JP2013161589A - 透明導電膜の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

透明導電膜の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性、導電性及び平面性に優れ、特に有機電子デバイスに用いた際、高温雰囲気下での保存時の発光均一性に優れ、有機電子デバイスの寿命を高め、駆動電圧に優れた透明導電膜の製造方法を提供する。
【解決手段】透明導電膜1の製造方法は、透明な基材11上に、少なくとも導電性ポリマーと解離性基含有自己分散型ポリマーとを水系溶媒に分散した分散液を用いて透明導電層13を形成する工程と、透明導電層13が形成された前記基材11を、50℃以上90℃以下の温度で乾燥処理する工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、太陽電池、電磁波シールド、電子ペーパー、タッチパネル等の各種分野において好適に用いることができる透明導電膜の製造方法、及び、当該製造方法によって製造された透明導電膜を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以後、有機EL素子、有機ELデバイスともいう)に関する。
近年、薄型テレビ需要の高まりに伴い、液晶、プラズマ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)、フィールドエミッション等、各種方式のディスプレイ技術が開発されている。これら表示方式の異なるいずれのディスプレイにおいても、透明電極(透明導電膜)は必須の構成技術となっている。また、テレビ以外のタッチパネル、携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子等においても、透明電極は欠くことのできない技術要素となっている。
従来、透明電極としては、ガラスや透明なプラスチックフィルム等の透明基材上に、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)膜を真空蒸着法やスパッタリング法で製膜したITO透明電極が主に使用されてきた。しかし、ITOに用いられているインジウムはレアメタルであり、かつ価格の高騰により、脱インジウムが望まれている。また、ディスプレイの大画面化、生産性向上に伴い、フレキシブル基板を用いたロール to ロールの生産技術が所望されている。
近年、このような大面積かつ低抵抗値が要求される製品にも対応できるよう、パターン状に形成された金属細線に導電性ポリマー等の透明電極を積層し、電流の面均一性と高い導電性を併せ持つ透明導電フィルムが開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。
しかしながら、このような構成では、有機電子デバイスのリークの原因となる金属細線の凹凸を、導電性ポリマー等の透明電極でなだらかにする必要があり、導電性ポリマーの厚膜化が必須となる。しかし、導電性ポリマーは可視光領域に吸収を有するため、厚膜化すると、透明電極の透明性が著しく低下してしまうという問題を有していた。導電性と透明性を両立する方法として、導電性層上へ導電性ポリマーとバインダーを積層する技術が開示されている(例えば、特許文献3,4参照)。
特開2005−302508号公報 特開2009−87843号公報 特開2011−96437号公報 特開2009−230885号公報
しかし、水酸基(OH)を有する構造単位を含むバインダー樹脂を使用した場合、高温雰囲気での保存時に、バインダー樹脂に含まれるヒドロキシ基が架橋反応して水分が発生し、有機エレクトロルミネッセンス素子の性能劣化を引き起こす課題がある。このため、導電層中の残留水分の低減、架橋反応を十分に進行させるために、100℃以上の高い乾燥温度が必要になり、ひいては、バインダーや導電性ポリマーの一部が分解し、低分子成分が生成するため、保存時に透明電極、有機EL素子に悪影響を及ぼし、所望の保存性能が得られないという問題を有していた。
また、特許文献4には、導電性高分子に対して、末端又は側鎖に水酸基又はカルボキシ基を有する水溶性ポリエステルとシラン化合物を含む透明導電性層が積層された導電性フィルムの技術が開示されているが、導電性高分子の比率が高いため、金属細線の凹凸をなだらかにするために必要な膜厚にした場合、透明性が劣化するという問題を有していた。さらに、80℃以上160℃以下の温度範囲で10秒以上300秒以下のような短時間の乾燥条件では、シラン化合物と水溶性ポリエステルの架橋反応が不十分のため、高温雰囲気での保存時に、架橋反応が進行して水分が発生し、有機エレクトロルミネッセンス素子の性能劣化を引き起こす問題を有していた。
さらに、ガラス転移温度が低いポリマーを使用しているため、透明電極の表面平滑性が得られないばかりか、有機電子デバイスに用いた際の高温雰囲気下での保存時の発光均一性、有機電子デバイスの寿命の悪化、駆動電圧が高くなるという問題があった。
本発明は、前記問題に鑑みなされたものであり、透明性、導電性及び平面性に優れ、特に有機電子デバイスに用いた際、高温雰囲気下での保存時の発光均一性に優れ、有機電子デバイスの寿命を高め、駆動電圧に優れた透明導電膜の製造方法、並びに、当該製造方法によって製造された透明導電膜を用いた有機電子デバイスを提供することを課題とする。
本発明者は、上記問題について詳細に検討してみたところ、下記のようなプロセスを経て、本発明を考案するに至った。
すなわち、大面積(10cm×10cm以上)の有機電子デバイスに好適に対応可能な透明電極を提供する場合、面抵抗を低下させるために、パターン状に形成された金属材料からなる金属細線を電極として用いることが有効だが、薄膜の有機機能層を有する有機電子デバイスでは、金属細線のエッジや、表面の平滑性不足により電流リークが発生とする、という課題がある。電流リークを防止するためと電流の面内均一性をえるために、導電性ポリマーを含有する透明導電層で、金属細線のパターンを覆う事が有効である。しかし、電流リークを十分に防止するためには、透明導電層を厚膜化する必要があり、透明性が低下するという問題が生じる。
透明導電層の導電性ポリマーに、繰り返し単位中に水酸基(OH)を有する構造単位を含む水溶性バインダーを加える方法、水酸基又はカルボキシル基を有する水溶性ポリエステルとシラン化合物を加える方法が知られている。
しかし、このような水溶性バインダーや水溶性ポリエステルを透明導電層の水溶性バインダーとして使用した場合、バインダー樹脂に含まれるヒドロキシ基の架橋反応により水分が発生し、有機電子デバイスの高温雰囲気での保存性、例えば80℃での保存性が劣化するため、透明導電層を塗布形成した後に100℃以上の高温乾燥処理を行い、十分に架橋反応を促進させる事が必要である。しかし、このような高温での乾燥処理は有機電子デバイスの寿命や駆動電圧に悪影響を与えると考えられる。これはバインダーや導電性ポリマーの一部が分解され、低分子成分が生成したためと推定している。
さらに、ガラス転移温度が低いポリマーを使用しているため、高温での乾燥処理により透明電極の表面平滑性が劣化し、有機電子デバイスの温雰囲気下での保存時の発光均一性、駆動電圧が高くなるという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明者らは鋭意検討を行った結果、透明導電層が形成された基材を所定条件で乾燥処理することにより、透明導電膜の残留水分の低減、低分子成分発生の抑制、透明導電膜の表面平滑性劣化を抑制する事で、透明導電膜の透明性と導電性を両立し、有機電子デバイスに用いた際の高温雰囲気下での保存時の均一性、有機電子デバイスの寿命の改善、駆動電圧を改良出来る事を見出し、本発明に至った。また、本発明では、高温の乾燥処理を不要にすることができるため、樹脂基板、特に安価なポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等からなる樹脂フィルムを基材として用いることが可能になった。
すなわち、本発明は、以下の構成により課題を解決することができる。
1.透明な基材上に、少なくとも導電性ポリマーと解離性基含有自己分散型ポリマーとを水系溶媒に分散した分散液を用いて透明導電層を形成する工程と、前記透明導電層が形成された前記基材を、50℃以上90℃以下の温度で乾燥処理する工程と、を含むことを特徴とする透明導電膜の製造方法。
2.透明な基材上に、金属細線を形成する工程と、前記金属細線が形成された前記透明基板上に、少なくとも導電性ポリマーと解離性基含有自己分散型ポリマーと水系溶媒に分散した分散液を用いて透明導電層を形成する工程と、前記金属細線及び前記透明導電層が形成された前記基材を、50℃以上90℃以下の温度で乾燥処理する工程と、を含むことを特徴とする透明導電膜の製造方法。
3.前記解離性基含有自己分散型ポリマーのガラス転移温度は、25℃以上150℃以下であることを特徴とする前記1又は2に記載の透明導電膜の製造方法。
4.前記乾燥処理工程における前記温度は、前記解離性基含有自己分散型ポリマーのガラス転移温度の+20℃以下であることを特徴とする前記3に記載の透明導電膜の製造方法。
5.前記乾燥処理工程の時間は、72時間以上720時間以下であることを特徴とする前記1から4のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
6.前記1から5のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法によって製造された透明導電膜を透明電極として備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明によると、透明性、導電性及び平面性に優れ、特に有機電子デバイスに用いた際、高温雰囲気下での保存時の発光均一性に優れ、有機電子デバイスの寿命を高め、駆動電圧に優れた透明導電膜の製造方法、並びに、当該製造方法によって製造された透明導電膜を用いた有機電子デバイスを提供することができる。
本発明の実施形態に係る透明導電膜の一例を示す概略図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のX矢視断面図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
[透明導電膜]
図1に示すように、透明導電膜1は、有機電子デバイスの1要素を構成する部材であり、透明な基材(透明基材)11と、パターン状に形成された金属材料からなる第1導電層(金属細線)12と、導電性ポリマー及び水系溶媒に分散可能な解離性基含有自己分散型ポリマーを含有し、第1導電層12と電気的に接続された第2導電層(透明導電層)13と、を備える。すなわち、透明導電膜1は、主に透明な基材11、金属細線12及び透明導電層13から構成されており、はじめに透明基材11上に金属細線12が形成され、その後に金属細線12が形成された透明基材11上に透明導電層13が形成されることによって製造される。以下において、先に透明導電膜13の構成について説明し、その後に有機電子デバイスの有機発光層と第2電極との各構成について説明する。
[透明基材]
透明基材11における「透明」とは、JIS K 7361−1:1997(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が70%以上であることをいう。本発明に係る透明基材11の材料としては、透明な材料であれば特に制限なく、有機電子デバイス等に用いられ公知のものを使用することができる。本発明では、例えば、樹脂基材、ガラス基材等を用いることができるが、硬度、軽量性、柔軟性、ロールツーロールによる連続生産適性、コスト等の観点から、樹脂フィルム又は可撓性を有する薄膜ガラスが用いることが好ましい。このような可撓性に優れた基材を用いると、折り曲げ可能な有機電子デバイスが作製できる。本発明では、特に、有機電子デバイスの折り曲げによる、発光均一性等のデバイス性能の劣化を防止できることから、基材11は、樹脂フィルムであることがより好ましい。
有機電子デバイスの折り曲げによる劣化の一因として、基材11と透明導電層13の界面の剥離による有機機能層へのダメージが考えられる。基材11に樹脂フィルムを用い、透明導電膜13を、温度が50℃以上90℃以下で時間が72時間以上720時間の条件で、乾燥処理すると、基材11と透明導電層13の密着性が良くなり、折り曲げによる界面の剥離が起きにくくなったと考えられ、折り曲げによるデバイス性能劣化を防止できる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
透明基材11には、基材11と透明導電層13との接着性を良好にするために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
透明基材11が樹脂基板又は樹脂フィルムの場合には、必要に応じてバリアコート層が予め形成されていてもよいし、ハードコート層が予め形成されていてもよい。
バリアコート層として、透明基材11の表面又は裏面には、無機物の被膜、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下のバリア性を持つ透明基板であることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下であることが好ましい。
バリア層を形成する材料としては、水分や酸素等デバイスの劣化をもたらすものの侵入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。さらにバリア層の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
[金属細線]
本発明に係る金属細線12は、金属材料を含有する層であり、透明基材11上に開口部12aを有するようにパターン状に形成された層である。開口部12aとは、透明基材11のうち、金属細線12を有さない部分であり金属パターンの透光性部分である。パターンの形状には特に制限はない。パターンの形状は、例えば、ストライプ状(平行線状)、格子状、ハニカム状、ランダムな網目状であってもよく、特にストライプ状、格子状、ハニカム状であることが好ましい。
透明導電膜1において、面全体に対して、開口部12aが占める割合、すなわち開口率は、透明性の観点から80%以上であることが好ましい。例えば、導電部がストライプ状であるとき、線幅100μm、線間隔1mmのストライプ状パターンの開口率は、およそ90%である。パターンの線幅は、透明性及び導電性の観点から、好ましくは10〜200μmであり、さらに好ましくは10〜100μmである。細線12の線幅が10μm以上で、所望の導電性が得られ、また、200μm以下とすることで透明性が向上する。ストライプ状、格子状のパターンにおいて細線の間隔は、透明性及び導電性の観点から、0.5〜4mmが好ましい。ハニカム状のパターンにおいては、細線の間隔(一辺の長さ)は、透明性及び導電性の観点から、0.5〜4mmが好ましい。細線12の高さ(厚さ)は、導電性及び電流リーク防止の観点から、0.1〜5.0μmが好ましく、0.1〜2.0μmがより好ましい。細線12の高さが0.1μm以上で所望の導電性が得られ、また5.0μm以下とすることで有機電子デバイスに用いた際、電流リークが抑制され、上層に積層される透明導電層13の膜厚分布を均一にすることができる。また、特に細線12の高さ(厚さ)を0.1〜2.0μmとすることが、折り曲げによる有機電子デバイスの性能劣化を抑制できることからより好ましい。
有機電子デバイスの折り曲げによる劣化には、前記した基材11と透明導電層13の剥離の他、細線12の高さや透明導電層13の膜厚分布も影響すると考えられる。細線12の高さが高すぎると折り曲げの際、金属細線12にクラックが生じ、透明導電層13を突き破り、有機電子デバイスの性能を劣化させる。また、透明導電層13の膜厚分布が不均一だと、膜厚が薄くなった部分に応力が集中するため、その部分が有機電子デバイスの劣化の原因となる。
ストライプ状、格子状、ハニカム状の金属細線12の形成方法としては、特に制限はなく、従来公知な方法が利用できる。
金属細線12の形成方法としては、例えば、フォトリソ法、銀塩写真技術、印刷法を応用した方法等を利用でき、特に、有機電子デバイスに用いた際の折り曲げによる有機電子デバイスの性能劣化が少ないため印刷法を利用するのがより好ましい。
公知のフォトリソ法とは、具体的には、基材11上の全面に、印刷、蒸着、スパッタ、めっき等の1以上の物理的又は化学的形成手法を用いて導電体層を形成する、若しくは、金属箔を接着剤で基材に積層した後、公知のフォトリソ法を用いて、エッチングすることにより、所望のストライプ状、格子状、ハニカム状に加工できる。
銀塩写真技術を応用した方法については、例えば、特開2009−140750号公報の[0076]−[0112]及び実施例を参考にして実施できる。
公知の印刷法とは、金属粒子を含有する金属細線用塗布液を印刷により、パターン形成する方法である。金属粒子を含有する金属細線用塗布液は、下述する金属粒子を含有する金属粒子分散液である。金属粒子分散液は、水、アルコール等の溶媒中に金属粒子を含有するが、必要に応じバインダー、金属を分散させるための分散剤等を含んでもよい。金属粒子分散液を用い、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の印刷方式により金属パターンを形成することができる。
各印刷方式は、一般的に電極パターン形成に使われる手法が本発明に関しても適用可能である。具体的な例として、グラビア印刷法については特開2009−295980、特開2009−259826、特開2009−96189、特開2009−90662記載の方法等が、フレキソ印刷法については特開2004−268319、特開2003−168560記載の方法等が、スクリーン印刷法については特開2010−34161、特開2010−10245、特開2009−302345記載の方法等が例として挙げられる。
金属粒子の平均粒径としては、原子スケールから1000nmの範囲のものが好ましく適用できる。金属粒子の平均粒径が小さいほど金属細線12の緻密化(導電性向上)及び表面平滑性に有利であるが、平均粒径が極端に小さい場合には、製造上の制限があり、高コストにもなる。かかる観点から、本発明においては、特に平均粒径が3〜300nmであるものが好ましく、5〜100nmであるものがより好ましく用いられる。前記した中でも特に、また、透明基材11として樹脂基板や樹脂フィルムを用いる場合は、低い乾燥温度で高い導電性を得ることができるため、平均粒径3nm〜100nmの銀ナノ粒子が好ましい。
本発明において、平均粒径とは、光散乱方式を用いた市販の測定装置を使用して簡便に計測することが可能であり、具体的にはゼータサイザー1000(マルバーン社製)を用いて、レーザドップラー法によりS25℃、サンプル希釈液量1mlにて測定した値をいう。
金属粒子分散液は、パターン形成後、乾燥することが好ましい。これにより、金属粒子同士の融着が進み、金属細線が高導電化するため、特に好ましい。乾燥温度は、導電性の観点から、100℃以上500℃以下であることが好ましい。乾燥時間は、温度や使用する金属粒子の大きさにもよるが、生産性の観点から、10秒以上30分以下であることが好ましく、10秒以上15分以下であることが好ましく、10秒以上5分以下であることがより好ましい。
透明基材11に樹脂基板又は樹脂フィルムを用いる場合は、100℃以上250℃以下の温度範囲で、基材11にダメージのない温度で金属粒子分散液を乾燥することが好ましい。乾燥処理方法は特に制限はなく、公知の処理方法を用いることができる。例えば、乾燥処理態様として、ヒータやIRヒータを用いた乾燥、減圧乾燥等を挙げることができるが、これに限定されない。また、透明基材11に樹脂基板又は樹脂フィルムを用いる場合は、乾燥処理に加えて、プラズマ処理やキセノンフラッシュ処理等を行うことが低抵抗化の観点から、より好ましい。
ランダムな網目状のパターンを形成する方法としては、例えば、特表2005−530005号公報に記載のような、金属粒子を含有する液を塗布乾燥することにより、自発的に導電性微粒子の無秩序な網目構造を形成する方法を利用できる。
金属細線12に用いられる金属としては、導電性に優れていれば特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等の金属の他に合金等を挙げることができる。導電性の観点からは、銀又は銅が好ましく、銀又は銅単独でもよいし、それぞれの組み合わせでもよく、銀と銅の合金、銀及び銅の一方が他方でめっきされていてもよい。
金属細線12の細線部の表面比抵抗は、100Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましく、大面積化の観点から、5Ω/□以下であることがさらに好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257、等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
[透明導電層]
本発明に係る透明導電層13は、少なくとも導電性ポリマーと水系溶媒に分散可能なポリマーで解離性基含有自己分散型ポリマーとを含有する透明でかつ導電性を有する層である。この項目では、先に導電性ポリマー及び解離性基含有自己分散型ポリマーの説明を行い、その後に透明導電層の構成や製造方法、特性等について説明する。
(1)導電性ポリマー
本発明に係る導電性ポリマーとしては、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含んで成る導電性ポリマーを好ましく用いることができる。こうした導電性ポリマーは、後記するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後記するポリアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
(1.1)π共役系導電性高分子
π共役系導電性高分子として、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンであることが最も好ましい。
(1.2)π共役系導電性高分子前駆体モノマー
前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。前駆体モノマーとしては、例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
(1.3)ポリアニオン
ポリアニオンは、アニオン基を複数有するオリゴマー又はポリマーである。ポリアニオンとしては、置換又は未置換のポリアルキレン、置換又は未置換のポリアルケニレン、置換又は未置換のポリイミド、置換又は未置換のポリアミド、置換又は未置換のポリエステル、これらの共重合体等が好ましく、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものが好ましく用いられる。
かかるポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。ポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。ポリアニオンは、これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
また、ポリアニオンは、化合物内にフッ素(F)を有するものであっても良い。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)等を挙げることができる。これらのうち、スルホン酸を有する化合物であると、透明導電層を塗布後、温度が50℃以上90℃以下で時間が72時間以上720時間以内の条件で乾燥処理を行うことによって、透明導電層の洗浄耐性や溶媒耐性が著しく向上することから、より好ましい。さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、後記する水溶性バインダーとの相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
ポリアニオンの重合度は、π共役性導電性高分子の分散性の観点から、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
アニオン基含有重合性モノマーを重合により製造する方法としては、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
(1.4)市販の材料
こうした導電性ポリマーは市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からCLEVIOSシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PASS483095、560598として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることができる。
(1.5)第2のドーパント
ポリアニオンは、第2のドーパントとして水溶性有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることができる水溶性有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。
前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、ヒドロキシ基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等が挙げられる。
前記ヒドロキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。
前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。ヒドロキシ基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい
(2)解離性基含有自己分散型ポリマー
本発明に係る水系溶媒に分散可能な解離性基含有自己分散型ポリマーとは、ミセル形成を補助する界面活性剤や乳化剤等を含まず、ポリマー単体で水系溶媒に分散可能なものであり、本発明において、「水系溶媒に分散可能」とは、水系溶媒中に凝集せずにバインダー樹脂からなるコロイド粒子が分散している状況であることをいう。コロイド粒子の大きさは一般的に0.001〜1μm(1〜1000nm)程度である。粒子の大きさとしては3〜500nmが好ましく、より好ましくは5〜300nmで、さらに好ましくは10〜100nmである。コロイド粒子が大きい場合(500nmよりも大きい場合)には、コロイド粒子を用いて造膜する際に平滑性が悪くなる。また、コロイド粒子が極端に小さい場合(3nmよりも小さい場合)には、コロイド粒子の製造に制限があり、また高コストになる。造膜する際の平滑性を高めるとともに低コストを実現するためには、コロイド粒子の大きさは、5〜300nmであることがより好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましい。前記したコロイド粒子については、光散乱光度計により測定することができる。
また、前記水系溶媒としては、純水(蒸留水、脱イオン水を含む)のみならず、酸、アルカリ、塩等を含む水溶液、含水の有機溶媒、さらには親水性の有機溶媒であることを意味し、純水(蒸留水、脱イオン水を含む)、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、水とアルコールの混合溶媒等が挙げられる。
本発明に係る解離性基含有自己分散型ポリマーは、透明であることが好ましい。解離性基含有自己分散型ポリマーとしては、フィルムを形成する媒体であれば、特に限定はない。また、透明導電膜1表面へのブリードアウト、有機EL素子を積層した場合の素子性能に問題がなければ特に限定はないが、ポリマー分散液中に界面活性剤(乳化剤)や造膜温度をコントロールする可塑剤等は含まないことが好ましい。
透明導電膜1の製造に用いられる解離性基含有自己分散型ポリマーの分散液のpHは、別途相溶させる導電性ポリマー溶液と分離しない範囲という観点から、0.1〜11.0であることが好ましく、3.0〜9.0であることがより好ましく、4.0〜7.0であることがさらに好ましい。
本発明に係る解離性基含有自己分散型ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、25℃以上150℃以下であること好ましく、50℃以上80以下であることがより好ましい。Tgが25℃未満である場合には、透明導電膜13の表面平滑性が得られないばかりか、透明導電膜1、有機EL素子の環境試験後の性能を悪化させる。また、Tgを150℃よりも高くするためには、骨格の剛直化、高分子量化等が必要であり、これらのポリマーを100nm未満にして分散液中に分散させるのは困難である。また、ガラス転移温度が80℃を超える場合には、透明導電膜1の製造時の乾燥温度では解離性基含有自己分散型ポリマー粒子の溶融が十分に進行しないが、乾燥後の表面は粗くならず、上部に各種の層を積層して有機EL素子を製造したときにリークが起こらず所望の性能が得られるのであれば、解離性基含有自己分散型ポリマーの粒子形状を保った状態であってもよい。また、Tgが50℃以上80℃以下の場合には、透明導電膜1の製造時の乾燥温度で解離性基含有自己分散型ポリマー粒子の溶融が十分に進行する。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度10℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めることができる。
解離性基含有自己分散型ポリマーに使用される解離性基としては、アニオン性基(スルホン酸、及びその塩、カルボン酸及びその塩、リン酸及びその塩等)、カチオン性基(アンモニウム塩等)等が挙げられる。特に限定はないが、導電性高分子溶液との相溶性の観点から、アニオン性基が好ましい。解離性基の量は、自己分散型ポリマーが水系溶媒に分散可能であれば良く、可能な限り少ない方が工程適性的に乾燥負荷が低減されるため好ましい。また、アニオン性基、カチオン性基に使用されるカウンター種に特に限定はないが、透明導電膜1、有機EL素子を積層形成した場合の性能の観点から、疎水性で少量であることが好ましい。
解離性基含有自己分散型ポリマーの主骨格としては、ポリエチレン、ポリエチレン−ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン−ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン−ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアクリレート−ポリエステル、ポリアクリレート−ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン−ポリカーボネート、ポリウレタン−ポリエーテル、ポリウレタン−ポリエステル、ポリウレタン−ポリアクリレート、シリコーン、シリコーン−ポリウレタン、シリコーン−ポリアクリレート、ポリフッ化ビニリデン−ポリアクリレート、ポリフルオロオレフィン−ポリビニルエーテル等が挙げられる。また、これらの骨格をベースに、さらに他のモノマーを使用した共重合でもよい。これらの中でエステル骨格を有するポリエステル樹脂エマルジョン、ポリエステル−アクリル樹脂エマルジョン、エチレン骨格を有するポリエチレン樹脂エマルジョンが好ましい。
市販品としては、ポリゾールFP3000(ポリエステル樹脂、アニオン、コア:アクリル、シェル:ポリエステル、昭和電工社製)、バイロナールMD1245(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナールMD1500(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナールMD2000(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、プラスコートRZ105(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)、プラスコートRZ561(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)、プラスコートRZ570(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)を用いることができる。前記した水系溶媒に分散可能な解離性基含有自己分散型ポリマー分散液は、1種でも複数種でも使用することができる。
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、後記するポリカルボン酸成分及びポリオール成分からなるポリエステル原料を縮重合して得られるポリエステル樹脂が使用できる。本発明に用いられるポリエステル樹脂は、分子中に解離性基を有するポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解し、攪拌下、系中に水を添加することにより、転相、自己乳化させて製造する事ができる。
2価のカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族カルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸等が挙げられる。脂環族ポリカルボン酸は、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上が任意に使用できる。
前記したポリカルボン酸のうち芳香族ジカルボン酸以外の脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸は、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸類が好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、多価カルボン酸を併用しても良い。3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等、又はこれらの酸の無水物若しくは低級アルキルエステル等が挙げられる。
前記したポリオールとしては、具体的には2価の脂肪族グリコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、トリエチレングリコール、2−メチル−1,3− プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3− プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4− ブタンジオール、2− メチル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。また、2価の芳香族グリコールとしては、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、p−キシレン−α,α’−ジオール、m−キシレン−α,α’−ジオール等が挙げられる。
また、2価の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ダイマージオール等が挙げられる。
また、3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル− 1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
前記したポリエステル樹脂は、水系溶媒に分散可能とするために、前記した解離性基を分子内に有する。解離性基として、スルホン酸又はその塩を導入する方法としては、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸等の金属塩又は2−スルホ−1,4−ブタンジオ−ル、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキサンジオ−ル等の金属塩等のスルホン酸金属塩基を含有するジカルボン酸又はグリコ−ルを使用する方法が挙げられる。
カルボン酸又はその塩の導入方法は、樹脂を重合した後に常圧、窒素雰囲気下、無水トリメリット酸無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸、無水1,8−ナフタル酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−3,4− 無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ナフタレン1,8:4,5−テトラカルボン酸二無水物等から1種又は2種以上を選択し、重縮合終了後に前記した酸無水物を添加する方法や樹脂を高分子量化する前のオリゴマー状態のものにこれらの酸無水物を投入し、次いで減圧下の重縮合により高分子量化することで、樹脂にカルボキシル基を導入することができる。
例えば、ポリエステル樹脂及び分散物は、特開2007−277496号公報、特開2006−290963号公報、特開平7−82381号公報等を参考に作成することができる。ポリエステル樹脂の製造法、及び分散液の製造法の1例を以下に示す。
<ポリエステル樹脂の製造>
酸成分として、テレフタル酸(TPA)2160g、イソフタル酸1578g、5−スルホイソフタル酸(SIP)6.7g、セバシン酸(SEA)505g、アルコール成分としてエチレングリコール(EG)931g、ネオペンチルグリコール(NPG)1953gをオートクレーブ中に仕込んで、250℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。仕込み原料比率はTPA/IPA/SIP/SEA/EG/NPG=52/38/0.1/10/60/75(モル比)であった。続いて、触媒として酢酸亜鉛二水和物を3.3g添加した後、系の温度を260℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに5時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、255℃になったところで無水トリメリット酸7.2gを添加し、255℃で2時間攪拌して解重合反応を行った。続いて、系を窒素ガスで加圧状態にしておいて、ストランド状に樹脂を払い出し、水温が35℃のクエンチングバスを経由してペレタイザーでカッティングすることで、ペレット状のポリエステル樹脂P−1を得た。得られたポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、45℃であった。
<ポリエステル樹脂水性分散体の製造>
ジャケット付きガラス2L容器にポリエステル樹脂P−1を400gとMEKを600g投入し、ジャケットに60℃の温水を通して加熱しながら、攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂を溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液1000gを得た。続いて、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、回転速度50rpmで攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン23.8gを添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水を1107g添加して転相乳化を行った。続いて、得られた水性分散体のうち、1600gを2Lのフラスコに入れ、常圧下で蒸留を行うことで有機溶媒を留去した。蒸留は留去量が630gになったところで終了し、室温まで冷却後、ポリエステル樹脂水性分散体を攪拌しながら、25質量%アンモニア水1.1gを添加した。その後、1000メッシュのステンレス製フィルターで濾過し、固形分が20%のポリエステル樹脂水性分散体E−1を得た。
解離性基含有自己分散型ポリマーの使用量は、導電性高分子に対して70〜1000質量%が好ましく、より好ましくは100〜900質量%で、さらに好ましくは200〜800質量%である。
(3)構成、製造方法、特性等
透明導電層13は、金属細線12と透明基材11とを被覆するように、前記した導電性ポリマー及び水系溶媒に分散可能な解離性基含有自己分散型ポリマーと水系溶媒とを少なくとも含有する分散液を、塗布、乾燥して膜形成されたものである。導電性ポリマー及び水系溶媒に分散可能な解離性基含有自己分散型ポリマーと水系溶媒とを少なくとも含有する分散液は、ホモジナイザー、超音波分散機(US分散機)、ボール見る等を用いた分散技術等を用いることによって作製可能である。
透明導電層13の形成工程における「乾燥」は、温度が50℃以上90℃以下で時間が72時間以上720時間以下の条件で行う後記する乾燥処理に含まれていてもよいし、これとは別に90℃以下で1〜30分の乾燥処理を行うものでもよい。
溶媒としては、水系溶媒が用いられる。水系溶媒とは、50質量%以上が水である溶媒を表す。もちろん、他の溶媒を含有しない純水であっても良い。水系溶媒の水以外の成分は、水に相溶する溶媒であれば特に制限はないが、アルコール系の溶媒を好ましく用いることができ、中でも、沸点が比較的水に近いイソプロピルアルコールを用いることが形成する層の平滑性等に有利である。
透明導電層13の塗布には、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法を用いることができる。
透明導電層13は、前記した水系溶媒に分散可能な解離性基含有自己分散型ポリマーを含むことで、導電性ポリマーの導電性が増強され、高い導電性を得ることができる。また、透明導電層13は、水系溶媒に分散可能な解離性基含有自己分散型ポリマーの高い透明性により、導電性ポリマー単独では得られない、高い透明性を得ることができる。
さらに、50℃以上90℃以下の温度で72時間以上720時間以内の乾燥処理を行うことで、水系溶媒に分散可能なポリマーで解離性基含有自己分散型ポリマー間又は解離性基含有自己分散型ポリマーと導電性ポリマーとの間で縮合反応が起こり、折り曲げによる基材11と透明導電層13との剥がれや、透明導電層13のひび割れが改良する。
透明導電層13の乾燥膜厚は、透明導電層13の透過率と金属細線12の開口部12aの大きさから要求されるシート抵抗率を考慮して適宜選択できるが、表面平滑性及び透明性の観点から、30〜2000nmであることが好ましい。透明導電層13の乾燥膜厚は、導電性の点から、100nm以上であることがより好ましく、透明性の点から、1000nm以下であることがより好ましい。
本発明に係る導電性ポリマー及び水系溶媒に分散可能な解離性基含有自己分散型ポリマーを含む分散液は、透明導電層13の導電性、透明性及び平滑性を同時に満たす範囲において、さらに他の透明なポリマー、添加剤、架橋剤等を含有してもよい。
透明なポリマーとしては、天然高分子樹脂及び合成高分子樹脂から広く選択して使用することができ、水溶性高分子又は水性高分子エマルジョンが特に好ましい。
水溶性高分子としては、天然高分子のデンプン、ゼラチン、寒天等、半合成高分子のヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、合成高分子のポリビニルアルコール、ポリアクリル酸系高分子、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等が、水性高分子エマルジョンとしては、アクリル系樹脂(アクリルシリコン変性樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が、使用することができる。
合成高分子樹脂としては、透明な熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン)や、熱・光・電子線・放射線で硬化する透明硬化性樹脂(例えば、メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケート等のシリコン樹脂)を使用することができる。
添加剤としては、可塑剤、安定剤(酸化防止剤、硫化防止剤等)、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、着色剤(染料、顔料等)等が挙げられる。さらに、塗布性等の作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
水溶性バインダーの架橋剤としては、例えばオキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、阻止イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、ホルムアルデヒド系架橋剤等を単独又は複数併用して用いることができる。
[透明導電膜の製造方法]
透明導電膜1の製造方法は、主に(i)〜(iii)の工程から構成される。
(i)透明基材11上に、金属細線12を形成する工程
(ii)透明基材11及び金属細線12上、又は、透明基材11上に、透明導電層13を形成する工程
(iii)金属細線12及び透明導電層13が形成された透明基材11、又は、透明導電層13が形成された透明基材11を所定の条件で乾燥処理する工程
(i)及び(ii)の各工程の処理は、前記したとおりであり、(i)の工程は省略可能である。(iii)の工程では、透明導電層を塗布形成した後、金属細線及び透明導電層を形成した透明導電膜を、温度が50℃以上90℃以下で時間が72時間以上720時間以下の条件で、乾燥処理する。
本発明では、前記した乾燥温度と乾燥時間の範囲内で乾燥処理を行うことにより、透明性、導電性、平滑性が良好で、有機電子デバイスの高温雰囲気での保存性、発光寿命、駆動電圧を改良することができる。
乾燥温度は、50℃以上90℃以下であることが好ましく、70℃以上90℃以下であることがより好ましい。乾燥温度が50℃未満又は乾燥時間が72時間未満の場合、導電性ポリマーと解離性基含有自己分散型ポリマーの反応が不十分であるため、有機電子デバイスの高温雰囲気での保存性が低下する。
また、乾燥温度が90℃超又は乾燥時間が720時間超で乾燥処理を行うと、透明導電層13中の解離性基含有自己分散型ポリマーや導電性ポリマーの一部が分解され、低分子成分が発生し、有機電子デバイスの発光寿命の向上の効果が得られなかったり、透明導電膜1の平滑性の劣化により、発光均一性が劣化する。
乾燥温度を50℃以上90℃以下の範囲内で、かつ、解離性基含有自己分散型ポリマーのガラス転移温度に対して+20℃未満にすることが、透明導電膜1の平面性の劣化が抑えられるため好ましい。また、乾燥温度は、50℃以上90℃以下の範囲内で、かつ、解離性基含有自己分散型ポリマーのガラス転移温度に対して+10℃未満にすることがより好ましい。
(iii)の工程によれば、高温の乾燥処理を不要にすることができるため、樹脂基材、特に安価なフィルム樹脂を用いることが可能になる。
乾燥処理方法は、特に制限はなく、公知の乾燥処理方法を用いることができる。乾燥処理方法としては、例えば、ヒータやIRヒータを用いた乾燥、減圧乾燥、誘導加熱、マイクロ波加熱、レーザ加熱、プラズマ加熱等が挙げられるが、温度や湿度制御の簡便さの観点から、ヒータを用いた乾燥又は減圧乾燥が好ましい。
また、乾燥を行う際には、低温(例えば、30℃程度)からゆっくりと昇温させ、本発明の範囲内の温度(例えば、60℃程度)で乾燥させた後、ゆっくりと降温させることが好ましい。特に本発明においては、乾燥処理を透明導電層の塗布形成後、減圧下で行うことが水分の乾燥促進にもつながり、好ましい。
乾燥処理工程において加熱処理を行う場合には、相対湿度を最適範囲に設定することが好ましい。その相対湿度は、好ましくは0〜70%RHであり、より好ましくは0〜20%RHであり、さらに好ましくは0〜10%RHである。
<有機EL素子>
本発明の実施形態に係る有機EL素子は、透明導電膜1を電極として備えることを特徴とするものであり、有機発光層を含む有機層と、透明導電膜1と、を備える。本発明の実施形態に係る有機EL素子は、透明導電膜1を陽極として備えることが好ましく、有機発光層及び陰極については、有機EL素子に一般的に使われている材料、構成等の任意のものを用いることができる。
有機EL素子の素子構成としては、陽極/有機発光層/陰極、陽極/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、陽極/ホール注入層/有機発光層/電子注入層/陰極、等の各種の構成のものを挙げることができる。
また、本発明において、有機発光層に使用できる発光材料又はドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、各種蛍光色素、希土類金属錯体、燐光発光材料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を90〜99.5質量部、ドーピング材料を0.5〜10質量部含むようにすることも好ましい。有機発光層は、前記した材料等を用いて、蒸着、塗布、転写等の公知の方法によって製造される。この有機発光層の厚みは、発光効率の観点から、0.5〜500nmが好ましく、0.5〜200nmがより好ましい。
本発明の実施形態に係る透明導電膜1は、高い導電性と透明性とを併せ持ち、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、電子ペーパー、有機太陽電池、無機太陽電池等の各種オプトエレクトロニクスデバイスや、電磁波シールド、タッチパネル等の分野において好適に用いることができる。その中でも、透明電極表面の平滑性が厳しく求められる有機EL素子や有機薄膜太陽電池素子の透明電極として特に好ましく用いることができる。
また、本発明に係る有機EL素子は、均一にムラなく発光させることができるため、照明用途で用いることが好ましいものであり、自発光型ディスプレイ、液晶用バックライト、照明等に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
合成例1(バインダー樹脂P−1の合成:比較化合物)
[ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート(P−1)の合成]
300mlナスフラスコに2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成社製)5.0g(43.1mmol、Fw116.12)、2,2′−アゾビス(2−メチルイソプロピオニトリル)0.7g(4.3mmol、Fw164.21)及びテトラヒドロフラン100mlを加え、8時間加熱還流した。その後、溶液を室温まで冷却し、激しく攪拌されたメチルエチルケトン2.0L中へ滴下した。反応溶液を1時間攪拌後、メチルエチルケトンをデカンテーションし、メチルエチルケトン100mlで壁面に付着した重合体を3回洗浄した。ポリマーはテトラヒドロフラン100mlに溶解し、200mlフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターによりテトラヒドロフランを減圧留去した。その後、80℃3時間減圧することで、残留しているTHFを留去し、数平均分子量57,800、分子量分布1.24のP−1を4.1g(収率82%)得た。
構造、分子量は各々H−NMR(400MHz、日本電子社製)、GPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。また、得られたP−14.0gを16.0gの純水に溶解し、P−1の20%水溶液を作製した。
〈GPC測定条件〉
装置:Waters2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414(Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr含有)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
《サンプルの作製》
(1.)フィルム基板の準備・作製
(1.1.1)平滑層の形成
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PETフィルム)に対し、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を、塗布・乾燥後の平均膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布し、その後80℃で3分間乾燥させ、その後空気雰囲気下で高圧水銀ランプを使用して硬化条件1.0J/cmで硬化を行い、平滑層を形成した。
(1.1.2)ガスバリア層の形成
続いて、前記平滑層を設けた試料上に、ガスバリア層を以下に示す条件で形成した。
(ガスバリア層塗布液)
パーヒドロポリシラザン(PHPS、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN320)の20質量%ジブチルエーテル溶液を、ワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)膜厚が0.30μmとなるように塗布し、塗布試料を得た。
(1.1.3)乾燥処理
得られた塗布試料を温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分処理し、乾燥試料を得た。
(1.1.4)除湿処理
乾燥試料をさらに温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行った。
(1.1.5)改質処理
(改質処理A)
除湿処理を行った試料を下記の条件で改質処理を行い、ガスバリア層を形成した。改質処理時の露点温度は−8℃で実施した。
(改質処理装置)
株式会社エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200、波長172nm、ランプ封入ガス:Xe
稼動ステージ上に固定した試料を以下の条件で改質処理を行った。
(改質処理条件)
エキシマ光強度 60mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 1mm
ステージ加熱温度 70℃
照射装置内の酸素濃度 1%
エキシマ照射時間 3秒
前記のようにしてガスバリア性を有する透明電極用のPETフィルム基材を作製した。
(1.2)金属細線の形成
細線格子(金属材料)については、以下に示すグラビア印刷、銀ナノワイヤ又は銅メッシュにより作製した。基材としては、前記のように作成したガスバリア性を有する透明導電膜用の3cm角のPETフィルム基材を用いた。
(グラビア印刷)
基材上に、銀ナノ粒子ペースト1(M−Dot SLP:三ツ星ベルト製)をRK Print Coat Instruments Ltd製グラビア印刷試験機K303MULTICOATERを用いて線幅50μm、高さ1.5μm、間隔1.0mmの細線格子を印刷した後、110℃、30分の乾燥処理を行った。
(銀ナノワイヤによるランダムな網目構造)
ランダムな網目構造については以下に示すように銀ナノワイヤを用いて作製した。基材上に、銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤの目付け量が0.06g/mとなるように、銀ナノワイヤ分散液を、バーコート法を用いて塗布し110℃、5分乾燥加熱し、銀ナノワイヤ付基材を作製した。
銀ナノワイヤ分散液は、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、PVP K30(分子量5万;ISP社製)を利用して、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別、洗浄処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を銀に対し25質量%加えた水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
(銅メッシュ付基材)
基材上に、下記の方法により、銅メッシュを作製し、金属微粒子除去液BFによるパターンニングを行い、銅メッシュ付基材を作製した。パラジウムナノ粒子を含有する森村ケミカル社製の触媒インクJIPD−7を用い、それにCabot製の自己分散型カーボンブラック溶液CAB−O−JET300を、触媒インクに対するカーボンブラック比率が10.0質量%になるように添加し、更にサーフィノール465(日信化学工業株式会社)を添加して、25℃における表面張力が48mN/mである導電性インクを調製した。
続いて、導電性インクを、インクジェット記録ヘッドとして、圧力印加手段と電界印加手段とを有し、ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのドット数を表す)のピエゾ型ヘッドを搭載したインクジェットプリント装置に装填し、基材上に線幅10μm、乾燥後膜厚0.5μm、線間隔300μmの格子状の導電性細線を形成した後、乾燥した。
続いて、メルテックス社製の高速無電解銅メッキ液CU−5100を用い、温度55℃で10分間浸漬した後、洗浄して、無電解メッキ処理を施して、メッキ厚3μmの銅メッシュ基板を作製した。
実施例1
<<透明導電層の形成>>
(透明電極TC−101の作製〉
フィルム基材上にグラビア印刷にて金属細線を形成した透明電極(透明導電膜)上に、下記のように調製した塗布液Aを、押し出し法を用いて、乾燥膜厚400nmになるように押し出しヘッドのスリット間隙を調整して塗布し、導電性ポリマーと水系溶媒に分散可能なポリマーからなる透明導電層を形成し、ヒータを用いて80℃2分間乾燥後、別のヒータで表1に示す条件でそれぞれ乾燥処理を行った。
〈透明導電層の形成〉
(塗布液A)
下記組成の溶液に対して、71kPa、ノズル直径0.1mm、5〜10℃の条件下で、ホモジナイザーを用いて2回均質化し、導電性組成物CPC−1を得た。
導電性ポリマー:PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、ヘレウス株式会社製) 1.59g
バインダー:ポリゾールFP3000(固形分54.4%水溶液) 0.13g
ジメチルスルホキシド(DMSO、導電性ポリマー溶液質量の10分の1) 16g
透明電極TC−101〜113、116、118〜126、130〜140には、ヤマト科学(株)社 クリーンオーブンDE410、透明電極TC−114、115、127〜129 については、湿度の調整のため、ESPEC社プラチナスKシリーズ低湿度型型恒温恒湿器PDR−3K、透明電極TC−117については、ESPEC社 VAC−100PRを用いた。
透明電極TC−101〜113、116、118〜126、130〜140は、特に湿度調整は行っていない。
(透明電極TC−102〜115、118 の作製)
透明電極TC−101の作製において、塗布液Aのバインダーであるポリゾールを表1記載のポリマーに変更し、さらに塗布液Aへの添加固形分が70mgになるように添加量を変更し、加熱処理条件を表1に示す条件に変更以外は透明電極TC−101の作製と同様にして、透明電極TC−102〜115、118を作製した。
(透明電極TC−116の作製)
透明電極TC−112の作製において、
加熱処理条件を温度を40℃から70℃まで60時間かけて昇温し、70℃で180時間加熱したこと以外は、透明電極TC−112の作製と同様にして、透明電極TC−116を作製した。
(透明電極TC−117の作製)
透明電極TC−112の作製において、表1に示す加熱処理条件下で、減圧乾燥(−200mmH0)、240時間の乾燥を行ったこと以外は、透明電極TC−112の作製と同様にして、透明電極TC−117を作製した。
(透明電極TC−118の作製)
透明電極TC−101の作製において、ポリゾールFP3000をプラスコートRZ570に変更し、さらに塗布液AのPEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%、ヘレウス株式会社製)を、ポリアニリンM(固形分濃度6.0%、ティーエーケミカル)0.5gに変更し、加熱処理条件を表1に示す条件に変更したこと以外は透明電極TC−101の作製と同様にして透明電極TC−118を作製した。
(透明電極TC−119の作製)
前記した銀ナノワイヤによりランダムな網目構造を形成した透明電極上に、塗布液AのバインダーであるポリゾールFP3000をプラスコートRZ570に変更した塗布液を用い、加熱処理条件を表1に示す条件に変更に変更したこと以外は、透明電極TC−101の作製と同様の方法により第2導電層を形成し、透明電極TC−119を作製した。
(透明電極TC−120の作製)
前記した銅メッシュを形成した透明電極上に、塗布液AのバインダーであるポリゾールFP3000をプラスコートRZ570に変更した塗布液を用い、加熱処理条件を表1に示す条件に変更に変更したこと以外は、透明電極TC−101の作製と同様の方法により第2導電層を形成し、透明電極TC−120を作製した。
(透明電極TC−121の作製)
細線構造のないガスバリア性を有する透明電極用のPETフィルム基材上に、塗布液AのバインダーであるポリゾールFP3000をプラスコートRZ570に変更した塗布液を用い、加熱処理条件を表1に示す条件に変更に変更したこと以外は、透明電極TC−101の作製と同様の方法により第2導電層を形成し、透明電極TC−121を作製した。
(比較透明電極TC−123〜135、138の作製)
透明電極TC−101の作製において、塗布液Aのバインダーであるポリゾールを表1記載のポリマーに変更し、さらに塗布液Aへの添加固形分が70mgになるように添加量を変更し、加熱処理条件を表1に示す条件に変更以外は透明電極TC−101の作製と同様にして、比較透明電極TC−123〜135、138を作製した。
(比較透明電極TC−136の作製)
特開2011-96437号公報の実施例に記載の導電性ポリマーとバインダーの混合液Fを作成し、透明電極TC−101の作成と同様な方法で、金属細線を形成した透明電極上に塗布を行って、導電性ポリマーと水系溶媒にバインダーからなる透明導電層を形成し、表1に示す条件で加熱処理を行い、比較透明電極TC−136を作製した。
(導電性ポリマーとバインダーの混合液F)
導電性ポリマー:PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(ヘレウス株式会社製) 1.59g
水系ポリエステル バイロナールMD1400(固形分15%)(東洋紡製) 0.47g
ジメチルスルホキシド 0.10g
ブロックイソシアネート (エラストロンBN−11、第一工業製薬(株)) 0.09g
硬化触媒(エラストロンCAT−21、第一工業製薬(株)社製) 0.004g
(比較透明電極TC−137の作製)
特開2009−230885号公報の実施例2に記載の方法に従い、導電性ポリマーと水溶性ポリエステルの混合液Gを作成し、透明電極TC−101の作成と同様な方法で、金属細線を形成した透明電極上に塗布を行って、導電性ポリマーと水系溶媒にバインダーからなる透明導電層を形成し、その後オーブンを用いて表1に示す条件でそれぞれ加熱処理を行い、比較透明電極TC−137を作製した。
(導電性ポリマーと水溶性ポリエステルの混合液G)
Baytron P (固形分濃度1.3質量%)(バイエルAG製) 97質量部
ジエチレングリコール 3質量部
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名 Coatsil (登録商標)1770)をイソプロパノールで希釈した液(固形分濃度1.0質量%) 3.2質量部
プラスコート RZ570(固形分濃度 2.5%)(互応化学株式会社) 1.5質量部
(比較透明電極TC−139の作製)
透明電極TC−101の作製において、塗布液Aの導電性ポリマーを5.3gに変更し、加熱処理条件を表1に示す条件に変更以外は透明電極TC−101の作製と同様にして、比較透明電極TC−139を作製した。
(比較透明電極TC−140の作製)
透明電極TC−121の作製において、加熱条件を表1のように変更する以外は、同様の方法により第2導電層を形成し、比較透明電極TC−140を作製した。
<<透明電極の評価>>
ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、下記のようにして測定した。得られた透明電極の透明性、表面抵抗(導電性)、表面粗さを下記のように評価した。また、透明電極の安定性を評価するため、80℃90%RHの環境下で4日間置く強制劣化試験後の透明電極試料の透明性、表面抵抗、表面粗さの評価を行った。
(Tgの測定)
示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度10℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた。
(透明性)
JIS K 7361−1:1997に準拠して、東京電色社製 HAZE METER NDH5000を用いて、全光線透過率を測定し、下記基準で評価した。有機電子デバイスに用いるためには、75%以上であることが好ましい。
◎:80%以上
○:75%以上80%未満
△:70%以上75%未満
×:70%未満
評価基準:強制劣化試験後、◎,○と評価された試料が本発明として合格
(表面抵抗)
JIS K 7194:1994に準拠して、抵抗率計(ロレスタGP(MCP−T610型):(株)ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて表面抵抗を測定した。表面抵抗は100Ω/□以下であることが好ましく、有機電子デバイスを大面積にするには、30Ω/□以下であることが好ましい。
評価基準:強制劣化試験後、100Ω/□以下と評価された試料が本発明として合格
(表面粗さ(Ra,Ry))
AFM(セイコーインスツルメンツ社製SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニット)を使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を用いて、前記の方法(JIS B601(1994)に規定される表面粗さに準ずる。)で測定した。
評価基準:強制劣化試験後、Raが30nm以下、Ryが80nm以下と評価された試料が本発明として合格
Figure 2013161589
表1に示すとおり、TC−101〜122とTC−123〜140との比較から、透明電極を、温度が50℃以上90℃以下で時間が72時間以上720時間以下の条件で加熱処理すると、透明電極の透明性、表面抵抗及び平面性が良好で、強制劣化試験後の性能も良好であることが分かる。
また、TC−112とTC−116との比較から、加熱乾燥を行う際には、低温からゆっくりと昇温させ、本発明の範囲内の温度で処理することが好ましいことが分かる。
サンプル112と117の比較から、減圧する方が好ましいことが分かる。
また、TC−108,114とTC−115との比較から、相対湿度が低い条件で加熱処理を行った方が好ましいことが分かる。
実施例2
<<有機ELデバイスの作製>>
実施例1で作製した透明電極を超純水で洗浄後、アノード電極に用いて、当該アノード電極上に、有機EL層(正孔輸送層、有機発光層、正孔阻止層及び電子輸送層)とカソード電極とを以下の手順で形成し、有機ELデバイス OEL−201〜240を作製した。
有機EL層の正孔輸送層以降の層は、蒸着により形成した。市販の真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に必要量を充填した。蒸着用るつぼとしては、モリブデン製又はタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
(2.1)有機EL層の形成
まず、透明電極TC−101〜140に対し、正孔輸送層、有機発光層、正孔阻止層、電子輸送層からなる有機EL層を、透明電極TC−101〜140の中央部の17mm×17mmの範囲に順次形成した。
(2.1.1)正孔輸送層の形成
真空度1×10−4Paまで減圧した後、化合物1の入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ30nmの正孔輸送層を設けた。
(2.1.2)有機発光層の形成
続いて、以下の手順で各発光層を設けた。形成した正孔輸送層上に、化合物2が13.0質量%、化合物3が3.7質量%、化合物5が83.3質量%になるように、化合物2、化合物3及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で正孔輸送層と同じ領域に共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光の有機発光層を形成した。続いて、化合物4が10.0質量%、化合物5が90.0質量%になるように、化合物4及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で緑赤色燐光発光の有機発光層と同じ領域に共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光の有機発光層を形成した。
(2.1.3)正孔阻止層の形成
さらに、形成した有機発光層と同じ領域に、化合物6を膜厚5nmに蒸着して正孔阻止層を形成した。
(2.1.4)電子輸送層の形成
引き続き、形成した正孔阻止層と同じ領域に、CsFを膜厚比で10%になるように化合物6と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
Figure 2013161589
(2.2)カソード電極の形成
形成した有機EL層の電子輸送層の上に、15mm×22mmの陰極形成用材料としてAlを5×10−4Paの真空下にてマスク蒸着し、厚さ100nmの陰極を形成した。
さらに、陰極及び陽極の外部取り出し端子が形成できるように、端部を除き陽極の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレートを基板としAlを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ封止膜を形成し、発光エリア15mm×15mmの有機ELデバイスOEL−201〜240を作製した。
なお、熱処理は周囲の接着剤だけが加熱されるように、接着剤の塗ってある部分に型取ったステージを用いてヒータで行った。
《有機ELデバイスの評価》
得られた有機ELデバイスOEL−201〜240のそれぞれについて高温雰囲気での保存性、発光寿命、さらに駆動電圧を下記のように評価した
(比較の有機ELデバイスの作製)
比較対象として別途の電極(ITO基板)を下記のとおり作製した。ガスバリア性を有する電極用のフィルム基板に対し、ITO(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により150nm成膜し、ITO基板を作製し、フォトリソ法により、アノード電極(中央部15mm×15mm)を、取り出し部にITOが残るようにパターニングした。前記記載の有機ELデバイスの作製法に従って、アノード電極にITOを用いた比較の有機ELデバイスを作成し、有機EL素子OEL−201〜240の性能(発光寿命及び駆動電圧)評価の評価基準とした。
(発光均一性)
発光均一性は、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を有機ELデバイスに印加し発光させた。1000cd/mで発光させた有機EL素子OEL−201〜240について、50倍の顕微鏡で各々の発光輝度ムラを観察した。また、有機EL素子OEL−201〜OEL−240をオーブンにて80℃2時間加熱したのち、再び前記23±3℃、55±3%RHの環境下で1時間以上調湿した後、同様に発光均一性を観察した。
◎:完全に均一発光しており、申し分ない
○:ほとんど均一発光しており、問題ない
△:部分的に若干発光ムラが見られるが、許容できる
×:全面にわたって発光ムラが見られ、許容できない
評価基準:強制劣化試験後、◎,○と評価された試料が本発明として合格
(発光寿命)
得られた有機ELデバイスの、初期の輝度を5000cd/mで連続発光させて、電圧を固定して、輝度が半減するまでの時間を求めた。
アノード電極をITOとした透明電極(比較対象)を具備する有機ELデバイスに対する比率を求め、以下の基準で評価した。発光寿命は、100%以上が好ましく、150%以上であることがより好ましい。
◎:150%以上
○:100%以上150%未満
△:80%以上100%未満
×:80%未満
評価基準:強制劣化試験後、◎,○と評価された試料が本発明として合格
(駆動電圧)
初期の輝度を5000cd/mで発光した時の電圧を駆動電圧とし、前記で作成したアノード電極にITOを用いた比較の有機ELデバイスに対する比率を求め、以下の指標で評価した。95%未満が好ましく90%未満であることがより好ましい。
◎:90%未満
○:90%以上95%未満
△:95%以上100%未満
×:100%以上
評価基準:強制劣化試験後、◎,○と評価された試料が本発明として合格
評価の結果を表2に示す。
Figure 2013161589
表2に示すとおり、OEL−201〜222とOEL−223〜240との比較から、温度が50℃以上90℃以下で時間が72時間以上720時間以下の条件で加熱処理した透明電極を用いた有機ELデバイスは、有機ELデバイスの高温保存性、発光寿命と駆動電圧が向上することが分かる。
1 透明導電膜
11 基材(透明基材)
12 金属細線(第1導電層)
13 透明導電層(第2導電層)

Claims (6)

  1. 透明な基材上に、少なくとも導電性ポリマーと解離性基含有自己分散型ポリマーとを水系溶媒に分散した分散液を用いて透明導電層を形成する工程と、
    前記透明導電層が形成された前記基材を、50℃以上90℃以下の温度で乾燥処理する工程と、
    を含むことを特徴とする透明導電膜の製造方法。
  2. 透明な基材上に、金属細線を形成する工程と、
    前記金属細線が形成された前記透明基板上に、少なくとも導電性ポリマーと解離性基含有自己分散型ポリマーと水系溶媒に分散した分散液を用いて透明導電層を形成する工程と、
    前記金属細線及び前記透明導電層が形成された前記基材を、50℃以上90℃以下の温度で乾燥処理する工程と、
    を含むことを特徴とする透明導電膜の製造方法。
  3. 前記解離性基含有自己分散型ポリマーのガラス転移温度は、25℃以上150℃以下である
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜の製造方法。
  4. 前記乾燥処理工程における前記温度は、前記解離性基含有自己分散型ポリマーのガラス転移温度の+20℃以下である
    ことを特徴とする請求項3に記載の透明導電膜の製造方法。
  5. 前記乾燥処理工程の時間は、72時間以上720時間以下である
    ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の透明導電膜の製造方法。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の透明導電膜の製造方法によって製造された透明導電膜を透明電極として備える
    ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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