以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、一眼レフカメラ100の模式的断面図である。一眼レフカメラ100は、レンズユニット200およびカメラ本体300を含む。
レンズユニット200は、固定筒210、レンズ220、230、240、レンズCPU250およびレンズマウント260を有する。固定筒210の一端は、レンズマウント260を介して、カメラ本体300のボディマウント360に結合される。
レンズマウント260およびボディマウント360の結合は特定の操作により解除できる。これにより、カメラ本体300には、同じ規格のレンズマウント260を有する他のレンズユニット200を装着できる。
レンズユニット200において、カメラ本体300から遠くに位置するレンズ220は、固定筒210から直接に支持される。これに対して、他のレンズ230、240は、固定筒210対して光軸OA方向に移動できる。これにより、レンズユニット200の光学系は焦点距離または焦点位置を変化させることができる。
例えば、レンズ230は、レンズユニット200の焦点距離を変化させて被写体像の倍率を変化させる場合に移動するズームレンズのひとつとなる。また、レンズ240は、レンズユニット200の焦点位置を変化させて被写体像を撮像面に合焦させる場合に移動するフォーカシングレンズのひとつとなる。
レンズCPU250は、レンズユニット200自体の制御を司ると共に、カメラ本体300の本体CPU322との通信も担う。これにより、カメラ本体300に装着されたレンズユニット200は、カメラ本体300と連携して動作する。
カメラ本体300は、レンズユニット200に対してボディマウント360の背後に配されたミラーユニット400を備える。ミラーユニット400の上方にはフォーカシングスクリーン352が配される。
フォーカシングスクリーン352の更に上方にはペンタプリズム354が、ペンタプリズム354の後方にはファインダ光学系356が、それぞれ配される。ファインダ光学系356の後端は、カメラ本体300の背面にファインダ350として露出する。
ミラーユニット400の後方には、フォーカルプレンシャッタ370、固定フィルタ332および撮像素子330が順次配される。フォーカルプレンシャッタ370は、撮像素子330に入射する被写体光束を遮断または通過させる。
固定フィルタ332は、撮像素子330の直前に固定して設置される。固定フィルタ332は、撮像素子330に入射する被写体光束の空間周波数を減じるローパスフィルタとして機能する。また、固定フィルタ332は、撮像素子330の表面を保護する保護ガラスとしても機能する。
撮像素子330は、CCDセンサ、CMOSセンサなどの光電変換素子により形成される。撮像素子330の更に背後には、主基板320、背面表示部340が順次配される。主基板320には、本体CPU322および画像処理回路324が実装される。背面表示部340は、液晶表示板等により形成され、カメラ本体300の背面に露出する。
ミラーユニット400の下方には、可動フィルタ510および合焦光学系380が配される。可動フィルタ510は、昇降方向に移動可能に案内部520に支持される。また、可動フィルタ510は、駆動部530により駆動されて、案内部520に沿って昇降する。図示の状態では、可動フィルタ510は、被写体光束の光路から退避して、ミラーユニット400の下方に位置している。
ミラーユニット400は、メインミラー保持枠410およびメインミラー420を有する。メインミラー保持枠410は、メインミラー420を保持しつつ、メインミラー回動軸430により軸支される。図示の状態では、メインミラー保持枠410の前端が降下して位置決めピン440に当接する。これにより、メインミラー420は、被写体光束の光軸OAを斜めに横切る斜設状態にある。
また、ミラーユニット400は、サブミラー保持枠450およびサブミラー460を有する。サブミラー保持枠450は、サブミラー460を保持しつつ、サブミラー回動軸470によりメインミラー保持枠410から軸支される。よって、サブミラー460は、メインミラー保持枠410に対して回動する。また、メインミラー保持枠410が回動した場合は、サブミラー460およびサブミラー保持枠450もメインミラー保持枠410と共に移動する。
上記ミラーユニット400において、メインミラー420は、入射した入射光束の一部を透過するハーフミラー領域を有する。サブミラー460は、斜設状態にあるメインミラー420のハーフミラー領域から入射した被写体光束の一部を、合焦光学系380に向かって反射する。合焦光学系380は、入射した入射光束の一部を焦点検出センサ382に導く。これにより、カメラ本体300は、レンズユニット200のデフォーカス量を検出できる。
また、斜設状態にあるメインミラー420は、被写体光束を反射してフォーカシングスクリーン352に導く。フォーカシングスクリーン352は、撮像素子330の撮像面と共役な位置にあり、レンズユニット200の光学系が形成した被写体像を可視化する。
フォーカシングスクリーン352に結ばれた被写体像は、ペンタプリズム354およびファインダ光学系356を通じてファインダ350から観察される。ペンタプリズム354を通じた被写体像は、ファインダ350から正立正像として観察される。
また、ペンタプリズム354から射出される被写体光束の一部は、ファインダ光学系356の上方に配された測光センサ390に受光される。測光センサ390は、受光した入射光束の一部から被写体の明るさを検出する。
上記のような一眼レフカメラ100においてカメラ本体300のレリーズボタンが半押しされると、焦点検出センサ382および測光センサ390が有効になる。これにより、被写体像を適切な撮影条件で撮影し得る状態になる。
図2は、ミラーユニット400が退避状態にある場合の一眼レフカメラ100の模式的断面図である。図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
撮像素子330に被写体光を入射させる場合、ミラーユニット400は退避状態になる。即ち、退避状態において、メインミラー回動軸430の回りに回動したメインミラー保持枠410は、ストッパ480に前端上面を当接させて略水平になる。これにより、メインミラー420は、被写体光束の光路から退避する。
また、サブミラー保持枠450も、メインミラー保持枠410と共に上昇し、且つ、サブミラー回動軸470の回りに回動して略水平になる。これにより、サブミラー460も、被写体光束の光路から退避する。
カメラ本体300においては、メインミラー420およびサブミラー460が退避状態になった後、フォーカルプレンシャッタ370が開く。これにより、レンズユニット200から入射した入射光束は、固定フィルタ332を通過して撮像素子330に受光される。
固定フィルタ332はローパスフィルタであり、被写体光束の空間周波数を低減した上で撮像素子330に向かって射出する。これにより、ナイキスト周波数を越える空間周波数を有する被写体光束が入射した場合に、撮像素子330におけるモアレの発生を抑制する。
撮像素子330は、受光した被写体光束を電気信号に変換して出力する。撮像素子330から出力された電気信号は画像処理回路324において画像データに変換される。画像処理回路324において生成された画像データは、フラッシュメモリ等の二次記録媒体に画像ファイルとして保存される。
図3は、ミラーユニット400が依然として退避状態にあり、一眼レフカメラ100が第2撮影モードにある場合の模式的断面図である。図1および図2と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示のように、可動フィルタ510は、駆動部530に駆動され、案内部520に沿って上昇する。また、可動フィルタ510は、メインミラー420およびサブミラー460が上昇した後に開いた空間に向かって上昇する。このように、ミラーユニット400の斜設状態と、可動フィルタ510の上昇状態は排他的に選択される。
上昇した可動フィルタ510は、レンズユニット200を通じて入射した被写体光束を横切る。また、上昇した可動フィルタ510は、被写体光束中の光軸OAと直交する。これにより、レンズユニット200から入射した被写体光束は、可動フィルタ510および固定フィルタ332の両方を通過した後に撮像素子330に受光される。
このように、可動フィルタ510は、撮像素子330に受光される被写体光束に対して挿抜できる。また、撮像素子330は、固定フィルタ332を通じて被写体光束を受光する場合と、可動フィルタ510および固定フィルタ332の両方を通じて被写体光束を受光する場合との2つの状態をとり得る。
なお、カメラ本体300は、本体CPU322の制御項目のひとつとして、上記第1撮影モードと上記第2撮影モードとを切り替える切替部を有する。ここで、第1撮影モードは、例えば静止画撮影モードであり、第2撮影モードは動画撮影モードである。
切替部としての本体CPU322は、カメラ本体300の撮影モードを第1撮影モードから第2撮影モードに切り替える場合に、可動フィルタ510を上昇させて被写体光束に挿入する制御も実行する。これにより、動画撮影モードである第2撮影モードにおいて、撮像素子330は、固定フィルタ332および可動フィルタ510を通じて被写体光束を受光する。
また、切替部としての本体CPU322は、カメラ本体300の撮影モードを第2撮影モードから第1撮影モードに切り替える場合に、可動フィルタ510を降下させて被写体光束から退避させる制御も実行する。これにより、静止画撮影モードである第1撮影モードにおいて、撮像素子330は、固定フィルタ332を通じて被写体光束を受光する。
図4は、固定フィルタ332の作用を説明する模式図である。固定フィルタ332は、撮像素子330に受光される被写体光束に直交して、撮像素子330の撮像面と平行に配される。
固定フィルタ332は水平な光学軸を有する厚さtの複屈折板を含む。複屈折板の厚さtにより決まるローパスフィルタとしての分離幅は、例えば、撮像素子330における画素ピッチpに等しい。
なお、固定フィルタ332には、複屈折板の他に、赤外線吸収層等が含まれる。また、カメラ本体300においては、撮像素子330の保護ガラスを兼ねる場合もある。
固定フィルタ332に無偏光で入射した被写体光束は、固定フィルタ332の厚さ内を直進して射出される常光線と、固定フィルタ332内を斜行した後、常光線と平行に射出される異常光線とに分離される。常光線および異常光線は、偏光方向が互いに直交する偏光となる。また、常光線と異常光線の間隔はピッチpに等しい。
このように、無偏光で入射した単一の被写体光束は、固定フィルタ332を通過することにより、画素ピッチpと等しい間隔で離れた一対の直線偏光に分離した状態で撮像素子330に受光される。よって、撮像素子330に受光される被写体光束の空間周波数は、当初の被写体光束よりも低くなる。これにより、画素ピッチpよりも高い空間周波数を有する被写体光束が入射した場合に生じるモアレが抑制される。
なお、図中の撮像素子330は正方形とは限らない。3:4、16:9等、さまざまなアスペクト比をとり得る。撮像素子330の形状に合わせて、固定フィルタ332の形状も変化する。
図5は、撮像素子330の構造を概念的に説明する模式図である。図中左側に示すように、撮像素子330の撮像面には多数の受光素子が二次元的に配列される。受光素子は、フォトダイオード、フォトトランジスタ等により形成され、入射光の強さに応じた電荷を蓄積する。
2次元的に配列された受光素子には、赤、緑および青のいずれかを透過するカラーフィルタが重ねられる。これらの受光素子のうち、正方形に並ぶ4つの受光素子を組み合わせて単位画素331が形成される。単位画素331は、赤および青を透過するフィルタを有する受光素子をひとつずつと、人間の受光感度が高い緑を透過するフィルタを有する受光素子2個とを含むカラー画素を形成する。このような正方形のカラー画素は、高い解像度で撮像する静止画撮影における単位画素331となる。
一方、同じ撮像素子330を用いて動画撮影をする場合は、図中右側に示すように、より多くの受光素子を用いて単位画素333が形成される。即ち、動画の規格は、静止画の解像度よりも低い解像度を有する場合が多いので、撮像素子330における正方形の単位画素331を全て用いると画素数が過剰になる。また、動画撮影では、被写体光束を変換した電気信号を連続的に読み出すので、読み出し速度を維持する目的で画素数を減じる場合もある。
そこで、動画撮影においては、画素加算読み出し方式、間引き読み出し方式等の読み出し方式で撮像素子330を動作させる場合がある。画素加算読み出し方式では、静止画撮影に用いる単位画素331よりも多数の受光素子を用いて単位画素333を形成する。これにより、撮像素子300中の単位画素333の数が少なくなる。
ただし、単位画素333毎のカラーバランスを維持するために、動画撮像用の単位画素333も、静止画撮影用の単位画素331と同じ割合で赤、緑および青のカラーフィルタを含む。よって、動画撮影用の単位画素333の画素ピッチは、静止画撮影用の単位画素331の二倍以上になり、撮像素子330の水平解像度または垂直解像度は半分以下になる。
間引き読み出し方式では、撮像素子330の一部の単位画素333から出力された画像信号を使用しない。これにより、撮像素子330の実効的な単位画素333数が少なくなる。また、単位画素333の数が減るので、撮像素子330の水平解像度および垂直解像度の少なくとも一方は低くなる。
このように、動画撮影用に単位画素333の数を低下させた撮像素子330からは、空間周波数が低い画像信号が読み出される。撮像素子330から読み出された画像信号は、アナログデジタル変換回路によりデジタル信号に変換されるので、動画撮影の場合にカメラ本体300内部において取り扱われるデジタル画像信号においてはナイキスト周波数が低下する。このため、単位画素333の数が多い静止画撮影のために設定された固定フィルタ332の特性ではモアレを抑制できない場合がある。
なお、図5は模式図であって、画素加算読み出しおよび間引き読み出しについては、多くの方法が提案され、また、実施されている。このため、動画撮影における撮像素子330の単位画素333には、形状、画素数共に、様々な形態がある。
図6は、ローパスフィルタシステム501の構造と作用を説明する模式図である。ローパスフィルタシステム501は、図4に示した固定フィルタ332と、固定フィルタ332に入射する被写体光束上に挿入された可動フィルタ510とを含む。よって、レンズユニット200からカメラ本体300に入射した被写体光束は、可動フィルタ510および固定フィルタ332を通過した後に撮像素子330に受光される。
可動フィルタ510は、固定フィルタ332と同じく、水平な光学軸を有し、厚さtの複屈折板を含む。よって、可動フィルタ510に無偏光で入射した被写体光束は、可動フィルタ510の厚さ内を直進して射出される常光線と、可動フィルタ510内を斜行した後常光線と平行に射出される異常光線とに分離される。
これにより、常光線および異常光線は、偏光方向が互いに直交する偏光となる。このように、可動フィルタ510は、固定フィルタ332に入射する被写体光束の空間周波数を変更して射出する。
可動フィルタ510において、常光線および異常光線の一対の直線偏光に分離された被写体光束は、それぞれ固定フィルタ332に入射する。固定フィルタ332は可動フィルタ510と方向の光学軸を有するので、固定フィルタ332において、常光線は分離されることなく固定フィルタ332内を直進する。よって、常光線は、当初入射した被写体光束の延長線上で撮像素子330に受光される。
可動フィルタ510の内部を斜行した異常光線は、同じ方向の光学軸を有する固定フィルタ332においても再び斜行する。また、固定フィルタ332に入射する異常光線は、常光線と同じ偏光成分を含まないので、固定フィルタ332内を直進する成分は生じない。
また、固定フィルタ332に入射する常光線および異常光線は、可動フィルタ510から射出された時点で既にピッチpの分離幅で分離されている。よって、固定フィルタ332において斜行した後に射出された異常光線は、常光線に対してピッチ2pの間隔をおいて撮像素子330に受光される。
このように、固定フィルタ332および可動フィルタ510を通過して撮像素子330に受光された被写体光束の空間周波数は、単独の固定フィルタ332を通過して撮像素子330に受光された被写体光束の空間周波数よりも低い。よって、例えば、固定フィルタ332を単独で用いて静止画を撮影する一眼レフカメラ100において動画撮影をする場合に、被写体光束の光路上に可動フィルタ510を挿入することにより、撮像素子330に受光される被写体光束の空間周波数を、動画撮影に合わせて低下させることができる。また、記録容量を小さくする目的等により撮影解像度を低下させた場合にも、低下させた解像度に合わせて被写体光束の空間周波数を低下させることができる。
図7は、他のローパスフィルタシステム502の構造と作用を説明する模式図である。ローパスフィルタシステム502は、図4に示した固定フィルタ332に対して可動フィルタ510を加えて形成される。よって、可動フィルタ510が被写体光束に挿入されている場合、レンズユニット200からカメラ本体300に入射した被写体光束は、可動フィルタ510および固定フィルタ332を両方通過した後に撮像素子330に受光される。
可動フィルタ510は、3枚の複屈折板511、512、513を含む。入射した被写体光束の伝播方向に従って、1枚目と2枚目の複屈折板511、512は、水平に対してそれぞれが45°傾きつつ、互いに直交する光学軸を有する。また、複屈折板511、512は、それぞれ厚さ√2tを有する。3枚目の複屈折板513は、固定フィルタ332と同じ方向の光学軸と厚さを有する。
上記のような可動フィルタ510に入射した無偏光の被写体光束は、複屈折板511において、複屈折板511内を直進する常光線と、複屈折板511内を斜行する異常光線とに分離される。常光線および異常光線は、偏光方向が互いに直交する直線偏光となる。
複屈折板511は、水平面に対して45°傾いた光学軸を有するので、厚さ√2tの複屈折板511内を斜行した異常光線は、常光線の射出位置に対して、縦および横にピッチpずつずれた位置から射出される。このような位置関係を、次の複屈折板511の入射面において、常光線を示す白丸と異常光線を示す黒丸により表す。
2枚目の複屈折板512の光学軸は、1枚目の複屈折板511の光学軸に対して直交する。よって、複屈折板511から射出されて複屈折板512に入射した常光線は、複屈折板512内を斜行する。厚さ√2tの複屈折板512内を斜行した異常光線は、入射位置に対して縦および横にピッチpずつずれた位置から射出される。
一方、複屈折板512に入射した異常光線は、複屈折板512内を直進した後に射出される。よって、常光線および異常光線は、図中縦にピッチ2pの間隔に分離される。このような位置関係を、3枚目の複屈折板513の入射面において、常光線を示す白丸と異常光線を示す黒丸により表す。
3枚目の複屈折板513の光学軸は、2枚目の複屈折板512の光学軸に対して45°傾いている。換言すれば、2枚目の複屈折板512から射出された常光線および異常光線の偏光方向は、いずれも、複屈折板513の光学軸に対して傾いている。よって、複屈折板513においては、常光線および異常光線が、それぞれ個別に複屈折を生じて分離される。
これにより、複屈折板512から射出された常光線および異常光線のいずれもが、複屈折板513において、それぞれ常光線と異常光線とに分離される。常光線の各々は、複屈折板513内を直進して固定フィルタ332に向かって射出される。厚さtの複屈折板512内を斜行した異常光線の各々は、それぞれ対応する常光線からピッチp離れた位置から、固定フィルタ332に向かって射出される。このような位置関係を、次の固定フィルタ332の入射面において、常光線を示す白丸と異常光線を示す黒丸により表す。
固定フィルタ332は、3枚目の複屈折板513の光学軸と同じ方向の光学軸を有する。よって、可動フィルタ510から射出されて固定フィルタ332に入射した常光線は、依然として固定フィルタ332内を直進した後、撮像素子330に受光される。一方、可動フィルタ510から射出されて固定フィルタ332に入射した異常光線は、厚さtを有する固定フィルタの内部を更に斜行して、それぞれが対応する常光線からピッチ2p離れた位置において、撮像素子330に受光される。
これらローパスフィルタシステム502の総合的な作用により、可動フィルタ510に入射した単一の被写体光束は、互いにピッチ2pずつはなれた4点において撮像素子330に受光される。このような受光位置の関係を、撮像素子330の撮像面において、常光線を示す白丸と異常光線を示す黒丸により表す。図示のように、固定フィルタ332および可動フィルタ510を通過して撮像素子330に受光された被写体光束の空間周波数は、単独の固定フィルタ332を通過して撮像素子330に受光された被写体光束の空間周波数よりも低い。
図8は、また他のローパスフィルタシステム503の構造と作用を説明する模式図である。ローパスフィルタシステム503は、図4に示した固定フィルタ332に対して可動フィルタ510を加えて形成される。可動フィルタ510が被写体光束に挿入されている場合、レンズユニット200からカメラ本体300に入射した被写体光束は、可動フィルタ510および固定フィルタ332を両方通過した後に撮像素子330に受光される。
可動フィルタ510は、一対の複屈折板514、513と、複屈折板514、513に挟まれたλ/4波長板515とを含む。入射した被写体光束の伝播方向に従って、1枚目の複屈折板514は、図中垂直方向の光学軸を有する。
また、複屈折板514は、厚さ2tを有する。λ/4波長板515は、入射した直線偏光を円偏光に変換して射出する。複屈折板513は、固定フィルタ332の複屈折板と同じ仕様および特性を有する。
上記のような可動フィルタ510に入射した無偏光の被写体光束は、複屈折板514において、複屈折板514内を直進する常光線と、複屈折板514内を斜行する異常光線とに分離される。常光線および異常光線は、偏光方向が互いに直交する直線偏光となる。
厚さ2tの複屈折板511内を斜行した異常光線は、常光線の射出位置に対して、垂直方向にピッチ2pずれた位置から射出される。このような位置関係を、λ/4波長板515の入射面において、常光線を示す白丸と異常光線を示す黒丸により表す。
λ/4波長板515に入射した常光線および異常光線は、それぞれ円偏光に変換された上で射出される。射出された一対の被写体光束は、ピッチ2pを維持したまま複屈折板513に入射する。複屈折板513に入射する被写体光束がピッチ2pを維持していることを、複屈折板513の入射面において一対の白丸により表す。
複屈折板513は水平な光学軸を有する。よって、互いに平行な一対の円偏光として複屈折板513に入射した被写体光束は、それぞれが常光線および異常光線に水平に分離される。
これにより、可動フィルタ510からは、水平方向にピッチp離れ、垂直方向にピッチ2p離れた2対の被写体光束が射出される。このような位置関係を、固定フィルタ332の入射面において、常光線を示す白丸と異常光線を示す黒丸により表す。なお、常光線と異常光線は、互いに直交する偏光面を有する直線偏光となる。
固定フィルタ332は、複屈折板513の光学軸と同じ方向の光学軸を有する。よって、可動フィルタ510から射出されて固定フィルタ332に入射した常光線は、依然として固定フィルタ332内を直進した後、撮像素子330に受光される。一方、可動フィルタ510から射出されて固定フィルタ332に入射した異常光線は、厚さtを有する固定フィルタの内部を更に斜行して、それぞれが対応する常光線からピッチ2p離れた位置において、撮像素子330に受光される。
これらローパスフィルタシステム503の総合的な作用により、可動フィルタ510に入射した単一の被写体光束は、互いにピッチ2pずつはなれた4点において撮像素子330に受光される。このような受光位置の関係を、撮像素子330の撮像面において、常光線を示す白丸と異常光線を示す黒丸により表す。図示のように、固定フィルタ332および可動フィルタ510を通過して撮像素子330に受光された被写体光束の空間周波数は、単独の固定フィルタ332を通過して撮像素子330に受光された被写体光束の空間周波数よりも低い。
なお、λ/4波長板515は波長依存性を有するので、入射光の一部を円偏光に変換しない場合がある。このため、ローパスフィルタシステム503を通過することにより、被写体光束の一部が減衰する場合もある。しかしながら、λ/4波長板515は、厚さの選択範囲が複屈折板よりも広いので、特性を選びつつローパスフィルタの一部として用いることができる。
図9は、固定フィルタ332の構造と作用を説明する模式図である。固定フィルタ332は、一対の複屈折板513、516と、複屈折板513、516に挟まれたλ/4波長板515とを含む。
固定フィルタ332において、複屈折板513は、図8に示した可動フィルタ510において用いた複屈折板513と同じ仕様および特性を有する。また、λ/4波長板515も、図8に示したローパスフィルタシステム503で使用したものと同じ使用および特性を有する。また、固定フィルタ332において、複屈折板516は、厚さtと、図中垂直な方向の光学軸とを有する。
上記のような固定フィルタ332に入射した無偏光の被写体光束は、複屈折板513において、複屈折板513内を直進する常光線と、複屈折板513内を斜行する異常光線とに分離される。常光線および異常光線は、偏光方向が互いに直交する直線偏光となる。
厚さtの複屈折板513内を斜行した異常光線は、常光線の射出位置に対して、水平方向にピッチpずれた位置から射出される。このような位置関係を、λ/4波長板515の入射面において、常光線を示す白丸と異常光線を示す黒丸により表す。
λ/4波長板515に入射した常光線および異常光線は、それぞれ円偏光に変換された上で射出される。射出された一対の被写体光束は、ピッチpを維持したまま複屈折板516に入射する。複屈折板516に入射する被写体光束はピッチpを維持している。
複屈折板516は図中垂直な光学軸を有する。よって、互いに平行に伝播する一対の円偏光として複屈折板516に入射した被写体光束は、それぞれが常光線および異常光線に垂直方向に分離される。これにより、固定フィルタ332からは、水平方向および垂直方向にピッチp離れた2対の被写体光束が射出される。このような位置関係を、撮像素子330の撮像面において、常光線を示す白丸と異常光線を示す黒丸により表す。図示のように、固定フィルタ332は、互いに直交する2軸方向に対して均等に空間周波数を低減させる。
なお、上記固定フィルタ332においても、波長依存性を有するλ/4波長板515は、入射光の一部を円偏光に変換しない場合がある。しかしながら、λ/4波長板515は、厚さの選択範囲が複屈折板よりも広いので、特性を選びつつローパスフィルタの一部として用いられる。
図10は、ローパスフィルタシステム504の構造と作用を説明する模式図である。ローパスフィルタシステム504は、図9に示した固定フィルタ332と、固定フィルタ332に入射する被写体光束上に挿入された可動フィルタ510とを含む。よって、レンズユニット200からカメラ本体300に入射した被写体光束は、可動フィルタ510および固定フィルタ332を通過した後に撮像素子330に受光される。
ローパスフィルタシステム504において、可動フィルタ510は、水平な光学軸を有し、厚さtの複屈折板を含む。よって、可動フィルタ510に無偏光で入射した被写体光束は、固定フィルタ332の厚さ内を直進して射出される常光線と、固定フィルタ332内を斜行した後、常光線と平行に射出される異常光線とに分離される。常光線および異常光線は、偏光方向が互いに直交する偏光となる。
可動フィルタ510から出射された常光線および異常光線は、ピッチpの間隔をおいて平行に固定フィルタ332に入射する。そのような位置関係を、複屈折板513の入射面において、常光線を示す白丸と異常光線を示す黒丸により表す。
固定フィルタ332に入射した常光線は、複屈折板513内を直進して、λ/4波長板515に入射する。また、固定フィルタ332に入射した異常光線は、厚さtの複屈折板513内を斜行して、常光線に対するピッチを2pに拡げた後にλ/4波長板515に入射する。このような位置関係を、λ/4波長板515の入射面において、常光線を示す白丸と異常光線を示す黒丸により表す。
λ/4波長板515に入射した常光線および異常光線は、それぞれ円偏光に変換された上で射出される。射出された一対の被写体光束は、ピッチ2pを維持したまま複屈折板516に入射する。複屈折板516に入射する被写体光束はピッチ2pを維持している。
複屈折板516は図中垂直な光学軸を有する。よって、互いに平行に伝播する一対の円偏光として複屈折板516に入射した被写体光束は、それぞれが常光線および異常光線に垂直方向に分離される。これにより、固定フィルタ332からは、水平方向にピッチ2p離れ、垂直方向にピッチp離れた常光線および異常光線が射出される。撮像素子330に受光される常光線および異常光線の位置関係を、撮像素子330の撮像面において、常光線を示す白丸と異常光線を示す黒丸により表す。
このように、ローパスフィルタシステム504において、固定フィルタ332および可動フィルタ510を通過して撮像素子330に受光された被写体光束の空間周波数は、単独の固定フィルタ332を通過して撮像素子330に受光された被写体光束の空間周波数よりも低い。また、ローパスフィルタシステム504において、可動フィルタ510は、互いに直交する2軸方向について異なるように空間周波数を低減させる。
正方画素を有する撮像素子330により静止画撮影をする一眼レフカメラ100において動画撮影をする場合には、動画撮影に対応した画素加算または間引きにより撮像素子の画素形状が正方形ではなくなる場合がある。このような場合であっても、上記のように、可動フィルタ510を挿入することにより、ローパスフィルタの特性を動画撮影に合わせて特定の方向について低下させることができる。
図11は、一眼レフカメラ101の模式的断面図である。一眼レフカメラ101は、下記に説明する部分を除くと、図1から図3までに示した一眼レフカメラ100と同じ構造を有する。そこで、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
一眼レフカメラ100に比較すると、一眼レフカメラ101においては、案内部520および駆動部530がカメラ本体301から省かれている。その代わりに、可動フィルタ510は、カメラ本体301に対して着脱できる可動フィルタ保持枠518により保持されている。
可動フィルタ保持枠518は、ミラーユニット400が退避状態にある場合に、カメラ本体301の前面開口からミラーユニット400の内側に差し込んで、保持した可動フィルタ510をミラーユニット400内に固定できる。可動フィルタ保持枠518をミラーユニット400内に設置した場合、可動フィルタ510は、被写体光束の光軸OAに対して直交しつつ被写体光束の光路に挿入される。
これにより、レンズユニット200を通じて入射した被写体光束は、可動フィルタ510および固定フィルタ332を通過した後に、撮像素子330に受光される。よって、既に説明した通り、動画撮影に適したローパスフィルタを通過した被写体光束が撮像素子330に受光される。
可動フィルタ保持枠518がカメラ本体301に装着された場合に、本体CPU322は、可動フィルタ保持枠518を検知してカメラ本体300の撮影モードを第1撮影モードから第2撮影モードに切り替えてもよい。これにより、一眼レフカメラ101は、可動フィルタ保持枠518に保持された可動フィルタ510を含み、動画撮影モードに適した特性を有するローパスフィルタを通じて動画撮影できる。
なお、可動フィルタ保持枠518が挿入されたカメラ本体301は、専ら、動画撮影モードである第2撮影モードで動作する。よって、カメラ本体301に装着された可動フィルタ保持枠518は、ミラーユニット400の斜設状態への移行を禁止する旨を本体CPU322に伝達してもよい。そのような通知は、カメラ本体301のボディマウント360近傍に設けられた電気接点を利用してもよいし、可動フィルタ保持枠518と協働する機械的な伝達構造を用いてもよい。
更に、可動フィルタ保持枠518の一部と、ミラーユニット400の一部とに相補的な形状の部分を設け、当該ミラーユニット400に可動フィルタ保持枠518を装着した場合に互いに嵌合するようにしてもよい。これにより、カメラ本体301と可動フィルタ保持枠518との適合をユーザに知らせることができる。
図12は、一眼レフカメラ102の模式的断面図である。一眼レフカメラ102において、カメラ本体302に可動フィルタ510は設けられていない。一方、レンズユニット202には、レンズ220、230、240の背後に、フィルタスロット270が設けられる。フィルタスロット270には、可動フィルタ保持枠519に保持された可動フィルタ510が装着される。
可動フィルタ510は、可動フィルタ保持枠519を、図中上方に引き抜くことにより、被写体光束から退避させることができる。また、可動フィルタ保持枠519を、フィルタスロット270に差し込んだ場合は、フィルタスロット270の近傍に配されたフィルタ検出部252が可動フィルタ510を検出する。可動フィルタ510が検出された旨は、レンズCPU250を通じて本体CPU322に伝達される。
カメラ本体302は、本体CPU322の制御項目のひとつとして、第1撮影モードおよび第2撮影モードを切り替える切替部を有する。よって、可動フィルタ510が検出された旨を通知された本体CPU322は、カメラ本体300の撮影モードを第1撮影モードから第2撮影モードに切り替える。これにより、一眼レフカメラ102は、動画撮影モードに適した特性を有するローパスフィルタを通じて動画を撮影できる。また、可動フィルタ510が取り外された場合、切替部は、カメラ本体302の撮影モードを第2撮影モードから第1撮影モードに切り替える。
図13は、ローパスフィルタシステム505の構造と作用を説明する模式図である。ローパスフィルタシステム505は、図4に示した固定フィルタ332に対して、複屈折板517を含む可動フィルタ510を加えることにより形成される。
複屈折板517の光学軸は、固定フィルタ332の光学軸に対して反対の向きを有する。このため、可動フィルタ510において直交する偏光に分離して出射された被写体光束は、固定フィルタ332において、再び収束して単一の無偏光として撮像素子330に受光される。
即ち、図6に示したように、可動フィルタ510が退避した状態で固定フィルタ332を通過した被写体光束は、空間周波数が低下した状態で撮像素子330に受光される。これに対して、可動フィルタ510および固定フィルタ332の両方を通過した被写体光束は、空間周波数の低下なしに撮像素子330に受光される。
このように、ローパスフィルタシステム505では、可動フィルタ510を挿入することにより、固定フィルタ332により低下する空間周波数を回復させ、高い解像を得ることができる。よって、例えば、静止画撮影モードにおいて解像を重視する場合に、一時的に空間周波数を高くする目的で可動フィルタ510を使用できる。
また、上記説明では、ローパスフィルタとしての特性を変化させることを例にあげたが、変化させる光学フィルタの特性は、空間周波数のフィルタリング特性に限られるわけではない。例えば、可動フィルタとして、減光フィルタ、ソフトフィルタ等、特殊効果を有するフィルタを用いることもできる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。