以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、一眼レフカメラ100の模式的断面図である。一眼レフカメラ100は、レンズユニット200およびカメラ本体300を含む。
レンズユニット200は、固定筒210、レンズ220、230、240、レンズCPU250およびレンズマウント260を有する。固定筒210の一端は、レンズマウント260を介して、カメラ本体300のボディマウント360に結合される。
レンズマウント260およびボディマウント360の結合は特定の操作により解除できる。これにより、カメラ本体300には、同じ規格のレンズマウント260を有する他のレンズユニット200を装着できる。
レンズユニット200において、カメラ本体300から遠くに位置するレンズ220は、固定筒210から直接に支持される。これに対して、他のレンズ230、240は、固定筒210対して光軸OA方向に移動できる。これにより、レンズユニット200の光学系は焦点距離または焦点位置を変化させることができる。
例えば、レンズ230は、レンズユニット200の焦点距離を変化させて被写体像の倍率を変化させる場合に移動するズームレンズのひとつとなる。また、レンズ240は、レンズユニット200の焦点位置を変化させて被写体像を撮像面に合焦させる場合に移動するフォーカシングレンズのひとつとなる。
レンズCPU250は、レンズユニット200自体の制御を司ると共に、カメラ本体300の本体CPU322との通信も担う。これにより、カメラ本体300に装着されたレンズユニット200は、カメラ本体300と連携して動作する。
カメラ本体300は、レンズユニット200に対してボディマウント360の背後に配されたミラーユニット400を備える。ミラーユニット400の上方にはフォーカシングスクリーン352が配される。
フォーカシングスクリーン352の更に上方にはペンタプリズム354が、ペンタプリズム354の後方にはファインダ光学系356が、それぞれ配される。ファインダ光学系356の後端は、カメラ本体300の背面にファインダ350として露出する。
ミラーユニット400の後方には、フォーカルプレンシャッタ370、光学フィルタ500および撮像素子330が順次配される。フォーカルプレンシャッタ370は、撮像素子330に入射する被写体光束を遮断または通過させる。
光学フィルタ500は、撮像素子330の直前に設置され、撮像素子330に入射する被写体光束から赤外線および紫外線を除去する。また、光学フィルタ500は、撮像素子330の表面を保護する保護ガラスとしても機能する。
更に、光学フィルタ500は、被写体光束の空間周波数を減じる役割を有する。即ち、光学フィルタ500は、撮像素子330のナイキスト周波数を越える空間周波数を有する被写体光束が入射した場合に、撮影画像におけるモアレの発生を抑制するローパスフィルタとしても機能する。
光学フィルタ500の背後に配される撮像素子330は、CCDセンサ、CMOSセンサなどの光電変換素子により形成される。撮像素子330の更に背後には、主基板320、背面表示部340が順次配される。主基板320には、本体CPU322および画像処理部324が実装される。背面表示部340は、液晶表示板等により形成され、カメラ本体300の背面に露出する。
ミラーユニット400は、メインミラー保持枠410およびメインミラー420を有する。メインミラー保持枠410は、メインミラー420を保持しつつ、メインミラー回動軸430により軸支される。図示の状態では、メインミラー保持枠410の前端が降下して位置決めピン440に当接する。これにより、メインミラー420は、被写体光束の光軸OAを斜めに横切る斜設状態にある。
また、ミラーユニット400は、サブミラー保持枠450およびサブミラー460を有する。サブミラー保持枠450は、サブミラー460を保持しつつ、サブミラー回動軸470によりメインミラー保持枠410から軸支される。よって、サブミラー460は、メインミラー保持枠410に対して回動する。また、メインミラー保持枠410が回動した場合は、サブミラー460およびサブミラー保持枠450もメインミラー保持枠410と共に移動する。
上記ミラーユニット400において、メインミラー420は、入射した入射光束の一部を透過するハーフミラー領域を有する。サブミラー460は、斜設状態にあるメインミラー420のハーフミラー領域から入射した被写体光束の一部を、合焦光学系380に向かって反射する。合焦光学系380は、入射した入射光束の一部を焦点検出センサ382に導く。これにより、カメラ本体300は、レンズユニット200のデフォーカス量を検出できる。
また、斜設状態にあるメインミラー420は、被写体光束を反射してフォーカシングスクリーン352に導く。フォーカシングスクリーン352は、撮像素子330の撮像面と共役な位置にあり、レンズユニット200の光学系が形成した被写体像を可視化する。
フォーカシングスクリーン352に結ばれた被写体像は、ペンタプリズム354およびファインダ光学系356を通じてファインダ350から観察される。ペンタプリズム354を通じた被写体像は、ファインダ350から正立正像として観察される。
また、ペンタプリズム354から射出される被写体光束の一部は、ファインダ光学系356の上方に配された測光センサ390に受光される。測光センサ390は、受光した入射光束の一部から被写体の明るさを検出する。
上記のような一眼レフカメラ100においてカメラ本体300のレリーズボタンが半押しされると、焦点検出センサ382および測光センサ390が有効になる。これにより、被写体像を適切な撮影条件で撮影し得る状態になる。
図2は、ミラーユニット400が退避状態にある場合の一眼レフカメラ100の模式的断面図である。図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
撮像素子330に被写体光を入射させる場合、ミラーユニット400は退避状態になる。即ち、退避状態において、メインミラー回動軸430の回りに回動したメインミラー保持枠410は、ストッパ480に前端上面を当接させて略水平になる。これにより、メインミラー420は、被写体光束の光路から退避する。
また、サブミラー保持枠450も、メインミラー保持枠410と共に上昇し、且つ、サブミラー回動軸470の回りに回動して略水平になる。これにより、サブミラー460も、被写体光束の光路から退避する。
カメラ本体300においては、メインミラー420およびサブミラー460が退避状態になった後、フォーカルプレンシャッタ370が開く。これにより、レンズユニット200から入射した入射光束は、光学フィルタ500を通過して撮像素子330に受光される。
撮像素子330は、受光した被写体光束を電気信号に変換して出力する。撮像素子330から出力された電気信号は画像処理部324において画像データに変換される。画像処理部324において生成された画像データは、フラッシュメモリ等の二次記録媒体に画像ファイルとして保存される。
図3は、撮像素子330の構造を概念的に説明する模式図である。撮像素子330の撮像面には多数の受光素子が二次元的に配列される。受光素子は、フォトダイオード、フォトトランジスタ等により形成され、入射光の強さに応じた電荷を蓄積して、電気信号として出力する。
2次元的に配列された受光素子には、赤、緑および青のいずれかを透過するカラーフィルタが重ねられる。これらの受光素子のうち、例えば、正方形に並ぶ4つの受光素子を組み合わせてひとつの単位画素331が形成される。
単位画素331は、例えば、赤および青を透過するフィルタを有する受光素子をひとつずつと、人間の受光感度が高い緑を透過するフィルタを有する受光素子2個とを含む。このような正方形の単位画素331は、撮像素子330における最も高い解像度でカラー撮影する場合の画素となる。
図4は、撮像素子330の他の動作モードを説明する模式図である。撮像素子330自体の構造は、図3に示したものと全く変わらない。
動画撮影におけるフレーム毎の画像は、静止画の解像度よりも低い解像度を有する場合が多い。よって、図3に示した正方形の単位画素331を全て用いて撮影すると画素数が過剰になる。また、動画撮影では、電気信号に変換した画像を撮像素子から連続的に読み出す。このため、撮像素子330からの読み出し速度を維持する目的で画素数を減じる場合もある。
このような場合に、撮像素子330は、画素加算読み出し方式、間引き読み出し方式等の読み出し方式で使用される。画素加算読み出し方式では、静止画撮影に用いる単位画素331よりも多数の受光素子を用いて単位画素333を形成する。これにより、撮像素子330中に形成される単位画素333の数が少なくなる。
ただし、単位画素333毎のカラーバランスを一定に保つ目的で、動画撮像用の単位画素333も、静止画撮影用の単位画素331と同じ割合で赤、緑および青のカラーフィルタで覆われた受光素子を含む。よって、動画撮影用の単位画素333の画素ピッチは、静止画撮影用の単位画素331の二倍以上になり、撮像素子330の水平解像度および垂直解像度の少なくとも一方は半分以下になる。
また、間引き読み出し方式では、撮像素子330の一部の単位画素333から出力された画像信号を使用しない。これにより、撮像素子330の実効的な単位画素333数が少なくなる。また、単位画素333の数が減るので、撮像素子330の水平解像度および垂直解像度の少なくとも一方は低くなる。
このように、動画撮影用に単位画素333の数を低下させた撮像素子330の実効的解像度は、静止画撮影の場合の解像度に比較すると低くなる。このため、動画撮影の場合は、カメラ本体300内部においてデジタル化された画像信号のナイキスト周波数が低下する。よって、静止画撮影用に設定されたローパスフィルタは、動画撮影の場合にモアレを抑制できない場合がある。
なお、図3および図4は模式図であって、画素加算読み出しおよび間引き読み出しについては、多くの方法が提案され、また、実施されている。このため、動画撮影における撮像素子330の単位画素331には、形状、画素数共に、様々な形態がある。
また、撮像素子330の形状は正方形とは限らない。3:4、16:9等、さまざまなアスペクト比をとり得る。従って、カラーフィルタ、光学フィルタ500等の形状も、撮像素子330の形状に合わせて変化する。
図5は、カメラ本体300の光学フィルタ500に含まれるローパスフィルタ51の構造を模式的に示す図である。ローパスフィルタ51は、一対の複屈折板510、530と、その間に挟まれた液晶板520とを有する。
光学フィルタ500全体は、撮像素子330に受光される被写体光束に直交しつつ、撮像素子330の撮像面と平行に配される。また、複屈折板510、530および液晶板520は、互いに平行に積層される。
複屈折板510、530は、それぞれ、可視光に対して複屈折性を有する材料により形成され、入射光を偏光に応じて分離して射出する。分離された偏光の間隔である分離幅は、同じ材料であれば、複屈折板510、530の厚さに比例する。複屈折板510、530の材料としては水晶を好ましく例示できるが、サファイア、ニオブ酸リチウム等を使用することもできる。
液晶板520は、透明電極522、配向膜524および液晶層526を含む。それぞれ一対の透明電極522および配向膜524は、ネマティック液晶により形成された液晶層526を挟む。なお、液晶層526は、光学的に等方な、例えばガラス板により保持される。
透明電極522は、金属薄膜等により形成され、可視光に対して透明である。一対の透明電極522は、スイッチ550を介して電圧源540の両端に結合される。スイッチ550が投入された場合、一対の透明電極522には電位差が生じ、液晶層526に作用する電場が形成される。
配向膜524は、ラビング等により互いに直交する方向に配向されている。これにより、分子が同じ向きになるというネマティック液晶の性質により、配向膜524に挟まれた液晶層526においては液晶分子528がねじれるように配列される。
なお、図5では、液晶板520の機能に即して要素を分離して記載した。しかしながら、複屈折板510、530の対向する面に、蒸着等により透明電極522を直接に形成してもよい。また、配向膜524も複屈折板510、530の表面に形成し、複屈折板510、530により液晶層526を保持させる構造にしてもよい。これにより、ローパスフィルタ51全体を一体化すると共に、部品点数を減じてローパスフィルタ51の厚さを薄くすることができる。
上記ローパスフィルタ51において、スイッチ550が開いて透明電極522の間に電場が生じていない場合、液晶板520においては液晶分子528が捩じれた配列となる。このため、カイラルな液晶層526を透過して伝播する偏光の偏光面は、液晶分子528の配列方向に沿って90°旋光する。
また、上記ローパスフィルタ51においてスイッチ550が閉じて透明電極522間に電場が生じた場合、透明電極522の間で液晶分子528は直線的に整列する。これにより、液晶層526における旋光は生じなくなる。よって、液晶板520に入射した偏光は、偏光面を回転させることなくそのまま射出される。
図6は、撮像ユニット501の模式的斜視図である。撮像ユニット501は、ローパスフィルタ51、本体CPU322および撮像素子330を含む。本体CPU322は、ローパスフィルタ51のスイッチ550の開閉を制御する。ローパスフィルタ51においてはスイッチ550が開いており、液晶板520は旋光効果を有する。
ローパスフィルタ51において、液晶板520の入射側に配された複屈折板510は、図中に白抜きの矢印で示す方向の光学軸を有する。ここで、白抜きの矢印は、複屈折板510の入射面および射出面と直交する側端面における光学軸の方向を示す。よって、図示の複屈折板510において、光学軸は、入射面の法線に対して図中で45°下方に傾いている。
これにより、複屈折板510は、入射面の法線方向に入射した無偏光の被写体光束を、常光線と異常光線に分離する。複屈折板510は、撮像素子330の画素ピッチpの半分の分離幅に偏光を分離する厚さ0.5tを有する。複屈折板510から射出された一対の偏光は、射出面の法線方向に互いに平行に伝播する。
液晶板520の射出側に配された複屈折板530も、複屈折板510の光学軸と平行で同じ向きの光学軸を有する。複屈折板530は、入射した偏光のうち、光学軸と平行な偏光面を有する常光線を直進させ、光学軸と交差する偏光面を有する異常光線を斜行させる。複屈折板530も、撮像素子330の画素ピッチpの半分の分離幅に偏光を分離する厚さ0.5tを有する。
上記のような撮像ユニット501に入射した無偏光の被写体光束は、まず、複屈折板510において、常光線と異常光線に分離される。即ち、常光線は、被写体光束は複屈折板510内を直進して射出される。異常光線は、複屈折板510内を斜行した後、常光線と平行に射出される。
また、異常光線は、常光線に対して、図中で下方に分離される。常光線と異常光線の分離幅は、撮像素子330の画素ピッチpの半分に等しい。また、複屈折板510から射出される常光線および異常光線は、偏光方向が互いに直交する偏光となる。なお、説明の便宜を図る目的で、図示の常光線の偏光を垂直偏光、図示の以上光線の偏光を水平偏光と記載する。
次いで、複屈折板510から射出された一対の偏光は、液晶板520に入射する。透明電極522間に電場の生じていない液晶板520は、入射した直線偏光を旋光して射出する。よって、一対の偏光の偏光方向は入れ換わり、図中上側の偏光が水平偏光に、図中下側の偏光が垂直偏光になる。
複屈折板530に入射した図中上側の水平偏光は、複屈折板530の複屈折性により、異常光として複屈折板530の内部を斜行して、撮像素子330の画素ピッチpの半分に相当する幅で伝播光路が下方にずれる。複屈折板530において、水平偏光に対しては常光線は生じない。よって、入射した水平偏光から直進する成分は生じない。
また、複屈折板530に入射した図中下側の垂直偏光は、複屈折板530内を常光線として直進する。複屈折板530において、垂直偏光に対して異常光線は生じない。よって、入射した垂直偏光から直進する成分は生じない。
これにより、複屈折板510において分離された被写体光束は、複屈折板530において再び結合されて射出される。こうして、スイッチ550が投入されていないローパスフィルタ51は、被写体光束の空間周波数を低下させることなく、そのまま射出する。
図7は、撮像ユニット501の模式的斜視図である。同図に示すローパスフィルタ51においては、本体CPU322によりスイッチ550が投入されているので、液晶板520は旋光効果を生じない。
ローパスフィルタ51において、複屈折板510の作用は変化しない。即ち、複屈折板510は、被写体光束は複屈折板510内を直進して射出される垂直偏光の常光線と、複屈折板510内を斜行した後、常光線と平行に射出される水平偏光の異常光線とに分離する。常光線と異常光線の分離幅は、画素ピッチpの半分に等しい。
複屈折板510から射出された一対の偏光は、液晶板520に入射する。透明電極522間に電場が生じている液晶板520では旋光は生じない。よって、入射した一対の偏光の偏光方向は維持され、そのまま複屈折板530に入射される。
続いて、各偏光は、複屈折板530に入射する。複屈折板530に入射した図中上側の垂直偏光は、複屈折板530内を直進して射出される。これに対して、図中下側の水平偏光は、複屈折板530の複屈折性により、複屈折板530の内部を斜行して、画素ピッチpの半分、伝播光路を下方にずらして射出される。よって、複屈折板530から射出される水平偏光および垂直偏光の分離幅は更に0.5p拡がり、画素ピッチpと等しくなる。
こうして、無偏光で入射した被写体光束は、スイッチ550の投入されたローパスフィルタ51を通過することにより、画素ピッチpと等しい間隔で図中垂直方向に分離された一対の直線偏光として撮像素子330に受光される。撮像素子330に受光される被写体光束の空間周波数は、当初の被写体光束よりも低くなる。これにより、撮像素子330が画素ピッチpで撮影した場合に撮影画像に生じる偽色あるいはモアレを抑制できる。
このように、ローパスフィルタ51は、被写体光束の分離幅を、画素ピッチpと0(零)との間で大きく切り替えることができる。また、切り替えは、スイッチ550を開閉することにより電気的に制御できる。換言すれば、ローパスフィルタ51の有無を電気的に切り替えることができる。ローパスフィルタ51の切り替えに伴って物理的に動く部品はないので、切り替え機能を設けたことによりカメラ本体300の信頼性および耐久性を低下させることはない。
なお、液晶板520の後段に配された複屈折板530を、上方を向いた光学軸を有するものと入れ換えてもよい。これにより、スイッチ550が遮断されている場合にローパスフィルタ51を光学的に有効し、スイッチ550が投入された場合にローパスフィルタ51を光学的に無効することもできる。
この場合、ローパスフィルタ51は、スイッチ550が投入されておらず、電力を消費しない状態で、被写体光束の空間周波数を定常的に低下させてモアレを防止する。しかしながら、特に解像を重視して撮影する場合、あるいは、繰り返しパターンが生じにくい風景等を撮影する場合には、スイッチ550を投入して、ローパスフィルタ51の光学的効果を除き、より高解像な画像を撮影する。ローパスフィルタ51は、このような使い方をしてもよい。
また、液晶板520に対して前段の複屈折板510の厚さを0.5tとし、液晶板520に対して後段の複屈折板530の厚さ530の厚さを1.5tとしても、略同様の切り替え特性を有するローパスフィルタ51を形成できる。
図8は、他の撮像ユニット502の模式的斜視図である。撮像ユニット502は、ローパスフィルタ52、本体CPU322および撮像素子330を含む。本体CPU322および撮像素子330は、図6および図7に示した撮像ユニット501と変わらない。ローパスフィルタ52においてはスイッチ550が開いており、液晶板520は旋光効果を有する。
また、ローパスフィルタ52において、液晶板520の入射側に配された複屈折板510は、図中に白抜きの矢印で示す垂直方向の光学軸を有する。ここで、白抜きの矢印は、複屈折板510の入射面および射出面と直交する側端面における光学軸の方向を示す。よって、図示の複屈折板510において、光学軸は、入射面の法線に対して図中で45°下方に傾いている。
これにより、複屈折板510は、入射面の法線方向に入射した無偏光の被写体光束を、常光線と異常光線に分離する。複屈折板510は、撮像素子330の画素ピッチpの1.5倍の分離幅に偏光を分離する厚さ1.5tを有する。複屈折板510から射出された一対の偏光は、射出面の法線方向に互いに平行に伝播する。
液晶板520の射出側に配された複屈折板530は、図中に白抜きの矢印で示すように、複屈折板510の光学軸と同じ向きの光学軸を有する。また、複屈折板530は、画素ピッチpの半分の分離幅に偏光を分離させる厚さ0.5tを有する。
上記のような撮像ユニット502に入射した無偏光の被写体光束は、まず、複屈折板510において、常光線と異常光線に分離される。常光線は、被写体光束は複屈折板510内を直進して射出される。異常光線は、複屈折板510内を斜行した後、常光線と平行に射出される。
また、異常光線は、常光線に対して、図中で下方に分離される。常光線と異常光線の分離幅は、撮像素子330の画素ピッチpの1.5倍に等しい。また、複屈折板510から射出される常光線および異常光線は、偏光方向が互いに直交する偏光となる。
次に、複屈折板510から射出された一対の偏光は、液晶板520に入射する。透明電極522間に電場の生じていない液晶板520は、入射した直線偏光を旋光して射出させる。よって、一対の偏光の偏光方向は入れ換わり、図中上側の偏光が水平偏光に、図中下側の偏光が垂直偏光になる。
続いて、各偏光は、複屈折板530に入射する。複屈折板530に入射した水平偏光は、複屈折板530の複屈折性により、複屈折板530の内部を斜行して、画素ピッチpの半分、伝播光路を図中下方にずれて射出される。これに対して、垂直偏光は、複屈折板530内を直進して射出される。よって、複屈折板530から射出される水平偏光および垂直偏光の分離幅は1.5pから0.5p分狭まり、画素ピッチpに等しくなる。
こうして、無偏光で入射した被写体光束は、ローパスフィルタ52を通過することにより、画素ピッチpと等しい間隔で図中垂直方向に分離された一対の直線偏光として撮像素子330に受光される。よって、撮像素子330に受光される被写体光束の空間周波数は、当初の被写体光束よりも低くなる。これにより、撮像素子330が画素ピッチpで撮影した場合に撮影画像に生じる偽色あるいはモアレを抑制できる。
図9は、撮像ユニット502の模式的斜視図である。同図に示すローパスフィルタ52においては、本体CPU322によりスイッチ550が投入されているので、液晶板520は旋光効果を生じない。
ローパスフィルタ52において、液晶板520の入射側に配された複屈折板510の作用は変化しない。即ち、複屈折板510は、被写体光束は複屈折板510内を直進して射出される垂直偏光の常光線と、複屈折板510内を斜行した後、常光線と平行に射出される水平偏光の異常光線とに分離する。常光線と異常光線の分離幅は、画素ピッチpの1.5倍に等しい。
複屈折板510から射出された一対の偏光は、液晶板520に入射する。透明電極522間に電場が生じている液晶板520では旋光は生じない。よって、入射した一対の偏光の偏光方向は維持され、そのまま複屈折板530に入射される。
複屈折板530に入射した図中上側の垂直偏光は、複屈折板530内を常光線として直進する。複屈折板530において、垂直偏光に対して異常光線は生じない。よって、入射した垂直偏光から直進する成分は生じない。
また、複屈折板530に入射した図中下側の水平偏光は、複屈折板530の複屈折性により、異常光として複屈折板530の内部を斜行して、撮像素子330の画素ピッチpの半分に相当する幅で伝播光路が下方にずれて射出される。よって、複屈折板530から射出される水平偏光および垂直偏光の分離幅は1.5pから0.5p分更に拡がり、画素ピッチpの2倍に等しくなる。
こうして、無偏光で入射した被写体光束は、ローパスフィルタ52を通過することにより、画素ピッチpの2倍に等しい分離幅で図中垂直に分離した一対の直線偏光となり、撮像素子330に受光される。よって、画素加算等により撮像素子330が画素ピッチ2pで撮影した撮影画像に生じる偽色あるいはモアレを抑制できる。
このように、ローパスフィルタ52は、被写体光束の分離幅を、画素ピッチpと2pとに対応して切り替えることができる。切り替えはスイッチ550を開閉することにより電気的に制御できる。また、分離幅の替えに伴って動く部品はないので、カメラ本体300の信頼性および耐久性を低下させることなく上記の効果を享受できる。なお、本体CPU322は、カメラ本体300に対する静止画撮影または動画分撮影の指示に応じて、撮像素子330の画素ピッチの切り替えと連動してローパスフィルタ52の分離幅を切り替えてもよい。
図10は、また他の撮像ユニット503の模式的斜視図である。撮像ユニット503は、各々がローパスフィルタ52と同じ構造を有する第一フィルタ53および第二フィルタ54と、第一フィルタ53および第二フィルタ54の間に配されたλ/4板560とを有する。更に、撮像ユニット503は、他の撮像ユニット501、502と同様に、本体CPU322および撮像素子330も含む。
第一フィルタ53のスイッチ550と第二フィルタのスイッチ550は、本体CPU322により一括して制御され、同時に投入または遮断される。よって、液晶板520における旋光効果は、同時に生じ、または同時に消失する。図10に示す状態では、スイッチ550は遮断されており、液晶板520はそれぞれ旋光効果を有する。
第一フィルタ53は、ローパスフィルタ52と同じ構造を有する。また、第一フィルタ53における複屈折板510、530の厚さも、ローパスフィルタ52と等しい。ただし、第一フィルタ53は、ローパスフィルタ52に対して、被写体光束の光軸周りに90度回転した状態で配される。よって、第一フィルタ53における複屈折板510、530の光学軸は図中で水平になる。
上記のような第一フィルタ53に入射した無偏光の被写体光束は、分離幅pで分離された一対の偏光として射出される。ただし、第一フィルタ53では光学軸が水平なので、偏光の分離方向も水平になる。
第一フィルタ53から射出された一対の偏光はλ/4板560に入射して、それぞれが円偏光に変換されて射出される。λ/4板560から射出された一対の円偏光R、Lは、分離幅pを維持したまま、第二フィルタ54に入射する。
第二フィルタ54は、光学軸の方向も含めて、図8に示したローパスフィルタ52と全く同じ構造を有する。よって、スイッチ550が遮断された状態の第二フィルタ54に入射した一対の円偏光R、Lは、それぞれが、分離幅pで図中垂直方向に分離される。
こうして、撮像ユニット503に入射した被写体光束は、分離幅pで2次元的に分離された状態で撮像素子330に受光される。よって、撮像素子330に受光される被写体光束の空間周波数は、水平方向および垂直方向の双方について、当初の被写体光束よりも低くなる。これにより、撮像素子330により画素ピッチpで撮影された撮影画像に生じる偽色あるいはモアレが抑制される。
図11は、撮像ユニット503の模式的斜視図である。同図に示す撮像ユニット503においては、本体CPU322がスイッチ550を投入している。これにより、第一フィルタ53および第二フィルタ54の双方において液晶板520の旋光効果が消失している。
よって、第一フィルタ53からは、分離幅2pで図中水平に分離された一対の偏光が射出される。これら偏光は、λ/4板560において一対の円偏光R、Lに変換され、それぞれが第二フィルタ54に入射する。また、スイッチ550が遮断された状態の第二フィルタ54に入射した一対の円偏光R、Lは、それぞれが、分離幅2pで図中垂直方向に分離した一対の偏光として撮像素子330に受光される。
こうして、撮像ユニット503に入射した被写体光束は、分離幅2pで2次元的に分離された状態で撮像素子330に受光される。これにより、撮像素子330が広い画素ピッチ2pで撮影する場合も、撮影画像に生じる偽色あるいはモアレを抑制できる。
このように、撮像ユニット503はローパスフィルタ52を多段に配することにより、分離幅pと2pの間で分離幅を2次元的に切り替えることができる。切り替えは、一対のスイッチ550を本体CPU322が一括して電気的に制御する。また、本体CPU322は、カメラ本体300に対する静止画撮影または動画分撮影の指示に応じて、撮像素子330の画素ピッチの切り替えと連動して分離幅を切り替えてもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。