JP2013161644A - リチウム二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】電解質にガス発生添加剤を含み、かつ、タングステンを含む正極活物質を用いた場合でも過充電時に十分なガス発生量を確保することのできる、保存特性と過充電安全性とを兼ね備えたリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】
正極活物質および導電材を含む正極と、負極活物質を含む負極と、炭化水素化合物からなるガス発生添加剤を含む非水電解質とを備えるリチウム二次電池であって、正極活物質は、タングステン(W)を含み層状構造を有する粒状のリチウム遷移金属複合酸化物であって、導電材は、一次粒子が集まった凝集体の形態を有しており、凝集体の平均粒径が9μm未満の範囲で制御されることで、凝集体の存在下で前記ガス発生添加剤の分解に起因して発生されるガスの発生量が制御されているリチウム二次電池とする。
【選択図】図7

Description

本発明は、過充電時にガスを発生するガス発生添加剤を電解質に含むリチウム二次電池に関する。
近年、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)は、車両搭載用高出力電源等として重要性が高まっている。
この種の二次電池の一つの典型的な構成では、電荷担体(例えば、リチウムイオン電池の場合は、リチウムイオン。)を可逆的に吸蔵および放出し得る電極活物質を含む電極材料(電極活物質層)が導電性部材(電極集電体)に保持された電極を備えており、この電極(正極および負極)が非水電解質とともに電池ケースに収容されている。
かかるリチウム二次電池は、一般に所定の電圧領域(例えば3.0V以上4.2V以下)に制御された状態で使用されており、この通常使用時でも正極表面上ではわずかながらに電解液が分解され、ガスが発生されることが知られている。一方で、誤作動等により電池に通常以上の電流が供給されると、所定の電圧を超えて過充電状態に陥ってしまう。過充電状態に陥ると、電解質の分解が促進されて電池ケース内でのガス発生量が増加したり、活物質の発熱により電池内部の温度が上昇したりすることが想定される。そこで、過充電の進行を停止する安全機構として、上記分解ガスの発生により電池ケース内の圧力が所定値以上になると電流遮断弁が作動し、充電電流を遮断する電流遮断機構が広く電池に備えられている。
上記電流遮断機構を備える電池では、電解質の非水溶媒よりも酸化電位(即ち、酸化分解反応の始まる電圧)の低い化合物を、あらかじめ電解質中に含有させておくことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。該化合物は、電池が過充電状態になると電解質が分解反応を生じる前に正極表面において速やかに酸化分解され、これに起因して大量のガスを発生する。この発生したガスが電池の内圧上昇を生みだすことにより、電流遮断機構を早期に(即ち、電池がより安全な状態で)作動させるようにする。この種の化合物(即ち、以下、ガス発生添加剤という。)の典型的な例としては、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、ビフェニル(BP)等の炭化水素化合物等が挙げられる。
特開2003−257479号公報
ところで、正極活物質として広く使用されている粒状のリチウム遷移金属複合酸化物については、タングステン(W)等の元素を含有させておくことで、容量維持率等の耐久性が向上されることが知られている。特に、高温の環境下においてリチウム二次電池を高い充電状態(高SOC)として保存した際に、優れた耐久性を備えるものとなり得る。これは、通常の使用環境下においても見られる正極表面での電解質の分解が、タングステン(W)の存在により抑制されるためであると考えられている。しかしながら、本願発明者らの検討によると、上記の耐久性の向上という効果に背反して、正極活物質にタングステン(W)が含まれることで、過充電状態における電解質およびガス発生添加剤の分解が抑制され、過充電時に発生するガス量が著しく低下してしまうという、これまでに知られていなかった問題のあることが判明した。かかる現象は、電流遮断機構の作動を遅らせたり、作動させない等といった、正常な動作を阻害し得る。
本発明は、かかる従来の状況を鑑みて創出されたものであり、その目的とするところは、電解質にガス発生添加剤を含み、かつ、タングステンを含む正極活物質を用いた場合でも過充電時に十分なガス発生量を確保することのできる、保存特性と過充電安全性とを兼ね備えたリチウム二次電池を提供することである。
本発明が提供するリチウム二次電池は、正極活物質および導電材を含む正極と、負極活物質を含む負極と、炭化水素化合物からなるガス発生添加剤を含む非水電解質とを備えている。ここで、上記正極活物質は、タングステン(以下、単に「W」と記す場合もある。)を含み層状構造を有する粒状のリチウム遷移金属複合酸化物であり、また、上記導電材は、一次粒子が集まった凝集体の形態を有している。そして、かかる二次電池においては、上記凝集体の平均粒径が9μm未満の範囲で制御されることで、上記凝集体の存在下で上記ガス発生添加剤の分解に起因して発生されるガスの発生量が制御されていることを特徴としている。
上述したガス発生添加剤は、過充電時(即ち、電池電圧が上昇した際)に、正極の表面(典型的には、正極活物質や導電材の表面)と接触し、酸化分解、重合されることで水素イオンを発生する。そしてこの水素イオンが負極に拡散し、負極上で電子を受け取ることにより、還元ガスである水素を発生する。このため、過充電防止剤の分解反応に起因するガスの発生量は、正極近傍に存在する過充電防止剤の量および正極と過充電防止剤の接触面積(反応場)に左右され得る。
ここに開示される発明においては、導電材の凝集体の平均粒径を、従来より一般的に用いられていた10μm(典型的には、平均粒径9μm以上)程度のものに対して、9μm未満の範囲(例えば、2μm〜8μmの範囲)で適切に制御することで、正極活物質層中の導電材の分散度を高めるとともに、ガス発生添加剤の反応場を増大させるようにしている。すなわち、かかる構成によると、正極活物質表面だけでなく、より適切に平均粒径が制御されることで拡大された導電材の表面においても、ガス発生添加剤の分解反応を生じさせることができる。よって、上記ガス発生添加剤の添加量や正極活物質層中の導電材量(即ち、正極活物質層中の導電材の組成比率)の変更を必須とすることなく、過充電時に電池ケース内において必要量のガスを発生させることができる。これにより、上記構成の二次電池における過充電時のガス発生量の減少が抑制され、過充電時の安全性および保存特性の両方を確保することができる。
ここに開示されるリチウム二次電池の好ましい一態様では、上記Wは上記リチウム遷移金属複合酸化物の表面に偏析しており、該表面におけるW濃度が0.9原子%〜2.9原子%で、上記導電材における上記凝集体の平均粒径が2.5μm〜7.8μmであることを特徴としている。
リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるWは、粒状形態の表面に存在する場合(典型的には、表面に偏在する場合)に、特に保存特性(例えば、出力特性およびサイクル特性等)を大きく向上させ得る。その一方で、リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるWがその表面に存在(偏在)すると、過充電時のガス発生量の減少の度合いも高くなる。したがって、ここに開示される発明においては、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に偏析しているW濃度および導電材の平均粒径を、上記の範囲に規定することを好ましい態様としている。これにより、例えば、60日保存後の容量維持率が80%以上となる保存特性が得られるとともに、過充電時に電流遮断機構等を作動させる内圧を達成するに十分なガス発生量をバランスよく確保することができる。
なお、本明細書におけるリチウム遷移金属複合酸化物の表面における「W濃度」とは、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)に基づいて測定される、リチウム遷移金属複合酸化物の最表面(測定条件により異なるが、数nm程度、例えば0.1〜10nm程度)を構成する元素に占めるW元素の割合(原子%)として定義することができる。かかるW濃度は、例えば、XPSやESCA等と称されるX線光電子分光法に基づく組成分析の可能な装置を用いて測定した値(原子%)を採用することができる。
また、本明細書における「平均粒径」とは、特記しない限り、レーザ回折散乱法に基づく粒度分布測定装置で測定した粒度分布における、体積基準による累積50%粒径(メジアン径:以下、D50と略記する場合もある。)を意味するものとする。
ここに開示されるリチウム二次電池の好ましい一態様では、上記導電材における上記凝集体の平均粒径が3.0μm〜4.5μmであることを特徴としている。
凝集体の平均粒径を上記範囲に収めることでガス発生添加剤との反応場をより好適に確保することができる。このため、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物の表面のW濃度を例えば2原子%〜2.9原子%程度にまで高めた場合でも十分なガス発生量を確保することができ、より優れた保存特性と過充電時安全性とを実現することができる。
ここに開示されるリチウム二次電池の好ましい一態様では、上記正極活物質100質量部に対して、上記導電材が1質量部〜20質量部の割合で配合されている。
ガス発生添加剤の反応場を増大させるには、例えば、正極活物質層中の導電材量を増やすことが考えられる。しかしながら、多すぎる導電材は正極活物質層の密度の低下や単位体積当たりの容量低下を招くために好ましくない。また、少なすぎる導電材は、ガス発生量を増加させることができない上に、内部抵抗の増大や耐久性の低下等を引き起こすために好ましくない。例えば上記で規定されるような平均粒径を有する導電材は、容量や内部抵抗、耐久性等の電池性能を考慮した場合に、正極活物質に対して上記で規定される割合で含まれることが好ましい。
ここに開示されるリチウム二次電池の好ましい一態様では、上記ガス発生添加剤が、上記電解質中に0.01質量%〜10質量%の割合で配合されている。
また、過充電時のガス発生量を増加させる方法として、例えば、過充電防止剤の添加量を増やすことが考えられる。しかしながら、ガス発生添加剤は電池反応の抵抗成分として作用するため、その量が多すぎると電池性能が低下(例えば内部抵抗の増大や耐久性の低下等)することが懸念され、好ましくない。また、その量が少なすぎると過充電時に十分なガス発生量を確保することができない。このような観点から、ガス発生添加剤は、電解質中に上記で規定される割合で含まれることが好ましい。
ここに開示されるリチウム二次電池の好ましい一態様では、上記ガス発生量が、上記電池の定格容量あたりのガス発生量として20ml/Ah以上(好ましくは、30ml/Ah以上)であることを特徴としている。
導電材の凝集体の平均粒径を適切に制御してガス発生添加剤の反応場を増大することで、過充電時には上記のとおりのガスを発生させることが可能となる。かかる構成によると、電流遮断機構の迅速な作動に十分な量のガスを発生させることができ、より安全性に優れたリチウム二次電池が提供される。
ここに開示されるリチウム二次電池の好ましい一態様では、上記リチウム遷移金属複合酸化物の少なくとも一部として、一般式(1):
LiNiCoMn (1)
(ここで、Mは存在しないか、もしくは、Zr,Nb,Alから選択される少なくとも一種であり、xは、1.0≦x≦1.25を満たし、a,b,c,d,eは、a+b+c+d+e=1および0.001≦(d+e)≦0.02を満たし、a,b,cのうち少なくとも一つは0よりも大きく、e>0である。);
で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含むことを特徴としている。
かかる一般式(1)で示される組成のリチウム遷移金属複合酸化物は、優れた出力特性およびサイクル特性を同時に実現し得る正極活物質であり得る。一方で、リチウム遷移金属複合酸化物は本質的に(Wを含まない組成においても)電子伝導性が低く、ガス発生添加剤の分解のための反応場を充分に提供することができない。そしてこの傾向は、上記の一般式(1)で示されるWを含む組成のリチウム遷移金属複合酸化物においてより顕著となる。しかしながら、かかる構成のリチウム二次電池によると、導電材の凝集体の平均粒径を適切に制御しているために、上記の一般式(1)で示される組成のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いた場合であっても、電流遮断機構の作動に十分な量のガスを発生させることができる。これにより、出力特性およびサイクル特性等の保存特性と過充電安全性とにより優れたリチウム二次電池が提供される。
ここに開示されるリチウム二次電池の好ましい一態様では、さらに、上記正極と、上記負極と、上記非水電解質とを収容する電池ケースを備え、上記電池ケースは、通常使用時は上記ケースの内部と外部とのガスの流通を阻止し、上記ケース内の内圧が所定レベルを超えて上昇した際に変形して上記正極および上記負極間の電気的接続を断つ電流遮断機構を有することを特徴としている。
ここに開示されるリチウム二次電池は、正極活物質としてWを含むリチウム遷移金属複合酸化物を用いながらも、過充電時には十分な量のガスを発生し得る。したがって、電池の内圧上昇により作動する電流遮断機構を備える構成の二次電池に好適に適用することができる。
なお、電流遮断機構を少ないガスの発生で作動させるために、例えば、電流遮断弁を作動させる電池ケース内圧力値を下げることも考慮できる。しかしながら、このような設計の変更は、わずかな周辺環境の変化などで誤作動を生むおそれがあり、望ましい対応とは言えない。これに対し、ここに開示される発明は、従来には生じていなかった新たな課題を、電池の基本的な設計及び構成を大きく変化させることなく、解決するものである。
このように、ここに開示されるリチウム二次電池は、例えば、高い出力特性およびサイクル特性等と同時に優れた容量維持率が実現されるものであり得る。このため、ここに開示されるリチウム二次電池は、特に長期に渡る耐久性と、高い安全性および信頼性が求められる自動車等の車両に搭載される車両駆動電源用の二次電池として好ましく用いることができる。このことから、本発明は、上記のリチウム二次電池を駆動用電源として備える車両をも好適に提供することができる。
本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の構造の一例を示す断面模式図である。 本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の捲回電極体を示す模式図である。 図2中のIII−III断面を示す模式図である。 一実施形態に係るリチウム二次電池を備えた車両を模式的に示す側面図である。 リチウム遷移金属複合酸化物の表面のタングステン(W)濃度と、過充電時のガス発生量および容量維持率との関係を例示した図である。 一実施形態に係る導電材の平均粒径(D50)と過充電時のガス発生量との関係を示す図である。 図6のデータを一部抽出して示した図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本明細書において「リチウム二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを用い、リチウムイオンによる正負極間の電荷の移動により充放電がなされる二次電池をいう。このようなリチウム二次電池は、典型的には、リチウムイオン電池(リチウムイオン二次電池)、リチウムポリマー電池等の二次電池を包含し得る。また、本明細書において「活物質」とは、二次電池において電荷担体となる化学種(即ち、この場合はリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出(典型的には挿入および離脱)可能な物質をいう。
ここに開示されるリチウム二次電池は、本質的な構成として、正極活物質および導電材を含む正極と、負極活物質を含む負極と、炭化水素化合物からなるガス発生添加剤を含む非水電解質とを備えている。以下に、かかるリチウム二次電池の構成について、順に説明する。
上記正極は、典型的には、粒状の正極活物質と、導電材に加え、これらを結合するバインダを含むペースト状の正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に供給し、正極活物質層を形成することで用意される。
正極集電体としては、従来のリチウム二次電池用の電極集電体と同様、導電性の良好な金属または樹脂からなる導電性部材を用いることができる。例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、鉄等を主成分とする金属またはその合金等を好ましく用いることができる。より好ましくは、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。正極集電体の形状については特に制限はなく、所望の二次電池の形状等に応じて様々なものを考慮することができる。例えば、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態のものであり、典型的には、アルミニウム箔が好適に用いることができる。
ここに開示されるリチウム二次電池において特徴的な正極活物質としては、タングステン(W)を含み層状構造を有する粒状のリチウム遷移金属複合酸化物(以下、単にW含有リチウム遷移金属複合酸化物という場合もある。)を用いることができる。かかるリチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、本質的な構成として、従来からリチウム二次電池に用いられるリチウムイオンを吸蔵および放出可能なリチウム遷移金属複合酸化物と同様の構成を有し、その結晶構造の一部にタングステン(W)を含む各種の材料を特に限定することなく使用することができる。
かかる正極活物質は、Wの存在により、通常の電池使用状態においてその表面で生じる電解質の分解が抑制される。したがって、該正極活物質が本来備える特性(例えば、高容量等)に加えて、容量維持率等の耐久性に優れたものとなり得る。
上記のW含有リチウム遷移金属複合酸化物として、具体的には、例えば、層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物であって、Ni,CoおよびMnのうち少なくとも一種の遷移金属元素を含み、さらにWを含むものをより好ましい態様として例示することができる。ここで、W含有リチウム遷移金属複合酸化物は、Ni,CoおよびMnからなる遷移金属元素を3種共含む、いわゆる三元系のW含有リチウム遷移金属複合酸化物であることが好ましく、および/または、Liが層状型結晶構造における遷移金属サイトのいわゆるリチウム過剰型のW含有リチウム遷移金属複合酸化物であることも好ましい。
かかるW含有リチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、一般式(1):
LiNiCoMn (I)
(ここで、Mは存在しないか、もしくは、Zr,Nb,Alから選択される少なくとも一種であり、xは、1.0≦x≦1.25を満たし、a,b,c,d,eは、a+b+c+d+e=1および0.001≦(d+e)≦0.02を満たし、a,b,cのうち少なくとも一つは0よりも大きく、e>0である。);
で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を少なくとも一部として含むものとして示すことができる。
なお、このようなW含有リチウム遷移金属複合酸化物は、上記に具体的に例示した元素以外に、さらに他の元素(例えば、Mo,Cr,Fe,V,Ti,Cu,Zn,Ga,In,Sn,La,Ce,Ca,MgおよびNaから選択される一種または二種以上)を含むものであってよい。
かかる構成のW含有リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いることで、常温だけでなく低温(例えば−10℃以下)や比較的高温(例えば60℃程度)においても優れた出力特性や耐久性(サイクル特性等)を備えるリチウム二次電池を実現し得る。
また、このようなW含有リチウム遷移金属複合酸化物において、Wは、リチウム遷移金属複合酸化物の全体に均一に含まれていてもよいが、その表面に存在もしくは偏在していることがより好ましい。つまり、リチウム遷移金属酸化物は一般に、一次粒子が集まった二次粒子の形態をなしているが、一次粒子の表面に偏ってWが存在(分布)しているものであるのが好ましい。Wが表面に偏在することで、正極活物質の表面で行われる電解質の分解を、より少ないW量で効果的に抑制することができる。例えば、Wの過剰な使用を抑制しつつ、上記の容量維持率等の耐久性を得ることができる。
このようなリチウム遷移金属複合酸化物の表面に存在(偏在)するWの量は、ごく少量であっても電解質の分解を抑制し、容量維持率を高める効果を得ることができる。しかしながら、その反面、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に存在(もしくは偏在)するWは、後述する過充電時のガス発生量を低下させてしまうという新たな課題をも有する。そのため、容量維持率等の耐久性と、過充電時のガス発生量との両立を図るために、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に存在する元素のうちWの濃度は0.9原子%〜2.9原子%程度とすることが好ましい。より好ましくは、1.5原子%〜2.1原子%である。
なお、上記の表面にWが偏在するリチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、湿式法によって調製した水酸化物(前駆体)を、適当なリチウム源(例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム等のリチウム塩)と混合し、所定の温度で焼成することにより形成することができる。より具体的には、例えば、先ず、上記のNi,CoおよびMnのうち少なくとも一種の遷移金属元素、および、上記のZr,Nb,Alから選択される少なくとも一種の元素を含む水溶液Aと、Wを含む水溶液Bを準備する。そして、この水溶液Aと水溶液Bとをアルカリ性条件下で(例えば、pH11〜14に維持しつつ)湿式混合して、これらの金属元素を含む水酸化物(前駆体)を析出させる。次いで、この水酸化物と、リチウム化合物(リチウム塩)とを混合し、その混合物を焼成することで、表面にWが偏在するリチウム遷移金属複合酸化物を調製することができる。Wが偏在するリチウム遷移金属複合酸化物が他の組成の場合であっても、同様に形成することができる。
以上の正極活物質の形状等について厳密な制限はないものの、上記の正極活物質は、適切な手段で粉砕、造粒および分級することができる。例えば、平均粒径がおよそ1μm〜25μm(典型的にはおよそ2μm〜15μm)の範囲にある二次粒子によって実質的に構成されたW含有リチウム遷移金属酸化物の粉末を、ここに開示される技術における正極活物質として好ましく採用することができる。
なお、Wについて一次粒子表面に「偏在」するとは、一次粒子の内部に比べて、一次粒子の表面(粒界)に偏って(集中して)Wが分布していることを意味する。したがって、Wが粒界のみに存在する(換言すれば、一次粒子の内部には全く存在しない)態様のみを意味するものではない。Wが一次粒子の表面に偏って存在していることは、上記のXPSの他、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX: Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)を用いて活物質粒子表面のWの分布をマッピングし、そのマッピング結果においてWが粒界に集中して存在する(一次粒子の内部に比べて粒界では面積当たりのW存在量が多い)様子が認められることにより把握することができる。上記粒界(一次粒子の表面)の位置は、例えば、正極活物質粒子の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察により把握することができる。この観察には、EDXを備えたTEMを好ましく使用し得る。上記正極活物質は、同時に、EDX画像観察により、粒界(一次粒子表面)においてはWの元素分布に顕著な偏差(凝集塊等)が認められないものであることが好ましい。あるいは、電池を分解して取り出した正極シート表面をEDX分析しても、同様にW分布に顕著な偏差が認められないものであることが好ましい。
そしてここに開示される導電材としては、一次粒子が集まった凝集体の形態を有しており、該凝集体の平均粒径が9μm未満の範囲(例えば、2μm〜8μmの範囲)で適切に制御されたものを用いるようにしている。凝集体の平均粒径を上記範囲で制御することで、正極活物質層中の導電材の分散度を高めるとともに、正極及び導電材と電解質中のガス発生添加剤との反応場を所望の広さに制御し得る。
すなわち、凝集体の平均粒径が大きすぎる(例えば、平均粒径8μm以下)場合には、導電材と活物質との接点が少なく、良好な接触状態を得ることができないために、正極活物質の電子供給性が劣ってしまう。また、導電材自体の表面積も少なくなる。これらは、延いては、ガス発生添加剤の酸化分解の反応性を低下させることに繋がり得る。すなわち、ガス発生添加剤が正極活物質の表面で酸化分解される量が減るとともに、ガス発生添加剤と導電材との反応場が少なくなってしまう。したがって、過充電時においてもガスは発生され難くなる。
一方で、凝集体の平均粒径が小さすぎる(例えば、平均粒径2μm以下)場合には、正極活物質粒子および導電材粒子によって形成される正極活物質層中の空隙(間隙)の繋がりが悪くなるため、この空隙への電解質の浸透および電解質イオンの移動が阻害され易い状態となる。これは、正極活物質および導電材の表面への過充電添加材の供給や、過充電添加材が酸化分解してできる反応生成物の正極活物質層からの抜けを滞らせ、正極におけるガス発生添加剤の酸化分解反応の進行を妨げるものとなり得る。したがって、過充電時においてもガスは発生され難くなる。
凝集体の平均粒径を上記範囲で適切に制御することで、過充電時に電流遮断機構を作動させ得るガス発生量を確保することができる。このような凝集体の平均粒径としては、正極活物質の表面のW濃度にもよるため一概には言えないが、例えば、具体的には、2.5μm〜7.8μmの範囲とすることが好ましく、より限定的には、3.0μm〜4.5μmの範囲とすることが好ましい。
かかる導電材としては、良導電性を示すものであれば、その材質等は特に制限されずに各種の材料を用いることができる。例えば、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック)、グラファイト粉末等のカーボン粉末を好適に用いることができる。これらは、一種を用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。そして、このような導電材は、特に限定するものではないが、正極活物質100質量%に対して、例えば1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の割合で配合することが例示される。
バインダは、正極活物質層に含まれる上記正極活物質と導電材の各粒子を結着したり、これらの粒子と正極集電体とを結着したりする働きを有する。かかるバインダとしては、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。典型的には、正極活物質層を形成する際に使用する溶媒に応じた各種のポリマー材料を好適に用いることができる。
例えば、水系の溶媒を用いて正極活物質層を形成する場合には、水に溶解または分散するポリマー材料を好ましく採用し得る。かかるポリマー材料としては、セルロース系ポリマー、フッ素系樹脂、酢酸ビニル共重合体、ゴム類等が例示される。より具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)等が挙げられる。また、溶剤系の溶媒(典型的には、分散媒の主成分が有機溶媒である溶剤系組成物)を用いて正極活物質層を形成する場合には、有機溶剤に分散または溶解するポリマー材料を好ましく採用し得る。かかるポリマー材料としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等が挙げられる。
このようなバインダは、特に限定するものではないが、正極活物質100質量%に対して、例えば0.5〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%の割合で配合することが例示される。
なお、バインダとして例示したポリマー材料は、バインダとしての機能の他に、正極活物質層を形成するために調製する正極活物質層形成用ペースト(以下、単にペーストという場合もある)の増粘剤その他の添加剤としての機能を発揮する目的で使用されることもあり得る。また、このバインダに、後述の過充電時にガスを発生させるガス発生添加剤(例えば、リン酸塩や炭酸塩(典型的には、炭化水素化合物であり得る。)等を予め含有させておいてもよい。
また、上記の正極の調製に用いる溶媒としては、水性溶媒(水系溶媒)および非水溶媒(溶剤系溶媒)の何れも使用することができる。水性溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒を用いた組成物が例示される。混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。非水溶媒の好適な例としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。
負極は、典型的には、負極活物質とバインダと、必要に応じて導電材とを含むペースト状の負極活物質層形成用組成物を負極集電体上に供給して負極活物質層を形成することで用意される。
負極集電体としては、従来よりリチウム二次電池用の負極集電体と同様、導電性の良好な金属または樹脂等からなる導電性部材を用いることができる。例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等を主体とする棒状体、板状体、箔状体、網状体等を用いることができる。他にも、例えば、負極集電体としては、ポリプロピレンフィルムに銅を蒸着させたフィルム材等を用いることができる。
負極活物質としては、従来からリチウムイオン電池に用いられる材料の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。例えば、少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を含む粒子状の炭素材料(カーボン粒子)が挙げられる。より具体的には、負極活物質は、例えば、天然黒鉛、黒鉛質(グラファイト)、難黒鉛化炭素質(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素質(ソフトカーボン)、または、これらを組み合わせた炭素材料や、これらの炭素材料の表面の少なくとも一部を非晶質炭素材料で被覆したもの等であってよい。また、例えば、Si、Ge、Sn、Pb、Al、Ga、In、As、Sb、Bi等を構成金属元素とする金属化合物(好ましくは、シリサイドまたは金属酸化物)などとしても良い。また、負極活物質粒子として、LTO(チタン酸リチウム)を用いることもできる。金属化合物からなる負極活物質については、例えば、炭素被膜によって、金属化合物の表面を充分に被覆し、導電性に優れた粒状体として用いてもよい。この場合、負極活物質層に導電材を含有させなくてもよいし、従来よりも下記の導電材の含有率を低減させてもよい。これらの負極活物質の付加的な態様や、粒径等の形態は、所望の特性に応じて適宜に選択することができる。
負極活物質層およびその調製に用いるバインダ、溶媒、増粘剤としては、上記正極活物質層におけるバインダ、溶媒、増粘剤として例示した各種の材料を同様に用いることができる。また、負極活物質100質量部に対するバインダの使用量は、例えば0.5〜10質量部、好ましくは1〜5質量部とすることができる。
なお、導電材を用いる場合は、上記正極活物質層の形成において用いた導電材と同様のものを用いることができるが、その形状やサイズ等については特に制限されず、適宜に設定することができる。この場合の導電材の使用量は、負極活物質100質量部に対しておよそ1〜30質量部、好ましくは、およそ2〜20質量部、例えば5〜10質量部とすることができる。
上記のとおり活物質層形成用組成物を集電体の片面または両面に所定の量で供給して電極活物質層を形成した後は、例えば、乾燥し、適宜プレス処理(例えば、ロールプレス法、平板プレス法等の従来公知の各種プレス方法を採用することができる。)を施すことによって、電極活物質層の厚みや密度を調整することができる。
ここに開示されるリチウム二次電池は、上記正極および負極を積層することで電極体を作製し、ガス発生添加剤を含む電解質ととともに適切な電池ケースに収容して構築される。なお、ここに開示されるリチウム二次電池の代表的な構成では、正極と負極との間にセパレータが介在される。
セパレータは、正極と負極とを絶縁するとともに、両電極間の電解質の移動を許容する部材である。この要件を満たすものであれば、セパレータの基体を構成する材料については本質的に限定されない。そして、このようなセパレータとしては、従来と同様のセパレータを用いることができる。代表的には、リチウムイオンが移動できる程度の微細な細孔を有する多孔質体、不織布状体、布状体等とすることができる。例えば、樹脂からなる多孔性シート(微多孔質樹脂シート)を好ましく用いることができる。かかる多孔性シートの構成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。特に、PEシート、PPシート、PE層とPP層とが積層された二層構造シート、二層のPP層の間に一層のPE層が挟まれた態様の三層構造シート、等の多孔質ポリオレフィンシートを好適に使用し得る。特に限定されるものではないが、セパレータ基材として用いられる好ましい多孔質シート(典型的には多孔質樹脂シート)の性状として、平均孔径が0.001μm〜30μm程度であり、厚みが5μm〜100μm(より好ましくは10μm〜30μm)程度である多孔質樹脂シートが例示される。該多孔質シートの気効率(空隙率)は、例えば凡そ20〜90体積%(好ましくは30〜80体積%)程度であり得る。なお、固体状の電解質を用いたリチウム二次電池(リチウムポリマー電池)では、上記電解質がセパレータを兼ねる構成としてもよい。
ここで用いられる電解質には、従来のリチウム二次電池に用いられる非水電解質と同様の一種または二種以上のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解質は、典型的には、支持塩としてのリチウム塩を非水系の溶媒(典型的には、有機溶媒)中に含んだものである。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、Li(CFSON、LiCFSO等が例示される。これらリチウム塩は、一種のみを単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。電解質濃度は特に制限されないが、リチウム塩をおよそ0.1mol/L〜5mol/L(好ましくは、およそ0.8mol/L〜1.5mol/L)程度の濃度で含有する非水電解質を好ましく用いることができる。また、かかる液状電解質にポリマーが添加された固体状(ゲル状)の電解質であってもよい。
該非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等が例示される。また、該電解質としては、例えばLiPF、LiBF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiCSO、LiC(SOCF、LiClO等が例示される。
そしてここに開示されるチリウム二次電池においては、上記電解質に、炭化水素化合物からなるガス発生添加剤を含んでいる。かかるガス発生添加剤としては、酸化電位がリチウム二次電池の稼動電圧以上(例えば、4.2Vで満充電となるリチウム二次電池の場合は、4.2V以上)であって、酸化されると大量のガスを発生するような化合物であれば特に限定なく用いることができるが、酸化電位が電池の稼動電圧と近接していると通常の稼動電圧においても局所的な電圧上昇等で徐々に分解するおそれがある。一方、分解電圧が4.9V以上になると、添加剤の酸化分解によるガス発生の前に、非水電解質の主成分及び電極材料の反応により熱暴走を生じるおそれがある。従って、4.2Vで満充電状態となるリチウム二次電池においては、酸化反応電位が4.6V以上4.9V以下の範囲のものが好ましく用いられる。より好ましくは、芳香族炭化水素化合物からなるガス発生添加剤である。このようなものとして、例えば、ビフェニル化合物、シクロアルキルベンゼン化合物、アルキルベンゼン化合物、有機リン化合物、フッ素原子置換芳香族化合物、カーボネート化合物、環状カルバメート化合物、脂環式炭化水素等が挙げられる。より具体的には、ビフェニル(BP)、アルキルビフェニル、ターフェニル、2−フルオロビフェニル、3−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェニル、4,4’−ジフルオロビフェニル、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、trans−ブチルシクロヘキシルベンゼン、シクロペンチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミノベンゼン、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン、トリス−(t−ブチルフェニル)ホスフェート、フェニルフルオライド、4−フルオロフェニルアセテート、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、ビスターシャリーブチルフェニルカーボネート、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等が挙げられる。特に、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、シクロヘキシルベンゼン誘導体およびビフェニル(BP)が例示される。使用する電解質100質量%に対する過充電防止剤の使用量は、例えばおよそ0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%程度とすることができる。
ここで用いられる電池ケースとしては、従来のリチウム二次電池に用いられる材料や形状を用いることができる。材質としては、例えばアルミニウム、スチール等の比較的軽量な金属材や、PPS、ポリイミド樹脂等の樹脂材料が挙げられる。また、形状(容器の外形)としては特に限定されず、例えば、円筒型、角型、直方体型、コイン型、袋体型(典型的には、ラミネートセル)等の形状であり得る。そしてこの電池ケースは、該ケース内の内圧が所定レベルを超えた場合に正極および負極間の電気的接続を断つ電流遮断機構を有している。かかる電流遮断機構としては、特にその構成に制限はないが、例えば、通常使用時は該ケースの内部と外部とのガスの流通を阻止し、過充電時等にケース内の内圧が所定レベルを超えて上昇した際に変形し、正極および負極間の電気的接続を遮断し得る構成のものを好ましく採用することができる。
以下、ここに開示されるリチウム二次電池の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。この実施形態では、角型形状のリチウム二次電池について説明しているが、本発明をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、正極および負極を備えた電極体の構成および製造方法、セパレータや電解質の構成および製造方法、リチウム二次電池その他の電池の構築に係る一般的技術等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
図1は、リチウム二次電池100を示している。このリチウム二次電池100は、正極10および負極20からなる捲回電極体80と、図示しない炭化水素化合物からなるガス発生添加剤を含む非水電解質と、電池ケース50とを備えている。また、図2は捲回電極体80を示す図である。図3は、図2中のIII−III断面を示している。
電池ケース50は、上端が開放された扁平な直方体状のケース本体52と、その開口部を塞ぐ蓋体54とを備える。電池ケース50を構成する材質としては、アルミニウム、スチール等の金属材料が好ましく用いられる(本実施形態ではアルミニウム)。あるいは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド樹脂等の樹脂材料を成形してなる電池ケース50であってもよい。電池ケース50の上面(すなわち蓋体54)には、捲回電極体80の正極10と電気的に接続する正極端子70と、該電極体80の負極20と電気的に接続する負極端子72とが設けられている。
電池ケース50の内部には、電池ケースの内圧上昇により作動する電流遮断機構30が設けられている。電流遮断機構30は、電池ケース50の内圧がガス発生添加剤に起因するガス発生により上昇した場合に、少なくとも一方の電極端子から電極体80に至る導電経路を切断することで充電電流を遮断し得るように構成されている。この実施形態では、電流遮断機構30は、蓋体54に固定した正極端子70と電極体80との間に設けられ、電池ケース50の内圧が上昇した場合に正極端子70から電極体80に至る導電経路を切断するように構成されている。
上記電流遮断機構30は、第一部材32と第二部材34とからなる導通部材を含んでいる。そして、電池ケース50の内圧が上昇した場合に第一部材32および第二部材34の少なくとも一方(ここでは第一部材32)が変形して他方から離隔することにより、上記導電経路を切断するように構成されている。この実施形態では、第一部材32は変形金属板32であり、第二部材34は接合点36において上記変形金属板32に接合された接続金属板34である。変形金属板(第一部材)32は、中央部分が下方へ湾曲したアーチ形状を有し、その周縁部分が集電リード端子35を介して正極端子70の下面と接続されている。また、変形金属板32の湾曲部分33の先端が接続金属板34の上面と接合されている。接続金属板34の下面(裏面)には正極リード端子74が接合され、かかる正極リード端子74が電極体80の正極シート10に接続されている。このようにして、正極端子70から電極体80に至る導電経路が形成されている。
また、電流遮断機構30は、プラスチック等により形成された絶縁ケース38を備えている。絶縁ケース38は、変形金属板32を囲むように設けられ、変形金属板32の上面を気密に密閉している。この気密に密閉された湾曲部分33の上面には、電池ケース50の内圧が作用しない。また、絶縁ケース38は、変形金属板32の湾曲部分33を嵌入する開口部を有しており、該開口部から湾曲部分33の下面を電池ケース50の内部に露出させている。この電池ケース50の内部に露出した湾曲部分33の下面には、電池ケース50の内圧が作用する。
かかる構成の電流遮断機構30において、電池ケース50の内圧が高まると、該内圧が変形金属板32の湾曲部分33の下面に作用し、下方へ湾曲した湾曲部分33が上方へ押し上げられる。この湾曲部分33の上方への押し上げ力は、電池ケース50の内圧が上昇するに従い増大する。そして、電池ケース50の内圧が設定圧力を超えると、湾曲部分33が上下反転し、上方へ湾曲するように変形する。かかる湾曲部分33の変形によって、変形金属板32と接続金属板34との接合点36が切断される。このことにより、正極端子70から電極体80に至る導電経路が切断され、充電電流が遮断されるようになっている。なお、この実施形態では、内圧上昇時に変形する導通部材32、34が、第一部材32と第二部材34とに分けて構成されている場合を例示したが、これに限定されない。例えば、導通部材が1つの部材であってもよい。また、電流遮断機構30は正極端子70側に限らず、負極端子72側に設けてもよい。また、電流遮断機構30は、上述した変形金属板32の変形を伴う機械的な切断に限定されない。例えば、電池ケース50の内圧をセンサで検知し、該センサで検知した内圧が設定圧力を超えると充電電流を遮断するような外部回路を電流遮断機構として設けることもできる。
電池ケース50の内部には、扁平形状の捲回電極体80が図示しない非水電解質とともに収容される。本実施形態に係る捲回電極体80は、上記のとおりのW含有リチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質およびこれと共に用いられる平均粒径が制御された導電材を用いて正極10が形成されている点を除いては、通常のリチウム二次電池の捲回電極体と同様であり、図2に示すように、捲回電極体80を組み立てる前段階において長尺状(帯状)のシート構造(シート状電極体)82を有している。
正極シート10は、本実施形態では、長尺状の金属箔からなる正極集電体12の両面に、正極活物質を含む正極活物質層14が保持された構造を有している。ただし、正極活物質層14は正極シート10の幅方向の端辺に沿う一方の側縁(図では左側の側縁部分)には付着されず、正極集電体12を一定の幅にて露出させた正極活物質層非形成部16が形成されている。
負極シート20も正極シート10と同様に、長尺シート状の箔状の負極集電体(以下「負極集電箔」と称する)22の両面に負極活物質を含む負極活物質層24が保持された構造を有している。ただし、負極活物質層24は負極シート20の幅方向の端辺に沿う一方の側縁(図では右側の側縁部分)には付着されず、負極集電体22を一定の幅にて露出させた負極活物質層非形成部26が形成されている。
捲回電極体80を作製するに際しては、正極シート10と負極シート20とがセパレータシート40A、40Bを介して積層される。このとき、正極シート10の正極活物質層非形成部分16と負極シート20の負極活物質層非形成部分26とがセパレータシート40A、40Bの幅方向の両側からそれぞれはみ出すように、正極シート10と負極シート20とを幅方向にややずらして重ね合わせる。このとうに重ね合わせた積層体を捲回し、次いで得られた捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平状の捲回電極体80が作製され得る。このようにシートの積層物(シート状電極体)を捲回した後に扁平に押しつぶす態様に代えて、例えば上記積層物を当初から扁平な形状(略長円状、楕円形等)に捲回してもよい。
捲回電極体80の捲回軸方向における中央部分には、正極シート10の正極活物質層14と負極シート20の負極活物質層24とセパレータシート40A、40Bとが密に積層された部分(捲回コア部分)が形成される。また、捲回電極体80の捲回軸方向の両端部では、正極シート10および負極シート20の電極活物質層非形成部分16、26の一部がそれぞれ捲回コア部分から外方にはみ出ている。このはみ出した電極活物質層非形成部分16、26に、正極リード端子74および負極リード端子76がそれぞれ付設されて、上述の正極端子70および負極端子72とそれぞれ電気的に接続される。
かかる構成のリチウム二次電池によると、正極活物質としてWを含む(例えば、表面にWが偏在する形態であり得る。)リチウム遷移金属複合酸化物を用いているため、出力特性およびサイクル特性等の保存特性が大きく向上されている。その一方で、正極活物質層に含まれる導電材の凝集体の平均粒径を、9μm未満の範囲で適切に制御しているため、ガス発生添加剤の添加量や正極活物質層中の導電材量(即ち、正極活物質層中の導電材の組成比率)の変更を要することなく、過充電時に電池ケース内において必要量のガスを発生させることができる。したがって、例えば、比較的高温で60日保存後の容量維持率が80%以上となるような優れた保存特性が得られるとともに、過充電時の安全性および保存特性の両方を確保することができる。
このようなリチウム二次電池100は、上述したように、過充電時の安全性および保存特性を両立していることから、例えば、駆動用モータを備える自動車における上記モータの駆動用電源等として用いることでその特徴を十分に発揮し得る。例えば、図4に示したように、ここに開示されるリチウム二次電池100は、ハイレートでの入出力特性が求められる駆動用モータの駆動用電源(典型的には、ハイブリッド車両の駆動用電源)として好適であり、本発明は、ここで開示されるリチウム二次電池100(組電池の形態であり得る。)を備える車両(例えば自動車)1が、好適に提供される。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を示し、本発明についてさらに説明する。ただし、本発明がこれらの例に限定されることがないことは言うまでもない。
[正極]
<サンプル1>
正極活物質として、一般式:Li1.15Mn0.33Co0.33Ni0.33で表わされる組成のリチウムマンガン系複合酸化物を用意した。即ち、ビーカーに純水を入れ、リチウム源としての酢酸リチウム・二水和物〔Li(CHCOO)・2HO〕と、マンガン源としての酢酸マンガン(II)・四水和物〔Mn(CHCOO)・4HO〕と、ニッケル源としての酢酸ニッケル(II)・四水和物〔Ni(CHCOO)・4HO〕と、コバルト源としての酢酸コバルト(II)・四水和物〔Co(CHCOO)・4HO〕と、マンガン源としての酢酸マンガン(II)・四水和物〔Mn(CHCOO)・4HO〕、ジルコニウム源としての酢酸ジルコニウム〔Zr(CH3CO2)n〕およびグリコール酸を、上記組成物を形成するに適した所定の割合で添加して溶解混合した。次いでこれを酢酸によりpH1.8に調製し、80℃のオイルバスに一晩かけて水を蒸発させた。その後、600℃で5時間の焼成を行い、乳鉢にて粉砕したのち、さらに900℃で5時間焼成した。
<サンプル2〜6>
正極活物質として、粒子表面にWが偏析したリチウム含有複合酸化物を用意した。
すなわち、まず、窒素気流下、40℃で、3.25%水酸化ナトリウム水溶液と25%アンモニア水とを適量ずつ加え、液温25℃におけるpHが12.0、液相のアンモニア濃度が20g/Lとなるように調整して、塩基性水溶液を得た。なお、反応容器内の酸素濃度は2.0%程度であった。
次に、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、硫酸ジルコニウムを、これらの元素モル比Ni:Co:Mnが0.33:0.33:0.33となり、これら遷移金属の合計濃度が1.8mol/Lとなるように塩基性水溶液に溶解させて、NiCoMn水溶液を調製した。
また、窒素気流下、40℃で、パラタングステン酸アンモニウムを水に溶解させ、タングステン(W)濃度が0.05mol/LのW水溶液を調製した。
このように調製したNiCoMnZr水溶液およびW水溶液を、上記塩基性水溶液にpHを12.0に維持しながら添加・混合して、構成元素としてNi、Co、Mn、Wを含む水酸化物(前駆体)を得た。なお、NiCoMnZr水溶液とW水溶液の割合は5段階で変化させた。この水酸化物粒子を、温度150℃の大気雰囲気中で12時間加熱した。
上記水酸化物中の全遷移金属(すなわち、Ni,Co,Mn,W)のモル数の合計をMとして、該Mに対するリチウムのモル比(Li/M)が1.15となるように、炭酸リチウムを秤量し、上記加熱処理後の水酸化物粒子と混合した。得られた混合物を、酸素21体積%の空気中にて、760℃で4時間焼成した後、950℃で10時間焼成して、一般式:Li1.15Mn0.33XCo0.33XNi0.33X(1−0.99X)で表わされる組成の粒状のリチウム含有複合酸化物を得た。
この5通りに調製したリチウム含有複合酸化物について、X線光電子分光分析装置(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて表面の元素分析を行ったところ、表面のW濃度は、0.4原子%、0.9原子%、1.5原子%、2.1原子%、2.9原子%であった。
導電材としてはアセチレンブラック(AB)を用い、このABの凝集体(2次粒子)の体積基準での累積50%粒径(D50)が2.5μm、4.0μm、7.8μm、8.9μm、10.3μmの5通りのものを用意した。
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた。
上記のとおり用意した正極活物質(サンプル1〜6)、導電材(5通り)およびバインダを、これらの材料の質量比が正極活物質:導電材:バインダで表わしたときに93:4:3となるように配合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合して、スラリー状の組成物を調製した。この組成物を、集電体としての厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、両面の合計の目付量が約30mg/cm(固形分基準)となるように塗布した。これを乾燥後、圧延プレス機によりプレスして、正極活物質層の密度が2.8g/cmの正極シートを作製した。
[負極]
負極活物質として天然黒鉛を用い、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これらの材料の質量比が98:1:1となるように配合し、イオン交換水と混合して、スラリー状の組成物を調製した。この組成物を、集電体としての厚さ10μmの銅箔の両面に、両面の合計の目付量が約18.0mg/cm(固形分基準)となるように塗布した。これを乾燥後、圧延プレス機によりプレスして、負極活物質層の密度が1.4g/cmの負極シートを作製した。
[評価用セルの作製]
次いで、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比3:4:3の割合で混合した非水溶媒中に、支持塩としてのLiPFを1mol/Lの濃度となるように加え、さらに、ガス発生添加剤としてのシクロヘキシルベンゼン(CHB)およびビフェニル(BP)を各々の濃度が2質量%となるよう添加して、非水電解質を調製した。
上記正極シートと上記負極シートとを、二枚のセパレータ(PP/PE/PPからなる厚さ20μmの三層構造の微多孔質シート)を介して積層し、長手方向に捲回して電極体を作製した。この電極体を、上記非水電解質とともにラミネート型容器に収容して、評価用セルとしてのリチウムイオン二次電池を構築した。この評価用セルの定格容量は50mAhである。
[コンディショニング]
上記のように構築された評価用セルについて、電解質の注入後、10時間程度放置し、電池電圧が2.0V以上になってからコンディショニング(初期充電)を行なった。ここでは、下記の手順1および手順2の操作を3回繰り返すことでコンディショニングを行った。
[手順1]1Cの定電流(1Cは、満充電状態の電池を1時間で放電終止電圧まで放電させる電流値を意味する。放電時間率と称されることもある。)にて端子間電圧が4.1Vに到達するまで充電(CC充電)した後、5分間休止する。
[手順2]手順1の後、定電圧で1.5時間充電(CV充電)し、5分間休止する。
[60日保存後の容量維持率]
容量維持率(保存後容量維持率)は、コンディショニング後の所定の充電状態に調整した評価用セルを基に評価を行った。すなわち、所定の充電状態に調整した評価用セルの初期容量と、この所定の充電状態に調整された評価用セルを所定環境で所定時間保存した後の容量(以下、適宜に「保存後容量」という。)との比(保存後容量)/(初期容量)から、下記式により、保存後容量維持率を算出するものとした。
「保存後容量維持率(%)」=(保存後容量)/(初期容量)×100
ここでは、「初期容量」は、25℃において4.1V(SOC100%)に調整された評価用セルを基に測定した放電容量である。また、「保存後容量」は、25℃において4.1V(SOC100%)に調整された後、60℃の温度環境で60日間保存した評価用セルを基に測定した放電容量である。そして、「放電容量」は、それぞれ25℃において、4.1Vから3.0Vまで1Cの定電流で放電させ、続いて合計放電時間が2時間となるまで定電圧で放電させた際に測定される積算容量(放電容量)である。
[過充電ガス発生量]
コンディショニング後の評価用セル(50mAh)に対し、1CでSOC145%までCC充電した後に発生したガス量を測定し、セル容量あたりのガス発生量(ml/Ah)を算出することで過充電時のガス発生量を評価した。具体的には、コンディショニング後に、アルキメデス法にてセルの体積を測定し、過充電後に再び同法にてセルの体積を測定し、過充電後のセルの体積からコンディショニング後のセルの体積を差し引くことでガス発生量を算出した。なお、アルキメデス法とは、測定対象物(本例では、ラミネート型のリチウム二次電池)を、媒液(例えば、蒸留水やアルコール等)に浸漬し、測定対象物が受ける浮力を測定することにより、該測定対象物の体積を求める方法である。
[評価]
従来より一般的に用いられているレベルであるD50が10.3μmの導電材を用いて、表面W濃度が0原子%の正極活物質を用いた評価用セルと、表面W濃度2.9原子%の正極活物質を用いた評価用セルとについて、「60日保存後の容量維持率」および「過充電ガス発生量」を測定した結果を抽出して図5に示した。
図5より、正極活物質の表面にWが存在することで、セルの60日保存後の容量維持率が大きく向上することがわかる。しかしその一方で、過充電時のガス発生量は大幅に低減し、これでは過充電時に電流遮断機構が正常に作動しないことが懸念される。
各評価用セルに対する「60日保存後の容量維持率」の測定結果を表1に、「過充電ガス発生量」の測定結果を表2と図6および図7に示した。
Figure 2013161644
Figure 2013161644
60日保存後の容量維持率は、表1に示した通り、正極活物質の表面のW濃度が高くなるにつれて上昇し、例えば、W濃度が0.9原子%以上の場合に、保存後容量維持率80%以上を達成できることが確認できた。また、この保存後容量維持率は、導電材の平均粒径(D50)とは相関性がないことも確認できた。
一方の過充電時のガス発生量は、表2および図6に示した通り、正極活物質の表面にWが存在することで急激に減少すること、そしてW濃度が高くになるにつれガス発生量が少なくなることが確認できた。また、過充電時のガス発生量は、導電材の平均粒径(D50)に関連性があることも確認できた。
より詳細に、保存後容量維持率80%以上を達成し得る、表面のW濃度が0.9原子%以上の正極活物質を用いたセルの過充電ガス発生量を図7に示した。
過充電時に電流遮断機構を作動させるには、少なくとも20ml/Ah程度、好ましくは30ml/Ah程度のガスを発生させ得ることが好ましい。このような観点から、正極活物質の表面におけるW濃度は、0.9原子%〜2.9原子%程度とすることができ、0.9原子%〜2.1原子%程度とするのがより好ましいことが確認できた。また、導電材のD50は、2.5μm〜7.8μm程度とすることができ、4.0μm〜7.8μm程度とするのがより好ましいことが確認できた。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
ここで開示される技術によると、電解質にガス発生添加剤を含み、かつ、タングステンを含む正極活物質を用いた場合でも、過充電時に十分なガス発生量を確保することのできる、保存特性と過充電安全性とを兼ね備えたリチウム二次電池を得ることができる。
1 車両
10 正極シート(正極)
12 正極集電体
14 正極活物質層
16 正極活物質層非形成部分
20 負極シート(負極)
22 負極集電体
24 負極活物質層
26 負極活物質層非形成部分
30 電流遮断機構
32 変形金属板(第一部材)
33 湾曲部分
34 接続金属板(第二部材)
35 集電リード端子
36 接合点
38 絶縁ケース
40A、40B セパレータ
50 電池ケース
52 ケース本体
54 蓋体
70 正極端子
72 負極端子
74 正極リード端子
76 負極リード端子
80 捲回電極体
100 リチウム二次電池

Claims (9)

  1. 正極活物質および導電材を含む正極と、負極活物質を含む負極と、炭化水素化合物からなるガス発生添加剤を含む非水電解質とを備えるリチウム二次電池であって、
    前記正極活物質は、タングステン(W)を含み層状構造を有する粒状のリチウム遷移金属複合酸化物であって、
    前記導電材は、一次粒子が集まった凝集体の形態を有しており、
    前記凝集体の平均粒径が9μm未満の範囲で制御されることで、前記凝集体の存在下で前記ガス発生添加剤の分解に起因して発生されるガスの発生量が制御されている、リチウム二次電池。
  2. 前記Wは前記リチウム遷移金属複合酸化物の表面に偏析しており、
    該表面におけるW濃度が0.9原子%〜2.9原子%で、
    前記導電材における前記凝集体の平均粒径が2.5μm〜7.8μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 前記導電材における前記凝集体の平均粒径が3.0μm〜4.5μmである、請求項2に記載のリチウム二次電池。
  4. 前記正極活物質100質量部に対して、前記導電材が1質量部〜20質量部の割合で配合されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  5. 前記ガス発生添加剤が、前記電解質中に0.01質量%〜10質量%の割合で配合されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  6. 前記ガス発生量が、前記電池の定格容量あたりのガス発生量として20ml/Ah以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  7. 前記リチウム遷移金属複合酸化物の少なくとも一部として、一般式(1):
    LiNiCoMn (1)
    (ここで、Mは存在しないか、もしくは、Zr,Nb,Alから選択される少なくとも一種であり、xは、1.0≦x≦1.25を満たし、a,b,c,d,eは、a+b+c+d+e=1および0.001≦(d+e)≦0.02を満たし、a,b,cのうち少なくとも一つは0よりも大きく、e>0である。);
    で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  8. さらに、前記正極と、前記負極と、前記非水電解質とを収容する電池ケースを備え、
    前記電池ケースは、通常使用時は前記ケースの内部と外部とのガスの流通を阻止し、前記ケース内の内圧が所定レベルを超えて上昇した際に変形して前記正極および前記負極間の電気的接続を断つ電流遮断機構を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の二次電池を駆動用電源として備える、車両。
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