以下、本発明を詳細に説明する。偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面又は両面に、透明樹脂からなる保護フィルムを積層することにより製造される。ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムは、具体的には、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向したものである。そして本発明では、上記偏光フィルムの少なくとも片面に積層される保護フィルムは、特定の接着剤を介して偏光フィルムと接合される。
[偏光フィルム]
偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体などであり得る。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などを挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度、好ましくは98モル%以上である。このポリビニルアルコール系樹脂はさらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度、好ましくは1,500〜5,000程度である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、例えば、10〜150μm 程度である。
偏光フィルムは通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て、製造される。
一軸延伸は、染色の前に行ってもよいし、染色と同時に行ってもよいし、染色の後に行ってもよい。一軸延伸を染色の後で行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸には、例えば、周速の異なるロール間で一軸に延伸する方法などが採用できる。また、熱ロールを用いて一軸に延伸する方法や大気中で延伸を行うなどの乾式延伸であってもよいし、溶剤にて膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。二色性色素として具体的には、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100重量部あたり 0.01〜1重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり 0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、またこの水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して、染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部程度、好ましくは1×10-3〜1重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度であり、またこの水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部程度、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸含有水溶液はさらにヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部程度、好ましくは5〜12重量部程度である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、さらに好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常10〜120秒程度である。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒程度である。
こうして、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色及びホウ酸処理が施されて、偏光フィルムが得られる。この偏光フィルムの厚みは、5〜40μm 程度である。本発明では、この偏光フィルムの少なくとも片面に、好ましくは両面に、保護フィルムが積層され、偏光板とされる。保護フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば20〜200μm 程度である。
[保護フィルム]
本発明に用いられる保護フィルムの材料も特に限定されないが、対象が光学用途に用いる偏光板であるため、透明性に優れる樹脂からなる保護フィルムが好ましい。保護フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの如きポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンの如きポリオレフィン、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートの如き酢酸セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、アクリル樹脂などを挙げることができる。特に、透明性及び耐久性に優れていることから、トリアセチルセルロースをはじめとする酢酸セルロース系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂が好ましい。
好適な一形態では、偏光フィルムの少なくとも片面に貼合される保護フィルムを、酢酸セルロース系樹脂からなるフィルムで構成することができる。別の好適な形態では、偏光フィルムの片面にシクロオレフィン系樹脂からなる保護フィルムを貼合し、偏光フィルムの他面には酢酸セルロース系樹脂からなる保護フィルムを貼合し、偏光板とすることもできる。さらに別の好適な形態では、偏光フィルムの両面にシクロオレフィン系樹脂からなる保護フィルムを貼合することもできる。
ここで、酢酸セルロース系樹脂フィルム、特に、トリアセチルセルロースフィルムの具体例を挙げると、富士フイルム(株)から販売されている“フジタック TD80"、“フジタック TD80UF”及び“フジタック TD80UZ”、コニカミノルタオプト(株)から販売されている“KC8UX2M”及び“KC8UY”など(いずれも商品名)がある。
またシクロオレフィン系樹脂とは、例えば、ノルボルネンやテトラシクロドデセン(別名:ジメタノオクタヒドロナフタレン)、あるいはそれらの誘導体のような、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーから導かれるユニットを有する熱可塑性の樹脂である。このシクロオレフィン系樹脂は、上記シクロオレフィンの開環重合体や2種以上のシクロオレフィンを用いた開環重合体の水素添加物であることができるほか、シクロオレフィンと鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との付加共重合体であってもよい。また、極性基が導入されていてもよい。
市販の熱可塑性シクロオレフィン系樹脂としては、ドイツのTOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH で生産され、ポリプラスチックス(株)から入手できる“TOPAS”、JSR(株)から販売されている“アートン”(ARTON) 、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノア”(ZEONOR)及び“ゼオネックス”(ZEONEX)、三井化学(株)から販売されている“アペル”など(いずれも商品名)がある。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜して、フィルムとすることになるが、製膜には、溶剤キャスト法、溶融押出法など、公知の方法が適宜用いられる。
これら熱可塑性シクロオレフィン系樹脂フィルムは、延伸して位相差を付与することもでき、そのような位相差を有するシクロオレフィン系樹脂フィルムを保護フィルム兼位相差板として利用することもできる。位相差が付与されたシクロオレフィン系樹脂フィルムも市販されており、例えば、積水化学工業(株)から販売されている“エスシーナ”及び“SCA40” 、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノアフィルム”、JSR(株)から販売されている“アートンフィルム”など(いずれも商品名)がある。
これらの熱可塑性シクロオレフィン系樹脂フィルムは、接着剤を塗布する前に、表面活性化処理を施しておくことが好ましい。ここでいう表面活性化処理とは、樹脂の表面を活性化するための処理であり、その例として、非接触式のコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、有機金属化合物を含むガスの火炎を吹き付ける火炎処理などを挙げることができる。これらはいずれも、樹脂の表面を活性化するための処理として公知のものである。これらのなかでも、取扱いが簡便で、しかも表面活性化の効果が大きいことから、コロナ放電処理が好ましい。
コロナ放電処理は、電極に高電圧をかけてコロナ放電を発生させ、その放電面に配置された樹脂フィルムを活性化させる処理である。コロナ放電処理は、電極の種類、電極とフィルムの間隔、印加する電圧、処理されるフィルムの移動速度、コロナ放電の出力などを変化させることで、最良の結果が得られるようにすればよい。例えば、コロナ放電の出力は、2kW程度までかけることができるが、安全面からは1kW以下とするのが好ましく、さらに、保護フィルムの劣化や着色などの可能性を可及的に排除するためには、600W以下とするのがとりわけ好ましい。また、フィルムの移動速度は、3〜50m/分程度に設定するのが好ましい。さらに、フィルム表面を均一にコロナ放電処理するために、被処理フィルムをコロナ放電域に複数回通過させ、処理してもよい。
こうして保護フィルムに表面活性化処理を施した場合は、その活性化処理面が、接着剤を介して偏光フィルムと貼り合わされ、偏光板が作製される。
[接着剤]
本発明では、接着剤として、アクリル系硬化成分、ラジカル重合開始剤及びプロトン発生剤を含有する組成物を用いる。ここで、アクリル系硬化成分とは、分子内にラジカル反応性の官能基であるアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物であり、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子内に1個有する単官能(メタ)アクリロイル化合物、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子内に2個有する2官能(メタ)アクリロイル化合物、及び、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子内に3個以上有する多官能(メタ)アクリロイル化合物がある。これらのなかでも、アクリロイル基又はメタクリロイル基を分子内に少なくとも2個有する2官能又は多官能の(メタ)アクリロイル化合物を少なくとも1種配合することが好ましい。(メタ)アクリロイル基が(メタ)アクリル酸エステルの形で存在する(メタ)アクリレートモノマーが一般的であるが、(メタ)アクリロイルアミノ基の形で存在する(メタ)アクリルアミドモノマーも、アクリル系硬化成分となりうる。以下に、アクリル系硬化成分となりうる典型的な化合物を例示する。
単官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。その他、カルボキシル基含有の単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、1−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕フタル酸、1−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ヘキサヒドロフタル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、1−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕コハク酸、4−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕トリメリット酸なども挙げられる。また、単官能(メタ)アクリロイル化合物には、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1−カルボキシメチルピペリジンのような、(メタ)アクリロイルアミノ基含有モノマーも包含される。
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ハロゲン置換アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート類、水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート類、ジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート類などが代表的である。2官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。その他、シリコーンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−{2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ}フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−{2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ}シクロヘキシル〕プロパン、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物〔化学名:2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレートなども、2官能(メタ)アクリレートモノマーとなりうる。
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど、3価以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレートが代表的なものである。その他、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス〔2−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ}エトキシ〕プロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレートなども、多官能(メタ)アクリレートモノマーとなりうる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレートなどのオリゴマーも、アクリル系硬化成分となりうる。これらのオリゴマーを使用した場合、硬化反応時に発生する接着剤層の硬化収縮が抑えられる。その結果、接着剤層の硬化収縮に伴う内部応力の発生が抑えられ、接着強度の低下が小さくなる。
エポキシ(メタ)アクリレートは、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により製造することができ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有している。付加反応に用いられるポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、分子内にウレタン結合(−NHCOO−)及び少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。具体的には、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物や、ポリオール類をポリイソシアネートと反応させて得られる末端イソシアナト基含有ウレタン化合物と、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応生成物などであり得る。
上記ウレタン化反応に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
かかる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応に供されるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのうち芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート(例えば、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジベンジルベンゼントリイソシアネートの如きジ−又はトリ−イソシアネート、上記のジイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネートなどが挙げられる。
また、ポリイソシアネートとの反応により末端イソシアナト基含有ウレタン化合物とするのに用いられるポリオール類としては、芳香族、脂肪族及び脂環式のポリオールの他、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどを使用することができる。脂肪族のポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリンなどが挙げられる。また脂環式のポリオールとしては、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、上記したポリオール類と多塩基性カルボン酸又はその無水物との脱水縮合反応により得られるものである。多塩基性カルボン酸又はその無水物としては、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸などが挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリアルキレングリコールの他、上記したポリオール類又はジヒドロキシベンゼン類とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリオキシアルキレン変性ポリオールなどであり得る。
また、ポリエステル(メタ)アクリレートも、アクリル系硬化成分となり得る。ポリエステル(メタ)アクリレートとは、分子内にエステル結合と少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。具体的には、(メタ)アクリル酸、多塩基性カルボン酸又はその無水物、及びポリオールを用いた脱水縮合反応により得ることができる。脱水縮合反応に用いられる多塩基性カルボン酸又はその無水物としては、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。また、脱水縮合反応に用いられるポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートの市販品として、いずれも商品名で、“UV-6100B”及び“UV-7600B”〔以上、日本合成化学工業(株)製〕、“ビームセット 502H” 及び“ビームセット 575”〔以上、荒川化学工業(株)製〕、“EBECRYL 230”及び“EBECRYL 8411”〔以上、ダイセル・サイテック(株)製〕などが挙げられる。
以上説明したラジカル硬化型のアクリル系硬化成分は、接着剤として市販されているものを容易に入手することが可能で、例えば、いずれも商品名で、“ワールドロック XVL”シリーズ及び“ワールドロック 8000”シリーズ〔以上、協立化学産業(株)製〕 、“スリーボンド 3013”及び“スリーボンド 3017”〔以上、(株)スリーボンド製〕、“アロニックス UV-3300”〔東亞合成(株)製〕などを挙げることができる。これらの市販品には、後述するラジカル重合開始剤が配合されていることも多く、その場合には、アクリル系硬化成分+ラジカル重合開始剤の混合物として、その市販品を使用することができる。
本発明で用いる接着剤組成物に配合されるラジカル重合開始剤は、熱や紫外線などの作用によってラジカルを発生する化合物であり、(メタ)アクリル系化合物の如きラジカル重合性化合物の重合を開始できるものであればよい。ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン系やベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、チオキサントン系などの化合物が知られている。具体例を挙げれば、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンをはじめとするアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノンをはじめとするベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテルをはじめとするベンゾインエーテル系開始剤;4−イソプロピルチオキサントンをはじめとするチオキサントン系開始剤;その他、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンなどがある。
ラジカル重合開始剤として市販されているものには、例えばいずれも商品名で、“イルガキュア 184”、“イルガキュア 907”及び“ダロキュア 1173” (以上、チバ社製)、“Lucirine TPO”(BASF社製)などがある。
ラジカル重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。ラジカル重合開始剤はアクリル系硬化成分100重量部に対して、通常 0.5〜20重量部の割合で配合され、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは3〜5重量部である。
次に、本発明で用いる接着剤組成物に配合されるプロトン発生剤は、接着剤に混合するだけでプロトンを発生する有機酸や無機酸、また、熱や紫外線などの作用によりプロトンを発生する化合物であることができる。有機酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられ、無機酸としては、例えば、ホウ酸、ハロゲン化水素、硝酸などが挙げられる。
熱や紫外線などの作用により酸を発生する化合物は、一般にカチオン重合開始剤として知られるものであり、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレン錯体などの化合物がある。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4′−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。
また、鉄−アレン錯体としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械的強度や偏光フィルムとの良好な密着性を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
これらの光カチオン重合開始剤は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えばそれぞれ商品名で、“イルガキュア 250”(チバ社製)、“CPI-100P”及び“CPI-101A”〔以上、サンアプロ(株)製〕、“UVA CURE 1590”〔ダイセル・サイテック(株)製〕、“CYRACURE UVI-6992”〔ダウ・ケミカルズ社製〕、“サンエイド SI-60L”及び“サンエイド SI-80”〔以上、三新化学工業(株)製〕、“カヤラッド PCI-220”及び“カヤラッド PCI-620”〔以上、日本化薬(株)製〕、“UVI-6990”(ユニオンカーバイド社製)、“アデカオプトマー SP-150”、“アデカオプトマー SP-152”、 “アデカオプトマー SP-170”及び“アデカオプトマー SP-172”〔以上、(株)ADEKA製〕、“CI-5102”、“CIT-1370”、“CIT-1682”、“CIP-1866S”、“CIP-2048S”及び“CIP-2064S”〔以上、日本曹達(株)製〕、“DPI-101”、“DPI-102”、“DPI-103”、“DPI-105”、
“MPI-103”、“MPI-105”、“BBI-101”、“BBI-102”、“BBI-103”、“BBI-105”、
“TPS-101”、“TPS-102”、“TPS-103”、“TPS-105”、“MDS-103”、“MDS-105”、
“DTS-102”及び“DTS-103”〔以上、みどり化学(株)製〕、“PI-2074”(ローディア社製)などが挙げられる。
接着剤の貯蔵安定性の観点から、熱や紫外線などの作用により酸を発生する化合物をプロトン発生剤として用いるのが好ましく、さらには取扱い及び入手の容易さから、光カチオン重合開始剤として知られている“アデカオプトマー SP-152”、“アデカオプトマー SP-172”、“イルガキュア 250”、“CPI-100P”、“CPI-101A”、“UVA CURE 1590”、“CYRACURE UVI-6992”などが好適に用いられる。
これらのプロトン発生剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。プロトン発生剤は、その溶解性に合わせて、アクリル系硬化成分100重量部に対し、0.05〜30重量部程度の割合で配合されるが、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.25〜3重量部の割合である。
本発明に用いる接着剤は、以上のアクリル系硬化成分、ラジカル重合開始剤及びプロトン発生剤に加えて、さらに、分子内にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有しない樹脂、反応性希釈剤、光増感剤、シランカップリング剤、レベリング剤、酸化防止剤など、接着剤に用いられる通常の添加剤をさらに含有することもできる。
分子内にアクロイル基又はメタクリロイル基を有しない樹脂とは、主にアクリル系硬化成分が硬化収縮時に発生する内部応力を緩和する目的で樹脂に添加するものであり、混合さえできればその組成を特に限定するものではない。例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステルを主体とする共重合体などであり、特にゴム状弾性体が好適である。これら分子内にアクロイル基又はメタクリロイル基を有しない樹脂は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。分子内にアクロイル基又はメタクリロイル基を有しない樹脂を配合する場合、その量は、アクリル系硬化成分100重量部に対して、1〜200重量部、好ましくは3〜100重量部である。
反応性希釈剤とは、接着剤組成物を基材に濡れやすくするために用いられるもので、その添加によって接着剤組成物の粘度を下げる効果を有するものである。反応性希釈剤は、重合開始剤により反応し、接着性に悪影響を与えないものであれば、特に限定するものではない。具体的には、アクリル系硬化成分とは異なるが、重合開始剤により反応するオキセタン化合物やエポキシ化合物を挙げることができる。
反応性希釈剤として用いられるオキセタン化合物は、分子内に4員環エーテルを有する化合物であり、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。これらのオキセタン化合物は市販品を容易に入手することが可能であり、市販品の例としていずれも商品名で、“アロンオキセタン OXT-101”、“アロンオキセタン OXT-121”、“アロンオキセタン OXT-211”、 “アロンオキセタン OXT-221”、“アロンオキセタン OXT-212”〔いずれも東亞合成(株)製〕 などを挙げることができる。
反応性希釈剤として用いられるエポキシ系化合物には、芳香族エポキシ化合物、水素化エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物などがある。
芳香族エポキシ化合物の例として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテルの如きビスフェノール型エポキシ化合物;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂の如きノボラック型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールの如き多官能型のエポキシ樹脂などが挙げられる。
水素化エポキシ化合物は、上記の芳香族エポキシ化合物の原料である分子内に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する芳香族ポリヒドロキシ化合物を触媒の存在下、加圧下で選択的に水素化反応を行うことにより得られる水素化ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化したものであり、代表的な例として、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルがある。水素化エポキシ化合物に相当する市販品としては、 “JER 827”、“JER YX8000”〔いずれも、ジャパンエポキシレジン(株)製〕などを挙げることができる。
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルであり得る。具体的には、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコールやプロピレングリコール、グリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。これに相当する市販品として、“デナコール EX-212”、“デナコール EX-211”〔いずれも、ナガセケムテックス(株)製〕などを挙げることができる。
脂環式エポキシ化合物は、次式に示すような脂環式環に結合したエポキシ基(−O−)を分子内に少なくとも1個有する化合物であり、式中、mは2〜5の整数を表す。
上記式における (CH2)m 中の水素原子を1個又は複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合した化合物が、脂環式エポキシ化合物となり得る。また、脂環式環を形成する水素がメチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。中でも、エポキシシクロペンタン環(上記式においてm=3のもの)や、エポキシシクロヘキサン環(上記式においてm=4のもの)を有する化合物が、好ましいものとして挙げられる。脂環式エポキシ化合物の具体例として、次のようなものを挙げることができる。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ−[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン(また、3,4−エポキシシクロヘキサンスピロ−2',6'−ジオキサンスピロ−3'',5''−ジオキサンスピロ−3''',4'''−エポキシシクロヘキサンとも命名できる化合物)、
4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−2,6−ジオキサ−8,9−エポキシスピロ[5.5]ウンデカン、
4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
1,2:8,9−ジエポキシリモネン、
ビス−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、
ジシクロペンタジエンジオキサイドなど。
これらのなかでも好適な脂環式エポキシ化合物として、粘度が低くて希釈効果が高いことから、1,2:8,9−ジエポキシリモネンを挙げることができる。この化合物は、ダイセル化学工業(株)から“セロキサイド 3000” の商品名で販売されている。
これら反応性希釈剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。反応性希釈剤を配合する場合、その量は、アクリル系硬化成分100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは3〜50重量部である。
また光増感剤とは、紫外線のうち400nm以上の長波長領域に吸収を持ち、かかる長波長紫外光によって励起し、光カチオン重合開始剤にエネルギーを効率よく伝播させる役割を果たす化合物である。したがって、プロトン発生剤として、光カチオン重合開始剤を用いる場合、このような光増感剤を配合することが有効である。光カチオン重合開始剤は、比較的短波長側の紫外線に反応するので、紫外線が比較的長波長域にある場合には、光増感剤を加えないと重合開始効果が不十分となる。光増感剤に該当する典型的な化合物としては、9,10−ジブトキシアントラセンを挙げることができる。光増感剤に相当する市販品を挙げると、例えば商品名で、“Anthracure UVS-1331”〔川崎化成(株)製〕 などがある。このような光増感剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。光増感剤を配合する場合、その量は、アクリル系硬化成分100重量部に対し、通常 0.1〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。
シランカップリング剤は、反応性の官能基と加水分解性の基を併せ持つ有機ケイ素化合物であり、被着材との密着性に悪影響を及ぼさず、かつ粘度が低いことから、反応性希釈剤としての機能も有する。これに該当する典型的な化合物として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。シランカップリング剤の市販品としては、いずれも商品名で、“KBM-303”及び“KBM-403”〔以上、信越化学工業(株)製〕、 “A-186”及び“A-1310”〔以上、日本ユニカー(株)製〕、“TSL8172”及び“TSL8173”〔以上、GE東芝シリコーン(株)製〕などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。シランカップリング剤を配合する場合、その量は、アクリル系硬化成分100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部である。
レベリング剤は、接着剤のフィルム基材に対する濡れ性を調整するものである。基材によっては、塗工直後に接着剤がフィルムに十分濡れず、接着剤がフィルム表面でハジキを発生し、接着剤で濡れている部分と濡れていない部分ができることがあるが、レベリング剤はこのような現象を防ぐ作用がある。これに該当する典型的な化合物として、有機変性ポリシロキサンを挙げることができる。有機変性ポリシロキサンは、シリコーン骨格と有機変性部を有し、塗布後、樹脂表面の表面張力を下げる働きをもつ。他に、パーフルオロアルキル基とともに親水性基及び親油性基を有するオリゴマーであるフッ素系のレベリング剤もある。レベリング剤の市販品としては、いずれも商品名で、“SH 200-100cs”及び“ST86PA”〔以上、東レ・ダウコーニング(株)製〕、 “BYK-354”及び“BYK-361N”(以上、ビックケミー社製)などが挙げられる。これらレベリング剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。レベリング剤を配合する場合、その量は、アクリル系硬化成分100重量部に対して、 0.05〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部である。
酸化防止剤は、酸化防止能を有する化合物であり、これに該当する典型的な化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2−又は3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールなどが挙げられる。これら酸化防止剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。酸化防止剤を配合する場合、その量は、アクリル系硬化成分100重量部に対し、0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
以上説明した各成分を混合して接着剤組成物が調製され、その接着剤組成物を、偏光フィルム及び保護フィルムの少なくとも一方の貼合面に塗布して、接着剤層が形成される。この接着剤層を介して、偏光フィルムと保護フィルムを貼合し、接着剤層を硬化させるのであるが、この硬化は、活性エネルギー線、特に紫外線の照射によって行うのが有利である。接着剤層の厚さは、硬化後で通常50μm 以下、好ましくは20μm 以下、さらに好ましくは10μm 以下である。接着剤層があまり厚くなると、活性エネルギー線の照射による硬化に大きなエネルギーを必要とし、現実的でなくなる。
プロトン発生剤を含有する接着剤組成物の粘度が高く、接着層の膜厚を50μm 以下にするのが困難な場合には、接着剤組成物に溶剤を混合し、その粘度を調整してもよいが、その場合、乾燥工程が必要になるため、可能なら、溶剤は用いないほうが好ましい。
[偏光板の製造方法]
本発明においては、偏光フィルム及び保護フィルムの少なくとも一方の貼合面に、上で説明したアクリル系硬化成分、ラジカル重合開始剤及びプロトン発生剤を含有する接着剤組成物の塗布層を形成し、その接着剤組成物塗布層を介して偏光フィルムと保護フィルムとを貼り合わせ、次いでその接着剤組成物を硬化させることにより、偏光板を製造する。接着剤組成物の塗布方法は特に制限されず、この接着剤組成物を滴下又はキャストする方法や、ダイコーター、グラビアコーター、バーコーター、ワイヤーバーなど任意のコーティング機器を使用し、塗布膜厚を制御しながら塗布する方法などが採用できる。
未硬化の接着剤組成物を介して偏光フィルムと保護フィルムを貼り合わせた後、その接着剤組成物を硬化させ、保護フィルムを偏光フィルム上に固着させる。この硬化は、先にも述べたように、活性エネルギー線の照射により行うのが有利である。
活性エネルギー線の照射に用いる光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。ラジカル硬化型接着剤への光照射強度は、目的とする組成物毎に決定されるものであって、やはり特に限定されないが、開始剤の活性化に有効な320〜390nmの波長領域の照射強度が10〜1,000mW/cm2であることが好ましい。光照射強度が10mW/cm2 未満であると、反応時間が長くなりすぎ、1,000mW/cm2を超えると、ランプから輻射される熱及び接着剤の重合時の発熱により、接着剤層の黄変や偏光フィルムの劣化を生じる可能性がある。接着剤層への光照射時間は、硬化する接着剤毎に制御されるものであって、やはり特に限定されないが、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が100〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。積算光量が100mJ/cm2 未満であると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる保護フィルムの硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量をあまり大きくしようとしても、照射時間が非常に長くなるだけで、生産性向上には不利なものとなる。
熱により酸を発生するプロトン発生剤を配合した場合には、活性エネルギー線の照射後に加熱してもよく、かかる加熱は、通常50〜100℃程度の温度で行われる。
以上説明した接着剤組成物の硬化にあたっては、偏光フィルムの偏光度、透過率及び色相、また保護膜の透明性といった、偏光板の諸機能が低下しない範囲で硬化させることが好ましい。
[積層光学部材]
偏光板の使用に際しては、保護フィルム層を介して偏光機能以外の光学機能を示す光学層を設けた積層光学部材とすることもできる。光学部材の形成を目的に偏光板に積層される光学層には、例えば、反射層、半透過型反射層、光拡散層、位相差板、集光板、輝度向上フィルムなど、液晶表示装置の形成に用いられているものがある。前記の反射層、半透過型反射層及び光拡散層は、反射型ないし半透過型や拡散型、それらの両用型の偏光板からなる光学部材を形成する場合に用いられるものである。偏光板に積層される光学層は、特に位相差板を含むことが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。また、実施例及び比較例で用いた材料は、以下のとおりであり、“ ”でくくった名前は商品名である。
(A)接着剤のベース成分(アクリル系硬化成分+ラジカル重合開始剤)
“ワールドロック No.8838”: アクリル系硬化成分として、単官能(メタ)アクリレートを35〜45%、エポキシ(メタ)アクリレート等の変性アクリレートオリゴマーを45〜55%の割合で含み、さらに、ラジカル重合開始剤及び安定剤を5%以下の割合で含む接着剤であるが、その詳細な組成はメーカーから開示されていない。液体、協立化学産業(株)から入手。
(B)プロトン発生剤(カチオン重合開始剤)
“アデカオプトマー SP-152” : トリフェニルスルホニウム塩系のカチオン重合開始剤、(株)ADEKAから入手。表1では「SP-152」と略記する。
“イルガキュア 250”: ジフェニルヨードニウム塩系のカチオン重合開始剤で、(4−メチルフェニル)〔4−(2−メチルプロピル)フェニル〕ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートと、溶剤プロピレンカーボネートとの重量比3:1の混合物、チバ・ジャパン(株)から入手。表1では「Irg 250」と略記する。
(C)その他の添加剤
“4HBAGE”: 4−ヒドロキシブチル アクリレート グリシジルエーテル、日本化成(株)から入手。
“KBM-303”: 2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)から入手。
[参考例]偏光フィルムの作製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μm のポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が 0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している偏光フィルムを作製した。
[実施例1]
この例では、トリアセチルセルロースフィルム/偏光フィルム/シクロオレフィン系樹脂フィルムの構成からなる偏光板を作製した。
(a)保護フィルムの表面処理
日本ゼオン(株)から入手したシクロオレフィン(ノルボルネン)系樹脂フィルムである“ゼオノアフィルム”(商品名)を、偏光板の一方の保護フィルムとして用いた。このシクロオレフィン系樹脂フィルムを、春日電機(株)製のコロナ処理装置“CT-212”に通過させ、その片面にコロナ放電処理を施して、偏光フィルムへの貼合に供した。コロナ放電処理は、コロナ出力強度840W、コンベア移動速度10m/分の条件で行った。
また、コニカミノルタオプト(株)から入手したトリアセチルセルロースフィルムである“KC8UX2M” を、偏光板の他方の保護フィルムとして用いた。このトリアセチルセルロースフィルムにケン化処理を施して、偏光フィルムへの貼合に供した。
(b)接着剤組成物の調製
上記した接着剤のベース成分“ワールドロック No.8838”の100部に、同じく上記したカチオン重合開始剤“アデカオプトマー SP-152”を0.5部添加し、接着剤組成物を調製した。
(c)保護フィルムと偏光フィルムの貼合
上記(a)に示したシクロオレフィン系樹脂フィルムのコロナ処理面、及び同じく上記(a)に示したトリアセチルセルロースフィルムのケン化処理面に、それぞれ上記(b)で調製した接着剤組成物を塗布した。そして、先の参考例で作製したポリビニルアルコール偏光フィルムの片面にシクロオレフィン系樹脂フィルムの接着剤組成物塗布面を、偏光フィルムの他面にはトリアセチルセルロースフィルムの接着剤組成物塗布面を、それぞれ貼り合わせた。
(d)保護フィルムと偏光フィルムの接着
Fusion 社製の紫外線照射装置〔ランプは同社製の“Dバルブ”を使用〕を用い、上記(c)で得たシクロオレフィン系樹脂フィルム/未硬化接着剤層/偏光フィルム/未硬化接着剤層/トリアセチルセルロースフィルムの層構成からなる貼合物に、照度250mW/cm2、積算光量3,000mJ/cm2 の条件で、シクロオレフィン系樹脂フィルム側から紫外線を照射して、偏光フィルムと両面の保護フィルムを接着させ、偏光板を作製した。照度及び積算光量は、 Electronic Instrumentation and Technology, Inc. 製の“UV Power Puck”を用い、紫外線の波長領域である約320〜390nmで測定した。
(e)接着性の評価
得られた偏光板の保護フィルムと偏光フィルムの間を手指で剥離させて、材料破壊の発生の程度を観察し、以下の3段階で接着性を評価した。この例で得た偏光板は、偏光フィルムとシクロオレフィン系樹脂フィルムの間、及び偏光フィルムとトリアセチルセルロースフィルムの間のいずれでも材料破壊が起こっていた。
(接着性の評価基準)
○:材料破壊が起こる。
△:材料破壊するが、一部保護フィルムと偏光フィルムの間で剥がれる。
×:保護フィルムと偏光フィルムの間で剥がれる。
(f)耐水性の評価
上記(d)で得た偏光板を60℃の温水に4時間浸漬し、サンプル端部からの温水による侵食長さ(単位:μm )(偏光フィルムの脱色領域で判断)をルーペで測定した。その結果、侵食長さは1,075μmであった。
[実施例2及び3]
実施例1と同じ接着剤のベース成分“ワールドロック No.8838”を用い、そこに、表1に示すプロトン発生剤及びその他の添加剤をそれぞれ表1に示す量配合し、接着剤組成物を調製した。この接着剤組成物を使用し、その他は実施例1と同様の方法で偏光板を作製した。なお、実施例3で用いた“イルガキュア 250”は、前述のとおり、溶剤のプロピレンカーボネートを25%含むものであるが、表1に記載の量は溶剤込みの値である。それぞれの偏光板について、実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1にまとめた。
[比較例1]
実施例1と同じ接着剤のベース成分“ワールドロック No.8838”をそのまま接着剤として用い、その他は実施例1と同様の方法で偏光板を作製した。得られた偏光板について、実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1にまとめた。
表1の結果からわかるように、アクリル系硬化成分にラジカル重合開始剤が配合された接着剤に、さらにプロトン発生剤を添加することにより、偏光フィルムと保護フィルムの密着性(接着性)及び耐水性を向上させることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面又は両面に、透明樹脂からなる保護フィルムを積層することにより製造される。ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムは、具体的には、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向したものである。そして本発明では、上記偏光フィルムの少なくとも片面に積層される保護フィルムは、特定の接着剤を介して偏光フィルムと接合される。
[偏光フィルム]
偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体などであり得る。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などを挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度、好ましくは98モル%以上である。このポリビニルアルコール系樹脂はさらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度、好ましくは1,500〜5,000程度である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、例えば、10〜150μm 程度である。
偏光フィルムは通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て、製造される。
一軸延伸は、染色の前に行ってもよいし、染色と同時に行ってもよいし、染色の後に行ってもよい。一軸延伸を染色の後で行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸には、例えば、周速の異なるロール間で一軸に延伸する方法などが採用できる。また、熱ロールを用いて一軸に延伸する方法や大気中で延伸を行うなどの乾式延伸であってもよいし、溶剤にて膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。二色性色素として具体的には、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100重量部あたり 0.01〜1重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり 0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、またこの水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して、染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部程度、好ましくは1×10-3〜1重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度であり、またこの水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部程度、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸含有水溶液はさらにヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部程度、好ましくは5〜12重量部程度である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、さらに好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常10〜120秒程度である。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒程度である。
こうして、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色及びホウ酸処理が施されて、偏光フィルムが得られる。この偏光フィルムの厚みは、5〜40μm 程度である。本発明では、この偏光フィルムの少なくとも片面に、好ましくは両面に、保護フィルムが積層され、偏光板とされる。保護フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば20〜200μm 程度である。
[保護フィルム]
本発明に用いられる保護フィルムの材料も特に限定されないが、対象が光学用途に用いる偏光板であるため、透明性に優れる樹脂からなる保護フィルムが好ましい。保護フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの如きポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンの如きポリオレフィン、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートの如き酢酸セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、アクリル樹脂などを挙げることができる。特に、透明性及び耐久性に優れていることから、トリアセチルセルロースをはじめとする酢酸セルロース系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂が好ましい。
好適な一形態では、偏光フィルムの少なくとも片面に貼合される保護フィルムを、酢酸セルロース系樹脂からなるフィルムで構成することができる。別の好適な形態では、偏光フィルムの片面にシクロオレフィン系樹脂からなる保護フィルムを貼合し、偏光フィルムの他面には酢酸セルロース系樹脂からなる保護フィルムを貼合し、偏光板とすることもできる。さらに別の好適な形態では、偏光フィルムの両面にシクロオレフィン系樹脂からなる保護フィルムを貼合することもできる。
ここで、酢酸セルロース系樹脂フィルム、特に、トリアセチルセルロースフィルムの具体例を挙げると、富士フイルム(株)から販売されている“フジタック TD80"、“フジタック TD80UF”及び“フジタック TD80UZ”、コニカミノルタオプト(株)から販売されている“KC8UX2M”及び“KC8UY”など(いずれも商品名)がある。
またシクロオレフィン系樹脂とは、例えば、ノルボルネンやテトラシクロドデセン(別名:ジメタノオクタヒドロナフタレン)、あるいはそれらの誘導体のような、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーから導かれるユニットを有する熱可塑性の樹脂である。このシクロオレフィン系樹脂は、上記シクロオレフィンの開環重合体や2種以上のシクロオレフィンを用いた開環重合体の水素添加物であることができるほか、シクロオレフィンと鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との付加共重合体であってもよい。また、極性基が導入されていてもよい。
市販の熱可塑性シクロオレフィン系樹脂としては、ドイツのTOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH で生産され、ポリプラスチックス(株)から入手できる“TOPAS”、JSR(株)から販売されている“アートン”(ARTON) 、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノア”(ZEONOR)及び“ゼオネックス”(ZEONEX)、三井化学(株)から販売されている“アペル”など(いずれも商品名)がある。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜して、フィルムとすることになるが、製膜には、溶剤キャスト法、溶融押出法など、公知の方法が適宜用いられる。
これら熱可塑性シクロオレフィン系樹脂フィルムは、延伸して位相差を付与することもでき、そのような位相差を有するシクロオレフィン系樹脂フィルムを保護フィルム兼位相差板として利用することもできる。位相差が付与されたシクロオレフィン系樹脂フィルムも市販されており、例えば、積水化学工業(株)から販売されている“エスシーナ”及び“SCA40” 、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノアフィルム”、JSR(株)から販売されている“アートンフィルム”など(いずれも商品名)がある。
これらの熱可塑性シクロオレフィン系樹脂フィルムは、接着剤を塗布する前に、表面活性化処理を施しておくことが好ましい。ここでいう表面活性化処理とは、樹脂の表面を活性化するための処理であり、その例として、非接触式のコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、有機金属化合物を含むガスの火炎を吹き付ける火炎処理などを挙げることができる。これらはいずれも、樹脂の表面を活性化するための処理として公知のものである。これらのなかでも、取扱いが簡便で、しかも表面活性化の効果が大きいことから、コロナ放電処理が好ましい。
コロナ放電処理は、電極に高電圧をかけてコロナ放電を発生させ、その放電面に配置された樹脂フィルムを活性化させる処理である。コロナ放電処理は、電極の種類、電極とフィルムの間隔、印加する電圧、処理されるフィルムの移動速度、コロナ放電の出力などを変化させることで、最良の結果が得られるようにすればよい。例えば、コロナ放電の出力は、2kW程度までかけることができるが、安全面からは1kW以下とするのが好ましく、さらに、保護フィルムの劣化や着色などの可能性を可及的に排除するためには、600W以下とするのがとりわけ好ましい。また、フィルムの移動速度は、3〜50m/分程度に設定するのが好ましい。さらに、フィルム表面を均一にコロナ放電処理するために、被処理フィルムをコロナ放電域に複数回通過させ、処理してもよい。
こうして保護フィルムに表面活性化処理を施した場合は、その活性化処理面が、接着剤を介して偏光フィルムと貼り合わされ、偏光板が作製される。
[接着剤]
本発明では、接着剤として、アクリル系硬化成分、ラジカル重合開始剤及びプロトン発生剤を含有する組成物を用いる。ここで、アクリル系硬化成分とは、分子内にラジカル反応性の官能基であるアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物であり、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子内に1個有する単官能(メタ)アクリロイル化合物、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子内に2個有する2官能(メタ)アクリロイル化合物、及び、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子内に3個以上有する多官能(メタ)アクリロイル化合物がある。これらのなかでも、アクリロイル基又はメタクリロイル基を分子内に少なくとも2個有する2官能又は多官能の(メタ)アクリロイル化合物を少なくとも1種配合することが好ましい。(メタ)アクリロイル基が(メタ)アクリル酸エステルの形で存在する(メタ)アクリレートモノマーが一般的であるが、(メタ)アクリロイルアミノ基の形で存在する(メタ)アクリルアミドモノマーも、アクリル系硬化成分となりうる。以下に、アクリル系硬化成分となりうる典型的な化合物を例示する。
単官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。その他、カルボキシル基含有の単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、1−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕フタル酸、1−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ヘキサヒドロフタル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、1−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕コハク酸、4−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕トリメリット酸なども挙げられる。また、単官能(メタ)アクリロイル化合物には、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1−カルボキシメチルピペリジンのような、(メタ)アクリロイルアミノ基含有モノマーも包含される。
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ハロゲン置換アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート類、水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート類、ジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート類などが代表的である。2官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。その他、シリコーンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−{2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ}フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−{2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ}シクロヘキシル〕プロパン、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物〔化学名:2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレートなども、2官能(メタ)アクリレートモノマーとなりうる。
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど、3価以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレートが代表的なものである。その他、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス〔2−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ}エトキシ〕プロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレートなども、多官能(メタ)アクリレートモノマーとなりうる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレートなどのオリゴマーも、アクリル系硬化成分となりうる。これらのオリゴマーを使用した場合、硬化反応時に発生する接着剤層の硬化収縮が抑えられる。その結果、接着剤層の硬化収縮に伴う内部応力の発生が抑えられ、接着強度の低下が小さくなる。
エポキシ(メタ)アクリレートは、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により製造することができ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有している。付加反応に用いられるポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、分子内にウレタン結合(−NHCOO−)及び少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。具体的には、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物や、ポリオール類をポリイソシアネートと反応させて得られる末端イソシアナト基含有ウレタン化合物と、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応生成物などであり得る。
上記ウレタン化反応に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
かかる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応に供されるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのうち芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート(例えば、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジベンジルベンゼントリイソシアネートの如きジ−又はトリ−イソシアネート、上記のジイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネートなどが挙げられる。
また、ポリイソシアネートとの反応により末端イソシアナト基含有ウレタン化合物とするのに用いられるポリオール類としては、芳香族、脂肪族及び脂環式のポリオールの他、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどを使用することができる。脂肪族のポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリンなどが挙げられる。また脂環式のポリオールとしては、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、上記したポリオール類と多塩基性カルボン酸又はその無水物との脱水縮合反応により得られるものである。多塩基性カルボン酸又はその無水物としては、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸などが挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリアルキレングリコールの他、上記したポリオール類又はジヒドロキシベンゼン類とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリオキシアルキレン変性ポリオールなどであり得る。
また、ポリエステル(メタ)アクリレートも、アクリル系硬化成分となり得る。ポリエステル(メタ)アクリレートとは、分子内にエステル結合と少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。具体的には、(メタ)アクリル酸、多塩基性カルボン酸又はその無水物、及びポリオールを用いた脱水縮合反応により得ることができる。脱水縮合反応に用いられる多塩基性カルボン酸又はその無水物としては、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。また、脱水縮合反応に用いられるポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートの市販品として、いずれも商品名で、“UV-6100B”及び“UV-7600B”〔以上、日本合成化学工業(株)製〕、“ビームセット 502H” 及び“ビームセット 575”〔以上、荒川化学工業(株)製〕、“EBECRYL 230”及び“EBECRYL 8411”〔以上、ダイセル・サイテック(株)製〕などが挙げられる。
以上説明したラジカル硬化型のアクリル系硬化成分は、接着剤として市販されているものを容易に入手することが可能で、例えば、いずれも商品名で、“ワールドロック XVL”シリーズ及び“ワールドロック 8000”シリーズ〔以上、協立化学産業(株)製〕 、“スリーボンド 3013”及び“スリーボンド 3017”〔以上、(株)スリーボンド製〕、“アロニックス UV-3300”〔東亞合成(株)製〕などを挙げることができる。これらの市販品には、後述するラジカル重合開始剤が配合されていることも多く、その場合には、アクリル系硬化成分+ラジカル重合開始剤の混合物として、その市販品を使用することができる。
本発明で用いる接着剤組成物に配合されるラジカル重合開始剤は、熱や紫外線などの作用によってラジカルを発生する化合物であり、(メタ)アクリル系化合物の如きラジカル重合性化合物の重合を開始できるものであればよい。ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン系やベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、チオキサントン系などの化合物が知られている。具体例を挙げれば、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンをはじめとするアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノンをはじめとするベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテルをはじめとするベンゾインエーテル系開始剤;4−イソプロピルチオキサントンをはじめとするチオキサントン系開始剤;その他、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンなどがある。
ラジカル重合開始剤として市販されているものには、例えばいずれも商品名で、“イルガキュア 184”、“イルガキュア 907”及び“ダロキュア 1173” (以上、チバ社製)、“Lucirine TPO”(BASF社製)などがある。
ラジカル重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。ラジカル重合開始剤はアクリル系硬化成分100重量部に対して、通常 0.5〜20重量部の割合で配合され、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは3〜5重量部である。
次に、本発明で用いる接着剤組成物に配合されるプロトン発生剤は、接着剤に混合するだけでプロトンを発生する有機酸や無機酸、また、熱や紫外線などの作用によりプロトンを発生する化合物であることができる。有機酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられ、無機酸としては、例えば、ホウ酸、ハロゲン化水素、硝酸などが挙げられる。
熱や紫外線などの作用により酸を発生する化合物は、一般にカチオン重合開始剤として知られるものであり、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレン錯体などの化合物がある。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4′−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。
また、鉄−アレン錯体としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械的強度や偏光フィルムとの良好な密着性を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
これらの光カチオン重合開始剤は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えばそれぞれ商品名で、“イルガキュア 250”(チバ社製)、“CPI-100P”及び“CPI-101A”〔以上、サンアプロ(株)製〕、“UVA CURE 1590”〔ダイセル・サイテック(株)製〕、“CYRACURE UVI-6992”〔ダウ・ケミカルズ社製〕、“サンエイド SI-60L”及び“サンエイド SI-80”〔以上、三新化学工業(株)製〕、“カヤラッド PCI-220”及び“カヤラッド PCI-620”〔以上、日本化薬(株)製〕、“UVI-6990”(ユニオンカーバイド社製)、“アデカオプトマー SP-150”、“アデカオプトマー SP-152”、 “アデカオプトマー SP-170”及び“アデカオプトマー SP-172”〔以上、(株)ADEKA製〕、“CI-5102”、“CIT-1370”、“CIT-1682”、“CIP-1866S”、“CIP-2048S”及び“CIP-2064S”〔以上、日本曹達(株)製〕、“DPI-101”、“DPI-102”、“DPI-103”、“DPI-105”、
“MPI-103”、“MPI-105”、“BBI-101”、“BBI-102”、“BBI-103”、“BBI-105”、
“TPS-101”、“TPS-102”、“TPS-103”、“TPS-105”、“MDS-103”、“MDS-105”、
“DTS-102”及び“DTS-103”〔以上、みどり化学(株)製〕、“PI-2074”(ローディア社製)などが挙げられる。
接着剤の貯蔵安定性の観点から、熱や紫外線などの作用により酸を発生する化合物をプロトン発生剤として用いるのが好ましく、さらには取扱い及び入手の容易さから、光カチオン重合開始剤として知られている“アデカオプトマー SP-152”、“アデカオプトマー SP-172”、“イルガキュア 250”、“CPI-100P”、“CPI-101A”、“UVA CURE 1590”、“CYRACURE UVI-6992”などが好適に用いられる。
これらのプロトン発生剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。プロトン発生剤は、その溶解性に合わせて、アクリル系硬化成分100重量部に対し、0.05〜30重量部程度の割合で配合されるが、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.25〜3重量部の割合である。
本発明に用いる接着剤は、以上のアクリル系硬化成分、ラジカル重合開始剤及びプロトン発生剤に加えて、さらに、分子内にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有しない樹脂、反応性希釈剤、光増感剤、シランカップリング剤、レベリング剤、酸化防止剤など、接着剤に用いられる通常の添加剤をさらに含有することもできる。
分子内にアクロイル基又はメタクリロイル基を有しない樹脂とは、主にアクリル系硬化成分が硬化収縮時に発生する内部応力を緩和する目的で樹脂に添加するものであり、混合さえできればその組成を特に限定するものではない。例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステルを主体とする共重合体などであり、特にゴム状弾性体が好適である。これら分子内にアクロイル基又はメタクリロイル基を有しない樹脂は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。分子内にアクロイル基又はメタクリロイル基を有しない樹脂を配合する場合、その量は、アクリル系硬化成分100重量部に対して、1〜200重量部、好ましくは3〜100重量部である。
反応性希釈剤とは、接着剤組成物を基材に濡れやすくするために用いられるもので、その添加によって接着剤組成物の粘度を下げる効果を有するものである。反応性希釈剤は、重合開始剤により反応し、接着性に悪影響を与えないものであればよいが、本発明では、硬化成分が実質的にラジカル硬化型のアクリル系硬化成分のみからなる接着剤組成物を用いるので、反応性希釈剤も、分子内にラジカル反応性の官能基であるアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物となる。
反応性希釈剤を配合する場合、その量は、アクリル系硬化成分100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは3〜50重量部である。
また光増感剤とは、紫外線のうち400nm以上の長波長領域に吸収を持ち、かかる長波長紫外光によって励起し、光カチオン重合開始剤にエネルギーを効率よく伝播させる役割を果たす化合物である。したがって、プロトン発生剤として、光カチオン重合開始剤を用いる場合、このような光増感剤を配合することが有効である。光カチオン重合開始剤は、比較的短波長側の紫外線に反応するので、紫外線が比較的長波長域にある場合には、光増感剤を加えないと重合開始効果が不十分となる。光増感剤に該当する典型的な化合物としては、9,10−ジブトキシアントラセンを挙げることができる。光増感剤に相当する市販品を挙げると、例えば商品名で、“Anthracure UVS-1331”〔川崎化成(株)製〕 などがある。このような光増感剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。光増感剤を配合する場合、その量は、アクリル系硬化成分100重量部に対し、通常 0.1〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。
シランカップリング剤は、反応性の官能基と加水分解性の基を併せ持つ有機ケイ素化合物であり、被着材との密着性に悪影響を及ぼさず、かつ粘度が低いことから、反応性希釈剤としての機能も有する。これに該当する典型的な化合物として、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。シランカップリング剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。シランカップリング剤を配合する場合、その量は、アクリル系硬化成分100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部である。
レベリング剤は、接着剤のフィルム基材に対する濡れ性を調整するものである。基材によっては、塗工直後に接着剤がフィルムに十分濡れず、接着剤がフィルム表面でハジキを発生し、接着剤で濡れている部分と濡れていない部分ができることがあるが、レベリング剤はこのような現象を防ぐ作用がある。これに該当する典型的な化合物として、有機変性ポリシロキサンを挙げることができる。有機変性ポリシロキサンは、シリコーン骨格と有機変性部を有し、塗布後、樹脂表面の表面張力を下げる働きをもつ。他に、パーフルオロアルキル基とともに親水性基及び親油性基を有するオリゴマーであるフッ素系のレベリング剤もある。レベリング剤の市販品としては、いずれも商品名で、“SH 200-100cs”及び“ST86PA”〔以上、東レ・ダウコーニング(株)製〕、 “BYK-354”及び“BYK-361N”(以上、ビックケミー社製)などが挙げられる。これらレベリング剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。レベリング剤を配合する場合、その量は、アクリル系硬化成分100重量部に対して、 0.05〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部である。
酸化防止剤は、酸化防止能を有する化合物であり、これに該当する典型的な化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2−又は3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールなどが挙げられる。これら酸化防止剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。酸化防止剤を配合する場合、その量は、アクリル系硬化成分100重量部に対し、0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
以上説明した各成分を混合して接着剤組成物が調製され、その接着剤組成物を、偏光フィルム及び保護フィルムの少なくとも一方の貼合面に塗布して、接着剤層が形成される。この接着剤層を介して、偏光フィルムと保護フィルムを貼合し、接着剤層を硬化させるのであるが、この硬化は、活性エネルギー線、特に紫外線の照射によって行うのが有利である。接着剤層の厚さは、硬化後で通常50μm 以下、好ましくは20μm 以下、さらに好ましくは10μm 以下である。接着剤層があまり厚くなると、活性エネルギー線の照射による硬化に大きなエネルギーを必要とし、現実的でなくなる。
プロトン発生剤を含有する接着剤組成物の粘度が高く、接着層の膜厚を50μm 以下にするのが困難な場合には、接着剤組成物に溶剤を混合し、その粘度を調整してもよいが、その場合、乾燥工程が必要になるため、可能なら、溶剤は用いないほうが好ましい。
[偏光板の製造方法]
本発明においては、偏光フィルム及び保護フィルムの少なくとも一方の貼合面に、上で説明したアクリル系硬化成分、ラジカル重合開始剤及びプロトン発生剤を含有する接着剤組成物の塗布層を形成し、その接着剤組成物塗布層を介して偏光フィルムと保護フィルムとを貼り合わせ、次いでその接着剤組成物を硬化させることにより、偏光板を製造する。接着剤組成物の塗布方法は特に制限されず、この接着剤組成物を滴下又はキャストする方法や、ダイコーター、グラビアコーター、バーコーター、ワイヤーバーなど任意のコーティング機器を使用し、塗布膜厚を制御しながら塗布する方法などが採用できる。
未硬化の接着剤組成物を介して偏光フィルムと保護フィルムを貼り合わせた後、その接着剤組成物を硬化させ、保護フィルムを偏光フィルム上に固着させる。この硬化は、先にも述べたように、活性エネルギー線の照射により行うのが有利である。
活性エネルギー線の照射に用いる光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。ラジカル硬化型接着剤への光照射強度は、目的とする組成物毎に決定されるものであって、やはり特に限定されないが、開始剤の活性化に有効な320〜390nmの波長領域の照射強度が10〜1,000mW/cm2であることが好ましい。光照射強度が10mW/cm2 未満であると、反応時間が長くなりすぎ、1,000mW/cm2を超えると、ランプから輻射される熱及び接着剤の重合時の発熱により、接着剤層の黄変や偏光フィルムの劣化を生じる可能性がある。接着剤層への光照射時間は、硬化する接着剤毎に制御されるものであって、やはり特に限定されないが、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が100〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。積算光量が100mJ/cm2 未満であると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる保護フィルムの硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量をあまり大きくしようとしても、照射時間が非常に長くなるだけで、生産性向上には不利なものとなる。
熱により酸を発生するプロトン発生剤を配合した場合には、活性エネルギー線の照射後に加熱してもよく、かかる加熱は、通常50〜100℃程度の温度で行われる。
以上説明した接着剤組成物の硬化にあたっては、偏光フィルムの偏光度、透過率及び色相、また保護膜の透明性といった、偏光板の諸機能が低下しない範囲で硬化させることが好ましい。
[積層光学部材]
偏光板の使用に際しては、保護フィルム層を介して偏光機能以外の光学機能を示す光学層を設けた積層光学部材とすることもできる。光学部材の形成を目的に偏光板に積層される光学層には、例えば、反射層、半透過型反射層、光拡散層、位相差板、集光板、輝度向上フィルムなど、液晶表示装置の形成に用いられているものがある。前記の反射層、半透過型反射層及び光拡散層は、反射型ないし半透過型や拡散型、それらの両用型の偏光板からなる光学部材を形成する場合に用いられるものである。偏光板に積層される光学層は、特に位相差板を含むことが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。また、実施例及び比較例で用いた材料は、以下のとおりであり、“ ”でくくった名前は商品名である。
(A)接着剤のベース成分(アクリル系硬化成分+ラジカル重合開始剤)
“ワールドロック No.8838”: アクリル系硬化成分として、単官能(メタ)アクリレートを35〜45%、エポキシ(メタ)アクリレート等の変性アクリレートオリゴマーを45〜55%の割合で含み、さらに、ラジカル重合開始剤及び安定剤を5%以下の割合で含む接着剤であるが、その詳細な組成はメーカーから開示されていない。液体、協立化学産業(株)から入手。
(B)プロトン発生剤(カチオン重合開始剤)
“アデカオプトマー SP-152” : トリフェニルスルホニウム塩系のカチオン重合開始剤、(株)ADEKAから入手。表1では「SP-152」と略記する。
“イルガキュア 250”: ジフェニルヨードニウム塩系のカチオン重合開始剤で、(4−メチルフェニル)〔4−(2−メチルプロピル)フェニル〕ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートと、溶剤プロピレンカーボネートとの重量比3:1の混合物、チバ・ジャパン(株)から入手。表1では「Irg 250」と略記する。
(C)その他の添加剤
“4HBAGE”: 4−ヒドロキシブチル アクリレート グリシジルエーテル、日本化成(株)から入手。
“KBM-303”: 2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)から入手。
[参考例]偏光フィルムの作製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μm のポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が 0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している偏光フィルムを作製した。
[実施例1]
この例では、トリアセチルセルロースフィルム/偏光フィルム/シクロオレフィン系樹脂フィルムの構成からなる偏光板を作製した。
(a)保護フィルムの表面処理
日本ゼオン(株)から入手したシクロオレフィン(ノルボルネン)系樹脂フィルムである“ゼオノアフィルム”(商品名)を、偏光板の一方の保護フィルムとして用いた。このシクロオレフィン系樹脂フィルムを、春日電機(株)製のコロナ処理装置“CT-212”に通過させ、その片面にコロナ放電処理を施して、偏光フィルムへの貼合に供した。コロナ放電処理は、コロナ出力強度840W、コンベア移動速度10m/分の条件で行った。
また、コニカミノルタオプト(株)から入手したトリアセチルセルロースフィルムである“KC8UX2M” を、偏光板の他方の保護フィルムとして用いた。このトリアセチルセルロースフィルムにケン化処理を施して、偏光フィルムへの貼合に供した。
(b)接着剤組成物の調製
上記した接着剤のベース成分“ワールドロック No.8838”の100部に、同じく上記したカチオン重合開始剤“アデカオプトマー SP-152”を0.5部添加し、接着剤組成物を調製した。
(c)保護フィルムと偏光フィルムの貼合
上記(a)に示したシクロオレフィン系樹脂フィルムのコロナ処理面、及び同じく上記(a)に示したトリアセチルセルロースフィルムのケン化処理面に、それぞれ上記(b)で調製した接着剤組成物を塗布した。そして、先の参考例で作製したポリビニルアルコール偏光フィルムの片面にシクロオレフィン系樹脂フィルムの接着剤組成物塗布面を、偏光フィルムの他面にはトリアセチルセルロースフィルムの接着剤組成物塗布面を、それぞれ貼り合わせた。
(d)保護フィルムと偏光フィルムの接着
Fusion 社製の紫外線照射装置〔ランプは同社製の“Dバルブ”を使用〕を用い、上記(c)で得たシクロオレフィン系樹脂フィルム/未硬化接着剤層/偏光フィルム/未硬化接着剤層/トリアセチルセルロースフィルムの層構成からなる貼合物に、照度250mW/cm2、積算光量3,000mJ/cm2 の条件で、シクロオレフィン系樹脂フィルム側から紫外線を照射して、偏光フィルムと両面の保護フィルムを接着させ、偏光板を作製した。照度及び積算光量は、 Electronic Instrumentation and Technology, Inc. 製の“UV Power Puck”を用い、紫外線の波長領域である約320〜390nmで測定した。
(e)接着性の評価
得られた偏光板の保護フィルムと偏光フィルムの間を手指で剥離させて、材料破壊の発生の程度を観察し、以下の3段階で接着性を評価した。この例で得た偏光板は、偏光フィルムとシクロオレフィン系樹脂フィルムの間、及び偏光フィルムとトリアセチルセルロースフィルムの間のいずれでも材料破壊が起こっていた。
(接着性の評価基準)
○:材料破壊が起こる。
△:材料破壊するが、一部保護フィルムと偏光フィルムの間で剥がれる。
×:保護フィルムと偏光フィルムの間で剥がれる。
(f)耐水性の評価
上記(d)で得た偏光板を60℃の温水に4時間浸漬し、サンプル端部からの温水による侵食長さ(単位:μm )(偏光フィルムの脱色領域で判断)をルーペで測定した。その結果、侵食長さは1,075μmであった。
[実施例2及び3](参考)
実施例1と同じ接着剤のベース成分“ワールドロック No.8838”を用い、そこに、表1に示すプロトン発生剤及びその他の添加剤をそれぞれ表1に示す量配合し、接着剤組成物を調製した。この接着剤組成物を使用し、その他は実施例1と同様の方法で偏光板を作製した。なお、実施例3で用いた“イルガキュア 250”は、前述のとおり、溶剤のプロピレンカーボネートを25%含むものであるが、表1に記載の量は溶剤込みの値である。それぞれの偏光板について、実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1にまとめた。
[比較例1]
実施例1と同じ接着剤のベース成分“ワールドロック No.8838”をそのまま接着剤として用い、その他は実施例1と同様の方法で偏光板を作製した。得られた偏光板について、実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表1にまとめた。
表1の結果からわかるように、アクリル系硬化成分にラジカル重合開始剤が配合された接着剤に、さらにプロトン発生剤を添加することにより、偏光フィルムと保護フィルムの密着性(接着性)及び耐水性を向上させることができる。