上記の従来技術は、ベース筋と立上がり筋との結束を不要とすることを目的おして開発されたものであって、ベース筋を構成する縦筋および横筋を支持する縦筋支持部および横筋支持部を備えるとともに、立上がり筋を嵌合する嵌合凹部を有する立上がり筋支持部をも備えた構成であった。
しかしながら、上記技術はコンクリート内部に埋設されるべき鉄筋としてベース筋および立上がり筋のみを想定しており、立上がり筋を使用せず、縦筋を囲うようにあばら筋が設けられる構築物には使用できないものであった。
また、上記従来技術の鉄筋保持具は、設置することによってかぶり厚が確保され、さらに、幅止め金具を設けることにより、型枠の位置決めを容易にすることを目的とするものであって、そのために各部が一体成型されたものであった。
ところが、上記かぶり厚の確保等が容易となる反面として、構築すべき基礎構造の諸寸法が決定されなければ、使用すべき鉄筋保持具の寸法(大きさ)が決まらず、汎用性に欠けるという問題点があった。すなわち、基礎構造の諸寸法が規格により段階的に数種類であるとしても、当該数種類の規格に応じた寸法(大きさ)の鉄筋保持具を容易しなければならず、規格の一致しない基礎構造に転用することはできないものであった。
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、あばら筋を使用する基礎構造においても使用可能であるとともに、寸法の異なる複数の種類の基礎構造において転用し得る鉄筋保持具を提供することである。
そこで、本発明は、二つの支持部材と、この二つの支持部材によって両端が支持され該支持部材の間に横架される横架部材とを備えた基礎鉄筋保持具であって、前記二つの支持部材は、十分な接地面積を有する基部と、この基部から立設された支持部材本体と、前記横架部材を横架させるべき方向に前記支持部材本体から突出して設けられ、かつ、前記横架部材の先端部分の当接を許容する当接面を有する突出部と、この突出部の近傍に先端を配して前記支持部材本体から突出して設けられ、前記横架部材の先端部分が前記当接面に当接するとき、該横架部材の上面に当接する弾性変形可能な舌片部とを備えたことを特徴とするものである。
上記構成によれば、支持部材と横架部材との二種類の部材によって基礎鉄筋保持具が構成されていることから、これらの部材を独立して設けることができるとともに、これらの部材を組み合わせることによって基礎鉄筋保持具となり得るものである。つまり、構築すべき基礎構造の幅方向に二つの支持部材を分離設置し、これらの二つの支持部材の間に横架部材を横架させることにより基礎鉄筋保持具を構成することができるのである。このとき、支持部材には、突出部に横架部材の先端部分を当接させるとともに、当接された当該横架部材先端部分の上面に舌片部が当接することによって、当該先端部分は上方への移動が制限されることとなり、その当接状態を維持させることができるものである。
なお、舌片部は、支持部材本体から突出する構成であるため、横架部材を突出部の当接面に当接させる際、その突出長の範囲で横架部材の先端部分に接触することとなるが、当該舌片部が弾性変形可能であることから、横架部材の先端部分が当接面に当接されるまで、弾性的に変形し、その後、弾性力により復元したときに、その先端が横架部材の先端部分の上面に当接することができるのである。
また、本発明は、上記構成における支持部材が、さらに、前記突出部とは異なる方向に突出する突片を備えたことを特徴とするものである。
上記構成によれば、横架部材が横架される方向とは異なる方向に、突片が突出することとなるから、横架部材によって支持される鉄筋とは異なる鉄筋を突片によって支持させることができる。すなわち、例えば、横架部材によってベース筋の一方(例えば縦筋)を支持させる場合、突片によりベース筋の他方(例えば横筋)を支持させることができる。
さらに、本発明は、上記構成において、前記横架部材が、先端付近の一部切り欠いてなる切欠部を備え、前記支持部材が、さらに、前記突出部の表面に設けられ、前記切欠部を係止する係止部を備えたことを特徴とするものである。
上記構成により、支持部材により支持される横架部材の先端は、切欠部が突出部の係止部によって係止されることとなり、横架部材が支持部材によって強固に連結されることとなる。
また、本発明は、上記構成において、前記舌片部が、前記横架部材の上面に当接して該横架部材の先端部分を前記当接面に向かって付勢する構成とすることができる。
上記構成によれば、横架部材の先端部分が突出部の当接面に当接した状態を、舌片部による付勢によって維持させることができる。このとき、横架部材の両端縁は、支持部材本体(突出部または舌片部の根元部分)の存在により、長手方向への移動が制限されることから、横架部材を設置すべき位置が確定されることとなる。
また、上記各構成の発明において、前記突出部が、前記横架部材の当接を許容する当接面を有する突出部であり、この当接面は高位面および低位面の異なる高さの当接面で構成され、前記横架部材が、上記当接面に嵌合する形状に構成されている構成とすることができる。
上記構成によれば、当接面には高位面と低位面により段差が形成され、横架部材の先端部分が上記段差を有する当接面に嵌合することにより、横架部材の先端部分が支持部材の突出部に当接されるべき位置を明確にすることができる。
さらに、上記構成において、前記突出部が、前記当接面を構成する高位面が先端側に設けられ、低位面が支持部材本体側に設けられている構成とすることができる。
上記構成によれば、突出部の当接面は、支持部材本体側から先端側に向かって上りの段差が形成され、横架部材が長手方向に支持部材から離れる方向に移動することを抑止することができる。
また、上記構成において、前記横架部材が、その両端付近に固定ネジを挿通する貫通孔を備え、前記支持部材の突出部が、その当接面のうち低位面に前記固定ネジの螺進を許容する領域を備える構成とすることができる。
上記構成によれば、突出部の低位面において、これに嵌合する横架部材との間を固定ネジで固定することができ、支持部材と横架部材とを強固に連結させることができる。しかも、固定ネジは低位面において使用されることから、固定ネジの頭部が横架部材の表面から突出する状態となる場合であっても、当該ネジの頭部が横架部材の他の部分(突出部の高位面に当接する部分)よりも上方に突出することを回避することが可能となる。
さらに、上記各発明において、横架部材は、長手方向の中央付近に、短手方向に突出する鉄筋載置部を備える構成とすることができる。
上記構成によれば、横架部材の長手方向に沿って配筋されるベース筋の一部を鉄筋載置部によって保持させることができる。この場合、横架部材は、鉄筋支持部の基部よりも上方に横架されることから、当該高さにベース筋を支持することが可能となる。
また、上記各構成の発明において、前記突出部が、その側面が、突出方向に連続する凹状部を有し、前記横架部材が、断面形状略コ字形に形成されるとともに、該コ字形を構成する対向片部から対向側に突起する突起部を備え、該突起部が前記突出部の凹状部に係入する構成とすることができる。
上記構成によれば、断面形状略コ字形に形成された横架部材の対向片部に形成される突起部を、突出部の側面に形成される凹状部に係入させることができ、この係入により、横架部材の先端が突出部に当接した状態において、当該横架部材の先端が浮き上がることを抑止することができる。従って、例えば、係止部材と切欠部によって、横架部材の長手方向に移動を制限しつつ、上記係入によって先端部の浮き上がりを抑止することにより、横架部材先端と突出部との当接状態を適度に安定させることができる。この状態により、舌片部の付勢を受け、または、固定ネジによる固定力が付与されることにより、上記当接状態を強固に維持させることができる。
また、上記各発明において、支持部材は、さらに、適宜面積を有する上面部と、この上面部に設置された型枠設置部とを備える構成とすることができる。
上記構成によれば、支持部材の上面部に設置する型枠設置部に型枠の下端を載置することが可能となる。これにより、基礎鉄筋を保持しつつ、これらの基礎鉄筋とのかぶり厚を維持しつつ型枠を設置することができる。
そして、上記発明における型枠設置部は、前記上面部に連結される上面部連結部と、この上面部連結部から所定の高さに構成された型枠載置面とを備える構成とすることができる。
上記構成によれば、型枠設置部は、支持部材の上面部に連結されるとともに、この上面部から所定の高さに型枠の下端を載置することができることとなり、基礎構造体の所定寸法に応じた鉄筋コンクリートを構築させるための型枠を設置することが可能となる。
さらに、上記発明において、支持部材は、前記上面部と前記上面部連結部との間に連結用ベース板を介在させてなる構成とすることができる。
上記構成によれば、支持部材の上面部に連結用ベース板が設置されることによって、当該連結用ベース板が支持部材の上面部と一体的に構成させることができ、さらに、この連結用ベース板に上面部連結部が連結されることによって、型枠設置部が連結用ベール板を介して鉄筋支持部と強固に連結されることとなる。
本発明によれば、支持部材と横架部材とで構成されることから、横架部材の長さを変更することによって、二つの支持部材の設置されるべき位置(両支持部材の間の距離)を変更することができる。そして、本発明の基礎鉄筋保持具は、横架部材と支持部材とを結合することによって組み立てられるものであることから、所定寸法の基礎鉄筋保持具は、横架部材の長さに左右されることとなり、異なる寸法の基礎構造を構築する場合においても、支持部材を転用することができる。換言すれば、長さの異なる横架部材を数種類用意すれば、異なる寸法の基礎構造についても対応できるのである。
また、横架部材は、必ずしも立上がり筋を支持しなければならない構成ではなく、二つの支持部材の間に横架されるものであることから、上記両支持部材の間にあばら筋を配置させることも可能となる。すなわち、基礎鉄筋の下端側の主筋は、横架部材によって支持される状態となり、この主筋の位置を基準にあばら筋の設置位置が決定することとなる。
さらに、支持部材の上面部に型枠設置部を設ける構成においては、配筋された基礎鉄筋と型枠との位置関係をも調整することが可能となり、基礎コンクリートに必要なかぶり厚を維持しつつ、基礎鉄筋を保持することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第一の実施形態を示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態の基礎鉄筋保持具は、二つの支持部材1,2と、一つの横架部材3とで構成されている。二つの支持部材1,2は同じ構成で設けられ、これらを対向して配置することによって、両者間に所定の間隔を設け、この間隔に横架部材を設ける構成である。横架部材3は、その両端が両支持部材1,2によって支持されるものである。また、上記二つの支持部材1,2は、当該支持部材1,2を設置するための基部4,5と、この基部4,5に立設される支持部材本体6,7と、この支持部材本体6,7に突設された突出部8,9とで構成されたものである。
支持部材1,2の基部4,5は、設置すべき場所において支持部材1,2が自立できるように、十分な接地面積を有する平面状に形成されている。接地面は、大きければ支持部材1,2の自立状態を安定させることができるが、打設コンクリート内部に埋設されることを考慮し、支持部材1,2が転倒しない程度の面積とされている。
支持部材本体6,7は、上記基部4,5に一体的に形成されたものであって、適宜な高さを有する状態で基部4,5の上方に立設されている。この支持部材本体6,7に設けられる突出部8,9に横架部材3が当接されて、当該横架部材3を支持するとともに、この横架部材3に載置される基礎鉄筋の重量をも支えるものである。支持部材本体6,7の全体は、その外周を形成する適宜幅の外周部と、この外周部が形成する範囲内を縦横に適宜設けられた複数のリブとで構成されており、外周部で囲まれる範囲内には、リブや外周部で囲まれる部分の一部が貫通されている。この貫通により、コンクリート打設時におけるコンクリートを流動しやすくしているなっている。
突出部8,9は、支持部材本体6,7を対向させて設置するとき、その対向側において向かい合う方向に突出して設けられており、その突出長は、横架部材3の両端から適宜範囲を支持できる程度に設けられている。この突出部8,9も含めて支持部材本体6,7は同一形状となっており、双方の突出部8,9は同じ高さで同じ突出長に構成されている。
他方、横架部材3は、長尺な1本の部材で構成されている。この横架部材3は、長手方向に沿った二箇所で折曲された形状(横断面形状略コ字形)となっており、上片部(中央に位置する平面部)3aと、その両側に形成される対向片部(上片部の両側に位置する側面部)3b,3cとで構成されている。そして、この横架部材3の両端部分31,32が、前述の突出部8,9によって支持されるとき、当該両端部分31,32が突出部8,9を上方から覆うように装着できるようになっている。このとき、上片部3aが突出部8,9の上部表面に当接されることによって、当該横架部材3に作用する重量を支えることができ、対向片部3b,3cが突出部8,9の側部に当接して、横架部材3の姿勢を安定させることができるようになっている。なお、支持部材1,2と横架部材3とを安定的に一体化させるために、固定ネジA,Bによって横架部材3の両端部分31,32を突出部8,9に固着させることができるようになっている。
ここで、支持部材本体6,7の詳細を説明する。図2および図3は支持部材本体6,7の形態を示す図である。この図に示すように、支持部材本体6,7は、十分な面積を有する基部4,5の表面ほぼ中央に立設されている(図2(a),(c)参照)。この基部4,5が十分な面積を有することによって支持部材本体6,7の自立性を確保させているのである。また、支持部材本体6,7は、上述のように、所定の高さを有しており、その一部から突出部8,9が突出するように構成されている(図2(b),図3(b)参照)。すなわち、支持部材本体6,7は、その高さ方向の中間位置において突出部8,9を備え、この突出部8,9に横架部材3を支持させることによって、当該横架部材3の高さに基礎鉄筋を保持するものである。従って、基礎鉄筋を構成する複数の鉄筋(例えば、主筋およびベース筋など)のうちのいずれかを横架部材3が支持するものであり、その位置(高さ)に合致するように突出部8,9の突設位置(高さH1)が調整されている。
また、支持部材本体6,7には、突出部8,9に対して直交方向に突出する二種類の突片61a,61b,62a,62b,71a,71b,72a,72bが設けられている。第一の突片61a,61b,71a,71bは、支持部材本体6,7の両側において、その側部から突出しており、その上端縁の高さH2は、上記突出部8,9の上面の高さH1よりも少し低く調整されている(図3(b),(c)参照)。これにより、基礎鉄筋を構成する鉄筋のうち、突出部8,9(横架部材3)の高さで支持されるもの以外の鉄筋であって、基礎の幅方向(横架部材3と同じ方向)に配設される鉄筋(例えば、ベース筋の横筋)を保持する際の高さが調整可能になっている。なお、この突片61a,61b,71a,71bは、下端縁で連続した一体の形状としてもよいが(図1の突片61,71参照)、個別に構成してもよい。
他方、第二の突片62a,62b,72a,72bは、その下端縁が所定高さH1と同程度となるように設けられており、前述のように鉄筋(例えば、ベース筋の横筋)を保持する際には、その鉄筋の上縁に当接することができるようになっている。従って、当該鉄筋は、前述の第一の突片61a,61b,71a,71bと、当該第二の突片62a,62b,72a,72bとの中間に挿入することによって、その配設位置が容易に決定されることとなる。また、この両突片の間隙は、鉄筋の肉厚(断面径)よりも僅かに大きく設けることにより、鉄筋を緩やかに嵌入できることとなり、専ら位置決め用として機能させることができるが、その間隙を鉄筋の肉厚よりも僅かに小さくすることによれば、突片を合成樹脂製で構成する場合、その弾性により鉄筋を挟持(強く保持)させることも可能である。
さらに、支持部材本体6,7の対向側には、側面下向きに垂れ下がった状態の舌片部63,73が設けられており(図2(b),図3(a)参照)、この舌片部63,73の下端縁が突出部8,9の根元付近に到達し、突出部8,9に当接される横架部材3の上面に接して下向きに付勢できるようになっている。
なお、本実施形態の支持部材本体6,7は、合成樹脂製により一体的に成形されており、上述の舌片部63,73は、当該合成樹脂の弾性力により弾性変形可能に設けられている。また、本実施形態の支持部材本体6,7は、外周部が適宜幅の帯状部材で形成され、その内側の適宜箇所は中空となっており、当該中空部分を補強すべき箇所にはリブが構成されている。この外周部で囲まれる範囲は、上部6a,7aと、中間部6b,7bと、下部6c,7cとに区分することができ、上部6a,7aおよび下部6c,7cは、比較的範囲が広いことから多くのリブが設けられている。これらのリブと外周部とで形成される範囲には中空部分が設けられている。中間部6b,7bは、狭い部分であるためリブを設けていないが、中空部分は構成されている。これらの中空部分は、前述のとおり、コンクリート打設時における流動性を確保するためのものである。
次に、突出部8,9の詳細を説明する。図4は、一方の突出部8を拡大した状態を示す図である。この図に示すように、突出部8は、断面形状略H形の平行片部を上下に配置してなる本体部81と、この本体部81の上方に同じ幅寸法で形成された当接面部82とを備えている。当接面部82は、上部表面が横架部材3の先端部分31の当接を許容する当接面として機能するものである。また、この当接面は高位面と低位面とに区分されており、突出部8の先端側が高位面部83であり、根元側が低位面部84となっており、横架部材3の先端部分31に嵌合するようになっている。つまり、横架部材3の上片部3aは、先端部分31において高さを変更して構成されており、横架部材3の先端部分31と突出部8の当接面とが嵌合した状態で当接可能となっているのである。
また、図示の突出部8の低位面部84には、固定ネジA(図1)を螺入するための穴85が設けられており、この穴85を設けるため、すなわち固定ネジAの螺進を許容するための領域として、厚肉領域RW1,RW2が設けられている。この厚肉領域RW1,RW2は、断面形状H形の本体部81におけるリブ部分R2、および、本体部81の上部に設けられる当接面部82を補強するためのリブ部分R1を肉厚にしたものである。
さらに、突出部8の本体部81の両側部には、横向きに突出する係止部86,87が設けられており、横架部材3の対向片部3b,3cに設けられる切欠部33に係入できるものである。この横架部材3の切欠部33に対して係止部86,87が係入されることにより、横架部材3の長手方向の移動が制限され、当該横架部材3と突出部8との当接状態を維持させるようになっている。
なお、上記のような突出部8の構成を利用して、横架部材3の対向片部3b,3cの内側(対向面側)に突起部35を設け、この突起部35を突出部8の本体部81に係止させる構成とすることもできる。本実施形態における突起部35は、対向片部3b,3cにコ字形の切り込みを入れ、当該コ字形部分を内側(対向面側)に折り曲げるようにして設けている。図4では、片方のみ(対向片部3b)を示しているが、他方(対向片部3c)も同様に構成されている。上記構成により、突出部8の本体部81は、断面形状H形であるため、リブ部分R2が形成されている部分は、平行片部の両端よりも狭くなって凹状部が形成されることとなり、この凹状部に突起部35を係入することにより、突起部35による係止を可能にしているのである。このように突起部35による係止により、横架部材3の先端部分31が突出部8の当接面部82から上向きに離れることを防止できるのである。なお、当接面部82には、上記突起部35の通過を容易にするため、切欠部88,89が形成されている。
次に、舌片部63の詳細を説明する。舌片部63は、図4(a)において示されているように、支持部材本体6の一部に形成されている。具体的には、支持部材本体6の端面のうち、突出部8が設けられている位置から上方には、斜状に形成された板状部材64が設けられ、この板状部材64の表面から突出部8に向かって突出するように舌片部63が設けられている。そして、この舌片部63の先端は、突出部8の根元付近に到達するように先端を下向きにして設けられているのである。また、この舌片部63の先端は、突出部8の表面に接する状態ではなく、若干の間隙を有しており、その間隙は横架部材3の上片部3aの板厚寸法よりも狭い状態で設けられている。さらに、横架部材3の先端部分31を突出部8の所定位置に設置するとき、舌片部63の板状部材64が横架部材3の先端部分31の端縁に接触して支持部材本体6に向かって湾曲するように弾性変形し、その復元力が大きくなったところで、舌片部63の先端が横架部材3の先端部分31から外れ、当該横架部材3の上面に移動することとなる。この舌片部63の復元によって、当該舌片部63の先端が横架部材3の上面に当接できるようになり、ちょうど、横架部材3が突出部8の当接面部82に当接した状態において、その横架部材3を下向きに付勢して、その状態を維持させるようになるのである。
従って、図3(b)に示すように、横架部材3の先端部分31を突出部8の当接面部82に当接させることにより、第一義的には舌片部63が横架部材3の上方への移動を制限し、さらに、横架部材3の切欠部33を係止部86(,87)により係止させることによって、横架部材3が位置決めされることとなる。なお、舌片部63による下向きの付勢により、係止部86(,87)による切欠部33の係止状態において、当接面部82と横架部材3との間の遊びを生じさせないようにすることができるのである。
本実施形態は上記のような構成であるから、図5に示すように、二つの支持部材1,2を対向させつつ(突出部8,9が相互に対向するように配置しつつ)適宜間隔を有して配置し、その両支持部材1,2の突出部8,9に横架部材3の両端31,32を当接させることによって、支持部材1,2に横架部材3を連結させることができる。
このとき、突出部8,9の当接面部82,92に段差がある場合には、横架部材3の両端31,32が上記段差に嵌合させることにより、当接位置が案内されることとなる(図1参照)。また、突出部8,9に係止部86,87,96,97が設けられている場合には、その係止部86,87,96,97によって横架部材3の切欠部33,34を係止させることにより、横架部材3の長手方向の移動が制限される。さらに、横架部材3の対向片部3b,3cに突起部35,36を設ける構成の場合は、当該突起部35,36を突出部8,9の本体部81,91の側部に形成される凹状部に係入することにより、横架部材3の両端31,32が上方に抜けることを防止することができる。
そして、上記のように横架部材3の両端31,32を突出部8,9に当接させることにより、舌片部63,73が両端31,32の上面を下向きに付勢することとなるから、この舌片部63,73によって、突出部8,9と横架部材3との遊びを解消させるとともに、横架部材3の当接状態を所定の状態に導くことができる。
このように横架部材3の両端31,32を突出部8,9に当接させつつ支持させた状態で、さらに、横架部材3の両端31,32の上方から固定ネジA,Bを挿入し、突出部8,9に螺進させることにより、横架部材3を強固に連結させることができる。
上記のように、異なる部材を連結して一つの基礎鉄筋保持具を組み立てるように構成していることから、例えば、基礎構造の幅が異なる場合においては、横架部材3の長さ寸法のみを変えることで対応可能となる。つまり、両端31,32の構成を同じにしつつ長さ寸法を異ならせた数種類の横架部材3を予め用意しておけば、各種寸法の基礎構造において使用することが可能となる。
なお、二つの支持部材1,2は、横架部材3との連結(組み立て)時において、適宜間隔を有して暫定的に配置するが、この間隔は連結(組み立て)作業の際に変更すればよい。これは、二つの支持部材1,2が独立して設けられていることによって可能となるものである。
次に、本実施形態の使用形態について説明する。図6は使用状態を示す説明図である。この図に示すように、二つの支持部材1,2に横架部材3を連結することによって構成される基礎鉄筋保持具は、基礎構造の長手方向Xと幅方向Yの両方に沿って配置される鉄筋を保持できる。すなわち、横架部材3は、基礎鉄筋を構成する主筋のうちの下位のもの(これを下端筋と称する)Ba1,Ba2を支持することができる。このとき、横架部材3の先端31,32の高さが部分に的に下位となっていることから、下端筋Ba1,Ba2は、横架部材3の両端31,32の位置に固定的に載置されることとなる。また、ベース筋を構成する横筋Bb1は、支持部材1,2の突片61,62,71,72によって支持される。縦筋Bb2は、この横筋Bb1の上部に載置される状態で配置されるものである。なお、支持部材本体6,7の反対側にも同様の突片が設けられていることから(図3参照)、横筋Bb1が配筋される位置に応じて適宜選択することができる。
また、あばら筋Bc1は、横架部材3に載置される下端筋Ba1,Ba2によって支持される。あばら筋Bc1は、主筋(上端筋および下端筋)を包囲するような長方形状の鉄筋であるから、主筋が配置される間隔(例えば、下端筋Ba1,Ba2の間隔)が異なれば、あばら筋Bc1の長方形は異なる大きさのものが使用される。つまり、本実施形態のように、横架部材3の長さ寸法(長手方向の長さ)を変更することによって、主筋の間隔に応じて、その下端筋Ba1,Ba2を所望の位置に配置(載置)させることができることから、あばら筋Bc1は、必然的に主筋の外側を通過するように、当該主筋によって支持されることとなるのである。
次に、第二の実施形態について説明する。図7は、本実施形態の概略を示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態の支持部材101,102は、第1の実施形態と同様であるが、突出部108,109の形態が異なるものである。本実施形態の突出部108,109は、支持部材本体106,107から突出する構成である点は第1の実施形態と同様であるが、その構成の一部が第1の実施形態と異なるものである。すなわち、当該突出部108,109は、断面形状略H形の本体部181,191のみによって構成され、その平行片部を上下に配置するとき、上方に位置する一方の平行片部が、横架部材103の当接面として機能するものである。また、第1の実施形態のような当接面部を備えていないことから、当接面には段差を設けられていない構成としている。
上記構成の場合、突出部108,109によって支持される横架部材103は、その両端131,132の構成も第1実施形態とは異なる構成となっている。すなわち、横架部材103を構成する上片部103aには段差が設けられておらず、横架部材103の両端131,132においても上片部103aは平坦な形状に構成されているのである。
また、本実施形態の横架部材103の対向片部103b,103cには切欠部が設けられていないことから、これを係入すべき係入部も本実施形態の突出部108,109には設けられていない。さらに、固定ネジにより横架部材103の両端131,132を固定する構成ではないことから、横架部材103には貫通孔を有さず、突出部108,109には固定ネジの螺進領域が設けられていない。
上記構成では、横架部材103の固定方法が簡略化されており、横架部材103の両端131,132を突出部108,109に当接させることによって支持することができる。そして、横架部材103の両端131,132が突出部108,109に当接された状態を維持させるものである。
本実施形態では、横架部材103を専ら舌片部163,173によって固定する構成としている。舌片部163,173の構成は、第一の実施形態と同様であり、突出部108,109の上方から先端を下向きにして設けられており、その先端部分と突出部108,109の上側に位置する平行片部との間には、横架部材103の上片部103aの肉厚よりも狭い間隙が形成されている。従って、横架部材103の両端131,132を突出部108,109に当接させ、かつ、当該両端131,132を支持部材本体106,107に向って移動させることにより、当該両端131,132の上片部103aは、突出部108,109と舌片部163,173の間に挟まれることとなる。すなわち、横架部材103の両端131,132が移動することにより、舌片部163,173を弾性変形させることとなり、これによって上記上片部103aの挿入を許容することができるのである。
この上片部103aが挿入された後においても、舌片部163,173が復元力により、元の状態に復元しようとする(突出部108,109の上側の平行片部との所定間隙まで先端を下降させようとする)が、横架部材103の上片部103aが存在することから、結果的に、舌片部163,173は弾性変形した状態で復元力を上片部103aに作用させ続けることとなるのである。このときの付勢力を大きくすることによって、横架部材103の固定を可能にするのである。
以上のように、本実施形態によれば、舌片部163,173の付勢力によって横架部材103を支持部材101,102に連結されることができるのである。この場合、固定ネジによる固定が不要であるから、基礎鉄筋構築現場において即座に設置することが可能となる。
また、本実施形態は、横架部材103の長手方向の中央付近から短手方向に突出する鉄筋載置部137が設けられている。この鉄筋載置部137は、主にベース筋の横筋を載置するためのものであるが、横筋の設置は、専ら突片161,162,171,172によって行われるが、両支持部材101,102が大きく離れて設置される(横架部材103が長尺である)場合には、その中間地点においても横筋を載置させることができるようにしているのである。
次に、第三の実施形態について説明する。図8は、本実施形態の概略を示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態は、支持部材201(図示しないもう一つの支持部材も同様に構成されるが、ここでは一方の支持部材についてのみ説明する)の上面部211は、適宜面積を有するように構成されており、この上面部211に型枠を設置できるように構成されているのである。
具体的には、支持部材201の上面部211は長方形状に形成され、この上面部211に型枠設置部212が設けられる。この型枠設置部212は、板状の部材を折曲することにより全体的に略C字状に形成されている。その両端部分は、対向するように、かつ、先端から適宜範囲に平面部213,214が設けられており、支持部材201の上面部211に当接可能になっている。また、型枠設置部212の上部には、支持部材201の上面部211と同程度の面積を有する型枠載置面215が設けられており、この型枠載置面215に型枠の底部を載置することができるようになっている。また、型枠載置面215は、型枠設置部212の両端に構成された平面部213,214から適宜の距離を有して設けられ、支持部材201の上面部211から適宜高さにおいて型枠を載置できるようになっており、上述の板状部材の折曲位置に応じてその高さを変更させて設けることができる。
ところで、一方の平面部213には、第1の貫通孔HL1が穿設されており、型枠載置面215のうち、上記第1の貫通孔HL1の直上に位置する部分には、第2の貫通孔HL2が穿設されている。この両貫通孔HL1,HL2は、ネジCを使用するためのものである。ネジCは、一方の平面部213を支持部材201の上面部211に固定するためのものであり、従って、第2の貫通孔HL2は、ネジCおよびネジ締めのためのドライバを挿通するためのものである。従って、第1の貫通孔HL1はネジCのネジ部が通過できるが、頭部は通過できない程度の大きさであり、第2の貫通孔HL2は、ネジCの頭部およびドライバが挿通できる程度の大きさとなっている。ここで、本実施形態の型枠設置部212は、板状部材を略C字状に折曲した構成であることから、第2の貫通孔HL2を挿通させることなく、ネジCを第1の貫通孔HL1に配置させることは可能である。従って、少なくとも第2の貫通孔HL2はドライバが貫通できる程度であればよいものである。
なお、支持部材201の上面部211にネジCを螺入させるためのネジ溝を設けていないが、これは、支持部材201を合成樹脂で構成する場合、ネジCを上面部211にねじ込むことにより、固定する方法が可能だからである。これをボルト等により締着させる場合には、上面部211に雌ねじを刻設するか、ナットを埋設する構成としてもよい。
さらに、図示の実施形態では、連結用ベース板216が使用されている。この連結用ベース板216は、全体として板状部材の一部を折り曲げて構成されている。その本体部分は、支持部材201の上面部211に密着するように長方形状の平面を有し、当該長方形の長辺部中央には下向きの折り曲げ部(以下、下片部と称する)217(217a,217b(図中表示なし))が設けられ、その両端側には上向きの折り曲げ部(以下、上片部と称する)218,219が設けられている。下片部217は、支持部材201の上片部211の長手方向両側の側部に当接し、上片部218,219は、型枠設置部212の平面部213,214の両側の側部に当接するように構成されている。
従って、連結用ベース板216を支持部材201の上面部211に設置(本体部分を密着)するとき、下片部217(217a,217b)が、上面部211の両側に当接して、当該上面部211の短手方向(長方形の短辺方向)への移動が制限されることとなる。すなわち、連結用ベース板216は長手方向(長方形の長辺方向)への移動のみが許容される状態となるのである。また、この連結用ベース板216に型枠設置部212の平面部213,214を設置(平面部213,214の下面を連結用ベース板216の上面に密着)させることにより、当該平面部213,214は、やはり、連結用ベース板216の短手方向への移動が制限されることとなる。そして、この状態において、長手方向への移動を制限することによって、連結用ベース板216および型枠設置部212は、支持部材201の上面部211に固定されることとなるのである。
そこで、上記連結用ベース板216には、第3の貫通孔HL3が設けられており、ネジCによる型枠設置部212の固定の際に、同時に、連結用ベース板216をも固定できるように構成されている。この状態を図9に示す。
この図に示すように、支持部材201と型枠設置部212との間に連結用ベース板216が介在されることによって、一個所のネジ止めによって、その位置が固定されることとなる。
また、上記型枠設置部212の変形例を図10に示す。図10(a)に示すように、型枠設置部212は、一枚の板状部材を横断面形状がコ字状となるように折曲した構成である。この場合においても、折曲した下向きの折り曲げ部が、支持部材201の上面部211の両側に当接することから、やはり、上面部211の短手方向への移動が制限されるものである。そして、型枠設置部212の本体部分に穿設した第1の貫通孔HL1を使用して、ネジCを上面部211にねじ込むことにより、図10(b)に示すように、当該型枠設置部212を支持部材201の上面部211に装着することができるのである。
上記のように、支持部材201の上面部211に型枠設置部212を設けることにより、当該型枠設置部212に型枠の下端を載置させることが可能となる。すなわち、例えば、支持部材201をプラスチック等の合成樹脂で構成する場合、型枠の下端が上面部211に直接当接する場合、特に、型枠の位置を調整しつつ載置する場合、当該型枠の接触(摺接)により、上面部211の表面が削り取られる可能性もあるが、型枠設置部212を金属製により構成し、これを上面部211に設置することにより、そのような可能性を排除することができるのである。
また、上述のように(図9に示すように)、型枠載置面215が両端の平面部213,214から適宜の距離を有する構成の場合には、当然に、支持部材201の上面部211よりも高い位置で型枠の下端を載置することができることから、配筋した(保持される)基礎鉄筋の位置から所望の高さに型枠を設置すべき場合には、当該鉄筋支持部212の装着により、当該所望の高さで型枠を支持させることが可能となる。
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、上記実施形態は本発明の一例を示すものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態とすることができるものである。例えば、第二の実施形態については、第一の実施形態において説明した構成を部分的に追加し、適宜変形することが可能である。
すなわち、舌片部163,173による付勢力のみでは固定状態が不十分とされる場合は、固定ネジによる固定手段を付与した構成としてもよい。このような固定ネジを使用する場合は、固定ネジの頭部が横架部材103の上片部103aから突出することとなるから、必要に応じて段差を設ける構成としてもよい。また、横架部材103の長手方向への移動を制限したい場合は、横架部材103の対向片部103b,103cに切欠部を設け、突出部108,109には係止部を設ける構成としてもよい。
また、上記とは逆に第二の実施形態において示した構成を第一の実施形態に追加してもよい。すなわち、例えば、横架部材103に設けた鉄筋載置部137は、第一の実施形態の横架部材3に追加して構成してもよい。
なお、第一の実施形態を示す図1および図5において、その横架部材3には、上片部3aおよび対向片部3b,3cに適当な貫通孔を有するものが図示されているが、これは、コンクリートの打設の際に、コンクリートの流動性を向上させるため、すなわち、コンクリートが貫通孔を通過して横架部材3の下方にまで流下することを補助するためのものであり、横架部材3の強度に影響がない程度の大きさおよび数を穿設している。従って、第二および第三の実施形態においてもそのような構成とすることができ、逆に、コンクリートの流動状態が良好な場合は、当該貫通孔を設けない構成としてもよい。