JP2013144672A - 眼科用水性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】塩化亜鉛を含有する眼科用水性組成物において、析出物の発生が抑制され、更に、その他の改善された作用を有する眼科用水性組成物を提供する。
【解決手段】(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸、を含有する眼科用水性組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は眼科用水性組成物に関する。より詳しくは、析出物の発生及び滴下後の白残りが抑制され、更に、角膜細胞の増殖を促進させ、ヒスタミンの遊離抑制作用を増強する作用を有する眼科用水性組成物に関する。
硫酸亜鉛、乳酸亜鉛などの亜鉛塩は、収斂作用や抗炎症作用を有し、収斂剤や抗炎症剤として、点眼薬に広く使用されている。また、眼粘膜や鼻粘膜の洗浄剤に、亜鉛又は亜鉛塩を添加することにより、洗浄剤の細胞障害性が抑制されることも知られている(特許文献1)。更に、眼粘膜や鼻粘膜の洗浄剤に、亜鉛塩又は亜鉛塩と、抗ヒスタミン薬を添加した洗浄剤が、眼粘膜や鼻粘膜に対して優れた鎮痒作用を有することも知られている(特許文献2)。
また、コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸、及びこれらの塩は、エネルギー代謝を促進させることや、新陳代謝や細胞呼吸を促進して目の疲れを解消させること、あるいは涙液成分を補給すること等を目的として従来から眼科組成物に使用されている。
しかしながら、塩化亜鉛を含有する眼科用水性組成物において、これらの成分が眼科用水性組成物に及ぼす影響については明らかにされていない。
特開2003-146891 特開2003-146892
本発明者等は、亜鉛化合物を含有する眼科用水性組成物について種々の検討を行った結果、亜鉛化合物として塩化亜鉛を含む眼科用水性組成物において、析出物が生じることを確認した。
また、ヒアルロン酸又はその塩は、眼粘膜や鼻粘膜、口腔内粘膜等に適用される粘膜適用組成物において、粘膜への組成物の滞留性を向上することが知られている成分であるが、塩化亜鉛と共にヒアルロン酸又はその塩を含む眼科用水性組成物では、より析出物が生じ易いことを確認した。
眼科用水性組成物における析出物の発生は、安全性を含む品質の低下や商品価値の低下を招来するため、析出物の発生を抑制することは極めて重要な課題である。
従って、本発明は、塩化亜鉛を含有し、更に必要に応じて、ヒアルロン酸又はその塩を含有する眼科用水性組成物において、析出物の発生が抑制された眼科用水性組成物を提供すること、及び該眼科用水性組成物における析出物の発生を抑制する方法を提供することを課題とするものである。
更に、本発明のその他の課題は、その他のより改善された作用を有する眼科用水性組成物を提供することである。
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、塩化亜鉛を含有し、更に、必要に応じて、ヒアルロン酸又はその塩を含有する眼科用水性組成物に、コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種という特定のアミノ酸を配合することにより、析出物の発生を抑制し、滴下後の白残りを抑制することができることを見出した。
更に、塩化亜鉛と、コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種とを含む眼科用水性組成物は、角膜細胞の増殖を促進させる作用を有し、更に、ヒスタミンの遊離抑制作用を顕著に増強するという予期できない作用を有することも見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて更に研究を重ねた結果完成されたものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物を提供するものである。
項1-1.(A)塩化亜鉛、並びに
(B)コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸
を含有する眼科用水性組成物。
項1-2. 更に、(C) ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、項1-1に記載の眼科用水性組成物。
項1-3. (B)成分が、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム及びアスパラギン酸マグネシウム・カリウムからなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸である、上記項1-1又は項1-2に記載の眼科用水性組成物。
項1-4. (C)成分が、ヒアルロン酸ナトリウムである上記項1-2又は項1-3に記載の眼科用水性組成物。
項1-5. (A)成分を0.00001〜0.05w/v%含有する、項1-1〜項1-4のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-6. (B)成分を総量として0.01〜5w/v%含有する、項1-1〜項1-5のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-7. (A)塩化亜鉛1重量部に対して、(B)成分を総量として0.2〜 500000重量部含有する項1-1〜項1-6のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-8. (C)成分を総量として0.0001〜1w/v%含有する、項1-2〜項1-7のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-9. pHが6.5以上である、項1-1〜項1-8のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-10. 更に、ホウ酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有する、項1-1〜項1-9のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-11. 25℃における粘度が、0.01〜1000mPa・sである、項1-1〜項1-10のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-12. 点眼剤、人工涙液、洗眼剤又はコンタクトレンズ装着液である、項1-1〜項1-11のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
また、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物における析出物の発生を抑制する方法を提供するものである。
項2-1. 眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することを特徴とする、該眼科用水性組成物における析出物の発生を抑制する方法。
項2-2. 眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸、並びに(C) ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することを特徴とする、該眼科用水性組成物における析出物の発生を抑制する方法。
項2-3. 塩化亜鉛を含有する眼科用水性組成物中に、コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することを特徴とする、該眼科用水性組成物における析出物の発生を抑制する方法。
項2-4. (A)塩化亜鉛、並びに(C) ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有する眼科用水性組成物中に、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することを特徴とする、該眼科用水性組成物における析出物の発生を抑制する方法。
また、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物に角膜細胞の増殖を促進する作用を付与する方法を提供するものである。
項3. 眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することを特徴とする、該眼科用水性組成物に角膜細胞の増殖を促進する作用を付与する方法。
また、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物滴下時の白残りを抑制する方法を提供するものである。
項4. 眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することを特徴とする、該眼科用水性組成物滴下時の白残りを抑制する方法。
項4-2. 塩化亜鉛を含有する眼科用水性組成物中に、コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することを特徴とする、該眼科用水性組成物滴下時の白残りを抑制する方法。
また、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法を提供するものである。
項5-1. 眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することを特徴とする、該眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法。
項5-2. 眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸、並びに(C)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することを特徴とする、該眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法。
更に、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物に目のかゆみを抑制する作用を付与する方法をも提供するものである。
項6-1. 眼科用水性組成物中に(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することによる、該眼科用水性組成物に目のかゆみを抑制する作用を付与する方法。
項6-2. 眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸、並びに(C)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することによる、該眼科用水性組成物に目のかゆみを抑制する作用を付与する方法。
(1)本発明の眼科用水性組成物は、塩化亜鉛を含有する眼科用水性組成物において、析出物の発生が抑制されたものである。更に、本発明の眼科用水性組成物は、塩化亜鉛に加えて、ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有することにより、析出物がより発生し易い組成物においても、析出物の発生が抑制されたものである。よって、本発明の眼科用水性組成物は、安全性や品質を低下させることなく、塩化亜鉛のもつ優れた性能と、ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種の有する優れた性能を長期間安定して発揮することができる。
(2)本発明の眼科用水性組成物は、角膜細胞の増殖を促進させる作用を有するものであり、角膜修復効果が期待できる。
(3)本発明の眼科用水性組成物は、滴下時の白残りが抑制され、高い安定性を有するものである。これにより、長期間に亘り優れた品質や安全性を維持することができる。
(4) 本発明の眼科用水性組成物は、ヒスタミンの遊離を抑制する作用を有するものであり、抗アレルギー効果が期待できる。また、ヒスタミン遊離を抑制する作用を有する結果、抗ヒスタミン作用が増強されており、該眼科用水性組成物には、目のかゆみを抑制する作用が付与されている。このために、本発明の眼科用水性組成物を点眼剤、洗眼剤などとして用いて、点眼、洗眼などの方法で角膜及び/又は結膜に接触させることによって、目のかゆみを抑制又は治療することができる。
試験例4で用いた各試験液について、スライドガラスに滴下後、24時間経過時の状態を示す画像。
1.眼科用水性組成物
本発明の眼科用水性組成物は、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を含有する眼科用水性組成物である。
尚、本明細書において、「水性組成物」とは、水を含有する組成物を意味するものであり、水の含有量は、例えば、10〜99.8w/v%、好ましくは55〜97.0w/v%、より好ましくは70〜96.5w/v%である。
本発明の眼科用水性組成物では、粘度については特に限定はないが、眼科用水性組成物において析出物が発生し易い眼科用水性組成物であるという点から、例えば、回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター:1°34‘x24)で測定した25℃における粘度が、0.01〜1000mPa・s、好ましくは0.05〜100mPa・s、より好ましくは0.1〜20mPa・sである。
以下、本発明の眼科用水性組成物について具体的に説明する。
(A)塩化亜鉛
本発明で用いられる、塩化亜鉛は、眼科用水性組成物に使用することが可能なものであれば特に制限はない。例えば、第十六改正日本薬局方、米国薬局方、欧州薬局方に記載されている塩化亜鉛が挙げられる。
本発明の眼科用水性組成物における塩化亜鉛の含有量は特に限定はなく、具体的な眼科用水性組成物の用途、製剤形態、使用方法などに応じて決めることができる。例えば、本発明の眼科用水性組成物の総量を基準として、塩化亜鉛の含有量は0.00001〜0.05w/v%、好ましくは0.00005〜0.02w/v%、更に好ましくは0.0001〜0.01w/v%である。
B)コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のアミノ酸:
コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩は、いずれも公知の化合物であり、公知の方法により製造してもよく市販品として入手することもできる。
コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いられるコンドロイチン硫酸は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、その由来については、特に制限されず、例えば、哺乳動物や魚類の軟骨(サケ軟骨等)などに由来するものなどが挙げられる。本発明で用いられるコンドロイチン硫酸の分子量は、特に制限されないが、例えば、粘度平均分子量で0.01万〜10万、好ましくは0.05万〜7万、更に好ましくは0.1万〜5万である。ここで粘度平均分子量は、第十六改正日本薬局方の一般試験法 粘度測定法 第1法:毛細管粘度計法に準じて極限粘度ηを求め(測定条件:溶解液0.2mol/L NaCl、温度25.0±0℃、ウベローデ粘度計)、得られた極限粘度ηを用いて下記式Iより算出されるものである。
[η]=5.8×10−40.74 (式I)
(Mは粘度平均分子量である。)
本発明で用いられるコンドロイチン硫酸の塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されない。コンドロイチン硫酸の塩は、具体的には、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等の各種の塩が挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくは、コンドロイチン硫酸の無機塩基との塩、より好ましくはアルカリ金属塩、更に好ましくはコンドロイチン硫酸ナトリウムである。これらのコンドロイチン硫酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いられるアミノエチルスルホン酸は、タウリンとも称される化合物である。
本発明で用いられる、アミノエチルスルホン酸の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されない。アミノエチルスルホン酸の塩として、具体的には、上記コンドロイチン硫酸がとり得る塩と同形態のものが挙げられる。これらのアミノエチルスルホン酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いられるアスパラギン酸は、2-アミノブタン二酸とも称される酸性アミノ酸である。アスパラギン酸は、L体、D体、DL体のいずれであってもよいが、好ましくはL体である。
本発明で用いられるアスパラギン酸の塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されない。アスパラギン酸の塩として、具体的には、上記コンドロイチン硫酸がとり得る塩と同形態のものが挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくは、アスパラギン酸の無機塩基との塩、より好ましくはアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、更に好ましくはアスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、及びアスパラギン酸マグネシウム・カリウム、特に好ましくはアスパラギン酸カリウムである。これらのアスパラギン酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いられるコンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩の内で、特に、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム及びアスパラギン酸マグネシウム・カリウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
本発明の眼科用水性組成物における、(B)コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のアミノ酸の含有量は特に限定はなく、具体的な眼科用水性組成物の用途、製剤形態、使用方法などに応じて決めることができる。例えば、本発明の眼科用水性組成物の総量を基準として、(B)成分の総含有量として、0.01〜5w/v%、好ましくは0.05〜4w/v%、更に好ましくは0.1〜3w/v%である。
また、該眼科用水性組成物における(A)塩化亜鉛に対する(B)コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のアミノ酸の含有比率については、特に限定されるものではないが、該眼科用水性組成物に含まれる(A)塩化亜鉛1重量部に対して、(B)成分の総量として、例えば、0.2〜500000重量部、好ましくは3〜100000重量部、更に好ましくは10〜30000重量部、特に好ましくは30〜10000重量部である。
ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含む眼科用水性組成物
更に、本発明では、(A)塩化亜鉛と共に、(C)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有する析出物がより発生し易い眼科用水性組成物においても、(B)コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のアミノ酸を配合することによって、上記(A)成分と(C)成分の併用によって生じる析出物の発生を抑制することができる。
ヒアルロン酸は、グルクロン酸(GlcUA)とN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)が結合したGlcUA-GlcNAcの基本構造(繰り返し単位)から構成されているポリマーである。
本発明で用いられるヒアルロン酸及びその塩は、公知の化合物であり、公知の方法により製造してもよく、市販品として入手することもできる。ヒアルロン酸及びその塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いられるヒアルロン酸は、天然物、合成品のいずれであってもよい。本発明で用いられるヒアルロン酸の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量で、通常、0.01万〜500万、好ましくは0.1万〜400万、更に好ましくは1万〜300万、より更に好ましくは10万〜250万、特に好ましくは50万〜200万である。
本発明で用いられるヒアルロン酸の塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される塩の形態のものであれば特に制限されない。具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が例示され、好ましくは、ヒアルロン酸ナトリウムである。本発明で用いられるヒアルロン酸の塩は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の眼科用水性組成物に(C)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合する場合には、その含有量については、使用するヒアルロン酸の種類、眼科用水性組成物の用途、製剤形態、使用方法などに応じて決めることができる。例えば、本発明の眼科用水性組成物の総量を基準として、(C)成分の総含有量として、0.0001〜1w/v%、好ましくは0.0005〜0.3w/v%、更に好ましくは0.001〜0.1w/v%である。
また、本発明の眼科用水性組成物における(A)塩化亜鉛に対する(C)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種の成分の含有比率については特に限定されるものではないが、該眼科用水性組成物に含まれる(A)塩化亜鉛1重量部に対して、(C)成分の総量として、例えば、0.002〜100000重量部であり、好ましくは0.02〜5000重量部であり、更に好ましくは0.1〜1000重量部である。
また、本発明の眼科用水性組成物における(C)ヒアルロン酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも一種に対する(B)コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のアミノ酸の含有比率についても特に限定されるものではないが、該眼科用水性組成物に含まれる(C)成分の総量1重量部に対して、(B)成分の総量として、例えば、0.01〜50000重量部、好ましくは0.2〜10000重量部、更に好ましくは1〜3000重量部である。
界面活性剤
本発明の眼科用水性組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤は、眼科用組成物の使用目的に応じて、後述する種々の薬理活性成分、生理活性成分及び添加剤等を配合する際に、それらの溶解性を向上させる溶解補助剤として有効である。
ここで、界面活性剤としては、溶解させる成分に応じて、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される公知の界面活性剤から適宜選択して用いることができ、非イオン性界面活性剤、イオン性(両性、陰性、陽性)界面活性剤のいずれであってもよい。本発明で用いられる界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
非イオン性界面活性剤として、具体的には、モノウラリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル;POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POE(3)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油3)、POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)、POE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)、POE(70)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油70)等のPOEヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE−POPアルキルエーテル;POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ステアリン酸ポリオキシル10、ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、上記で例示する化合物において、括弧内の数字は付加モル数を示す。
両性界面活性剤として、具体的には、アルキルジアミノエチルグリシン及びその塩(例えば、塩酸塩等)等が例示できる。
陰イオン性界面活性剤として、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸等が例示できる。
陽イオン性界面活性剤として、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が例示できる。
本発明の眼科用水性組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量については、特に限定はなく、使用する界面活性剤の種類、他の含有成分の種類や量、眼科水性組成物の用途、使用方法などに応じて適宜設定することができる。例えば、眼科水性組成物の総量を基準として、界面活性剤が総量で0.0001〜5w/v%、好ましくは0.001〜2w/v%、更に好ましくは0.005〜0.5w/v%である
その他の成分
本発明の眼科用水性組成物は、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を含有するものであるが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や製剤形態に応じて、常法に従い、種々の薬理活性成分や生理活性成分を適宜選択して、含有することができる。それらの薬理活性成分や生理活性成分として、例えば、一般用医薬品製造(輸入)承認基準2000年版(薬事審査研究会監修)に記載された各種医薬における有効成分が例示できる。
薬理活性成分又は生理活性成分としては、具体的には、次のような成分が挙げられる。
抗ヒスタミン剤又は抗アレルギー剤:例えば、フマル酸ケトチフェン、イプロヘプチン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、ペミロラストカリウム等。
充血除去剤:例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硫酸ナファゾリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン等。
殺菌剤:例えば、アクリノール、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等。
ビタミン類:例えば、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パンテノール、パントテン酸カルシウム、酢酸トコフェロール等。
消炎剤:例えば、グリチルリチン酸ニカリウム、アズレンスルホン酸、アラントイン、トラネキサム酸、ε−アミノカプロン酸、ベルベリン、リゾチーム等。
収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
その他:例えば、メチル硫酸ネオスチグミン、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、プラノプロフェン等。
本発明の眼科用水性組成物において、上記した薬理活性成分や生理活性成分の含有量は、具体的な眼科用水性組成物の用途、製剤形態、使用方法、活性物質の種類などに応じて適宜選択することができ、使用する成分の種類、用途等に応じて、当該技術分野において公知の範囲から適宜選択することができる。
また、本発明の眼科用水性組成物は、更に、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択して、含有することができる。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
増粘剤:例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
テルペノイド類:メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、これらの誘導体等を用いることができ、これらの化合物はd体、l体及びdl体のいずれであってもよい。また、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油等の精油を使用してもよい。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、グローキル(ローディア社製 商品名)、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド等)等。
等張化剤:リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール等。
pH調節剤:例えば、塩酸、ホウ酸、イプシロン−アミノカプロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム等。
安定化剤:例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン等。
キレート剤:例えば、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等。
本発明の眼科用水性組成物において、上記した添加物の含有量については、具体的な眼科用水性組成物の用途、製剤形態、使用方法などに応じて当該技術分野において、公知の範囲から適宜選択することができる。
眼科用水性組成物のpH
本発明の眼科用水性組成物のpH(25℃)は、目的とする用途、使用形態などによって異なるが、析出物が生じ易いという観点から、pH6.5以上が好ましく、例えば、pH6.5〜9.5、好ましくは、6.5〜9、特に好ましくは、7〜8である。尚、本願明細書において、pH値は25℃で測定した値である。
本発明の眼科用水性組成物において、pHの調整は、前記したpH調整剤、緩衝剤などを用いて行うことができる。
ここで、緩衝剤としては、目的とするpH値に応じて、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される公知の緩衝剤から適宜選択して用いることができる。かかる緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸等が挙げられる。好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤であり、特に好ましい緩衝剤はホウ酸緩衝剤である。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸、又はホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸、又はリン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等);トリス緩衝剤として、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はその塩(塩酸塩、酢酸塩、スルホン酸塩等)等が例示される。これらの緩衝剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明の眼科用水性組成物においては、発明の効果を顕著に得られるという観点から、緩衝剤として、ホウ酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましく、炭酸水素、クエン酸及びそれらの塩を含有しない組成物であることが好ましい。
ホウ酸の塩としては、ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。また、ホウ酸塩として、ホウ酸塩の水和物を用いてもよい。具体的な成分の例として、ホウ酸(オルトホウ酸)、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等が例示できる。ホウ酸及びその塩は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ホウ酸とその塩を組み合わせる好適な具体例として、ホウ酸と、ホウ酸のアルカリ金属塩の組み合わせ、更に好ましくはホウ酸とホウ砂の組み合わせが例示される。
本発明の眼科用水性組成物が緩衝剤を含有する場合、緩衝剤の含有量については、特に限定はなく、使用する緩衝剤の種類、他の含有成分の種類や量、眼科水性組成物の用途、使用方法などに応じて適宜設定することができる。例えば、眼科水性組成物の総量を基準として、緩衝剤が総量で0.01〜10w/v%、好ましくは0.1〜5w/v%、更に好ましくは0.5〜3w/v%である。
2.眼科用水性組成物の調製方法及び用途
本発明の眼科用水性組成物は、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を含有する眼科用水性組成物であれば特に限定はなく、当業者に公知の方法にしたがって調製することができる。例えば、各成分を適量の精製水に溶解した後に、所定のpH値に調節し、次いで、残りの精製水を加えて容量調整することにより製造することができる。また、必要に応じて、濾過及び滅菌処理をし、容器に充填することもできる。 本発明の眼科用水性組成物は、医薬品や医薬部外品等の製剤として使用でき、点眼剤[但し、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む]、人工涙液[但し、人工涙液にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な人工涙液を含む]、洗眼剤[但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む]、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等]等が含まれる。本発明の眼科用水性組成物の好適な一例として、点眼剤、人工涙液、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液が挙げられ、特に好適な例として点眼剤、人工涙液が挙げられる。なお、コンタクトレンズ用組成物として用いる場合には、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用可能である。
本発明の眼科用水性組成物は、任意の容器に収容して提供することができる。本発明の眼科用水性組成物を収容する容器については特に制限されず、当該分野で一般的な容器に使用することができる素材を用いたものであればよく、例えば、ガラス素材及びプラスチック素材(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂)など、目的、用途に応じて適宜選択して用いることができる。また、本発明の眼科用水性組成物を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。眼科用水性組成物の溶液量の確認及び、製造工程での異物検査等が容易であることから、特に透明容器が好ましい。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。更に、本発明の眼科用水性組成物は、1回使いきりタイプの包装形態だけでなく、複数回にわたり投与する形態で包装され、かつ使用者が継続的に使用するマルチドーズの眼科用水性組成物としても、有用である。
3.眼科用水性組成物における析出物の発生を抑制する方法
前述した通り、眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛と共に、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することによって、(A)塩化亜鉛を含有する眼科用水性組成物において生じる析出物の発生を抑制することができる。
従って、本発明は、眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することによる、該眼科用水性組成物における析出物の発生を抑制する方法を提供するものである。
また、本発明は、(A)塩化亜鉛を含有する眼科用水性組成物に、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することによる、該眼科用水性組成物における析出物の発生を抑制する方法も提供するものである。
更に、本発明では、(A)塩化亜鉛、並びに(C)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有することにより、析出物がより発生し易い眼科用水性組成物においても、(B)コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも一種のアミノ酸を配合することによって、上記(A)成分と(C)成分の併用によって生じる析出物の発生を抑制することができる。
従って、本発明は、眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸、並びに(C)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することを特徴とする、該眼科用水性組成物における析出物の発生を抑制する方法を提供するものである。
また、本発明は、(A)塩化亜鉛、並びに(C) ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有する眼科用水性組成物中に、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することを特徴とする、該眼科用水性組成物における析出物の発生を抑制する方法も提供するものである。
上記した各方法において、眼科用水性組成物中に(A)塩化亜鉛、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸、並びに必要に応じて、(C) ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種が共存するのであれば、それらの添加順序は特に限定されない。また、(A)〜(C)成分については、各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の眼科用水性組成物と同様である。
なお、本明細書において、眼科用水性組成物における析出物の発生が抑制されているか否かは、後述の実施例(試験例1)に記載の方法によって判定することが可能である。
4.角膜細胞の増殖を促進させる作用を付与する方法
前述した通り、眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛と共に、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することによって、該眼科用水性組成物に角膜細胞の増殖を促進させる作用を付与することができる。
従って、本発明は、眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することによる、該眼科用水性組成物に角膜細胞の増殖を促進させる作用を付与する方法を提供するものである。
上記した方法において、眼科用水性組成物中に(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸が共存するのであれば、それらの添加順序は特に限定されない。また、(A)成分及び(B)成分については、各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の眼科用水性組成物と同様である。
なお、本明細書において、眼科用水性組成物によって角膜細胞の増殖が促進されているか否かは、後述の実施例(試験例3)に記載の方法によって判定することが可能である。
5.眼科用水性組成物滴下時の白残りを抑制する方法
前述した通り、眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛と共に、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することによって、(A)塩化亜鉛を含有する眼科用水性組成物において生じる滴下時の白残りを抑制することができる。これにより眼科用水性組成物滴下時の白残りが抑制され、安定性を高めることができ、長期間に亘り品質や安全性に優れた組成物を提供することができる。
従って、本発明は、眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することによる、該眼科用水性組成物滴下時の白残りを抑制する方法を提供するものである。
また、本発明は、(A)塩化亜鉛を含有する眼科用水性組成物に、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することによる、該眼科用水性組成物滴下時の白残りを抑制する方法も提供するものである。
上記した方法において、眼科用水性組成物中に(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸が共存するのであれば、それらの添加順序は特に限定されない。また、(A)成分及び(B)成分については、各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の眼科用水性組成物と同様である。
なお、本明細書において、眼科用水性組成物滴下時の白残りが抑制されているか否かは、後述の実施例(試験例4)に記載の方法によって判定することが可能である。
6.ヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法及び目のかゆみ抑制作用を付与する方法
更に、前述した通り、眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛と共に、 (B) コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することによって、該眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用を増強することができる。
従って、本発明は、眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することによる、該眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法を提供するものである。
更に、本発明では、眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸と共に、(C)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することによって、該眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用をより増強することができる。
従って、本発明は、眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸、並びに(C)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することによる、該眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法も提供するものである。
また、本発明の眼科用水性組成物は、ヒスタミン遊離を抑制する作用を有する結果、抗ヒスタミン作用が増強されており、該眼科用水性組成物には、目のかゆみを抑制する作用が付与されている。
よって、本発明は、更に別の観点から、眼科用水性組成物中に(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することによる、該眼科用水性組成物に目のかゆみを抑制する作用を付与する方法を提供するものである。
更に、本発明は、眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸、並びに(C)ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することによる、該眼科用水性組成物に目のかゆみを抑制する作用を付与する方法をも提供するものである。
上記した各方法において、眼科用水性組成物中に(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸、並びに必要に応じて、(C) ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種が共存するのであれば、それらの添加順序は特に限定されない。また、(A)〜(C)成分については、各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の眼科用水性組成物と同様である。
なお、本明細書において、眼科用水性組成物におけるヒスタミン遊離抑制作用が増強されているか否かは、後述の実施例(試験例5)に記載の方法によって判定することが可能である。
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例等によって限定されるものではない。
試験例1(析出物、濁度に関する試験1)
下記表1に示す実施例1〜3及び比較例1〜3の眼科用水性組成物をそれぞれ調製した。具体的には、表1に示すホウ砂を除く各成分に精製水80mLを加え溶解した後に、ホウ砂を加えてそれぞれのpHに調製した。その後、精製水を加え、全量を100mLとした。なお、本試験では、原料としては、塩化亜鉛、アミノエチルスルホン酸、L−アスパラギン酸カリウム及び硫酸亜鉛は和光純薬製(試薬)を用いた。コンドロイチン硫酸ナトリウムは医薬品添加物規格2003の規格に適合するものである。
上記した方法で調製した各眼科用水性組成物を30mL容量のガラススクリューバイアルに30mLずつ充填し、調製直後又は70℃の恒温器内に24時間保存した後に、各眼科用水性組成物中の析出物の発生を目視又は濁度測定により評価した。
なお、目視による析出物発生の評価基準は下記に従って判定した。
<析出物発生度の評価基準>
析出がある :+++
析出がややある :++
析出がわずかにある:+
析出が見られず澄明:−
また、濁度測定には、精製水をブランクとして、濁度計2100AN(HACK製)を用いた。実施例1〜3の濁度抑制率は、下記式(1)にて算出し、比較例3の濁度抑制率は、下記式(2)にて算出した。結果を表1に記載する。
濁度抑制率(%) =
(1−(実施例1〜3の濁度)/(比較例1の濁度))x100 …式(1)
濁度抑制率(%) =
(1−(比較例3の濁度)/(比較例2の濁度))x100 …式(2)
Figure 2013144672
塩化亜鉛のみを含有する眼科用水性組成物においては、析出物の発生が調製直後、70℃保存後共に認められた(比較例1)。これに対して、塩化亜鉛と共に、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸又はL−アスパラギン酸カリウムを含有する眼科用水性組成物においては、濁度が顕著に減少し、ほとんど析出物の発生が認められなかった(実施例1〜3)。
一方で、硫酸亜鉛のみを含有する眼科用水性組成物については、調製直後には析出物の発生は認められなかったが、70℃の恒温器内に24時間保存した後には、析出がやや認められた。また、硫酸亜鉛と共にアミノエチルスルホン酸を含有する眼科用水性組成物についても、調製直後には析出物の発生が認められなかったが、70℃の恒温器内に24時間保存した後においては、析出物の発生が認められた(比較例2及び3)。よって、硫酸亜鉛と共にアミノエチルスルホン酸を含有する眼科用水性組成物では、硫酸亜鉛のみを含有する眼科用水性組成物と比べた場合に、70℃で保存した場合に濁度が僅かに減少しただけであった。
従って、眼科用水性組成物に、塩化亜鉛と共に、コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を含有させることにより、析出物の発生が抑制され、安定性に優れた眼科用水性組成物を得られることが明らかとなった。更に、この効果は、亜鉛化合物として塩化亜鉛を用いる場合の特異的な効果であることが明らかとなった。
試験例2(析出物、濁度に関する試験2)
下記表2に示す実施例4〜6及び比較例4〜5の眼科用水性組成物をそれぞれ調製した。具体的には、表2に示すホウ砂を除く各成分に精製水80mLを加え溶解した後に、ホウ砂を加えてそれぞれのpHに調製した。その後、精製水を加え、全量を100mLとした。なお、本試験では、原料としては、塩化亜鉛、アミノエチルスルホン酸及びL−アスパラギン酸カリウムは和光純薬製(試薬)を用いた。ヒアルロン酸ナトリウムは第十六改正日本薬局方の精製ヒアルロン酸ナトリウムの規格に適合するものであり、コンドロイチン硫酸ナトリウムは医薬品添加物規格2003の規格に適合するものである。
上記した方法で調製した各眼科用水性組成物を10mL容量のガラススクリューバイアルに7mLずつ充填し、70℃の恒温器内に1週間保存した後に、各眼科用水性組成物中の析出物の発生を濁度測定により評価した。
なお、濁度測定には、精製水をブランクとして、濁度計2100AN(HACK製)を用いた。
Figure 2013144672
塩化亜鉛のみを含有する眼科用水性組成物において析出が認められ(比較例4)、更に、塩化亜鉛と共に、ヒアルロン酸ナトリウムを含有する眼科用水性組成物では析出が増加して、濁度が上昇した(比較例5)。
これに対して、塩化亜鉛及びヒアルロン酸ナトリウムと共に、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸又はL−アスパラギン酸カリウムを含有する眼科用水性組成物においては、濁度が顕著に減少し、ほとんど析出が認められなかった(実施例4〜6)。
従って、塩化亜鉛と、ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種とを含有する眼科用水性組成物に、コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を含有させることにより、析出物の発生が抑制され、安定性に優れた眼科用水性組成物を得られることが明らかとなった。
試験例3(角膜細胞増殖促進試験)
96wellプレートに3.0×103個/wellになるよう播種したウサギ角膜細胞株SIRC細胞(ATCC number:CCL-60)を37℃、5%CO2条件下で24時間培養後、上清を除去し90μlの増殖培地(10%ウシ胎児血清含有DMEM培地(GIBCO製))を加えた。更に、表3に示す濃度で調製した各試験液を各well に10μLずつ加え、37℃、5%CO2条件下で24時間培養後、生細胞数検出試薬WST-8(同仁化学研究所製)を添加した。生細胞数の指標となる吸光度を測定(450nm)し、細胞生存率を算出した。なお、本試験では、原料としては、塩化亜鉛及び硫酸亜鉛は和光純薬製(試薬)を用いた。コンドロイチン硫酸ナトリウムは医薬品添加物規格2003の規格に適合するものである。結果を下記表3に平均値±標準偏差で示す。
Figure 2013144672
塩化亜鉛、硫酸亜鉛又はコンドロイチン硫酸ナトリウムを単独で含有する試験液においては、これらを添加しない試験液(比較例6)と比較して、SIRC細胞の生存率にほぼ影響を与えなかった(比較例7〜9)。これに対して、塩化亜鉛と共に、コンドロイチン硫酸ナトリウムを含有する試験液においては、細胞数が増加し、細胞増殖が顕著に促進された(実施例7)。一方で、硫酸亜鉛と共に、コンドロイチン硫酸を含有する試験液においては、細胞数はむしろ低下し、細胞増殖作用は認められなかった(比較例10)。
従って、眼科用水性組成物に、塩化亜鉛、並びにコンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を含有させることにより、角膜細胞の増殖が促進されることが明らかとなった。
試験例4(白残り抑制試験)
下記表4に示す比較例11及び実施例8の眼科用水性組成物をそれぞれ調製した。具体的には、塩化亜鉛、L−アスパラギン酸カリウム、ホウ酸及びホウ砂に精製水を80mL加え、溶解した後、塩酸又は水酸化ナトリウムを加えてpHを7.5に調製した後、精製水を加えて全量を100mLとし、試験液とした。なお、本試験では、原料としては、塩化亜鉛及びL−アスパラギン酸カリウムは和光純薬製(試薬)を用いた。
調製した各試験液30μLをスライドガラス上に滴下し、33℃下で24時間静置した。24時間後のスライドガラス上の各試験液の状態を観察し、以下の評価基準に従って白残り量の程度を評価した。結果を下記表4に示す。また、図1に、デジタルカメラにより撮影した画像を示す。
<白残り量の評価基準>
白残りが激しい : +++
白残りがある : ++
白残りがわずかにある : +
白残りが全く見られない : −
Figure 2013144672
表4及び図1から明らかなように、塩化亜鉛のみを含有する眼科用水性組成物においては、スライドガラスに滴下後、白色固形物が残存することが観察された(比較例11)。これに対して、塩化亜鉛と共に、L-アスパラギン酸カリウムを含有する眼科用水性組成物においては、白残りが全く認められなかった(実施例8)。
従って、眼科用水性組成物に、塩化亜鉛、並びにコンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を含有させることにより、滴下時の白残りが完全に抑制され、品質に優れた眼科用水性組成物を得られることが明らかとなった。
試験例5(ヒスタミン遊離抑制試験)
10容量%ウシ胎児血清(インビトロジェン社製)を添加したDMEM培地(インビトロジェン社製)に懸濁したラット好塩基球細胞株(RBL-2H3)を1.4×105cells/cm2の密度で96ウェルマイクロタイタープレート(コーニング社製)に播種し、37℃、5%CO2下で24時間培養した。その後、培養上清を吸引除去し、表5及び表6に示す濃度となるよう被験物質を溶解したPIPES緩衝液(pH7.2、組成:0.1w/v%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)、CaCl2・2H2O 3.0mM、MgCl2・6H2O 0.40mM、KCl 7.38mM、NaCl 118.93mM、D(+)-Glucose 5.60mM、25mM PIPES(Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid)、同仁化学研究所製)を1ウェル当たり0.1mlずつ添加し、1.5時間、37℃、5%CO2下でインキュベートした。その後培養上清を吸引除去し、被験物質を含むPIPES緩衝液中にさらに、10μMとなるようにA23187(試薬:シグマ社製)を加えたPIPES緩衝液を1ウェル当たり0.2mlずつ添加し、更に30分間、37℃、5%CO2下でインキュベートした。
各ウェルの上清を回収し、ヒスタミンの濃度をELISAキット(Oxford Biochemical Research社製)を用いて定量した。得られた各試験液のヒスタミン濃度を用いて、下記式(3)にしたがって、ヒスタミン遊離抑制率(%)を算出した。結果を表5及び表6に併せて示す。
ヒスタミン遊離抑制率(%)=
(比較例12のヒスタミン濃度−各試験液のヒスタミン濃度)/(比較例12のヒスタミン濃度)x100 … 式(3)
なお、本試験では、原料としては、塩化亜鉛及びアミノエチルスルホン酸は和光純薬製(試薬)を用いた。コンドロイチン硫酸ナトリウムは医薬品添加物規格2003の規格に適合するものであり、ヒアルロン酸ナトリウムは第十六改正日本薬局方の精製ヒアルロン酸ナトリウムの規格に適合するものである。
Figure 2013144672
Figure 2013144672
コンドロイチン硫酸ナトリウム又はアミノエチルスルホン酸を単独で含有する試験液におけるヒスタミン濃度は、塩化亜鉛のみを含有する試験液(比較例12)におけるヒスタミン濃度と比較して増加しており、ヒスタミン遊離抑制率は低下し、却ってヒスタミン遊離を促進した(比較例13及び14)。これに対して、塩化亜鉛と共に、コンドロイチン硫酸ナトリウム又はアミノエチルスルホン酸を含有する試験液におけるヒスタミン濃度は、塩化亜鉛のみを含有する試験液(比較例12)におけるヒスタミン濃度に比べて減少しており、ヒスタミンの遊離が顕著に抑制されることが明らかとなった(実施例9及び10)。
また、ヒアルロン酸と共に、コンドロイチン硫酸ナトリウム又はアミノエチルスルホン酸を含有する試験液におけるヒスタミン濃度は、塩化亜鉛のみを含有する試験液(比較例12)におけるヒスタミン濃度と比較して増加するかわずかな減少に留まっており、ヒスタミン遊離抑制率は低下し却ってヒスタミン遊離を促進するか、遊離抑制をほとんど増強しなかった(比較例15及び16)。これに対して、塩化亜鉛と共に、ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸ナトリウム又はアミノエチルスルホン酸を含有する試験液におけるヒスタミン濃度は、塩化亜鉛のみを含有する試験液(比較例12)におけるヒスタミン濃度に比べて減少しており、ヒスタミンの遊離抑制が顕著に増強されることが明らかとなった(実施例11及び12)。
また、塩化亜鉛と共に、ヒアルロン酸ナトリウムと、コンドロイチン硫酸ナトリウム又はアミノエチルスルホン酸とを含有する試験液(実施例11及び12)におけるヒスタミン濃度は、塩化亜鉛と共に、コンドロイチン硫酸ナトリウム又はアミノエチルスルホン酸を単独で含有する試験液(実施例9及び10)におけるヒスタミン濃度と比べても、更に低下し、ヒスタミンの遊離抑制が一層顕著に増強されることが明らかとなった。
従って、眼科用水性組成物に、塩化亜鉛、並びにコンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を含有させることにより、ヒスタミンの遊離抑制が顕著に増強されることが明らかとなった。
更に、ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有させることにより、ヒスタミン遊離抑制が一層増強されることが明らかとなった。
製剤例
表7〜表9に記載の処方で、常法により人工涙液(処方例1〜5)、点眼剤(処方例6〜16)を調製する。
Figure 2013144672
Figure 2013144672
Figure 2013144672
Figure 2013144672
Figure 2013144672
Figure 2013144672

Claims (8)

  1. (A)塩化亜鉛、並びに
    (B)コンドロイチン硫酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸
    を含有する眼科用水性組成物。
  2. 更に、(C) ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1に記載の眼科用水性組成物。
  3. (B)成分が、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム及びアスパラギン酸マグネシウム・カリウムからなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸である、請求項1又は2に記載の眼科用水性組成物。
  4. (C)成分が、ヒアルロン酸ナトリウムである請求項2又は3に記載の眼科用水性組成物。
  5. (A)成分1重量部に対して、(B)成分を総量として0.2〜500000重量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
  6. pH6.5以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
  7. 更に、ホウ酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
  8. 眼科用水性組成物中に、(A)塩化亜鉛、並びに(B)コンドロイチン硫酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ酸を配合することを特徴とする、該眼科用水性組成物における析出物の発生を抑制する方法。
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