暖房装置30で供給するように補正する。具体的には、図6に示す例のように、ヒータコア20で全熱量を取ると判定された場合に電気暖房装置30に設定する熱量を予め設定しておき、これを用いる。これは、例えば設定可能な最小熱量を用いる。この際、電気暖房装置30に設定する熱量分を全熱量から引いたものをヒータコア20から供給する。
次に、この目標動作点P4と現在の動作点P1とにおける冷却水温度およびSOCの差、例えば、図5のΔT1、ΔSOC1や図6のΔT2を用い、冷却水消費熱量予測モデルと電気暖房熱量予測モデルからヒータコア20および電気暖房装置30からの供給暖房熱量を算出する。
その後、ヒータコア20と電気暖房装置30で実際に取れる熱量で制限する。これは、冷却水温度およびSOCの状態によって、ヒータコア20および電気暖房装置30が実際に供給可能な最大熱量は決まっており、例えば、冷却水温度が比較的低いときに多くの熱量を冷却水から取ってしまうと、吹出風が冷たいと乗員が感じてしまうからである。
ここでは、算出したヒータコア20および電気暖房装置30の供給暖房熱量と、ヒータコア20および電気暖房装置30が実際に供給可能な最大熱量とを比較し、算出した暖房熱量が供給可能熱量を超えているか否かを判定する。
そして、算出した暖房熱量が供給可能熱量を超えていない場合、算出したヒータコア20および電気暖房装置30の暖房熱量をそのまま採用する。
一方、算出した暖房熱量が供給可能熱量を超えている場合、算出した暖房熱量と供給可能熱量との差分を算出する。ヒータコア20と電気暖房装置30の一方において、供給可能熱量に余裕がある場合、算出した差分の熱量を割り付ける。図7に、冷却水温度とヒータコア20の供給可能熱量との関係の一例を示す。例えば、図5に示す目標動作点P4の冷却水温度が34℃のとき、図7に示すように、冷却水温度が34℃のときのヒータコア20の供給可能熱量は3kWであり、算出したヒータコア20の供給暖房熱量が3.5kWだと、0.5kW不足する。この場合、算出した電気暖房装置30の供給暖房熱量が0.5kWであり、電気暖房装置30の供給可能な最大熱量が1kWを超えていれば、電気暖房装置30の供給暖房熱量を1kWとする。
ただし、ヒータコア20と電気暖房装置30の両方の供給可能な最大熱量を合算しても、熱量が不足する場合には、ヒータコア20と電気暖房装置30の両方の供給可能な最大熱量を採用する。
車両制御装置51は、このようにして決定されたヒータコア20と電気暖房装置30の供給暖房熱量を空調制御装置54へ出力する。そして、空調制御装置54は、暖房ON時に、この車両制御装置51からの指令に基づいて、電気暖房装置30を作動させるとともに、ヒータコア20と電気暖房装置30の供給暖房熱量を制御する。具体的には、空調制御装置54は、ヒータコア20の供給暖房熱量については、電動ポンプ22の吐出量及び送風機24の送風量を制御し、電気暖房装置30の供給暖房熱量については、電動コンプレッサ31の駆動状態を制御する。
また、車両制御装置51は、この最終動作点の位置を目標関数のマップ上で判定する。図8にこの判定用マップを示す。最終動作点の位置が、図8に示すどの領域にあるか判定し、この情報を走行制御処理へ送る。
次に、走行制御処理のうち、エネルギー管理処理からの情報により動作する部分について説明する。これは、空調制御装置54の制御のみでSOCと冷却水温度を目標範囲にすることができない、あるいは、エンジン10やモータジェネレータ11の動作を含めた調整を実施すべきと判断される場合の処置である。すなわち、バッテリ41の充電状態が目標充電状態となるとともに、エンジン冷却水の温度が目標温度となるように、エンジン10の運転状態およびモータジェネレータ11の駆動状態(発電量)を制御するものである。
特に空調制御装置54の制御では電力や熱を消費してSOCおよび冷却水温度を低下させることはできるが、上昇させることはできない。このため、これらを上昇させる必要がある場合に作用する。また、SOCや冷却水温度が高すぎる場合に、更なる電力や熱の発生を防止する場合にも作用する。
上述のように走行制御処理は、運転者のアクセルペダル操作や車両各コンポーネントやシステムの状態、エネルギー管理処理からの指令に応じて、目標エンジントルクと目標エンジン回転数の組み合わせであるエンジン動作点を算出する。このとき、エネルギー管理処理からの指令に応じて、すなわち、前述したエネルギー管理処理で実施されたヒータコアモデルや電気暖房モデルによる予測結果を活用し、将来を見越した適切なエンジン動作点設定を実施する。
ここで、この予測結果を活用してエンジン動作点を設定するまでの一連の制御処理の流れについて説明する。図9に、車両制御装置51が実施するエンジン動作点設定制御のフローチャートを示す。なお、この予測結果を活用したエンジン動作点設定制御は、上述の電気暖房装置30の供給暖房熱量とヒータコア20の供給暖房熱量の決定処理が実施される場合に、繰り返し実行される。また、図9中のステップS13が冷却水温度予測手段に相当し、ステップS14がバッテリ充電状態予測手段に相当し、ステップS15が判定手段に相当し、ステップS16がエンジン動作点設定手段に相当する。このように、本実施形態の車両制御装置51は、これらの機能実現手段を備えている。
ステップS11では、水温センサ64から現在の冷却水温度を読み込む。続いて、ステップS12では、MG制御装置53から現在のSOCを読み込む。
続いて、ステップS13では、ヒータコア20の熱消費状態に基づいて、所定時間後の冷却水温度を予測する。続いて、ステップS14では、電気暖房装置30の電力消費状態に基づいて、所定時間後のバッテリ充電状態を予測する。
ここでいう「ヒータコア20の熱消費状態に基づいて」、「電気暖房装置30の電力消費状態に基づいて」とは、本実施形態では、上述の電気暖房装置30とヒータコア20の供給暖房熱量の決定処理の結果に基づくことを意味する。
上述の通り、この供給暖房熱量の決定処理では、現在のSOCおよび冷却水温度の動作点を基準として、電気暖房装置30とヒータコア20を併用した暖房を所定時間実行すると仮定した場合に、目標関数に最も近い動作点に配置されるように、所定時間後のSOCおよび冷却水温度の目標動作点を決定している。そして、所定時間後にSOCおよび冷却水温度が目標動作点に配置されるように、ヒータコア20と電気暖房装置30の供給暖房熱量を決定し、ヒータコア20と電気暖房装置30の駆動状態を制御している。したがって、この目標動作点の位置が予測される所定時間後のSOCおよび冷却水温度である。このため、ステップS13、S14では、目標動作点におけるSOCと冷却水温度を、所定時間後のSOCと冷却水温度として決定する。
続いて、ステップS15では、ステップS13で予測した冷却水温度に基づいて冷却水の熱量の不足や過剰を判定するとともに、ステップS14で予測したSOCに基づいてSOCの不足や過剰を判定する。これは、上述の図8に示す判定用マップを用いての判定のことである。
続いて、ステップS16では、ステップS15の判定結果において、熱量と充電量の少なくとも一方が不足または過剰である場合に、不足または過剰を解消する方向にシフトさせたエンジン動作点を設定する。
図10に、ステップS16で用いる第1、第2燃費最適線および参考としての第3燃費最適線を表したエンジン動作点マップを示す。また、図11に、図10中の第1〜第3燃費最適線を導き出すための式1〜式3を示す。
図10中の第1燃費最適線は、等出力線上で図11の式1を最小化する点の集合である。すなわち、第1燃費最適線は、エンジン10の軸出力が等しいエンジン動作点の中でエンジン10の軸出力に対する燃料消費量が最小となるエンジン動作点の集合(軸出力最適線)である。
ここで、図12に第1燃費最適線を説明するためのエンジン動作点マップを示す。エンジン10は、例えば、図12に示すような燃料消費特性を有するので、同じ出力であっても燃料消費量が異なる。このため、無段変速機12との組合せにより、図12に示すように、等出力線上で燃料消費量が少ない動作点を設定することができる。この等出力線上で燃料消費量が少ない動作点を各出力毎に結んだものが燃費最適線と呼ばれる。
図10中の第3燃費最適線は、等出力線上で図11の式3を最小化する点の集合であり、エンジン10の冷却水加熱熱量(熱出力)に着眼した燃費最適線(冷却水加熱最適線)である。すなわち、第3燃費最適線は、エンジン10の軸出力が等しいエンジン動作点の中でエンジン10の冷却水加熱熱量に対して燃料消費量が最小となるエンジン動作点の集合である。
図10中の第2燃費最適線は、等出力線上で図11の式2を最小化する点の集合であり、エンジン10の軸出力と熱出力に着眼した燃費最適線である。すなわち、第2燃費最適線は、エンジン10の軸出力が等しいエンジン動作点の中でエンジン10の軸出力および冷却水加熱熱量に対して燃料消費量が最小となるエンジン動作点の集合である。
また、第2燃費最適線は、燃料消費率が第3燃費最適線よりも第1燃費最適線に近い線である。図11の式2におけるαは、式1で表される軸出力に関する効率と式3で表される冷却水加熱熱量に関する効率の重みを設定する調整要素である。αが正であれば、その大きさを変えることで式2を最小化する点による最適線の位置は第1燃費最適線と第3燃費最適線の間を移動する。本実施形態では、式2を最小化する点による最適線が冷却水加熱の第3燃費最適線よりも軸出力の第1燃費最適線上の動作点の近くに設定されるようαを定める。この理由は、αが大きいと、すなわち、式2を最小化する点による最適線が第3燃費最適線側に近づくと軸出力の効率低下度合いが非常に大きくなるため、第1燃費最適線上に動作点を設定する制御と比較して、等しい軸出力を設定する場合の燃料消費量が大きく増加し燃費悪化につながるのに加え、エンジン回転数が高まることで、音が大きくなって乗員に不快感を与える問題が生じるので、これらを避けるためである。
ステップS16では、図8に示す判定マップによる判定において、冷却水温度が目標下限値よりも高いと判定され、所定時間後の状態が熱不足でないことが予想される場合、第1燃費最適線が選択される。一方、冷却水温度が目標下限値よりも低いと判定され、所定時間後の状態が熱不足であることが予想される場合、第1燃費最適線よりも熱量が増加する第2燃費最適線が選択される。第2燃費最適線を選択することで、第1燃費最適線を選択する場合よりも、熱出力を大きくでき、早期に熱不足を解消することができる。
そして、第1、第2燃費最適線上で運転者の加減速要求に基づいてエンジン動作点を選択する。このとき、熱と電力の過不足状態に応じて、第1、第2燃費最適線上で選択するエンジン動作点が異なる。図13に、熱と電力の過不足状態に基づくエンジン動作点の選択の際に用いる判定マップを示す。図13は図8に対応している。
図13に示すように、領域2の時は、第1、第2燃費最適線上で通常の動作点を選択する。ここで、通常の動作点とは、熱と電力の両方が不足でも過剰でもない場合に設定される動作点を指しており、以後も特に断らない限りこの意味で用いる。所定期間後に熱と電力の少なくとも一方が不足し、かつ、熱と電力のどちらも過剰でない領域1の時には、通常の動作点に対して、エンジン出力がより増加する方向にシフトさせたエンジン動作点を選択する。所定期間後に熱と電力の両方が過剰な領域3の時には、通常の動作点に対して、エンジン出力がより減少する方向へシフトさせたエンジン動作点を選択する。なお、エンジン出力がより減少する方向へシフトさせたエンジン動作点の中にはエンジンの停止状態も含まれる。
図14に、第1燃費最適線上でのエンジン動作点の選択方法の概念を示す。図14に示すように、バッテリ41のSOCが低く、発電が必要な場合には、通常の動作点A1よりも、出力が大きなエンジン動作点A2を設定し、エンジンの軸出力と走行に必要な駆動力の差分をモータジェネレータ11による発電に用いる。一方、バッテリ41のSOCが高く、放電が必要な場合には、通常の動作点A1よりも、出力が小さなエンジン動作点A3を設定し、モータでの走行により電力を消費する。第2燃費最適線上でのエンジン動作点の変更も同様である。
このような第1、第2燃費最適線上のいずれかのエンジン動作点の選択は、例えば、第1燃費最適線を用いたマップと、第2燃費最適線を用いたマップとが用いられることで実現される。第1燃費最適線を用いたマップとしては、通常の動作点を選択するマップと、通常の動作点よりも出力を増大させた動作点を選択するマップと、通常の動作点よりも出力を減少させた動作点を選択するマップとがある。また、第2燃費最適線を用いたマップとしては、通常の動作点を選択するマップと、通常よりも出力を増大させた点を選択するマップとがある。
具体的には、エンジン冷却水の目標動作点の位置がエンジン冷却水の目標下限値よりも高い場合であって、図13の領域2に属する場合、第1燃費最適線上の動作点を選択する通常のマップが用いられ、図13の領域1に属する場合、第1燃費最適線上であって通常よりも出力を増大させた動作点を選択するマップが用いられ、図13の領域3に属する場合、第1燃費最適線上であって通常よりも出力を減少させた点を選択するマップが用いられる。
一方、エンジン冷却水の目標動作点の位置がエンジン冷却水の目標下限値よりも低い場合であって、図13の領域2に属する場合、第2燃費最適線上の動作点を選択する通常のマップが用いられ、図13の領域1に属する場合、第2燃費最適線上であって通常よりも出力を増大させた動作点を選択するマップが用いられる。
図5、6に示す例では、目標動作点P4は、エンジン冷却水の目標下限値よりも低く、図13の領域1に属するので、第2燃費最適線上であって通常よりも出力を増大させた動作点を選択するマップが用いられる。
このようにして、ステップS16で、エンジン動作点が設定されると、車両制御装置51は、この設定されたエンジン動作点を出力する。そして、エンジン制御装置52は、この設定されたエンジン動作点でエンジン10を作動させる。
以上の説明の通り、本実施形態では、暖房作動設定時において、エンジン10が作動状態であって冷却水温度が所定温度よりも低い場合に、電気暖房装置30とヒータコア20を併用した暖房を所定時間実行すると仮定して、所定予測期間後のSOCと冷却水温度の動作点が図3に示す目標関数に最も近い動作点となるように、ヒータコア20からの供給暖房熱量と電気暖房装置30からの供給暖房熱量の配分を設定している。そして、ヒータコア20と電気暖房装置30を併用した暖房を行う際に、この設定に基づいて、ヒータコア20からの供給暖房熱量と電気暖房装置30からの供給暖房熱量を制御し、エンジン冷却水の熱量とバッテリの電力を消費することで、バッテリ充電状態と冷却水温度とのバランスを調整するようにしている。
図3に示す目標関数は、上述の通り、目標SOC範囲の中央値と目標冷却水温度の下限値を通って、予め定められた所定の勾配a1の直線であり、この勾配a1は、第1燃費最適線上のエンジン動作点を選択した場合の冷却水温度とSOCの関係を座標軸上に表したときの近似直線の勾配と同じである。このため、バランス調整後のバッテリ充電状態と冷却水温度とが目標範囲内でない場合に、第1燃費最適線上もしくはそれに近い第2燃費最適線上のエンジン動作点を選択することで、目標バッテリ充電状態範囲内の所定値と目標冷却水温度範囲の下限値に近づけることができる。
また、本実施形態では、上述のステップS1で、暖房が作動設定されている(暖房ON)と判定した場合、ステップS2において、冷却水温度が所定温度よりも低いときでは、電気暖房装置30での消費電力分を確保するために、冷却水温度が所定温度よりも高いときに設定される目標SOCの上限値および下限値よりも高くなるように、目標SOCの上限値および下限値を高く設定している。
このため、本実施形態によれば、冷却水温度が低く、ヒータコア20のみからでは暖房に必要な熱量を十分に供給できない場合では、冷却水温度が所定温度よりも高いときと比較してバッテリ41の充電量が増大するので、モータジェネレータ11による車両駆動に必要な電力が不足する事態を回避しつつ、電気暖房装置30の作動による暖房熱量の供給が可能となる。
さらに、本実施形態では、車両制御装置51が、暖房が作動設定されている場合であって冷却水温度が所定温度よりも低いときに、電気暖房装置30を作動させることを決定し、空調制御装置54を介して、電気暖房装置30を作動させるようにしている。したがって、本実施形態によれば、バッテリ41の目標充電状態を高く設定しても、電気暖房装置30の作動によって電力が確実に消費されるので、バッテリ41の実際の充電状態が比較的高い状態で維持され続けることを防止できる。
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、図3に示すように、目標関数を予め定められた所定の勾配a1の直線とし、この所定の勾配を、第1燃費最適線上のエンジン動作点を選択している場合の冷却水温度とSOCの変化を表す近似直線の勾配と同じとしたが、第1燃費最適線上のエンジン動作点を選択している場合の冷却水温度とSOCの変化を表す近似線の変化率としても良い。
すなわち、この近似線が勾配一定の直線でなく、複数の勾配を有する直線で示される場合、所定の勾配として、その複数の勾配を用いても良い。例えば、所定の勾配の直線を、所定温度より低温の範囲は傾きa1、所定温度よりも高温の範囲は傾きa2の直線としても良い。また、近似線が近似曲線で示される場合、所定の勾配の直線を、その近似曲線と同じ変化率の曲線としても良い。
(2)また、第1実施形態では、図3に示すように、目標関数を目標SOC範囲の中央値と目標冷却水温度範囲の下限値を通る線としたが、目標SOC範囲の中央値に限らず、目標SOC範囲内の所定値であれば良い。同様に、目標冷却水温度の下限値に限らず、目標冷却水温度範囲内の所定値であれば良い。
(3)第1実施形態では、電気暖房装置としてヒートポンプシステム30を採用したが、ヒートポンプシステム30の代わりに、PTCヒータを採用することも可能である。PTCヒータは、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱する電気ヒータである。
(4)第1実施形態では、車両制御装置51がヒータコア20と電気暖房装置30の供給暖房熱量を設定し、空調制御装置54がヒータコア20と電気暖房装置30の供給暖房熱量を制御したが、他の制御装置がこの設定や制御を実行しても良い。
(5)第1実施形態では、電力を貯めるバッテリ41での電力出し入れと熱を貯める冷却水での熱出し入れを考慮して、両者のストレージ状態が適切になるよう、電気暖房装置30の供給暖房熱量とヒータコア20の供給暖房熱量を設定する制御を実施したが、この制御を実施しなくても良い。すなわち、車両制御装置51が、単に、バッテリ41の充電状態が目標充電状態となるとともに、エンジン冷却水の温度が目標温度となるように、エンジン10の運転状態およびモータジェネレータ11の駆動状態(発電量)を制御するようになっていても良い。この場合、車両制御装置51もしくは空調制御装置54が、暖房が作動設定されている場合であって、冷却水温度が所定温度よりも低いときに、電気暖房装置30を作動させることを決定するようになっていれば良い。
(6)第1実施形態では、ステップS2で、冷却水温度が所定温度よりも低いときに、目標SOCの上限値および下限値の両方を同じ増加割合にて高く設定したが、目標SOCを高く設定できれば、これに限らず、上限値のみを高く設定しても良い。
ただし、目標充電状態の急激な変化を防止するという観点では、上限値と下限値の間の幅が一定となるように、目標SOCの上限値および下限値の両方を同じ増加割合にて高く設定することが好ましい。
(7)上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。