JP2013155145A - 環状ジスルフィド化合物の製造方法 - Google Patents

環状ジスルフィド化合物の製造方法 Download PDF

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賢 田村
Takehiro Hiyama
武寛 檜山
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Abstract

【課題】本発明の目的は、環状ジスルフィド化合物を、高収率で、簡易且つ経済的に製造する方法を提供するである。
【解決手段】親水性溶媒を含む溶媒中で、ジハロゲン化合物とジハロゲン化合物1モルに対して1.05モル以上のアルカリ金属の多硫化物とを反応させた後に、加熱処理を行うことによって、環状ジスルフィド化合物が高収率で得られ、環状スルフィド化合物の簡易且つ経済的な製造を実現できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、環状ジスルフィド化合物を、高収率で、簡易且つ経済的に製造する方法に関する。
環状ジスルフィド化合物は、ゴム用加硫剤、各種ポリマー改質剤、電子デバイス等の電極材料等として有用であり、広く利用されている。
従来、環状ジスルフィド化合物の製造方法については、精力的な検討が行われ、種々の方法が提案されている。例えば、非特許文献1には、ジチオール化合物と、含水シリカゲルで支持された臭素とを、塩化メチレン中で反応させることにより、環状ジスルフィド化合物を製造できることが報告されている。また、非特許文献2には、硫化ナトリウムと硫黄から二硫化ナトリウムを調製後、相間移動触媒のジデシルジメチルアンモニウムブロミド存在下、クロロホルム中でジブロモアルカン化合物を反応させることにより、環状ジスルフィド化合物を製造できることが報告されている。
Tetrahedron Letters,43(35),6271−6273,(2002) Tetrahedron Letters,49(3),520−522,(2008)
しかしながら、非特許文献1の製造方法では、原料に比較的高価なジチオール化合物を用いるため、製造コストが上昇し、工業的に有利な方法とは言い難い。また、非特許文献2の製造方法では、反応試剤の二硫化ナトリウムを調製する際に、所望の二硫化ナトリウムに加えて多硫化ナトリウムの混合物が得られるため、反応後には、環状ジスルフィド化合物だけでなく、環状ポリスルフィド化合物が混合したものが生成し、更に分子間反応の進行によりポリマーも生成するため、所望の環状ジスルフィド化合物の収率が低くなるという欠点がある。
以上のように、従来の方法では、得られる環状ジスルフィド化合物の収率が低く、操作が煩雑であった。従って、これらの欠点を克服することが可能な環状ジスルフィド化合物の製造方法の開発が望まれていた。
そこで、本発明は、環状ジスルフィド化合物を、高収率で、簡易且つ経済的に製造する方法を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、親水性溶媒を含む溶媒中で、ジハロゲン化合物とジハロゲン化合物1モルに対して1.05モル以上の割合でアルカリ金属の多硫化物とを反応させた後に、加熱処理を行うことによって、環状ジスルフィド化合物が高収率で得られ、環状ジスルフィド化合物の簡易且つ経済的な製造を実現できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねた結果完成されたものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる環状ジスルフィド化合物の製造方法を提供する。
項1. 下記一般式(1):
Figure 2013155145
(式中、
Xはハロゲン原子を示し、
Yはヘテロ原子及び/又は炭素数1〜18の炭化水素基であって、その炭化水素基中にヘテロ原子又は環構造を有していてもよく、
、R、R、及びRは、それぞれ同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基を示す)
で表されるジハロゲン化合物と、
下記一般式(2):
Figure 2013155145
(式中、Mはアルカリ金属を示し、xは2〜6の整数を示す)
で表されるアルカリ金属の多硫化物とを
前記ジハロゲン化合物1モルに対して、前記アルカリ金属の多硫化物を1.05モル以上の割合で、親水性溶媒を含む溶媒中で反応させる第1工程、及び
前記第1工程で得られた反応液を加熱処理する第2工程を含むことを特徴とする、
下記一般式(3):
Figure 2013155145
(式中、Yは、一般式(1)におけるYと同じものを示し、
、R、R、及びRは、一般式(1)におけるR、R、R、及びRと同じものを示す)
で表される環状ジスルフィド化合物の製造方法。
項2. 第2工程における加熱処理の温度が40〜120℃である、項1に記載の製造方法。
項3. 第1工程において、一般式(1)で表されるジハロゲン化合物1モルに対して、一般式(2)で表されるアルカリ金属の多硫化物を1.05〜10モルの割合で反応させる、項1又は2に記載の製造方法。
項4. 第1工程において、一般式(1)で表されるジハロゲン化合物1モルに対して、一般式(2)で表されるアルカリ金属の多硫化物を1.5〜5モルの割合で反応させる、項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
項5. 第1工程における反応が、親水性溶媒と当該親水性溶媒に非相溶性の有機溶媒との混合溶媒中で行われる、項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
項6. 一般式(2)において、Mがナトリウムである、項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
項7. 一般式(1)において、Xが塩素原子又は臭素原子である、項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
本発明の製造方法によれば、ジハロゲン化合物を出発原料として、環状ジスルフィド化合物を高収率で、簡易且つ経済的に製造することができる。また、本発明の製造方法によれば、原料等がポリマー化したものや環状ポリスルフィド化合物が残存するのを抑制し、高純度の環状ジスルフィド化合物を得ることができる。従って、本発明によれば、工業的生産に適した製造方法で、ゴム用加硫剤、各種ポリマー改質剤、電子デバイス等の電極材料等として有用である環状ジスルフィド化合物を効率的に得ることができる。
本発明の環状ジスルフィド化合物の製造方法は、ジハロゲン化合物とジハロゲン化合物1モルに対して1.05モル以上の割合のアルカリ金属の多硫化物とを、親水性溶媒を含む溶媒中で反応させる第1工程と、前記第1工程で得られた反応液を加熱処理する第2工程を含むことを特徴とする。以下、本発明の環状ジスルフィド化合物の製造方法における各工程について、詳述する。
第1工程
第1工程では、ジハロゲン化合物とジハロゲン化合物1モルに対して1.05モル以上の割合のアルカリ金属の多硫化物とを、親水性溶媒を含む溶媒中で反応させる。
本発明で使用されるジハロゲン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、「一般式(1)の化合物」と略記することがある)である。
Figure 2013155145
一般式(1)中、Xは、ハロゲン原子を示す。当該ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。これらの中でも塩素原子又は臭素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
一般式(1)中、Yはヘテロ原子及び/又は炭素数1〜18の炭化水素基を示す。
当該ヘテロ原子としては、例えば、硫黄原子、窒素原子、酸素原子等が挙げられる。
また、当該炭素数1〜18の炭化水素基としては、本第1工程においての反応を阻害しないもの(即ち、反応に関与しない炭化水素基)であればよく、例えば、脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基が挙げられる。当該炭化水素基中の炭素数は1〜18であればよいが、好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜6が挙げられる。これらの炭化水素基は、置換基(例えば、アルキル基等)を有していてもよく、その炭素鎖中にヘテロ原子(硫黄原子、窒素原子、酸素原子等)や環構造(脂環構造、芳香環構造、複素環構造等)等の原子又は原子団を有していてもよい。
このような炭化水素基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、へキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、シクロヘキサン−1,1−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等のアルキレン基;2−チアプロパン−1,3−ジイル基、3−チアペンタン−1,5−ジイル基、4−チアヘプタン−1,7−ジイル基、2−オキサプロパン−1,3−ジイル基、3−オキサペンタン−1,5−ジイル基、4−オキサヘプタン−1,7−ジイル基等の炭素鎖中にヘテロ原子を有するアルキレン基;1,4−ジチアン−2,5−ジメチル基、1,4−ジオキサン−2,5−ジメチル基等の炭素鎖中にヘテロ原子及び環構造を有するアルキレン基;1,4−フェニレン基、1,4−キシリレン基、1,4−ナフチレン基、4,4‘−ビフェニレン基等のアリレーン基等が例示される。これらの中でも、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、2−オキサプロパン−1,3−ジイル基、1,4−フェニレン基が挙げられ、更に好ましくは、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、2−オキサプロパン−1,3−ジイル基が挙げられる。
一般式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基を示す。
炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基が挙げられる。
一般式(1)中、R、R、R及びRは、いずれも水素原子であることが好ましい。
一般式(1)の化合物の具体例としては、例えば、1,3−ジブロモプロパン、1,3−ジクロロプロパン、1,4−ジブロモブタン、1,4−ジクロロブタン、1,5−ジブロモペンタン、1,5−ジクロロペンタン、1,6−ジブロモヘキサン、1,6−ジクロロヘキサン、ビス(ブロモメチル)エーテル、ビス(クロロメチル)エーテル、ビス(ブロモメチル)スルフィド、ビス(クロロメチル)スルフィド等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、1,4−ジブロモブタン、1,6−ジブロモヘキサン、ビス(ブロモメチル)エーテルが挙げられる。
一般式(1)の化合物は、商業的に入手可能な化合物を用いてもよく、公知の方法によって得られたものを使用してもよい。
本発明で使用されるアルカリ金属の多硫化物は、下記一般式(2)で表される化合物(以下、「一般式(2)の化合物」と略記することがある)である。
Figure 2013155145
一般式(2)中、Mはアルカリ金属を示す。当該アルカリ金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはナトリウムが挙げられる。
一般式(2)中、xは2〜6の整数を示す。xとして、好ましくは2〜4の整数、更に好ましくは2が挙げられる。
一般式(2)の化合物の具体例としては、例えば、二硫化リチウム、二硫化ナトリウム、二硫化カリウム、三硫化リチウム、三硫化ナトリウム、三硫化カリウム、四硫化リチウム、四硫化ナトリウム、四硫化カリウム等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、二硫化リチウム、二硫化ナトリウム、二硫化カリウムが挙げられ、更に好ましくは二硫化ナトリウムが挙げられる。
本第1工程で使用される一般式(2)の化合物は、1種のアルカリ金属の多硫化物であってもよいが、2種以上のアルカリ金属の多硫化物の混合物であってもよい。
一般式(2)の化合物は、商業的に入手可能な化合物を用いてもよく、公知の方法によって得られたものを使用してもよい。
一般式(2)の化合物を製造するには、例えば、アルカリ金属の一硫化物と硫黄を反応させればよい。この反応の際、アルカリ金属の一硫化物と硫黄の当量比に応じて、得られる一般式(2)の化合物におけるアルカリ金属と硫黄の比率が決まる。例えば、アルカリ金属の二硫化物の場合(一般式(2)中のxが2の場合)は、アルカリ金属の一硫化物(MS;Mは前記と同じ)と硫黄を等量程度(例えば、アルカリ金属の一硫化物と硫黄を0.9:1.0〜1.0:0.9(当量比))で反応させることによりを得ることができる。なお、一般式(2)の化合物を製造する際の反応温度については、特に限定されないが、例えば20〜90℃が挙げられる。
本第1工程において、一般式(2)の化合物の使用割合は、一般式(1)の化合物1モルに対して、1.05モル以上であればよい。一般式(1)の化合物1モルに対する一般式(2)の化合物の使用割合として、好ましくは1.05〜10モル、更に好ましくは、1.05〜5モルであり、より好ましくは1.5〜5モル、特に好ましくは1.5〜3モルが挙げられる。このように一般式(1)の化合物に対して過剰量の一般式(2)の化合物を反応させることにより、環状ジスルフィド化合物を高収率で得ることが可能になる。
本第1工程における反応は、親水性溶媒を含む溶媒中で行われる。前記親水性溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは水が挙げられる。
また、本第1工程における反応に使用される溶媒は、親水性溶媒からなるものであってもよいが、親水性溶媒が含まれる限り、親水性溶媒と当該親水性溶媒に非相溶性の有機溶媒の混合溶媒であってもよい。このような親水性溶媒に非相溶性の有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはトルエンが挙げられる。
本第1工程における反応を、親水性溶媒と当該親水性溶媒に非相溶性の有機溶媒との混合溶媒中で行う場合、これらの親水性溶媒と当該親水性溶媒に非相溶性の有機溶媒の混合比としては、例えば、親水性溶媒100質量部に対して、当該有機溶媒が50〜500質量部、好ましくは100〜200質量部が挙げられる。
本第1工程における反応に使用される溶媒の好適な例として、親水性溶媒と当該親水性溶媒に非相溶性の有機溶媒との混合溶媒、特に水とトルエンの混合溶媒が挙げられる。
本第1工程において、溶媒の使用量については、特に制限されないが、例えば、一般式(1)の化合物100質量部に対して50〜1000質量部、好ましくは100〜500質量部が挙げられる。
本第1工程における反応において、相間移動触媒を使用せずとも反応は進行するため、相間移動触媒の使用の有無については制限されない。相間移動触媒を使用することにより反応を円滑に進行させ得る場合には、相間移動触媒を使用することが好ましい。本第1工程における反応に使用される相間移動触媒としては、特に制限されないが、例えば、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩;ヘキサデシルトリエチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、トリオクチルエチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド等の4級ホスホニウム塩;18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6等のクラウンエーテル等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、テトラブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。
本第1工程における反応に相間移動触媒を使用する場合、その使用量については、特に制限されないが、例えば、一般式(1)の化合物100質量部に対して0.5〜20質量部、好ましくは1〜10質量部が挙げられる。
本第1工程における反応は、例えば、一般式(2)の化合物、溶媒、及び必要に応じて使用される相間移動触媒の混合液中に、一般式(1)の化合物を滴下することで開始される。
本第1工程における反応温度については、特に制限されないが、例えば、10〜100℃、好ましくは20〜50℃が挙げられる。
また、本第1工程における反応時間については、反応温度により異なるために一概にはいえないが、例えば1〜24時間、好ましくは2〜10時間が挙げられる。ここで、反応時間とは、一般式(1)の化合物、一般式(2)の化合物、溶媒、及び必要に応じて使用される相間移動触媒の混合が完了した時点から反応終了までの時間を指し、例えば、一般式(1)の化合物を滴下して反応系に供する場合には、一般式(1)の化合物の滴下終了時点から反応終了までの時間を指す。
第2工程
第2工程では、前記第1工程で得られた反応液を加熱処理する。本第2工程における加熱処理は、前記第1工程における反応が終了した後に行われる処理であり、前記第1工程における反応とは別工程になる。ここで、前記第1工程における反応の終了とは、具体的には、前記第1工程に供された一般式(1)の化合物がほぼ消失した時点を指す。
本第2工程において、前記第1工程で得られた反応液をそのまま加熱処理に供してもよいが、前記第1工程で得られた反応液を減圧蒸留等により溶媒の一部を除去して濃縮させた状態で加熱処理に供してもよい。
本第2工程における加熱処理の温度としては、通常40〜120℃、好ましくは50〜100℃、更に好ましくは70〜90℃が挙げられる。また、本第2工程における加熱処理の加熱時間としては、加熱温度により異なるために一概にはいえないが、例えば1〜24時間、好ましくは2〜10時間が挙げられる。
加熱処理を行うことにより、環状ジスルフィド化合物を高収率で製造することができる。本第2工程における加熱処理の後、従来公知の方法で環状ジスルフィド化合物を単離することにより、環状ジスルフィド化合物が回収される。環状ジスルフィド化合物の単離は、例えば、濾過、分液、水洗した後に有機相を減圧下で濃縮することにより行うことができるが、これに限定されない。また、必要に応じて、蒸留、カラムクロマトグラフィー、再結晶等によって精製し、環状ジスルフィド化合物の純度を更に高めることも可能である。
本発明の製造方法によって、以下の一般式(3)で表される環状ジスルフィド化合物(以下、「一般式(3)の化合物」と略記することがある)が得られる。
Figure 2013155145
一般式(3)中、Yは一般式(1)におけるYと同じものを示し、R、R、R、及びRは、一般式(1)におけるR、R、R、及びRと同じものを示す。
一般式(3)の化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジチオラン、1,2−ジチアン、1,2−ジチアシクロヘプタン、1,2−ジチアシクロオクタン、1,2,4−オキサジチオラン、1,2,4−トリチアシクロペンタン、1,4,5−オキサジチエパン等が挙げられる。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1:1,2−ジチアンの製造−1
1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウム2モルの割合で反応を行った後に、70℃で加熱処理を行うことによって、1,2−ジチアンを製造した。具体的な製造条件については、以下の通りである。
攪拌機、温度計、滴下ロート及び冷却管を備えた内容積300mlの4つ口フラスコに、硫化ナトリウム(NaS)9水和物48.0g(0.2モル)、硫黄6.4g(0.2モル)及び水30gを仕込み、70℃で攪拌しながら溶解させた。次いで、30℃まで冷却後、フラスコ内にテトラブチルアンモニウムブロミド0.3g(1.0ミリモル)及びトルエン50gを添加した。その後、30℃に維持しながら、4つ口フラスコ内に1,4−ジブロモブタン21.6g(0.1モル)を1時間かけて滴下した後に、同温度で2時間攪拌した。反応終了後、さらに70℃に加熱しながら2時間攪拌することにより、加熱処理を行った。
その後、室温まで冷却し、反応液中の有機相を分液した後、得られた有機相を、10質量%水酸化ナトリウム水溶液、5質量%塩酸水、及び水で順次洗浄を行った。洗浄後の有機相を減圧下で濃縮し、1,2−ジチアン11.3gを得た。得られた1,2−ジチアンの収率は、1,4−ジブロモブタンに対して93.1%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は99.0%であった。
実施例2:1,2−ジチアンの製造−2
1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウム1.5モルの割合で反応を行った後に、70℃で加熱処理を行うことによって、1,2−ジチアンを製造した。具体的には、硫化ナトリウム(NaS)9水和物36.0g(0.15モル)及び硫黄4.8g(0.15モル)を使用すること以外は、上記実施例1と同条件で、1,2−ジチアンの製造を行った。
その結果、1,2−ジチアン12.2gを得た。得られた1,2−ジチアンの収率は、1,4−ジブロモブタンに対して80.2%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は79.1%であった。
実施例3:1,2−ジチアンの製造−3
1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウム1.05モルの割合で反応を行った後に、70℃で加熱処理を行うことによって、1,2−ジチアンを製造した。具体的には、硫化ナトリウム(NaS)9水和物25.2g(0.105モル)及び硫黄3.36g(0.105モル)を使用すること以外は、上記実施例1と同条件で、1,2−ジチアンの製造を行った。
その結果、1,2−ジチアン11.9gを得た。得られた1,2−ジチアンの収率は、1,4−ジブロモブタンに対して60.8%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は61.6%あった。
実施例4:1,2−ジチアンの製造−4
1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウム2モルの割合で反応を行った後に、90℃で加熱処理を行うことによって、1,2−ジチアンを製造した。具体的には、加熱処理の温度を90℃にすること以外は、上記実施例1と同条件で、1,2−ジチアンの製造を行った。
その結果、1,2−ジチアン11.2gを得た。得られた1,2−ジチアンの収率は、1,4−ジブロモブタンに対して91.9%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は98.5%であった。
実施例5:1,2−ジチアンの製造−5
1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウム2モルの割合で反応を行った後に、50℃で加熱処理を行うことによって、1,2−ジチアンを製造した。具体的には、加熱処理の温度を50℃にすること以外は、上記実施例1と同条件で、1,2−ジチアンの製造を行った。
その結果、1,2−ジチアン11.0gを得た。得られた1,2−ジチアンの収率は、1,4−ジブロモブタンに対して89.2%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は97.3%であった。
比較例1:1,2−ジチアンの製造−1
1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウム1モルの割合で反応を行った後に、70℃で加熱処理を行うことによって、1,2−ジチアンを製造した。具体的には、硫化ナトリウム(NaS)9水和物24.0g(0.1モル)及び硫黄3.2g(0.1モル)を使用すること以外は、上記実施例1と同条件で、1,2−ジチアンの製造を行った。
その結果、1,2−ジチアン12.5gを得た。得られた1,2−ジチアンの収率は、1,4−ジブロモブタンに対しては55.5%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は53.4%であった。なお、得られた1,2−ジチアンには、1,2−ジチアン以外に、テトラヒドロチオフェン、1,2,3−トリチアシクロヘプタン、1,2,3,4−テトラチアシクロオクタン等の副生成物が含まれていた。
比較例2:1,2−ジチアンの製造−2
1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウム2モルの割合で反応を行うことによって、1,2−ジチアンを製造した。具体的には、加熱処理を行わないこと以外は、上記実施例1と同条件で、1,2−ジチアンの製造を行った。
その結果、1,2−ジチアン12.1gを得た。得られた1,2−ジチアンの収率は、1,4−ジブロモブタンに対して57.1%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は56.7%であった。なお、得られた1,2−ジチアンには、1,2−ジチアン以外に、テトラヒドロチオフェン、1,2,3−トリチアシクロヘプタン、1,2,3,4−テトラチアシクロオクタン等の副生成物が含まれていた。
比較例3:1,2−ジチアンの製造−3
1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウム1.5モルの割合で反応を行うことによって、1,2−ジチアンを製造した。具体的には、加熱処理を行わないこと以外は、上記実施例2と同条件で、1,2−ジチアンの製造を行った。
その結果、1,2−ジチアン12.2gを得た。得られた1,2−ジチアンの収率は、1,4−ジブロモブタンに対して55.2%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は54.5%であった。なお、得られた1,2−ジチアンには、1,2−ジチアン以外に、テトラヒドロチオフェン、1,2,3−トリチアシクロヘプタン、1,2,3,4−テトラチアシクロオクタン等の副生成物が含まれていた。
比較例4:1,2−ジチアンの製造−4
1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウム1.05モルの割合で反応を行うことによって、1,2−ジチアンを製造した。具体的には、加熱処理を行わないこと以外は、上記実施例3と同条件で、1,2−ジチアンの製造を行った。
その結果、1,2−ジチアン12.4gを得た。得られた1,2−ジチアンの収率は、1,4−ジブロモブタンに対して56.7%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は55.2%であった。なお、得られた1,2−ジチアンには、1,2−ジチアン以外に、テトラヒドロチオフェン、1,2,3−トリチアシクロヘプタン、1,2,3,4−テトラチアシクロオクタン等の副生成物が含まれていた。
比較例5:1,2−ジチアンの製造−5
1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウム1モルの割合で反応を行うことによって、1,2−ジチアンを製造した。具体的には、加熱処理を行わないこと以外は、上記比較例1と同条件で、1,2−ジチアンの製造を行った。
その結果、1,2−ジチアン12.2gを得た。得られた1,2−ジチアンの収率は、1,4−ジブロモブタンに対して55.0%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は54.3%であった。なお、得られた1,2−ジチアンには、1,2−ジチアン以外に、テトラヒドロチオフェン、1,2,3−トリチアシクロヘプタン、1,2,3,4−テトラチアシクロオクタン等の副生成物が含まれていた。
比較例6:1,2−ジチアンの製造−6
1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウム1モルの割合で反応を行った後に、90℃で加熱処理を行うことによって、1,2−ジチアンを製造した。具体的には、加熱処理の温度を90℃にすること以外は、上記比較例1と同条件で、1,2−ジチアンの製造を行った。
その結果、1,2−ジチアン12.1gを得た。得られた1,2−ジチアンの収率は、1,4−ジブロモブタンに対して53.2%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は52.9%であった。なお、得られた1,2−ジチアンには、1,2−ジチアン以外に、テトラヒドロチオフェン、1,2,3−トリチアシクロヘプタン、1,2,3,4−テトラチアシクロオクタン等の副生成物が含まれていた。
比較例7:1,2−ジチアンの製造−7
1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウム1モルの割合で反応を行った後に、50℃で加熱処理を行うことによって、1,2−ジチアンを製造した。具体的には、加熱処理の温度を50℃にすること以外は、上記比較例1と同条件で、1,2−ジチアンの製造を行った。
その結果、1,2−ジチアン12.1gを得た。得られた1,2−ジチアンの収率は、1,4−ジブロモブタンに対して53.8%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は53.4%であった。なお、得られた1,2−ジチアンには、1,2−ジチアン以外に、テトラヒドロチオフェン、1,2,3−トリチアシクロヘプタン、1,2,3,4−テトラチアシクロオクタン等の副生成物が含まれていた。
<実施例1−5及び比較例1−7の纏め>
実施例1−5及び比較例1−7の各製造条件における1,2−ジチアンの収率を表1及び表2に示す。これらの結果から、1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウムが1.05モル以上を満たし、且つ加熱処理(好ましくは、50℃以上での加熱)を行った場合において、1,2−ジチアンの収率が向上することが確認された。とりわけ、1,4−ジブロモブタン1モルに対して二硫化ナトリウムが1.5モル以上であり、且つ加熱処理を行った場合には、1,2−ジチアンの収率が格段顕著に向上することが明らかとなった。
Figure 2013155145
Figure 2013155145
実施例6:1,4,5−オキサジチエパンの製造
ビス(2−ブロモエチル)エーテル1モルに対して二硫化ナトリウム2モルの割合で反応を行った後に、70℃で加熱処理を行うことによって、1,4,5−オキサジチエパンを製造した。具体的な製造条件については、以下の通りである。
攪拌機、温度計、滴下ロート及び冷却管を備えた内容積300mlの4つ口フラスコに、硫化ナトリウム(NaS)9水和物48.0g(0.2モル)、硫黄6.4g(0.2モル)及び水30gを仕込み、70℃で攪拌しながら溶解させた。次いで、30℃まで冷却後、フラスコ内にテトラブチルアンモニウムブロミド0.3g(1.0ミリモル)及びトルエン50gを添加した。その後、30℃に維持しながら、フラスコ内にビス(2−ブロモエチル)エーテル23.2g(0.1モル)を1時間かけて滴下した後に、同温度にて2時間攪拌した。次いで、70℃に加熱しながら2時間攪拌することにより、加熱処理を行った。
その後、室温まで冷却し、反応液中の有機相を分液した後、得られた有機相を、10質量%水酸化ナトリウム水溶液、5質量%塩酸水、及び水で順次洗浄を行った。洗浄後の有機相を減圧下で濃縮し、1,4,5−オキサジチエパン10.9gを得た。得られた1,4,5−オキサジチエパンの収率は、ビス(2−ブロモエチル)エーテルに対して、77.6%であり、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度は97.0%であった。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 2013155145
    (式中、
    Xはハロゲン原子を示し、
    Yはヘテロ原子及び/又は炭素数1〜18の炭化水素基であって、その炭化水素基中にヘテロ原子又は環構造を有していてもよく、
    、R、R、及びRは、それぞれ同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基を示す)
    で表されるジハロゲン化合物と、
    下記一般式(2):
    Figure 2013155145
    (式中、Mはアルカリ金属を示し、xは2〜6の整数を示す)
    で表されるアルカリ金属の多硫化物とを
    前記ジハロゲン化合物1モルに対して、前記アルカリ金属の多硫化物を1.05モル以上の割合で、親水性溶媒を含む溶媒中で反応させる第1工程、及び
    前記第1工程で得られた反応液を加熱処理する第2工程を含むことを特徴とする、
    下記一般式(3):
    Figure 2013155145
    (式中、Yは、一般式(1)におけるYと同じものを示し、
    、R、R、及びRは、一般式(1)におけるR、R、R、及びRと同じものを示す)
    で表される環状ジスルフィド化合物の製造方法。
  2. 第2工程における加熱処理の温度が40〜120℃である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 第1工程において、一般式(1)で表されるジハロゲン化合物1モルに対して、一般式(2)で表されるアルカリ金属の多硫化物を1.05〜10モルの割合で反応させる、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 第1工程において、一般式(1)で表されるジハロゲン化合物1モルに対して、一般式(2)で表されるアルカリ金属の多硫化物を1.5〜5モルの割合で反応させる、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 第1工程における反応が、親水性溶媒と当該親水性溶媒に非相溶性の有機溶媒との混合溶媒中で行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 一般式(2)において、Mがナトリウムである、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 一般式(1)において、Xが塩素原子又は臭素原子である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
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