JP2013149345A - 超電導線材用テープ基板、超電導線材用テープ基板の製造方法及び超電導線材 - Google Patents

超電導線材用テープ基板、超電導線材用テープ基板の製造方法及び超電導線材 Download PDF

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Abstract

【課題】安価で高性能な超電導線材用テープ基板、安価で高性能な超電導線材用テープ基板の製造方法及び安価で高性能な超電導線材用テープ基板を用いた超電導線材、を提供する。
【解決手段】超電導線材用テープ基板1の両面のうち、一方の表面粗度Raが15nm以下であって、他方の表面粗度Raが前記一方の表面粗度Raよりも大きく、前記一方及び他方の表面粗度Raの差が3nm以上であり、15nm以下であることを特徴とする超電導線材用テープ基板1。
【選択図】図1

Description

本発明は、超電導線材用テープ基板、超電導線材用テープ基板の製造方法及び超電導線材に関する。
従来、ハステロイからなる金属基板上にIBAD(イオンビームアシスト蒸着)法により中間層が形成され、中間層上にYBCO等の酸化物超電導層が配向形成されて構成される超電導線材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
なお、超電導線材として用いられる金属基板をここでは「超電導線材用テープ基板」と呼ぶ。また、超電導線材用テープ基板上にIBAD法による中間層が形成された基板は、一般に「IBAD基板」と呼ばれる。
超電導線材用テープ基板の表面は、冷間圧延工程や高精密研磨工程等の各工程を経て、数nm級の表面粗度Raに仕上げられる(例えば、特許文献2〜6参照)。
「表面粗度Ra」とは、JISB−0601−2001にて規定される算術平均粗さである。
冷間圧延工程では、一般に表面粗度Raが同一の上下圧延ロールが用いられ、圧延ロールの光沢なロール面が超電導線材用テープ基板の両面に転写される。圧延工程後の超電導線材用テープ基板は、両面に同等の光沢性が確保されることになる。なお、表面粗度Raが15nmよりも大きい圧延ロールを用いる場合、圧延ロールと超電導線材用テープ基板との間における滑りの影響は少ない。
特開平4−329867号公報 特開2008−200773号公報 特開2008−200775号公報 特開2007−200870号公報 特開2008−254044号公報 特開平4−110454号公報
しかし、表面粗度Raが15nm以下であって8nm程度の圧延ロールを用いる場合、かつ、これを用いて表面粗度Raが5nm以下の超電導線材用テープ基板を圧延する場合、圧延ロールと超電導線材用テープ基板との間における滑りの影響が大きくなるため形状制御が困難となる。形状制御が困難になると、超電導線材用テープ基板に中延びや端延び等の形状変動が生じやすく、直線性も変動し、形状フラットな一定条件での長尺圧延が困難になる。
また、表面粗度Raが3nm以下の高平坦性で高平滑性(以下、「高性能」と記載する)の超電導線材用テープ基板を製造するためには高価な高精密研磨機械が必要となり、製造コストがかかる。一方、安価な研磨機械により表面粗度Raが15nmより大きい超電導線材用テープ基板を製造すると地肌の被りや圧延傷等が残る。
Y系などの酸化物超電導線で超電導特性の高い超電導線を製造するには、IBAD基板の結晶配向度が高く、IBAD基板の中間層としてCeO2等の酸化物層のエピタキシャル成長が要求される。このとき、超電導線材用テープ基板表層に点在する欠陥、表面粗度の分布変動等が点在すると超電導層までの結晶成長が阻害され局部的な欠陥点が存在し、臨界電流値特性が低下する問題が生じる。高い超電導特性を得るためには、機械研磨及び化学研磨等により、圧延肌を表面粗度Raで数nm〜1nm以下の高性能に改めて改質する必要がある。圧延仕上がりの表面粗度Raと精密研磨後の表面粗度Raとが大きく乖離している場合、Rmax(Rz)が大きく、深さ方向の地肌傷の被りや圧延傷を低減することが困難となる。以上より、圧延仕上がりの表面粗度Raが数nmであることが望まれる。
また、従来工程では超電導線材用テープ基板自体のコスト及びこれを高精密に研磨するコスト等により、低コストで超電導線材用テープ基板を得ることが難しい。超電導線材用テープ基板が高精密に研磨されないと、超電導線材の電流特性の変動が大きく製造歩留まりが低下する問題が生じる。
本発明の課題は、安価で高性能な超電導線材用テープ基板、安価で高性能な超電導線材用テープ基板の製造方法及び安価で高性能な超電導線材用テープ基板を用いた超電導線材を提供することである。
本発明によれば、超電導線材用テープ基板の両面のうち、一方の表面粗度Raが15nm以下であって、他方の表面粗度Raが前記一方の表面粗度Raよりも大きく、前記一方及び他方の表面粗度Raの差が3nm以上であり、15nm以下であることを特徴とする超電導線材用テープ基板が提供される。
このとき、一方の表面粗度が15nmを超えると、テープ基板表面に形成する中間層の配向性が低下してしまうため、好ましくない。また、一方及び他方の表面粗度Raの差が15nmを超えた場合には、他方の表面が粗いために、一方の表層に擦り合わせ傷が生じ、中間層を積層する面に、表面欠陥を残すことになるため、好ましくない。更に、一方及び他方の表面粗度Raの差が3nm未満の場合には、長尺のテープ基材を、加工する際に材料滑りの影響が大きくなり、形状制御が困難となる。
また、本発明によれば、Ni基合金又はFe基合金を研磨する工程と、
前記研磨されたNi基合金又はFe基合金を複数回冷間圧延する工程と、
前記冷間圧延されたNi基合金又はFe基合金をTA熱処理する工程と、
を含む超電導線材用テープ基板の製造方法であって、
前記冷間圧延する工程では、表面粗度Raが異なる上下一対の圧延ロールを用いることを特徴とし、前記上下一対の圧延ロールのうち表面粗度Raが小さい方の圧延ロールは、表面粗度Raが2nmより大きく、70nmより小さいことを特徴とする超電導線材用テープ基板の製造方法が提供される。
このとき、表面粗度Raが小さい方の圧延ロールのRaが70nm以上となった場合には、出来上がりのテープ基材が15nmを超えてしまい、好ましくない。また、2nm以下の場合には、テープ基板の圧延時に材料滑りの影響が大きくなり、形状制御が困難となり、好ましくない。また、表面粗度Raが小さい方の圧延ロールのRaが2nm以下となった場合には、長尺のテープ基材を、加工する際に材料滑りの影響が大きくなり、形状制御が困難となるため、好ましくない。
また、本発明によれば、超電導線材用テープ基板の両面のうち、一方の表面粗度Raが15nm以下であって、他方の表面粗度Raが前記一方の表面粗度Raよりも大きく、前記一方及び他方の表面粗度Raの差が3nm以上であり、15nm以下である超電導線材用テープ基板の前記一方の面上に中間層が形成され、該中間層上に超電導層が形成されて構成されることを特徴とする超電導線材が提供される。
本発明によれば、安価で高性能な超電導線材用テープ基板、安価で高性能な超電導線材用テープ基板の製造方法及び安価で高性能な超電導線材用テープ基板を用いた超電導線材を提供することができる。
超電導線材用テープ基板の概略断面図である。 超電導線材用テープ基板の製造工程を示すフロー図である。
本実施形態における超電導線材用テープ基板、超電導線材用テープ基板の製造方法及び超電導線材について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に、超電導線材10の概略断面図を示す。
超電導線材10は、超電導線材用テープ基板1、中間層2、超電導層3を備えて構成される。また、超電導線材10は、超電導線材用テープ基板1上に中間層2、超電導層3が順次積層される。
超電導線材用テープ基板1の素材として、ハステロイ、インコネル(登録商標)等のNi基合金又は、ステンレス鋼等のFe基合金を用いることができ、光輝焼鈍処理されたBA(ブライトアニール)材が好ましい。
図2を参照して、超電導線材用テープ基板1の製造工程について説明する。
まず、超電導線材用テープ基板1を研磨する(ステップS1)。
研磨方法としては、機械研磨、化学研磨若しくは電解研磨又はこれらの組み合わせによる研磨を採用する。なお、必ずしも各種研磨を行う必要はなく、各種研磨を行わずにステップS2に移行してもよい。
機械研磨では、研磨粒としてダイヤモンド粒、酸化物粒等を用いる。また、研磨液として水、界面活性剤、油類、有機溶剤、これらの混合物、水と蟻酸、酢酸、硝酸等の酸を混合した溶液、水と水酸化ナトリウム等のアルカリを混合した溶液、の何れかを用いる。なお、研磨粒としては特に酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄等が望ましく、研磨液としては特に石鹸水が望ましい。
化学研磨では、研磨液として超電導線材用テープ基板1表面と化学反応する化学溶液 を用いる。化学溶液には、例えば硝酸、硫酸、蟻酸、酢酸、塩素、フッ素、クロム過酸化水素、シュウ酸、テトラリン酸、氷酢酸等の液体、又はこれらの混合液がある。研磨液としては特にこれらの混合液に飽和アルコールやスルホン酸類などの促進剤を混合した溶液が望ましい。
化学機械研磨では、研磨粒として上記機械研磨で用いられる研磨粒と同様の研磨粒を用いる。また、研磨液として上記化学研磨で用いられる研磨液を用いる。
電解研磨では、超電導線材用テープ基板1を電解液に浸し、超電導線材用テープ基板1を陽極として通電して電解反応により基板表面を研磨する。電解液は、酸やアルカリで良く、特に硝酸、リン酸、クロム酸、過酸化水素、水酸化カリウム、シアン化カリウム等が望ましい。
次に、超電導線材用テープ基板1を冷間圧延する(ステップS2〜4)。
圧延工程では、素圧延工程(ステップS2)、中間圧延(ステップS3)、仕上げ圧延(ステップS4)の各圧延工程を行う。圧延工程では、圧延加工率40%〜80%の範囲で冷間圧延する。また、表面粗度Raが同一の圧延ローラによる圧延及び表面粗度Raが異なる圧延ローラによる圧延をそれぞれ少なくとも1回以上行う。各圧延工程の詳細については後述する(実施例1〜4参照)。
次に、超電導線材用テープ基板1をTA(テンションアニール)熱処理する(ステップS5)。
平坦性回復のためのTA熱処理は、超電導線材用テープ基板をアルゴンガスと0.5〜5Vol.%の水素との混合ガス雰囲気で750℃〜850℃で10秒以上保持し、張力印加状態で行う。
次に、超電導線材用テープ基板1を仕上げ加工する(ステップS6)。
仕上げ加工では、所望のサイズにスリット加工する。
最後に、超電導線材用テープ基板1を仕上げ研磨する(ステップS7)。
仕上げ研磨では、ステップS1で述べた機械研磨、化学研磨若しくは電解研磨又はこれらを組合せた研磨方法により研磨する。
〔実施例1〕
〔超電導線材用テープ基板の製造工程〕
実施例1では、仕上げ圧延工程(ステップS4参照)で表面粗度Raの異なる圧延ローラを用いることを特徴とする超電導線材用テープ基板1の製造工程について説明する。
超電導線材用テープ基板1を製造するために、表面粗度Ra50nm、厚さ0.3mm、幅75mm、奥行350mのBA材(ハステロイC−276)を用いた。なお、材質については、ハステロイに限らず、インコネル、ステンレス鋼を用いてもよい。
研磨工程において(ステップS1参照)、BA材を研磨し、表面粗度Raを50nmから30nm程度にした。
素圧延工程及び中間圧延工程において(ステップS2及びS3参照)、表面粗度Raが上下同一であって、ロール径Φ20mmの12段圧延ローラを用いて、BA材を圧延し、厚さ0.15mm、幅75mm、奥行690mの中間圧延材を製造した。素圧延時に用いた圧延ローラの表面粗度Raは66nmであり、中間圧延時に用いた圧延ローラの表面粗度Raは40nmであった。
更に、厚さ0.15mmの中間圧延材を上下の表面粗度Raが7nmの圧延ローラを用いて、厚さを0.107mmまで圧延した。このときの中間圧延材の表面粗度Raは7nm〜9nmであった。
仕上げ圧延工程において(ステップS4参照)、表面粗度Raが3nmの圧延ロール及び表面粗度Raが10nmの圧延ロールを用いて、表面粗度Raが7nm〜9nmの中間圧延材を圧延し、長尺圧延材を製造した。上側の圧延ロールには表面粗度Raが3nmの圧延ロールを用い、下側の圧延ロールには表面粗度Raが10nmの圧延ロールを用いた。
なお、下側の圧延ロールの表面粗度Raは最大10nm程度が望ましい。表面粗度Raが10nmより大きいと、長尺圧延材の長手方向の表面粗度Raが15nmを超える場合がある。また、コイル状に巻き込まれた長尺圧延材の表裏の擦り合わせ傷が高光沢側(表面)の表層に生じ、表面欠陥を残すことになる。
また、上側の圧延ロールの表面粗度Raが3nmで、下側の圧延ロールの表面粗度Raとの差が3nm未満の場合、圧延時材料滑りの影響が大きくなり、形状制御が困難となる。
また、上側の圧延ロールは、全幅にわたって表面粗度Raが3nmであっても、中間圧延材の幅よりもわずかに狭い幅範囲に限定して表面粗度Raが3nmであってもよい。後者の場合、上側及び下側の圧延ロール端部の表面粗度Raは10nm程度であってもよい。
TA熱処理工程において(ステップS5参照)、長尺圧延材の平坦性改善のため、790℃×20秒保持条件下で5kgf/mm2の張力を長尺圧延材に印加し、長尺圧延材をアルゴンガスと水素との混合気体の雰囲気で熱処理した。
仕上げ加工工程において(ステップS6参照)、長尺圧延材を所望の仕上がりサイズにてスリット加工し、厚さ0.10mm、幅10mm、奥行1030mの超電導線材用テープ基板1を6つ製造した。圧延工程の加工率は60%以上を確保した。
超電導線材用テープ基板1の両端部からサンプルを採取し、原子間力顕微鏡(AFM)により10μm角の表面粗度Raを測定した。測定した結果、表面の両端部それぞれ10箇所平均の表面粗度Raは3.2nm及び3.8nmであり、全ての測定点の表面粗度RaはRa<4nmであった。また、裏面の両端部それぞれ10箇所平均の表面粗度Raは10.2nm及び10.6nmであった。
仕上げ研磨工程において(ステップS7参照)、超電導線材用テープ基板1の表側面を機械研磨し、表面粗度Raが0.9nmに研磨仕上げした。なお、研磨方法は機械研磨、化学研磨又は電解研磨のいずれであってもよい。また、仕上げ研磨工程直前の超電導線材用テープ基板1の表層は一様のため、研磨コストを低減することができる。
仕上げ研磨工程後の超電導線材用テープ基板1について、室温にて引っ張り試験を行ったところ、0.2%耐力は1.6GPaであった。
以上より、実施例1による製造方法によれば、高強度、非磁性、高性能な超電導線材用テープ基板1を製造することができる。
〔超電導線材の製造工程〕
実施例1にて製造した超電導線材用テープ基板1上に、IBAD法を用いて中間層2を形成した。中間層2は、超電導線材用テープ基板1上にGd-Zr酸化中間層(GZO)が約1μm成膜され、更にその上にPLDにて厚さ約450nmのCeO2酸化物中間層が形成されて構成される。
中間層2上に、パルスレーザーデポジション法を用いて超電導層3を形成した。超電導層3は、中間層2上にYBCO超電導体が約1μm堆積して構成される。
更に、超電導層3上に高周波スパッター装置を用いて厚さ約10μmの銀を蒸着して電極部を形成した。更に、酸素流気中、550℃で酸素アニールを行い、超電導線材10を製造した。
製造された超電導線材10について、200m分を液体窒素に浸漬した状態で四端子法を用いて臨界電流を測定した。測定は1mピッチとし、電圧端子は1.2mとした。超電導線材10の通電特性は1μV/cm定義で、臨界電流値の全測定位置で307A以上を確認し、最小−最大差が8Aとなった。
〔実施例2〕
〔超電導線材用テープ基板の製造工程〕
実施例2では、中間圧延工程及び仕上げ圧延工程(ステップS3及びS4参照)で表面粗度Raの異なる圧延ローラを用いることを特徴とする超電導線材用テープ基板1の製造工程について説明する。
超電導線材用テープ基板1を製造するために、表面粗度Ra50nm、厚さ0.3mm、幅75mm、奥行350mのBA材(ハステロイC−276)を用いた。なお、ハステロイに限らず、インコネル、ステンレス鋼を用いてもよい。
研磨工程において(ステップS1参照)、BA材を研磨し、表面粗度Raを50nmから30nm程度にした。
素圧延工程において(ステップS2参照)、表面粗度Ra(45nm)が上下同一であって、ロール径Φ20mmの12段圧延ローラを用いて、BA材を圧延し、厚さ0.15mm、幅75mm、奥行690mの素圧延材を製造した。このときの素圧延材の表面粗度Raを15nm〜25nm程度にした。
中間圧延工程において(ステップS3参照)、表面粗度Raが6nmの圧延ロール及び表面粗度Raが10nmの圧延ロールを用いて、素圧延材を圧延し、厚さ0.107mm、幅75mm、奥行960mの中間圧延材を製造した。上側の圧延ロールには表面粗度Raが6nmの圧延ロールを用い、下側の圧延ロールには表面粗度Raが10nmの圧延ロールを用いた。
仕上げ圧延工程において(ステップS4参照)、表面粗度Raが3nmの圧延ロール及び表面粗度Raが9nmの圧延ロールを用いて、中間圧延材を圧延し、長尺圧延材を製造した。上側の圧延ロールには表面粗度Raが3nmの圧延ロールを用い、下側の圧延ロールには表面粗度Raが9nmの圧延ロールを用いた。
なお、下側の圧延ロールの表面粗度Raは最大10nm程度が望ましい。表面粗度Raが10nmより大きいと、長尺圧延材の長手方向の表面粗度Raが15nmを超える場合がある。また、長尺圧延材の裏面(Raが大きい面)のRaが30nmを超えた場合には、コイル状に巻き込まれた長尺圧延材の表裏の擦り合わせ傷が高光沢側(表面)の表層に生じ、表面欠陥を残すことになる。
また、上側の圧延ロールの表面粗度Raが3nmで、下側の圧延ロールの表面粗度Raとの差が3nm未満の場合、圧延時材料滑りの影響が大きくなり、形状制御が困難となる。
TA熱処理工程において(ステップS5参照)、長尺圧延材の平坦性改善のため、790℃×20秒保持条件下で5kgf/mm2の張力を長尺圧延材に印加し、長尺圧延材をアルゴンガスと水素との混合気体の雰囲気で熱処理した。
仕上げ加工工程において(ステップS6参照)、長尺圧延材を所望の仕上がりサイズにてスリット加工し、厚さ0.10mm、幅10mm、奥行1020mの超電導線材用テープ基板1を6つ製造した。圧延工程の加工率は60%以上を確保した。
超電導線材用テープ基板1の両端部からサンプルを採取し、原子間力顕微鏡(AFM)により10μm角の表面粗度Raを測定した。測定した結果、表面の両端部それぞれ10箇所平均の表面粗度Raは3.0nm及び3.5nmであり、全ての測定点の表面粗度RaはRa<4nmであった。また、裏面の両端部それぞれ10箇所平均の表面粗度Raは8.8nm及び9.5nmであった。
仕上げ研磨工程において(ステップS7参照)、超電導線材用テープ基板1の表側面を機械研磨し、表面粗度Raが0.8nmに研磨仕上げした。なお、研磨方法は機械研磨、化学研磨又は電解研磨のいずれであってもよい。また、仕上げ研磨工程直前の超電導線材用テープ基板1の表層は一様のため、研磨コストを低減することができる。
仕上げ研磨工程後の超電導線材用テープ基板1について、室温にて引っ張り試験を行ったところ、0.2%耐力は1.5GPaであった。
以上より、実施例2による製造方法によれば、高強度、非磁性、高性能な超電導線材用テープ基板1を製造することができる。
〔超電導線材の製造工程〕
実施例2にて製造した超電導線材用テープ基板1上に、IBAD法を用いて中間層2を形成した。中間層2は、超電導線材用テープ基板1上にGd-Zr酸化中間層(GZO)が約1μm成膜され、更にその上にPLDにて厚さ約500nmのCeO2酸化物中間層が形成されて構成される。
中間層2上に、パルスレーザーデポジション法を用いて超電導層3を形成した。超電導層3は、中間層2上にYBCO超電導体が約1μm堆積して構成される。
更に、超電導層3上に高周波スパッター装置を用いて厚さ約10μmの銀を蒸着して電極部を形成した。更に、酸素流気中、550℃で酸素アニールを行い、超電導線材10を製造した。
製造された超電導線材10について、200m分を液体窒素に浸漬した状態で四端子法を用いて臨界電流を測定した。測定は1mピッチとし、電圧端子は1.2mとした。超電導線材10の通電特性は1μV/cm定義で、臨界電流値の全測定位置で326A以上を確認し、最小−最大差が9Aとなった。
〔実施例3〕
〔超電導線材用テープ基板の製造工程〕
実施例3では、中間圧延工程及び仕上げ圧延工程(ステップS3及びS4参照)で表面粗度Raの異なる圧延ローラを用いることを特徴とする超電導線材用テープ基板1の製造工程について説明する。
超電導線材用テープ基板1を製造するために、表面粗度Ra50nm、厚さ0.3mm、幅75mm、奥行350mのBA材(ハステロイC−276)を用いた。なお、ハステロイに限らず、インコネル、ステンレス鋼を用いてもよい。
研磨工程において(ステップS1参照)、BA材を研磨し、表面粗度Raを50nmから30nm程度にした。
素圧延工程において(ステップS2参照)、表面粗度Ra(45nm)が上下同一であって、ロール径Φ20mmの12段圧延ローラを用いて、BA材を圧延し、厚さ0.15mm、幅75mm、奥行690mの素圧延材を製造した。このときの素圧延材の表面粗度Raを15nm〜25nm程度にした。
中間圧延工程において(ステップS3参照)、表面粗度Raが6nmの圧延ロール及び表面粗度Raが12nmの圧延ロールを用いて、素圧延材を圧延し、厚さ0.107mm、幅75mm、奥行960mの中間圧延材を製造した。上側の圧延ロールには表面粗度Raが6nmの圧延ロールを用い、下側の圧延ロールには表面粗度Raが12nmの圧延ロールを用いた。
仕上げ圧延工程において(ステップS4参照)、表面粗度Raが4nmの圧延ロール及び表面粗度Raが9nmの圧延ロールを用いて、中間圧延材を圧延し、長尺圧延材を製造した。上側の圧延ロールには表面粗度Raが4nmの圧延ロールを用い、下側の圧延ロールには表面粗度Raが9nmの圧延ロールを用いた。
TA熱処理工程において(ステップS5参照)、長尺圧延材の平坦性改善のため、790℃×20秒保持条件下で5kgf/mm2の張力を長尺圧延材に印加し、長尺圧延材をアルゴンガスと水素との混合気体の雰囲気で熱処理した。
仕上げ加工工程において(ステップS6参照)、長尺圧延材を所望の仕上がりサイズにてスリット加工し、厚さ0.10mm、幅10mm、奥行1020mの超電導線材用テープ基板1を6つ製造した。圧延工程の加工率は60%以上を確保した。
超電導線材用テープ基板1の両端部からサンプルを採取し、原子間力顕微鏡(AFM)により10μm角の表面粗度Raを測定した。測定した結果、表面の両端部それぞれ10箇所平均の表面粗度Raは4.1nm及び4.3nmであり、全ての測定点の表面粗度RaはRa<5nmであった。また、裏面の両端部それぞれ10箇所平均の表面粗度Raは9.7nm及び8.9nmであった。
仕上げ研磨工程において(ステップS7参照)、超電導線材用テープ基板1の表側面を機械研磨し、表面粗度Raが1.2nmに研磨仕上げした。なお、研磨方法は機械研磨、化学研磨又は電解研磨のいずれであってもよい。また、仕上げ研磨工程直前の超電導線材用テープ基板1の表層は一様のため、研磨コストを低減することができる。
仕上げ研磨工程後の超電導線材用テープ基板1について、室温にて引っ張り試験を行ったところ、0.2%耐力は1.6GPaであった。
以上より、実施例3による製造方法によれば、高強度、非磁性、高性能な超電導線材用テープ基板1を製造することができる。
〔超電導線材の製造工程〕
実施例3にて製造した超電導線材用テープ基板1上に、IBAD法を用いて中間層2を形成した。中間層2は、超電導線材用テープ基板1上にGd-Zr酸化中間層(GZO)が約1μm成膜され、更にその上にPLDにて厚さ約500nmのCeO2酸化物中間層が形成されて構成される。
中間層2上に、パルスレーザーデポジション法を用いて超電導層3を形成した。超電導層3は、中間層2上にYBCO超電導体が約1μm堆積して構成される。
更に、超電導層3上に高周波スパッター装置を用いて厚さ約10μmの銀を蒸着して電極部を形成した。更に、酸素流気中、550℃で酸素アニールを行い、超電導線材10を製造した。
製造された超電導線材10について、200m分を液体窒素に浸漬した状態で四端子法を用いて臨界電流を測定した。測定は1mピッチとし、電圧端子は1.2mとした。超電導線材10の通電特性は1μV/cm定義で、臨界電流値の全測定位置で295A以上を確認し、最小−最大差が8Aとなった。
〔実施例4〕
〔超電導線材用テープ基板の製造工程〕
実施例4では、仕上げ圧延工程(ステップS4参照)で表面粗度Raの異なる圧延ローラを用いることを特徴とし、仕上げ研磨工程を行わないことを特徴とする超電導線材用テープ基板1の製造工程について説明する。
超電導線材用テープ基板1を製造するために、表面粗度Ra50nm、厚さ0.3mm、幅75mm、奥行350mのハステロイBA材(ハステロイC−276)を用いた。なお、ハステロイに限らず、インコネル、ステンレス鋼を用いてもよい。
研磨工程において(ステップS1参照)、BA材を研磨し、表面粗度Raを50nmから30nm程度にした。
素圧延工程及び中間圧延工程において(ステップS2及びS3参照)、表面粗度Raが上下同一であって、ロール径Φ20mmの12段圧延ローラを用いて、BA材を圧延し、厚さ0.15mm、幅75mm、奥行690mの中間圧延材を製造した。素圧延時に用いた圧延ローラの表面粗度Raは66nmであり、中間圧延時に用いた圧延ローラの表面粗度Raは40nmであった。
更に、厚さ0.15mmの中間圧延材を上下の表面粗度Raが7nmの圧延ローラを用いて、厚さを0.107mmまで圧延した。このときの中間圧延材の表面粗度Raは7nm〜9nmであった。
仕上げ圧延工程において(ステップS4参照)、表面粗度Raが3nmの圧延ロール及び表面粗度Raが10nmの圧延ロールを用いて、表面粗度Raが7nm〜9nmの中間圧延材を圧延し、長尺圧延材を製造した。上側の圧延ロールには表面粗度Raが3nmの圧延ロールを用い、下側の圧延ロールには表面粗度Raが10nmの圧延ロールを用いた。
なお、下側の圧延ロールの表面粗度Raは最大10nm程度が望ましい。表面粗度Raが10nmより大きいと、長尺圧延材の長手方向の表面粗度Raが15nmを超える場合がある。また、コイル状に巻き込まれた長尺圧延材表裏の擦り合わせ傷が高光沢側(表面)の表層に生じ、表面欠陥を残すことになる。
また、上側の圧延ロールの表面粗度Raが3nmで、下側の圧延ロールの表面粗度Raとの差が3nm未満の場合、圧延時材料滑りの影響が大きくなり、形状制御が困難となる。
また、上側の圧延ロールは、全幅にわたって表面粗度Raが3nmであっても、中間圧延材の幅よりもわずかに狭い幅範囲に限定して表面粗度Raが3nmであってもよい。後者の場合、上側及び下側の圧延ロール端部の表面粗度Raは10nm程度であってもよい。
TA熱処理工程において(ステップS5参照)、長尺圧延材の平坦性改善のため、790℃×20秒保持条件下で5kgf/mm2の張力を長尺圧延材に印加し、長尺圧延材をアルゴンガスと水素との混合気体の雰囲気で熱処理した。
仕上げ加工工程において(ステップS6参照)、長尺圧延材を所望の仕上がりサイズにてスリット加工し、厚さ0.10mm、幅10mm、奥行1030mの超電導線材用テープ基板1を6つ製造した。圧延工程の加工率は60%以上を確保した。
超電導線材用テープ基板1の両端部からサンプルを採取し、原子間力顕微鏡(AFM)により10μm角の表面粗度Raを測定した。測定した結果、表面の両端部それぞれ10箇所平均の表面粗度Raは3.2nm及び3.8nmであり、全ての測定点の表面粗度RaはRa<4nmであった。また、裏面の両端部それぞれ10箇所平均の表面粗度Raは9.8nm及び10.8nmであった。
仕上げ研磨工程(ステップS7参照)は省略した。仕上げ研磨工程を省略することにより、コストを大幅に低減することができる。
仕上げ加工工程後の超電導線材用テープ基板1について、室温にて引っ張り試験を行ったところ、0.2%耐力は1.5GPaであった。
以上より、実施例4による製造方法によれば、高強度、非磁性、高性能な超電導線材用テープ基板1を製造することができる。
〔超電導線材の製造工程〕
実施例4にて製造した超電導線材用テープ基板1上に、IBAD法を用いて中間層2を形成した。中間層2は、超電導線材用テープ基板1上にGd-Zr酸化中間層(GZO)が約1μm成膜され、更にその上にPLDにて厚さ約480nmのCeO2酸化物中間層が形成されて構成される。
中間層2上に、パルスレーザーデポジション法を用いて超電導層3を形成した。超電導層3は、中間層2上にYBCO超電導体が約1μm堆積して構成される。
更に、超電導層3上に高周波スパッター装置を用いて厚さ約10μmの銀を蒸着して電極部を形成した。更に、酸素流気中、550℃で酸素アニールを行い、超電導線材10を製造した。
製造された超電導線材10について、200m分を液体窒素に浸漬した状態で四端子法を用いて臨界電流を測定した。測定は1mピッチとし、電圧端子は1.2mとした。超電導線材10の通電特性は1μV/cm定義で、臨界電流値の全測定位置で265A以上を確認し、最小−最大差が12Aとなった。
〔比較例1〕
〔超電導線材用テープ基板の製造工程〕
比較例1では、圧延工程(ステップS2〜4参照)の全てで表面粗度Raが上下同一の圧延ローラを用いる超電導線材用テープ基板の製造工程について説明する。
超電導線材用テープ基板を製造するために、表面粗度Ra50nm、厚さ0.3mm、幅75mm、奥行350mのBA材(ハステロイC−276)を用いた。
研磨工程において(ステップS1参照)、BA材を研磨し、表面粗度Raを50nmから30nm程度にした。
素圧延工程及び中間圧延工程において(ステップS2及びS3参照)、表面粗度Raが上下同一であって、ロール径Φ20mmの12段圧延ローラを用いて、BA材を圧延し、厚さ0.107mm、幅75mm、奥行970mの中間圧延材を製造した。素圧延時に用いた圧延ローラの表面粗度Raは40nmであり、中間圧延時に用いた圧延ローラの表面粗度Raは13nmであった。
仕上げ圧延工程において(ステップS4参照)、表面粗度Raが7nmの上下同一の圧延ロールを用いて中間圧延材を圧延し、長尺圧延材を製造した。
このとき、圧延時材料滑りの影響が大きくなり、長尺圧延材は平坦性に劣る端延び形状となった。
TA熱処理工程において(ステップS5参照)、長尺圧延材の平坦性改善のため、790℃×20秒保持条件下で5kgf/mm2の張力をハステロイに印加し、ハステロイをアルゴンガスと水素との混合気体の雰囲気で熱処理した。
仕上げ加工工程において(ステップS6参照)、長尺圧延材を所望の仕上がりサイズにてスリット加工し、厚さ100μm、幅10mm、奥行1030mの超電導線材用テープ基板を6つ製造した。圧延工程の加工率は60%以上を確保した。なお、製造された6つの超電導線材用テープ基板のうち、2つは平坦性の変動が不連続的にあり、中間層の成膜に適さない形状品質であった。
超電導線材用テープ基板の両端部からサンプルを採取し、原子間力顕微鏡(AFM)により10μm角の表面粗度Raを測定した。測定した結果、表面の両端部それぞれ10箇所平均の表面粗度Raは7.2nm及び7.8nmであり、また、裏面の両端部それぞれ10箇所平均の表面粗度Raは7.9nm及び8.2nmであった。
仕上げ研磨工程において(ステップS7参照)、超電導線材用テープ基板の表側面を機械研磨し、表面粗度Raが2.8nmに研磨仕上げした。なお、研磨方法は機械研磨、化学研磨又は電解研磨のいずれであってもよい。
仕上げ研磨工程後の超電導線材用テープ基板について、室温にて引っ張り試験を行ったところ、0.2%耐力は1.6GPaであった。
〔超電導線材の製造工程〕
比較例1にて製造した超電導線材用テープ基板上に、IBAD法を用いて中間層を形成した。中間層は、超電導線材用テープ基板上にGd-Zr酸化中間層(GZO)が約1μm成膜され、更にその上にPLDにて厚さ約480nmのCeO2酸化物中間層が形成されて構成される。
中間層上に、パルスレーザーデポジション法を用いて超電導層を形成した。超電導層は、中間層上にYBCO超電導体が約1μm堆積して構成される。
更に、超電導層上に高周波スパッター装置を用いて厚さ約10μmの銀を蒸着して電極部を形成した。更に、酸素流気中、550℃で酸素アニールを行い、超電導線材を製造した。
製造された超電導線材について、200m分を液体窒素に浸漬した状態で四端子法を用いて臨界電流を測定した。測定は1mピッチとし、電圧端子は1.2mとした。超電導線材の通電特性は1μV/cm定義で、臨界電流値の全測定位置で205A以上を確認し、最小−最大差が28Aとなった。
〔比較例2〕
〔超電導線材用テープ基板の製造工程〕
比較例2では、仕上げ圧延工程(ステップS4参照)で表面粗度Raの異なる圧延ローラを用いる超電導線材用テープ基板において、仕上げ加工工程(ステップS6参照)で超電導線材用テープ基板の表面粗度の差が15nmを超える製造工程について説明する。
超電導線材用テープ基板を製造するために、表面粗度Ra50nm、厚さ0.3mm、幅75mm、奥行350mのBA材(ハステロイC−276)を用いた。
研磨工程において(ステップS1参照)、BA材を研磨し、表面粗度Raを50nmから30nm程度にした。
素圧延工程及び中間圧延工程において(ステップS2及びS3参照)、表面粗度Raが上下同一であって、ロール径Φ20mmの12段圧延ローラを用いて、BA材を圧延し、厚さ0.107mm、幅75mm、奥行970mの中間圧延材を製造した。素圧延時に用いた圧延ローラの表面粗度Raは40nmであり、中間圧延時に用いた圧延ローラの表面粗度Raは13nmであった。
仕上げ圧延工程において(ステップS4参照)、表面粗度Raが3nmの圧延ロール及び表面粗度Raが15nmの圧延ロールを用いて、中間圧延材を圧延し、長尺圧延材を製造した。上側の圧延ロールには表面粗度Raが3nmの圧延ロールを用い、下側の圧延ロールには表面粗度Raが15nmの圧延ロールを用いた。
TA熱処理工程において(ステップS5参照)、長尺圧延材の平坦性改善のため、790℃×20秒保持条件下で5kgf/mm2の張力をハステロイに印加し、ハステロイをアルゴンガスと水素との混合気体の雰囲気で熱処理した。
仕上げ加工工程において(ステップS6参照)、長尺圧延材を所望の仕上がりサイズにてスリット加工し、厚さ0.10mm、幅10mm、奥行1030mの超電導線材用テープ基板を6つ製造した。圧延工程の加工率は60%以上を確保した。なお、製造された超電導線材用テープ基板の表面を確認したところ、Raが小さい上側の表層に擦り合わせ傷と思われる表面欠陥が形成されていた。
超電導線材用テープ基板の両端部からサンプルを採取し、原子間力顕微鏡(AFM)により10μm角の表面粗度Raを測定した。測定した結果、表面の両端部それぞれ10箇所平均の表面粗度Raは3.2nm及び3.9nmであり、また、裏面の両端部それぞれ10箇所平均の表面粗度Raは19.5nm及び19.8nmであった。
仕上げ研磨工程において(ステップS7参照)、超電導線材用テープ基板の表側面を機械研磨し、表面粗度Raが1.6nmに研磨仕上げした。なお、研磨方法は機械研磨、化学研磨又は電解研磨のいずれであってもよい。
仕上げ研磨工程後の超電導線材用テープ基板について、室温にて引っ張り試験を行ったところ、0.2%耐力は1.6GPaであった。
〔超電導線材の製造工程〕
比較例1にて製造した超電導線材用テープ基板上に、IBAD法を用いて中間層を形成した。中間層は、超電導線材用テープ基板上にGd-Zr酸化中間層(GZO)が約1μm成膜され、更にその上にPLDにて厚さ約480nmのCeO2酸化物中間層が形成されて構成される。
中間層上に、パルスレーザーデポジション法を用いて超電導層を形成した。超電導層は、中間層上にYBCO超電導体が約1μm堆積して構成される。
更に、超電導層上に高周波スパッター装置を用いて厚さ約10μmの銀を蒸着して電極部を形成した。更に、酸素流気中、550℃で酸素アニールを行い、超電導線材を製造した。
製造された超電導線材について、200m分を液体窒素に浸漬した状態で四端子法を用いて臨界電流を測定した。測定は1mピッチとし、電圧端子は1.2mとした。超電導線材の通電特性は1μV/cm定義で、臨界電流値の全測定位置で190A以上を確認し、最小−最大差が67Aとなった。これは、基板表層に、仕上げ研磨工程後にも、表面欠陥が残ったために、大きく通電特性が落ちてしまったためだと考えられる。
表1に、上記述べてきた実施例1〜4及び比較例1、2の超電導線材用テープ基板の特性をまとめたものを示す。
Figure 2013149345
比較例1のように、基板の表面粗度Raの差が3nm未満の場合には、長尺のテープ基材を、加工する際に材料滑りの影響が大きくなり、形状制御が困難となり、形状不良が起こってしまう。
また、比較例2のように、基板表面粗度Raの差が15nmを超えた場合には、下側の表面が粗いために、上側の表層に擦り合わせ傷が生じ、仕上げ研磨を行ったとしても、表面欠陥を残すことになるため、超電導特性が著しく低下してしまう。なお、表1には記載していないが、基板の上側の表面粗度が15nmを超えた場合には、比較例2と同様に、基板表層に擦り合わせ傷が生じ、仕上げ研磨を行ったとしても、表面欠陥を残すことになるため、超電導特性が著しく低下してしまった。
実施例1〜4では、仕上げ圧延工程における上側の圧延ロールのRaは10nm以下を用いたが、基板の上側のRaを15nm以下とする場合には、70nmより小さくすることが求められる。しかし、基板の上側のRaは出来るだけ小さいことが望ましいため、実施例1〜4のように、仕上げ圧延工程における上側の圧延ロールのRaは、10nm以下とすることがより好ましい。
以上のように、本実施形態によれば、非磁性、高強度、高配向で超電導特性に優れた量産的に安価なハステロイを用いた超電導線材用テープ基板を製造することができる。また、この超電導線材用テープ基板を用いた超電導線材を製造することができる。
1 超電導線材用テープ基板
2 中間層
3 超電導体層
10 超電層線材

Claims (8)

  1. 超電導線材用テープ基板の両面のうち、一方の表面粗度Raが15nm以下であって、他方の表面粗度Raが前記一方の表面粗度Raよりも大きく、前記一方及び他方の表面粗度Raの差が3nm以上であり、15nm以下であることを特徴とする超電導線材用テープ基板。
  2. 前記超電導線材用テープ基板は、Ni基合金又はFe基合金を素材とした基板であることを特徴とする請求項1に記載の超電導線材用テープ基板。
  3. Ni基合金又はFe基合金を研磨する工程と、
    前記研磨されたNi基合金又はFe基合金を複数回冷間圧延する工程と、
    前記冷間圧延されたNi基合金又はFe基合金をTA熱処理する工程と、
    を含む超電導線材用テープ基板の製造方法であって、
    前記冷間圧延する工程では、表面粗度Raが異なる上下一対の圧延ロールを用いることを特徴とし、前記上下一対の圧延ロールのうち表面粗度Raが小さい方の圧延ロールは、表面粗度Raが2nmより大きく、70nmより小さいことを特徴とする超電導線材用テープ基板の製造方法。
  4. 前記表面粗度Raが小さい方の圧延ロールにおける表面粗度Raが3nm以上であり、70nmより小さい部分が、材料幅の0.8倍以上の幅範囲であることを特徴とする請求項3に記載の超電導線材用テープ基板の製造方法。
  5. 前記冷間圧延する工程では、前記表面粗度Raが異なる上下一対の圧延ロールとして、表面粗度Raの差が2nmよりも大きく、10nmよりも小さい条件を満たす上下一対の圧延ロールを用いることを特徴とする請求項3又は4に記載の超電導線材用テープ基板の製造方法。
  6. 前記冷間圧延する工程では、前記表面粗度Raが異なる上下一対の圧延ロールを用いて圧延する工程及び表面粗度Raが同一の上下一対の圧延ロールを用いて圧延する工程が少なくとも1回以上含まれることを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載の超電導線材用テープ基板の製造方法。
  7. 前記冷間圧延する工程では、前記表面粗度Raが異なる上下一対の圧延ロールとして、圧延ロールの外径差が1.5μm以内である上下一対の圧延ロールを用いることを特徴とする請求項3〜6の何れか一項に記載の超電導線材用テープ基板の製造方法。
  8. 超電導線材用テープ基板の両面のうち、一方の表面粗度Raが15nm以下であって、他方の表面粗度Raが前記一方の表面粗度Raよりも大きく、前記一方及び他方の表面粗度Raの差が3nm以上であり、15nm以下である超電導線材用テープ基板の前記一方の面上に中間層が形成され、該中間層上に超電導層が形成されて構成されることを特徴とする超電導線材。
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