JP2013148357A - 撚り線の残留トーション測定方法およびその測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易で正確な撚り線の残留トーションの測定方法を提供する。
【解決手段】ワイヤーWを回転しないように拘束しながら、鉛直方向に所定長さ引き出す引き出し工程と、ワイヤーWの拘束を維持しながら、ワイヤーWの端末近傍に被検出体30を回転不可能に取り付ける被検出体取付工程と、ワイヤーWの拘束を解除してワイヤーWを自由回転させ、ワイヤーWの自由回転に伴う被検出体30の回転方向及び回転量を検出器により検出する検出工程と、を備えたワイヤーWの残留トーション測定方法により上記課題が解決される。
【選択図】図5
【解決手段】ワイヤーWを回転しないように拘束しながら、鉛直方向に所定長さ引き出す引き出し工程と、ワイヤーWの拘束を維持しながら、ワイヤーWの端末近傍に被検出体30を回転不可能に取り付ける被検出体取付工程と、ワイヤーWの拘束を解除してワイヤーWを自由回転させ、ワイヤーWの自由回転に伴う被検出体30の回転方向及び回転量を検出器により検出する検出工程と、を備えたワイヤーWの残留トーション測定方法により上記課題が解決される。
【選択図】図5
Description
本発明は、撚り線の残留トーションの測定方法及びその測定装置に関し、特に自動車用タイヤ等のゴム補強用スチールコード等の撚り線の残留トーションの測定方法及びその測定装置に関する。
車両用のタイヤ等のゴム部品の補強に用いられるスチールワイヤ等の撚り線(以下ワイヤーと言う)は、単数または複数の金属線を撚り合わせて構成される。この撚り線は、タイヤ製造過程におけるカレンダー工程での撚り線を含んだゴムシートの反りを防止するため、単位長さ当りの残留トーションが規定されている。そのため、撚り線の出荷前には残留トーションの測定が行われている。
これまで、この撚り線の残留トーションの測定は人による測定が一般的であった。この人による残留トーションの測定は、撚り線が巻回されたスプールから端末を引き出し、端末を折り曲げ、撚りが戻らないように回転不可能に端末を保持し、折り曲げた点からスプールまでが6mとなるように撚り線を引き出し、端末を解放したときの撚りの戻りに伴う、撚り線の回転方向及び90度を最小単位とする回転数をカウントしていた。
しかしこのように人による測定には、個人毎のばらつきが生じるし、何より測定時間がかかることが問題であった。そこで、特許文献1,2のような残留トーションの測定装置が提案されている。
特許文献1に記載の残留トーション測定装置では、折り曲げられたコードの端末に当接可能に配設された電極と、電極をコードの軸回りに回転させる駆動手段とを備え、コードの端末と電極とが接触又は離間した際の電極の回転角から撚り線の残留トーションを演算している。
特許文献2に記載の残留トーション測定装置は、撚り線をU字状に通線する少なくとも3個のシーブを備え、中央下部に配置されたシーブが他構成部品と実質上非接触で撚り線上に吊り下げられた状態で、中央下部シーブの垂直方向の直径を通る軸周りの回転角度を測定し、残留トーションを測定している。
しかしながら、特許文献1に記載の測定装置では、折り曲げられた端末を電極に当接させて残留トーションを測定するため、測定装置にかける前の撚り線の真直性の度合いによっては撚り線を正確に折り曲げることができなかったり、端末が所定方向からずれて折れ曲がってしまうと正確な測定ができないという虞があり、測定の信頼性が必ずしも確保されているとはいえなかった。また、端末を折り曲げるため、撚り線に廃棄部分が生じるという不都合もある。
また、特許文献2に記載の測定装置では、複数のシーブを用いる必要があり、機構が複雑で測定装置が割高になってしまう。また、シーブに撚り線を通線させる作業に手間がかかるため、撚り線機から送られた撚り線をそのままシーブに通線できるように撚線機毎にこの測定装置を設置したい。しかしながら、設備コストを勘案すると現実的ではない。また、仮にこの測定装置を各撚線機に設置した場合でも、スチールコードの線種の変更時に要する測定装置の調整に時間や労力を要し、生産性の低下の懸念がある。
このように、従来から種々の残留トーションの測定装置が提案されているものの、機構や取り扱いが複雑であり、いずれも満足できるものではなかった。そこで本発明は、簡易で正確な撚り線の残留トーションの測定方法及び、測定の信頼性の高い廉価な撚り線の残留トーションの測定装置を提供することを目的とする。
本発明の撚り線の残留トーション測定方法は、
撚り線を回転しないように拘束しながら、鉛直方向に所定長さ引き出す引き出し工程と、
前記撚り線の拘束を維持しながら、前記撚り線の端末近傍に被検出体を回転不可能に取り付ける被検出体取付工程と、
前記撚り線の拘束を解除して前記撚り線を自由回転させ、前記撚り線の自由回転に伴う前記被検出体の回転方向及び回転量を検出器により検出する検出工程と、を備える。
撚り線を回転しないように拘束しながら、鉛直方向に所定長さ引き出す引き出し工程と、
前記撚り線の拘束を維持しながら、前記撚り線の端末近傍に被検出体を回転不可能に取り付ける被検出体取付工程と、
前記撚り線の拘束を解除して前記撚り線を自由回転させ、前記撚り線の自由回転に伴う前記被検出体の回転方向及び回転量を検出器により検出する検出工程と、を備える。
上記本発明に係る撚り線の残留トーション測定方法において、
前記被検出体は、前記撚り線を挟み込んで前記撚り線に取り付けられていてもよい。
前記被検出体は、前記撚り線を挟み込んで前記撚り線に取り付けられていてもよい。
上記本発明に係る撚り線の残留トーション測定方法において、
前記撚り線の端末を固定し、前記撚り線の前記端末より上流側に巻回された可動滑車を鉛直方向上方に移動させて、前記撚り線を所定長さ引き出してもよい。
前記撚り線の端末を固定し、前記撚り線の前記端末より上流側に巻回された可動滑車を鉛直方向上方に移動させて、前記撚り線を所定長さ引き出してもよい。
上記本発明に係る撚り線の残留トーション測定方法において、
前記可動滑車を鉛直方向上方に移動させる前に、前記撚り線が鉛直方向上方に延びるように、前記撚り線の向きを設定してもよい。
前記可動滑車を鉛直方向上方に移動させる前に、前記撚り線が鉛直方向上方に延びるように、前記撚り線の向きを設定してもよい。
本発明の撚り線の残留トーション測定装置は、
撚り線の端末を固定した状態で、撚り線を引き出す引き出し機構と、
撚り線を回転不可能に維持したまま、撚り線の端末近傍に回転不可能に取り付けられる被検出体と、
前記被検出体を回転しないように拘束する拘束部と、
前記撚り線の前記被検出体よりも所定長さ上流側を、回転不可能に押さえる押さえ部と、
前記押さえ部により撚り線を回転不可能に押さえたまま、前記拘束部による拘束状態の解除による撚り線の自由回転に伴う、前記被検出体の回転方向及び回転量を検出する検出器と、を備える。
撚り線の端末を固定した状態で、撚り線を引き出す引き出し機構と、
撚り線を回転不可能に維持したまま、撚り線の端末近傍に回転不可能に取り付けられる被検出体と、
前記被検出体を回転しないように拘束する拘束部と、
前記撚り線の前記被検出体よりも所定長さ上流側を、回転不可能に押さえる押さえ部と、
前記押さえ部により撚り線を回転不可能に押さえたまま、前記拘束部による拘束状態の解除による撚り線の自由回転に伴う、前記被検出体の回転方向及び回転量を検出する検出器と、を備える。
上記本発明に係る撚り線の残留トーション測定装置において、
前記被検出体は、互いに近接可能な一対の把持部を有し、
前記把持部を近接させて、撚り線を一対の前記把持部間で把持してもよい。
前記被検出体は、互いに近接可能な一対の把持部を有し、
前記把持部を近接させて、撚り線を一対の前記把持部間で把持してもよい。
上記本発明に係る撚り線の残留トーション測定装置において、
前記引き出し機構は、
撚り線が巻回されたスプールから撚り線の端末を水平方向に引き出す水平引き出し部と、
撚り線を把持し、前記水平引き出し部により水平方向に引き出された撚り線を撚り線の端末が鉛直方向に延びるように撚り線の端末の向きを変える方向転換部と、
撚り線の端末よりも上流側で滑車を撚り線に接触させ、撚り線を鉛直方向に引き出す鉛直引き出し部と、を備えてもよい。
前記引き出し機構は、
撚り線が巻回されたスプールから撚り線の端末を水平方向に引き出す水平引き出し部と、
撚り線を把持し、前記水平引き出し部により水平方向に引き出された撚り線を撚り線の端末が鉛直方向に延びるように撚り線の端末の向きを変える方向転換部と、
撚り線の端末よりも上流側で滑車を撚り線に接触させ、撚り線を鉛直方向に引き出す鉛直引き出し部と、を備えてもよい。
本発明に係る撚り線の残留トーション測定方法によれば、撚り線を拘束したまま所定長さ鉛直方向に引き出した後に、撚り線を解放して自由回転させ、撚り線とともに回転する被検出体の回転方向及び回転量を検出する、という簡単な方法で撚り線の残留トーションを測定することができる。
また、本発明に係る撚り線の残留トーション測定装置によれば、撚り線を所定長さ引き出した状態で、拘束部による拘束状態を解除し、撚り線を自由回転させ、これに伴う回転体の回転方向及び回転量を検出するという簡易な測定方法を採用しているため、測定装置に複雑な機構を必要とせず、測定精度の信頼性の高い測定装置を安価に提供することができる。
以下、本発明に係る撚り線の残留トーションの測定方法および測定装置を、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係る撚り線の残留トーションの測定装置(以下、単に測定装置と呼ぶ)を例に挙げて説明する。
図1から図6は本実施形態に係る測定装置を示した模式図である。
測定装置は、ワイヤーWが巻回されたスプール10と、スプール10に巻回されたワイヤーWの端末を引き出す引き出し機構と、ワイヤーWの残留トーションを検出する検出機構と、を備えている。スプール10は、回転軸が鉛直方向を向くように配置されており、ワイヤーWが水平方向に引き出し可能とされている。
測定装置は、ワイヤーWが巻回されたスプール10と、スプール10に巻回されたワイヤーWの端末を引き出す引き出し機構と、ワイヤーWの残留トーションを検出する検出機構と、を備えている。スプール10は、回転軸が鉛直方向を向くように配置されており、ワイヤーWが水平方向に引き出し可能とされている。
引き出し機構は、ワイヤーWを水平方向に引き出す水平引き出し部20と、水平に引き出したワイヤーWの端末の向きを鉛直方向に変える方向転換部30と、ワイヤーWを鉛直方向に所定長さ引き出す鉛直引き出し部40と、を備えている。
検出機構は、ワイヤーWに回転不可能に取り付けられワイヤーWとともに回転可能な中心軸が鉛直方向を向く円柱状の回転体 (被検出体) 50と、この回転体50の回転を拘束する拘束部60と、回転体50を回転可能に収容する筒状の収容部70と、収容部70の内部に設けられ回転体50の回転を検出する検出部(検出器)80とを備えている。
水平引き出し部20は、図1に示すように、上下方向に分割された二つの部材からなり、ワイヤーWを支持する支持面が水平方向に延在する。この二つの部材を互いに近接させることでスプール10から水平方向に延びるワイヤーWの端末近傍を回転不可能に挟持する。なお、図示の例では水平引き出し部20を上下方向に分割された例を挙げているが、水平引き出し部20は左右方向に分割されるように構成してもよい。
また水平引き出し部20は、図1に示すように、ワイヤーWを挟持したままスプール10側の初期位置P1から、水平方向に所定距離離間した終端位置P2まで、移動可能とされている。これにより、ワイヤーWがスプール10から水平方向に所定距離引き出される。このとき、この水平引き出し部20は平行移動する。このため、ワイヤーWは長手方向を中心として回転することがなく、撚りが戻らないため、残留トーションを変化させることなくワイヤーWが引き出される。
方向転換部30は、水平引き出し部20の終端位置P2よりもスプール10側に、水平方向に延在するワイヤーWを挟持可能に配置されている。方向転換部30も、水平引き出し部20と同様に、二つに分割された部材からなり、ワイヤーWを支持する支持面が水平方向に延在している。この方向転換部30は、90度回転可能とされている。これにより、水平方向に支持していたワイヤーWの端末を鉛直方向に延びるように、ワイヤーWの端末の向きを変えることができる。
鉛直引き出し部40は、鉛直方向に延びる支柱41と、支柱41から水平に突き出たアーム42と、アーム42の先端に回転可能に取り付けられた可動滑車43と、支柱41に回転可能に固定された固定滑車44と、支柱41に固定されたワイヤー押さえ部45と、を備えている。可動滑車43及び固定滑車44は、ワイヤーWが巻回される溝が水平引き出し部20により引き出されたワイヤーWと同一直線上に位置するように、それぞれアーム42及び支柱41に取り付けられている。
アーム42は、支柱41に沿って鉛直方向に移動可能に、支柱41に取り付けられている。このアーム42の先端に可動滑車43が回転可能に取り付けられている。可動滑車43は、水平方向において水平引き出し部20の初期位置P1と終端位置P2の間に配置されている。また、可動滑車43は、水平引き出し部20の移動軸よりも下方に位置する初期位置P3から、ワイヤー押さえ部45よりも上方の終端位置P4まで鉛直方向に移動可能とされている。
図2は、ワイヤー押さえ部45の水平断面図であり、(a)はワイヤー押さえ部45を閉じた状態、(b)はワイヤー押さえ部45を開いた状態を示している。ワイヤー押さえ部45の一端はヒンジ45aを介して支柱41に取り付けられ、他端にはワイヤーWは把持可能な押さえ面45bが設けられている。このワイヤー押さえ部45は、支柱41に対して移動不可能に取り付けられている。
より具体的には、ワイヤー押さえ部45は、互いに対向する一対の板状部材45cから形成されている。この板状部材45cの一端がヒンジを介して支柱41に回転可能に取り付けられている。また、この板状部材45cが互いに近接するように回転させると、他端側の離間距離が狭まり、ワイヤーWを抑えることが可能とされている。なお、板状部材45cの対向面は、一端側でその離間距離がワイヤーWの線径よりも大きく、他端側でその離間距離がワイヤーWの線径よりも小さくなるように、形成されている。また、ワイヤー押さえ部45は、ワイヤーWのうち方向転換部30と可動滑車43との間の一部を押さえる。
回転体50は、筒状の収容部70の内部に、回転可能に収容されている。この回転体50は、ワイヤーWの端末近傍を挟み込むことにより回転不可能にワイヤーWに取り付けられる。この回転体50はワイヤーWと拘束部60以外の構成部品には接触しておらず、拘束部60による拘束が解除されると、ワイヤーWの自由回転に伴い、回転体50も回転することができる。
拘束部60は、回転体50の回転を拘束し、また、回転体50の鉛直方向の移動を拘束する部材である。拘束部60は、ワイヤーWの残留トーションの測定前にワイヤーWとともに回転体50が回転することを防止する。一対の拘束部60が回転体50の外周面を挟持することで回転体50の回転及び鉛直方向の移動を拘束している。
図7,図8を参照して回転体50及び検出部80を詳細に説明する。
図7は回転体50および検出部80の上面図である。図7に示すように、回転体50は、鉛直方向に延びるワイヤーWを保持可能とされており、鉛直方向を向く回転軸周りに回転可能である。回転体50はベース51と、ベース51と一体的に形成された固定部52と、固定部52に対して空間を隔てて設けられ固定部52に向けて移動可能にベース51に取り付けられた押圧部53とを備えている。また、ベース51からは被検出部54が外側に向かって突出するように形成されている。
図7は回転体50および検出部80の上面図である。図7に示すように、回転体50は、鉛直方向に延びるワイヤーWを保持可能とされており、鉛直方向を向く回転軸周りに回転可能である。回転体50はベース51と、ベース51と一体的に形成された固定部52と、固定部52に対して空間を隔てて設けられ固定部52に向けて移動可能にベース51に取り付けられた押圧部53とを備えている。また、ベース51からは被検出部54が外側に向かって突出するように形成されている。
回転体50の固定部52と押圧部53との間にワイヤーWを進入させた後に、押圧部53を図示せぬバネ等の付勢手段により固定部52に向かって付勢させると、固定部52と押圧部53とによりワイヤーWを回転不可能に挟持することができる。これにより、ワイヤーWに回転体50を取り付けることができる。
図8は、回転体50及び検出部80を拡大して示す断面図である。
図7,図8に示すように、検出部80は、回転センサ81,82と、回転センサ81,82が支持固定されるセンサ支持部83と、を備えている。このセンサ支持部83の内周面には水平方向に延在する凹部83aが形成されており、回転体50の被検出部54が接触して回転体50の自由な回転が妨げられないようにされている。
図7,図8に示すように、検出部80は、回転センサ81,82と、回転センサ81,82が支持固定されるセンサ支持部83と、を備えている。このセンサ支持部83の内周面には水平方向に延在する凹部83aが形成されており、回転体50の被検出部54が接触して回転体50の自由な回転が妨げられないようにされている。
検出部80の回転センサ81,82はそれぞれ、発光素子81a,82aと受光素子81b,82bとから構成されている。この発光素子81a,82aと受光素子81b,82bは、図8に示すように、その間に回転体50の被検出部54が進入可能なように離間されてセンサ支持部83の凹部83a内に支持されている。
これにより、被検出部54が発光素子81a,82aと受光素子81b,82bとの間を横切り、発光素子81a,82aから発した光が被検出部54により遮られ受光素子81b,82bの出力が途絶えたことを検出することで、回転センサ81,82はワイヤーWの回転を検出することができる。
また、図7の上面視で、回転センサ81,82は互いにワイヤーWを中心に180度未満の角度間隔で配置されている。つまり、回転センサ81,82は回転対称とならない位置関係で配置されている。これにより、回転体50が回転したときに被検出部54が必ず回転センサ81,82のどちらか一方に先に検出されることになるので、回転センサ81,82のどちらが先に回転を検出したかを判別することにより、ワイヤーWの回転方向を検出することができる。
<残留トーション測定方法>
次に、上述のように構成された残留トーションの測定装置を用いた例を挙げて、ワイヤーWの残留トーションの測定方法を説明する。
次に、上述のように構成された残留トーションの測定装置を用いた例を挙げて、ワイヤーWの残留トーションの測定方法を説明する。
まず、図1の如く、スプール10に巻回されたワイヤーWの端末を水平引き出し部20によって挟持する。この状態で水平引き出し部20を初期位置P1から終端位置P2まで、スプール10から離間する方向に並行移動させる。
このとき、水平引き出し部20は、固定滑車44、可動滑車43及び方向転換部30を超えて移動することになる。水平引き出し部20は平行移動するので、ワイヤーWは長手方向を中心に回転せず、水平引き出し部20とスプール10との間でワイヤーWの撚りが戻ることがない。このとき、ワイヤーWは可動滑車43の上部の溝の一部に入り込んでいる。
次に、図3に示したように、水平に引き出されたワイヤーWの水平引き出し部20よりも上流側(スプール10側)を方向転換部30で挟持する。ワイヤーWが方向転換部30で挟持されたら、水平引き出し部20によるワイヤーWの挟持を解除する。これにより、引き出されたワイヤーWの撚りが戻ることがないように、ワイヤーWの拘束が維持されたまま、水平引き出し部20から方向転換部30へのワイヤーWの持ち替えが完了する。
次に図4の如く、ワイヤーWの端末の向きが鉛直方向となるように、方向転換部30を90度回転させる。このときも、撚りが戻らないように方向転換部30でワイヤーWの拘束を維持する。
次に図5の如く、方向転換部30によりワイヤーWを保持しながら、アーム42を上方に移動させてワイヤーWを鉛直方向に引き出す。図3に示した状態で、ワイヤーWの一部は可動滑車43の溝に収容されているので、アーム42を初期位置P3から終端位置P4まで上方に移動させることにより、ワイヤーWは可動滑車43および固定滑車44で案内されながらスプール10から引き出される。このとき、ワイヤーWの端末側は方向転換部30により鉛直方向に移動不可能に拘束されている。この工程においても、ワイヤーWの撚りが戻ることがないように、ワイヤーWの端末側は方向転換部30によって拘束が維持されている。
またこのときワイヤーWは方向転換部30から鉛直方向上方に延びるように保持されている。このため、アーム42を上方に移動させたときに、ワイヤーWには長手方向に張力が作用することになる。したがって、ワイヤーWには長手方向に張力が作用し、剪断方向の応力が作用することがない。これにより、ワイヤーWの引き出し中にワイヤーWが折り曲がることがない。したがって、本実施形態に係る測定方法によれば、ワイヤーWが折り曲げられず、廃棄すべき部位が生じない。
次に図2(a)に示すように、ワイヤー押さえ部45を閉じて、ワイヤー押さえ部45でワイヤーWの方向転換部30と可動滑車43との間の一部を押さえる。続いて、図7に示したように、回転体50の固定部52と押圧部53によりワイヤーWを挟み込み、回転体50をワイヤーWの端末近傍に回転不可能に取り付ける。回転体50をワイヤーWに取り付けたら、方向転換部30によるワイヤーWの挟持を解除する。これにより、ワイヤーWの撚りが戻ることがなく、ワイヤーWは拘束された状態のまま、方向転換部30から回転体50へ、ワイヤーWの持ち替えが完了する。
このとき、ワイヤーWの端末は鉛直方向に移動不可能な回転体50に保持され、ワイヤーWの上方は上下方向に移動不可能に支柱41に固定されたワイヤー押さえ部45により押さえられている。これにより、回転体50とワイヤー押さえ部45との間隔Lは常に一定となるので、単位長さ(L)あたりのワイヤーWの残留トーションを安定的に測定することができる。
続いて、拘束部60を回転体50から離間させて、回転体50の拘束を解除する。これにより、残留トーションが作用しているワイヤーWは自由回転を開始し、ワイヤーWの回転に伴い回転体50も検出部80の空洞内で自由回転をはじめる。検出部80は、この回転体50の回転を測定し、回転体50の回転方向及び回転量を検出する。
このとき、ワイヤー押さえ部45はワイヤーWを支柱41から離間した位置で押さえているので、ワイヤーWの回転時にワイヤーWが支柱41に接触することがなく、残留トーションを精度良く測定することができる。またワイヤーWの回転時にワイヤー押さえ部45がワイヤーWを押さえることにより、ワイヤーWの振動を抑え、さらにワイヤーWのたるみ等による線外れ等のトラブルを防ぐことができる。
検出部80の回転センサ81,82は、一対の発光素子81a,82a及び受光素子81b,82bの間を回転体50の被検出部54が通過するごとに、ワイヤーWの回転をカウントする。また図7の如く、180度未満の角度間隔で配置された一対の回転センサ81,82のうち、被検出部54がどちらの回転センサ81,82を先に通過したかを判断することにより回転体50の回転方向を検出し、ワイヤーWの撚り方向を検出できる。
なお、一対の発光素子81a,82a及び受光素子81b,82bの間を回転体50の被検出部54が通過したことが検出されたら、検出された回転体50の回転方向側に、回転するワイヤーWを先回りするように検出部80はステップを踏んで、例えば、180度位置から90度位置へと移動するように回転される。なお、このステップの動作シーケンス及び角度はシーケンサ等で設定可能とすれば、測定スピードと測定精度を選択できる。
例えば、回転センサ81,82のうち、回転センサ81が先に被検出部54を検出した場合は、図7の上面視で、回転体50の回転方向は時計回りと判定される。このとき、回転センサ81,82が90度先で被検出部54を再び検出できるように、検出部80全体を時計回りに90度回転させて先回りさせる。このようにして、検出部80は、例えば90度ごとに被検出部54の回転をカウントする。
また、回転センサ81,82が被検出部54を所定時間に亘って検出しないことを判定したら、ワイヤーWの残留トーションが全て解放されたと判断し、回転体50の回転量の測定を終了する。換言すれば、回転センサ81,82で被検出部54を検出し、検出部80を回転させ、更に回転センサ81,82で被検出部54を検出する、という一連の動作を、回転センサ81,82が被検出部54を所定時間検出しなくなるまで繰り返す。
ワイヤーWの回転量の測定が終了したら、ワイヤー押さえ部45と回転体50との離間距離である所定長さLと、検出部80が取得した回転体50の回転のカウントとから、ワイヤーWの残留トーションを算出することができる。例えば、所定長さLを2mとした場合は、検出部80が取得した回転のカウントを約2倍すれば、従来の評価基準である6mあたりの回転数としてワイヤーWの残留トーションを算出できる。
残留トーションの測定が終了したら、回転体50によるワイヤーWの挟持を解除し、スプール10を回転させてワイヤーWを巻き取る。回転体50はワイヤーWを挟み込んで取り付けられ、ワイヤーWに折り曲げ処理が施されないので、ワイヤーWに廃棄すべき部分が生じることがない。
以上の本実施形態に係るワイヤーWの残留トーションの測定方法によれば、方向転換部30によりワイヤーWを拘束したままワイヤーWを所定長さL鉛直方向に引き出した後に、ワイヤーWを自由回転させ、ワイヤーWとともに回転する回転体50の回転方向及び回転量を検出する、という簡単な方法でワイヤーWの残留トーションを測定することができる。
さらに、本実施形態に係るワイヤーWの残留トーションの測定方法によれば、ワイヤーWを折り曲げる必要がないため、ワイヤーWの折り曲げに起因する測定精度の低下の虞がなく、ワイヤーWの残留トーションを正確に測定することができる。
また、本実施形態に係るワイヤーWの残留トーションの測定装置によれば、上述の如く、ワイヤーWを所定長さ引き出した状態で、拘束部60による拘束状態を解除し、ワイヤーWを自由回転させ、これに伴う回転体50の回転方向及び回転量を検出するという簡易な測定方法を採用しているため、測定装置に複雑な機構を必要とせず、測定精度の信頼性の高い測定装置を安価に提供することができる。
また、回転体50はワイヤーWに一定の張力を与える錘としても機能する。つまり、残留トーションの測定時には常に回転体50の重量がワイヤーWに張力を与えているので、一定の張力を付与した状態で安定した測定を行うことができ、正確な残留トーションを測定することができる。
また本実施形態に係る測定装置によれば、ワイヤーWを所定長さ引き出す際に、回転体50は上下方向に移動しない。このため、回転体50の回転を検出する検出部80も、回転体50にあわせて上下方向に移動させる必要がないため、検出部80の構造を簡単にすることができる。また、回転センサ81,82の出力線も冗長にならず、出力信号を安定して取得できる。
以上、本発明をその実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
上述の実施形態では発光素子81a,82aと受光素子81b,82bとの間を被検出部54が通過したときにワイヤーWの回転をカウントするように構成したが、本発明はこれに限られない。例えば、発光素子81a,82aと受光素子81b,82bとを被検出部54に対して同じ側に配置し、発光素子81a,82aからの反射光を受光素子81b,82bが受光したときに回転をカウントするように構成してもよい。
他にも、回転体50の外周面に間欠的に空孔を有するリング状の板部材を取り付け、一対の光電変換センサによりこの空孔の通過回数をカウントする構成としてもよい。この構成によれば、従来の90度を最小単位とする回転数の評価ではなく、任意の分解能の回転角度を算出することができ、より正確な残留トーションの値を算出することができる。また、回転センサは光を用いたセンサに限られることはない。例えば磁気エンコーダや他の検出センサを用いてもよい。
また、回転センサは、接触式のセンサを採用してもよい。ワイヤー押さえ部45からワイヤーWに電気信号を入力し、この電気信号をセンサで受信することにより、ワイヤーWの回転を検出するように構成してもよい。
また、上述の実施形態では可動滑車43、駆動機構及び固定滑車44とを用いてワイヤーWを引き出す機構を構成した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、固定滑車44を省略し、回転体50、拘束部60及び検出部80を鉛直方向下方に移動させて、ワイヤーWを所定距離引き出すように構成してもよい。
また、回転体50のワイヤーWへの取り付け機構や、拘束部60の回転体50の拘束機構も上述した実施形態の例に限らず、クランプ機構や電着機構などの既知の機構を採用できる。
また、上述の実施形態では、検出機構の回転センサが収容部70に固定された例を挙げて説明したが、回転センサが回転体50と共に回り測定するように構成してもよい。
10:スプール、20:水平引き出し部、30:方向転換部、40:鉛直引き出し部、41:支柱、42:アーム、43:可動滑車、44:固定滑車、45:ワイヤー押さえ、50:回転体、60:拘束部、70:収容部、80:検出部、81,82:回転センサ、81a,82a:発光素子、81b,82b:受光素子、83:センサ支持部、83a:凹部
Claims (7)
- 撚り線を回転しないように拘束しながら、鉛直方向に所定長さ引き出す引き出し工程と、
前記撚り線の拘束を維持しながら、前記撚り線の端末近傍に被検出体を回転不可能に取り付ける被検出体取付工程と、
前記撚り線の拘束を解除して前記撚り線を自由回転させ、前記撚り線の自由回転に伴う前記被検出体の回転方向及び回転量を検出器により検出する検出工程と、を備えた撚り線の残留トーション測定方法。 - 前記被検出体は、前記撚り線を挟み込んで前記撚り線に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の撚り線の残留トーション測定方法。
- 前記撚り線の端末を固定し、前記撚り線の前記端末より上流側に巻回された可動滑車を鉛直方向上方に移動させて、前記撚り線を所定長さ引き出すことを特徴とする請求項1または2に記載の撚り線の残留トーション測定方法。
- 前記可動滑車を鉛直方向上方に移動させる前に、前記撚り線が鉛直方向上方に延びるように、前記撚り線の向きを設定することを特徴とする請求項3に記載の撚り線の残留トーション測定方法。
- 撚り線の端末を固定した状態で、撚り線を引き出す引き出し機構と、
撚り線を回転不可能に維持したまま、撚り線の端末近傍に回転不可能に取り付けられる被検出体と、
前記被検出体を回転しないように拘束する拘束部と、
前記撚り線の前記被検出体よりも所定長さ上流側を、回転不可能に押さえる押さえ部と、
前記押さえ部により撚り線を回転不可能に押さえたまま、前記拘束部による拘束状態の解除による撚り線の自由回転に伴う、前記被検出体の回転方向及び回転量を検出する検出器と、を備えた撚り線の残留トーション測定装置。 - 前記被検出体は、互いに近接可能な一対の把持部を有し、
前記把持部を近接させて、撚り線を一対の前記把持部間で把持することを特徴とする請求項5に記載の撚り線の残留トーション測定装置。 - 前記引き出し機構は、
撚り線が巻回されたスプールから撚り線の端末を水平方向に引き出す水平引き出し部と、
撚り線を把持し、前記水平引き出し部により水平方向に引き出された撚り線を撚り線の端末が鉛直方向に延びるように撚り線の端末の向きを変える方向転換部と、
撚り線の端末よりも上流側で滑車を撚り線に接触させ、撚り線を鉛直方向に引き出す鉛直引き出し部と、を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の撚り線の残留トーション測定装置。
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